───あむらすたーにっき───
【ケース04:マール=ローレルアムラスター/終わらないお祭り】  ……サワサワサワサワ……チ、チチ……チュンチュン…… マール『……主よ。今日も糧に手を伸ばせたことに感謝を。     この糧を口に、私は未来の糧を育むことを誓います』  朝露こぼれる猫の里。  博光さんの中……厳密に言えば武具宝殿内の広き猫の里で手を合わせる。  ドリアード様がユグドラシルに戻られた今、全ては完全に繋がって、猫の里に存在する浮遊要塞エーテルアロワノンの“芯木”がユグドラシルになっています。  そんな大樹を前に皆さんと食事を摂る日々が続きます。  意思とはいえ、武具や“ヒロライン”に宿るわたしたちです。  基本、食事を摂らなければ精神を保っていられないのは、どうやらこの場に居る皆さんの影響らしいです。  けれどこの猫の里のネコット農場には食材も豊富。  ジハードさんとグレイドラゴンさんがいくら食べても、まだまだ蓄えがあります。  それはもちろんこの空間の基盤が然の属性で構築されているからでして─── ドリアード『……マール? 祈ることは大事ですけれど、       わたしを見ながら“主よ”と唱えるのは間違っていますよ』 彰利   『ありゃ? そーなん? アタイもなんだかやっちまったんスけど』 藍田   『いやいや、実際こうして食えてるからこそ意識体保ってられるんだし』 紗弥香  『感謝ですよね』 閏璃   『ありがたやありがたや……』  閏璃さんがそうした途端、みなさんもありがたやと両手を合わせて拝みます。  もちろん私もですが、ドリアードさんはぴしゃりと言います。 ドリアード『いけませんよ。確かにわたしは然の精霊ですが、       この世界に糧を齎しているのは、わたしではなく博光さんなんですから』 彰利   『ありゃ? そーなん?       じゃけんども結局マナが無けりゃ“提督”ってば人間なんだから───』 みさお  『……あ、いえ、違います。確かに根本ではそうかもしれませんけど、       そもそもわたしたちがこうして猫の里で生きていられるのは、       提督さんがわたしたちの武具と思いとを受け取ってくれたからです』 ルナ   『むー……悔しいけどそうかも。記憶と経験も本体から奪ってくれたから、       その間に起こったこともぜ〜〜んぶ解るし』 閏璃   『弦月よ……ラーメン、微妙だったなぁ……』 彰利   『エエッ!? ラーメンなんぞ食いに行ったん!?       緊張感ねーにも程があるっしょ!』 閏璃   『あ、そっか。弦月と晦の記憶と経験は吸収出来てないんだっけ。       ちなみに食いに行こうって言ったのは貴様だ』 彰利   『マジすか!?』  今日も話題に出るのは博光さんのことです。  皆さんは本当に博光さんのことが好きなようで、一日に博光さんの話題が出ない日なんてありません。  “ヒロライン”の基盤を飲み込んでくれたお陰で、猫の里だけだった世界も大分広がりました。  そのまま“フェルダール”になったこの世界は、皆さんの娯楽の里です。  「思わぬ暇潰しの完成じゃーい」とツンツン頭の人が叫んでいたのはいい思い出です。  さて……そんな彼の現在の力のこと。  覇王ジョブの恩恵として、様々なジョブ能力を使えるようになったのも、よく話題に出ています。  魔竜化スキルで竜になれたりしないのかーとか、妖力解放で妖魔になれたりしないのかなど。  博光さんはむしろ、“混成ジョブ”の能力、ライダー変身にこそかなりわくわくしていたそうで、この世界にやってきて実際にライダーに変身した時は、泣いて喜んでいました。  子供の頃から変身ヒーローに憧れていたんだとか。  ……いえ、違いますね。“変身ヒーロー”ではなく、“変身”に憧れていたんでしょう。  ブリュンヒルデさんの能力で変わるのではなく、言葉と構えでビシィと変わるのが好きなんだそうです。  “変身”に使う言で、変身後の姿が変わるとかで───博光さんは断固として、   “今、僕のヴィンテージが芳醇の時を迎える! 変身!”  という言葉以外を口にすることはありませんでした。  結局変身したのは仮面ライダーGという姿で、皆さんにカッケェー!と叫ばれていました。  ちなみに言うと、この世界に降りた時に限り、博光さんは猫の姿から元の姿に戻れるみたいです。  なにせこの世界は博光さんの中にあるフェルダール。  彼と融合した世界なんですから、ある程度彼の思うようにことが運ぶのも当然です。  あ、でも竜化などはさすがに出来ませんでした。  魔竜になったのは武具のほうで、それはそれで博光さんは感激していました。  “世界”の担い手が居なくなって早百と数十年。  様々な武具と思いとが融合して、“武器が一万を越えること”が条件としてあった倍化能力が全ての武具に齎され、融合した武具の全てが宝貝と化したいつかの日。  博光さんの武具能力に“世界創造”や“鎌解”といった様々な能力が追加されました。  ただ、武具の全てを離せば凡人なところは、今も変わりません。  ちなみに世界創造の名前は“万象担う灼碧の法鍵”と書いて、“スピリッツオブラインゲート”と読むんだそうです。  この世界をそのまま表舞台へと出すことで、わたしたちまでもが戦闘に参加できる、とんでもない能力です。  世界創造じゃなくても、内側にある全てと力を共有することをラインゲートとも言いますが、滅多にしないです。  これは神界側の能力として記録されていて、時々「僕は新世界の人となる!」とか叫んでます。  すかさず「神じゃねーのかよ!」と叫ばれてましたが、「神になんぞ興味はねー! だって僕人間だもん!」と叫び返していました。 彰利 『ほいじゃあ誰に感謝すりゃえーんかね』 ナギー『それはもちろんヒロミツなのじゃ』 シード『当然だな。偉大なる父上に感謝を』  鎌解という鎌能力では、太古の英雄王アハツィオン=イルザークを実体で召喚。  その一撃は龍すらと言わず、天地さえも乖離させんとします。  名前は“極上天然英雄王”。命名はツンツン頭さんです。  ジークフリードさんの中に封入された様々な鎌の恩恵で、鎌が変異する能力ですので、べつに博光さんが強くなったりとかは……はい、全然ないです。 「そんなもんが使えるならオリジンバトルの時に使え」と言った、ツンツンさんの言葉ももっともなのですが……「記憶と経験吸収したから使えるようになったんだもん!」と叫んでいた博光さんは、それはもうとても悔しそうにしていました。  ……そうですね、そう都合よく素晴らしい能力開花ができれば、苦労しませんもんね。  さて、わたしもここでいろいろ学びましたが、神界、冥界の能力とくれば次は天界。  天界側の能力では、どうしてか主神オーディンを召喚します。  グングニル、バルムンク、カリユガンホースの三つと記憶と経験が合わさることで、主神召喚にまで至ったらしいのです。  以前召喚してみせてくれた途端に、その主神さま自身に襲われた事実には、この場に居る皆さんが爆笑しました。  どうやらグングニルなどを盗まれたことを、未だに根に持っていたようです。  さらには法術やカオスコントロールが使えるようになったらしく、早速使って見たカオスコントロールではあっさりカオスに意識を乗っ取られそうになって、「すげぇ! 提督すげぇ!」と何故か感心される中で、このカオスをさらに内側から洗脳。  逆にカオスの意識を乗っ取って、自分の力にしちゃってました……。  次に空界能力……魔術魔法、召喚や式といった、様々な能力も使用可能になっています。  竜化スキルなどで武具が竜変身するのが可能と言いましたが、「魔竜化で武具が竜に変身するなら、ブリュンヒルデとして纏った僕が竜になることも出来る筈だぜ?」と言った博光さんが全身甲冑の武装錬金を纏って竜化スキルを発動。  光天龍になってみた彼が、人の姿からは離れすぎた形についていけず、龍の甲冑の中でゴキボキと骨を砕かれ叫んでいたのはいい思い出です。  はい、竜化スキルでは、フェルダールに存在していた竜族ならどんな形でも再現できるそうです。  カイザードラゴンやスカルドラゴン、バハムートや……サウザンドドラゴンまで。  骨を砕かれて軟体生物と化した博光さんは、回復するや「じゃあもう遊戯王チックに召喚するからいいよ!」と言って、デュエルディスクを創造。  ランダムにドローされるカードの中には、皆さんのカードや魔法効果カードといった様々なカードがありまして、それをディスクにセットすることで、わたし達がスタンド能力(灼闇スキル)として召喚されます。  これは遊戯王初期のルールを用いられていまして、どんなに強いカードでも引けばすぐにフィールドに出せます。当然ですけど。  ……こういうことがすぐに説明できるわたしも、もう相当に毒されてますけど。  それでえっと……地界能力ですが、地界能力の全ては順応に回されているため、能力的な閃きはないんだそうです。  博光さんに言わせれば、「他の世界の能力が使えるだけでも十分だ」だそうですけど。  あ、もちろん武具能力としてであって、博光さん個人ではなにも出来ないんだそうで……聞いているとちょっと可哀想になったのは秘密です。 悠介 『……悔しいなー。俺と彰利は多分、     ルドラの世界に行ってた所為で記憶と経験奪えてなかったみたいだしな』 彰利 『そーなのよねェ〜〜〜〜ィエ。ねぇドリ姉さん? なんとかして吸収できない?』  ジークフリードさんのことは……武器説明がとんでもなく長ったらしいことになっていたので省きます。  記憶と経験と思いの吸収に伴い、それこそ“天地空間”全ての能力を封入した剣。  冥空神天刃って部分を気に入っていたのは記憶に新しいです。  神魔天空刃でもよかったなーとも言っていました。  ともあれ相反する力が融合しているために、武具が常に“反発反動力”を生み出している状態でして……それらが“常にためる”の能力で蓄積されて、そういったものの恩恵もあって、この世界やわたしたちは散らずに意思を保っていられています。 ドリアード『それは……はい、出来るでしょう……。       幸いにして、転生体や再結晶体である彰さんやカイさんが傍に居ますから。       彼らの中にある“記憶の欠片”から、       それらを吸収することは確かに可能です』 彰利   『おおっ!』 悠介   『た、頼むドリアード! やってくれ!』 ドリアード『ですが……それをするということは、       お二人の経験の記憶さえも複製するということ。       ご理解いただけているのでしょうか……あなたがたはそれぞれ、       古の神々と初代皇竜王の力を解放してみせた経験があるのですよ。       そしてそれら……神々と皇竜の力の残照は、武具には存在しなかった。       つまり───』  とにかく、元がただの人間だとは思えないほどに、真実力量的には魔王な博光さんです。  銃も撃てますしARMも搭載していますし早撃ちも出来ますし、フェルダールの精霊全ても封入されていますから、マナさえ収束させれば魔法も魔術も式もなんでもありです。  ネクロマンサースキルとして、アンデッドマスターになることも出来ますし───そうそう、イレブンブラックチルドレンを召喚して、その11体に灼闇の影を通して11人分の意思を浮上させた時は驚きました。  「こんなこと普通出来るもんなん!?」と驚愕してみせたツンツンさんに、「“普通”なぞ、破壊するためにあるんですよ?」と笑ってみせた博光さんです。  魔法などはあくまで武具スキルやジョブスキルの恩恵であって、武具が無くなればたちまちなにも出来ない博光さん。  不便だぁねと言ったツンツンさんに、“俺らしくていいじゃない”と一言だけ返しました。  そんな彼がその後にやったことといえば、“滅びの母の力”……つまりグラーフ化により、自由に空を飛べるようになったことに喜びつつ、ツンツンさんを見下ろして「おばけだぞーーーっ!」と輝く笑顔で言って、直後に殊戸瀬さんに大砲で撃ち落とされてました。 悠介   『つまり……カイの中には、古の神々を解放させた“俺”の記憶と神々の力が』 彰利   『彰ン中にはレヴァルグリードを解放させたアタイの記憶と皇竜王の力が、       それぞれ残っとるやも……と?』 ドリアード『その通りです。       彰利さんは力を使い果たして、たしかに黒の使用が不可能になりました。       ですが黒の条件ならば覇王のスキルに含まれています。       足りないのは皇竜王の……僅かであろうとも存在する力と解放の記憶。       古の神々の力は、むしろ博光さんがルドラ側の精霊に殺されかけたあの日、       スピリットオブノートの錫杖を手に入れたことで片鱗を得ています。       そこに超越者スキルの“黄昏”という世界創造の条件が加わり、       さらに悠介…………さん、の古の神々解放の記憶が加われば───』 彰利   『ワーオ! 