───地上最強猫列伝『第八章◆変人!竹尾タケオと呆れる猫!の巻』───
───……。 夜。 辺りは黒く染まり、町の街頭だけが光を齎していた。 みさお「聖ちゃ〜ん!聖ちゃ〜ん!?」 そんな中を歩くわたし。 さっき、わたしを見て体をウネウネと動かすヘンな人と出会ったけど…… あれがきっと、本物のロリコンとかいう人なんだろう。 竹尾タケオとか名乗ってたけど……気持ち悪い人だった。 声  「……〜〜っ!」 みさお「ややっ!?───うわっ」 微かに聞こえた声に、思わず『ややっ!?』と言ってしまった。 これじゃあまるで彰衛門さんじゃないか。 でもあれは間違い無く聖ちゃんの声! みさお「待っててね聖ちゃん!今行くからね!!」 聞こえた声を悲痛の声と受け取ったわたしは、 かつてない速度で声のした場所へと駆けたのでした。 ───……で、ズッコケた。 タケオ「キ、キミ可愛いねぇ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!     ボボボ、ボクといいことしない!?     あ、ほら、嫌がる格好はもっとこう体を縮みこませて!」 ウネウネウネウネ……!! 聖  「う、ううっ……!!うぅううう……!!」 タケオ「たまりませんなぁ〜〜〜っ!!ほ、ほほほほらっ!そのポーズはもっとこう……」 ウネウネウネウネウネウネ!!!! ウニョオオ〜〜〜!!グニィイイ〜〜〜〜ッ!!! みさお「タケオォオオオーーーーーッ!!!!」 ボゴシャア!! タケオ「ホイスッ!?」 ドゴシャバキベキドゴシャシャシャアアーーーッ!!! 立ち上がったわたしは、竹尾タケオの顔面に飛び蹴りを食らわせた。 タケオ、遙か彼方まで吹き飛んで気絶。 みさお「大体、なんであっちの方に居た筈なのにこっちに来てるのさ……!」 聖  「み、みさおちゃぁああ〜〜〜ん……!!」 恐怖に怯えていた聖ちゃんがわたしに抱きついてくる。 それはそうだよね、あのウネウネ動きを間近で見せられれば……ねぇ? 小心の聖ちゃんにはキツイですよ。 聖  「猫神様……居ないって……!」 みさお「うんうん怖かったよね……───え?」 猫神様? ……まさか聖ちゃんてば…… 聖  「さっき……鳳翼神社に居た人に訊いてみたら……!     猫神様……旅に出ちゃったから居ないって……!」 みさお「………」 彰衛門さん……聖ちゃん素直すぎです……。 聖  「どうしようみさおちゃん……!     猫さん達の平穏が……!声が取り戻せなくなっちゃったよぅ……!」 みさお「ま───ままま待ってよ聖ちゃん……!平穏って?声ってなんのこと……?」 聖  「あのね、あのね……」 みさお「う、うん……」 ───……。 みさお「……忘却の旋律?」 聖  「……?」 聖ちゃんの語る『猫と人間との戦争』の話を聞いたわたしは、心底呆れた。 彰衛門さん……ま〜たくだらないこと言ってたんだ……。 しかもわたしの聖ちゃんをからかうとはいい度胸です。 聖  「ぼうきゃく……?なにそれ」 みさお「あやっ……う、えと……その猫達の戦争のことをそう言うの!ね!?」 聖  「そうなんだ……みさおちゃんも知ってるなら、     やっぱり本当にあったことだったんだね……」 みさお「はうあっ!」 しまった……つい聖ちゃんの素直さを守るために出た言葉が、 わたしを彰衛門さんの共犯に……!! うう、恨みますよ彰衛門さん……! 聖  「ねぇみさおちゃん……みさおちゃんがこの時代に居るなら、パパも居るの?」 みさお「え?あー……うん。居るよ」 聖  「じゃあパパのところに戻らないと。     あ───みさおちゃん、猫さん……悟り猫さんを見なかった?」 みさお「悟り猫……あー、見たよ〜……。あまり関わり合いたくないけど、見ちゃった」 聖  「そうなんだ……悟り猫さん、どうしてたっ?」 みさお「うう……」 純粋な眼差しがわたしを見つめる。 暴露したいことなんていろいろあるのだけれど、 悟り猫が彰衛門さんだと知ったら、聖ちゃんはショックを受けるだろう。 誤魔化さねばなるまい……己の血に賭けて!! みさお「あ、あのね、別の目的が出来たとかいって、服を売ってたよ?」 