───のんびりいきましょう───
【ケース11:提督猫/外の道】  ゴンゴギャガギャゴギャジャギャジョギャゴギィンッ!!! 彰   「うぅううおおおおおおおおおおおおっ!!!」 サハギン『ギョギョキヒエェエエーーーーーーッ!!!』  ……戻ってみると、彰はまだサハギンと戦っておりました。  しかし先ほどまでとは大きく変わったところがあり、それは……戦いに対して真っ直ぐになっていると……そんなところでした。  先ほどまでの退け腰じゃない……あれは相手を敵として見ている目だッッ!!  ていうかラグの斬撃を身に受けても平気なサハギンってどうなの?  気になったのでラグに向けて調べるを発動。  すると……  長剣:皇竜剣ラグナロク───こうりゅうけんらぐなろく  攻撃力:1374  斬れ味ゲージ ──────..            龍属性:80  かつてモミアゲが美麗な男が振るっていた剣。  空界の様々な生物素材と、フェルダールの様々な生物素材とが組み合わさった武器。  だが、精霊の生成にその力の大半を使ってしまい、今ではほぼナマクラの剣。  モンハンで例えるなら斬れ味はほぼレッドゲージである。  そのくせ素材が今では手に入らないものばかりなため、無駄にレア度が高い。  ハンタータイプ:剣士  レア度10 会心率:−100%  スロット:−−−  ……との詳細が。  おお、何故か無駄にモンハンチック。しっかり斬れ味ゲージまで……うぅわひでっ!  なんだいこの斬れ味の悪さ! 攻撃力なんて“意味無し”じゃないか!  龍属性も80ぽっちだし……ゲッ! 会心率がマイナス100%!?  すげぇ……確実に攻撃力マイナスじゃないか……!  そりゃあ苦戦するわけだね。  まずはラグナロクを鍛えるところから始めたほうがよさそうだちょー。 提督猫『フルウノングン』  ガガォンッ! ドチュドチュゥンッ!! サハギン『ギャーーーーッ!!』 彰   「! 隙ありゃぁああっ!!」  サハギンの足を、佐知子さんの銃フルウノングンで撃ち抜く。  その途端、彰がラグナロクを構え、頭から股までを一気に斬り裂く! ───なんてことが出来るはずもなく、ゴパキャアと何かを砕く音がして、サハギンが絶命した。  ……わあ、斬れもしない。頭蓋骨破壊だよ……いや、それはそれでスゲーけどさ。 彰  「ふっは……! は、はぁっ、はぁ…………はぁ〜〜ぁぁぁあ……!」  倒し、塵になるのを見送ると、彰は深い溜め息を吐いた。  きっと彼のバックパックにはサハギン素材が盛り込まれていることでしょう。  そんな彼に「やあ」と声をかけ、にこやかに参上する……こんにちは、中井出博光です。 彰  「猫か……今サハギンの足撃ったの、お前?」 提督猫『お、俺見たんだ……! ミア助が銃を構えて、サハギンを撃つのを!』 ミア 「なんでわたしがやったみたいなことになってるの!?     銃なんて撃ってないよわたし!」 提督猫『ハイ冗談です』  しかしまあアレです。  予想通りといいますか、比べるなってのは当然なんすけど……フツーだ。  見方が変わったなぁ俺も……鍛錬続けで生きてきたわけじゃないんだから、彰の動きが鈍いと思うのもおかしなことじゃないとはいえ……これはいかん。  自分の周りが強いやつらばっかりだったからなのかなぁ、彰の動きがゆったりに見えて仕方もなし。こんな見方はとても嫌なのですが。  ……思い出しなさい博光よ。恋姫世界でも、僕はのんびりと生きてきたじゃないか。  それを今更、彰利の転生体だからって速くて当然とか思うのは無礼ってもんだ。  だから〜……えーと。 提督猫『なぁ彰よ。貴様、強くなりたい?』 彰  「強く? やー……よく解んね。     そりゃ負けるのは悔しいけどさ、現実味がないっつーか。     べつに強くなっても、帰った先に勝ちたい相手が居るわけでもねーし……     冒険はロマンだっていっても、どーにもなぁ」 提督猫『ふむ』  結論。彰利と彰では当然、生きた歴史に違いがありすぎる。  それは時間の長さだったり、経験だったり……主観が入るが、なにより原中を生きていない。常識破壊を常としたあの頃の騒がしさを知らんのなら、このどこかノリが良さそうで一歩足りない性格も解るような解らんような。  ……本人にそれを言ったりはしないけどね。だって彰は彰だもの。 提督猫『まあ、そうだわいなぁ。んじゃあこの博光が目的を差し上げましょう。     そう、それはとってもシンプル。そして残酷な目的』 彰  「残酷って……」 ラグ 『………』  二人の困惑にウムスと頷き、そういうお年頃なのか僕をヒョイと抱き上げるギャルドに抱かれるまま、説明を続ける。  え? 逃げないのか? フフフ、明命に抱きつかれ慣れたこの博光、もはや抱き上げられることなど……ごめんなさいやっぱり人相手だと震えます。 提督猫『今の僕、精霊融合を目的とした行動を開始したところなのさ。     精霊の聖堂に行って、聖域からマナをかっさらう。そんな行動。     僕の中の精霊さんと武具の中の精霊さんとを……一緒か?     まあともかく、物理的に融合させるってことを思いつきまして。     武具融合させたんなら融合できてないのかーって話は、     誤解のないように言っておきたいが、武器と武器を融合させるのと、     意思を具現化させてから意思同士を融合させるのとはまた違うのです。     武具融合させたなら同じだーってのなら、     猛者どもの意思が個々として存在するわけないもの』 彰  「や、いちいちワケ解らんからもっと噛み砕け」 提督猫『つまり、貴様の行動が地界に帰ることならば、     僕の行動は精霊の聖堂を巡ること〜って、それだけのこと。     で、その過程で思いついたことなんだけどね?     貴様ら……外道の仲間入り、せん?』  …………。  時が止まった。 彰  「げどっ……へ!? 外道!? なに!?」 提督猫『外道。つまり、自分の目的のためにモンスターをぶちコロがしてランクあげて、     自分の目的のために城に乗り込んで情報を入手、     どんな手段を取ろうとも家に帰る修羅であれ! ね? 外道』 ラグ 『そ、それはいくらなんでも』 彰  「よし乗った!」 ラグ 『えぇええーーーーーーーーっ!!!?』  あっさり乗る彰くんに乾杯。  利口に生きようがどうしようが、己の目的のために動くのが人であると知りなさい。 