───地上最強猫列伝『第一章◆誕生!神魔融合猫!の巻』───
───食料が無くなってから3日。 そう……種の成長をさせようと思ったけど、 魔獣鬼とのいざこざで砕けたことに気づいてから3日。 しかもとんずらした際に種の欠片が風に飛ばされて、 『時間蝕』で巻き戻しが利かないことに気づいてから3日……。 未だ篠瀬さんを見つけられないわたしたちはというと…… 彰衛門「オラオラ子供ォ!!さっさと出さかいクラッ!!     その若さで墓石入りとうなかろうがオォ!!?」 子供 「よせやいっ!」 ……カツアゲをしてました。 空腹がピークに達した彰衛門さんは段々と見境が無くなって、 ナイフを舐めながら『め〜』と言っている。 彰衛門「俺たちゃ親切で言ってだよ!!     どっちみち盗られんならよォ……ケガする前のがよかねぇか?ン?」 子供 「ひっ」 冥月 「あの、『俺たちゃ』って……。わたしを共犯にしないでほしいんですけど」 でも同じカツアゲにしたって、もうちょっとやり方っていうものがあると思う。 思いっきりダメな見本な気がする……───見本って言っても、やりませんけどね? 冥月 「あ」 脅された子供がゆっくりとお金を出す。 それを受け取ると、彰衛門さんは満足そうにニヤついた。 彰衛門「そうそうそれでいだよボケが……───ホッホォ〜、持っとるのォォォォ」 子供 「ゔっ!ひっ」 子供は泣いている。 彰衛門さん……わたし、穴があったら入りたい気分ですよ……。 おなご「あっ……十四朗!あなた、わたしの弟になにをするの!」 十四朗「あっ……ねーちゃん!」 彰衛門「……賞金一千万か……今夜は焼肉だな」 冥月 「……彰衛門さん?」 あ……目が危険です。 これはもう理性が飛んでますね……。 空腹って怖いです……。 おなご「な、なにを言ってるんですか……!?」 彰衛門「賞金首がひとりでお散歩たァいい度胸だぜ。     オレたちゃあ最近結成したチーム『チョコレート』の者だ。     まだホヤホヤなんだが、名前くらい覚えておいてくれ」 冥月 「ですから……『オレたち』って言って、わたしを共犯にしないでください」 彰衛門「まァこれから死ぬだからその必要もねぇか((しょう)
)」 冥月 「聞いてませんね……あのっ!今すぐ逃げてくださいっ!!     わたしが食い止めますからっ!!」 おなご「あ───は、はいっ!」 子供 「やだっ!おいらのお金返せっ!」 冥月 「そんなこと言ってる場合じゃ───あ!!」 彰衛門「テェ〜ルゥ〜カァ〜ズゥ〜……!!」 ガッシッ!! 子供 「けふっ!?」 彰衛門さんの手が、子供の首にかけられる。 わたしはそんな彰衛門さんに向けて月醒力を溜めて放った! ドンッ!! 彰衛門「ウゲェッ!!?」 光弾に吹き飛ばされ、彰衛門さんが空を飛ぶ。 その際に落ちたお金を拾うと、子供は満足そうに逃げ出した。 冥月 「彰衛門さん!正気に戻ってください!!」 彰衛門「よぉく観とけバド……クックック……!     鬼だ!今まで何人もの人間を殺してきた殺人中毒のなァ……!」 冥月 「なにを言ってるのか解りません!     わたしは正気に戻ってくださいって言ったんです!」 彰衛門「殺意がな……このへんからな……クックッ……どうしょォもないンだ……!」 冥月 「っ……!ブラスト!!」 ドチュンッ───ドォンッ!! 命中!……したけど…… 彰衛門「バドォ!!」 冥月 「わっ───全然利いてないっ!!」 彰衛門「な……何をためらっているンだ……殺せ!     ……お前の手で……!私を止めてくれ!!バドォ!!」 冥月 「誰ですかバドって!!」 正気に戻ってもらうにはこれくらいの衝撃じゃだめなんだ……。 ───なら! 冥月 「───奇跡の名より来たるもの。     租は……その名のもと、輝ける風の光を紡ぎし者───     唸れ、高き空より舞い落ちる蒼き至高の光よ……天界法術・悠久の息吹」 空が唸る。 雲が弾かれるように穿たれ、その先から蒼い光が舞い降りる。 ゴォッ───ドッシャァアアアアアアンッッ!!!! 冥月 「くうっ!!?」 地面に激突した風が吹き荒れる。 その時───何かの景色が流れてきた。
