───空中大庭園での騒ぎ───
【ケース18:提督猫/空中大庭園といえばアレ】  コォオオオ……シュパァンッ! 提督猫『っ───とぉっ!』  一度勢いがつくと一気に飛ぶタイプなのか、ほんとに一気に昇って来た。  大庭園の端に長く伸びた陸地があり、その間に擦り抜けられる魔法陣があった。  そこを抜けるともう目の前は大庭園。  広く見渡せる懐かしき景色だ。  擦り抜けられたはずの魔法陣にしっかりと立ち、とりあえず歩み出してみる。  すると突然警報が鳴り出して───どっかでなにかを通して見た聞いたをした声が。 ???『侵入者アリ!! 侵入者アリ!! タダチニ排除スル!!』  …………ウワーイ!? これアレだ! 絶対アレだ!! 提督猫『やべェエーーーーーッ!!     あのヒヨッ子ども、よりにもよってエメオ=ノヴァルスを再起動させてやがった!     そりゃセキュリティ大事だろうけどなんてことを!』  まままマズイデスヨ!? 俺だけならともかく、ここに彰やカイが来たら───! 彰  「どわぁあっとと! ……───俺、参上!」 カイ 『提督! 無事か!?』 提督猫『ウワーーーイやっぱり来やがったァアアーーーーーッ!!!     テメェェェェ!! ここで予想通りにやってくるとかねぇだろうがァァァァ!!     空気読めよオメェェェェ!!』 カイ 『えぇええええ心配したのに空気読めてませんでしたかっ!?     それともこの口調がまたなにかオイタをぉおおっ!?』 提督猫『馬鹿っ! そんなんじゃないっ! いいからすぐに降りろ!』 彰  「へ? なんで───オワッ!?」  既に来ていた。  飛行物体エメオ=ノヴァルス(2Pカラーがノヴァル“ズ”)。  空界入りしてしばらくした晦や彰利でも無駄に梃子摺った、妙に硬いレーザー兵器だ。  ちっこいくせに強くて、壊した先から頑丈なヤツを製造する。  断言しよう。今の彰とカイだと…………随分と懐かしい感じではあるが、死ぬ。  不老不死なんてものになっちまった俺が言うのもなんだが……死ぬ。  蘇らせることも月癒力を使えば出来ないこともないが、僕らはそれを封印した。  死んだ者は生き返らない。それには逆らわぬといつか誓ったのだ。  ノートン先生に渡された魂の塊を、“リーダーうるさい”で叩き落とした経験のある男……こんにちは、中井出博光です。 提督猫『なんてのんびり言ってられないな……! カードドロー! 閏璃凍弥を召喚!』 閏璃 「あいよ毎度の三河屋です。醤油買って? じゃないといたずらしちゃうぞ」 提督猫『醤油押し売りするハロウィンなんて初めてだよ僕!     ───つーわけで時間稼いでくれ!』 閏璃 「了解だが提督。     時間を稼ぐのは構わんが……べつにあれを倒してしまってもいいのだろう?」 提督猫『だめ。稼げ』 閏璃 「鬼ですね」 提督猫『鬼ですとも』  僕に背中を向けていた彼が、寂しそうに振り向いた。  しかし次の瞬間には鎖で繋がれたマグナムを手に出現させ、派手に射撃を始める。  その一発一発で確実にエメオ=ノヴァルスを撃ち落としていくのはさすがだ。 彰  「ううおっ、なんだあの人すげぇ!」 カイ 『正確に撃ち落として破壊している……!     よっぽど目がよくなくちゃあ出来ないことだ……!』 提督猫『んなこといーから降りるぞ。ここはまだレベルが高かった』 彰  「ホア? や、あの人一人でモノスゲー速度で片付けてってるけど?」  チラリと見れば、閏璃がSUVウェポン・カオスブリンガーを使ってエメオさんを破壊しまくっている。  うわ、エネミーウェポンか。懐かしいなぁ。  でも連射が出来ないみたいで、だってのに器用に一体一体確実に破壊していってる。  しかし埒が空かんと判断したのかもういっちょSUVウェポンの起動申請。  片手ずつに出現したのはなんと───! 