───ほぼ全てに忘れられた世界で───
【ケース01:弦月彰/空界旅情】  ズズゥウウン……と、大木が倒れた。  その途端に猫の目が光って、二体のベヒーモスが空を飛んだ。  猫を除いた俺達全員が「何事ォオオ!?」と叫ぶ中で、猫はゴシャーンと倒れたベヒーモスたちを無理矢理地面に正座させて─── 猫  『馬鹿じゃなかと!?』  何故か博多弁(エセ)で怒り出した。 猫  『オイたちば追うだけならよかろうモン!     そィがこがァに自然ばブッ倒して!     あた自分がなんしょっとか解っとーと!? はらくしゃあ!!』  当然俺達はポカーンとその光景を眺める他なく。  むしろこれはいったいどんな状況ですかと誰かに問いたく存じます。  誰か答えてくれ。 猫    『貴様らこのサウザーントレントに住んでるってことは、       この森の番人的な存在でしょ!? それがこんなに自然壊してェエエ!!』 ベヒーモス『グ、グゴル……』 猫    『なにー!? 不可抗力だってー!? 口答えするんじゃないのォオオ!!       アンタはもうホンット人の揚げ足ばっかり取ってェエエ!!』 彰    「人じゃねーだろお前」 猫    『うるさいよもう!』 カイ   『まあまあ……!』  猫……猫ねぇ。  ご先祖サマの知り合いらしいけど、“博光”なんて名前、聞いたこともないなぁ。  そりゃ、頭に引っかかってるなにかはある。  博光って名前が異常なくらいに大切で、下手すりゃ晦悠介って名前と同等、もしくはそれ以上に大切なものなんだ〜ってくらい。  でも、猫であるって引っかかりはゼロだ。 彰  「なぁ猫」 猫  『提督、もしくはマギエル=ティリングハースト博士と呼んで?』 彰  「長ェエエよ!! 猫でいいだろもう!」 猫  『よくないわ馬鹿め! 個猫(個人)としての猫格(人格)の確立を切に願う!     貴様のそれは人間に対して人間さんって呼んでるのと同じだ!     貴様がその気ならばこの博光!貴様を人間と呼び続けてくれるわ!』 彰  「おお上等! じゃあ猫よ!」 猫  『なんだいモンゴル52の謎を解き明かさんとするトンガリヘアーのクソ人間』 彰  「なんかすげぇ呼ばれ方になってない!? 人間って呼ぶって言っただろ!?」 猫  『いやだなぁなに言ってるんでしょうかこのタコはブフォロハハハハ……!     ちゃんと最後に“人間”ってついてるじゃないか』 彰  「ヤロッ……! だったら俺だって、えーとえーと」 猫  『ど、どうした人間! なにかあったのか人間! 難しい顔をしてるぞ人間!』 彰  「うるせー! ちょっと黙っててくれ!」 猫  『なんだと人間てめぇ! せっかく心配してるのに人間てめぇ!     人がやさしくしてやれば人間てめぇ! 付け上がりやがって人間てめぇ!!』 彰  「いいから黙れってぇええっ!! 今お前に相応しい名前を───」 猫  『グヘヘハハハハ名前だってよこのトンガリコーンめが……!     咄嗟に適当な名前も挙げられないくせに、     よくもまあ相応しいなどとグフェヘヘヘ。     それで? ン? なにか思いついたの?     ン? 言ってごらん? ン? ンン〜〜〜?』 彰  「ギャアアアアアアアアアアアアうぜええぇええーーーーーーーっ!!!」 ミア 「彰くん、ちょっと落ち着いたほうがいいと思うんだけど……」 彰  「だってこいついちいち行動の全てが猫らしくねぇんだもん!!」  視線の先で、何故かガーディアンヒーローズの王国兵士の勝利ポーズを取っている猫。  ご丁寧に「ウォー」とか言ってやがる。 彰  「だがこの彰は大人だから譲ってやるのさ。で、お前名前なんだったっけ」 猫  『俺はクゥ! 人間にもらった名前だ!』 彰  「クゥか……って、ちょっと待てそれって」 猫  『かかったなダボが! 俺の名はクゥなどではないわ!』 彰  「うぉおおおおおこのヤロォオオオオオッ!!!」  もうほんといっぺん殴ったろかこの野郎!  なんて思った時には既に殴っていました。 猫  『《バゴンシュ!》ジョルノ!』 カイ 『うわいたたっ……!』  