───彰利03:お仕置きスペシャル春菜さん───
───……。 キィンッ!! 彰利 「あい、到着っと」 夜華 「っと……うん?」 着地した途端に夜華さんがキョロキョロと辺りを見渡して、弦月屋敷を発見する。 夜華 「あれは?」 彰利 「アタイの家」 夜華 「なっ……あれがか!?あんなに大きい建物がか!!」 彰利 「これ!近所迷惑ですから叫ぶんじゃありません!!」 夜華 「周りに人など居ないではないか!答えろ!あの屋敷が本当に貴様の家なのか!?」 彰利 「こげなことでウソついてどうするのかね!ありゃアタイの家ですよ!」 夜華 「あれが……」 夜華さん、相当に絶句。 アタイと屋敷を見比べては首を傾げている。 なんと失礼なおなごよ。 まあなんにせよびっくり仰天の夜華さんはひとまず置いておくとして。 そういや聖はどこらへんに降りたんかな。 彰利 「聖〜?居るか〜?」 辺りを見渡す。 けどまあ、こげなところに居るなら粉雪と話してた時点で現れるよなぁ。 それともアタイと粉雪の再会に遠慮してたとか……ハハ、まさかねィェ〜!! 声  「彰利……」 彰利 「キャーーーーッ!!!?」 いきなり聞こえた声に絶叫。 何事かとこちらに振り向く夜華さんを余所に、アタイも振り向いてみた。 するとそこにおわす───粉雪。……と聖。 ……え?もしかして後者がビンゴ? 粉雪 「ねぇ……これって嫌がらせ?どうして未来の子を連れてきたりするの……?」 彰利 「はああ……!ま、摩利支天さま……!!」 粉雪 「ふざけてないで答えてよっ!!」 彰利 「な〜まくさ〜まんだ〜、ば〜さらなんせんだん、ま〜かろしゃな」 ズパァーーーーン!!!! 彰利 「ぶべぇーーーっ!!!」 凄まじいビンタが炸裂しました。 容赦ないです。 もはや摩利支天さまの呪文で場の雰囲気を和まそうなんてことは無茶でした。 粉雪 「荷物纏めようと思って掃除してたらこの子が来て……     『パパはどこですか』なんて聞いてきて……!     その時わたしがどれだけ惨めだったか解る!?」 彰利 「解らん!!」 粉雪 「なぁっ───馬鹿ぁっ!!彰利の馬鹿ぁっ!!」 彰利 「バカとはなんだコノヤロウ!!     元はと言えばキミが勘違いするのがいけねぇんでしょう!?     アタイは浮気なんぞしとらんと何度言ったら解るのかね!!」 粉雪 「そんなの解らないよ!     実際にこんな子連れてこられて納得出来るわけないじゃない!!     それになに!?そっちの人って『篠瀬』って人でしょ!?     未来の愛人連れてきてわたしに自慢する気!?」 彰利 「なっ……───なんだとコンチクショウ……!!」 夜華 「───あ、愛人だと……!?」 アタイの悪口ならまだ許せるが…… 夜華さんを『愛人』だなんて呼び方は聞き捨てならねぇ!! それはたとえ、相手が好きな人だってだ!! 彰利 「サミング!!」 ドチュッ!! 粉雪 「痛ぁっ!?」 彰利 「ちったぁ頭冷やせ馬鹿!!感情的になってちゃ解らないことがあるんだよ!」 粉雪 「っ……なによぅ……!     どのみちその人とキスしたことは曲がらない事実じゃない……!     感情的になるななんて……無茶言わないでよ……!!」 彰利 「『した』んじゃなくて『された』んですよ!そこんとこ重要視してよね!?」 粉雪 「知らないっ!わたしはもう彰利とはなんの関係もないんだから!!     好きにしたらいいじゃない!!」 ───くはっ!こ、こンの解らず屋が……!! 流石のアタイもカチンときたぞわらしゃあ……!! 彰利 「わぁった、もうええわ。お互いに時間が必要みたいやさかい、距離置こ」 粉雪 「え───?」 彰利 「なんやそのけったいなツラァ。     