彰  「おっ……おぉおおっ!」 提督猫『あ、あれはっ! PSO時代に、手に入れにくいカラーの者は皆憧れた武器!     僕の守護竜属性キャリバーにも混ざってる名前のアレ! ホーリーレイ!』 閏璃 「銃を持った俺は……ちょっとだけ真剣なのだ。     どれくらい真剣かというと、“本気”と書いて“ボケ”と読むほどに!」 総員 『真剣どころかふざけてるじゃねーかよ!!』 閏璃 「はっはっはっはっは! 細かな笑いが俺の力の源! 大工のゲンさん!     そんじゃあパパッと景色だけは広げますかぁ!     ───コンセントレーション・ONE!」  一旦集中しちまっちゃあヤツは止まらなかった。  目が変色した途端に、笑顔がよく似合うそいつの表情は鋭くなった。  刹那に二発。腕を振るって一発、袈裟に斬る用に振るって三発、振り向かずに腕だけ背後に回して続けざまに六発。そんな動作だけで、バラバラに飛んでいたはずのエメオさんが串刺しの団子状態で綺麗に光の矢で射られ、地面に落ちた。  ……うおお、綺麗に三つ並んで刺さってやがる……! 閏璃 「フッ……恐れ慄くがいい! こう見えて俺は!     電動釘打ち機をホーリーレイと呼んで購入したことがあるロマンチスト!     工具店に行って俺は店員にこう堂々と言ったのだ! ホーリーレイください!!」 提督猫『なんでキミそんなこと今ここで言ってんの!?』 閏璃 「誇れるものは誇ったほうがいいと、近所のパワフル幼馴染に言われたことがある」 提督猫『なるほど!』 彰  「いや納得してねぇで! 解る気もするけど!」 カイ 『誇る方向性絶対間違ってるだろそれ!』 閏璃 「いーから離れてろガキどもー。提督、武具使用申請」 提督猫『構わぬ! 好きに使えい!』 閏璃 「セーンキュー! まずはSUVウェポン申請!     殺戮電磁銃のSUVウェポン・カルネージハート!!     霊章よりリンク! 六閃、冥空、庭師剣!     四百八十閃&超速剣! うぉおおおおららららららぁあああああっ!!!」  出現させたのは見たこともない重火器。  それを四百八十閃状態で発射するからもう大変。  カルネージハートって……殺戮の心? つーか銃から出てるものがどう見てもカーネイジだった。カーネイジってたしか……CARNAGE。カルネージってこっからきてるんだっけ? 覚えてないや。  だからまあその、つまり。 彰 「……すげぇ。あれだけの数を撃ってるのに、デタラメに撃ってるように見えるのに、    一発たりとも撃ち漏らしがねぇぞ……!?」  ほんとに殺戮してらっしゃる。  目は変色させたままに顔は真剣そのもの。  いつものニコリとした笑みなどどこにもなく、群がる敵を一撃で確実に殺していっている。カーネイジの反動なんて気にもせずだ。  それでも次から次へと出てくるエメオさんを撃ち落とし、敵さんが強くなっていこうが知ったことではなしと撃ち続け…………やがて、製造するための部品が無くなったのだろう。大庭園は静かになった。 閏璃「んー……ちょろい」  そう言った彼は、とほーと溜め息を吐いてSUVウェポンをマグナムに戻した。 提督猫『……キミ、また強くなった?』 閏璃 「何年霊章の中に居たと思ってるんだよ。     それでも提督スキルがなければもっと時間くってただろうけど。     ま、久しぶりのシャバの空気…………世話ンなりましたァ、看守さん……」 提督猫『もう悪さするでねぇぞ』 閏璃 「………」 提督猫『………』  数秒後、笑いながら手を叩き合わせた。肉球だけど。 閏璃 「それではご指名痛み入る! 次の入り用も閏璃! 閏璃をよろしく!」 提督猫『解った。じゃあ紗弥香っちを召喚しよう』 閏璃 「とみせかけてサスカッチ召喚!」 提督猫『居ませんよ!?』 閏璃 「いやすまん、我が娘ながら語呂が似ていた。     