提督猫『そんなわけでまずは外道の第一歩!     ちとモミアゲラボ行って、地界に戻れるかどうか調べてみるよ』 彰  「出来んのかよ!!」 提督猫『ククク、本気で外道になったこの博光はスゲェんだぜ?     なにせ順序とかどうでもよくなった時点で、近道を選んでしまうからな』  そんなわけでモミアゲ権限を発動! ルナ子さんがどうしているかなど知ったこっちゃねー! って感じで虚空に出現した扉を開けると、ラボ内へ。 提督猫『おじゃましますよっと……おおう』  なんと、ルナ子さんは寝ておった。  そしてなんか空気淀んでる!  どれだけの時間HIKIKOMOってたんだこの死神さん! 提督猫『まあそんなことよりえ〜〜〜と、あったあった』  レバーを発見。  まず入ってきた扉を閉めて、このレバーの位置を変えることで、地界の過去や未来へと飛べたはず。なのでまずは僕の知る現代へと……カキンッと。 提督猫『レッツハバナーーウ!』  レバーをいじくった上で扉を開く! すると─── 彰  「んあ? どした?」 ミア 「猫さん?」  …………おや? 空界に居るはずの彰ボーイやギャルドが迎えてくれた。  あれ? さっきと同じ場所? 地界は? 提督猫『………』  も、もう一度扉を閉めて、レバー移動させて───ナーーーウ!! 彰  「猫?」 ミア 「どうかしたの?」 提督猫『………』  あらやだ……空間移動……出来ない……? ───……。  全ては無駄に終わる。  結構な昔の話だ。どっかの馬鹿がそんなことをほざいた。  自分がどれだけ立派に生きようと、死ねば全てが無くなるのだと。  自分が誰かに残してやれたと思うものの全てはその実、残ったものが伝えるものであり、自分が伝えるものでは決して無いと。  なんで今さらそんなことを思い出したのか、自分に問うてみたい。  答え? 相変わらず見つかりもしないさ。それが世の中だ。  そんなわけで、これはゆゆしき事態であり、現在はベイベェ───じゃなくてヤベェと口にしております……猫でも心はヒューメン、中井出博光です。 提督猫『………』  眠りこけるルナっちの傍。  様々な次元を繋ぐレバーがそこにあり、それを調節することで地界にだろうが空界にだろうが別の時間軸だろうが、何処にでも行けるのがこの場所の特徴だった。  だが、どれだけいじくろうとも何処にも繋がらない。  ただ次元の歪みが増すばかりで、もはやここから地界に飛ぶことは不可能と言えた。 カイ 『どうなっているんでしょう。ここから移動出来るはずではなかったんですか?』 提督猫『……歪みだね、こりゃ。     何処も介さずに狭間転移をした所為で、空間そのものに歪みが出来ておるわ』 カイ 『歪み、ですか?』 提督猫『うむ。ブラックノートン先生の話だから、詳しくは解らんが。     カイくん、ミア助に聞いてみ?     ここ最近で正式なルートを無視して空界に飛ぶか地界に飛ぶかした者はおらんか』 彰  「…………《だらだらだら……》」 ミア 「…………《だらだらだら……》」 提督猫『ややっ!? どうしたね!? スゲー汗だよ!?』 ミア 「や、やー……あの。それってもしかすると……彰くんのことかも……」 提督猫『なんですって!?』  なんでも…………うむ。  話によると、彰ボーイはいろいろあってミア助に召喚され、空界に降り立ったらしい。まずこれが一回目のルート無視転移。  で、次。そんな彰ボーイを地界へと無理矢理転移させたのが二回目のルート無視転移。  おまけにそん次。転移水晶だかなんだか知らんが、彰がそれを使って再び空界に飛んだのが三回目のルート無視転移。  なんでも時空間転移ってのは実験段階中に破棄された能力らしく、だからこそ現存する書物が少ないらしい。そらそうだ、時空に歪みを作っちまうような能力、空間に住む者の誰が好き好んで使うもんですかい。だからリヴァイアさんも実験に実験を重ね、空間に優しい歪みねぇ転移法を開発したに違いねぇ。  それとゆーのも、ラボの力を使って空間を支えながら、空間の一部を軽く開く方法ってところでしょう。  でもそんな方法を知らずに、別の方法を使ったたわけがここに一名。 提督猫『はぁ……。ふぅ〜〜〜……馬鹿』 ミア 「だ、だって……」  よーするにそんな能力の所為で、現在の空間ってものは歪みきっておると。  こんな状態で飛び込めば、時空の波に飲まれて……最悪、俺みたいに妙なところへと飛ばされる可能性があると。  俺達がまだまだ現役でギャースカ遊び回ってた頃は、こんな未来まで飛ぶことなどなかったものなぁ……。あれ? じゃあつまりあれ? この時空の歪みの所為で、僕ってば恋姫世界に飛ばされた?  普通なら飛ぶ筈がない、外史って世界に……?  ……時空間ってのは統一性がないし、行く場所のポイントを彰利みたいに事前に知ってないと、何処に跳ぶかも解らない。しかしまあ……アレですよ。こんな話聞いたことありません? “猫”ってものは時間の概念に囚われないって。  あの時、変異した俺が猫だったこと、時空間に投げ出されたこと、いろいろな偶然が重なって、我が猫な体はこの未来の時空の乱れに触れてしまい、有り得ん飛ばされ方をしてしまったのではないか、とか……。  うむ、まあそこんところはどうでもいいや。確かに飛んじまったって事実があるなら、それが全てさ。  で、問題なのは、この歪みってのをどうするかだ。  きちんと歪みねぇ状態に戻してやらんと、空間にあるこの世界……いずれ飲まれるぞ? 提督猫『……ミアンドギャルド、彰、世界救う気、ある?』 彰  「くだらない世界なんて滅びればいいけどね。     人に訊く前に、猫はどうなんだ?」 提督猫『……くだらんね。世界なんて救いたくもない。     ただ、せっかくの緑溢るる世界が次元に飲まれて消えるのは……我慢ならねーワ。     一応仲間が守った世界ではあるしねぇ……』 彰  「……なんつーか、絶対に仲間のことで後悔し続けそうね、お前」 提督猫『タコだねぇ彰っちは』 彰  「タコ!? え、タッ……!?」  猫の口で器用にクスックスッと笑って、晦ラボから適当なもんをかっぱらって外に出る。  そんな僕を慌てて追って、扉から出てくる彰に笑いながら言ってやる。 提督猫『そいつらのことで後悔したり苦労したり出来るから、仲間なんじゃないの』 彰  「───……」  次に出る言葉なぞありんせん。  仲間ってのは俺にとっての家族だ。  