聖  「服……?もしかしてお金が無かったのかな」 みさお「うん、そうそうっ!お金がないとか言ってたからっ!」 聖  「詳しいんだね、みさおちゃん。もしかしてみさおちゃん、買ってあげたの?」 みさお「え?燃やし───」 聖  「?」 聖ちゃんが裏表の無い純粋な目でわたしを見つめる。 ……い、言えないっ……!!服を燃やしてしまったなんて言えないっ……! すべてっ……!全て計算さえてたとでもいうんでしょうか……!! 何故だか彰衛門さんにハメられた気がしてなりませんっ……!! みさお「う、ううう……ううん……?わ、わたしもほら……お金、なかったし……」 聖  「うん……そうだよね。あ、じゃあそのあと。悟り猫さんそれからどうしたの?」 みさお「ショックで自我崩壊───」 聖  「え?」 みさお「な、ななななんでもないよっ!?」 あわわわわ……!!見ないで……!そんな純粋な目で見ないで……!! 聖  「みさおちゃん?どうしたの?なんかへんだよ?」 みさお「な、なんでもないからっ!     ほら、こんな時間にこんなところに立ったままだと風邪引いちゃうよ!?     神社に行こっ、神社に!     わたしの推理が確かなら、篠瀬さんもそこに向かってると思うから」 聖  「……?う、うん……」 わたしは聖ちゃんの手を引いて、塚本神社をイメージして転移を発動させた。 ……どうか。 どうか彰衛門さんが正気を取り戻してくれてますように───! ───……キィンッ! みさお「到着〜───って、わっ!?なにこれっ!」 辿り着いた塚本神社。 そこは無残にもボロボロになっていた。 いったいどんな超獣が暴れればこんなことになるのか……。 聖  「みさおちゃん?」 みさお「ちょっと待っててね、聖ちゃん。───月視力……」 月視力を発動。 この場所の過去を覗いてみる……と。 巨大な蜘蛛と巨大な蛇が争い、ふたりの女の子が逃げ惑い、 ひとりの女の子がふたりの女の子……これは死神属性の人かな? 家系の人とも違うけど……とにかくふたりの死神属性の女の子に押し倒されている場面が。 うわわ……これって女色ってやつですか? ふたりの女の子に押し倒されたひとりの女の子、悔し涙流してるし…………強姦? 聖  「……みさおちゃん、なにか見えたの?」 みさお「え、えと……うん。月視力で見てみたけど……見ない方がいいと思う」 聖  「?」 みさお「きっとね、ここから先は大人しか見ちゃいけないんだよ、うん……」 わたしはまたひとつ大人になりました。 みさお「それはそれとして、篠瀬さん探そう?多分目立たないところに居ると思うから」 聖  「うん」 わたしと聖ちゃんは散開して、篠瀬さん探索を開始した。 聖ちゃんはてくてくと欄干に沿って歩いて、時々縁側の下などを覗いてる。 わたしはお堂の裏に回って、その先を調べた。 すると───居た。 篠瀬さんは座禅を組むような格好で壁に背をもたれさせて眠り、 その頭の上には彰衛門さんが。 みさお「………」 ……心配だ。 ちゃんと正気を取り戻してくれてるんだろうか。 みさお「……彰衛門さ〜ん?」 わたしは軽く彰衛門さんを揺すり動かした。 すると薄く目を開けて、四肢をぐぅっと伸ばして欠伸をする彰衛門さん。 でも……あれです。 ほら、猫って伸びをする時って爪も伸ばすじゃないですか。 だから───バリバリバリバリ!!!! 夜華 「ぐわわぁあああああーーーーーーーっ!!!!」 猫  「ウニャ……?」 大いに伸びた彰衛門さんは気持ち良さそうに疑問系な鳴き声を放った。 無意識だったらしく、篠瀬さんの顔をバリバリと引っ掻いたことは記憶にないらしい。 夜華 「きぃいいいさぁあああまぁあああああ………………!!!」 猫  「あ、あれ……?どしたの夜華さん、その顔」 彰衛門さんを頭から引っぺがした篠瀬さんは、足元に彰衛門さんを置いて刀に手を掛けた。 猫  「……え?あれ?な、なんで刀構えてんの?や……夜華さん?     あれ?あれぇっ!?お、おかしいよね!?俺なにかしました!?     やっ───ちょ、待ってほしいな……!俺、なにもしてませんよね!?     