それを見たカイが、見ただけでも痛そうだ〜って顔で頬を押さえるが、べつにカイは殴ってないので知らん。  猫に視線を戻した俺は、反撃がくるかと構えてあれ居ねぇ!! 猫  『じゃ、行こうか。まずはブレイバー登録でもして、この世界を知りましょう』 彰  「うおっ!? あ、あれ!? 今こっちに……! あれぇっ!?」 猫  『グオッフォフォ……!!この博光は好きな時にドッペルゲンガーを作れるのさ。     だから貴様がいくらこの博光を殴り飛ばそうと、     ドッペルが痛いだけでこの博光は痛くないわ!』《ジャーーーン!》 彰  「痛めろよ心を! ドッペルが可哀想だろ!?」 猫  『大丈夫! 痛いの僕じゃないもん!』 彰  「うぉおおおおこいつひでぇえええええっ!!!」 カイ 『……? ブレイバー登録ってなんですか?』 ミア 「わっ、無視したよこの精霊さん」 彰  「いや…………いいけどさ……」  俺だけ騒いで、なにやってんだ……って気分になってしまった。  COOLに行こうぜ、彰……。 猫  『ブレイバーってのはこの世界で言う勇者のことさ。     ランクライセンスを手に入れるためにはまず登録を申請。     で、えーと……うむ! ともかく行ってみりゃ解る!     ミアンドギャルド、ここから一番近いプレート屋は?』 ミア 「ミアンドギャルド!? ……え、えぇと……西に行くとチャイルドエデン、     南東に向かうとオーエン、北東に向かうとファウエル。     南西に向かうとアントエンハンスがあって……」 猫  『うむ! して? プレート屋があるのは?』 ミア 「……うん。北にずっと行った場所に、技師の小屋があるはずだよ?     その東にはリヴァイア様の研究所跡地。     技師の小屋にならプレート屋さん、居ると思うけど」 猫  『うしゃー! ではそこへゆくぜ!』 ミア 「お金は? プレート作るにも、お金が無いと……」 猫  『殺してでも奪い取る』 彰  「なにをする貴様ーーーーっ!!」 猫  『なにもしてないよ!?』 カイ 『だ、だから落ち着いて……!』  くそ、この猫、どうもこっちが返しやすいボケを混ぜてくる。  お陰でボケ倒しまくりじゃないか。  ……楽しんでるからべつにいいけどさ。  そんなわけで、俺達は北に向かうこととなった。  地図で言えば最南西に位置する技師の小屋って場所に向けて。  ……ちなみにこの森、サウザーントレントって言われてるここは、地図で見ると北西に位置するらしい。  南にはロックスフォールの滝ってのがあって、北東にはロプロスト砂漠。  北西に向かうとレブロウドって場所があって、そこから北に行くと蛇の穴。  古い地図情報だとそうなんだそうだ。  新しい地図くらい持っとけ、ミア助……。 猫  『そんなわけだから俺、これからシュレティンガーの猫……シュレって名乗るね?』 彰  「いきなりだなオイ!! 突拍子って言葉知ってるか!?」 猫  『常識破壊って文字なら、心の辞書にたっぷりと』 カイ 『ひどい心の辞書だね……』 猫  『任せろ』《どーーーん!》 ミア 「胸張るようなことじゃないよそれ……」  まあ、ともかく。呼び名が決まったのはいいことだ。  猫に対して提督とか言うの、やっぱり抵抗あったし。 【ケース02:シュレティンガー/空界旅情2】  さくさくさくさく…… シュレ『大体さー、地界に戻ったっていいことないよ?     空気汚いし消費税は30%だしヨッタマックが普通に売ってるし』 彰  「売ってねぇよ!? 消費税だって30%もしてねーから!     引き上げたヤツがボロクソに叩かれてから改正されたからァアア!」 シュレ『もうさ、いっそ約束の木を空界に移しちゃったら?     そしたらキミのそのー……なんだっけ? 超者ボロティーンだっけ?     そいつもいろいろ安心するだろ?』 彰  「オォオイ!? いつから俺の親父ボロティーン!? 超者でもねぇぞ!?     ハゲかかってるだけの威張り野郎だよ! そりゃクソ親父だよ!?     ムナクソ悪ぃよ! でもボロティーンジュニアとか冗談じゃねぇからァアア!!」  やあ僕博光。  