───KAWAPPA───
【ケース27:晦悠介(再)/しっとりとしていて弾力があって貼り付くようなアレ】  ───じゃなくて! 悠介『提督!? 提督ーーーっ!! ちょっとヤバイ事態に陥った!    協力してくれ! つーか居るんだよな!?    俺達の中に居るとか言われてもよく解らんぞ!?』 声 『豆が欲しいか……!? ならばくれてやる!!』 悠介『豆はいらんから力をくれ!!』 声 『えぇっ!? …………ま、豆は?』 悠介『急いでるからさっさとしろ!!』 声 『ククク……豆を要らんというクズに与える慈悲などないわ……!』 悠介『テメェェェェ!! いったいどこまで豆に情熱注いでやがんだァァァァ!!!』  叫んでみても声はあっさりと消え、あの野郎めェェェェと叫ぼうとしたら、なんか目の前に「やあ」と手を上げるばか者が。 中井出『で、なに? 用が無いなら僕帰る』 悠介 『居るなら居るってさっさと言おうな!?』 中井出『失礼な! 後ろに立ってたのに、     なんか虚空に向けて叫んでるキミが悪いんじゃないか!!     気味が悪い上にキミが悪いなんて気味が悪いにもほどがあるからキミが悪い!』 悠介 『やかましい!! それより彰利が空間の歪の濁流に飛び込んだんだよ!     早く助けないといろいろまずいだろ!』 中井出『え? やだなー、命綱とかつけてたんでしょ?     どーせそれを今も持ってて、     実は命綱がありましたーとか僕をからかうつもりなんだろこのやろっ!』 悠介 『………』 ルナ 「………」 ミア 「………」 中井出『いやあの……なんでみんな目を逸らしますか?』  え、もしかしてマジですか? と首を傾げる我らが提督。  それに対して顔を逸らしながらウムと頷いてみせると、大慌てで提督の事情聴取が始まり───すぐ上の虚空に次元の歪があることを知ると飛翔! ……直後にノームになった。 中井出『いや……これ言っとくけどアレだよ? ミスとかじゃないから。     つーかさ、弾かれるってことくらい言っとかない?     要らんダメージ食ったじゃない……』 悠介 『いや、提督なら常識破壊して弾かれても無理矢理入るかなーって』 中井出『人に出来る限界ってもの考えましょうね!?』 悠介 『限界無視して散々と常識破壊してきたあんたに言われたかないわ!!』  しかし焦った様子の提督は両手に巨大双剣を出現させると、 中井出『武器はしっかり二刀流ゥ!!《ジャガァッキィンッ!!》』  随分と懐かしい言葉とともに鬼人化。  さらに何故か俺をサクリと切ると、ソレがスイッチとなって鬼靭モードへ移行。 中井出『さあ! 元気良く行きましょう! 次元斬!!』 声  『ってちょーーーっと待ったぁあ!! そんな力で空間切ったら、余計に歪が!』 中井出『知らぬ! クラスメイツが危機になったならば、世界よりもメイツを選ぶ!     それが我らの原ソウル!     もはやこの世に原中はないが、それでもフェルダールには存在する!     ならば叫ぼう漢道! 次元斬!!』 声  『あぁあーーーーーーーーっ!!!』  綺麗な音が鳴った。  ゾガァアッフィィインッ! と、ゲームとかでしか聞かないような音。  提督の武器は本当に見事だ。空間斬るだなんてとんでもないことを普通にするし、造形も効果も異常だと思えるほど。  そんな彼が斬った空には、いつかノートが消えた時のような綺麗な斬痕。  奥には蠢く次元の濁流があって、提督はそれ目掛けて─── 中井出 『行け矢島! じゅうまんボルトだ!!』 黒ノート『《ずるり》ぬ? おっ───なぁっ!? ちょっと待て汝! な───』  霊章から引きずり出した黒いノートを、全力で投げて自分も飛んだ。 