───それはいつのことだったか。 俺が高校二年の夏、ガッコで起きたトラブルで俺が病院に担ぎ込まれた時のこと。 あれは確か……実験の時に塩酸こぼして左腕に嫌なくらいの火傷を負った時だ。 咄嗟に治したけど、全てを治す前にセンセに捕まった。 ……で、そのまま病院に連行された頃のこと。 彰利 「………」 病院になんぞ行ったことがなかったことも自慢だった俺が、ショックを受けた時。 俺はベッドの上でボ〜っとしていた。 その時だったかな……その病院に蔓延る霊の気配を感じたのは。 彰利 「はあ」 やれやれだ。 そういう魂ってのは放っておけない。 せめて成仏させてやるとしよう。 ───……。 火傷が治るまでは退院出来ないって言われた。 面倒臭いことこの上無い。 雪子さんに迷惑かけないことを配慮しながら生きてきたってのに…… 彰利 「……よし」 夜になってからベッドを抜け出した。 腕に巻いてある包帯の下……傷はまだしばらくそのままにしておこうと思う。 せめて、この病院に居る霊を成仏させるまでは。 彰利 「……つーわけでさ、お前を成仏させてやる」 子供 『……ほんと?』 個室の隅に座っていた子供に声をかけた。 そんな言葉に耳を傾けて立ち上がるそいつの腹は、無残にも風穴が空き…… その死に方が伺い知れた。 彰利 「本当だ。この世界に固執して、悪霊になる必要なんて何処にもない。     お前は新しい命になれ。俺がそれを手伝ってやるから」 子供 『……ぼく、またおかあさんのこどもにうまれたい……。できるかな……』 彰利 「『かみさま』がホントに居るなら……きっと」 子供 『……うん』 子供が微笑んだ。 俺はそんな子供の頭をゆっくりと撫でながら……その体に月聖力を流した。 どうか、この子供が清い心のままに逝けるようにと。 子供 『おにいちゃん……ありがとう』 彰利 「……ああ。迷ったりすんなよ」 子供 『うん』 月聖力の光が部屋から消える頃、その部屋の隅にはもう……子供の姿は無かった。 彰利 「……どんどん行くか」 迷ったままでこの地界にへばりついてるなんて……辛いだけだもんな。 で……そいつらを成仏させたら……俺もとっとと抜け出そう。 それで……いいよな、うん。 ───……。 声  「ダイナマイトどんどーーーーん!!」 声  「ぐきぃぃーーーーっ!!」 ……? 病院の廊下に出ると、妙な声とともに謎の悲鳴が聞こえた。 何事かは知らんが、霊的な声じゃない。 なんだったんでしょうね。 彰利 「まあ今は人より霊だ。さて……霊の気配は……と」 気配を探る。 深く……より深く。 するとどうでしょう。 声  『あ〜れ〜っ!!』 霊の方から飛んできてくれました。 ……しかも悪霊化一歩手前の霊……こりゃあ有無も言わさず除霊ですね。 彰利 「それでは幽霊さん。愛を受け取って♪」 ぎゅむっ♪ 霊  『あぁあああーーーっ!!!!!』 体に聖なる愛を込めて抱きつく……これぞ、もんがー流除霊奥義・もち肌除霊……! 霊  『ああ……彼と同じ肌の感触……!     思い出す……あの人のこと……!     あの人の……───わたしを裏切ったあの人のことォオオーーーッ!!!』 彰利 「おやっ!?」 逆効果だったみたいです。 霊  『憎い……!妬ましい……!やっぱりさっきの男女、ただでは……!!』 シュハァ〜〜〜ッ!! 彰利 「ぶわっ!くっせぇえええーーーっ!!!」 