提督ったら神になれンじゃん!』 悠介   『……とんでもないとんでもないって思っていたが……そこまで至ったか。       さすが提督だな……凡人のくせに巻き込まれることがいちいちとんでもない』 ドリアード『誰の所為だと思っているのですか……』  聖王武具や魔王武具、ヒロラインを駆けたみなさんの武具と記憶と経験、さらには伝説の英雄王アハツィオン=イルザークの武具まで融合させたソレを、今や皆さんは“伝説そのものだ”と仰ってます。わたしもそう思いますし。  あ……追加して言いますと、今度こそ本当に、この武具は博光さん専用武具になってしまいました。  なぜかといいますと、アハツィオンさまが認めたのが博光さんだけだからという、ひどく単純だけどその通りだと思える理由からです。  博光さん以外の方が持つことをとことん許さないんです。アハツィオンさまが。  他の方の意思は説得されれば頷きもするんですが、アハツィオンさまだけは決して頷きません。 彰利   『え? じゃあなに? そうなれば古の神々の力に加えて、       レヴァルグリード召喚とアハツィオン召喚とかが出来ンの!?       すげぇ! さながらオシリスの天空竜とオベリスクの巨神兵じゃん!』 悠介   『神々の力はラーの翼神竜か』 彰利   『や、むしろラーはシャモンでえーんじゃない?       イルムナルラ状態のシャモンで。       提督だったらむしろ、竜族亜人モンスター全部融合させて、       それくらいの翼神竜作りそうだよ。俺のターン!とか言って』 悠介   『…………やりそうだなぁ……』 ドリアード『しっ……しみじみ頷かないでくださいっ』 彰利   『ィヤッハッハ! ドリ姉さんも提督ンこと好きになってから、       随分とまあ冷静じゃあいられなくなったよね?』 ドリアード『《ポポポ……》……大事な…………人、ですから……』 彰利   『《ズキュゥウウン!》うわめっちゃ可愛い! 抱き締めていいですか!?』 夜華   『……《スラリ》』 彰利   『アイヤァなんでもナイヨ!? 僕なんも言ってないもん!       だから無言で刀抜くのやめよ!? 怖ェエぜ!?』 悠介   『しかしそうか……そうなればノートでも勝てるかどうか……』 彰利   『いや勝てねぇっしょ……。ルドラでも勝てるかどうか……』 悠介   『………』 彰利   『………人間ってすげぇね……』 ルナ   『そうね……』 悠介   『ほんとそう……』  そうした話がたびたび話題に出ますが───実のところ、彰さんが言うにはその“人間”についてはあまりいい話は聞きません。  この百と数十年で地界……元々博光さんたちが住んでいた世界は捻じ曲がってしまったそうです。人間が天下の世界として、なにもかもを手中に納めようとする者たちが蔓延っているとか。  世界はあまりにくだらなく、みんながみんな誇りとか気高さとかを見せびらかしている。  結局、誰が守ろうが守るまいが、いつかは滅ぶのが“人間の世界だ”と、そんな話を聞いたモミアゲさんやツンツンさんは言っていました。  “増えて減るだけの種族”。  増えた数だけ住む場所を探し、世界を削る存在として、人間様が住むんだからそれに世界が貢献するのは当然だとばかりに。  動物は全て餌と化し、ただ食べられるために育成される。  今じゃ地界に興味を示す外界の存在なんて居ないそうです。  それなりに地界との交流を持っていた天界の皆さんも、  「人間全てを否定するわけではないが、   今の地界ではもはや、良心を探ることさえ馬鹿らしい」  とまで言ったとか。  彰さんはあの性格ですから、辛うじて天界人に興味を持たれたらしく、そうして小さな交流を重ねた先に言われたのがそんな言葉だと聞きます。  産まれた瞬間にそこにあった“当然”を心の底まで受け取り、自分以外を下に見て、自分らより上があることを許さない。  そんな存在が、今の地界の在り方なのだとか。  一度……たった一度だけ、空界から地界へと行った亜人が居たと聞きます。  「人の全てに絶望するのは、そうではない人間に失礼だ」と言って。  そうやって信じてみた結果は…………彰さんが親から聞いたというお話ですが、彼が若い頃にUMAが見つかったそうです。  細い体、尖った耳、幻想でしかないおかしな術を使うとかで話題になって、問答無用で捕獲の話が進んで、少しの抵抗を見せるや銃器を以ってこれを捕獲。  麻酔銃で撃たれ、研究所に運ばれると、あとは実験の連続。  “ソレ”に興味を持つ人は増すばかりで、研究者がカメラや写真で写したものは、テレビ局やマスコミには高く売れたんだとか。(なんでしょうね、かめらやますこみって)  話の結末としては、「この場に自分が求める人間は居ない」と言って、魔法で自分を閉じ込める檻を破壊し、逃走を試みれば恐ろしい破壊生物だと銃器を持ち出しこれを殺害。  ただの来訪者の自由を勝手に奪っておいて、帰ろうとすれば危険と断じて殺したのです。  彰さんが調べた過去の新聞の記事においてそれは確かに掲載されていて、そこにはこう書かれていたそうです。  『恐ろしい破壊生物、見事に駆除!』  と。  それを聞いた皆さんの反応はといえば、  「まあしゃーないっしょ」という、とても軽いものでした。  「信じたほうにも責任はある」、「一方的に信頼を寄せられて幻滅されても困る」と、そう言っていました。  本当におかしな話です。  誰にだってどんな種族にだって、自分が一番優れているという概念はあります。  多種族の“悪いところ”ばかりを探ろうとする時点で、そんなことは解りきっているのですから。  それを勝手に信頼して、信頼していたものと違えば勝手に絶望するのは間違っている。  皆さんはそう言っていました。  確かにそうかもしれません。  けれど、じゃあ信じようとした亜人の気持ちはどこに行けばいいんでしょう。  そう訊いてみれば、「亜人全員で地界に乗り込んで滅ぼしてみれば?」とツンツン頭の人が言いました。  「味方を殺されれば殺し返すのが人間ってやつYO。   だったらそのやり方に則って、殺し返せばいい。   それなら文句を言われる筋合いはないねぇ。   ほィでもしそれに勝ったなら、   今度は人間を家畜にしてみせりゃあ少しは懲りるっしょ。   立場が逆転しただけっしょ? 研究されて、逃げようとしたら殺されるなら、   逆に研究してやって、逃げ出そうとすりゃ殺しゃあええよ。   