───マグナブランドを巡る騒がしき時───
【ケース26:弦月彰利(仮)/根本はきっと変わらない】  ザムザムザムザムザム……! 彰利「ほいでヨーォオ? こうして北の大陸の外れにまで来たわけじゃけんどもさ。    エルフってやっぱ首長いのかな。パイルダアアーーーオォオオオ! って」 悠介『なんの話だよ……』 ミア「ちょっと見ない内にカイくんがやさぐれた……」 悠介『やさぐれたとか言うなっ! これが持ち主の性格なんだよっ!』  そげなわけで北の大陸を西に歩き、見えてきますのは深い森。  ここだけは変わらず緑に溢れ、枯れてない木々や草花が満載でありんした。 ミア「あ……緑の香り……」 彰利「お前緑の香り言われて全国の緑さんがどれだけ辱められるか知ってますか?    緑さんの気持ちも考えてシュテンドルフと……」 ミア「シュテンドルフ!?」 悠介『“イワン”な……つまり“考えて言わんと”って言いたかったんだろ』  やあ僕彰利。  なんだか自分の認識を変えてから絶好調の踝です。くるぶし関係ねーね。 ミア「それで彰くんたちは今なにやってるところなの?    私を探してくれてたのはついでだったみたいだけど」 彰利「マナ集め。事情がいろいろと変わっちまってねぇ。    あ、もう城にも入ったし通行証も貰ったからランクプレート意味ねぇかも」 ミア「えぇえ!? もらったばっかりだったのに!? ……うう、なんかずるい……」 彰利「それはヤム子さんに言いんせぇ。アタイ悪くねぇYO」  まさか偽造勲章なんてねぇ……腹黒いって意味ではダークだけども楽チンだったからオールライト。 彰利「でさ。どっち向かえばいいんだろね」 悠介『俺も訊こうと思ってたところだよ……』 ミア「え? 道聞いてきたんじゃないの?」  森の中に居る。  でも森が複雑すぎて、どこをどう進めばいいか解らん。  自然の繁殖の影響で余計に複雑になってるっぽいです。元のカタチがどうなのか知っているのか、などという質問は……トリッシュ、二度としないでください。アタイも知らない。 彰利「よし、じゃあ自然にあやかって、この落ちていた木の枝に道を決めてもらおう。    この葉っぱがついているほうに道はある! ほいやあっ!」  だから投げたッッ! 木の枝をッッ!  木の枝はルヒョヒョヒョヒョと風を切って回転し、ボッゴォオ!! 悠介&ミア『えぇえええーーーーっ!!?』  空中で爆発した。 ミア「えっ、あっ、えぇっ!? ななななんで!?」 悠介『彰……怒るから正直に答えろ。なにした』 彰利「怒るの!? い、いえちょっと細かい笑いが欲しいかなぁと《ドスッ!》ベン!」  言った直後に殴られました。  でも振り返らない男になりたいと今だけ思うことにして、内側へと声をかける。 彰利「おーい、おーい中井出ー? 自然の声聞いてなんとか出来んー?」 ミア「カイくんは精霊なんだからそういうこと出来てもよさそうだけど」 悠介『無理だ』  即答でした。  いやしかし内側に声かけてみても返事がねー。  なにやっとんのかね。 彰利「よっしゃあこうなりゃ突き進むが吉! いくぜぃ野郎ども!」 ミア「おーっ! って彰くん私野郎じゃないよ!?」 彰利「マジで!?」 ミア「どうして驚くの!? 驚くことに驚くよぅ!」 悠介『……なんでだろうなぁ。先行きが解りやすいっつーか……』  走った! アタイらはッ!  走って走って、エルフィンフォレストを探し、ついに───! ───……。  コーン……。 彰利&ミア『オウフ……』 悠介   『ああもうそうだと思ったよこのたわけどもはぁああーーーーっ!!』  力尽き、ぐったりと倒れておりました。  や、だってさ、森は見つけたけど、走っても走っても里には着かないし、もはや出口も解らん……。空を飛ぼうにも結界みてーなのがあって森より上には飛べんとくる。  悠介は浮いてついてきたから筋肉的疲労はないようで、ケロリとしておるわ。 彰利「フフフ……甘いわダーリン……。    アタイにぬかみそ……じゃなかった、ぬかりはねぇぜ……?」  見よ、とプレートマップを見せる。  すると、デタラメに通過した位置が別色で塗り潰されており、つまりそこは通った道ということになる! あとはここ以外の場所に行けば十分到着可能!  ……っと、そういや今さらだけど、ポリットイーターに依頼終了通知を出しておくの忘れてた。えーと、クエスト用転移装置を開いて、と。はい送信。ブツはないが、メッセージを送ることも出来るのでラクチンです。 悠介『いや、それなら俺もやってたけどな……つーか誰がダーリンだ』 彰利「ダージリン?」 ミア「そういう意味で言ったんじゃないと思うよ……」  まあいいコテ。  息を整えればまだまだ動けるし、こういう時には月清力と月生力で回復を図ります。  月操力はマナとか関係ねーからほんと助かるわ。  これでアタイらを癒して、あとはもういっちょ突っ走るのみ! 