ああまあいいや、今、安定し始めてる三国志方面の手伝いしてるから、     カード出たら容赦なく頼む。あれで一応失恋の身だ。少しは紛れるだろ」 提督猫『べつに我が霊章内、つまりフェルダールは一夫一妻じゃないが?』 閏璃 「まあなー。弦月もさっさと元妻たちにフルボコられてたし、     なんだかんだでまた振り出しに戻ってる感じだし。     ほんとの親が日余だったことを思い出したみずきの態度といったらもう」 提督猫『あ、やっぱ振り出し戻ったか。     ま、なんだかんだで日余はクラスメイツで原メイツだ。     いつも通りの勝手な言い分だが、幸せにゃあなってほしい。     元々ヒロラインできっちり構ってやらなかった彰利や、     他に女をこさえた彰利が悪い』 閏璃 「大原則を思いっきり破ってたもんな。そういや罰とかってどうなってるんだ?」 提督猫『罰ならとっくに。八つ裂きじゃあ済まなかったんだろ?』 閏璃 「まあ。で、そろそろだと思うんだけど、結局どうする提督よ」 提督猫『そだなー、このお子めらガンコでさ』  ちらりと見ると、彰とカイがぽかんとしていた。  なにを言っているのか解らないんだろう。 提督猫『途切れたと思ってからが一番しつこかったもんなぁ。     多分でっかいのくると思う。サガフロのラスボスの一人みたいに』 閏璃 「なら変形とか見たいな!」 提督猫『だよな!」 閏璃 「……っと、敵が出てくるまで時間がかかりすぎたな。     もう消えるみたいだ。ではさよーならー、三河屋でしたー……───馬鹿め!     実は俺は三河屋などではない!』 中井出『いきなりなに言い出してんのこの人! だが聞こう! 何者だ!』 閏璃 「三川屋です。三途の川の橋渡しをしています」 中井出「話が店からあの世へ飛んだよ!? ちょっ……消えるな待てコラ待ちなさい!」  ……さっさと消えてしまった。  なにこのモヤモヤした気持ち。 彰  「えっ……と。どーすんだ? ここに用があるんだよな?」 提督猫『やー……どうせなら貴様らにきっちり戦ってほしかったんだけどね。     閏璃が倒しちゃったし、もう少しは時間に余裕があるとは思うんだけど』 カイ 『俺達に戦わせるって、サハギン相手にヒーヒー言ってたのにか?』 提督猫『だから降りろって言ったじゃん。フレアブランドとアイスブランド集めて、     エターナルソードを先に作ろうって思ってたんだよ。     それ融合させれば、少なくとも斬れ味は格段だ』 カイ 『自分が改造される気分ってすっごい気持ち悪いですね……敬語忘れるくらい』  この世界にゃレベルアップなんてシステムはない。  なら武具を強化するしか生き残れやしないのだ、仕方無い。  つーか最初からラグナロクが武器なんて、ツいてるとしか言いようがないだろ。 彰  「つーかさ中井出YO? ここでまた敵が出るような言い回ししてっけどYOゥォ?     それってお前が倒せば無問題じゃござーせん?」 提督猫『…………いや、べつにそれでもいいんだけどさ。     いいのお前、せっかくのファンタジーなのに』 彰  「いや、俺も強くならなきゃとは思ったけどさ。     死ぬ思いまでしても得るものが無いと虚しかった……本気で」 提督猫『まあなぁ……レベル上がるわけでもないし、     この世界に強い目的意識があるわけでもないし。     じゃああれだな、とりあえずは貴様を鍛えよう』 彰  「意味解りませんけど!? なんでそうなるん!?     え!? な、ま、マジでなんで!?」 提督猫『約束の木を守るんだろ? だったら強くならなきゃ』 彰  「や、木ぃ一本くらい───」 提督猫『甘いわ! 世界の都合から木一本を守るのに、     どれだけ大変な思いをすると思っておる!     お前ね、世の中ってのは金さえ入ればなんでもやるのよ?     