───地上最強猫列伝『第九章◆強襲!懐かしき者からの電話(ずんわ)!の巻』───
───……。 悟り猫「……グム?」 翌朝。 差し込む朝日で目を覚ました俺は、 うがいをして歯を磨いて朝食を作って食して段落を得た。 夜華さんも聖もみさおもまだ起きてこない。 悟り猫「……ふむ」 窓を開ける。 縁側にちょこんと座って空を見上げると、その空は綺麗に蒼かった。 草原をぴょんぴょこと跳ねる小鳥や、吹く風に煽られて揺れる草木。 そんな景色を眺めて、穏やかな気分に浸る。 そうした朝の気配の中……俺は、これからのことを軽く考えていた。 悟り猫「………」 ……畑でも作るかな。 一応ここは自分の土地なわけだし、どう扱うかも自由だ。 屋敷の裏手にはちと荒れてはいるけど畑だった場所もある。 稼ぐ当てがあるわけでもなし、自給自足生活ってのもいい。 夜華さんがいつ帰るのかは解らんけど、帰るまではのんびり暮らしたいし……むう。 なんにせよ、まずは───じゃりりりりりりりんっ♪ 悟り猫「───む?電話とな!?」 信じられねぇ……こんな場所に電話がかかってくるなんて……! きっとボスからだ……! 悟り猫「いや……そりゃまあ電気は通したから当然って言やぁ当然だけどさ……」 誰? 我が家なんぞに電話し掛けてくる馬鹿者は。 もしや悠介? 悟り猫「あれから少しは考え纏まったんかね」 ひとまずは出ることにした俺は、家の中でも寝る時にも外さなかったブーツを履いたまま、 縦横無尽に弦月屋敷の中を歩いて受話器を取った。 悟り猫「もしもし?」 正直持ちづらいが……しかたあるまいて、猫だし。 声  『彰利か〜?久しぶりだな〜』 で、出た途端に馴れ馴れしい声。 この声は─── 悟り猫「ややっ!?その声は!のんべの孫六さん!」 声  『誰だよ!」 悟り猫「……誰?」 声  『自分で言っておいて悩むなよな……俺だよ俺!中井出だ!!』 中学の頃に一緒にバカをやったクラスメイツのひとり、中井出だった。 悟り猫「へ?中井出?……え?ま、孫六さんじゃなかったの……?」 声  『おい……マジで間違えてたのかよ……』 悟り猫「え……?う、嘘だろ?お前孫六だろ?」 声  『どうしても俺を孫六にしたいらしいな……』 悟り猫「いや、つーかさ、どうやって俺の屋敷の電話番号知った?」 声  『晦に訊いた。お前、アパート暮らしじゃなかったっけ?』 悟り猫「最近になって我が家を得た」 声  『……ま、いいけど。で、用ってのは他でもなく、同窓会の誘いなんだが』 悟り猫「へ?同窓会?」 声  『そ。どうする?中学時代の親しいヤツらはみんなOK出たけど』 悟り猫「へー、みんな暇なのね」 声  『ハッキリ言うなよな……。お前はどうなんだ?暇なんか?』 悟り猫「最近、心にゆとりが無くなりつつあります。     悠介の気持ち、最近よく解る気がするんだよね……」 声  『なんだそりゃ』 悟り猫「おなご関連ですわ。最近、俺なんぞを好きだとか言う人が現れましてね……」 声  『……そーだな、晦って何気に女子から人気が───なに?』 悟り猫「ウィ?」 中井出がヘンな声を出した。 声  『お前を好きなヤツが居るって言ったか?』 悟り猫「ええまあ、そうザマスけど……なにか?」 声  『……冗談だろ?』 悟り猫「いや……それが冗談だったら、俺はかなり悩まずに済んだんだけどね……」 声  『マジか……?世も末だな……』 悟り猫「そうだよなぁ……」 声  『……お前さ、自分を卑下して楽しいか?』 悟り猫「馬鹿こくでね。俺は自分という人間をよ〜く知っておるよ。     俺はね、人に好かれるほど人間が出来てはおらんのよ。     俺はもう誰も好きにならんし、誰からも好かれるべきではないのだ」 声  『……なんかあったんか?』 悟り猫「えーとですね、人を愛してフラレた」 声  『うお……マジか』 悟り猫「あたしゃね、恋愛に関してはふざけたりはせんよ」 声  『あっちゃあ〜……ってことは、お前ってそいつのこと本気で好きだったわけ?』 悟り猫「イエス。でもね、もういいんです。俺ゃもう誰も好きにならんと決めました。     誤解だって解ってるのに突き放されりゃ、もういいって思えるものですよ……」 声  『悟ったもんだなぁ……ま、いいや。で、相手は?』 悟り猫「粉雪」 声  『へ?』 悟り猫「日余粉雪」 声  『───へぇっ!?あ、あいつがっ!?あ……でもそれで納得出来たよ。     日余のヤツ、誘ってみてもダメだったんだ。そういうことか……。     あ……無理には誘わんけどさ、お前はどうする?来るか?』 悟り猫「行きますよ?別に粉雪が来ようが行きましたがね」 声  『そか。んじゃ、待ち合わせ場所だけど───メモいいか?教える』 悟り猫「御意」 ───……。 ───……。 声  『OKな?』 悟り猫「オウヨ。悠介も呼んだのか?」 声  『ああ。