家族を裏切ったりしないし、家族だから、仲間だから手を、肩を組んで笑える。  俺ゃあ永劫、そんな馬鹿でいいのさ。  誰のためでもない、我が芯を貫くために我は生きるのです。 提督猫『? どしたの? 行くよー?』 彰  「えっ……お、おうっ! って、何処にだよっ」 提督猫『まずランク上げて城に入って転移書を手に入れるんさ。     手順無視でも飛べるなら、まずそれにすがる。     それもダメそうなら、別の手段を考えるまでよ。     安心おし、貴様らが原因で時空バランスが崩れていると知ったところで、     この博光がとる行動などひとつよ。     俺は俺が、この空界に消えてほしくないというただそれだけの理由で、     時空ってものをきっちり直してくれよう、ぞ! 出来たらの話だけど』 彰  「猫……てめぇってやつは……」 ミア 「…………〜〜〜っ」 提督猫『ひょっ!? な、なんだねキミは急に近寄って《がばしっ!》ギョアーーーッ!』  なんでか嬉しげなギャルドが、パタパタと走ってきてこの博光を抱き上げる。  しかもぎうーと抱き締めてきてアオアー!! 提督猫『《メキメキメキメキ……!》グアッ……! ゴゲッ……!     アベシャリッ……ゲリッ……!!』 ミア 「へやっ!? わわわごめんなさい!」 提督猫『大事ない《シャキィーーン!!》』 ミア 「口から血が出てるよ!?」 提督猫『だったら抱き締めすぎんじゃねーーーっ!!     死ぬかと思ったわ! 不老不死だけど!』  猫に対して思い切り抱擁とかもうほんと危ないよ! 何考えてるのこのお子は!  まあなにはともあれ、この異変についてはきっちりとカタァつけねばならん。  そんで……面倒だけどブラックじゃなくて、普通のノートン先生の協力も必要になりそうだ。ほんと面倒だけど。  転移書でなんとかなりゃあいいんだけどねぇ……そうならんだろうね、この流れだと。 ───……。  ガカァーーーーン♪ 彰  「最弱にして最強の刀! 見掛け倒しの刀!」  ……で、ランクを上げるべく旅路に戻る中、食事でもと食材を探して帰ってきた僕。  その視線の先には、刀になったラグを手にホキャーと騒ぐ彰くん。 提督猫『いきなりどしたのキミ』 彰  「へ? おお猫よ。いやーほら、こいつメチャ弱いじゃん?     だからもうラグナロクとか名前負けなのはやめようって話になってさ。     ならば、鍛えれば強くなるであろうことを願い、この名を冠したのさ。     ……正直、弱さの幅が余計に広がった気もしないでもないけど」 提督猫『見掛け倒しの刀って……シレンの見掛け倒しの盾みたいなもん?』 彰  「似たようなもんかも。強そうなのにメチャ弱いし」  ……そうらしい。  つーか今さらだけど形状変化とか出来たのか……や、そりゃ出来るか。  人の形から剣になるって時点で異常なんだから、その過程で形を変えるくらいねぇ……。 カタナ『いいですね、このカタチ! なんだか自分的にしっくりきます!』 提督猫『……お前って意思レベルで日本好きだったのな……』 カタナ『え? なにがです?』  ラグ……もとい、カタナが首を傾げてそうな声を出す。 彰  「つーかさ、最強最弱謳ってみても弱いままなんだよどうしようこいつ」 提督猫『どうしようって?』 彰  「へ? や、どうしようっていったらどうしようだろ?     斬れないんだぞこれ。武器として機能してないだろ」  おやまあおかしなことをおっしゃる。  と、僕はハスーとテュポーン先生がごとく鼻息を放って、貸してみなさいと言う。  渡されたカタナは……なんつーか重かった。 提督猫『よいかね彰くん。武器ってのは敵を殺すものだ。     そこに斬れるか否かなんて関係ないの。解る?     僕は貴様に格好つけるなと言った……だが俺が間違っていたと今こそ言おう!』 彰  「ほんと平気で前言撤回するなお前!」 提督猫『や、僕も反省したのです。だから僕じゃなくて俺として謝ります。     格好つけるのも楽しむことの一種だものねぇ……ほんとすまなかった。     僕もね、最強最弱を謳う武器固有秘奥義とかもってるから、     その頃のことをちと思い出しました。     無駄に歳取ると、気づかないうちに悟ってていかん。僕、こんな自分は嫌いです。     そんなわけで全力で楽しみなさい。     僕がキミに教えられる人生の歩み方……それはただそれだけッツ!』 彰  「なんでここで柴田亜美風」 提督猫『ままま、いいからいいから。でね?     武器であるからには相手を殺せるものであるべきです。     そしてこれは武器であるからして───』  と、説明も中途半端なところで、なんとゴリラみたいな豚が登場!  なんてタイミングのいいモンスター……なのになにこれ! きもいよ!? 彰  「おぉおお丁度いい!     猫! そのカタナの強さをとくと見せ付けてやるのだ!」 提督猫『なんかすげぇパラガス臭がする言い回しだねそれ!』  しかし構える!  キチリとカタナを構え、ゴリファンゴ(今命名)目掛けて跳躍!!  キッとこちらを睨むゴリファンゴへとズァボルギャア!! ……振り下ろし、断滅した。 提督猫『はい、これで抹殺完了〜!』 彰  「ゲゲェエーーーーーッ!!!」 ミア 「つ、つつつつ潰しちゃったぁああーーーーーーっ!!?」  サクリサクサクと剥ぎ取りを実行する中、二人は大いに叫んでおったとさ……。 彰  「そ、それって刀としてどうなんだ!?」 提督猫『ナマクラだね。     ただ、様々な希少石が使われてるのは確かだから、鈍器としては超一流だよ?     それを無理に刀や剣として扱うなど……未熟千番!     よいか! 鈍器ってのは一定以上硬ければ、それ以上は攻撃力が上がらぬものよ!     人間殺すなら石で十分! なら石のハンマーで十分!     竜を殺すなら竜に叩き付けても壊れない鉱石であれば十分!     世界一硬いものを用意したところで、     その一定以上が用意されている時点で、鈍器としての攻撃力なぞ変わらん!     ならばこのカタナは最強の鈍器であろう!     なにを臆する必要があるか! 最強の斬れぬカタナ……大いに結構!』  鈍器であるなら最高の刀にもなりませう!  なのでなるほど最強刀! でも……ウーム。 提督猫『この博光が地界から去ることになる前から、     いろいろとおかしいと感じることはあったのだ。     