お前なにか?ワイがいつまでも解らず屋の相手しとるとでも思っとったんか?     勘違いすんなやボケ。ワイは確かにお前が好きやけどなぁ、     惚れた女にそこまで言われて媚びなんぞ売られへんのや。     お前、ワイがどれほどの思いを経てこの時代に立ってるって思っとんのや?     死に物狂いでやっと手に入れた未来を砕くようなことしよって……     なんや、お前に会うこと楽しみにしてた自分がアホみたいやないか」 粉雪 「それはっ……彰利が勝手に浮気なんかするから!」 彰利 「気安ゥ『彰利』なんぞ呼ぶなボケがぁ!!」 粉雪 「っ……!!」 彰利 「おんどれさっき言ゥとったやろが……『彰利とはなんの関係もない』て。     したらお前、おんどれがワイを『彰利』て呼ぶ道理がどこにある?」 粉雪 「………」 彰利 「今度ばっかりはワイもほんまに頭きた。ああ、お前の言うとおりやで。     お前が距離置きたい言いよるならそうしたろぅやないけ」 粉雪 「あ、あきと」 彰利 「気安ゥ名前呼ぶな言ゥとるやろ!!」 粉雪 「あっ……」 彰利 「ワイはなぁ……己が生きるか死ぬかの状況で、     いっつもお前のこと考えとったんやで……?     もしまた会えるならなにを言うとか、会えなくなるのならなにを謝ろうかとか。     それをなんやお前……人の話もてんで聞かんと、浮気がどーしたこーした……。     おんどれハナっからワイのこと信じとらんのやないか。     ワイが辿った道を視たんやったら、     ワイがどないな状況でキスとかされたか解るやろ。     どないな状況で孤独な子を娘として迎えたか解るやろ。     それを頭っから浮気なんて言われりゃ───ワイかて怒るわ!!!」 粉雪 「………」 彰利 「わぁったら出てけ。しばらく顔も見とうない」 粉雪 「───!!」 言いたいことを言うと、粉雪は涙をためたままその場から駆け出した。 荷物も取らず、着の身着のままに。 聖  「パパ……言いすぎだよ……」 夜華 「いいや、言いすぎなものか。あの女が悪いんだ。     彰衛門の事情も考えずに自分の意見ばかり……何様だ」 聖  「パパ、今ならまだ間に合うよ?呼び止めて謝って……」 彰利 「………」 聖  「……パパ?」 彰利 「ぬわぁあああああああああああ!!!!!!!」 聖  「ひゃうっ!?」 夜華 「あ、彰衛門!?」 彰利 「粉雪の馬鹿粉雪の馬鹿粉雪の馬鹿ーーーっ!!     なんだよ俺の意見もてんで受け取らんで!!バカバカバーカバーカ!!     お前なんて……───ちくしょーーーっ!!     嫌いって言えない自分が愛しいィーーーッ!!!」 ダタァッ───!! 夜華 「あ、彰衛門!?何処へ行く!」 聖  「パパッ!?」 ───……。 ───……。 彰利 「ダァアアアアアアアリィイイイイイイイン!!!!!」 どがしゃああああああああん!!!!! 悠介 「どわぁっ!?な、ななな───!?」 彰利 「ダーリン!ダァアアーーーリィーーーン!!!」 ガバァッ!!ボゴシャア!! 彰利 「ゲブボッ!!!な、なにをなさりますの!?」 悠介 「そりゃこっちの台詞だっ!!     人の家の窓破壊しといていきなり抱き付いてくるな馬鹿野郎!」 彰利 「馬鹿とはなんだコノヤロウ!!って、そげなことはどうでもよかタイ!!     アタイを慰めてダーリン!アタイ、あなたが居なけりゃ生きていけないの!!     愛を!愛をプリーズ!ね!?いいでしょ!?ね!?」 悠介 「現れて早々ホモに逆戻りしてんじゃねぇええーーーーーっ!!!」 彰利 「え?あ、いやちょ───キャアアアーーーーーッ!!!!!」 