今日はそう、箱の中のキャットとしてシュレティンガーの猫と名乗らせてもらいつつ、旅を続けてみてるよ?  そう、僕が人間であるかは箱を開けなきゃ解らないように、僕が人間に戻らない限り元人間であることなぞ確信できやしねー。  なんかそんな目で見られてた気がしたから、シュレを名乗ってます。 シュレ『ねぇ。シュレって名前に飽きたから名前変えていい?』 カイ 『早いよ!? さっき変えたばっかりですよね!?』 シュレ『フフフ、馬鹿め。俺は常に進化しているんだぜ?     名前も進化しないとなんかほら……い、いけない気がするじゃん?』 ミア 「何に対してそんなにソワソワしてるのか解らないけど、どんな名前にするの?」 彰  『超者ボロティーンだろ?』 シュレ『いや、キミの親父に悪いからそれはやめておくよ。俺には重すぎる』 彰  「俺にも重ェエエんだよ!! いつからボロティーンが本名になったんだ!?     悪いって何ィイイ!? むしろお前の態度が俺の心に有害物質だよ性質悪いよ!」 シュレ『頭痛にバファリン』 彰  「頭痛ってレベルじゃねぇんだけど!?     もうこれ一昔前に流行ったっていう新型インフルエンザ並に性質悪ぃよ!     進化し続けるウィルス並だよ!! 頭痛どころか吐き気がするよ!!」 シュレ『カイくん、タミフル創造して彼を全裸で屋上まで───』 彰  「導かなくていいからァアアア!! お前どれだけ俺のこと殺したいの!?     べつにインフルエンザかかってねぇから!     子供ン時から一度も病気になったことねぇからァアアッ!!」  もうこの人、ほんとツッコミ好きね。  恐らく銀魂愛読者だよきっと。ツッコミに回ると口調とか変わるし。  そんな彼を真面目な顔で見つめ……ああちなみに僕、霧装九頭竜で背に八翼生やして飛んでます。  そんな状態で見つめ、 シュレ『……彰よ。弱さを知らんヤツが強さを語《ベパァン!》げひゅんっ!!』 カイ 『立派なこと言ったのに叩かれたぁあーーーっ!!』  彰に電光石火でビンタされました。  体の弱さとか強さとは関係ないことを言おうとしたら、あっさりと。 ミア  「……猫さん。今の弱さっていうのは意味が全然違うと思うんだ……」 シュレ 『うん、解っててからかった』 彰   「こんの猫はぁああ……!! ……はぁ、まあさ、解ってるよ。      お前が、俺が地界に戻れないことを慰めてるってことはさ」 シュレ 『な、なんと……! 貴様、このモルドフの気持ちを理解してくれたと……!?』 彰   「誰だよ!! ……はぁ、なんか調子狂うはずなのに調子いいんだよなぁ……。      ああそうだよ、あんたがしたいこと、なんとなく解るんだ。      もしかしたらご先祖様があんたによろしく〜とか言ってるのかもな」 モルドフ『き、貴様という男は……!      う、嬉しいぞ……こうまで気持ちを汲み取ってくれるとは……!』 彰   「……へへっ、なんか悪い気しねぇんだよな。ほんと、調子がいいっつーかさ。      自然体で居られるっつーのかな。まあ、とにかくこれからもよろしく」 モルドフ『うぬぼれるな小僧!!      貴様なぞこのモルドフの気持ちの1%を理解したにすぎぬわ!!』 彰   「だからモルドフ誰ェエエエーーーッ!!      こ、こんのクソ猫っ……!! いい度胸だちょっとツラ貸せコラァ!!」 モルドフ『おーーお上等じゃあ!      丁度あそこに“技師の小屋”とか書かれた小屋があるから      あそこの主の顔面にどんな悪戯書きが出来るかで勝負じゃあああっ!!』 彰   「上等じゃーーーっ!! さっさと油性ペン創造しろカイ!      この猫にだけは絶対に負けてられーーーん!」 モルドフ『ちなみにモルドフってのはくにおくんのドッヂボールの───』 彰   「べつに本当に知りたかったわけじゃねーからいいよ!!」  ベヘーモト(笑)に別れを告げ、やってきた蒼の下。  森を抜けた空の下はなんともこう……ねぇ? 見慣れない風景でした。  そういや俺、空界がどうなったかとかってあんまり知らないんだった。  セシルと一緒に居るようになる前も後もいろいろ大変だったし。  