彰利「うっしゃあいくぜギャルド! 冒険がアタイらを待っている!」 ミア「……なんか少し見ない内に随分と元気になったよね、彰くん」 彰利「男子3秒会わずんば虎児を得ずってな」 悠介『よく解らんがいろいろツッコミたいな』 彰利「あれ? コーディーを得ずだっけ? ……ハガーか!」 悠介『いーから進むぞ』  ぬう。こういうところに疎いのはろくなこと学ばなかったからかしら。  もっとちゃんと勉強しとくんだったなぁ。  反発してなきゃ、あのクソ親父だって木の一本残すくらい認めてくれたかもしれねぇのにさ。アホだねぇ俺も。 彰利「ちなみに俺、ガキの頃はマイクって言葉はマッチョって意味だと思ってた。    市長マイク(マッチョ)ハガーのお陰で。    だからガッコでもマイクのテスト中とか聞けば、    マッスルポージングをするのかと随分ドキドキしながら校長を見たもんだ……」 悠介『……結果は?』 彰利「壇上に立った校長に“脱げー!”って叫んだら追い出された」 ミア「わあ……」 彰利「あ、あれ? なしてそげに呆れた目で見るの?    フッ、そうか。こいつ俺に惚れやがった《ゲドッ!》オウチ!(訳:アウチ)」  なんかいきなりアリキックされた!  ところで知ってる? アリキックって、モハメド=アリが得意だったからそういう名前がつけられたんだよ? ウソだけど。アリはボクサーだしね。  実際はアリを蹴るために猪木が使った低空延髄蹴りのようなものらしいぜ?  我らの認識じゃあ、脛蹴りのようなもんですが。  ィヤッハッハ、でもゲドッてステキな音鳴りました。  普通に考えると漫画やアニメみたいな効果音、実際には鳴らんよね。 彰利「惚れた途端にアリキック……おいおいまいったな、デレツンかよ」 悠介『お前に惚れるヤツはそうそう居ないだろ』 彰利「アータそげな真顔でなんてことを……」  ちぃとくらい夢見たっていいじゃない。  でもそうね、惚れてもらっても苦労かけるばっかでしょう。  実際、夜華さんがそうだし。 ……。  さ、マップの森ン中を踏みつくしたところでようやくエルフの里前です。  エルフが立ってるからスゲー解り易かった。 エルフ「……人間が我らの里に何用か」 彰利 「里に用? え? …………用、無いなぁ……」 エルフ「なに……? 迷い人か。さっさと失せろ」 彰利 「ああいやいや、里には用無いけど、無の精霊とその石碑に用があります」 エルフ「なにぃ……? ───……んん?     おいそこの……そう、そのモミアゲが美麗なお前だ」 悠介 『よし行けミア』 ミア 「どう聞いても視線で追ってもカイくんしか見てないんだけど!?」 エルフ「まったくだ。そこの小娘のモミアゲが美麗? 冗談ではない」 ミア 「……ねぇ彰くん。どうして私、冗談ではないとまで言われなきゃ……」 彰利 「それだけヤツのモミアゲが美麗ってことっしょ」  なにやら俺人称悠介のモミアゲが気になっているのか、じっと見つめている。  うむ、解るぞ。あれは天然素材であるからな。  しかしながら甘い、甘いです。  記憶の中で見た晦悠介のモミアゲ……あれはカイに勝る美麗さよ。  きっと今まで“自分”にしっくりこなかったのは、晦悠介のことをきちんと知らなかったからなんだろうね。なるほど、確かにジワジワと思い出してきてる。記憶への刺激は効果を表し始めておるよ。  先祖、弦月彰利には無二の親友が居た。  彼は奇跡の魔法ってのを使って親友に言葉を残し、消滅。  どうして彼の情報が残ってて、俺が知ることが出来たのかといえば、その奇跡は家族には覚えてもらえていられるってものだったからだろう。いろいろあって先祖同士の“血筋”のお陰で“家族”として認識出来ている俺が、彼を知ることに不都合は働かなかった。そんなところだ。  っと、今はそげなことは関係ないね。 エルフ「創造の精霊か。精霊・スピリットオブノートから話は聞いている。     もし自分が動けない時期に精霊が訊ねてきたら通せと。     だが規則は規則。通行許可証は持っているか?」 彰利 「ほいさ」  言われてンバッと出すのはもちろん通行証。  エルフはそこに書いてある文字と御璽を確認するとコクリと頷き、通してくれた。 彰利「すげぇなモミアゲ様……モミパスじゃねぇか」 ミア「すごいなー、憧れちゃうなー」 悠介『ちょっと待てなんだそのおかしなパスの仕方は』 彰利「なにってお前アレだよ、顔パスのモミアゲバージョンに決まってんだろ」 ミア「すごいよねー、私なんてどうせ冗談ではない程度の髪だし……」 悠介『いや……お前らなぁ……』 彰利「精霊ってことで召喚術にあやかり、おまじないで道が開ける瞬間を見た気分だ。    もちろんおまじないは“モミパスモミパスルルルルルー♪”って」 ミア「ぷふっ!!」 悠介『…………』  モキリと青筋を浮かばせる創造の精霊さまがいらっしゃった。  