更待先輩も来るっていってたけど、いいか?』 悟り猫「へ?先輩殿って『同窓』じゃないデショ」 声  『ああ、なんでもさ。俺と彰利と悠介とで、また集まりたいんだとさ』 悟り猫「集合したら浮きますよ……?」 声  『へー、お前でも誰かを気遣うんだな。     中学時代のお前だったら、絶対にツッコむこともなく来させてただろ』 失礼な……俺ゃあ人のことは何気なく考えておりますよ。 悟り猫「俺は昔っからこんなだぜ?ただそれを表に出さないだけさね」 声  『そうかぁ?』 思いっきり怪しそうに言われてしまいましたよ……。 なんだってんでしょうね。 悟り猫「まあそれは置いておくにしても、やっぱ先輩殿はほっとくべきだと思うぜよ?」 声  『ん?本人が来たいって言ってんだからいいじゃん。なんだよ、ノリ悪いなぁ』 悟り猫「なにを馬鹿な……あたしゃね、先輩殿のことを思ってですね。     大体、『同窓会』って名目で集う元クラスメイツどもに失礼ではないか」 声  『そりゃそうかもしれないけど』 悟り猫「そもそもさ、先輩殿に会ってないのが久しいのってお前だけだし」 声  『え?そうなのか?』 悟り猫「悠介ン家に電話したんなら解るだろ?先輩殿は今、晦家の長女。     俺は晦神社によく遊びに行くし、悠介は先輩殿と家族。解る?」 声  『あー……なるほど。     だから晦の家に電話し掛けたのに更待先輩に電話を代われたわけね。     俺てっきり、偶然遊びにいってただけなのかと思ってた』 悟り猫「フッ、馬鹿め」 声  『うるせぇ!』 ほっほっほ、怒りおったわ。 こういうところは相変わらずですねィェ〜〜ッ!! 声  『……あれ?ちょっと待て。それってなに?更待先輩と晦が結婚したってこと?』 悟り猫「なにを言っておるのかねこの馬鹿は……」 声  『説明も無しに人を馬鹿呼ばわりすんなっ!!』 悟り猫「ならば教えてしんぜましょう。先輩殿はね、晦家の養女になったんじゃい。     知ってるだろ?更待の家が一家惨殺に遭ったの」 声  『あ……あれってやっぱ更待先輩ンところだったのか』 更待なんて名前、普通無いしね。 悟り猫「そういうことだ」 声  『偉ぶるのはいいから話続けろ』 悟り猫「ヒドイねキミ……まあいいコテ」 俺はコホリと小さく咳払いをしてから口を開いた。 悟り猫「その惨殺事件の前から既に養女になってたんだけどね、     ホレ、先輩殿って悠介ン家の家政婦になってたじゃん?」 声  『あ、あーあー、そうだったそうだった。そんで?』 悟り猫「で、俺と悠介が高校二年の時だな。     いろいろあって、先輩殿が心を休める時間が無くなったわけですよ」 声  『そのいろいろってのが気になるけど……そんで?』 悟り猫「その所為で大学落ちましてね。     家から『こんな馬鹿娘はいらーーん!』って追い出されたわけ」 声  『落ちただけでかい!!どういう家だよ!!』 悟り猫「まままま、いいんでないかい?そのお陰で先輩殿、惨殺されずに済んだんだし」 声  『あ……そっか。そう考えると救いはあるな。     世の中、どんなことが吉に転ぶか解らないもんだなぁ……』 俺もそれは痛感してきました。 どうかしてるよこの世界。 声  『ま、暗い話はこれくらいにして、と。     お前さ、今は家で暮らしてるんだろ?ひとりなんか?』 悟り猫「いいえ?三人ほど住居者がおりますが」 声  『へ?……誰よ』 悟り猫「誰と言われましても。三人が三人とも、貴様の知らん輩なので」 声  『んー……そか。まあ知りたがりは長生きしないっていうからな、     質問責めもここまでだ』 自覚はあったらしい。 声  『そんじゃな、明後日にまた会おう』 悟り猫「ていうかさ、皆様マジで時間合うんか?」 声  『合う。つーか合わせる。いまさらだぞ彰利。     俺達ゃどんな時でも楽しけりゃいい中学生だっただろ?』 悟り猫「……そうだっけ?」 そうは言われましても、なにせ100年以上前のことですからね……。 悟り猫「俺が覚えてるのはせいぜい、お前がエロビデオ好きってことぐらいだが」 声  『それだけかよ!!』 悟り猫「ままま、えーがらえーがら。暇ンなったら俺の家か悠介ン家に遊びに来いや。     そうすりゃあ四人で集まるのなんてすぐだろ」 声  『お前らが俺ン家に来るってことはしないわけね……』 悟り猫「だって俺、お前ン家知らんし」 声  『俺もお前ン家なんぞ知らない』 悟り猫「フッ……奇遇だな」 声  『奇遇か?相変わらず訳の解らんヤツだな』 悟り猫「まあ気にせずいきませう。そんじゃな、明後日」 声  『ああ。また適当に騒ごうや。そんじゃ』 ───ブツッ。 受話器が置かれる音とともに、声も無くなる。 悟り猫「……FUUUM」 まさか、ねぇ。 この俺に同窓会の誘いが来るとは。 なんつーか俺、こげな『一般人』的な行事、すっかり忘れてたよ。 