彰ボーイ、一つ訊きたいが……今の世の漫画等って、どんな感じで敵を倒す?』 彰  「へ? あー……こうさ、鋭利な刃物で優雅に華麗にスパスパって感じかな」 提督猫『やっぱりスカ。戦いが優雅かぁ……いいなぁそういうの』 彰  「お? もしかして優雅バトルに憧れてたりする?     美しく敵を仕留めるとか、無駄の無い動きとか」 提督猫『いえべつに』 彰  「お前ほんとワガママな」 提督猫『心は人間ですもの』 ミア 「じゃあ猫さんはどんな戦い方が好きなの?」  どんな? ふむ。そりゃもちろん─── 提督猫『ワイルドが大好きです。ワイルドの意味、実はよく知ってないけど。     無駄の無い動きで敵を仕留めるくらいなら、     俺は無駄に洗練された無駄の無い無駄な動きで仕留めたい。     鋭利な刃物で瞬殺とか……いや、無理無理。     死に物狂いで戦うっていうのはね、少年よ……     そんな生易しいもんじゃあ断じてねぇ』  ───うむ、やっぱり大雑把に戦う、でしょう。  装備が大双剣&巨大長剣だしね。 提督猫『ん、よーするにさ、優雅になんか戦えません。人間ですし、戦いは怖いですもの。     そんな、体がどうしても緊張してしまう状況で優雅? 無理無理。     他の誰もが出来ようとも、僕には無理だと断言しましょう。だって怖いもの』 彰  「そんなもんかねぇ……」 提督猫『うむ、そんなもんだ。     ま、結局さ、武器は敵を殺すもんで、優雅に殺す余裕も我らにはない。     人間っぽく生きようぜ!? 武器で敵殺して自分を豊かに!     結局はそんなところなんだと思います』 彰  「猫なのに人間っぽくって言われてもなぁ……」 提督猫『失礼な! 人間だよ僕!     そして敵を殺して自分を豊かには、もはや人のロマンシングサガ!     一度は仲間が救ったこの世界、その自然が愛しい! でもそれだけ。     何処で誰が死のうと僕には関係無いよ? 自分の豊かが得られれば。     救うのは人間が住み易い場所じゃない……この自然だけよ』 ミア 「普通に外道さんなんだね、猫さん……」 提督猫『え……? い、いまさら何を……?』 ミア 「本気で人格疑うような言い方されるとは思ってもみなかったよ!?」  で、また話ばっかで旅路が進まん僕ら。  ゴリファンゴさんの経験値もプレートには大した効果は無いらしく、仕方もなしに歩く。  うむ、とりあえずカタナは彰に返して、僕らは僕らの道をゆく。 彰  「ま、あれだな。確かに優雅に戦うとかは無茶があるわ。     月姫の志貴くんや空の境界の式さんみたいにこう……なぁ?     物の死に易い線が見えるならまだしもさ。     あんな綺麗にヒュラヒュラ動いてスパスパってのはなぁ……」 提督猫『あれすげーよね……僕もあんな戦い方して……みたくないな。     僕もっとワイルドなのがいい。斬るんじゃなくて斬り潰すみたいな』 彰  「実は俺もだ。ベルセルクのガッツみたいな戦い方のほうが好みだったりする。     最近のバトル漫画やバトルアニメっていったら、綺麗に殺すのばっかでさぁ。     一瞬で動いた! と思ったら擦れ違っててもう終わってました〜みたいな」 提督猫『驚いてばっかりで“戦い”って意識からは離れてる気がするってやつか』 彰  「お、そうそう、それそれ」 ミア 「………」 提督猫『ややっ!? ミア助が話についていけずにおろおろしている!』 ミア 「そういうこと本人の前で言わなくてもいいよぅ!!」 提督猫『大丈夫! 俺なら出来る!!』 ミア 「やってほしくないんだってば!」  ビリーズブートキャンプ名物を責任持って自分に向けた言葉として言ってみた。  ……見事に怒られた。 提督猫『まあな、つまりはな、ミア助よ。     華麗に優雅になんて戦いは、刃物持った時点で難しいってことです。     出来る人には出来るけど、僕らにゃ無理だしそうなりたいとも思わぬ。     だって豪快に剣振るったほうが戦ってるって感じ、するじゃない?』 彰  「そうそう、猫の言葉じゃあねぇけど、格好つけて優雅に戦うキャラよりも、     調子に乗りやすくても豪快なマッチョキャラの方が好きなんだよ俺。     だから綺麗にスパッと斬るよりゃ豪快に斬り潰す!」  ジョイヤー!と叫んでカタナを振るう彰。  しかし、「ぬう」と男塾風の声を漏らすと言いました。 彰  「お前さ、ハンマーになれない?」 カタナ『しっ……至高剣としての存在意義の完全否定!?』 彰  「そもそも至高剣じゃねーだろお前」 カタナ『……あのー、僕の認識って……』 提督猫『精霊【鈍器放手】?』 カタナ『ドンキホーテ!?』 提督猫『カタチは綺麗なくせに鈍器扱いだし……こう、     モンハンでいう凄く錆びた大剣あたり?     今さらだけど風化した大剣って全然風化してないよね』 彰  「まったくだ」  そして再びミアを残したままの話が続く…………のもいい加減にしたいので、彰にアイコンタクトを送って話を進ませることにした。 彰  「しっかし、やっぱりこう森ばっかり続いてると方向感覚を失うなぁ。     なぁ猫よ。こっちでほんとにいいのか?」  何処に向かってるのかも知らんのに、そんなことを訊ねるキミもキミですが。 提督猫『うむ、こっちでOK。経験積むとかンなもん無視でちゃっちゃと行きますよー。     この博光の猫としての勘が叫んでいる!     どう叫んでいるかというと、アーレッキュイジーヌって叫んだあとに赤ピーマンか     と思って噛んだものがハバネロだったくらいの悲痛な叫びを』 彰  「ただのバカじゃねーか!!」 提督猫『ストレートだねキミ! まあいいや、とにかく敵が出たらブッ潰す!     ミア助も、全力で勝ちに行きなさい! 死なない限りは癒してくれる!     胴体千切れようとも頭がニューゲートになろうとも!』 彰  「頭がニューゲートになったらニューゲートしか生き残れねぇっての!!」 提督猫『それで通じる貴様もどうかと思うなぁ僕!!』  ニューゲートとは、エドワード=ニューゲート。白ひげさんのことです。  頭の半分近くが削れても死ななかった海賊さんね。  ワンピースで人が死んだと猛者どもに知らされた時はたまげたねぇほんと。 【ケース12:提督猫(再)/コンスティさんとの出会い、そして外の道】  そんなわけでやってきました! 