その後僕らは盛大に笑い、一人怒りが頂点に達したかつては大人しかったボーヤが阿修羅となり……僕らは散々騒いで、門番エルフにしこたま怒られたのでした。 ───……。  エルフにゃ別に興味が無かったんで、石碑へ直行した僕ら。  そこには森林の中にあって、一箇所だけ陽光を受けて光り輝いているように見える聖域が……おがったとしぇ。あ、ちと意味違うか。おりましたとさ、じゃないね。そして陽光じゃねーや。この世界、太陽っつーか精霊が出す光で輝いているところだし。中井出に襲われたっぽかったけど、まだ元気で暮らしておるようだね、光の精霊。  まあそれはそれとして。 彰利「うおっ、急にもよおしてきた。アウトドアビッグしていい?」 悠介『全力でやめてくれ』 ミア「? あうとどあびっぐってなに? 地界の遊び? 私にも出来るかな」 悠介『全力でやるな!! つーか聖域に来ておいて第一声がそれか!?』 彰利「いやだって生理現象はしょうがあんめーよ。    つーわけでラフレシア詰みに行ってくるね?」 悠介『随分臭そうだなオイ……!』 ミア「なんだっけ。腐った死肉の香り?」  ひどい言われようだった。自分で喩えだしておいてなんだけど。  や、だってラフレシアだって花じゃない? 差別はよくねーよ差別は。  そげなわけで茂みにそそくさと入り、十分離れたところで我が体内に眠る邪を解放した。これでも結構我慢してたんで、もうケツが破裂せんほどの勢いで。 彰利「アオオ!!《ブリピィニリチチチ! モリブリ!!》」  するとどうでしょう。腹部を襲っていた違和感がスッと消え去り、解放感に満たされる。  やがて全ての邪なるものを解放し終えると、天使のようなサワヤカ笑顔とともに……紙が無いことに気づいた。 彰利「だが恐れない」  月然力・水でウォシュレットもどきをして、そこらの大きな葉っぱを水で洗って鬼塚先生言うところのアヌスを拭う。  そしてさらに水で流し、次に風で乾かすと凛々しい顔で立ち上がった。  それは自分の力で激戦を勝ち抜いた男の顔のようですらあったという……! 彰利「やあ、でもこういうのはしっかり埋めないとね」  土を掘って埋めて肥料にする。  よい作物が育ちますようにと願いつつ。 彰利「ちーーっす、今帰ったぜ〜〜〜っ!」  で、戻ってみれば二人はモノスゲー気まずそうな目で……なんでか正座してました。  その二人の前には、石碑の上に浮いている……長髪オールバックのおにーさま。  今ならば思い出せる、名前しか覚えていなかったそいつは───! 彰利 「えーとグスタフ=ミュンヒハウゼンだっけ?」 ノート『《ヒクリ……》弦月、彰だな? アウトドアビッグはもう済んだか?』 彰利 「げぇ、バレた。あわわわ」  そりゃそうっすよねぇえーーーっ! 精霊の聖域でビッグなんて普通しねーし、そもそも聖域なら相手に気づかれて当然っすよねぇーーーっ! 彰利 「だ、大丈夫! きちんと埋めて肥料にしてきたから!     フンコロガシの出番はないぜ!」 ノート『では私が今すぐ貴様をコロがしてもいいだろうか……!? なぁ……!!』  オ? なにやらカタカタ震えてらっしゃる。モノスゲー速度で。  もしかして彼もビッグを我慢してる?  やれやれ高位なる者となるとおいそれとビッグにも行けねーのか。 彰利 「なーに構わん。俺は別に……キミを見損なわないゼッ?《バチーム♪》」 ノート『では死ね』  バチームとウィンクをしてみせると彼は首飾りを振るい、刮目せよと唱えると首飾りを杖にして───襲いかかってきしぎゃああああーーーーーっ!!! ……。  しゅううう…… 彰利「グビグビ……」  半殺しにされました。  強ぇえ……こいつ強ぇえよぉおお……。 ノート『はぁ……さて。     汝らのことだからいろいろと面倒ごとを抱えてここに辿り着いたのだろうが……。     汝。カイ、と呼ぶべきか? それとも晦悠介と呼ぶべきか?』 悠介 『あ……いえ。記憶もまだ曖昧なままだし、好きに呼んでくれていいです。     ……スピリットオブノート、ですよね? ドリアードとともに僕を創ってくれた』 ノート『ああ。無事に理力が届いたようでなによりだ』  彼の便意も安全ゾーンまで届いたのだろうか。  今のところ頑張って我慢してる様子はなさそうだし。  ……ハッ!? そうか! 高位なる者としてのプライドが、そう見えないようにしているだけか! 彰利 「アタイ……あんたのこと誤解してたぜ……大したタマだよ、あんた」 ノート『《ポム》…………』  ボコボコの体を回復させて、肩に手を置いてドヤ顔をしてみせた。  すると無言で見つめられたのちに………………ボコボコにされました。 ……。  しゅううう…… 彰利「グビグビ……」  フフ、フフフ……やっちまったぜ……。  そうだよね、我慢してるヤツに対してあの態度はいけねぇよ。  