そーだよな。 俺、一応学生だったこともあったんだよな。 いやはや、中井出と話してたらなんだか懐かしい気分になりましたよ。 まるで自分の喋り方じゃなかったみてぇだ。 ───などと考えてた時だった。 ナルルルル……トルルルル…… 悟り猫「おや?」 再び鳴る電話。 アタイはしばらく考えてからのんびりと受話器を取り、耳に当てた。 悟り猫「はい!こちらタケモト引越しセンターと申しますが!」 声  『えっ!?アキちゃんの家じゃないの!?あれ……間違えたかな……』 悟り猫「───」 思考回路、一瞬停止。 『アキちゃん』って……キリュっちじゃん。 うわー、懐かしー……。 声  『ご、ごめんなさいっ!間違えましたっ!』 がちゃっ! つー、つー…… 悟り猫「………」 騙されやすいところは相変わらずらしい。 ナルルルル、トルルルルル…… 悟り猫「……むう」 ガチャッ。 声  『もしもしっ?アキちゃんっ?』 悟り猫「いいえ、わたしリカよ♪」(裏声) 声  『あれぇっ!?』 悟り猫「今、中国に居るのっ♪」 声  『え?え?じゃ、じゃあこれ国際電話なの!?     だ、だめだよっ!国際電話ってとっても高いんだよねっ!?』 悟り猫「そんなこと、このリカに訊かれても解らないわっ♪」 声  『あ、ご、ごめんなさいっ!間違えましたぁっ!!』 ガチャッ!! ………………ナルルルルル…… 悟り猫「……懲りることを知らんのも相変わらず、と」 ガチャッ。 声  『……アキちゃん?』 悟り猫「もしもし、わたしリカちゃん♪」 声  『あれぇええっ!!?』 悟り猫「今、日本に居るの♪」 声  『えぇっ!?早いよっ!さっきまで中国に居たんじゃ───』 悟り猫「実はわたし、おばけなの♪」 声  『え……?』 悟り猫「待っててね♪     わたしリカちゃんは、電話をかけてくれた人を殺さずにはいられない性格なの♪」 声  『えぇっ!?い、いいよっ!来なくていいよっ!!待ってないから来ないで!』 がちゃんっ!! 物凄い勢いで受話器が置かれたらしい。 おお、耳が痛い……。 悟り猫「はふぅ、さすがにもう電話し掛けてこないかね」 ……ナルルルルル…… 悟り猫「………」 多分、成長してないんだろなぁキリュっちってば。 がちゃっ。 声  『あ……アキちゃん……だよね?』 悟り猫「もしもし、わたしリカちゃん♪」 声  『ひゃあああああああっ!!!!!』 ガチャァアーーーンッ!!! 悟り猫「ぐぉおおーーっ!!」 耳がっ……!!耳がキーーンって……!! なんつう音出してくれはんのよ……!! ナルルルルル…… しかも懲りないし……。 ガチャッ。 声  『………』 悟り猫「お待たせ♪今、あなたの背後に居るの♪」 声  『まだ何も言ってないよぉおおおっ!!!     うわぁあああああん!!アキちゃああああん!!』 ゲゲッ!!泣いてしまわれた!! すげぇ!この人全然成長してないよ!! これは是非にでもからかい通さねば! 悟り猫「おぉっと振り向くなよ!?     振り向いたら首と胴体がオサラバすることになるぜ!?」 声  『ひっ……うぅう……どうする気なの……?』 悟り猫「動かないで。わたしリカちゃんは実は、あなたを助けに来たエージェントなの」 声  『えっ!?そうなの!?で、でもさっき、わたしのこと殺すって……』 言ってませんけど……。 なにやら頭の中で事態がエスカレートしていたらしい。 悟り猫「あなたと会話することで、あなたが清い心の持ち主だということが解りました。     だからあなたは殺しません」 声  『え、えへへ……そんな、清い心だなんて……』 悟り猫「というわけで、いくつか質問をします。     その過程であなたが真に清いおなごならば、人質の真穂さんは逃がしましょう」 声  『え……えぇっ!?真穂!?真穂、そこに居るの!?     あれぇっ!?さっきまでそこに居たのに!!』 悟り猫「おっと動くなよ!?動くと真穂さんの首がコキリ……だぜ!?」 声  『や、やめてよ!なんでも答えるから!』 悟り猫「ディ・モールト・グラッツェ。ではあなたが清いかを判断しましょう。     第一問。あなたは生徒思いの教師である。だから生徒を殴ったりしたことはない」 声  『うっ……』 悟り猫「『うっ』?なんですかね今の声は。     あんたまさかぁ〜〜〜、清い人のくせに生徒を?」 声  『……殴りました』 悟り猫「む。では次の質問。あなたは子供をボコボコに殴ったことがある」 声  『………』 悟り猫「なにかね!だんまりかね!!」 声  『う……うううっ……うくっ……なんでこんなことになっちゃったの……?     わたし……アキちゃんの声が聞きたかっただけだったのに……。     アキちゃん……アキちゃぁん……』 悟り猫「ゲゲェエエーーーッ!!!!」 なんてこと!また泣かせてしまった!! 