眠ってただけですよね!?そ、それがなんで……!?」 夜華 「語るのもおこがましいわぁああーーーーっ!!!!!」 ザクドシュズバゴチャガキョベキョドシュゴチュガンガンガン!!!!!! 猫  「ギョエァヘァアアアーーーーーーーッ!!!!」 やがてザックザクに切り刻まれる彰衛門さんを見て、わたしは静かに十字を切った。 このふたり、きっと篠瀬さんが自分の時代に戻ることになっても、 ずっと変わらずにこのままなんだろうなぁって思いながら。 ───……。 聖  「え……悟り猫さんってパパだったの?」 夜華さんに斬り刻まれてからしばらく経った頃、俺は聖に重大発表をしていた。 悟り猫「うむ……さっき『乙女のぶっちゅ』で記憶が戻ったのですがね?」 夜華 「だ、だだだ黙れ!!言うなと言っただろう!」 みさお「あの……篠瀬さん?別に誰がキスしたかなんて言ってませんけど」 夜華 「ごがっ……!?」 みさお「篠瀬さん、まさか……」 夜華 「し、ししし知らんっ!!わたしは知らないぞっ!」 みさお「まだ何も言ってませんけど……」 夜華 「うるさいうるさいっ!!彰衛門!さっさと話の続きを話せ!」 いや……夜華さんが横槍入れてきたから話が逸れたんですけどね。 悟り猫「うむ……さっき『乙女のぶっちゅ』で記憶が戻ったのですがね?」 夜華 「わぁあーーっ!!わざわざそこから言い直す馬鹿がいるかっ!!」 悟り猫「バカとはなんだコノヤロウ!!     最初から仕切り直したい俺の気持ち、解るでしょ?」 みさお「KOFを利用したんですか」 悟り猫「グムッ……!?あの、みさおさん?オチ言われるとオラ辛ェんですけど」 みさお「そんなこと知りません。いいから続きをお願いします」 悟り猫「うむ……さっき乙女の」 みさお「『続き』を、お願いします」 悟り猫「……ハイ」 物凄い威圧感でした。 将来きっと有望な凶悪犯になれますよ? 悟り猫「聖や?じいやはね、魔王ミサオンに猫にされてしまったのですじゃ」 聖  「魔王……ミサオン?」 悟り猫「うむですじゃ。過去に居る内にミサオンに猫にされた俺は、     気が付けば自我を乗っ取られ……     村を襲い田畑を焼き尽くす魔物と化していたのです!!」 みさお「自分の悪行をこことぞばかりに人に押し付けようってハラですか彰衛門さん……」 悟り猫「なっ───なにを言うのかねキミは!!失礼ではないのかね!     私は高貴で気高い悟り猫ですよ!?」 みさお「高貴で気高い人が人に罪を擦り付けないでください!」 悟り猫「なんだと!お前こそ人に罪を擦り付ける気だなっ!!」 みさお「手をぐるぐる回さないでくださいっ!」 高松くんのように手を回しながら抗議したら怒られました。 どうしろってんでしょう。 悟り猫「聖や!?ようくお聞き!何を隠そう、この小娘こそじいやを猫にした───」 みさお「戦いとは相手の弱点をとことんまでに突くことと知れ!     轟天弦月流奥義───ゴールデンスマッシュ!!」 ドパァンッ!! 悟り猫「ほんごぉっ!!!」 ……───どさっ。 未発達とはいえ、黄金を蹴り上げられた俺はその場に倒れこんだ。 みさお「……勝ちはしましたが……なにか大切なものを失ってしまった気がします……」 悟り猫「おげげげげ……!!み、みさおはん……アータ、なんということを……!!」 みさお「ン?なんですか〜?声が掠れてて聞こえませんねぇ〜」 悟り猫「お、おのれわらしゃあ……!!」 怒髪天を突く!!漢の黄金を弄んだ罪───それこそを死と唱えよ!! 俺はバッドボーイメモリーの初代が如く髪の毛……というか頭の毛を逆立たせ、 言う必要もないのに『ぬう……っ……りゃあ!』と言って起き上がった!! みさお「あれ?」 悟り猫「漢族第一教訓!!自らの黄金を面白半分に打ち抜くものには遠慮をするな!!     よって貴様には相応の罰を受けてもらいます!」 みさお「なっ───ちょっと待ってくださいよ!今のは確実に彰衛門さんに非が」 悟り猫「知らん!我と義兄妹となる者は理不尽の全てを抱くことと知れ!!」 みさお「うわっ!ずるいですよそんな理屈!」 悟り猫「問答は無用でござる!