だって仕事だもの、金なきゃおまんま食えないし。     貴様の親が業者に木を捨てろーとか言ったらそれで終わり』 彰  「どっか別の場所に移して───」 提督猫『………』  ふむ。  なんと言ったものかと思案する。  言う言葉なんてのは解ってるんだが、どーもこうハッキリしない。  だが言おう。 提督猫『大事なのは木だけじゃないだろ。     あの草原、あの黄昏、あの木の下に約束が埋められてるからいい。     そうなれば必要なのはなんだ? 今すぐ戻って駄々捏ねることか?     それとも力をつけて、     あの場所ごとこの世界に移しちまうなんて一大スペクタクルか?』 彰  「考えがスッ飛びすぎてないか!? 木を運ぶことから場所ごととかっ……!」 提督猫『俺はやる。俺ならやる。自分に正直で、自分勝手で、悪だからな。     いーかい彰。“守る”ってのはそういうことだ。     他を気にしちゃ大事な一個を守れない。     そんな時は全てをかなぐり捨ててでも守るんだ。     全てを守るなんて口にする奴は信用出来やしない。だって、自分が守れてねぇ。     だから、どうしても“守る”ってんならとことん守れ。浮気したら殺す』 カイ 『殺すのかよ!』 提督猫『だまりゃ! 貴様らヒヨッコはまだまだ青い!     守ることを軽く考えてる時点で“殺す”の重さも解っちゃいねー!     一つを守るって決めたらその一つしか守らない! それが守るってこと!』 彰  「じゃあ全部を守りたかったら、自分以外の全てを守るって言えば───」 提督猫『見えないところの誰かも守れる?』 彰  「ああ無理だわ」  解決した。 提督猫『はい、つーわけで敵さんのおでましだ。     もう失敗ばかりのトルネコさんに武具を渡す王様気分で防具貸してやるから、     いっちょ戦ってみれ』 彰  「防具って《ゾリュリュリュリュッ!》おぉおわっ!?」  彰の体に黒を巻き付ける。  さらにそこにカタチの概念を飛ばしてやると、それが黒の外套に変異する。 彰  「おぉおっ!? なんか格好いい!」 提督猫『お前の先祖愛用の武具だ。カイにはこっちな』  白を解放。  カイに巻き付けてやると、それが精霊武具の中でもレベル高けーものに変わる。 カイ 『これは……』 提督猫『お前の持ち主の防具。武器はお前自身だからしゃーないとして、まあつけとけ。     助けはしないとは言ったものの、死なせたくないのも事実だから』 彰  「…………思ったんだけどさ。お前って結構ツンデレ?」 提督猫『アホゥ、ついでだついで。勘違いするんじゃねーぞ、死なれても困るってだけだ』 彰  「ツンデレだ……」 カイ 『ツンデレだ……』 提督猫『うるさいよもう!』  それぞれに武具をつけてやる。  カイは武器はないが、まあエターナルソードを手に入れるまでの簡易強化ってことで。 彰  「んじゃあいってみっか! カイ! リアクト!」 カイ 『ノリだけはいいんだよなぁいっつも……はいはい《ゾリュンッ》』  カイが自らの形を変える。  人の姿から───神真槍雷剣ヴィジャヤへ。  あー、ラグじゃなくそっちできたか、なるほど。 彰  「おっ……おぉおお!? かっけぇ! なんだこれかっけぇ!」 提督猫『彰、そりゃ雷を常に帯びた雷迅剣だ。斬れ味が悪くても、雷で敵に攻撃出来る。     頭でイメージして唱えてみろ。創造の原理とあまり変わらん。     伎装砲術……レンジ/アローだ』 彰  「れ、レンジアロー?《ガシャバグンッ!》オワッ!?」  唱えた途端、ヴィジャヤが中心から割れ開き、互いに直線状を保ったまま柄部分に引かれると固定。その中心に眩しいくらいの電撃が蓄積される。  いつかのように、雷撃を込めた剣へと変化した。 彰  「ハワワワワ!? どどどどうなってんだこれ!     まぶしっ! うおっ! まぶしっ!」 