霊  『………』 彰利 「あら……」 怒りとともに霊が吐き出した吐息は、人知を超えるほど臭かった。 思わず口にしてしまった本音は、霊の心を大層傷つけたらしい。 でも臭いもんは臭い。 霊  『恨めしい……!オマエから殺してやる……!!』 彰利 「うわ……自分の口臭を人の所為にする気だよこのカス……。     あのね、キミィ?お口のケアってのはとっても大事なのよ?解る?     それを疎かにした貴様が悪いってのに、八つ当たりされても困るのよ。解る?」 霊  『憎い……憎いぃ……!!』 彰利 「多分ね、貴様がフラレた原因の100%はその口臭が原因だよ、うん。     だってマジで臭いよ?おなごならお口のリフレッシュをしなきゃアカンよ?」 霊  『うるさい……うるさいうるさいうるさい!!』 彰利 「てめぇの方がうるせぇんじゃいタコ!!病院内ではお静かにって言うだろうが!」 霊  『………』 彰利 「お?なんだ?やンのかコラ!!」 霊  『わたしが……怖くないの……?』 彰利 「いや……怖いっつーか臭い」 霊  『るぅううあぁああああああっ!!!!』 あらキレた。 いやどすなぁ、これだから堪忍袋の緒が小さいヤツは。 彰利 「霊になってから人様にメーワクかけた霊は天国にはいけない。     そんでオマエはもう冥府の鎖に縛られてる。     ……もっと早く出会えてりゃ、救ってやれたのにな……」 右手に月聖力を込めて、パァンッ……と頬を叩いてやった。 人間なら、きっととても痛いであろう攻撃を、霊に。 霊  『あ……』 彰利 「……目、覚めたろ?───じゃ、もう迷うな。逝け」 霊  『い……いや……いやぁ……!わたし……わたし、最後にあの人と……!』 彰利 「……オマエに触れて、オマエの過去を見たよ。     オマエはそうやって『あの人』に会って、『殺しちまった』んだろ?     だったらもう……どれだけ悔やんだってオマエは『あの人』には会えない。     行き先が……違うからな」 霊  『あぁああ……!どうして……!どうしてわたしを……裏切ったの……!?     功治……功治ぃ……!!』 霊が消えるのを見届けてから息を吐く。 『裏切られた』んじゃなくて、 最後まで信じることが出来なかったオマエが馬鹿だったんだ、と呟いて。 彰利 「さ……次だ」 振り返ることも同情することもなく歩きだした。 さっさと終わらせよう。 ここには……狂った霊魂が多すぎる。 ───……。 彰利 「いや……まいったね、ほんと霊が多すぎだわここ……」 結局二日経っても除霊しきれなかった。 昼に動いてもいいんだが……困ったことにこの病院の霊、 夜にならないと現れないっていう妙なところで規則正しい幽霊のようです。 彰利 「なんか最近、ヤケにこの病院に訪れる人が多いし……」 しかもその大半の人が未成仏霊を引き連れてくるもんだからキリが無い。 いったいなんだってこんなに患者さんが来るんだ? 彰利 「って……そういやなんか噂になってたよな。     臨時の医者が『奇跡の医者』とか呼ばれてるとか。     入院してる奴らには『ゴッドハンド純』とか呼ばれてるけど……純?     ……いや、フフフ、まさかな。彼がこげな辺境に居るわけなかろうモン」 大体にして彼は神降に在住の筈。 月詠街の病院が一杯だったからって、急遽送られたこげな辺境に居るわけがない。 彰利 「さて……今日もまた、夜に出動かな……」 正直疲れてます。 ───……。 彰利 「がぁあーーーーっ!!キリがねぇええーーーーっ!!」 現在の除霊数379体。 もう少しで400体の大台だ……ってそんなもんはどうでもいいんだ。 なんなんだよこの病院はよぅ……! 訪れた患者に取り憑いてた霊どもが、どうして全員ここに残っていくんだよ……!! 昨日の夜で終わると思ってたのに……。 