中井出 『彰利を連れ戻してきてね! 俺は切断面と次元自体をなんとかするから!』 黒ノート『ななななな汝なぁあああああーーーーーーーーっ!!!』  そうして俺達は、ノートが飲み込まれて消えてゆくのさえも見送った。  もはや何も言うまい……まさか精霊王まで投げ捨てるとは思わなかった。 中井出『さぁああて参りましょう! 紅蓮に元素! 蒼碧に時!     連ねて一つの力と為す! 義聖剣!』  提督が双剣に属性を込めて、それを長剣化させると……なんとジークフリードがテイルズオブファンタジアの時の剣・エターナルソードの形に!  ……でも元が元だからデカい! 無駄にデカい!  ジークフリード自体が巨大長剣と呼ばれただけあって、本当にデカい! 中井出『時の剣よ! 次元の切れ目と歪を安定化しておいて!』 悠介 『させたまえとか言えないのかよ!』 中井出『黙らんかスグルーーーーーッ!! 俺ゃお願いする立場なんだよ!!     能力無ければただの雑魚の僕に、武器様に命令!? アホか! このアホが!』 悠介 『時間経ってもいちいち格好つかないヤツだなぁあああもう!!』  まあそれはともかく、提督がエターナルソードを切れ目の隙間に固定して、不安定な部分を落ち着かせる。……一人であれだけのことが出来るんだから、つくづくあの人の武具は規格外だ。あくまで武具は。  その隙に黒ノートが彰利を連れてきてくれたお陰で、とりあえず作業が再開された。 彰利「ヒィーーーッ! ヒィーーーッ!! しっ……死ぬかと思ったァアアーーーッ!!    ちょいとダーリン!? 命綱がただの縄だったアタイの心をどうしてくれるん!?」 悠介『参考までに何処まで飛んでいったー?』 彰利「あ、なんかヘンなところー。どっかで見た気がすんのよなぁ。    次元の歪ってのはなにも、空間だけの所為ってわけじゃーねぇかもしれんぜー?」 悠介『? それってどういう意味だー?』 彰利「飲み込まれてちらっと見た途端にスッピーに助けられたから、    まあマジでチラっとしか見えんかったんだけどね。    ……ありゃあ多分……」 悠介『多分ー?』  ……面倒だ。離れている分、声を少々張り上げなきゃならない。  ていうか通信があるじゃないか。最初からそれをすればよかった。 彰利  「あ、ま、まあ多分違うだろうから気にせんでえーね!      つーわけでちゃちゃっと安定化させてくるぜ〜〜〜〜〜〜っ!!      あ、中井出、この縄そっち縛っといて」 中井出 『時の剣の柄でいいのか? ほいきた』 彰利  「なんかいろいろ恐れ多い気がするよね」 中井出 『“使えるものはなんでも使え”でいーじゃない』 彰利  「だぁね。ほいじゃあちゃちゃっと解決! あ、スッピー、もうちょい右」 黒ノート『自分で飛ぼうとは思わんのか……』 彰利  「わからんのか、このたわけが」 黒ノート『何一つ解らんわ!』  裂け目に隠れて地面からじゃ見えないが、どうやら縄を時の剣につけ、彰利自身はノートが抱えて動いているらしい。  さすが無の精霊だ、次元の濁流の中でも普通に動けるのか。 彰利  「てゆゥかさ。これってスッピーがやった方が早くない?」 黒ノート『……その呼び方はやめろ』 彰利  「じゃあノートン先生で。で、どないなん?」 黒ノート『出来ないこともないが、無駄なマナは使いたくない。      汝は好物を食べれば回復するだろう? 生憎とマナは無限ではないのでな』 彰利  「グ、グウムッ。これだけ緑に溢れとってもま〜だそれ言う?」 黒ノート『この自然はこの時代、この世界の精霊のものだ。我らのものとは違う。      各々が自分を取り戻すために必要とはしたが、必要以上に取るつもりもない。      