ドゴベゴバコガンガンガン!! 彰利 「ジェーーン!!って、ちょブボッ!!ま、待ブボッ!!     イヤァ喋らせてーーっ!!アタイがなにをしブボッ!!     ややややめブボッ!!やブボッ!!ゲブボッ!!イヤァたっけてーーーっ!!!」 悠介 「だめだッ!!」 彰利 「ギャア無慈悲!?ちょちょっと待てーーーっ!!お、俺は独眼鉄!!     き、貴様ごときに負けてたまるかーーーっ!!」 ドゴゴォンッ!! 彰利 「ゲボラ!!」 ───……。 ───……。 悠介 「頭、冷えたか?」 彰利 「血ィ流しすぎて体全体が冷えてきてますが……」 ひでぇよダーリンたら……。 なにもここまでボコらなくたって……。 悠介 「で?どうしたってんだよいきなり」 彰利 「……た……」 悠介 「なに?」 彰利 「粉雪に……レた……」 悠介 「ハッキリ言えよ」 彰利 「うぐっ……うぐぐ……ウ、ウウーーーッ!!!!     こゆっ……粉雪に……ごゆっ……ぐすっ……うぐぐぐ…………!!」 悠介 「…………あー……その、なんだ?お前、まさか……」 彰利 「こ……粉雪に……フラレましたですタイ……」 悠介 「……どうしてこういう時まで『ですタイ』とか言うかね……」 彰利 「無理矢理にでも余裕を見せんとツラすぎますよ……。     とんだ誤解の所為で何故にアタイがこげな目に……」 悠介 「誤解……ねぇ」 彰利 「なんですかその『お前の性格なら誤解も真実になるだろ』って顔は……」 悠介 「そこまで読めれば上等だ」 彰利 「ヒ、ヒドイ!!なんてヒドイ!!」 親友の一言は傷心のアタイの心を深くえぐった。 彰利 「あ、あの……マジでシャレにならんこと言わないでくれません……?」 悠介 「あのさ、思ってたんだけど……お前に日余って手に余るんじゃないか?」 彰利 「な、なんですと!?」 悠介 「あ、まだゆっくりしててもよかったんじゃないかって意味だぞ?     なんていうかさ、お前って本当に日余のこと好きなのかなって思ったから」 彰利 「…………『本当に粉雪のことが好きなのか』……?     な、なにを言い出すのかねダーリン……。そげなこと決まっておるではないか」 悠介 「そうか?その割にはお前からは愛情ってものを大して感じなかった気がするけど」 彰利 「………」 いや……そりゃ俺がまだ完全に感情を取り戻してなかったからでして……。 あーそっかぁ、ダーリンたらアタイの旅立ちのこと知らんもんね。 悠介 「せっかくだからさ、もう少し考えてみたらどうだ?     そりゃあお前と日余は接吻までしちまった仲だけどさ。     全てが遅いってわけじゃないだろ?」 彰利 「……あのね、怒りますよ?俺ゃあ粉雪が好きですじゃ。     そのアタイにそげな話を持ち込むだなどと……恥を知りなさい!!」 悠介 「……ん〜じゃあどうして俺のところに来た?」 彰利 「へ?」 悠介 「日余のことが好きなら、     どうして日余と決着がつくまで話し合わずに俺のところに来た?     って訊いてるんだ」 彰利 「どうしてって……あ、あれ?」 悠介……なんか怒ってる? ……怒ってますねぇ。 悠介 「彰利さぁ、お前は日余のことが好きなんだよな?     他の女のことを考えたらどうだって訊くことを恥って唱えたよな?」 彰利 「お、おうともさね」 悠介 「それだけのことが言えるのに、どうして決着つくまで話さなかったんだよ」 彰利 「そりゃおめぇ、アレだ。粉雪が人の話を聞かんから」 悠介 「なんだよそりゃ……解らせる気が無いんじゃないか」 彰利 「なんですと!?聞き捨てなりませんよその言葉!!」 悠介 「だってそうだろ?お前は日余のことが好きだって言う。     