ゼットに森に逃がしてもらってからは、森から出ようとしなかったし。  で、現在といえば自然だらけのこの空界。  もはやどちらへ行けば町なのかも解らぬよ。  とりあえずはまあ……技師に会ってプレート作りだね。 【ケース03:提督猫/ランクプレート(ランクライセンス)を作ろう】  歩いて歩いて、歩きまくって……切り立った岸壁の上にある小屋を発見。  あー……いつか、晦がミルガーゴイルと戦った場所の近くの技師の小屋だね。  まだあったんだなぁこれ。  さて……問題は中に人が居るかだけど。  どうしようか、ノックでもしてみる?  ……否! ここは勢いよく行って、さっさと作ってもらうに限るぜ〜〜〜〜っ!  そんなわけで扉へタックルレッツゴー!!   ドバァーーーーンッ!! 提督猫『竜ちゃーーーん! 居るーーーっ!?』  うる星やつらのあたるくんが如く、元気な声で挨拶です。  ……挨拶じゃないやこれ。 男  「う、わっ……!? な、ななななにっ……!?     なななんだっ!? ───猫!? なんだお前!」 提督猫『バカヤローーーーーーーッ!!     人に名を訊ねる時はまず自分から名乗らんかァーーーーーーーッ!!!』 男  「えっ……えぇえーーーーーっ!!?」 ミア 「うわぁすっごい無茶言ってる……」 彰  「扉破壊しといて言う言葉かよそれ……」 カイ 『いろいろひどいですね……』 提督猫『うるさいよもう!』  ひどい言われようだったけど気にしません。  男に向かってのっしのっしと歩き(二足歩行で)、とりあえず「やあ」と挨拶。 提督猫『失礼。我は魔王。姓を“第六天”、名を“魔王”、字を“降臨せん”という』 彰  「すげぇ名前だなオイ!! 字も合わせていろいろおかしくねぇか!?」 提督猫『うるせーーーっ!! そんなもんは俺の勝手だーーーっ!!     いいからホレ、名前教えてやったんだからプレート作れ!     なに!? 金が欲しいの!?     なァんだだったら最初からそう言やぁいいんだよ〜〜〜〜〜っ!     いくら欲しいんだよ〜〜〜〜〜〜っ、えぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ?』 彰  「うぅわムカつく!! すっげぇムカつくツラしてる!!     猫の顔でこれってすげぇな! でもすげぇ通り越してムカつくわコレ!!」  珍遊記の中村たけしの真似をして、サイフをちらつかせながらの言葉。  あ、ちなみにこのサイフは─── 彰  「つーかそれ俺のじゃねぇか!!     なっ、どっ……いつの間にどうやって取ったんだよ!」 提督猫『猫にはいろんな秘密が隠されてるのさ』  関係ないけどね。  とゆーわけでサイフはホレと返しました。  大丈夫だよ、お金なら晦一等兵が院生時代に荒稼ぎした財産がある。  あれを工房から取り出せば僕億万長者さ。晦一等兵の許可も得てるし。  ただルナ子さんが居る可能性が滅茶苦茶高いから、出来れば開けないほうがいいとか。  ……そだね、ラグを使ってカイを創って、しかもそいつが創造の理力を持ってたりするって聞いたら、ルナ子さんだったら絶対に襲い掛かる。  襲い掛かって、僕らからカイを略奪するのさ。  と、そんなことを考えていると、ようやく落ち着きだしたらしい男がおそると声をかけてくる。 男  「え、えっと……え? お客…………さん?」 提督猫『うむ! ちとランクプレートが至急必要なのだ! よこせ!』 男  「…………ていうか、えっ!? 猫がしゃべっ……!?     ハッ!? ま、まさか伝説の“時を忘れた猫”!?」 提督猫『いや。俺は南葉高校が誇る期待の超新星! 剣道部の田中だ!!』 彰  「話が進まねぇからからかうのもそのへんにしとけよ……」 提督猫『初対面の相手だろうとこの博光、容赦せん』 彰  「そこはしような……」  無理です。だって博光ですもの。  つーかね、人間を前にするとどうにも胸の鼓動が早まって……!  こ、これが……恋……!? 男  「えぇと、はい……一応プレートを作るのは可能ですが……素材が必要でして」 カイ 『素材?』 男  「ええ。