声  『わっ……ちょっとお母さん!なんで泣いてるのっ!?』 声  『あぁう……真穂ぉ……!     あのね、あのね、さっき真穂が友達から聞いたっていう、     アキちゃんの電話番号にかけたらリカちゃんが出てね……?』 声  『……リカちゃん?なにそれ……』 声  『そしたらね、わたしの首切るとかわたしを殺さないとか言い出してね……?     そしたら……そしたら……うぁあああん!真穂が攫われ……あれぇっ!!?』 声  『お母さん……よく解らないけど気づくの遅すぎ……』 声  『え……?あ、あれ……?     真穂、どうしてここに居るの……?リカちゃんに攫われたんじゃ……』 あの……攫ったなんて一言も言ってないんですが……? 声  『ど、どういうことなのリカちゃん!ウソつくのは最低な行為だよ!?』 悟り猫「おっと、フフフ……架空の人質を得てまんまと騙そうとしたのですが……。     流石にあなたは手強いようですね……」 声  『ふふーーんだ!そうだよ!わたしを騙そうとしたって無駄なんだからね!』 悟り猫「………」 なんだか哀れに思えてきた。 変わらなさすぎだなぁキリュっち……。 声  『お母さん、ちょっと電話代わって』 声  『え?あ───だ、だめだよ!真穂って単純だから騙されちゃうよ!』 声  『うわ……お母さんにだけはその台詞、言われたくなかったな……』 声  『え?どういうこと?』 声  『ううん、なんでもない。わたしなら大丈夫だよ。お母さんの娘だもん』 声  『……ほんとに?』 声  『うん。大丈夫だから』 声  『じゃあ……』 ガタッ、ゴソソッ…… 声  『もしもし?』 悟り猫「え?もしもし?田辺ですけど」 声  『……あれ?田辺くん?』 フフフ……俺の田辺ヴォイスもまだまだ衰えておらんな。 昔はこうやって、なんでも田辺の所為にしたもんだ。 声  『……じゃなくて。あのね、弦月くん。     いい歳して、うちの母で遊ぶのはやめてよね』 悟り猫「あら?バレてた?」 声  『弦月くん以外で、他の誰がお母さんをからかうのよ……』 悟り猫「や……そんな特別扱いされると照れるよ」 声  『……っはぁあああ〜〜〜…………』 うお……すっげぇ溜め息吐かれた……。 声  『……弦月くん、変わらなさすぎ』 悟り猫「キリュっちの方が全然変わってなさそうだけど」 声  『まあ、ね。お母さん、未だ学生に間違われてるし』 悟り猫「……ちなみにどれくらいの学生?」 声  『今、ようやく大学生くらい……。     わたしと一緒の時なんか、【妹?可愛いね】とか言われるんだよ』 悟り猫「どっちが?」 声  『……お母さんが』 ……若いッスね。 声  『その上にこの性格でしょ?今普通に大学通っても、絶対に違和感無いよ……』 悟り猫「俺が小学の頃でさえ、中学生でも違和感がなかったくらいだしなぁ……」 童顔の上に体もちっこかったからなぁ。 あれが童顔の究極系か。 一応大人なのに……成長出来てよかったね、キリュっち。 悟り猫「真穂さんてキリュっちが16歳の時の子供?」 声  『うん。だからって姉妹に見える親が居るのは結構微妙な気分だけど……』 でしょうなぁ……。 悟り猫「キリュっちは今なにやってるん?やっぱ小学校のセンセ?」 声  『あー、うん。えーとね?弦月くんが小学校卒業してから大変だったんだよ?』 悟り猫「なにがかね」 声  『ほら、中学が一緒だったでしょ?だからね、アキちゃんどうしてる?     元気?相変わらず無茶やってる?いじめられてない?とかいろいろ訊いてくるの』 悟り猫「そりゃまた……。なんつーか俺、子供ですか?     いやそもそもキリュっちに子供っぽく見られるのってこの上無く微妙な気分だ」 声  『うん……わたしもそう思う』 声  『真穂っ!大丈夫!?代わろっか!?』 声  『あ、うん、大丈夫だから』 声  『うう……きっと洗脳されちゃったんだ……!』 声  『お母さん、お願いだからまず落ち着いて……』 悟り猫「愉快そうでええのぅ」 声  『これはこれで苦労してるんだけどね……』 悟り猫「あ、そういやどうやって俺の家の電話番号を?     中学の頃の連絡網なら普通、アパートの方に電話し掛けるっしょ」 声  『うん、さっき中井出くんから電話があってさ。     それで【さっきまで彰利と話してた】って言ってたのを聞いてね?     そしたらお母さんが過剰に反応して……』 悟り猫「うお……どういう耳ですか……」 声  『お母さん、本当に弦月くんのこと気に入ってるから。     わたしにこうまで言ったんだよ?     【付き合いたい人が居ないならアキちゃんと結婚しなよ!】とか』 悟り猫「うお……あたしゃ結婚なんてしませんよ?」 愛だの恋だのはもう懲り懲りじゃい……。 声  『へ〜……そうなんだ』 悟り猫「ウィ。