彰  「…………なぁ、ここ何処? なんかすっげぇ体が震えるんだけど」 提督猫『え? てっとり早くプレートのランク上げたいっていうから、     わざわざプライドマックスモーガンの蒼竜王の地へ来たんだけど』 彰  「いきなり竜王かよ!! お前どれだけ過程ってもんすっ飛ばしてんだァァァ!!」  ……ええ、やってきましたのはイクスキィ蒼山。  懐かしいですね、晦たちがマグナスと戦ったのがここの上空になります。  生憎と魔導船なんてものは借りられなかったから、マナで動く船を作りましてござい。  それでごしゃーとここまで来た次第です。 彰  「つかさ、お前あんな浮遊物体作れるなら、もっと早くに作ってくれよ。     歩き損じゃないか? あれって」 提督猫『大人はみんな嘘つきさっ……』 彰  「なんでお前がそれを憂い顔で言うんだこの野郎」 提督猫『ままま、いいじゃないの。それより防具作るために鱗でも拾っておこーぜー!     キミ、学生服でこの空界を生きるなんて無謀もいいところだぜ!? なぁミア』 ミア 「えっ? あ、う、うん……それはそうだけどっ……」 提督猫『あの。そんな震えるほどビッグ我慢してないで、     厠ならここらへんにはないから、そこらへんで《マゴシャア!》ベボ!』 ミア 「なんでいきなりそんなことになるの猫さん! ち、違うもん!     ただ怖いって思ってただけだよ!」 提督猫『カカカカ……!! な、なにも鼻っ柱を蹴らんでも……!』  だが僕は大人だから怒らないよ? だって大人だもん。  意味は解らんが大人だからいいの。  時に子供になるけど、その時こそ大人げ無く仕返しするのさ! だって子供だもん! 提督猫『おーーーいマグナっさーーーん!! 人間が侵入してるぜーーーっ!!』 彰  「おわぁばかっ! なにをいきなりそんなっ……!」 提督猫『バカめ! バカと言ったほうがバカだ! そして僕は……バカでいい《ニコリ》』 彰  「うわぁすげぇいい顔!     猫のなのにニヒルだ! つーか来た! 竜が来たぞおい!」 提督猫『えぇっ!? どこどこイカ子さん!』 ミア 「誰!? イカ子さん誰!?」 カイ 『っ……空だーーーーーっ!!』  カイがドラゴンボールチックに叫ぶと同時に空を見ると、そこにはヴァッサヴァッサと翼をはためかせる青竜が……!  さすがに竜王がホイホイ来るわけじゃないらしく、ただの青竜だったが……フ、フフフ……この博光の足も久方ぶりの竜族を前に震えておるわ……!  ふ、不思議だね? グルグリーズの傍には結構居たのに。 青竜 『人間よ……青竜の縄張りになんの用があって侵入した……!』 彰  「お、おい……おいおいおいおいぃいい……! なんか怒ってないか……!?     猫、言葉とか解ったりするか……!?」 提督猫『うん。なんかハマジリの街へようこそって言ってる』 彰  「レベルE!?」 カイ 『いきなり嘘を言わないでくださいよ!』 提督猫『うむ嘘です! え、えーとね? この地になんの用があって来た? だって』 彰  「用……用って……!」  ふむぅ。 提督猫『なぁ竜よ。ちょっと頼まれてくれない?     僕らべつに貴様らと戦う理由がないから、落ちた鱗とか爪を分けてほしいの。     それを許してくれれば、早々に立ち去るから』 青竜 『貴様は……忘却の猫か。初めて目にする』 提督猫『うむ。あと是非わざと負けてランクプレートの糧になって?』 彰  「ギャアーーーッ!? さらりとなんてこと言っちゃってんだてめぇーーーっ!!     戦う理由がないって言ったばっかだろうがァアアーーーーーーッ!!!」 提督猫『な、なにを言うんだよ彰くん! キミは僕から言葉の自由を奪うつもりなのか!     なんてこともなにも、言葉は自由じゃないか!!』 彰  「さも俺だけが悪いみたいな言い回しすんなぁっ!!     じゃなくてあぁあわわわわわ……!!」 青竜 『………』  青竜がメキメキと眉間に皺を寄せる。  ただでさえ鱗に覆われてゴツゴツしているそれが、メキメキと音を鳴らす様は……怖い! 素直に怖い! 青竜 『……忠告をするのが義務づけられているから続けて言おう。去れ。     一度を許せば付け上がるのが人間だ、鱗や爪を取ることも許さん』 彰  「お、おい……なんて……?」 提督猫『最近便秘気味らしい』 彰  「確認するまでもなく嘘だろそれ!!」 提督猫『ばかもん! 見ろ、あの眉間に寄った皺を!     いい加減腹が苦しくて苛立ってるんだよ!     そこにきて俺達が来訪なんかするもんだから、そりゃストレスも溜まるさ!』 彰  「なっ……ま、マジか……! す、すまんっ、便秘は辛いよなっ!     悪かった、謝るっ! いや、謝ります! 謝らせてくださいっ!」 提督猫『すまんかったなぁドラゴンよ、貴様がそんなにお通じで苦しんでいたとは。     だが安心してくれ、便秘は誰もが悩むもの。     キミは何を恥じることもなく、コンスティペイションドラゴンを名乗っていい!』 ミア 「コンスティ……ってなに?」 提督猫『便秘のこと』 ミア 「ぶふぅ!?」  一瞬にしてミアが吹き出した。 彰  「べ、便秘竜か……! なんかそう聞いた途端、ものすごく身近な竜に思えてきた」 提督猫『だよな……な、なぁあんた、人間と竜の架け橋になってみないか?     あんたほど人間が親近感を持てる竜なんて居ないぜ?』 彰  「だ、だよな……便秘……ぶほっ! べ、べべべ便秘りゅっ……!」 提督猫『あ! これ! ここで笑うとはなんと非道な!     便秘を笑う者は便秘に泣くんだぞ!?     貴様、いつか自分が便秘に悩まされたとしても、今みたいに笑えるのか!?』 彰  「いやそりゃそうだろうけどさ! 便秘竜はないだろ便秘竜は!」 提督猫「すまんかったなぁコンスティさん……     このお子はまだまだ世の中ってのが解ってなくて」 彰  「う……ご、ごめんコンスティさん……俺が悪かったよ……」 カイ 『……あ、あーのー……?     ドラゴンが顔面からビキバキと軋むような音を立てながら、     降りてきているんですが……?』 彰  「ばかお前っ! コンスティさんに向かってドラゴンとはなんだ!」 提督猫『お前コンスティさんを馬鹿にしておるのか!? 呼び捨てとは何事か!』 カイ 『え……えぇえええ……!?』 ミア 「あの。