彼は当然のことを当然としてやってるだけなんだから、そこを感心しちゃ相手に失礼だ。  相手に気づかれないように我慢してるんなら、俺も悠介やギャルドに気づかれねぇ位置で感心してやらないと。ならば二人の後ろに回ってと。  あとはバックパックから適当な紙っぽいものを取り出して〜……ねぇや。そもそもあったらそれで鬼塚先生言うところのアヌスを拭いておりました。  じゃあアレだ、月然力を上手く使って雲を発生させてと。  で、これを繋げて文字を書く! 彰利(便所、ガマンダメ! ……うむ!)  さあ受け取ってくれ僕の愛を籠めたメッセージ! やべぇ見事すぎて熱いため息が盛大に漏れた。……うむ、あなたは偉大だ! だが便秘にでもなったらどうするね!  ……なんて思ってたら飛んでくるのではなく、どうしてかずしんずしんと迫力満点で大地を歩いてくるノートン先生。  そ、そうか! きっと俺のメッセージに感動してくれたに─── ノート『誰が便所ガミサマかぁああーーーーっ!!!』 彰利 「えっ? あれゲゲェエエーーーーーーッ!!!」  なんてこと! 作った雲が俺の熱い溜め息の所為で位置をずらしたっぽい!  慌てて訂正しようとしたら既に顔面に拳を埋め込まれていて、為すすべなくボコられた。 ……。  しゅううう…… 彰利「グ……グビ……グ…………グ……」  いや……もう堪忍して……誤解なのにこのままでは死んでまう……。 ノート『はぁっ……! ああ、いい。細かい話は抜きにしよう。     気配から見て、他の聖域のマナの回収は終わっているんだな?』 悠介 『あ、はい。あ、でもまだロックスフォールの水のマナが───』 ノート『それならばこのたわけが纏っているものから回収すれば十分だ』 彰利 「え? 俺?」  死ぬつもりはないので地道に回復させました。最強。  で、なに? アタイにマナ? あるの? ノート『どこでなにをどうしたのかは解らんが、汝からは無以外の全てのマナを感じる。     まるで精霊そのものを使役しているかのような感覚だ。     ……いや、別に混じっているものが居るな?』 彰利 「混じ……? ああ、猫のことか」 ノート『猫?』 彰利 「おっと、これ以上はマナ出さんかったらダメや」 ノート『…………………………ふむ。忘却の猫のことか』 彰利 「ゲッ!? なんで知ってんの!?」 ノート『汝のその反応が答えだからだ』 彰利 「なんと!?《ガーーン!》」 ミア 「……彰くんってばおばか……」 彰利 「馬鹿とはなんだコノヤロウ!」  語るに落ちるって言うんだっけ、こういう時って……うん、えーんじゃけどね?  とほーと溜め息を吐いておると、何故かノートン先生が再びスーっと近付いてきた。  なんじゃいとまでにガンくれてみたんだが、無視して我が眼前へ。  な、何事? なにやら内側を見るかのように我がアイを凝視してきて─── 声  『ボディ!!』 ノート『《ゾォガボォッ!!げがぁっ!!?』  ───突如として俺の内側から現れた者に、腹を殴られ吹き飛んだ。 彰利 「ホ、ホワッ!? ワッツ!? 何事!?」 中井出『ゲハハハハハ……ご苦労……! お陰で警戒無く近づけた……!     やはり故郷はいい………ついている……と言いたくなるほどに、実にベネ……!』 彰利 「中井出!?」  ノートン先生を殴り、この場に降り立ったのは中井出だった。  腕は竜の腕となり、そこからはプスプスと煙が出ている。 中井出『ふふふ……やあ、精霊王スピリットオブノート。久しぶりだ。随分と。     キミのことを殴りたくて殴りたくてたまらなかった俺が、ようやく来たよ』  感じるのは殺気。  笑顔はひどくいびつで、心の底から憎んでいるヤツとようやく会えたような……そんな顔をしていた。 悠介 『ちょっ……提督!? いったいなにを───!』 中井出『なにって……ふ、不意打ち?』 彰利 「なしてそこで不安げに言うん!?」 中井出『う、うるさいよもう! 僕ただ殴りたかっただけだもん!     そして痛がってる今がチャンスだから今だブラックノートン先生!     マナを吸い取ってしまえぇい!!』 彰利 「へっ───!?」  中井出の腕の紋様から黒いスピリットオブノートが召喚される。  そして無遠慮にマナを吸収しだすと、それに気づき、止めるためにノートン先生が起き上がり仕掛けてくるが─── 中井出『拳骨!!』 ノート『《ゴドドゴォン》ぽぎゅうっ!?』  ゲンコツ一発で大地に吹き飛ばされていた。  ……っておいおいおい、今の絶対ゲンコツの威力じゃねーっしょ!? だって勢いのあまりノートン先生がバウンドしたよ!? ノート『なっ……がはっ……!? 超越が……効かない……!?』 中井出『敵など居ないと思い込んでいた日々がその実、暗黒に満ちていたのさ。     貴様ら超越する者相手にゃ天敵ってものが存在します。     