あたしゃ独身のままで風化したいと思っております。     もしくは能力で、不老になって世界の終わりを見届けるつもりです」 声  『え……弦月くんってそんなことも出来るの!?癒しだけじゃなかったの!?』 声  『え!?アキちゃん!?アキちゃんと話してるの!?代わって真穂!!』 声  『やっ……ちょっとお母さん!あとでちゃんと代わるからっ!』 声  『真穂!お母さんの言うこと聞かなくちゃだめでしょ!!』 声  『とにかくだめ!あとにして!』 声  『話逸らそうとしてもだめだよ!』 声  『逸らしてないでしょ!?』 声  『もう───貸してったら!』 ガタッ!ゴトトンッ!! 声  『むぎっ!!』 ………………どさっ。 声  『あ、あれ?真穂ー?』 ………………やっちまったようだ。 さすがキリュっち。 声  『えーと……あはははは!!』 うわ、笑って誤魔化しおった。 声  『えと……アキちゃんだよねっ?』 悟り猫「否。拙者、世良田次郎三郎元信(せらだじろうさぶろうもとのぶ)と申す者」 声  『……あれ?』 悟り猫「これは面妖な……妙な黒い物体から人の声が……」 声  『……あのー、訊いていいかな。あなたは今、どこに居るのかな?』 悟り猫「なにを馬鹿なことを。江戸に決まっておるだろう」 声  『───……えぇっ!!?す、すごいよっ!時代を超えたお話しちゃってるよ!     真穂っ!真穂っ!すごいよ!?起きなきゃ損だよっ!!』 うーん、素直ですなぁ。 変わってないようでなによりですよキリュっち。 声  『あ、あのね、わたし桐生仁美っていいますです!あなたは、えっと……』 悟り猫「『お前』、違う。『なっちゃん』、言う」 声  『え?なっちゃん?』 悟り猫「いえなんでも。ところでキリュっち、真穂さん殴ったでしょ」 声  『───あれぇっ!!?え……ア、アキちゃん!?あれ!?世良田さんは!?』 悟り猫「へ?なに?誰?」 声  『世良田さん!えっとねアキちゃん!     今わたしね、江戸時代の人とお話してたんだよ!?』 悟り猫「……あのですねキリュっちさん。     俺の知人がよく言う言葉ですが、寝言は寝て言うもんですよ?     なに昼間っから夢見てんですかこのカスは」 声  『アキちゃん!人のことカスなんて言ったらダメでしょ!!』 悟り猫「クズが!!」 声  『それはもっとダメだよ!!』 悟り猫「なんだとてめぇ!!ならどう罵れってんだコラ!!」 声  『罵ったらダメなの!解った!?』 悟り猫「さっぱり解らんとです!!」 声  『アキちゃん!!』 悟り猫「なにかね!!」 声  『アキちゃん今どこに住んでるの!?』 悟り猫「それを知ってどうする気かね!     ───ハッ!?そ、そうか闇討ちか!さすがキリュっち!」 声  『そっ───そ、そんなことしないもん!!     当然のように言うなんてヒドイよ!!』 悟り猫「……えぇっ!?違うの!?」 声  『本気で驚かないでよ!!』 いや……マジで闇討ちかと思ったんですが? 悟り猫「で……真穂さんは?」 声  『話を逸らしちゃだめでしょ!!』 悟り猫「キリュっちって美人だよねっ」 声  『えっ───……そ、そうかなっ……』 悟り猫「ところで真穂さんは?」 声  『え?えと……動かない』 あっさりと話を逸らせたのはいいんだが、動かないらしい。 悟り猫「えっとさ、キリュっち。キリュっちって今どこに居るの?」 声  『え?家だけど』 悟り猫「どこかね?住所聞いてもいい?」 声  『う、うん……えっとね……』 ───……。 悟り猫「……ふむ。んじゃ、すぐ行くから」 声  『え?近くに居るの?』 悟り猫「いやいや、ちょいと待ってて」 ひとまず電話を切って、適当な準備をしてから月空力を発動させた。 ───キィンッ!! 桐生 「ひゃっ!?だ、誰……!?」 転移は成功した。 したが……うわーキリュっちだ。 とても30代とは思えないキリュっちがそこに居た。 俺はというとミニチュア紙袋をこさえて、頭に被っていたりします。 違和感がどうとかより『誰……!?』って訊いてくるキリュっちに驚きを隠せません。 校務仮面「俺か。俺は校務仮面なり!!」 桐生  「こ、こうむ……?よく解らないけど出てってよ!      これからアキちゃんが来るから、掃除とかしなきゃいけないの!」 校務仮面「ならぬ!俺はそこの倒れているおなごを救うためにやってきたのだ!      救わなければ帰れない!」 桐生  「眠ってるだけだよ!」 校務仮面「うそおっしゃい!!」 桐生  「うそじゃないもん!!」 きっと変わってないだろうと思っていた母校の教師さんは、 その実……てんで変わってなかった。 怒りっぽいところから子供っぽいところまで、なにひとつ変わっちゃいない。 背が伸びたのは奇跡だな、うん。 でもマジで大学生……下手したら高校生でも通用する。 