せっかく作ったのに、     ブレイバーがすぐに死んでしまってはどうにもなりません。     なにせ今はモンスターの数が人間よりも異常に多いですから。     人間が五千人〜一万人だとしても、モンスターは十万を越えます。     ちなみに他にも人は居ますが、ほぼがホムンクルスです」 彰  「モンスター居すぎじゃねぇかよそれ! よく潰れないな人類!!」 男  「それだけ人類にも技術があるということですよ。     そんなわけでして、必要な素材というのは適度な実力があれば勝てるモンスター。     そのモンスターの背甲が必要なのですよ」 提督猫『背甲で作るのか』 男  「よい魔力の媒体になるんですよ。それを加工してプレートにするんです。     百数年前にリヴァイア様が精製した新たなプレートなんですよ。     以前までは魔力の篭った鉱石を使っていたのですが」  へー……モンスターの背甲か。  背甲って聞くとどうもディアブロス思い出すね。モンハンの。 提督猫『で、そのモンスターって何処に居るの?』 男  「この小屋の外にも現れる、一般的なモンスターです。     名前はカブレライトビートル。     背甲が異様に硬い、別名“霊鶴虫”(れいかくちゅう)
と呼ばれるモンスターです」 提督猫『井上カブレラか……そりゃ強そうだぜ』 男  「カブレライトビートルですよ!? 話聞いてました!?」 提督猫『まーまー。ともかくそれさえ手に入れればいいんだね?     他に必要なもんはないんだね? サマルトリアったらブチ殺すよ?』 男  「サマルトリア!?」 彰  「あ、それ同感。サマルトリアったらもう許さん」 ミア 「さまる……?」 カイ 『あの、それは一体……?』 提督猫『ぬ、ぬうあれは……サ、サマルトリア……!』 彰  「し、知っているのか雷電……!」 提督猫『うむ……よもや伝説と耳にしたものを見ることになろうとは……!』  ◆サマルトリアの王子───さまるとりあのおうじ  会いに行ったのに居やしねぇ!! 探したのに居やしねぇ!!  初っ端からたらい回しイベントかこのクズが!  どんな試練よりも一人で貴様を探して歩き回ることに試練感を覚えたわ!!  そんなイベント。  *神冥書房刊:『たらい回し=サマルトリアる』より ……。 ミア 「うわぁ……確かにそれは嫌だね……」 提督猫『でがしょ? だから必要なものはその背甲だけかどうかを聞いておくのです』 男  「え、えぇはい、大丈夫ですよ。それさえあればすぐにでも。     というか完成品があるんですよ。それと多少の手数料を頂ければ。     背甲を取ってもらうのは、実力を試すのと次のお客様用の素材のためです」 彰  「あ、なーるほど」 カイ 『それは回転がよさそうですね。たらい回しになる心配もなさそうです』 提督猫『だめだ! 俺は新しいのがいいんだ!     俺のために作られた新しいプレートが!!』 ミア 「猫さん! わがまま言っちゃ駄目でしょ!?」 提督猫『だめだ! ならば貴様はわくわく気分で屋台に行って、     なけなしのお小遣いでたこ焼きを買った時の思い出を覚えているか!?     お好み焼きか焼きそばでもいーけど!     わくわく気分でちょーだいって言ったのに、     はいよぅ……ってめんどくさそうに出されたたこ焼きは、     すっかり冷めた出来合いもの!!     あんなものにお子のわくわく気分と小遣いが見合うものか!!     出来たてをよこせ! 私は出来たてがいいんだ!』 彰  「おぉおお解るぜ猫! 俺も同じ気持ちだ!     あの切なさは経験者しか理解できねぇ!!     よし! 俺も出来たてがいい! 出来たてをよこせ!!」 男  「…………困った客が来たなぁああ……」  男はとても悲しそうだったとさ。 ───……。  キチキチキチ…… 提督猫『こ、これが噂に聞く井上カブレラビートルか〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!』 