そしてそんな天敵であり、     今日も元気な…………こんにちは、中井出博光です《脱ギャァアーーーン!!》』 ノート『な、何故このタイミングで脱ぐ!?』 中井出『何故……? フッ……やれやれそんなことも解らんのか。     なぁ“彰利”、こいつに教えてやってくれ』 彰利 「キョホホ、よいでしょう。それはな、こいつがホモだから───」 中井出『じゃないよ!? なんでそこでホモが出てくるの!? 違うよ!?     ていうかホモカテゴリは僕じゃなくてキミだったでしょ!?』 彰利 「おいおい隠すなよ変態オカマホモコンとも呼ばれたヤツが。     もっと……《フッ……》……胸、張っていいんだぜ?」 中井出『いやちょっ……なんでそこで理解あるおにーさんみたいにフッと笑むの!?     違うって言ったよね僕! ……え!? 恥ずかしがらなくてもいい……?     がるよ! がるに決まってるし否定もするよ!?     違うってば僕そんなんじゃ───』 ノート『なるほどな……そっちのケが……』 中井出『だからちょっと待とう!? なんでノーちゃんまで誤解してるの!?     そこ頷くところじゃないよ! 汚いものを見るところでもないってば!     ……体を庇いながら距離を取るところでもないよ!?     そもそも憎むことはあってもそんなふうに距離とられる覚えなんてないよ!?     だからこうして僕が時間稼ぎしてる間にブラックノートン先生にマナを……あ。     えっ……やっ……ち、ちちちチガイマスヨ!? 僕囮じゃなくて!     ただ純粋に思ってたことをぶつけようと思ってただけで!     だってイドもオリジンも殴ったのにキミだけ殴らないのは許せないじゃないか!』  クワッと叫ぶ中井出。  その顔はマジであり、言っている言葉にも不思議と重みを感じた。 中井出『でも殴ったらそれでチャラにするつもりだったんだ!     何故なら俺は! 己の覚悟とじーさんとばーさんに誓い!     仲間は絶対に自分から裏切らないと決めているから!     貴様らが俺を仲間だと思っていなくてもいい!     裏切られたと思わない限りは裏切らない! それが俺の芯! それが俺の覚悟!     だから───……あ、あれ? なんで無言で拳ボキベキ鳴らしてるの?     え? い、言いたいことはそれだけか?     え、あ、いや、訊きたいことはあるかなぁって。     やっ……僕当然のことしただけだよね!?     キミに殴られる覚えがなくても僕には殴る理由があったんだよ!?     忘れたからってそんな都合よく自分の正義翳されたって困るよ!     なのになんで僕がこんな引け腰にならヴァアーーーーーッ!!』  重みを感じたが……まあそれで突然殴られて許せるかっつったら別なわけで。  熱弁していた彼は、無言で杖を構えた精霊によってボコボコにされた。 ───……。  しゅううう…… ノート『グビグビ……』  ……とてもレアでアレな光景を見ている。  俺の目の前で無の精霊が泡吹いて倒れておるよ。 中井出『ぐふふふっ……うぐっ! ぐふっ! オエッ……!     残念だったな精霊王……! 貴様は確かに強かったが……!     技術ではまるで歯が立たずにボコボコなこの博光ではあったが……!     生憎とこの博光には───ヘッジホッグスキルがある!《どーーーん!》』  ヘッジホッグスキル。  なんでもダメージの半分を相手に返すものらしく、その威力をストックってもので蓄積させておいて一気に解放してみせたらしい。その結果がアレである。  まあ中井出のほうが可哀相なくらいにボッコボコなのだが。  今も「げほっ! ごほっ! ぶぅうっふぇっ!」とか言ってマジで吐血してる。 中井出『うぐつつつ……ひどい目にあったが、これで後腐れ無しだ。     喧嘩しても殴り合っても許せるから友達で仲間で家族っ。     うん、一方的に裏切らんだけの馬鹿だけど、俺はそんな俺だから生きていたい』  けど。  その合間合間で笑う顔は、不思議と目を惹きつけた。  なんつーんデショ。  笑顔は笑顔なんだけど、どっかで見たことあるような……どこだっけ。  なんつーか、すげぇ身近なものだったような気がするんだけど。 中井出 『ブラックノートン先生、回収終わった?』 黒ノート『ああ、完了した。引き付けてもらってすまないな、マスター』 中井出 『マスターとかはガラじゃないんすけど……色はどーする? 戻す?』 黒ノート『いいや、このままでいい。      私までもが元に戻っては、あの馬鹿者を迎えに行った時に寂しがるだろう?』 中井出 『なるほど確かに。けどいいの? 扱いひどかったって聞くけど』 黒ノート『許せるから友達で仲間で家族、なのだろう? ならば私もそれを貫くまでだ』 中井出 『……たはは、なるほど』  笑う中井出。  その笑顔にも既視感を覚えた。  ……どこだったっけ。  