すげぇ……キリュっち、あんたすげぇよ……。 校務仮面「ほほっ、仕方の無いヤツじゃ……。      このバナナをあげるから、そこをどきなされ」 桐生  「ふふん、そんなものでわたしを騙そうとしても無駄なんだからね。      お腹なんか減ってないもん」 クキュ〜〜……。 桐生 「……!!」 なんとも間の悪い人だった。 校務仮面「ほほ?今のはなんの音かね?」 桐生  「わ、わたしじゃないよ!?      校務仮面さん!真面目なお話してる時にお腹なんか鳴らしちゃだめでしょ!」 しかも人の所為にしてきとりますよこの人は……。 自分の言葉がどれだけ自分を追い詰めてるか気づかないのかね。 校務仮面「まあまあ、まずは一口ご賞味めされ。      実はこのバナナ、ある地域でしか取れない伝説のバナナなのですよ」 桐生  「え……」 校務仮面「日本ではお目にかかれない素晴らしいバナナですよ?      どうです?今なら食べれますよ?」 桐生  「う、うう……うー……!」 きゅ〜、きゅく〜…… 桐生  「わ、わたしじゃないったら!!」 校務仮面「まだなにも言ってませんよ?」 桐生  「ううー……!い、いらないもん!わたしお腹なんか減ってないもん!!」 校務仮面「そうですか……ではこれは私が無理矢理あなたに食わせるとしましょう。      私が食べさせるのですから、お腹が減ってようが減ってまいが関係ありません」 桐生  「……!!」 俺の言葉に、キリュっちの顔がパアアと明るくなる。 校務仮面「いや、やっぱり無理矢理食べさせるのは人としてダメだよね。      これは真穂さんにあげよう」 桐生  「ええっ!?だ、だめだよ!!」 校務仮面「むっ!?何故かね!!」 桐生  「え?えと……ま、真穂は今お腹壊してて、何も食べられないの!」 校務仮面「なんと!それは真実かね!?」 桐生  「う、うん!そうなんだよ!」 校務仮面「じゃあこのバナナは捨てましょう」 桐生  「あれぇっ!!?」 校務仮面「むっ!?なにかね!!なにか文句でもあるのかね!?えぇーーっ!!?」 桐生  「あ、あうう……えと……。      す、捨てるくらいならわたしが食べてあげてもいいよ?」 校務仮面「ぬう!なんと太い態度か!      貴様、村民が苦労して作り上げた大事な食料を、      『食べてあげてもいいよ』と見下した口調で言うとはなにごとか!!」 桐生  「えぇっ!?そ、そんなつもりじゃ……」 校務仮面「よってこれは貴様の目の前で俺が頂く!」 桐生  「だ、だめだよ!それはわたしのだよ!」 校務仮面「ほっ!なにを世迷言言いおるかこの小娘は!      これは英雄さんが丹精こめて作ってくれた俺のバナナぞ!!」 桐生  「人を小娘だなんて言っちゃだめでしょ!!」 校務仮面「ほっほっほ!!ちっこいキミを小娘と呼んでなにが悪いのかね!!」 桐生  「〜〜〜っ……!もぉおお〜〜〜っ!それ以上言うと怒るよ!?」 校務仮面「も〜〜って、牛の真似かね?ダメですよそれでは。      牛の鳴き声っていったら『ドンブンユゥウウ〜〜』でしょうが」 桐生  「そんな鳴き声を出す牛なんて見たことないよ!!」 校務仮面「なんだとてめぇ!!そりゃああれだぞ!?偏見ってもんですよ!?      よいかね!今の貴殿の説は経験主義に基づいて展開されている!      しかし!経験主義から独立して知られている本流的!      或いは先見的な観念原則が存在するという可能性が      完全に否定されていない以上!貴殿の論説は論説足り得ない!      即ち!真である信念を演繹する前提が真であっても!      その信念が間違った推理過程から演繹される時は───あれ?」 桐生  「難しいことを言ってはぐらかそうとしても無駄なんだからね……!!」 校務仮面「え?いや、ちょっと待ってほしいな……ね?話せば解ると思うんだ」 バキベキと拳を鳴らしながら歩いてくるキリュっち。 あの……なんで? 校務仮面「よ、よせ!俺を殴ればこの校務仮面が破れてしまうことになるだろう!」 桐生  「だったらどうだっていうの!?」 校務仮面「校務仮面の素顔は絶対に秘密なんだ!素顔を見られたら死ぬしかない!      だからよせ!悪いことはシュテンドルフ(言わん)!!」 桐生  「訳の解らないこと言って言い逃れようとしたってダメだよ!!」 校務仮面「キャーーーッ!!?」 キリュっちが体を跳ねらせた。 その刹那、既に顔のすぐ横にまであるキリュっちの脚。 早ェ……相変わらず早すぎるよ───ベゴキュッ!! 校務仮面「ベップ!!」 …………ドゥ。 ───……。 真穂 「う、うん……」 ふと目を開ける。 すると……目の前で展開されている、殴打劇場。 お母さんが小さな何かを殴る蹴るどつくでボッコボコにしてる。 ていうか……なんだろ。 