あとはマナの種だけでも頂き、それをユグドラシルの傍で育てるだけだ』 彰利  「いろいろ大変なのねェ〜〜ィェ。……っと、おっしゃ、終わったで〜」 中井出 『えらく簡単だなオイ! え!? これで終わり!?』 彰利  「クォックォックォッ、次元マスターのアタイにかかりゃあコレモンよ?      でも……やっぱ変やね。……トランス。      おーいベリッコヤムヤムー、ちと聞きたいことがあるんじゃけども」 悠介  『?』  切れ目から彰利が出てきて、ノートが提督の中に戻ると、提督が切れ目を時の剣で修復、完全に閉じてこの場の安定化は終了する。  けれど降りてきた彰利はベリーと通信しているようで、なにかを話し合っていた。 彰利「え……そうなん? マジすか……」 悠介『彰利? どうかしたのか?』 彰利「あ、や、ちと待ってヤム子さん。    ───いや、なんかヘンだなーと思って聞いてみたんじゃけどもね?    次元の澱みにヘンなもんが混ざっとんのよ。    しかもそれが一定の場所から流れてきおってるみたいでね?」 悠介『一定の?』 ルナ「んー……? それがどうかしたの?」 彰利「それをなんとかせんと澱みを直してもま〜た澱みが出来るっつーんですよね。    全てパァです。またやり直しになる上に、余計に広がるみたいざんす」 ミア「え……あ、彰くん、それほんとに?」 彰利「てめぇインディアンナメんなよ?    インディアンは嘘つかねーんだぞ? アタイインディアンじゃねーけど」 ミア「じゃあ彰くんは嘘つきなんだよね?」 彰利「オウヨ!《どーーーん!》」  ええい胸を張るな、胸を。 彰利「つまるところYOォオ?    歪の大元みてーなのがあって、それをなんとかしつつ他を安定。    そげな面倒なことをしなけりゃならねーらしいのよ。    で、安定する度に歪がデカくなってる場所があるそーで、そこが澱みの大元っぽい」 悠介『その大元がある場所は?』 彰利「サーフティールの水中神殿」 悠介『……だろうなぁ』  あそこで次元に影響を与えるようなことをした覚えはない。  だというのに歪があるのはヘンだと思った。  澱みの原因があるとしたらあそこくらいだよなぁ。 彰利「そいでね、水中神殿の澱みを直せば次元自体が大分安定するだけど、    やっぱ各地の安定自身は必要みたい。    んで、各地を安定させてると大元がまた澱み始めるから、    ちょくちょく行く必要があるみたいね」 悠介『激しく面倒だなおい……』 彰利「だよね……マジで。けどまあ言っても始まらんからさっさと行こうね。    ……多分、滅茶苦茶貴重な体験が出来ると思うから」 総員『……?』  彰利の言葉に全員が首を傾げながらも移動を開始する。  そそくさとまた姿を隠そうとした提督の首根っこをムンズと掴み、ジークフリードで飛んだ方が速いとニコリと提案すると、「楽ばっかしてんじゃねー!」と無駄に説得力のあることを言ってきたので美味いあんぱんをご馳走すると言ったらあっさり頷いた。  ……随分安い男だった。 ───……。 ……。  さて。サーフティールの庭園までジークフリードに乗って飛んできたわけだが…… 彰利 「相変わらず“各馬一斉にスタート”なのね」 中井出『もぉちろんさぁ。そんなわけで水中神殿目指すわけだけど……     晦一等兵はもう他のやつらにゃ忘れられてるんだっけ?』 悠介 『ああ、そうなる。だから水竜とのコンタクトも難しいと思うぞ』 中井出『わあ』  物凄い嫌そうな顔だった。  そんな顔を見せたのちに「ぼ、僕闇系の仕事があるから!」とかワケの解らないことを言って彰利の陰に消えて、ってうぉおおおおおいぃ!? 悠介『待てって提督! 