わたし、逃げてもいいかなぁ……」 提督猫『コンスティさんの迫力に逃げ出したくなる気持ちも解らんでもないが、     それをすればコンスティさんの鋼のような括約筋で絞め殺されることになるぞ』 ミア 「しひぃいいっ!?」 青竜 『《ビキッ……! バキッ……! ミシッ……!》……』 カイ 『あわわわわ……!!』  大迫力! 解っちゃいるけど物凄い気迫です!  うん、そりゃあ怒るよ! でも相手が強者だからこそ退かぬ媚びぬ省みぬ!  我が信条は誰であろうとからかうこと! 相手が絶対神だろうが対応なぞ変わるものか! 提督猫『《ガタタタタタ……!!》フ、フフフ……よ、余裕……だぜ?』 ミア 「物凄く震えてるけど!?」 提督猫『落ち武者震いである!』《どーーーん!》 彰  「既に敗北してんじゃねぇかよそれ!!」 青竜 『ゴシャァアアアォオオゥウンッ!!!』 総員 『ホキャアーーーーーーーッ!!?』  喋り続けることでの心の誤魔化しももはやここまで!  怖い! 恐くて怖い! 恐怖ってやつです! 提督猫『ミア!』 ミア 「! な、なにかな猫さん!」 提督猫『あとは任せた!』《どーーーん!》 彰  「俺達逃げるから時間稼いでくれ!」《どどーーーん!!》 ミア 「えっ……えぇえええええーーーーーーーーーーーっ!!!?」 カイ 『ちょっと待ってください!?     女性を囮に逃げるなんて、どれほど腐ってるんですか!?』 提督猫『僕、男女差別っていけないことだと思うんだ』 彰  「俺……近所のねーちゃんに女だからって甘く見ないでとか言われたことあってさ」 カイ 『甘く見るどころの次元を越えた状況なんですけど!?』  なんと次元の違いときおったか!  ならばここは───素直に逃げる!! 提督猫『彰! 月空力! 逃げるぞ!』 彰  「お、おおっ! って、何処に!?」 提督猫『サウザーントレント! カイとエンカウントした場所だ!』 彰  「よッしゃアッ! 月空力、プレイスジャーーンプ!!」  彰が月空力を発動させるや、僕らの体が光る! 光る───ひ、ひか…… 提督猫『ややっ!? ちょいと彰サン!? 僕の体が光ってないのですが!?』 彰  「こんなところに連れてきた礼だ! 一人で竜と戦ってろ!」 提督猫『馬鹿野郎! 相手が喜ばないものの何がお礼だ!     礼儀ってモン知らんのかてめぇ!』 彰  「おぉおおおおおおおお前にそんなこと言われたかないわぁあああああっ!!」  キュィイイイ───ビジュンッ!!  とか言ってる間に転移する皆様! 消える瞬間、彰は笑んだ! ミアとカイは手を振った! 俺は叫んだ! 提督猫『待ってくれーーーーーっ!!』  今日から俺は!の今井くんの気持ちが解る瞬間だった。 青竜 『……フフ、仲間に見捨てられたか。所詮人間なぞそんなものだ。     さて……忘却の猫よ。空界開闢の頃よりこの世に住まう貴様に問おう。     何故、人の醜さを誰より見てきた筈の貴様が人と組していたかは知らぬが、     訊きたいことはひとつ。我らとともに人を滅ぼす気はないか』 提督猫『え? ないよ?』 青竜 『───……それは何故だ?』 提督猫『俺が人間だから。別に人間がどうなろうと竜族がどうなろうと知らんけどね。     戦いたきゃ勝手に戦ってなさい。ただし、俺に危害が加わるならただではおかん』 青竜 『…………ハッ。人間? 元人間だとでもいうのか。     なるほど、ならばその態度も頷ける。     自分以外はどうなってもいいなどとよくぞほざいた。     ならば先ほどの人間どもの匂いを辿り、殺しても構わんというのだな?』 提督猫『いいよ? 貴様が生きていられたらね』 青竜 『なんだと? それはどういう───』  ブリュンヒルデを解放する。  全ての武具を混ぜたソレで猫である自分の体を包み、自分って存在の在り方を破壊する。 提督猫『あのね? 僕ね? 元が人間だから我が儘なの。     あれはあーじゃなきゃならねーとか、これはこうのほうがいいとか、それはもう。     で、理解を深めるために言うけどね?     俺にとっての危害ってのは、俺が何かを不快に思うか否かも混ざってるわけ』  運命破壊せし漆黒の鎌。  デスティニーブレイカーと呼ばれる運命破壊で捻じ曲げたものは、自分が猫に変わってしまった過去の運命。現在の変えようがない運命ではなく、時間蝕とともに発動させた過去の捏造だ。  過去を変えることは嫌いだが、どうせ効果は長くは続かない。  なにせ生きてきた時間が四千年にも渡るのだ、効果は多くて三分程度だろう。  それでも─── 中井出「だからね? キミが俺の仲間の来世を殺すってんなら、     それはとてもとても気分が悪いから……キミを死なす。     からかったことは謝ります、ごめんなさい。だから、見逃してくれませんか?」  人間に戻れたからには、まずは「やあ」と挨拶をしてから話を続けた。  そして礼儀も忘れません。詫びとワサビがあってこそ、相手は“ふざけんじゃねーぞ”と言えるのですから。うん、ガリバーボーイは面白いゲームでした。 青竜 『人間になっただと……? ……フン、なるほど。真実人間だったわけか。     だが竜族という存在自体を辱められたことを、そう簡単に許すと思うか?』 中井出「そこをなんとかっ……!」 青竜 『だめだな。所詮人間など口だけの───』 中井出「じゃあ死ね」 青竜 『きっ……切り替えが早いにも程がある! だが人間ごときが、     たとえ不老不死の身であろうとも竜族に挑もうなどとは笑えぬ冗談だ!』 中井出「じゃあ笑う以外の動作してみろコノヤロー! ほれ泣いて叫んでさっさと死ね!     どうしたーーーっ! 笑えねぇなら出来るだろうがコノヤロー!」 青竜 『真正面から心底腹の立つ人間だな貴様!! いいだろう! ならば───』 中井出「し、死ぬのかっ……!?《ドキドキ……!》」 青竜 『死ぬか!!     今すぐ貴様を血祭りにあげてやると言っているのだ!』 中井出「やれやれこれだから近頃の若いお子は……。     言ってもいないことをすぐ言っただのなんだのと。     それが竜族への辱めじゃなくてなんだというのかねこのタコは」 青竜 『ギッ……ギィイイイイーーーーーーーッ!!!!』  ベキバキと眉間に皺を寄せ、口を引き攣らせる青竜さん。  そんな彼(?)をよそに、もう時間もないことだしギミックアームを解放。  そう……優雅に華麗になど不可能! ならばせめて───優雅に、そして力強く! 