モンスターの食料にするために人間牧場を作るもよし、   絶滅しない程度に、人間サマが言うみてーに“保護”してやりゃいいじゃん。   ウッハハハ、ほんと笑っちまわぁな。今まで家畜をそうやって見てた自分たちが、   ただ立場が逆転して家畜になるだけじゃん。   自分たちが家畜より強いから食料にしたんしょ?   そこに家畜の意思なんて関係ねーなら、   自分らに勝った亜人たちが、負けた相手をどうしようが勝手じゃない?   いっつも“人間には……未知の部分、可能性がある……!”とか言ってんなら、   一度隅々まで研究し尽くされりゃあええのよ。解りたかったことに近づくYO?」  なんて、笑って。  さすがに言いすぎでは、と言ってみましたが……他の皆さんも笑ってました。  皆さんは“ルドラ”が持っていた最果ての記憶を知る人たちです。  人間全部を否定しない代わりに、人間全部に期待することもやめたのでしょう。  それはどこの世界の人物、亜人、モンスターに対しても同じことで、守ることも救うことも良しとしない、自分の好きに生きようとする意思たちが彼等でした。 マール『あの……前にも訊きましたけど、本当に地界のことはどうでもいいんですか?』 彰利 『おやマルちゃん。またそのお話?     んもう、いくら提督がヒューメン出身だからって、いけませんぜ?』 悠介 『マール、地界のことはどうでもいい。     守ることをやめた俺達が、今さらどうこう言うことじゃないんだ。     第二次世界大戦終了から百年も経たない内に進化したのか退化したのか、     人口も増え続ける一方だ。     自然を食って、住む場所を求めるあまりに大地を削る種族。     その削った結果で死んだり全滅したりするのなんて、     むしろ人間らしい死に方じゃないか』 藍田 『ルドラたちと戦ったのが百と数十年前なら、     世界大戦終了からの“進化?”の速度を考えるに───     今頃大変なことになってんだろうなぁ……』 清水 『そうそうっ、同じ家に住みゃあいいのにわざわざ違う場所に家を建ててなぁ?     そんで地面削って道路増やしておいて、うるせーだの空気が汚いだの。     自業自得で騒ぐなっての。なぁ?』 殊戸瀬『一歩遅れれば自分たちもそうなっていたことを忘れないで』 清水 『《ぐさり》はうっ! ……お、押忍……忘れませんです』  ここに居る人たちは、人間の意思なのに同種族を持ち上げることを良しとしていません。  話したり出来るなら、むしろ自分たちと同じなのだと断じて、領域に土足で入りこんでからかうような人たちです。  本当に変わった人たちですよね……博光さんを筆頭に。 彰利 『まあそんなわけじゃきん、地界の都合がどうだろうとあたしにゃ関係ないねぇ。     鷲羽さんが樹雷の都合がどうだろうとあたしにゃ関係ないねぇと言ったみたいに』 悠介 『もちろん、亜人の都合もモンスターの都合もだ。     俺達はどっちにもつかない』 閏璃 『フフフ、当然よ。何故なら我等は───』 総員 『提督の! 味方だからだ!』《どーーーん!!》 マール『…………』  思わずぽかんとしてしまいます。  でも……そうですね。そうでした。  わたしたちは博光さんの味方であって、他の誰の味方でもありません。  そのことを、忘却の猫として生きる博光さんの中で誓い合ってきたのですから。 彰利 『あ。あと面白いことの味方』 悠介 『だな。それは譲れん』 遥一郎『晦も随分と変わったな……寝言は寝て言え魔人の本領はどうした』 悠介 『そよ風とともに地界かラスペランツァに置き去りにしてきたんじゃないか?』 藍田 『や、自分で言うなよそれ』 田辺 『まあ提督のお陰でこうして、     仲の悪いヤツの居ない世界で馬鹿やってられてるんだし、感謝感謝だよな』 彰利 『………………信じらんねぇよね……。     ほんの百数十年前まで、この世界の主ってばただのエロマニアだったんだぜ……』 総員 『…………信じられねぇよな……』  忘却の猫の生存期間も合わせれば、百ではききませんけどね……。  あの時代はとてもひどいものでした。  人間……地界も空界も関係なく、人間や意思あるものの全てに絶望を抱くような時代を、忘却の猫を通して味わうなんてことがわたしたちにもありました。  他人事としてではなく、同じく考え、言葉を話す者として、あの醜さはとても目に余って……わたしたちは次第に、種族差別のくだらなさを知りました。  だから、相手が神でも死神でも、人でも亜人でもモンスターでも差別はしません。  精霊でも神獣でも、相手がどれほど高貴な存在でも。 彰利 『もしこんな調子でYO? 提督がうんと過去に飛ぶようなことがあって、     古の神々とかレヴァちゃんやアハちゃんと対面することがあったら、     彼ったらどうすると思う?』 総員 『そりゃからかうだろ』  即答でした。 藍田 『やっぱあれだろ。猫の姿のままで歩み寄って、名前とか訊かれたら───』 総員 『ああ……クゥね……』  しみじみと即答されました。  理解されていることは、普通は喜ばしいことなんでしょうけど…………なんでしょうね。  素直によかったですねって言ってあげられない状況がここにあります。  ほら、ドリアードさんだって苦笑してます。 藍田 『力誇示して見下すよりも、力をからかいに有効利用するような人だしなぁ……』 彰利 『仮にも最果ての英雄が持つ“最強の黒”を滅ぼすような力YO?     その全てでからかいを成すって…………どれほど馬鹿なんだ我等が提督は……』 総員 『まあ、中井出だし』  これもまた即答です。  博光さんのことをよく知らなかった方たちも、博光さんが忘却の猫として生きる中で、様々なことを知りました。  ルドラの力で消されかけた記憶は、“この世界”に逃がすことで相当な事無きを得ます。  この世界は記憶干渉に影響されませんから、武具やヒロラインから集ったわたしたちという“ゲーム世界の意思”は、博光さんの記憶を一時的にこの世界へ引きずり込んで、ずっと機会を探っていました。  それはとてもとても長い時間でした。  博光さん……忘却の猫がきっかけを手にしないかぎり、猫としての記憶が博光さんの記憶を受け入れることを良しとしないため、忘却の猫があの写真を手にするまでの間、ずっとずぅっと、わたしたちは待たなければいけなかったんです。  もちろん、ルドラが死んだことにも機会への影響はありましたけど。  