提督!? ちょっ……ああああもう!!』 彰利「相も変わらずいろいろ自由なやっちゃなぁ……。    まあアレよねィェ? ようは水の膜張って中に潜りゃあえーのよね?」 ミア「出来るの?」 彰利「…………」 ルナ『じゃあウンディーネに頼んでみるとか』 悠介『前のときと同じ方法か』 彰利「そりゃああの時はウンディー姉さんが悠介の精霊だったからえーけど、    今は中井出のっしょ? そりゃあちと無茶なんでない?」 悠介『訊いてみればいいだろ。おーい提督ー?    ウンディーネの力を借りたいんだけど、大丈夫かー?』  一応訊いてみる。  すると彰利の影からゴワゴワと黒い球体が盛り上がり、空中で破裂するとウンディーネの姿になった。 悠介    『……黒いのもこれはこれで便利だったりするか?』 ウンディーネ『話しかけないでください汚らわしい』 悠介    『………』 彰利    「キミさ、ルドラの時にどんだけ外道なことしたのよ……」 悠介    『俺が知るか』  まあ、精霊の意思を無視して契約の楔の元に酷使してた〜って想像はつく。  さらに言えば彰利から得た黒で飲み込んで、有無も言わさず、だったのだろう。  そりゃ嫌われるわ。 ウンディーネ『では膜を張ります。移動方法は方向を指示してくれるだけで結構です』 彰利    「オッケン!」 ミア    「み、水の中に入るんだ……なんだかわくわくするね彰くんっ」 彰利    「ほっほっほこのタコが、一丁前に興奮しておるわ」 ミア    「こ、興奮くらいするよ!?        ていうかタコ呼ばわりされる覚えなんてないよ!」 悠介    『はーいはいはい、いいから行くぞ』 ルナ    「頼むから、騒いで水竜を呼び寄せるなんてこと、しないでよねー……」  ウンディーネが水の球体を作り、俺達を覆う。  その上で水溜りにしか見えない穴へと落ちると、水の表面の下に広がるは水中神殿。  ここから見えるのは神殿というよりは、以前言ったように都市だな。  見えるカタチは当時の姿のままだ。水流らしい水流も、地震も起きないためだろう。恐らくは沈んでしまった当時のままの姿で、それはそこにあった。 彰利「ホッホォォォォ……相変わらずなんと見事な……」 ミア「ふぅわぁあああ…………! 綺麗だねー……!」 彰利「おっ、“フンヮー!”なんて、    ヴォルフガング・クラウザーのブリッツボールの真似か!?」 ミア「ふわーって言っただけだよ!? ていうか誰!?」 ルナ「……そういえばゆーすけ? この都市にお宝とかはないの?」 悠介『ないな。剣になる前に探したことはあったけど、    過去の文明がそのまま水浸しになってるだけだ。    都市っていうだけあって、ただの居住区だったんだろうな。    水竜は“魚人が数人居る”って言ってたけど、会えた例がない。    悠黄奈は会ったことあるらしいんだけどなー……』 ルナ「魚人……」 彰利「きっとサハギンだぜ!? ……あれ? それってもう会ってる?    じゃあ別の、モンステウとは違う生き物やね。    魚人……魚人…………きっと魚人空手5000段とかいってて、    殴る時に“エイッ!”とかってブフッシュ素敵!!」  水中を進む。  以前は通った聖堂方面へは行かず、都市側の方へ。 悠介『ベリー。反応はこっちからでいいんだよな?』 声 『そうそう。聖堂の方には水竜が居るから行かないようにね。    で、えーと……入り口が崩れてる石造りの家があると思うんだけど』 彰利「オ? ……オー、あれやね。あそこン中?」 声 『や、その左隣にちょっと狭い通路があるわよね?    その先に、さらに下層に繋がってる水路みたいなのがあるから、そこ降りて』 悠介『お、おいおい……暗くてなにも見えないぞ?』 