彰利 「大体この病院もこの病院だ!なんなんだよ300人の患者って!」 しかも来る患者が全員取り憑かれてるし! なんなのこれ! で、でもこの300人が終わればもう大丈夫だよね? 看護婦「聞きましたか?奇跡の医者の話」 医者 「ああ。なんでも明日は600名を治療するらしいじゃないか」 彰利 「イヤァアアアアアーーーーーーーーーーーッ!!!!!!」 本気で泣きたくなった瞬間でした。 ───……。 悪霊 『おぉ〜〜……はぉぅぉ〜〜……!!』 彰利 「ぬがぁああーーーーっ!!悪霊は去ねっ!!」 ボチュンッ!! 悪霊 『あぁああ〜〜……』 彰利 「がぁぁああっ!!792……793……!」 ドチュチュンッ!!ガオォンッ!!ガガンッ!! 霊魂 『まだ死にたくなかった……!うそだこれは……!』 彰利 「真実じゃい!……829……830……!!居すぎじゃあっ!!」 ドシュドシュッ!!ザンッ!!ザザザンッ!!! 霊  『憎い……憎い憎い……』 彰利 「誰が肉だコノヤロウ!!901……902……!!キリがねぇーーーーっ!!!」 ゴパァアアンッ!!! ……現在、俺は霊の大群に襲われてます。 今日来たっつー600人全員に取り憑いてた悪霊の皆様が、 どっかで得た幽霊キラー(俺のこと)の情報を理由に、徒党を組んだのだ。 中にはひとりに何体も取り憑いてた例もあって、目が回る状況は一向に改善しない。 彰利 「チィッ!打透勁!!」 ドチュ───ドゴゴゴゴゴン!!! 彰利 「942……943……!シャイニングブレードッ!!」 ゾフィンッ───バッシャァアアッ!!!! 彰利 「998……999……1000だ!!」 ザクシュッ!! 霊軍団『ヌゥウウウウォオオオオオゥウウ……!!』 1000体丁度倒すと、霊どもがガクガクと姿を変えていった。 おそらく……融合して俺を殺す気なんだろう。 ……馬鹿だな、個々だったから自我を保てたってのに…… ぐちゅっ……めちゃっ……!! 彰利 「うーあ、気持ち悪いね……」 目の前にはドロドロに溶け合う霊魂ども。 皆、除霊を拒絶して消滅を選んだやつらどもだ。 G悪霊『ルゥウウグゥウウウウ……!!!』 彰利 「フッ……そうまでして俺に勝ちたいか……」 これで全てが終わります……。 さあ、このアルファレイドで……せめて跡形もなく消えなさい……。 彰利 「貫けぇえーーーっ!!!」 G悪霊『ルォオオオオオオオオオッ!!!!』 悪霊はなおも襲い掛かってきた。 その姿を、俺は『愚者』と唱えた。 一体となってバカみたいに突っ込んでくる様を見て。 ───気に入った 立派な愚者(フール)
だボゥズ ───何者にも縛られない純粋な存在……純粋な自我を解放しろ ───バカなって暴れんだ 楽しィぜェ?          ……最強の愚者(フール)にしてや
……景色が戻る。 今のは……彰衛門さんの記憶の断片? 冥月 「……物凄く意味がなかった気がするんですけど」 彰衛門「グビグビ……」 ギュ〜〜〜……ぎゅごぎゅるる〜…… 彰衛門「ウウ……ああーーっ!!なにか食べたい!!」 冥月 「水でも飲んでてください」 彰衛門「ウウーーーッ!!お腹空いた!ご飯がたべたい!!」 冥月 「ありませんっ!」 彰衛門「ウウーーーッ!!」 子供とお姉さんは一応逃げてくれたみたいですけど……。 あ、そうだ。 冥月 「彰衛門さんっ!こういう時こそマツタケモドキです!     それならお腹が膨れますよ!」 彰衛門「ご飯が食べたい!ご飯が!!」 冥月 「……空腹状態なのに我が儘ですね」 仕方ありません……あまりこの旅の中では使いたくなかったんですが……。 冥月 「異翔転移……」 晦の母屋にある釜を思い浮かべて、この場に転移させる。 ヒィンッ───ドカッ! 冥月 「ふうっ……」 なんとか成功……釜の蓋を開ければ、その中はご飯がギッシリだった。 