だってのに誤解されたままノコノコと俺のところに来た。     お前さ、今はどうか知らないけど……     告白した当時、本当に日余のこと好きだったか?」 彰利 「え───……」 瞬時、脳がその記憶を叩きだそうとする。 が……当時、腐ったままだった俺の心から生まれた感情など信用できるわけもなく─── 悠介 「……おい。ちょっと待てよお前……まさかマジなのか?     俺、お前の気持ちを試すために言っただけだぞ……?」 彰利 「………」 ヤバイ。 なんだよそれ……おい、しっかりしろよ俺……! 未来に居た時、あれだけ粉雪のこと思ってたじゃねぇか……! フラレた時だって泣いちまった……! 今だって……思い出せば悲しい……! じゃあ……じゃあなんなんだよ、この頼りない感情は……! 悠介 「おい」 彰利 「へ……?あ」 バガァッ!! 彰利 「グッ───つぅっ……!?」 悠介が怒り顔で俺の頬を殴った。 悠介 「しっかりしろ馬鹿野郎!!なに迷ってんだよ!!     お前、あれだけ日余のこと好きだって言ってただろうが!!」 彰利 「………」 頬が痛む。 なんで俺、殴られてんだっけ……? いや……なんかもうどうでもいい。 今はこの痛みが癪に障るわ……。 悠介 「……彰利?」 彰利 「っ───!!」 バガァッ!! 悠介 「ぐあっ───!?」 立ち上がり、俺を真っ直ぐに見た悠介の頬を加減無しに殴った。 悠介 「っ……てめぇっ……!」 彰利 「仕返しされないとでも思いましたかね……。     けどな、俺だってもう感情の無い人形なんかじゃねぇ……。     殴られりゃ痛いんだよ……!!」 悠介 「へっ……丁度いいや……。今のお前、見てるだけでイライラする!!」 彰利 「臨終間際を待つまでもねぇ!今この時代で喧嘩してやるよ!!」 完全に怒り合った俺達は互いに取っ組み合いを始めた。 殴られれば殴り、蹴られれば蹴り。 けれど『約束』を思い出した時、 俺はすぐさまに約束の木の下へと転移を───すぱぁんっ!! 春菜 「こらぁああああっ!!なにやってるのふたりとも!!」 ───転移をしようとした丁度その時、更待先輩殿が襖を開けて訪れた。 しかし無視して喧嘩。 こうなるともう約束もへったくれもあったもんじゃない。 完全に子供の喧嘩だ。 馬乗りになって殴られればその腕に噛み付いたり、蹴ったり頭突きしたり。 春菜 「あ、こ、こらっ!無視して喧嘩しちゃだめでしょ!?やめなさいっ!」 彰利 「すっこんでなさい!()
き遅れの小娘めが!!」 春菜 「なっ……!!」 ああもうホントムカツク!! 人の事情も知らんと、罵倒した上に殴ってくるなどと!! いくら悠介でも……否!!悠介だからこそ許せん!! 俺達ゃ互いに信用してるからこそ、 相手の状況が解らないままに暴力を振るうもんじゃないのだ!! それをこの馬鹿モンはぁあああっ!!! 彰利 「ぐっ……!ちっ……やりやがったなてめぇっ!」 悠介 「っ……ンのやろぉおっ!!」 春菜 「やぁ……めなさいって……いってるのがぁあああ……!!     聞こえないのぉおおおおおおっ!!?」 彰利 「るっせンじゃい!男の喧嘩に女が口を出すもんじゃねぇ!!すっこんでろ!!」 悠介 「この馬鹿に修正加えてるんだよ!邪魔するな!!」 春菜 「───……」 更待先輩殿に罵倒を飛ばし、ふたり睨みあってまた殴る。 既に頬は痛覚麻痺を起こしたようだ。 が、俺達は─── 春菜 「……そっか。そういうこと言っちゃうんだ……。     そっか……。これは……お仕置きが必要だよね……」 ───ピタッと動きを止めた。 『お仕置き』。 更待先輩殿は確かにそう仰られた……。 途端、蘇る波動昇竜……じゃなくて、中学の頃の思い出。 