トタァアーーーッ!!」 ガッシィッ!! みさおの首を両足で掴み、さらに体を捻る!! みさお「えっ!?わっ───わわっ!!」 悟り猫「ハイヤァアアアーーーーーッ!」 地面に足を付くことが出来ない所為でみさおを持ち上げられない俺は、 月空力で浮遊することでその体重を支えた! それらの多重移動を軽やかに流し、掴んだみさおの頭を地面にゴチャア!! みさお「ぴうっ!!」 悟り猫「皇流古流武術奥義旋落とし……フフ、これを受けて立ち上がった者は居ません」 みさお「なんてことするんですか!」 悟り猫「速ッ!!?」 頭から落としてやった次の瞬間、もう起き上がりましたよ!? ウソツキ!皇さんのウソツキ!! いやまあ、立ち上がった者が居ないってのは俺が適当に言ったことですが。 ……と、そげなことを考えていた俺の前に、聖が立った。 聖  「パパ……みさおちゃんをイジメた……」 悟り猫「ややっ!?」 しかもそげなことを言ってきます。 あの……聖さん? この場合、体のちっこいこの悟り猫と人間であるみさおさん、 どっちが有利だとお思いですか? 悟り猫(フッ……考えるまでもねぇ───猫だ!!) 俺はこの状況をステキに分析し、今までのパターンをも組み込んで─── きっと背後で刀を抜いているであろう夜華さんの足に即座に飛びついた!! 夜華 「うわっ!?な、なにをする貴様!!」 悟り猫「ニャアッ!!」 さらに爪をジャキンッと伸ばし、その手で夜華さんの足にしがみつく!! ゾブシュッ!! 夜華 「つあぁあああああーーーーーーーっ!!!!」 悟り猫「ニャアッ!ニャアッ!!」 サクッ!サクシュッ!! 刺す!刺す刺す刺す!!ラッシュだラッシュ!! 夜華 「ききき貴様ッ!!急になにをするんだ!わたしになにか恨みでもあるのか!!」 悟り猫「ニャ?」 ふと見上げてみた夜華さん。 刀など抜いておらず、ただ足に走る鋭い痛みに涙を溜めていた。 悟り猫「ニャ……」 ヤベェ、勘違イ、言エナイ……。 しかもまた泣かせてしまった。 俺、一体何回夜華さんを泣かしたっけ? しかも今度は思いっきり俺の勘違い&早とちり。 みさお「底が知れますね……。どうせ篠瀬さんが刀でも構えてるとか思ったんでしょう」 悟り猫「ニャア……」 悟られてますねぇ俺。 この悟り猫ともあろう者が、悟れずに悟られるとは……。 夜華 「っ……迷惑……なのか……?わたしが迷惑だから……こんなことを……」 夜華さんが座り込んで、ポロポロと涙を流し始めてしまった───やべぇマジだ!! あの夜華さんがマジ泣きしてます!! 悟り猫「ゴニャニャッ!?───やっ!違いますよ失礼な!!     だって聖でさえ拙者の前に立ちはだかったのですよ!?     このパターンだと全員で拙者を囲んでボッコボコにしてくると思うじゃない!     ねぇ!?思うでしょ!?」 みさお「わたしに訊かれても困りますけど……     それって自分で言ってて虚しくありませんか?」 悟り猫「シャ、シャラップ!!」 みさお「今まで理由もなく、     彰衛門さんが篠瀬さんに手を上げることなんてありませんでしたもんね〜。     そりゃあ、誰だってショックだと思いますよ〜?特に篠瀬さんは」 悟り猫「グ、グムムゥウウウーーーーーッ!!!!!!」 野郎!ここぞとばかりに俺を嘲笑おうって気か!! いい根性してるじゃありませんかもう!! つーか義兄妹になってからというもの、 どんどんとみさおから遠慮が無くなっていってますよ!? 嗚呼、あの心やさしく娘っ子は何処に……!! みさお「泣〜かした〜、泣〜かした〜♪」 悟り猫「ギギギィイイイーーーーーッ!!!!!」 なんということか!! まさかこの俺がからかわれ、しかもバカにされようとは!! 悟り猫「ま、まさに……複合クライシス!!」 みさお「……なに言ってんですか?」 悟り猫「や、えと……ごめんなさい」 言葉も目つきも凄まじく冷たかったです、みさおさん。 夜華 「彰衛門……わたしは……」 悟り猫「ノゥッ!別に夜華さんのことが迷惑だからって攻撃したわけじゃあありませんよ!     つーか俺、たまの反撃で泣かれるとすっげぇ立場無いんですけど!?」 