冥月 「さ、彰衛門さん。ご飯ですよ」 ………………。 冥月 「……あれ?彰衛門さん?」 周りを見渡してみる。 けど、彰衛門さんの姿が見当たらない。 冥月 「……うわ、なんだかすごく嫌な予感が……」 ───ドガシャアアアーーーンッ!!! 声  「うわぁああーーーーっ!!!」 声  「ああーーーっ!!お腹減った!!」 声  「な、なによあなた!!」 声  「お腹が空いて倒れそうなんです!本当です!食べ物を!食べ物をください!!」 ……やっぱり。 嫌な予感ってどうしてか的中率が高いですよね……。 村人1「た、助けてくれぇっ!正気の目じゃねぇだ!!」 村人2「男どもは武器になるもん集めろぉっ!相手は食人鬼だぁっ!!」 かつて、神とまで言われた人が『食人鬼』ですか……。 きっと『噛んだ』んでしょうね……。 ゴリッ!! 村人3「ぎゃあああーーーっ!!!」 村人1「ああっ!真田どん!!」 彰衛門「食べ物がほしい!食べ物が!」 ゴリゴリゴリゴリ…… 村人3「ギョエェエエエーーーーーッ!!!!!!」 ……思いっきり噛んでますね。 見境無くなりすぎです。 冥月 「彰衛門さんっ!!ご飯ですよっ!!」 彰衛門「ハッ!?ご、ご飯だ!美味しそうなご飯の匂いがするぞ!!」 ギロリ。 冥月 「……あれ?」 何故か、ご飯じゃなくてわたしを睨む彰衛門さん。 しかもその状態で、物凄い速さで走ってくる……。 彰衛門「よこせ!それは僕が先に見つけたんだ!!高松組のやつらは出ていけ!!」 冥月 「わっ───わぁああーーーーっ!!!!」 物凄い形相。 普通に渡すつもりだったのに、 見境を無くした彰衛門さんはわたしを殺して奪おうとしてる。 こういう状況を『理不尽な状況』って言うんでしょうか……。 彰衛門「ワァアーーーーッ!!ウォーーーッ!!!」 冥月 「ひゃっ……ひゃああああーーーーっ!!!」 その形相に思わず逃げ出してしまった。 お腹が空いてるなら、わたしが釜から離れれば釜の方に意識が向かうだろうと思ったから。 でも…… 彰衛門「ワアッ!ワアッ!!」 冥月 「な、なんでぇえーーーっ!!?」 彰衛門さんは飽くまでわたしを追ってくるのでした……。 勢いに任せて、闘争本能でも目覚めちゃったんでしょうかね……。 もう勘弁してほしかった。 ───……。 冥月 「わーーーっ!!わーーっ!!」 彰衛門「ウオーーーッ!!ワァーーーッ!!!」 彰衛門さんに追われてから二日目。 その頃からずっと全力疾走してるわたしは、もう疲弊しきっていた。 彰衛門さん、空腹のくせに限界がなさすぎです……。 ───……。 彰衛門さんに追われてから三日目のとある日、 西瓜を見つけたわたしは恥を忍んでそれを強奪。 好物であるそれを食べることで、月操力に回復をもたらした。 彰衛門「ウォオオオーーーーッ!!!!!」 なにやら『ものを食べた』という嫉妬感からか、彰衛門さんの勢いが増した気がした。 ……やっぱり理不尽だった。 ───……。 彰衛門さんに追われてから一週間目。 彰衛門「オーーーッ!!オーーーッ!!」 冥月 「うわ……野人と化してますね……」 空腹が絶頂に達した彰衛門さんは、冗談抜きで野人と化していた。 手にはいつの間に作ったのか解らない石槍を持っている。 彰衛門「ホーーッ、ホーーーッ!!!」 でも意地でも漂流教室の真似をするのはなんとかならないだろうか。 ───……。 彰衛門さんに追われてから9日。 とうとう彰衛門さんが完璧に野人……いや、獣人と化した。 ぶぉうぉおおぅおお〜〜〜っ!! 彰衛門「キョェエエーーーーォオオオゥッ!!」 突然鳴り響く『角笛』を吹いたような音。 それとともに、リズミカルな音までもが聞こえてきた。 ドントコトントン・ドコントトコトン!! ドントコトントン・ドコントトコトン!! 