10年くらい前に、これと同じ状況を見た気が……シュババッ! 真穂  「え?」 ??? 「う、動くな!動くとこいつの命が無ェぜ!?」 桐生  「なっ───卑怯だよ!!男の子なら正々堂々としなくちゃだめでしょ!!」 ??? 「知らんなぁ〜〜ッ!!俺は校務仮面!      素顔を見られるくらいならなんでもやるぜ!      校務仮面の素顔は絶対に秘密なのだ!素顔を見られれば死、あるのみ!!      ───おっと動くな!この異常なまでに発達した豪腕が目に入らないのか!!      それ以上動けば俺の腕が『大腕大爆笑』を巻き起こすぜ!?」 桐生  「腕が笑うわけないでしょ!!」 校務仮面「あれっ!?ギャア!!違う違う!!『大腕鋼爆衝』だったよね!?うん!」 桐生  「また訳の解らないこと言って誤魔化す気だね!?」 校務仮面「違いますよ失礼な!!何を言っておるのかねこの小娘は!!」 桐生  「わたし小娘じゃないもん!!」 校務仮面「ババア!!?」 桐生  「違うもん!!」 ……なんというか。 物凄く懐かしい。 どうやって来たのかは解らないけど、 この紙袋を被った何かは……うん、信じられないけど弦月くんに似てる。 ううん、もしかしたら弦月くん自身なのかもしれない。 彼のことだ、本当になんでも出来るんだろう。 いまさら小型の動物になるとかで驚いてたら、弦月くんの理解者にはなれやしない。 大体……お母さんをここまでからかえるのは弦月くん以外に居る筈が無い。 真穂 「………」 しかし久しぶりに会ったというのに、いきなり人の母親をからかうとは…… 一体どういう神経をしてるのだろう。 わたしは少し湧き出した悪戯心を胸に、 お母さんをからかうのに夢中な弦月くんの頭の紙袋を─── ズボッ!!と一気に取り去った!! その途端! ???「ギャーーーッ!!!!!」 真穂 「───わぁっ!?猫───猫っ!?」 ???「ギャーーーッ!!!!!」 桐生 「えぇっ!?猫さんが喋ってたの!?すごいよ!!」 ???「ギャーーーッ!!!!!」 ドタッ。 ……………………。 真穂 「……あれ?弦月くん?」 桐生 「え───アキちゃん!?アキちゃんなの!?」 お母さんが倒れた弦月くん(?)を揺さぶる。 けれどどこかで見たような濃い顔をしたまま、動かなくなってしまった。 あ……思い出した。 これ、漂流教室の顔だ。 猫のくせにこんな顔が出来るなんて……絶対に弦月くんだ。 歳を取らなくできるくらいなら、動物になることだって可能なんだろう。 桐生 「わぁっ!し、心臓が動いてないよ!!」 真穂 「えぇっ!!?」 わたしとお母さんは突然のことに慌てふためくだけだった。 ───……。 さて。 桐生 「アキちゃん!!」 悟り猫「なにかね!」 アタイは今、キリュっちに説教を受けています。 何故かって……なんででしょうね? ええまあ、ひとまずはいろいろと説明して、 我輩が猫であることは理解してもらったんですが……。 あっさりと信じられてしまうあたり、 小学の頃の俺はよほどインパクトがあったんでしょう。 桐生 「アキちゃん、またわたしのことからかったでしょ!」 悟り猫「ほっほっほ、何を言うかと思えばぞえ。     これ小娘、麿(まろ)が期待した言葉はそのようなものではないぞえ。出直せぃぞえ」 桐生 「こっ───小娘じゃないもん!!」 悟り猫「これこれ、そうカッカするものではないぞえ。カルシウムが足りない証拠ぞえ。     まったく。麿のように日々日頃から摂取して、     適度に運動していればそう怒ることもないというのにぞえ」 桐生 「う、うぅぅぅうう……!!!ぞえぞえうるさいよ!!」 悟り猫「ほっほっほ、それみたことかぞえ。多少のことですぐ怒るぞえ。     どれぞえ、麿が小娘のために『雄瀬呂(おせろ)』を打ってやろうぞえ」 桐生 「話逸らそうとしても───」 悟り猫「ほっ!逃げるのかえ!?えぇーーっ!!?     怖いのかえ!?底が浅い小娘よのォ〜〜〜ッほっほっほっほ!!!」 桐生 「くっ……くううううう!!!!」 真穂 「うわぁ……」 リビングに案内されてから数分。 アタイは死に真似をやめて、存分にキリュっちをからかっていた。 その過程で真穂さんに『凄まじく相変わらずすぎるよ』アイをされたのは言うまでもない。 悟り猫「さあ、勝負ぞえ。麿は寛大ゆえ、先行は小娘、そちに譲るとするぞえ」 ゴトリとオセロ版を置いて、さっそく始める。 桐生 「後悔させてやるんだから!」 キリュっちが意気込んでオセロをベドッ!と置く。 オセロ版ってどうも妙な音なるよね。 そこがまたいいんだけど。 悟り猫「ほっほっほ、では麿はここに置くとしようぞえ」 桐生 「わざわざ笑っちゃだめ!怒るよ!?」 悟り猫「ほほっ、どこで笑おうと麿の勝手ぞえ。     なにを言い出しておるのかこの小娘はぞえ」 桐生 「うぅうーーーっ!!!」 