提督猫『レールガン撃てるから、好きな時に撃て。     それでそのまま斬るのもOK』 彰  「おおっ!? それってば憧れのギガブレイクができたり───」 提督猫『否! ライブレイクやライデインストラッシュにも届かぬわ!     自惚れるなヒヨッ子が!』 彰  「う、うるせー! いちいち厳しいんだよお前ェェェェ!!」 提督猫『ところで今の外国映画俳優で有名なのって誰?     この博光が地界に居た時は、レオナルド=プリン男だったが』 彰  「プリン男!? ディカプリオだろそれ!     しかも会話のキャッチボールする気がまったく───ってあーあーあーあー!     思い出した、漫画であったよそれ! ちなみに今人気の外国人俳優は───……」  語られたのは、聞いたこともない名前の男だった。  うむぅ……さすがに知っているやつが生きてるわけがなかったよ。 彰  「……つかさ。敵に囲まれながらこんな話題、軍人とかだったら殺されてるよな」 提督猫『軍人ねぇ。誇り高くて結構だけど、     指令が来なきゃテッポも撃てない綺麗な殺し屋には興味ないよ俺』 彰  「一斉射撃のほうが強いからそうしてんじゃん。統率ナメんなよ猫、ウラァ」 提督猫『…………統率はしても、俺は楽しみたかったよ。ずっと、ずっと』 彰  「んあ? なんか言ったか?」 提督猫『───いい天気だね♪って言ったのさ』  口にして取り出したるはどこぞの覇王様の鎌。  絶という名前のそれを思うさまに振るい、いつかのように巨人兵と化したエメオさん目掛けて突っ込んでいく。  そして思う様に鎌を走らせてゴギィンッ!───硬ッ!!  しまった! ついノリで出したけど、そういや物体として取り込んだだけであって、これ自身は強化してあったりとかしてないよ!  あ、ああごめんなさいねぇ華琳! ちょっと使ってみたくなっちゃったんだよ何故か! わ、悪かったってばそう怒らないで! エメオ『ゴゴーーーッ!!』 提督猫『《ドッカーーーン!!》ちぇるしぃいいーーーーーーーっ!!!!』  ゴッツイストーンゴーレムっぽいエメオさんに、ヤクザキックをぶちかまされた。  マゴシャアとかグシャアとかな音とは比べられん、ほんとにどっかーんって感じの衝撃が走る。猫の体だから、それはもうハデに飛びました。ご丁寧に斬るために跳躍なんてするんじゃあなかった! よせばよかった! こんなタフガイに攻撃ふっかけるなんてッッ! 提督猫『なーんちゃってー! この博光は囮である!』 エメオ『ゴゴッ!?』 提督猫『さあいけ彰! 隙は作ったぞ!』 彰  「え? 俺?」 エメオ『ゴッ!!』 彰  「《ビクッ》うわっ、こっち見たっ!」 提督猫『ヌゥフフハハハハ!?     さぁいけブロリー! そのこざかしい小僧を倒してしまえぃ!』 彰  「あぁっ! テメェ! どっちの味方だ!!     つーか無駄にパラガスっぽくて腹立つわ!」 提督猫『俺、パラガスって結構好きなんだよね。     好き度で言ったらアニメBLEACHの山爺の灼熱マッスル太極拳なみに』 彰  「判断がすげぇしづれぇなおい! 確かに初めて見たとき腹抱えて笑ったけどよ!」  太極拳かって言われたら微妙だが、まあ近いということで。  さあ、そんなわけで───囮であることを嘘として発言した僕は、騙されて振り向いてしまったことに怒りを燃やしたエメオさんにボコボコにされていた。その連撃、その容赦の無さ、思わず「AHEEEEEEYYY!!」と悲鳴をあげてしまうほどのものだった。  すげぇ! こんな大量生産物体にもきっちり感情がある! 俺はその技術に感動する! 彰 「よっしゃあでは月詠街が頂点、弦月が一子、参る!    弧月日の姓は捨てた! あーんな親父と同じ苗字なんて使ってられっかー!!」  言いつつ疾駆、そして斬撃。  僕をボコるエメオさんに振るわれたそれはしかし、あっさりと躱されてしまう。 