彰利「闇の中ならアタイにお任せ! 伊達にブラックオーダー名乗って無かったわYO!」 悠介『お前、闇を展開したら自分も見えなかったろうが!』 彰利「う、うるせー! あれは本気出してなかっただけだもん!    本気出したらアタイステキ! アタイ最強! つーわけでウンディー姉さん!    臆することはござーません! 古くより続くステキな言葉を今ここに!    突き進むが吉! まっすぐGO! 全速前進だァーーーーッ!!」 悠介『進むのが悪いとは言わないが全速前進は言いすぎだろ!』 彰利「じゃあゆっくり行こう! 許しが出たからゆっくり!    そィでのろのろしているうちに次元がおかしくなっちまえばえーのよさ!」 悠介『それは俺も考えはしたが、焦って溺死するよりよっぽどマシだろうが!』 彰利「グ、グゥムッ」  結論からしてゆっくりと進む。  まあまあな速度でジワジワと進み、暗ければ彰利が月醒光を放った。 悠介『……お前が黒くない光を出すのも懐かしい感じだな。こう、改めて見ると』 彰利「黒いのも出せるぜ? 改めて言うなら」  狭い通路……通路? まあいい、通れるなら通路だ。を抜け、ゆっくりとさらに深くへと沈んでゆく。  ……水中の闇の中って、どうにも不安になるな。  一応、光で照らしてはいるものの、その先から何かが出てくるんじゃないかって常に不安になる。 彰利「ところでさぁミア助。    海底って言葉があるけど、海じゃない場合の底ってどう呼ぶんじゃろね」 ミア「え? えっと……“みずぞこ”?」 彰利「ぬ。ありそうな予感。でも海底って言葉から考えると“すいてい”かねぇ……」 ルナ「ゆーすけ、答えは?」  何故俺に聞く。 悠介『あー……“みなそこ”、“すいてい”あたりだった気がするな。    というかだな。高校生が地界の勉学から離れて久しい相手に漢字の云々を訊くな』 彰利「ウフフ、ダーリンたらお馬鹿さんっ♪    アタイったら教師から“お前もうおしまい”宣言くらってるから、    現役高校生とはちぃとワケが違うのYO?」 悠介『だとしても勉強くらいしてただろうが』 彰利「成績なら下から数えた方が早かったもんね! 悪いかえ!?」 悠介『悪いだろ。頭が』 彰利「うう、ちくしょう」 ルナ「頭のいいホモっちって想像つかないから、そのままでいいと思うよ」 彰利「ル、ルナっち……このままの……ありのままのアタイでもいいと……!?    つーかぽやぽやで頭のよろしくない貴様にそげなこと言われたかねーんじゃけど」 ルナ「ホモっちよりはいいわよぅ」 彰利「ホホ、嬢。無理せんでもよいのじゃぜ? 死神として生まれて、    教育を受ける機会もなかった嬢が頭がいいわけねーんじゃよ」 ルナ「学びはしなかったけど、    生きた分だけ人ってものを見てきたから、それなりではあるけど」 彰利「ハーーーッ!! なんじゃよ!? 人が下手に出てればつけあがりおって!    ならば、つくしが芽吹いたらタンポポになるって知っとるのかね!」 ルナ「っ……し、知ってるわよ? そんなの常識───」 彰利「やはり馬鹿だった!    しかも傲慢にも知ってて当然という態度を取った!」 ルナ「うくっ……ほ、ホモっちこそ真性の馬鹿のくせに!」 彰利「どうやって俺が馬鹿って証拠だよ!」 悠介『頼むから正しい日本語で喋ってくれ』  水路を進む中で、そんな騒がしいやりとりを続けられる根性は見習うべきだろうか。  こっちは出来るだけ奇襲がないか、危険はないかと神経を尖らせてるっていうのにまったくこのたわけどもは……! 彰利「じゃけんども結構深いねここ。    このまま行って圧力でペッチャンコーとかねーのかね。