冥月 「えっ!?なにっ!?なんですかっ!?」 彰衛門「フシュウッ!!」 ブスッ!! 冥月 「いたっ!?」 腕に何かが刺さった感触。 わたしは慌てて、でも走りながらその刺さったなにかを抜き取った。 それは……よく解らない黒い液体のついた吹き矢みたいなものだった。 彰衛門「ごふぅっ!!」(ハスッ!ハスッ!!) 後ろを見れば鼻をヒクヒクと動かしている彰衛門さん。 これって確か…… 彰衛門「グォオオオゥウッ!!!」 ……タイムマシンのモーロックですね。 空腹のあまり、本能が獣になることを選んだようです……。 冥月 「彰衛門さんっ!モーロックの音楽のために月操力を使うくらいなら、     マツタケモドキくらい作りましょうよっ!!」 彰衛門「キョエェエーーーッ!!!キョキョキョォオオウ!!!ごほふっ!!」 デ〜ゲデ〜デ〜・デ〜ゲデ〜デ〜デーゲ♪ デン!トン!デン!トン!デン!トン!デンテント! デン!トン!デン!トン!デン!トン!デンテント!───ドシュウッ!!! 冥月 「ひゃああああああーーーーーっ!!!!!!」 ゴォオオオオオゥウウウウンンッ!!! 突如、地面を思いっきり蹴った彰衛門さんが、 咄嗟に屈んだわたしの頭上を物凄いスピードで飛んでいった。 うわ……避けなかったらわたし、死んでたんじゃあ…… ドカバキゴロゴロズシャアーーーーッ!!!!! 冥月 「あ……」 勢いがありすぎて、上手く着地出来なかったみたいです。 森林へと続く木々を自分の体で薙ぎ倒しながら転がっていってる……。 冥月 「あ、彰衛門さ〜ん……?」 彰衛門「ごほふっ!!グォオオッ!!!」 冥月 「わぁああああんっ!!正気に戻ってくれたかなって期待したのにぃいいっ!!!」 ───……。 ドントコトントン・ドコントトコトン!!ドントコトントン・ドコントトコトン!! ドントコトントン・ドコントトコトン!!ドントコトントン・ドコントトコトン!! 冥月 「はっ……はぁっ……!!     ど、どうして好物を補給して月操力を回復させてるわたしと、     何も食べてない彰衛門さんがずっと一緒に走ってられるんでしょうか……!!!」 彰衛門さんは底無しだった。 家系の身体能力に加え、野生本能を取り戻した存在は、それはもう怖かった。 追ってる最中、ずっと月奏力を使ってるっていうのに、全然枯渇しない。 本当に勘弁してほしかった。 ───……。 彰衛門さんに追われてから二週間後。 わたしは……ついにその後姿を発見した!! 冥月 「篠瀬さんっ!!」 ようやく目的の人を発見した……! わたしは喜びに抱かれるようにして篠瀬さん目掛けて走った!! というよりは後ろを走る野獣をなんとかしてほしかった。 彰衛門「キョェエ〜〜〜〜キョキョッ!!ごほふっ!!ブフゥッ!!」 両手両足で地面を掻くように走る彰衛門さんは、 両足で走る速さとはもはや比較にならないほど速かった。 冥月 「た、助けてくださ───殺気!?」 ゴォオオオゥウウウウウンッ!!!!! 咄嗟に屈んだわたしの頭上を、またもや彰衛門さんが飛んでゆく。 しかもその勢いのままに篠瀬さんに襲い掛かった。 ガシィッ!!ゴロゴロゴロゴロ!!!! 夜華 「かはっ!?うわぁああっ!!!」 彰衛門「ごふっ!!ごほふっ!!」 ドントコトントン・ドコントトコトン!ドントコトントン・ドコントトコトン! ゴロゴロと転がっていった先で、彰衛門さんが篠瀬さんを動けなくしようと拳を振るう。 夜華 「な、なんだ貴様は!わたしは戦わないと誓ったのだ!     戦いたくないんだ!寄るなっ!!」 彰衛門「ごほぅっ!!フゴゴフッ!!」 ガブッ───ブチィッ!! 夜華 「あ、う……うあぁああああああっ!!!!」 彰衛門「ごふぅっ!」 くっちゃくっちゃ……ごくん。 冥月 「うわぁ〜〜……」 彰衛門「ごふふほっ……!!!」 