彰 「うぅお速ッ!? え、ちょ、待て! いくらなんでもこの巨体でっ!」  武器もいい。防具もいい。しかしここに来てあっさりと弱点発覚。  身体能力は普通より上……なのだが、実戦経験があまりに少ない。  相手がちぃとばかし自分の予想以上の動きをしてしまえば、もう視線で追うことが出来ないでいるようだった。これではダメだ。  いつかの晦でも翻弄されるくらいだ、呆れるくらいの修行もしていない彰では、追うことにも難儀する。こんな風に翻弄されないためにも鍛えようっていったんだが、はてさて、きちんとその気になるかどうか。  ……あ、くらった。16文キックっぽくドカーンと。 彰  「げっほっ……! あ、あぶねっ……黒衣がなけりゃ死んでるぞこの衝撃……!」 提督猫『アーアー、若者はすぐそうやって死ぬーとか言うー』 彰  「うっせ! こんな衝撃初めてなんだから、そりゃ言いたくもなるわ!     ……狙いを定めてぇえっ……シュート・ヒム!!」  しかし吹き飛ばされた先で片膝をついたままの状態で体を固定、ヴィジャヤを構えるとそのままメガレールカノンを発射。衝撃で吹き飛んだりはしたが、電磁砲はエメオさんに直撃し───なかった。 彰  「うそぉっ!? あの速度の攻撃避けるとかありえねぇだろ!」 提督猫『アーアー、若者はすぐそうやってありえねーとかパネェーとか言うー』 彰  「だからうっせぇって!」 提督猫『ドゥウハハハハァ〜〜〜ン? やっべヌぁにウァイツのツヨスァ〜〜ン!!     ウァアア〜〜〜リエヌェエ〜〜〜〜ン! チョーパヌェーンデスケドゥォーン!』 彰  「うぅおムッカツク! 張り倒してぇほどムカツク!!」 提督猫『実際さ、ギャルゲーとかやってる時にフツーに喋ってるキャラの言葉で、     “w”が並んでると腹立つって田辺くんがおっしゃってた』 彰  「誰だよ!!」 提督猫『なぁ今時の若人よ。俺知らねーから訊いてみたいんだけどさ、     wを並べてるときのキャラってどんな感じなの?』 彰  「笑って《ブォンッ!》オヒャーーイ!?     あぶねっ……! 今当たるところだったぞ……!?」 提督猫『オーイ、もったいぶってねーで教えれー?』 彰  「どこをどう見たら必死に戦ってるヤツを前にして、     もったいぶってるように見えるんだよ!」 提督猫『気温を操れば眼前だろーが蜃気楼が見えるって尾田先生が言ってた』 彰  「それってなにィィィィ!? 俺が蜃気楼だってことォォォォ!?     もったいぶってねーからァァァァ! ほんとドキドキバトルやってるから!     幻じゃあねぇからァァァァ!!」  攻撃を振るわれ続け避け続けで、なんか口調が銀魂っぽくなってた。  ……さてさて。俺はもう一体の、やたらとゴツイエメオさんでも相手にするかね。  サガ2で女神が最終防衛システムを一人でツブしたみたいに。  最終防衛システムのくせに二体あるのは反則だろとよく思ったものです。 エメオ『ゴゴガァアーーーーッ!!』 提督猫『おお、その叫び、楓巫女に仕えてた頃の篠瀬さんを思い出すねぇ。     よく彰利にからかわれて言ってたもんだ。     ……うむ! 来るがいい硬き者よ! この博光が《ドカーーン!》ぶべぇい!!』  蹴られました。  うん、やっぱり戦闘前にべらべらくっちゃべるもんじゃない。 提督猫『いやだねぇ、ちぃとばかしいい能力持ったりレベル手に入れたりすると、     人にそれっぽいこと言って教えたがって。ようがす、俺は俺だと再び刻もう。     目ェ醒めたよエメオっさん。なので真剣に参る!     まず体を火闇で包み!     霊章輪ニーヴェルンゲンの意思から“中井出博光”を召闇!     俺自身に溶け込ませることで人間化ァァァァ!!     わあでも黒い! こ、これは思わず敵役とか連想しちゃうね!     