不安だよ我ァ」 悠介『ノヴァルシオの面積からして、圧力がかかるほどの深さは無いと思うぞ。    ……ほら、もう底が見えてきた』 彰利「あらほんと。ヤムヤムー、道が分かれとるけど、どっち?」 声 『反応は左からだねー。右のほうは……なんだろ、解らないわねー』 彰利「うおっ、スッゲー適当な声。オッケンじゃあ右! 右行こう右!」 悠介『左だな』 ルナ「左ね」 ミア「左だね」 彰利「なしてみんな右否定するの!? キャプテンナメんなよ!?    右だーって言って飛ぶと絶対にゴールポストに頭ぶつけるんだぞ!?」  なんの話だ。  ともかく彰利の提案はあっさり却下され、水の膜は左の通路へ。  そこをゆっくりと進んでゆくと、奥のほうからじんわりと明るくなっていくのが解る。 彰利「おや明かり? こげなところに光源があるなんて、きっと……罠じゃぜ!?」 悠介『よし、これで罠の心配は無くなったな』 彰利「なして!?」  ホガーと謎の奇声をあげて抗議する彰利はほうっておくとして、明かりがあるところまで辿り着くと、どうやら行き止まりらしく……光が差している上を見上げてみれば水の表面。どうやら陸(?)があるらしい。 彰利「ほんに水路みたくなってたんね。上がってもらっていい?」  特に返事はなく、ウンディーネが膜を操り水から出る。  膜が消えると、まずは不安だった酸素を確認……普通に呼吸できるな。 ミア「わああ……これ、露明石だよね? こんなに大きいの初めて見たよー!」  一人頷いていると、ミアがこの空洞を見渡して声を張り上げた。  言葉の通り、中々に大きな空洞には露明石が存在していて、しかもそれがやたらとデカい。これが反射して水路を照らしていたんだろう。 ルナ「あ。あっちに通路がある」 彰利「なんと!? わあ、ほんとだ。しかも人工物のようには見えない通路だー……」 悠介『なんというか……あれだけここに居たっていうのに、    こんな場所を知らなかったっていうのも笑える話だな……』 彰利「能力ある頃に探索してりゃあいろいろ便利だったのにねーィェ。    そげなわけでまだ見ぬ場所のお宝は俺のもんだーーーーっ!!《ダッ!》」 ミア「あっ! ずるいよ彰くん! お宝は仲間で分けないと!」 悠介『待てミア! ツッコむところはそこじゃないだろ!? あ、あ……あー……』  止め切ることも出来ず、結局いつも通り見送ることになってしまった。  なんというか、あの馬鹿の無駄な行動力はいっつも無駄に強く返ってくるんだから、もっとのんびりと行動してもらいたいんだが……。  なんて思ってる内にドカーンという音と、キャーという怪虫に襲われそうになった仲田くんの悲鳴にも似た声が聞こえた。  もういっそほっとこうかとか考えてしまう俺は、決して悪くないよな……?  俺が一緒に行かないってことは、武器を持っていかないってことだってどうして解らないのかなぁあの馬鹿は。 悠介『…………行くか』 ルナ「……いつもおつかれさま」 悠介『……あー』  ぐったり気分でとぼとぼ歩く。  急ぐだけ無駄な気がした、というよりは少しは学んでほしかったから、あえてゆっくり。  そうしてのんびりと辿り着いた先には─── ??『………』 悠介『………』  先には………… ルナ「? あ、あ……? あーーーっ!!?」 ??『《びくぅっ!》!?』  い、いや……視線、視線が外せない。  いや、これは……は、反則だろ! こんなっ……こんなぁぁぁ……!! 悠介『河童だァアアーーーーーーッ!!《キラキラ……!》』 河童『!?』  河童……そう、河童が居た!  古き良き時代の、甲羅を背負って頭には皿で、なんかトゲトゲした髪の毛みたいなあの河童! うわぁちゃんと水掻きがある! クチバシもだ! うわぁうわぁうわぁああ!! 