彼が死にゆくことで記憶干渉への影響が出たことに気づいたわたしたちは、ただひたすらにいつか訪れるであろう機会を待ち続けました。  ……そのきっかけが、博光さんが埋めた集合写真になるだなんて思いもしませんでしたが。  あの写真は、もう世界中どこを探しても博光さんが持っている一枚だけなんだそうです。  “写真を撮った”という歴史すら無かったことになったんですから、当然です。  “空界に埋めた”ことが幸いして、それが消えることはありませんでした。  わたしは皆さんとの記憶の共有で知っている程度なので、深いところまでは解りませんけど、そういうことらしいです。  「そーいや夏の記憶が無かったことになるなら、 アタイらが集まった事実自体が飛ぶんでない?」とはツンツンさんの言葉ですが、神父さん(精霊)の予想としましては、ルドラから貰った夢食いの腕輪もまた、アハツィオンさまの武具と同じく人の手には余るものだったのでは、という結論です。  様々な人が死に、地界技術では再構築など不可能なほどに潰れた民家や大地、さらには記憶吸収の影響をうけない“ルドラの世界”が近くにあったことも影響して、辛うじて“集まった”という事実だけが残ったのだろう、と。  ……そうして集まった事実だけが残っても、なにが出来たわけでもなかったわけですが。  ともかく、そんな“博光さんの記憶”と一緒にこの世界で待つことで、“彼を知らなかった皆さん”も、“彼をよく知る皆さん”になりました。  わたしも……その。  博光さんがあんな、え、ええええ、えっちな人だとは知らなかったわけですけど……。  でも、知れてよかったとも思います。  ドリアードさまは顔を真っ赤にして倒れたりもしていましたが、それでも……はい。好きになっちゃったなら、仕方ないんですよね。 彰利   『まあ……なんでショ? こここそ、アタイたちが求めてた“天地空間”?       そんな風に締めるのはどうデショ』 閏璃   『いやしかし待て。天地空間と言うには、あまりに神気が足りん』 遥一郎  『そもそも意識体でしかない俺達は、もう神だの死神だのじゃないからな』 シド   『うむ。しかしこの世界にはその全てが溢れておるわ。       確かにちと神気は足りぬがな』 セト   『他は随分と……満ち足りてる感じだ』 バハムート『応。神というのはそれほど稀少か、人間よ』 彰利   『オウヨ、稀少も稀少。だからね?       その分を古の神々の力で埋めようと思うの』 ルナ   『でも古の神々〜って、“相手にならない者”なんでしょ?       神気とかって手に入るの?』 みさお  『あ、それは大丈夫かと思います。       相手にならない者ではありますが、そもそもが神ですから。       神である以上、神気は存在する筈です』 彰利   『つーかこれだけ家系のモンが居て、       神気が足りないってどういうことなの……』 粉雪   『わたしとしては、       彰利がわたしたちとの関係を運命破壊したことに異議申し立てしたいけど』 彰利   『またその話!? いーでしょそれもう!       アタイだって中井出ン中の記憶を見るまで忘れてたんじゃけぇのぉ!』  博光さんの記憶を見る=全てを知るということです。  記録者……クロリストと自称していた彼は真実、欠けることのない夏の記憶を教えてくれました。  それはここに居る全ての人が驚くことから呆れることまで、それはもう様々です。  もちろん、博光さんに猫の里へ連れてこられた少年たちや姫さまたちも、自分を殺したのはここに居る皆さんじゃないことは記憶で知っていまして、そこらへんはここ三千年の間で和解したわけですけど。 悠介 『しかしまあ、その話だけじゃないけど……     俺達ってなんだかんだで提督にいろいろなもの押し付けてたんだなぁ……』 彰利 『本人滅茶苦茶楽しんどったけどね』 藍田 『しょーがないだろ、     押し付けられたものでもネタにして人をからかうような人だぞ?』 閏璃 『基本、楽しければなんでもいいってヤツだからなぁ……』 遥一郎『そんなヤツが世界をどーにか出来るほどの力を持ってるって……信じられるか?』 彰利 『信じられるけど、べつにどーにもならんよ? だって中井出だもん』 悠介 『世界をどーにかする? はっはっは、ないない、だって中井出だし』 藍田 『そそっ、どこまで行っても根っ子がどうしようもなく人間だから、     あいつにそんな度胸ないって。中井出だし』 麻衣香『戦ってる時はそれなりに格好いいかな〜って思うのに、     危なくなるとすぐに“ヒィ”とか“ギャアー”とか叫ぶし』 ナギー『悪巧みをすると、すぐにグオフォフォフォと笑うから解りやすいのじゃ』 彰利 『……そうと解ってるのに、からかわれる前に止められねぇんだよね……』 悠介 『いや……からかわれるって解ってても、     どうからかわれるかが解らないから困ってるんだろ』 藍田 『平気で予想の上の後ろの下の前を行く人だからなぁ……』 総員 『……ああ……中井出だなぁ……』  再びのしみじみです。 彰利 『ほいで? その我らが提督は今なにやっとるん?』 みさお『え? 子供を強請ってますけど』 総員 『なにやってんだあんたぁああーーーっ!!』  虚空に浮かぶ映像を見てみれば、気に入っているのでしょうか、稀黒装レヴァルグリードの能力で九つの黒翼を背に生やし、宙に浮きながら「オラオラ子供ォ、さっさと出さンかいクラッ!」と叫んでいる博光さん。  どうやら子供が手に持ったソフトクリームが目当てのようで、しきりに奪おうとしています。 彰利 『す、すげぇ! 幼子にも容赦なしだ!』 丘野 『すげぇや! さっすが天下の中井出さんだ!』 藍田 『すげぇ!』 岡田 『提督すげぇ!』 飯田 『提督すげぇ外道!』 蒲田 『外道!』 閏璃 『あっ!コワモテの親らしきヤツが来た!』 鷹志 『途端に逃げ腰になってるぞ!』 藍田 『すげぇ!』 岡田 『提督すげぇ!』 飯田 『提督すげぇ小せぇ!』 蒲田 『小せぇ!』  のちにボコボコにされる博光さんの図が展開されました。  なのに誰も博光さんの心配をしていないんだから面白いです。  どうにも博光さんは手に入れた能力を攻撃に向ける気は大して無いらしく、からかいや楽しむためにのみ使って、ああして殴られてもアオアー!と叫ぶだけで、特に反撃はしません。  人は人らしく、猫は猫らしく。  空を飛ぶ猫ってなんでしょうね……とも思いますが、それも楽しむためのネタならどうだっていいんだ、というのが博光さんの言葉です。 