『お仕置き』。 俺と悠介が初めて本気で『敗北』を知ったあの日の思い出が……!! 微量の返り血を浴びながら、 倒れていた俺達を深紅に染まった冷たい目で見下ろしていた『原中の修羅』が……! ───今、目の前に存在していた───!! 彰利&悠介『っ……!!』 俺と悠介は瞬時に更待先輩殿に向かって構えた! 『お仕置き』を謳った先輩殿は相手が行動停止するまで止まらない!! 春菜 「あれ……?抵抗するんだ……。     いけないなぁ、いい子になる気がない子にはキツい罰が待ってるんだよ……?」 悠介 「っ……はぁああっ!!」 悠介がまず爆ぜた。 瞬時に間合いを詰め、下から上に突き上げるように掌を構える!! 悠介 「掌破ァッ!!」 それは未来で見た悠介の技だった。 が───がしぃっ!! 悠介 「───!!な、あっ……!?」 先輩殿はそれをあっさりと掴んで見せた。 春菜 「いいこと教えてあげよっか。……女の子に手を挙げる人なんて、最低だよ」 悠介 「───〜〜〜っ!!!」 バガァォオンッッ!!!! 悠介が腕を掴まれたまま思いっきり殴られた。 信じられない勢いで吹き飛びそうになるが、掴んだ腕がそれを許さない。 ───ゴキンッ!! 悠介 「ぐあっ───!?がぁああああっ!!!!!」 だが勢いは死なない。 その勢いのために悠介の肩が外れ、悠介は叫んだ。 ルナ 「悠介っ!?」 悠介の声を聞いたからだろう、ルナっちがすぐにその場に現れたが…… ルナ 「な、なにこの気配……!!」 気配だけで既に震えていた。 ……俺達は愚かだった。 あまりに平和すぎた日常の中で、先輩殿の強さを忘れるとは……。 ルナ 「あ……ちょっと波動娘!なにやってるの!?」 春菜 「ふぅん……悠介くんのこと庇うんだ。     あのね、悪い子を庇う子も悪い子なんだよ……」 ルナ 「な、なに言ってるの!?ちょ───痛がってる!離しなさいよ!」 彰利 「ル、ルナっち……よせぇええーーーーーっ!!!」 がっし!! 彰利 「……あれ?」 ルナ 「ホモっち……悪いけど盾になって。嫌な予感がするの……」 彰利 「ゲェエエエーーーーーーーーッ!!!!!」 ルナ 「いくよっ!」 彰利 「ル、ルナっち……よせぇええーーーーっ!!!     イヤァーーーッ!!!よしてぇえええええっ!!!」 ルナ 「このイージスの盾でキミの攻撃を防ごう!!」 彰利 「なんの因果の仕返しですかこりゃああああああああああっ!!!!!」 アタイはいつか、夜華さんをイージスの盾と称していた時のことを思い出した。 そしてそれが……アタイが意識のある内に考えた思考だった……。 メゴドゴベキボキガンガンガン!!!! 彰利 「ギャアアアーーーーーーーッッ!!!!!!!!」 ───……。 春菜 「いいかな?喧嘩することは時には大事だよ?     でもね、喧嘩っていうのは結局、小さくてもしこりを残すものなの。解る?」 彰利 「………」 悠介 「………」 ルナ 「………」 返事出来ねぇ。 喉は潰されるわ首は折られるわ内臓は破裂するわでもう大変だ。 回復するたびにボコボコだから、さすがにもう体力の限界だ。 ついでに言うと、悠介とルナっちは完全に意識不明の重体だ。 春菜 「解ったら返事をするの!」 彰利 「〜〜!〜〜!!」 春菜 「どうして返事しないの!!」 彰利 「〜〜〜〜!!」 返事できねぇんだってば!!! ていうかどうして俺ばっか見て言うの!? 俺だけ目ェ開けてるから!? ちょ、ちょっと待ってよ!悠介とルナっちを気絶させたのキミじゃん!! なんで俺が睨まれなきゃならんの!? 春菜 「重症だね……ここまで捻くれてるなんて……。がっかりだよ……」 言って、ゆらりと立ち上がって……目を深紅に変異したまま歩み寄ってくる先輩殿。 