キメ技の頭には“暗黒”とかつけたくなるね! え、えーと練習を……!     あれ? 僕のキメ技ってなんだったっけ。     えー…………あ、暗黒毒霧!《バゴシャア!!》つぶつぶーーーーっ!!』  特に思いつかないから毒霧吹いてみたら、硬い拳で殴られた。  だがOK! やっぱ人間の体はいい! 中井出『おがちちちち……! ナイスナックルだと言っておこう! いぢぢぢぢ……!!     だがなー! ……い、いたっ……いたたっ……!     だ、だが………………うぐっ……ひっく……いてぇよぉおお……!!』 彰  「人が頑張ってる後ろでマジ泣きすんなぁああーーーーーーーーっ!!!」 中井出『し、仕方ないじゃないか! 痛いものは痛いんだから!     く、くそうよくもっ! この博光に向かってこんなっ……!     この汚らしいアホがァアーーーッ!!《バチンッ!》』  後ろ手に“飛び出しナイフ”を用意!  うーふーふー! この博光の霊章の中には爪楊枝から始まりジークフリードに至るまで、様々な武器が合成されているんだよノヴィ太くん! つーか普通に誰だよ爪楊枝を合成させたの! これ武器としてどうなの!? そりゃ使う人が使えば人を殺せそうではあるけど!  ……え? 耳かきや歯ブラシも合成してある? どっちも明らかに武器じゃないよね!? え、ちょ、待って!? 貴様ら人が纏めて飲み込んだ武具になんてもの合成させてたの! いやバレちゃあしょうがないじゃないよ! 武具じゃないでしょそれ! 明らかに武具じゃないよね!? ───え!? とあるゲームで誰かが武器として使ってた!? なごなご!? 誰!? いやちょっと待ってなに笑いながら通信切ろうとしてるのちょっと待ってよまだ僕の話が! アーーーーッ!! 中井出『…………俺…………本当に提督なンかナ……』 彰  「いきなりなに!?《ドゴォッ!》オウフ!」 中井出『え? なに《ドガァ!トチュッ》ギャアーーーーーッ!!!』  背中に衝撃!  なんか蹴られた彰が飛んできたっぽくて、ナイフを後ろ手に持ってた僕に激突!  ……その拍子にナイフが背中に刺さりました。背中に。 中井出『ギャアーーーーッ! ギャッ! ギャアアアアアーーーーーーーッ!!!』  当然この博光最強最大の弱点である背中。  たとえただの飛び出しナイフが刺さったとしても大ダメージだ。  僕はその場で背中を庇うようにして暴れまくりました。  そしてその隙だらけな僕を、エメオさんがゴシャーリと踏んづけた。  僕はもうなんていうかその、ÅHEEEYYY!と叫ぶしかなかったのさ。  ただひとつ言えること。  遥かなる空の島の大地に、俺型の窪みが出来ました。   のちに誰かが言う。    この博光は小さいが、人類にとっては偉大な博光である───                              ───と。 ───……。  で。 中井出『なんだか月が見えたんだ』 カイ 『そりゃ結構な幻覚祭りだな』  その時のことを言ってみれば、晦チックに言われて溜め息を吐かれた。  ちなみにエメオさんは自爆で片付けました。最強。……一緒に空飛んで、ズタボロになった彰にはソーリー。 彰  「お前鬼だね……」 中井出『失礼な。鬼じゃない、魔王だ』 カイ 『なお悪いわっ!』 中井出『魔王に対して、そりゃ賛辞ですが。で、結局ぶっちめちまったわけだけど。     どーすっかなーこれから』 彰  「塔ってのに行くんじゃないのか? あ、もしかしてここがそーなのか?」  今現在、俺達はいつかの晦一行が登った制御タワーに居る。  そこでもう生産されないようにと設定を終えたところなわけだが……ふむ。 中井出『いや、浮遊塔はもっと上だ。本来なら水中潜った先に入り口があるんだが』 彰  「水中! 浮遊島なのに水中! いいじゃんいいじゃん行ってみてぇ!」 