彰利 『ふぅ〜〜〜、やっぱ提督は我らを飽きさせねぇぜ……』 悠介 『やっぱり提督の傍は飽きないなぁ……これがなきゃ原中って感じがしない』 来流美『ボコられてる人(猫)を見て言うことがそれってどうなのよ……』 悠介 『大丈夫だ。なにせ中井出だ』 来流美『や、自信満々に言っても、それ理由になってないわよモミアゲさん』 田辺 『おおっ! どさくさまぎれで子供からソフトクリーム奪ったぞ!』 飯田 『おお! すかさず逃走した! ───途端に馬車に轢かれた!』 彰利 『い、いやよく見ろ! 無事だ! ───ソフトクリームが!!』 総員 『あんたすげぇよ! 我が身よりソフトクリームか!』  今日も博光さんは皆さんに慕われています。  そんな話を聞いているだけで、自分のことのように嬉しくなるわたしやミクさんはおかしいのでしょうか。  ドリアードさまはいつでもハラハラと心配していらっしゃるようですけど。 彰利 『アー……でもまだ人間は怖いままか。奪おうとして近づくのはいいみてーだけど、     近づかれるとすげぇビクビクしてる』 閏璃 『……普通に話し掛けてもビビクゥッ!て驚く人だから、     あんまり違和感とか感じないんだが』 悠介 『あの強さで小心者って、ほんとつくづく中井出だよな……。     普通、人間が力なんてものを持ったら誇示するか見下すかのどっちかだろうに』 彰利 『楽しくねーことはしねーデショ。     それに“自分の力じゃない”って割り切っとるから、     それをアテにするのも嫌っておるし』 閏璃 『からかい以外でか』 総員 『からかい以外でだ』  皆さん揃って物凄い理解の速さでした。  と、そんな時です。  マキィーーーン♪ 中井出「ヤーハーみんなー! 見て見てこれ! アイス強奪しちゃった!」  博光さんが、子供の無邪気なままな笑顔でこの世界に舞い降りました。  買ってきたと言わずに正直に強奪しちゃったと言う時点で、もうさすがとしか言い様がありません。  ちなみにさっきも説明した通り、この世界に降りれば人の姿のままです。 中井出「いや〜〜〜ぁああ……丁度喉渇いててさ。     そしたら目の前をアイス持った金持ちのガキが通るじゃない?     奪わなきゃお前……ウソだろ?」 遥一郎『ウソでもいいからさっさと返してこい! 子供泣いてるだろうが!』 中井出「泣いてるのがなんだい! 僕の方が痛かったやい!     あのハゲオヤジ、キャットである僕を思いきり殴りやがったんだ!     ゲエフェフェフェ、その代償がソフトクリーム一個なら、     安いもんだろうぜルエフェフェフェフェ……!!」 閏璃 『ていうかあれだけ殴られちゃあ提督さんの方が損してるだろ』 中井出「あれ? ……や、やぁ、でもほら、冷たくて美味しくて喉潤うよ? って甘ァ!     なにこのソフトクリーム! 滅茶苦茶甘い!」 藍田 『甘すぎるソフトって、逆に喉渇くんだよな……』 丘野 『ござるなぁ……』 中井出「………」 総員 『………』  とても悲しそうな顔でしボチャア!! 彰利 『ぐぼあぁっ!?』 中井出「あ、にいちゃんかんにん」  何を思ったのか、博光さんは手に持った甘くて仕方の無い喉カラカラソフトを、ツンツンさんを穿とうとさえする勢いで顔面目掛けて突き出しました。 彰利 『つンめたっ……!     つーかここまで故意にやっとってからに堪忍もねぇだろ提督てめぇ!』 中井出「冷てぇだろ! 喉潤うだろ!?     僕のやったこと無駄じゃないよね!? 潤えよてめぇ!」 彰利 『どういう文句じゃいそりゃあっ!     潤えよてめぇなんて言われたの初めてだよ俺!』 中井出「じゃあ世界初で潤えてめぇ! “覇極流千峰塵”(はきょくりゅうちほうじん)
!!」  ブババババババッ!! 彰利 『《ボチャチャチャチャチャ!!》ギャアーーーーーーーーーーーーッ!!!』 藍田 『ゲェエエーーーッ!!     も、物凄い速さでソフトクリームの乱突を繰り出しているーーーっ!!』 悠介 『……そのわりに、目しか狙ってないな』 彰利 『うおお目がベタベタするぅううっ!!     コノヤラッ……眼球狙って喉潤すって無茶だろコナラァ!!』 中井出「え? 知らないの? 目と鼻って繋がってるんだよ?     鼻と喉も繋がってるでしょ? ほら、ちゃんと潤うって」 彰利 『その前に俺の上顎道に蟻がたかるっしょ!』 中井出「…………じょう?」 彰利 『あ、いや……イイッス……素直なままのキミでいて……』 中井出「え? あ、ああ、じょーがくどーねじょーがくどー!     知ってるよ!? 知ってるもん!     ほらあれでしょ!? サムライスピリッツの花諷院骸羅がなにかの技出した時、     こう……ねっ!? じょーがくどー!とか叫んでたアレだよね!?」 彰利 『………』 中井出「あの……なんで無言で肩に手ェ乗っけて首振るの?     な……なに? なんなのそのどこまでもやさしい目!     し、知ってるよ!? 知ってるんだよ!? ほんとだよ!?」 彰利 『ん……解っとる、解っとるよ……。知ってるね、うん知ってる……えらいねぇ』 藍田 『ラリってんじゃねーよターコ!』 岡田 『バーカ半ベソフケヅラ!』 中井出「フいてねー! 事実だ! なんで信じねーんだてめーら!!」 彰利 『つーか人が穏やかに済ませようとしてんのになにやってんのてめーらぁっ!!』 中井出「遊んでるんだよみんなと。名前は“俺イジメ”! ……………お前……」 彰利 『べつにアタイなんにもやってねぇっしょ!?     なに自分で決めた遊びの名前を俺がつけたみたいに絶望顔で見てんの!?』  今日もいい天気です。  博光さんが来た途端、一気に賑やかになる皆さんは、やっぱり博光さんのことが好きなんだなぁと思いました。 中井出「あ、ところでこれから僕、ランクライセンスを貰いに行くんだけどさ。     あれって名前とか訊かれたりしたっけ?     それともランクだけ表示されるんだっけ?」 リヴァ『私が最後に手を付けた形式が変わっていないなら、     名前も刻まれるようになっている筈だ。盗難防止用にと作り変えたものだ』 中井出「………」 リヴァ『……そ、そう構えるな。     あの時のことは、もう反省しても足りないくらいに反省し尽くした。     本能ではお前が悪くないことくらい解っていた筈なのにな……。     冷静じゃあなかった……許してほしい』 中井出「だめだ」《どーーーん!!》 