彰  「どおれ今日は大暴れしてやるとするか〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」 ミア 「彰くんねちっこい……」 彰  「なんで俺だけに言うんだ!?」 カイ 「あはは……はぁ」  そんなわけで技師の小屋から少し離れた草原。  切り立った崖の傍にあった自然溢れる場所に、それは居た。  なるほど、霊鶴虫っていうだけあって、顔が鶴みたいに尖ってる。  てゆゥかこの尖った先で果実の中の果汁や、木の樹液をすするらしい。  動きは鈍重。  しかし体は滅茶苦茶硬いようで、爪を立ててみても……ウオッ!? 傷ひとつつかねー! 彰  「うおおなんだこの虫すげぇ硬ぇ!!」 カイ 「……? そうなんですか?     じゃあちょっと失礼して……《ゴキンッ!》いたっ!? あたたたたたっ!!」 ミア 「うわ……デコピンで普通鳴らないような音が……」  創造の精霊サマのデコピンでもビクともせず、何事もなかったようにギチギチと動く虫。  アレだね、カタチはまんまカンタロスっぽい。モンハンの。  大きさは大人の足の爪先から踵までくらい。結構デカいです。  色は……なんだか一匹一匹違ったりする。  吸う樹液や果汁によって色が変わるらしく、好きな色を取ってくるといい、と言われました。押忍。 提督猫『俺緑もーらいっ!』 彰  「断然黒ッ!!」 提督猫『このエロスが!!』 彰  「黒ってだけでエロスなのか!?」 ミア 「わ、わたしはピンクかなぁ」 提督猫『いや。貴様にはこの毒々しい紫と赤を混ぜたような色の井上カブレラを』 ミア 「その呼び方やめよう!? なんかすっごく嫌だよぅっ!!」 カイ 『しかもなんだかフラフラじゃないですかそのカブレライトビートル!』 提督猫『う、うむ……きっとそこにあった毒キノコから吸ってしまったんだろう。     毒のプレート……世界初かもしれねーぜ!?』 ミア 「全力でいやだよ!」 カイ 『ぼ、僕は白って決めてましたから……!』 猫&彰『OHホワイティン!!《ポッ》』 カイ 『なんでそこで頬を赤らめるんですか!?』  いえ別に深い意味など。  でもそうか、ならばボカァ……この毒のカブレラを取る!!  常識から逸脱してみせてこその愉快な人生! 猫だけど!  ならばそこを進むが原ソウル! 迷惑部もう解散したけど!  それでも僕の中で永遠に生き続けるのさ……僕の中の原中は永遠に不滅だ!  一度は解散した迷惑部……だが、忘れぬ誰かが僕の中に居てくれるのなら、解散させる必要など僕の中限定でなかったのさ……多分。  だからもう一度。  もうファイクミーしちゃった後だけど、改めて。  廃れたものでも楽しもう! 何千年前のことだって構やしねー!  忘れられても楽しもう! 俺が覚えていて、我が内なる意思も覚えているのなら大丈夫!  何故ならそれが原ソウル! 常識だけでは語れない! 提督猫『うむ! なんかすっきりだよ僕! つーわけで僕この毒カブレラでいくね!?     で、確か依頼は背甲の採取だったから……剥がすんだよね、これ』 カイ 『いきなり生殺与奪は辛いなぁ……』 提督猫『おお、あなたひどい人!     つまり背甲を剥いだ上に死なせないという生き地獄を味わわせるのですね!?』 彰  「す……《ごくり……》すげぇ……!」 ミア 「カイくん……いつからそんな外道に……!」 カイ 『えぇえっ!? ちょっと辛いって言っただけでどうしてこんな状況に!?』  カイくんはやさしいなぁ。  え? 僕はどうするかって? そりゃあ剥ぎますよ。外道ですもの。 提督猫『ペリーコロ!』 霊鶴虫『《ベリャア!!》ミギィイイーーーーーーッ!!!』  響く絶叫! したたる緑色の鮮血! あ、違った。毒に侵されてるせいでなんか紫だ。  ペリーコロって掛け声は、“ペリペリゆっくり剥ぐよりも一思いに剥いでコロがす”の略です。嘘です。  だがそこにすかさず軟膏を塗る! この博光、外道ではあるが時には仏の心も─── 霊鶴虫『ゴギャアアーーーーーーーーッ!!!』 提督猫『あれ?』  だがどうしたことだろう。  軟膏を塗った途端に響く絶叫。  そして鼻腔をくすぐるツンとしたこの刺激的な香りは─── 提督猫『ややっ!? しまったこれ軟膏じゃなくてワサビだった!』 