中井出「チャァアーーーーージッ!! ───インパクトォオオオオオッ!!!」  烈風脚で一気に接近。  渾身を込めて振るうギミックアームが青竜さんの腹にゴズゥと当たり、直後に大爆発を起こした。  丁度その時点で運命破壊も効力を無くし、ポムンと猫の姿に戻る僕。……そして、吹き飛びはしたものの、ゴルルルルと怒りの吐息を吐き出しながら戻ってくる青竜さん。 青竜 『なにを、したのかは……知らんが……! フンッ、この程度───』 提督猫『死ねぇえええええええええっ!!!』 青竜 『なに《ゴファォウンッ!!》ヌオォオオッ!!?』  なんかのっしのっし歩いて来たから、稀色黒装レヴァルグリードを解放。腕だけ巨大化させて殴ってやろうとフルスウィングしたら避けられた。 青竜 『ま、待て! まだこちらが話して』 提督猫『死ねえぇええええええっ!!!』 青竜 『《ルォゴォッキィィンッ!!!》ウォオオオオッ!!?』  で、まだ話してくれるみたいだから隙ありとばかりにグレイドラゴンを顔だけ召喚!  ダガージョーがモノスゲー音を空振りで出してくれました。ええ、避けられたよ。 青竜 『きっ、ききき貴様! 待てというのが───!』 提督猫『死より深い闇を!     ディナータイムだアモルファス! ダァアーーークッ・センチネル!!』 闇  『覚悟はいいかぁ!? 荊棘を踏んだぞぉ!!』 影  『わ、わーれはしこたま戦慄!!』  先に出した二つをしまい、背中より生やすは九翼。  その二翼がアモルファスとダークセンチネルとなり、ティラノザウルスほどの大きさのデケェ闇と影のバケモンが、ギパァと牙を剥いて黒の唾液をこぼす。  ……影のほうがちょっと混乱してるみたいだけど大丈夫でしょ。 青竜 『な、なんだこれは……! 貴様、いったいなにを……!』 提督猫『あ、二翼ばっかに気ぃとられてると危ないよ?』 青竜 『なに───!? なぁっ!?』 ラオウ『魂の欠片も残さん!!』  で、残りの七翼を合わせてラオウを召喚……ラオウって言っても世紀末覇者じゃないよ?  真っ黒なソレはデケェ声でそう言うと、ギロリと睨んだ青竜目掛けて ラオウ『惨・殺!!』  ルォゴヴァシャォオゥンッ!!!  叫び声ひとつ出させないまま、拳一発で塵と化させてみせました。  ……青竜の、恐らく声帯があるであろう部分を。 青竜 『……! ……、───!!』 提督猫『えっと……この通りですから許して?』 青竜 『───!! ……!!』  多分、どの口がそんなことをほざくとか言ってるんだろうね。  なので喉を癒してみせると、途端にレーザーを放ってきおった!!  轟音を立てるレーザー! 相変わらずのギガァアッチュウゥウンという音とともに、この博光を見事に飲み込んでみせ───! 提督猫『くだらんわざだ……ただほこりをまきあげるだけか』 青竜 『がっ……ががっ……!?』  効かなかった時はやはりこれでしょう。  生憎だが対竜族効果が尋常じゃないのですよ我が装備……竜王クラスならまだしも、従属飛竜や他の竜族のレーザーではもはや通用せぬ! 多分! 提督猫『フフハッ! ハァーーーッハッハッハッハッハッハ!!     さぁ許せーーーっ! 許さんとためにならんぞーーーーっ!』 青竜 『そちらから浸入しておいてどういう脅し文句だ!!     おのれぇえ……よもや伝説に聞いた猫がこうも厄介な存在とは……! ならば!』  青竜さんが口にレーザーを溜めたまま、なんとこちらへ特攻してくる!  ここでこの博光は考えるッ! いったいヤツは何をするつもりなのかッッ! 提督猫『…………《ピキュリリィイイイン!》見ィイ切ったァアアッ!!     そ、そうかーーーっ! きっとヤツはこれから僕の眼前まで飛翔し、     レーザーで輝かせた口内を僕にまざまざと見せて“芸能人は歯が命!”とか言うに     違いねぇ〜〜〜《ガブシャア!》ルヴォァーーーッ!!?』  噛まれました。  しかもヤツの口内にはレーザーが溜まっているもんだから、僕の身を暖かく迎え、普通に放たれるのをくらうよりも……熱い! 熱いよムーミン!  だが……だがだ、竜よ。 青竜 『《つんつん》む……?』 ラオウ『……《ニコリ》』  僕の背中から生えた二翼と七翼集合体が、青竜を見下ろし微笑んだ。と思う。  なにせ眼前が眩しすぎるし、口閉じられてるから外のことなど解らぬ! 青竜 『い、いやっ、待───』 闇&影『俗儒の産物どもがァ!! 塵に帰せェッ!!』 ラオウ『喰わせろォオオッ!!』  ……口の外からいろいろ聞こえました。  嫌な予感がした僕は咄嗟に逃げ出そうとしましたが、自分の背中から生えているものから逃げられるわけもなくアオアーーーーッ!!!  世界が、スパークしました。 ───……。  シュキィイイ───キピィンッ♪ 提督猫『カカカカカカ……!!《プスプス……》』  大きなクレーターの中心で煙をあげているキャット……こんにちは、博光です。  二体と一体に同時に殴られるかなにかした竜(IN俺)は車に轢かれたヒキガエルのようになり、その口の傍でぺしゃんこになっていた僕も、こうして生き残った。うん、まあようするに竜も僕も辛うじて生きていた。  しかし痛いものは痛いので、ちったぁ加減してくださいと言わざるを得ない。言ったところで聞きゃあしないでしょーが。  で、気になったのが先ほどのよく解らん音なのだが……あ、もしかしてランクプレート?  さっきのでよく壊れなかったなと感心いたすが、ひょいと持ち上げてみたそれは、毒々しい色に鮮やかな青を足したような色になっていた。  つまり毒々しくてサワヤカといった、奇妙な色。 提督猫『………』  どの色になれば城に入れるんだっけ。  まあいいや、これはこれでステキだ。 提督猫『うむ。こうして無事に終わったことだし、そろそろ彰たちと合流を……』  しませうかと、埋まっていた下半身をボコリと土中から引きずり出す。  ふう、大変な目にあった。  まさか借り物とはいえ自分の力で死にかけるとは。  せっかくなので猫のように体をブシャシャシャシャと震わせて、砂砂利を取っ払う。  おお、出来るかどうか不安だったけど、やってみるもんだ。  水に濡れたらまたやってみよう。  などとほっこりしている時でした。  僕が居る場所に大きな影が差して、見上げてみれば…………四肢を持つドラゴン族ではなく、後ろ足と飛翼のみの姿と巨体。