リヴァ『うぐっ……す、すまん……』 カルナ『お、おいおい……謝ってるんだし』 中井出「キシャーーーーーッ!!」 カルナ『うおわっ!? お、おいっ!?』 中井出「近寄るでね! こンの嫁ドロボーが!!     貴様ら空界人の所為で俺が……俺がどれだけの地獄を見たか解るか!?     腹を抉られてバラバラにされて!     首を切り取られてそこから下を目の前で磨り潰されて!     食べ物も与えられないまま、ただ痛みだけを与えられて!     逃げ出そうとすればもっともっと地獄を見た!     謝ったからなんだよ! 謝れば全部許せってか!?     あの日の皆殺し事件も謝れば許されたってのか!?」 カルナ『っ……そ、それ、は……っ───すまんっ……!     すまっ……すまん……! すまない……!』  本気……はい。  本気で怒っていました。  目に涙を浮かべ、忘却の猫の頃のことを思い出してか、震える体を必死になって震えないように押さえて─── 中井出「だから許す」《どーーん!!》 総員 『なにぃいいいいーーーーーーーっ!!!?』  ───次の瞬間にはケロリとした顔で許しました。 悠介 『許っ……おまっ……えぇええっ!!?』 彰利 『ええの!? キミッ……えぇっ!? 許すって……えぇえええっ!!?』 中井出「この博光、起きたことは起きたことと受け取る修羅よ。     過ぎたことをネチネチと言って如何する。それにさ、もうとっくに時効だろ?     昔を思って怒るよりもさ、今を思って笑おーぜ?     俺はもう……お前達が悪いって思ってくれてるだけで十分だからさ」 リヴァ『っ……!』 カルナ『……お前っ……! ……くっ……すまない《バゴォッ!!》ウボォッ!!?』 中井出「しつけーーーっ!! もういいって言ってんだろーーがーーーーーっ!!!」 彰利 『ゲゲェーーーッ!!?     やっ……しつ、しつこいからって普通ここで殴るかね!?』 中井出「なに言ってんだよラーメンマン、普通なんて常識はブチ壊すためにあるんだよ?」 総員 (いや……それでもこういう場面じゃ殴らんだろオイ……)  どこまでいっても常識で測れない人です。  あんな目にあったのに、それを“ただの起きた過去のこと”として笑って済ませちゃいました……。 ヤムベリング『ひろちーって本当に面白いのね……。        まさかこんなに簡単に許されるだなんて思わなかったわ』 イセリア  『……ねぇ、本当にそれでいいの?        なにかしてほしいこととかあったら……』 中井出   「《ゴシャーン♪》ルゲレフェフェフェフェ……!!        聞いた……確かに聞いたぜ……! なにかしてほしいこと……?        それを貴様が叶えてくれると……?」 イセリア  『……こっちのババアが』 ヤムベリング『えぇっ!? ちょっと!!』 イセリア  『だって見たでしょ今! 目、光ったよ!? 地界人なのに光ったよ!?』 中井出   「では空界人どもよ! 社長命令だ! 社長じゃねーけど!        ……これより我らとともに力を合わせ───“今”を楽しめ!!」 空界人   『………………へ?』  右目だけ武具宝殿から引き出した能力、“時眼視・冥”で真っ赤に変異させて言う博光さん。  社長命令ってなんでしょうね。  ともかく言葉を放たれた空界人の皆さんは唖然とするだけです。 リオナ『まっ……待て! お前はそれでいいのか!?     あそこまでひどい仕打ちをした空界人を前にそんな《ベパァン!》はぶぅぃ!?』 彰利 『ビンタァーーーッ!!?』 中井出「くどいぞ仁赦! 仕打ちに関しては既に許すと言った筈だ!     そしてこの博光は相手が女だろうが恋人だろうが、     容赦せんでビンタ出来る原中が提督よグオッフォフォ……!!     あんまりしつこいと次は往復でいくから、覚えといてね?」 リオナ『わ、わ……解った……!』 中井出「うむ! では他のみんなもいいよね? 僕、ただ楽しいのが好きなだけだからさ、     そんな許す許さねーで悩むよりも楽しみましょう。     僕が楽しむことでみんなも楽しめる、     みんなが楽しめば僕も楽しめる……そんな関係をここからみんなで始めるのさ!」 リオナ『い、いや……わたしは今、     その許す許さないで《ベパァンパァンパァン!!》ぱっぴぷっぺぽぉっ!?』 中井出「しつけーーーっ! いいから黙って楽しめてめぇ! じゃないと非道いぞ!!」 リオナ『べっほ……! 今のはわたしが悪いわけじゃないだろうっ!』 中井出「よっしゃーーーっ!     じゃあまた超広大フェルダール隠れん坊するべーーーっ!」 総員 『ハワァアーーーーーッ!!!』 リオナ『聞けぇえーーーーっ!!!』  フェルダール隠れん坊……それは、この広大なフェルダール全てを使って、隠れた仲間を探す究極の隠れん坊です。  見つかった人は鬼と協力して隠れた人を探すことが義務づけられています。  一度隠れたならば、そこから動くことは禁じられていまして、隠れたポイントから2メートル以上動いてしまうと、その時点でその人はハンティング対象となってしまいます。  ハンティング対象となった人には攻撃が許可されまして、された方は文句を言えません。  前回のフェルダール隠れん坊……といってもつい先ほどですが、前回では卑劣にも隠れた場所から移動をしたゼットさんが、博光さんのハイペリオンミサイルで塵と化したのはいい思い出です。  皆さんは武具に宿った意思ですから、かつて自分が持っていた武具に宿っていた能力全ては使えるわけですけど、それでも記憶と経験の全てを吸収して、レベルが100万を越えた博光さんのハイペリオンの威力は尋常ではなく───ゼットさんは皆さんが見ている中で、マクロスの柿崎さんの最後が如く消滅しました。 中井出「ではよいか皆の者!」 岡田 『あ、ちょっと待ってほしいでありますサー!』 中井出「ぬうう! 何事か岡田二等兵!」 岡田 『イェッサァ!     その前にちょっとゴドーとシロンに会いに行きたいのでありますが、     構わないでありましょうかサー!!』 中井出「うむ! では一緒にアルビノを連れていくがよいわ!」 レイル『あ……じゃあ俺はジャミルに会いに!     そーだよな、フェルダール復活してるんだから、居るんだよな!』 中井出「うむ! では誰かに会いに行きたい者は行くがよい! その方が探しやすいわ!     そして移動しようものならゲフェフェフェフェ……!!」 