絶対に見たことがある笑顔。  楽しんでるって見て解るのに、その奥底にあるはずのなにかがとっくに壊れてる、みたいな感じの…… 黒ノート『ではさっさと済ませよう。弦月彰、フレアブランドとアイスブランドを』 彰利  「ヘワッ!? オ、オウヨ!」  言われて、月然力で作った木製の鞘に収めていた二つを取り出し、差し出す。  するとソレは受け取られるまでもなくフワリと宙に浮き、無の力を持って……空中で光となり、その光が合わさって───一振りの剣となった。 中井出 『おおっ! それがっ!』 黒ノート『魔法剣マグナブランド。残念ながらエターナルソードではないぞ』 中井出 『ええっ!? そうなの!?』 黒ノート『さて……次だな。カイ、剣化をしろ』 悠介  『……。はい』  悠介が一歩進み、体を輝かせてラグナロクになる。  それがさっきのように宙に浮いて、マグナブランドとかゆーのと一緒に光に。  これまた同じく合わさり、一つの光になると……やがてその光が弾けるようにゆっくりと輝きを鎮め…… 中井出『天象……降臨……!《パアアア……!!》』  ……何故か、その光の中から中井出が出てきた。 ミア 「えっ!? あ、あれぇ!? さっきまですぐ隣に居たのにっ!!」 中井出『手品です』 ミア 「手品!?」  ともかく、光とともに舞い降りた中井出の手にはカタチを変えたラグナロク。  剣というよりも刀っぽいそれが、鞘ごと彼の手に乗せられていた。  それをひょいと渡され、思わず受け止めると……なんだかそうしなくちゃいけないような気がして、シャアアア……と刀を抜く。 彰利「う……あ……」  その美しさに見惚れた。  刃物に対してこんな気持ちになるのは初めてだ。  漫画とかだけのことだと思ってたのに、まさか自分がこんな風に感じる時がくるなんて、思いもしなかった。 彰利「あっ……こ、これ、のっ……名前っ……」  胸がドキドキして、思い通り言葉が出ない。  それでも黒いスピリットオブノートはきちんと言葉を受け止めてくれて、 黒ノート『剛刃モミアゲブレードだ』  夢を砕くようなことをかつてないほどの真顔で仰った。 彰利  「ごっ……え? ごっ…………え、え……? ごっ…………えぇっ!?」 黒ノート『剛刃モミアゲブレードだ』 彰利  「聞き漏らしたんじゃねィェエエーーーーッ!!!      美しさと名前のギャップに驚いてんだよ!」 黒ノート『うん? 不服か?』 彰利  「最高じゃないッスカそれ……!《キラキラ……》」 黒ノート『だろう?《ニヤリ》』 中井出 『黒ノートン先生、なんだかんだで晦に対して恨み持ってるでしょ……』 黒ノート『くっくっ……知らんな、そんなことは。さ、用は済んだ。私は戻らせてもらう』 中井出 『あ、ちょっと待った。ノートン先生まで僕と契約しないよね?』 黒ノート『するわけがないだろう。するのは大樹とだ』 中井出 『え? や、ちょ待……キャーーーッ!!?』  黒いスピリットオブノートが中井出の中に消えた。  それとともに中井出の体が少し輝くと、彼はかなりの勢いで頭を抱えて落ち込んだ。 ノート『ぐ……う……!』  それと同時にノーちゃんが苦しげに起き上がった。  頭を抱える中井出を見る目は……敵を見るソレだ。 ノート『くっ……汝は危険だ……!     汝のような存在が居ては、“世界”のバランスが……!』 中井出『え? ああ、安心して? 僕この力、別に無くてもいいから。     ただね、のんびり生きていたいだけなの。     でも意思を死なせない&楽しみを探すための能力だけは消すわけにはいかない。     力を持っていても、攻撃されなきゃするつもりもない。さっきのは私怨だし。     だからほうっておいてくれないかな。     俺はもう、キミらに干渉することなんてしないから』 ノート『な……に……?』 中井出『過去があるから俺が“ある”。     お前達のこと……まだ仲間だって思ってる俺だけど、     それは相手を不快にさせてまで続けることじゃないしさ。     裏切るつもりなんてさらさらない。傷つける気持ちも全然ない。     だからさ、忘れられてるっていうのは……都合がいいんだよ。     俺には昔っから“信じること”しか出来なかった。     それを否定されて人を殴った時、     事情も聞かずに頭を下げてくれたじーちゃんに誓って、     俺はもう二度と裏切らないことをやめないって決めた。信じるかは別だけど』 ノート『……仲間……? なにを言っている、汝は───』 中井出『その覚悟を貫くためなら……俺はずっと孤独だって構わない。     向けられる笑顔には馬鹿みたいに手を伸ばして、何度裏切られたって笑ってやる。     俺は祖父母にこそ救われたんだ。     他の誰が否定したって、俺はこの“魔法”と一緒に生きていく』  にっこりと笑って胸をノックした。  覚悟完了、と唱えて。  ……その笑顔が、ようやくいつかに重なる。  それは俺が見たものではなく前世の自分。  心を砕いた自分が、いつか鏡の前でしてみせた笑顔で─── 彰利「……お前はそれでいいのか?」  それを思い出せたからだろう。  つい、そんな言葉が口から出ていた。  中井出の野郎はこちらを見て、何かを諦めてる笑顔をもう一度見せる。 中井出『よく言うじゃん。なにかを手に入れるには何かを諦めなきゃいけない、って。     どっちも取ろうなんて欲張ると、ろくな結果にならないだろ?     そんな常識だけは……どれだけ手を伸ばしたって破壊できなかったんだよね。     みんなのことを、かず───あいつに託した先で猫になって、ずっと苦しくて。     裏切らなきゃずっと仲間だって思い込めるけど、     それはとても悲しいことだってことを知った』 彰利 (…………ああ……)  その笑顔は、冷たかった。  暖かさはあるのに、それを知る者が受け取ればとても冷たい。  なにを諦めているのか? そんなもの…… 中井出『道連れは意思と武具だけでいいよ。別れるまで、どんな壁でも越えていこう。     だから───』  そんなもの─── 中井出『……いくらでも、利用してくれ』  ……“信じること、信じられること”を諦めている、というものしか、受け取れない。 彰利「………」  殴りたくなった。  ふざけんなって言って、思い切り。  でも体は動かない。  頭にじわりと広がる記憶が、それを許さなかった。  どうしてこいつが信じることを続け、信じられることを諦めたのかを思い出したから。  なのに─── 悠介『ふざっけんなこの馬鹿野郎!!』  俺の手の上で人化したアイツが、言葉を荒げて駆け、拳を振るっていた。  思いっきりって言葉がよく似合う鈍い音が鳴って、中井出がたたらを踏む。 悠介『っ……提督……! 忘れてたことは素直に謝るし、    俺は晦悠介本体じゃないから偉そうなことは言えないかもしれないけどな……!    俺はあんたを利用したくて友達やってたわけでも! 原中を過ごしたわけでも!    提督って呼んでたわけでもねぇぞ!?』  そんな中井出の胸倉を掴み、大地に足をついて睨む。  その際、チラリと俺のほうまで見て───あ、なるほど。 悠介『全部思い出した!    お前のこともあの戦いのことも! 晦悠介として生きてきたこと全部!    その上で言ってやる! ふざけんな馬鹿野郎!!』 彰利「そうだそうだ! ジャイアンの言う通りだ!」 悠介『そうじゃねぇだろたわけ!!』 彰利「アルエェエ!? あおれとかそういうアイコンタクトじゃなかったん!?」  つーか中井出が馬鹿でアタイは変わらずたわけですか!? 悠介 『お前は……! 覚えてる相手にまで利用しろなんて言うのか……!?     原中ってのは───俺達がさんざっぱら笑ってた“世界”ってのは、     そんなくだらねぇ絆で作られたものじゃなかっただろうが!!』 中井出『……“俺”は、そこには居なかった。だろ?』 悠介 『───! お、俺達にとっては───』 中井出『原中は三人だけで完成するもんじゃない。     二人覚えてるだけで、あとは全員が彰利を将軍だと認識してる。     ……“現実”で原中の名前出すのは勝手だけど、     もう……俺は解散宣言して、抜け出した一人だ。     提督って呼ばれても平気なのは、意思にはそう呼ばれてるからだ』 悠介 『意思…………そうかヒロライン! だったら───!』 中井出『おや、興味がおあり? 遊んでいくなら大歓迎だよ?     ゲームはみんなでやるほうが楽しいから』 悠介 『…………掌返すの早いなオイ』 中井出『信用の話とゲームの話、なにか関係ある?』 悠介 『……ないわな』  いまいちよく解らん。  ミアなんて俺より先に蚊帳の外状態だ。  どーしたもんかー……と思っていると、黒ノートン先生が静かに影から出てきまして。  その影を俺に繋ぐと、カイと融合した時のように過去の景色を見せてくれた。 中井出『あっはっはぁ、俺の心配したけりゃ同じ境遇味わってみれ?     一緒に戦った仲間にも、ご主人様って呼んでくれた人にも斬られりゃ、     人から信じてもらえる喜びなんて…………どうだってよくなるさ。     信じることの怖さを知ってもまだ、暖かさを求めることはやめない。     意識して信じることをやめそうになっても、無意識ではやめられない。     それでいいって俺が言ってんだから気にしなさんな。     別にホラ、信じられることを嫌ってるわけじゃないんだって。     手ェ伸ばされればきっとホイホイついていくよ俺。     で、そいつに目一杯楽しいを教えるっ! 笑ってくれたら、それが俺の笑顔だ!』 悠介 『……お前の中の凍弥の意思、影響出すぎてるんじゃないか?』 中井出『あれ? これってお節介か?     ………………お節介か。まあいいじゃん楽しくいこう。     ごめんな。こればっかりはもうどうにもならんと思う。     いつか───そうだなぁ。いつか、うんとガキの状態から人生を歩むとして、     そんな頃からいろいろと馬鹿やって笑い合える家族みたいな仲間が出来たら……     また心から誰かを信用したい、されたいって思うかもしれん』 悠介 『俺達はもうだめってことか?』 中井出『ンマッ。仲間だって認識されてるだけじゃ不服? 贅沢だねぇ』 悠介 『……スマン、お前にそれ言われると破壊力がだな……』 中井出『いいっていいって笑いなさい。俺ゃもう、ちょっとやそっとじゃ傷つかないから』  ゲラゲラと笑う。  そんなあいつの過去を、様々な映像で見てゆく。 中井出『自分のためと銘打って仲間の未来をと頑張った。     で、残されたのは平和な仲間の未来と、ズタボロキャット虐待伝説と孤独な僕。     いいんだ、なんかもうリアルなんてクソゲーだって言葉もいろいろ解るから。     これが孤独に酔ってる状態なんだとしても、     あとで後悔するのが自分だけで、周りは忘れるってんだからサイコーじゃないか』 悠介 『…………なんでそんな、諦めたようなこと言えるんだよ』 中井出『いいじゃんいいじゃん、俺のことなんて気にしない。     それよりなにか楽しいことをしようっ、なっ?』  ゲラゲラ笑いだったかと思えば、なんか人のいいおっさんっぽい反応を見せる。  ……しばらく出てこなかったうちに、中のほうでいろいろやってたんだろうか。  信用の話も本当なのかウソなのか。  そうこう考えているうちに全てを見終え、その頃には薬も完全に馴染んだ。  ……あいつがどんなヤツで、俺たちがどんなことをしてしまったのかも、思い出せた。  謝りたい……ああそうだ、ヤムヤムの言うとおりだ。  それがたとえ自己満足にしかならないのだとしても、謝らずにはいられない……! 彰利 「なっ……中井出! 俺っ、俺も……全部、思い……出して───だから!」 中井出『カモンマイサン!!』   パグオシャアッ!!  ……謝らずにはいられないはずだったのに、カモンマイサン言われた途端に体が反応を。  お陰でクロスカウンターが炸裂し、俺と中井出は大地に沈んだ。 ミア「わわぁっ!? な、なにやってるの二人ともっ!」 彰利「おががががが……!    ば、ばかな……ば、ばかな……言葉に釣られてつい拳が……!」 悠介『あー……なんだ? Mr.フルスウィングだったか?』 彰利「押忍。親父ー! カモンマイサン! のノリで殴る瞬間が大好きです。    あれ? つーか中井出がいねー!」 ミア「? さっきの人なら……顔面を引き攣らせながらウィンクして消えたよ?」 彰利「なんと!?」  なんちゅうやっちゃ! 逃げおった!  人がせっかく思い出して謝ろうと思った矢先に! と思った矢先に声が聞こえてきた。  中井出のだね、これ。 声 『あ、そうそう。謝罪のことなら命懸けでいらないから』 悠介『そこまで嫌か……ていうか今どこだ?』 声 『キミらの中に。害は無いから大丈夫。    そして謝罪は届かないよう既存を捻じ曲げてあるから無駄です。    謝ってほしくて突っ走ってたんじゃないんだってば、だからいい』 彰利「……キミさ、それって信じられることを諦めたんじゃなく、    信じることが怖いだけじゃねーの?」 声 『そうかも。自覚が足りんだけなのかもしれん。    だって自分の感覚とか本当におかしな状態になってるんで。    中井出博光としては人は嫌いじゃないのに、猫としては人が怖い。    そんな感じで“俺”がおかしくなってるからさ、    今謝られても絶対に拒絶反応起こす。そんな反応、お前らには見せたくないからさ。    自覚出来るようになったら、信じることも信じられることも平気になるだろ。    あ、でも、裏切ることは絶対にせぬ! それだけは絶対に譲れぬ!』 彰利「じゃあ謝らせろ中井出てめぇ!」 声 『あ、キャッチホンだ。切るぞ彰利』 彰利「あぁっ! 待ちたまえ!」  …………言ってみたところで、容赦無く切りおったわ……。 彰利「こりゃ……まいったなぁ……」 悠介『さすがに、同じ境遇を味わってみろって言葉も納得出来るあたり、何も言えないな』 ミア「なんのこと?」 彰利「む? ……おっほっほ、いやなに、百年以上も昔の……とある悲しい出来事のこと」  ぽむぽむとミア子の頭を撫でて、ジジイチックに微笑んだ。  さて……問題はこっからか。 彰利「よし、悠介バトンタッチ」 悠介『へ? なにがだ?』 彰利「えーからえーから」  悠介に問答無用でハイタッチをさせる。  それでアタイはニコリと笑った。  とりあえず痛さに震えるノートン先生は無視の方向で。  なんか珍しいモン見てる気分だし。 Next Menu Back