みさお「彰衛門さんみたいな不死身超人とか弱い篠瀬さんを同じ扱いしたら大変ですよ。     なに世迷言を言ってるんですか」 悟り猫「あの……それ言いすぎ」 みさお「言いすぎじゃありません。     大体ですね、彰衛門さんは人に攻撃するなんてことは滅多に無いでしょう?     それなのに急にやられればショックも大きいんです。解ります?」 悟り猫「でもさ、俺……散々斬られましたけど……」 みさお「篠瀬さんは彰衛門さんみたいに痛みを中和することが出来ないんです。     だから言ってるじゃないですか、彰衛門さんと同じ扱いしたら大変だって」 悟り猫「………」 みさお「彰衛門さん?」 フッ……そうか。 とうとう馬脚を現しおったはこの小娘め。 悟り猫「みさお」 みさお「え───な、なんですか」 真っ直ぐに目を見つめて、真面目な声で言ったのが利いたのか、 みさおが少し驚いてみせた。 悟り猫「俺は信じてるぞ。お前がいつか理解するその日を」 みさお「……?なんですかそれ」 悟り猫「キミさ、今遠回しに『俺を人間じゃない』って言っただろ」 みさお「え───あ……!ちがっ───」 悟り猫「違いません。聖にも夜華さんにもそう聞こえた筈だ」 聖  「………」 夜華 「………」 みさお「そんな……」 みさおが聖と夜華さんに目を移すが、ふたりは悲しそうな顔でみさおを見るだけだった。 悟り猫「確かに俺は人間から離れた存在だぁなぁ。     どんな傷だって治しちまうし、何度も蘇ってる。     ああ、現に今猫だしな、人間じゃない」 みさお「あ、彰衛門さん、今のは……」 悟り猫「違いません。キミは確かに俺にそう言ってた。現実を受け止めなされ」 みさお「彰衛門さんっ……!」 悟り猫「じゃがな、貴様にもいつの日かその全てを理解する日が……こないね、うん。     10回以上死んで10回以上蘇ってみて、     骨になって苦痛を味わえば解るかもしれませんよ?」 みさお「うっ……ご、ごめ……」 悟り猫「みさおさんや?たとえば人に憧れたバケモノが居たとして、     そのバケモノはいつか人間になれると信じることで生きているとしましょう。     そげな人に『お前は一生バケモノのままだ』って言ったとしたら、     果たして取り返しはつくでしょうか?つかないでしょうか?     謝って済む問題でしょうか?済まない問題でしょうか?」 みさお「怒っ……てるよね……彰衛門さん……」 悟り猫「怒ってません。呆れてるんですよ。     俺の過去を誰よりも知ってるお前から、     そんなこと言われるだなんて夢にも思わなかったからな。     しかも義兄妹の誓いをしたお前にだ」 みさお「………」 悟り猫「………」 みさお「………」 悟り猫「……お前も『黙る』のか?」 みさお「え───あっ!」 悟り猫「もういい。一緒に行動するより離れてた方がよろしかろう。     現代に戻りますよ、今すぐ」 みさお「待って!待ってよ彰衛門さん!わたし───」 悟り猫「黙ップ!!夜華さん、聖さん!掴まりなさい!転移しますよ!」 夜華 「……ああ」 聖  「うん……」 素直に頷いて俺に触れるふたりと、みさおに触れて意識を集中させる俺。 みさおが何か言ってたが、完全にシカトして───俺は転移を発動させた。 ───キィンッ!! 悟り猫「ハフゥ」 弦月屋敷に降り立った俺は、触れていたみさおから手を離して伸びをした。 何を言えばいいのか解らないでいるみさおに何も言わないまま。 夜華 「彰衛門……」 聖  「パパ……」 ふたりが俺に視線を送る。 だが、何も言ってやりませんよ俺は。 みさおならちゃんと反省出来ると信じておるが故です。 ここできちんと考える時間を与えんと、いつか反省することを忘れてしまうでしょう。 だからこそだ。 俺は俺を見るふたりに『ゴニャアアァア〜〜〜ォ』とウェイターアイルーのお辞儀をした。 それからそのまま屋敷の中に入ると、三人に『早く寝なされ』と言った。 ゆっくりと考えなされ……そして強くなりなさい。 椛が、小僧が、ウィルヴスが安心できるくらい、強くね……。 Next Menu back