あ、彰衛門さんが……篠瀬さんの腕の肉、噛み千切って食べちゃった……。 人間やめたね、彰衛門さん……。 冥月 「彰衛門さんっ!正気に戻ってください!」 いい加減、本当に危険です。 このままじゃあ篠瀬さんが食べられてしまう。 彰衛門「ごっふごっふ!ごっふっふ!!」 冥月 「うわ……」 既に人語は通じないらしい。 言葉自体が野人と化している。 それに改めて見ると、すごく痩せ細っている。 まともに見ても、これが彰衛門さんだとは誰も夢にも思うまい。 ガッシ! 夜華 「うわっ!?」 彰衛門「キョェ〜〜キョキョッ!!ごおふっ!!」 ブンッ!!───ドカァッ!! 夜華 「ぐあっ……!」 何を思ったのか、彰衛門さんが篠瀬さんを掴んで放り投げた。 バランスの取れない投げ方をされたためか、篠瀬さんは草地に落下する。 彰衛門「グオオオゥウッ!!」 夜華 「───!?」 しかも、その倒れた篠瀬さん目掛けて彰衛門さんが跳躍して襲い掛かった。 ここで跳躍する意味があったのかはまったくもって謎です。 彰衛門「ごほふっ!!ごぉふっ!!」 夜華 「っ!?な、なにをする!!貴様!!や、やめっ……」 うつぶせに倒れている篠瀬さんの背を足で押さえ、 その両足をどこから出したのか解らないロープで縛ってゆく。 夜華 「貴様っ……わ、わたしを辱める気かっ!!やめろっ!!やめてくれっ!!」 彰衛門「ごふっ!!」 ズルズルズルズル……!! 夜華 「や、やめろ……!!どうする気だ……やめろぉっ!!!」 彰衛門「ごほふっ!!」 彰衛門さんは草地から逃げるように、篠瀬さんを引きずりながら砂地を目指す。 やがてその足が砂地に辿り着くと、彰衛門さんの体は砂に埋もれていった。 当然───篠瀬さんも。 夜華 「ひっ───!?あ、うわぁああああっ!!!やだっ!やめろっ!!!     母上っ!!母上ぇええええええええっ!!!!」 常識では有り得ないことに、篠瀬さんは半狂乱するかのように叫んだ。 さすがにこれ以上はマズイと思ったわたしは、 沈みかけている彰衛門さんの顔面にブラストを放った。 ドゴォンッ!! 彰衛門「グォオオウゥッ!!?」 夜華 「っ!?」 ロープを掴む彰衛門さんの力が緩んだ隙を突いて、篠瀬さんは砂を掻くように逃げだした。 投げられたり引きずられたりした所為で、篠瀬さんの服はもうボロボロだ。 彰衛門「………?」 うわ……篠瀬さんが逃げられたのはよかったけど……。 その所為で彰衛門さんの注意がわたしの方に向けられて…… 彰衛門「ごぉふっ!!」 冥月 「───か、開祖の血より流れしもの!     租は闇と光を持つ混沌の力!我が手より放たれよ、美しき混沌の波動!!     神魔融合法術───時操反転!!」 彰衛門「キョエッ!!?」 前に見た彰衛門さんの記憶を辿り、 『モーロックは【時】に弱い』ということを思い出しての時間操作。 彰衛門さんの時間を反転させて、子供になってもらおうという作戦だ。 彰衛門「ギッ……キョヨェエエーーーーーッ!!!!」 でも彰衛門さんが『生きた』とされる300年あまりの時は、 そうそう反転してはくれないらしい。 こうなったら───出力全開!! バジッ───ビキキィンッ!!! 彰衛門「ギョエエエエーーーーッ!!!!」 瞬時、彰衛門さんの姿が闇と光の混沌の中に消える。 出力が強すぎたのだ。 慌てて力を止めると───そこには猫が居た。 この毛ヅヤと色は……ロシアンブルーですね。 彰衛門さんの過去の記憶の中にあった筈です。 猫  「………」 冥月 「…………えーと」 その猫が、わたしを見上げて『にゃ〜』と鳴いた。 ……危険です。 これは……この猫はまさか……!! 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