全員 『どうしたら間違えんの!?』  ワサビッ! そう、ワサビだったッッ!  つーかなんで俺こんなもん持ってるの!?  あれ!? 咄嗟に霊章から取り出したものだから、内容はむしろ意思任せになるんだけど……あ、あれ? 殊戸瀬さん? なんでブフォォって吹き出してるの? ねぇなんで!? ねぇちょっ……殊戸瀬ぇええええっ!! てめぇええええええええっ!!! 提督猫『人がたまに善意をひけらかすとろくなことしないよこの子ったら!!』 彰  「お、おいおい……なんかヤバイ雰囲気になってきたぞ……!?」 カイ 『あの……虫に……囲まれてますけど……』 ミア 「どどど、どうなってるんだろうね、これ……」 提督猫『む? むー……“調べる”』  手に持っている霊鶴虫の背甲に対して調べるを発動。  すると詳細が出てきて、  ◆霊鶴虫の背甲───れいかくちゅうのはいこう  アルマデルに広く生息する甲虫類の背中の甲殻。  吸い上げた樹液や果汁が長い月日をかけて結晶化したものと云われていて、  長く生きた虫であればあるほど価値の高い甲殻が採れる。  しかし勘違いしてはいけないことがあり、吸った樹液や果汁にも価値が宛がわれ、  現在の最高価の背甲は、癒しとマナの大樹の樹液を吸った霊鶴虫のものと云われている。  亜種として生物の体液を吸い上げる虫も居て、  それらから稀に竜族の体液が結晶化した背甲が採れることも。  *備考:普段は温厚だが、背甲を剥がされるとそこから攻撃フェロモンが発生。      近くに虫が居る場合は、襲われないように離れてから剥ぐ必要がある。 ……。 提督猫『剥いでからこの説明見ても遅くない!?』  いろいろ不都合が多すぎた状況でした。 提督猫『ま、まあいいや! 僕もう背甲手に入れたから関係ないし!     わーい僕自由だーーーーーっ!!』  剥いだ背甲を手に、ワサビートルをスチャッと草むらに逃がしてとんずら!  すると脇目も振らずに我がもとへと突撃を開始する虫どもってオワァーーーッ!!? 提督猫『なんてことッ……! 攻撃は既におこなわれていたッ(・・・・・・・・・・・・・・)!!     剥いだ瞬間に出るというフェロモンッッ!     あれが既に我が身に染み付いてギャオアァアアーーーーーーーーーッ!!!』  逃げ道を塞がれた! ならば飛ぶ! ───否! 空も既にヤツの領域!!  馬鹿なッ! こんなっ! 周到すぎるッッ!!  あまりに速く、なんと巧妙……! この博光が後手に回るとは……ッ!! 彰  「よしカイ、毒けむりだま」 カイ 『え? え?』 彰  「創造だよ創造、それがあれば安全に剥げる」 カイ 『でも、勝手な都合で殺しちゃうのは……』 彰  「……カイよ。人は罪深き生き物だ。何かを殺して自分は生きる。     で、食物連鎖ってもんがあるよーに、     この世界で生きていくならモンスターの餌になることも覚悟しなきゃあならん。     つまりな、この世界で生きるってことは、何かを殺して自分は生きるってことだ。     ここで俺が虫を殺そうが、いつかは俺も巨大モンスターとかに殺される。     そんな可能性を飲み込んだ上で、俺はこの道をゆこう!     たとえ食われようとも報いだと胸を張ろう! だからはい、毒けむりだま」 カイ 『…………受け入れてるんだね? 本当に、その覚悟がある?』 彰  「なんか知らんけどね、あの猫見てたらいろいろと俺の中で変わってきた。     不思議だなーとは思うんだけど……俺、はっきり言ってさ、     約束の木のこと以外どうでもいいって思考の持ち主だったんだぞ?」 カイ 『……うん』 彰  「それがさ、あいつが喋りだした途端、いろいろと変わった。     中井出博光って名前を聞いてからだな、厳密に言やぁ。     なんか……違うってさ」 提督猫『フワハハハハハ俺を殺すか虫よ!     いいでしょう! この博光に襲い掛かったこと、存分に後悔なさい!     今から十数える間だけ、あなたがたに後悔する時間を差し上げます!     さあ、後悔なさ《ザクザクザクザク!!》ジェルァアアーーーーッ!!!! カイ 『………』 彰  「………」  ……ハッ!? 