彰利 (イ……イヤァアア!!イヤァアアアアアアアア!!!!!     来ないで!!来ないでぇええええええええっ!!!!!) グウウ!!こうなったら返事だけでも───!! 喉を回復させて、せめて返事を!発動せよ月生力!そしてアタイの喉を治したまえ!! パアア……ベゴキュッ!! 彰利 (ゲウッ!?) 春菜 「だめだよ……また悪巧みしてたんでしょ……」 彰利 (ゲゲェエエーーーーッ!!!!) 回復させた喉が再び殴られ、潰された。 ひでぇ……デ、デーボ……!!この人、悪魔(デーボ)ヨ……!! 喋らせる気がないのヨきっと……!! 春菜 「反省の色がない弦月くんには……もっともっとお仕置きが必要みたいだね……」 彰利 (えぇっ!?) ちょ……待ってくれ……! そんな……おかしすぎる! 俺ゃキミの言葉に返事しようとしただけですよ!? ただ、たまたま気絶してなかっただけですよ!? そ、それなのに……!! 彰利 (間違ってる……間違ってるよ……!ね……ね?やめよ?ね?せ、先輩殿……!) 俺は必死に目で訴えた。 喉の痛みと体中の痛みに涙を流しながら。 だがそんな俺を見て、更待先輩殿は一言だけを漏らした。 春菜 「いい子になぁれ♪」 その刹那、視界を覆う先輩殿の拳。 俺はこの時……死を覚悟した。 ───ぱぐしゃあっ!! 彰利 「───!!」 しかし、次の瞬間には生を勝ち取った気分に浸っていた!! 殴られた反動でアタイと先輩殿の間に距離が出来、 アタイはそれを機に体を完全回復させた! 春菜 「…………!弦月くん……会心する気が無いなら、わたし本当に怒るよ……?」 彰利 「ほっほっほ……なにを言い出すやらこの小娘は……。     黙ってアタイに負けなされ!その若さで墓石入りとゥなかろうが!オォ!?」 春菜 「年上の人を小娘なんて呼んだらだめ!怒るよ!?」 彰利 「クォックォックォッ……もう怒ってるヤツにそげなこと言われても怖くねぇ!!     貴様の動きの全てを読み、そして……勝つのはこのディアヴォロさまだ!!     キングクリムゾンエピタフ!!」 ドッギャァアアーーーン!!! アタイは月視力を発動させ、この場の未来を先読みしたッッ!! 彰利 「………」 ……で。 その未来の景色の中で血だるまになって、 『エクスカリバー』って書かれたホウキをケツに刺されて倒れてるアタイ。 ……やーーーん!!春菜ちゃんたらいやーーーん!!! 彰利 (フッ……いい度胸だ小娘が……!     これは試練だ……。未来に打ち勝てという試練と俺は受け取った……!     そしてッ!勝つのはやはりッ!!このディアヴォロさまだ!!) そう!あの未来で俺は『未来は変えられる』ということを学んできたのだ!! フッ……思い知らせてやるぜ、春菜ちゃんよぅ……。 貴様が勝利するその未来が、如何に儚き未来かということを!! 距離が空いてるのであれば……勝つのは依然ッ!!このディアヴォロさまだ!! 彰利 「これでッ……全てが変わるッ……!!」 春菜 「……?」 彰利 「この……母屋の運命……!!」 春菜 「………」 彰利 「このッ……俺の運命……ッ!!」 春菜 「………」 彰利 「夜華ロットの運命……!!」 春菜 「………」 彰利 「そして───貴様の運命も……ッ……!!!」 右手に月醒力を溜める。 淡い光を出して、それは俺の手の中で球状になる。 それを見た先輩殿は、小さく掲げた人差し指の上に小さな月醒力を作った。 春菜 「………」 彰利 「ッ……───これでッッ───最後だぁあああああああああっ!!!!!」 ドッッチュゥウウーーーーーーーン!!!!! 大きな音を立てながら、その光弾が先輩殿目掛けて飛翔する!! 