彰利「ダーリンダーリン! 河童! 河童YO!」 悠介『ああ彰利! 河童だ! すげえ! 河童だ!』  なにやら頭にタンコブ作った彰利がやってきた! けれどテンションが上がりっぱなしなのか、特に痛いとかも言わない。これだけ目立つタンコブなのに、興味が痛みを凌駕しているようだ。 彰利「なんかね!? 全速力で走った先に河童が居てね!?    つい視線が釘付けになってね!? あそこの露明石に突撃しちゃってね!?    ギャアでも河童すげぇ! かかか河童さん! お、おおおオイラと握手して!?」 河童『………』 彰利「《ヒタリ》キャアひんやり! おぅい悠介! 僕の親友!    この河童さん結構フレンドリーだよ! つーかひんやりとしてしっとりとして、    まるでカエルのお肌みたいにしっとりつやつや!」 悠介『お、おおおおお! か、かか河童さん! 俺とも! 俺とも握手を!』 河童『……? ……?』  なんかおろおろしてるけど、俺が近寄って手を差し出すと、戸惑いながらも握ってくれた。……あ、やばい。なんだか涙が……! 彰利「やべぇ……過去の世界でそりゃあ妖怪に会ったことはあったけど、    妖怪腐れ外道もどきばっかりだったし……!    こんな、こんな見事な河童さんが世界に居たなんて……! っ……くぅう……!」 悠介『うっ……うぐっ……ぐすっ……』 ミア「あ、あれ? 泣くとこ? ここ泣くとこなの!?」 彰利「馬鹿野郎! お馬鹿! ミアさんたらお馬鹿!    ばっ……この馬鹿! 馬鹿め! 馬鹿め!!」 ミア「そこまで言われる筋合いないよ!?」 悠介『話さねばなるまい……! 河童とは……!』 彰利「ぬ、ぬう。し、知っているのか雷電……!」 悠介『う、うむ。河童……それは───』  ◆河童───かっぱ  日本の妖怪、伝説上の生物と呼ばれている。つまり架空として知られている。  しかし架空にしては形がしっかりとしていて、好物がキュウリであることすら有名。  人の思いが形作ったものの壱。恐怖や憧れが物の怪になることは稀に良くある。  河(川)と童(わっぱ)が合わさり最強に見えたから河童と呼ばれるように、  姿はそう大きいものではなく、子供のように小さい。  だがその腕力は大人顔負けであり、相撲を取らせたら右に出る者は居ない。  不思議なことで両腕は体内で繋がっていて、  片方の腕を引っ張るともう片方が縮むとされる。  なのでズームパンチ(物理)が可能。片方を延ばしすぎると取れてしまうとの伝承も。  皿は常に濡れていないといけないらしく、  乾くと衰弱、割れると死ぬか衰弱すると言われている。  相撲で負けると尻子玉と呼ばれる架空の臓器を抜かれ、腑抜けになるとも言われている。  礼儀正しいので、相撲前に一礼をすると律儀に返し、拍子に皿の水がこぼれ、  弱ったところを勝つという方法が一般視されているとかいないとか。  *神冥書房刊:『水神に捧げる行事が相撲だったから河童は相撲が得意伝』より ミア「へえええ……! じゃあこの人……ん? 人? まあいいや、人だね。    この人って伝説の人なんだぁ……!」 彰利「そうだよ! そうなんだよ!    そしてそのSUMOU技術はきっと素晴らしいに違いねー!」  興奮した彰利が河童の前に立って、押忍! とお辞儀をする。  すると河童も姿勢を正して押忍とお辞儀をする───と、だばーと皿から水が溢れ、ゴシャアと大地に倒れ伏した。 悠介&彰利『ゲェエエーーーーーーーッ!!!!』  すげぇ! 伝説の通りだ!!  じゃなくて……救急車ァアアーーーーッ!! 救急車を呼べェェェェーーーーッ!! Next Menu Back