僕が虫達に襲われるところを、お子めらが見ている……!?  まさか……まさかこの僕の、多対一に優れた攻防に目を奪われて……!?(盛大に違う) 提督猫『よ、よろしい! ならば多対一の極意を教えて進ぜよう!     そう、それは簡単なこと! 相手が虫ならば───臭い息!!』 彰  「へ?」 カイ 『臭い……え?』  ブレイブポットスキルNo.08発動! 臭い息!! 提督猫 『ゲェハハハハハハ!! モルボルも裸足で逃げ出すこの臭い!      とくとご堪能あそばウボロシャァアアアアア!!!!』 彰&カイ『本人が吐いたァアーーーーーッ!!!』 提督猫 『オォエゴエッ!! ォェッ……! エェッ……フェッ……!! くさっ!      くっさぁああーーーーーーーっ!! ギャオォオオーーーーーッ!!!』  あまりの臭さに悶絶!!  久々に使ったけどこのスキル、どうして相も変わらず使用者まで臭いかねぇ!!  口から吐くからダイレクトに臭いよもう!!   ………………そして、目の前に広がる虫たちの屍。  …………。 提督猫『…………戦いって……残酷だね……《ザァア……ア……》』 ミア 「自分の口臭を戦いの所為にしだしたけど……無駄に風になびかされながら」 カイ 『彰、キミは彼の何を見て変わったんだい?』 彰  「ごめん……俺、いろいろ考え直していいかな……」  なんだか知らんうちにいろいろな葛藤があったことを後で知りました。  ともあれ剥ぎ取りタイムさ。 提督猫『しっかし臭いで絶命とは……』 彰  「お前もう息しない方が世界のためなんじゃないか……?」 提督猫『しっ……失礼な!! あれはスキルであって僕の口臭じゃないやい!』 彰  「でも猫の粗相って臭いっていうじゃん? 口臭も一緒なんじゃないか?」 提督猫『フッ……残念だったな。この博光にかかれば臭いなどどうとでもなるわ。     なにせ───薬用ホワイトニング愛用者だからなッ!!』《どーーーん!!》 彰  「な、なにぃーーーーーーっ!!? ………………か、関係ねぇ!!」 提督猫『でしょ? じゃあさっさと剥ぎ取って小屋もどろうぜー』 彰  「おー」  シャキィンッゾシュッ……サクリッ……シャクッ、ゾシュッ……テコテトンッ♪ 彰  「ってそうじゃねぇだろ! どうして今の流れでそんな終わりになるんだよ!     おかしいだろ! なんかもう普通に剥ぎ取りやってたよ!     音がないから月奏力でモンハンチックな効果音出してたよ!     なにやってんだよ俺!」 提督猫『おおっ!? 甲虫の紅玉っての採れたぞ!?』 彰  「マジでか!? うおおおおレアアイテムゥウウウッ!!」 提督猫(チョロイ……) ミア (わぁ、チョロイ……) カイ (チョロイなぁ……)  と、まあそんなことがありまして。  他の彼の来世のチョロさに微笑みながら、剥ぐものも剥いだことだしと久しぶりにみんなに会いに行きました。  何処へって? もちろん霊章の中さ。  そこで思う存分懐かしみ、思う存分遊びました。広大なるフェルダール全てを使ったフェルダールかくれんぼとかで。  けどまあそうこうしている内に、外の方では三人がリザードマンに襲われまして。  彰が全力で戦っても勝てなかったことに驚きつつ、とりあえずは逃走に成功。 彰  「ぶっはっ……は、はっ……! な、なんだありゃ……! 強さが異常だぞ……!」 提督猫『アルマデルでリザードマンっつったら、剣術の達人一族だぞ?     遥か昔、晦一等兵もリザードマンと戦うことで成長したものさ』 彰  「うへぇっ……!? それがなんでこんな場所に……!」 提督猫『多分攻撃フェロモンに誘われてきたんじゃないかなぁ……』 三人 『あ゙』  剥ぎ取りまくったもんね。  そんなわけでまずは素材を男に渡し、僕らはちと最寄の町か村へとレッツゴー。  何故って、バトルの最中に彰とギャルドの服が破けたから。  俺が創ってもよかったんだけど、やっぱり防具は買うか拾うか素材から生産しないとね! 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