殺った!!誰もがそう思った……ていうか俺しか居ないけど。 だが! 春菜 「フッ───ホッホッホッホ……!!」 ブゥウウウウ───ン……!!!! 先輩殿は人差し指の上に作っておいた小さな月醒力を巨大化させた。 バチュゥンッ!! 彰利 「なっ───なにッ!!」 しかも……あろうことか、俺の放った光弾をその巨大化させた月醒力で飲み込んだのだ! 信じられん……!い、いや! 『先輩殿』に『月醒力』で挑もうとしたのがそもそもの間違いだったのだ……!! どんどんと巨大化し、部屋の壁や天井を破壊してもなお巨大化する光を見て、そう思った。 ───クイッ。 先輩殿が天井に向けていた人差し指を折るようにして俺に向けた。 すると、それとともに指の上に存在していた巨大な光が俺目掛けて移動を開始した。 彰利 「ウェアァアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」 そのあまりに巨大な光を前に、俺は逃げる手段を失った。 やがて光は俺を飲み込むと、その後ろにあった景色をことごとく飲み込んでいった。 彰利 「あ……あ、ああ……あ……」 真っ赤な光は俺を破壊してゆく。 服を焼き切り、皮膚を焦がしてゆく。 彰利 「夜……華……ロ……ッ───トォ……ッ……」 ……どうしてか。 自分がヤバイって時に、俺の脳裏には夜華ロットの姿が映った。 先輩殿と対峙する、夜華ロットの姿が。 そうして思うのだ。 これはきっと未来視で、俺が果たせなかったことを夜華ロットが果たしてくれるのだと。 だから…… 彰利 「へへっ……───夜ァ華ロットよォーーーーーッ!!!!!」 思い残すことはない。 俺は夜華ロットに全てを託せばいいのだ。 貴様のような強敵に出会えたこと……嬉しく思う……─── 『───夜華ロット……この俺の意思を継げ!!この俺の仇を、お前が討つんだ!!』 俺が立っていた場所から後ろの直線状の全てを焼き払った光に飲まれ、俺も吹き飛び。 その場には殴られた所為で出た鼻血で真っ赤に濡れた、アタイの服の切れ端が宙を舞った。 彰利 「って素直にやられっぱなしなわけねぇだろうがぁああああっ!!!」 アタイはすぐさまに光から抜け出て、先輩殿のところへと舞い戻った!! しかし─── 春菜 「わっ……!!わわわ……!!」 彰利 「むっ!?なんぞね!!」 なにやら先輩殿が顔を真っ赤にしてアタイを見てる。 いや、アタイというか……ややっ!? 彰利 「キャアアアーーーエッチィーーーッ!!!ってゲェエエーーーーッ!!!     なんで全裸なのアタイ!!ってそうだったぁあああああっ!!!!」 そう……さっきの巨大な光の所為で服が全て焼き切られたんでした!! なんてこった!!オーマイガ!! 春菜 「う、うぐぐぐぐぐぐぅうう……!!!」 彰利 「やっ……!キ、キミの怒りももっともだ!!     だが!アタイも服を焼かれたし、ウェポンも生まれたままの姿も見られた!!     こ、ここはひとつ両成敗ということで!     なにもなかったということにしようじゃないか!!     悪い取り引きではないと思うがねッ!!えぇーーーっ!!?どうなんだい!!」 春菜 「ゆ、弦月くんのばかぁっ!!!変態っ!!!」 彰利 「ば、馬鹿とはなんだコノヤ───お、おわぁああああーーーーーっ!!!!!」 ドゴベキゴキバキャゴシャメシャベギボギョ!!!!! 彰利 「アヘアァアアーーーーーーーーーッ!!!!!!!!」 顔を真っ赤にした先輩殿がアタイを殴りまくる頃。 アタイは自分でも珍妙だと思うくらいにヘンな奇声を上げて、 これ以上ないってくらいにボコボコにされた……。 Next Menu back