ソレが僕を見下ろしながら降りてくるではないかッツ!!  ……あ、あらやだ……! マグナっさんきちゃった……!! 提督猫『なんだかとってもピンチ! でも大丈夫!     こんな時はきっと誰かが助けにきてくれるのさ!     つーか散々からかって相手が襲ってきたら潰すって、モンノスゲー外道だね俺!』  今さらだけど!  そして僕は───外道でいい。 提督猫『魔王として生き、魔王のまま嫌われ、魔王のまま忘れられた!     ならば外からのこの博光に対する認識なぞ魔王で十分!     そしてこの博光はこの博光が思う魔王となるのだ! だって僕自身のことだし!     さあくるがいい蒼竜王よ! 貴様を倒して一気にランクアップだ!!』  殺すではなく倒すだけでもランクが上がることが証明された!  ならば無益な殺生はその時の気分でするとして、僕は思う通りに進むことにしましょう!  あ、でもまずは挨拶だよね。  さ、姿勢を正してちゃんと立ってと。 提督猫『やあ《ズヴァーーーン!!》ヘヴァアーーーーーーッ!!!!』  スチャッと手を上げて挨拶したら、空中サマーソルト尾撃をされた。  当然僕はドラゴンボールのフリーザ様に頭突きをされた孫くんのようにガガガガッと大地を転がり滑り、ようやく止まった先で、珍遊記のガンスのようにピクピクと痙攣した。  これで分類は飛竜種ってんだからどうかしてるよね、マグナっさん……。他の竜王はモンハンでいえば古龍種だってのに……。 提督猫『がっ……はぁっ……! ちびっこのくせになんてパワーだ……!』  ブリュンヒルデに当たってくれたからよかったものの、鎧に包まれてない場所に当たってたらそこが吹き飛んでたね。 マグナス『会えて光栄だ、忘却の猫よ。      その姿、グルグリーズしか知らぬと言われていたが……なるほど。      天地開闢の頃よりこの世に存在し、今までを生きてきただけはある。      我が同胞を破り、我が尾撃にも耐えるその様……見事と言ってやろう』 提督猫 『え? あ、いやあの……て、照れるな、そんな、見事だなんて……』  あれ? でも待てよ? 見事だと挨拶の返事が尾撃なのか? 提督猫 『そ、それで蒼竜王自ら、この猫めになんのご用で……?』 マグナス『力を示せ。蒼竜が王たる我が力に敵うようならば、貴様の力、我が下に……!』 提督猫 『うんやだ。じゃーねー』  きっぱり断り素材集め開始! ───しかし踵を返して歩いた先で回り込まれた! 提督猫 『あ、あれ? なんで回り込むの? 僕断ったよね?』 マグナス『その力、我がものにならぬのならば───ここで殺す。むしろ死ね』 提督猫 『ウギャアすげぇ予想通りな言葉! ああもうだから竜族って嫌いよ!      無駄にプライド高いくせに無茶な注文してきて断れば力ずくって!      キミねぇ! お言葉だけど、      てめぇらのほうがよっぽど“さすがは竜族”って言葉が似合うよ!?      よくそれでやはり人間だなとか言えるよね!』  ───蒼竜王マグナスが襲いかかってきた!  コマンドどうする!? 1:全力でフルボコルボバルボ  結論:1 提督猫『見さらせこれが解放のカタルシス!!     ミスター・ユニバース日本代表! ただし上半身のみの術!!』  極上天然英雄王を解放! ただし上半身のみ&黒に纏わせ憑依状態モード!!  途端に膨れ上がる我が上半身つーか右腕だけ! 猫の体だから不気味でステキ!!  これを突っ込んできたマグナっさん目掛けて思い切り振るってェエエエエッ!!! 提督猫『ブッ飛べカラミティイイイイイッ!!!!』  思い切り殴りつける!!  ゴヴァアッシャドッパァアアンッ!!!! マグナス『ゴギュッ───』  デケェけど小さな悲鳴。  刹那に景色の彼方へ飛んでいった彼に向かい、創造したハンケチーフを振るわせてから移動を開始した。  うむうむ、やはり戦いとはスパスパ斬るのではなくゴッシャメッシャと力任せがステキ。  結局テオスラッシャーっていう素粒子ブレード手に入れても、スパスパ斬るとかしなかったもんなぁ俺……。今思うと結構馬鹿なことしてたかもしれん。テオスラッシャーを原型に、他の武具を混ぜればほぼなんでも斬れたでしょうに。 提督猫『ふむ』  試しにやってみる。  と、そこでランクがゴシャーンと上がった。  でも今気になるのは剣のほうなので無視した。最強。 提督猫『ところでフェニックスドライバーの本当の書き方は、     “鳳凰逆落とし”だから気をつけような!     僕の不死鳥落としは道連れ型のパクリ技だからとっても危険だ!』  近くに咲いていた一輪の花にそう告げると、さわさわと揺れながら挨拶をされた。  え? こんな高いところまでようこそ? いえいえ、あなたも大変ですね。  と、それはそれとしてテオスラッシャーに様々を混ぜた状態で構える。  OH、光に透けるこの素粒子ブレードの綺麗なこと綺麗なこと。 提督猫『でも大剣だからスパスパって感覚じゃないんだよねこれ』  ならばと、テスラッシャーに組み込んだブリュンヒルデに意思を通して、テオスラッシャーの形状を変換する。  カタチは……やっぱりナイフ? よしナイフで。 提督猫『じゃーーーん!』  完ッ……成ッ……! これぞ敵さん解体ナイフ、殺人“貴”一号!  試しにネコット農場から鉄鉱石を発掘、ここまで引きずり出し、このナイフで……! 提督猫『死ねぇえええええええええっ!!!!』  ザゴォッシィイインッ!と斬ってみる!!  ……まあ、うん、あっさり斬れた。薄い寒天に包丁通すより軽く。 提督猫『よし、やっぱりスパスパは向かん。殺人鬼っていったら華麗に優雅にじゃなく、     野望欲望外道上等でザブゾシュと殺すイメージしか沸いてこないし』  前はスパスパも好きだったんだけどなぁ。ヒロラインで結構好みが変わった実感がある。  まあそれよりもカイをなんとかするためにも素材を…………いや待て? 素材はカイ自身で揃ってるんだから、必要なのはむしろナマクラになった原因解消じゃあござーません?  この場合、必要なのはむしろ素材じゃなく、マナとかそっち方面? 提督猫『……ふむ』  よし、やっぱり精霊の聖域巡りは必要ってことで納得しましょう。  そして彰をソーダー、ではなくリーダー扱いにして、全ての責任をヤツに押し付けよう。  せっかくこうして初の空界の旅をしているんだ、そこんところはもっと楽しんでもらわねば。 Next Menu Back