中井出『水竜がおる』 彰  「俺、空の旅が大好きなんだ《ニコリ》」  モノスゲー笑顔だった。 中井出『ま、飛んでいきゃあすぐさ。つーわけでロドリゲス、また───…………え?     ここより先は自分には酸素が薄い? ……じゃ、じゃあ仕方ないね。     じゃあえーと……ガンザックで音速越えて塵と化したい人〜……挙手!』 彰  「ここで挙手とかどんだけ勇者だよ!」 カイ 『死にたくないので却下だ却下!』 中井出『ち、ちくしょうお前ら馬鹿だ! この朕が連れていってくれようといふのに!     ならば僕だけで行ってやるんだかんなー!?     と、止めても辛うじて間に合うくらいに、     微妙に遅いのか遅くないのか……どっちだよもう!!』 カイ 『行くなら行ってください』 中井出『なんでここだけ敬語なの!? ち、ちくしょー!     どいつもこいつも人が提督に戻った途端に掌返しやがってーーーっ!!     いいよもうほんとに独りで行くから! 武装錬金&ガンザックオープン!     レッツゴートゥ聖域ィイイーーーーッ!!!』  ガンザックという名のロケットベルトが火を噴き、一気に空へと舞い上がって─── 声   『《ガガッ……》聖堂へ接近スル飛行物体ヲ確認。      忠告デス、言葉ガ理解デキルノナラバ今スグ引キ返シナサイ。      デナケレバ迎撃シマス』 甲冑男爵『え? え? なに? ロケットの音がうるさくて全然聞こえね……アレ?      なにこれ。やあ、可愛い機械が《ドゴゴゴゴォオオン!!》ギャアーーーッ!!      ヤナァアァァァババババなにこれなにこれアレレー!?      なんかミサイルポッド撃ってきたミサイルポッドォオオーーーーーッ!!      ウェハハハハハだが甲冑に身を包んだ男爵様は無敵!      びっくりして叫んじゃったけど僕平気!      さあそんなわけで塔にやってまいりました!』  あちらに見えますのが光の聖堂、ウィルオウィスプが住まう場所!  ……いらっしゃった。まいったなぁ……僕あいつ苦手なのに。 ウィル『よくぞ来た、人の子よ。私はウィルオウィスプ。光の精霊である』 中井出『ウィ、ウィルーーーーーッ!!』  そしてあっさり見つかった。  なのでいつか彰利がとった行動そのままに喋ってみる。 中井出『ウィル……馬鹿な……!     ウィルはゴルフオープントーナメントで変な爺さんに弾道と間違えられた筈……』  本当は逆。弾道がウィルと間違えられていた。  しかもゴルフオープントーナメントではない。 ウィル『………』 中井出『………』  そして予想通りに沈黙される僕がいました。  だだ大丈夫! 僕強い子だもん! 中井出『コ、コニチワー! マナをください!』 ウィル『美しき私に勝てたら考えてやらなくもない』 中井出『ゲゲェ相変わらずナルシストだぁああーーーーーっ!!!』  最初の頃こそナルシストじゃなかった気がするのに、妙な部分の記憶だけは残ってるのか思い切りナルスィー! だが、いいぜ……お前がそうやってナルスィー気取りでいるなら───まずはその整った顔を毒霧でブチ汚す!! ……ブチ汚すってなんだろ。 中井出『我は中井出博光! 光のマナを頂戴しに来た黒い人なり!』 ウィル『私は光の───』 中井出『あ、知ってるから言わなくていいっす』 ウィル『美しく名乗らせるべきだろうここは!!』 中井出『ゲハハハハ馬鹿めぇ! 戦いは既に始まっているのだ!     たとえ名乗り合いであろうが、やらせるわけがあるまいよォオオッホッホッホ!』 ウィル『ギ、ギィイイイーーーーーーッ!!!』  さあ参りましょう!  こうなりゃバトってマナもらってさっさと次だ!  かつての仲間に会っていくかは……そのあと考える! うむ! 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