岡田 『怖ぇえよ! や、やめろよ!? ハイペリオンだけはやめろよ!?』 中井出「うむ! だがここからだとちと遠いな……移動にはボナパルドさんを使うといい。     これが忍の波笛だ。拭けば立派なアフロさんがリヤカー引いてやってくるぞ」 岡田 『謝謝』  嫌がっていたわりに、あっさり笑顔で受け取る彼が印象的でした。 豆村  『あ…………お、俺も……研究所のやつらが復活してるなら……』 刹那  『俺も……』 柾樹  『ん……“人として生きてる姿”、見に行きたい……』 中井出 「うむ! 貴様らの記憶が確かならば、海を越える必要があったな。      ジハードよ! GO!」 ジハード『よっしゃ任せとけ!』 中井出 「ミクはどうする? ジャポンに行ってもう一人のキミに会ってくる?」 ミク  『それなんですけど……ジャポンの人にはミクソングが合わなかったらしくて、      今物凄く落ち込んでいるそうで……名前を“弱音ハク”に変えて、      飲んだくれてるそうなんですけど……』 中井出 「……ヴォオカロイドにもいろいろあるんだなぁ……って、アルコール効くの?」 ミク  『リンカーで電波受信してみたところ、植え込みにぶちまけてましたけど』 中井出 「……ちゃんと酔えるんだ……すげぇやノヴァルシオ技術……」  この世界が融合を果たしたことで、フェルダールはかつての緑と人々を蘇らせていました。  町も城も村も洞窟もありますし、ジュノーンもルドラではないだけで存在しています。  そんな世界で、皆さんは冒険をしながら暇を潰しているわけです。  なにせ博光さんと融合したことで、通常モンスターすら滅茶苦茶に強い世界。  皆さんは力を合わせて、またレベルアップに励んでいたりします。  そして誰かがレベルアップすると博光さんも強くなって、敵も自然と強くなる。  それでもやっぱりさすがはゲーム世界。  敵の強さは初期値とはそう変わらず、楽な相手はきちんと楽なままとなっています。  博光さんもむしろ“のんびり冒険したい”と言っているくらい、楽しい世界です。  なにせ博光さんの冒険といったら、武具強化のために全身全霊を込めたために、ほぼ毎日が限界ブッチギリバトルの連続。  のんびりと旅をしたことなんて数えるほどしかなかったのではと思えるほどです。  しかも後半は魔王となったために、心休まる時もなかったはずです。  そんな博光さんですから、のんびりと旅をしたいという言葉も納得なわけでして。 悠介 『……じゃあ俺はボ・タにでも……』 彰利 『エルメテウスっしょ? アタイも行っていい?』 悠介 『お前は獣人王に挨拶にでも行っとけ』 遥一郎『じゃあ俺は浮遊大陸……かな』 閏璃 『おおそうだ、時の回廊に行ってみよう』 鷹志 『あ、いいなそれ』 みさお『わたしは悠黄奈さんに会いにノースノーランドの方まで』 丘野 『《マキィーン♪》いや。違うぞみさおちゃん』 藍田 『それを言うならワンチャイ様の神殿へ、だ!』 麻衣香『あ、そういえばまだあるのかな、あの雪像』 夏子 『壊されてたら可哀想だし、また作りに行こっか』 殊戸瀬『……一緒に提督の全裸像も』 中井出「作らなくていいよ!! なんでそう意地でもエロに繋げようとするの!?     べつに全裸にする必要ないよね!?     いいったら! 僕これから海岸洞窟側の猫の里に行くんだから、     僕の知らないところでそんな珍態さらさせないでよ!!」 総員 『あんた鬼だろうが!!』 中井出「えぇっ!? じゃんけんもしてないのに僕が鬼なの!?」  そんなわけで、今日も架空の蒼空での騒ぎが始まります。  この場に居たほぼ全てが参加したのですが、ただドリアード様だけは記憶の吸収をする準備を始めたために、参加は出来ませんでした。 中井出「じゃあ100数えたら探し始めるからなー!」 殊戸瀬『…………《ゴソリ》』 中井出「殊戸瀬!? なに人の後ろで怪しく笑いながら包丁取り出してるの!?     やめてよ! 探す前にそんなので背中刺されたら、     いくら不死身でも死ぬほど痛いよ!     ……え? 大丈夫、上手くやる? ───なにを!?     ちょっ……誰か! 誰かぁああっ!     殊戸瀬なんとかしてぇええ! 怖くて目ぇ瞑れないぃいいーーーーっ!!」  外の方、ほっぽりっぱなしですけど、博光さんと楽しむため、博光さんのためにわたしたちは居るのですから、細かいことは言いっこなしです。 彰利 『あ、ところで提督さんや?     ランクライセンスに名前がどーとか言っとったけど、偽名でも使うん?     なんて名前?』 中井出「第六天魔王! 降臨せん!!」 彰利 『織田信長かよ!! そりゃ確かにキミ、魔王だったけど!     偽名にしたってもっとねーの!? 実在の人物とかじゃなくてさ!』 中井出「え? え? だ、だめなの? 僕結構楽しみにしてたのに……」 彰利 『織田の末裔が呆れるでしょーが!     フィギュアスケートやってた織田さんが戦国無双とかやってたら、     絶対にご先祖さますげぇ!って思うか、オイオイ……って思うかじゃぜ!?』 中井出「大丈夫、“第六天”が苗字で“魔王”が名前にするから」 彰利 『俺ゃあお前に惚れたぜ……』 閏璃 『なんて完璧なセンスだ……』 中井出「ちなみにもう20秒は軽く過ぎてるぜ?」 彰利 『なんですって!? 謀ったなブッチャー!』 中井出「なんだとブッチャーこの野郎!」 彰利 『ブッチャーはてめぇだろうがこのブッチャー!』 中井出「うるせぇブッチャー!」 彰利 『なんだとブッチャー!』 中井出「大体貴様が…………ぬぅ!? なにがおかしい!」 彰利 『クォックォックォッ……! まんまと罠にハマりおってからに……!』 中井出「え? まんま? べつにご飯食べてないけど」 彰利 『や、そのマンマじゃなくてね? ……ほら、ごらん?     もはや猫の里には誰もおりません。     さっきまで隣りに居た閏璃も、アタイの考えを知るや、走っていきおったわ。     つまり……既に貴様は隠れん坊の鬼として、後手に回っているのよ!』 中井出「なっ……なんだってーーーーっ!!? てめぇ汚ぇぞ!!」 彰利 『フブレカカカカカッカッカッカッカ……!! 汚いとは最高の褒め言葉よ……!」 中井出「この汚物が!!」 彰利 『その汚ぇじゃねぇよ!!』  さ、それじゃあ……お祭りの続きを始めましょう。  いつまでも続くお祭りを、この世界の皆さんと一緒に。 Next Menu Back