真穂 「はぁ……」 キリュっちが熱くなりすぎてオセロしか見えなくなってゆく中、 真穂さんだけは長い長い溜め息を吐いていた。 しかしこれも作戦の内。 ギャンブルとは冷静さを欠いた者が負けるものよ! クォックォックォッ、我が強さ、思い知るがよいわ!! ───………………。 悟り猫「……ありません」 桐生 「やった勝ったよぉーーーっ!!!」 悪夢だっ……!! まさかっ……まさかキリュっちに負けるとはっ……!! 悪夢っ……!これはっ……!!悪い夢っ……!何かの間違いっ……!! 桐生 「ふふーーんだ!!わたしが本気を出せばアキちゃんなんて一捻りなんだからね!     どう!?思い知った!?」 悟り猫「グ、グクーーーッ!!!!」 キリュっちがここぞとばかりに胸を張る。 その顔は『嬉しくてしょうがないよ!』と文字にして書いたかのようだった。 真穂 「弦月くん、オセロ弱すぎ……」 悟り猫「なんと!?なにを言いますか真穂さん!     俺ゃ地区大会でも子供に負けて予選で敗退した伝説を持つ男ぞ!?」 真穂 「それってダメダメだと思うんだけど……」 悟り猫「……あれ?」 ……言われてみれば、そうかもしれん。 桐生 「底が浅いね!ダメダメだね!その程度の腕でわたしに挑もうなんて百年早いよ!」 悟り猫「なんと!?」 なんとまあ……キリュっちが400年も生きた激烈ババアだったとは……!! これは驚きですよ? 悟り猫「あのね、真穂さん。ちょっといいかな」 真穂 「え?なに?」 悟り猫「ゴニョゴニョゴニョ……ゴニョ」 真穂 「ふんふん……えぇっ!!?」 悟り猫「ゴニョゴーニョ・ゴ・ゴニョラゴニョリータ」 真穂 「うわ……そうなんだ。じゃあ……ぶふっ!!」 悟り猫「おーけーね?」 真穂 「くっ……くふふふふ……!!おーけー……!!」 桐生 「むっ!なにふたりで内緒話してるの!」 真穂 「ぷくふっ……あ、あのねお母さん……!     ゆ、弦月くんね?もう300年生きてるんだって……」 桐生 「え?……そんな筈ないよ。だって真穂、300年も生きてないもん」 真穂 「そうじゃなくて……。ほら、弦月くんってさ、癒しの力があったでしょ?     他にもいろいろな力があるらしくてね?     わたしたちと出会った頃の弦月くんは、もう100年くらい生きてたんだって」 桐生 「?」 キリュっちが首を傾げる。 まあそりゃあそうでしょう。 俺としても、真穂さんがこうあっさりと信じてくれるとは思わなかった。 真穂 「弦月くんは『力』で同じ時間を何度も繰り返したり、     未来に行ったり過去に行ったりして、その分だけ歳をとったらしいの。     だ、だからね?お母さんが『100年早い』って言った時点で、     お母さんは400歳の激烈ババアってことになるって……」 桐生 「───!!ま、真穂!母親にババアなんて言っちゃダメでしょ!!     それにわたし、そんなに生きてないもん!!」 悟り猫「あ、ちなみにこれ、証拠品ね。江戸時代っぽい世界で手に入れてきた小判です」 真穂 「へぇ……噛んでみていい?」 悟り猫「疑っとんのですか……なんだったら千両箱出しましょうか?     ンン〜〜〜ハァアアーーーッ!!!」 ───ヒュキィンッ!!! 異翔転移を発動させて、弦月屋敷に安置してある千両箱を転移させた。 悟り猫「ほい」 それをドカッとテーブルの上に置く。 桐生 「わっ!わっ!こ、小判だよ!?」 真穂 「うわ……初めて見た……」 悟り猫「ほい真穂さん。これ噛んでみなされ」 一度カンタロスに噛まれてから念入りに磨いた小判を渡す。 それをガキッと噛む真穂さん。 真穂 「あ、あわわ……メッキじゃない……!本物だぁ……!!」 悟り猫「彰利、ウソつかない」 桐生 「アキちゃん!ウソついちゃだめだよ!!」 悟り猫「あらヒドイ!最初っから信じる気ゼロですか!?     これキリュっち!猫を最初から疑っちゃダメでしょ!」 桐生 「だってアキちゃん嘘つきだもん!」 悟り猫「なんとこの小娘め!この悟り猫を嘘つきと言うか!」 桐生 「うぅうう〜〜〜!!」 悟り猫「フカーーーッ!!!」 桐生 「うぅうう〜〜!!」 真穂 「猫になっても弦月くんは弦月くんか……。     本当に相変わらずすぎて呆れちゃうよ……」 悟り猫「や、そう褒められるとこの猫も照れちまう……」 桐生 「全然褒めてないでしょ!大体わたしとの話が終わってないよ!?」 悟り猫「キリュっち、肉球触る?」 桐生 「えっ!?いいのっ!?」 チョロイ人だった。 ふにふにふにふに…… 桐生 「わ、わっ……柔らかいよっ?」 悟り猫「肉球ですから」 ふにふにふに…… 桐生 「わわわ……あ、そうだ!ねねねアキちゃん!わたしの頬に触ってみて!」 悟り猫「え?何故かね」 桐生 「一度、猫の肉球を頬で感じてみたかったんだよっ!」 悟り猫「そ、そうすか」 少し屈んで準備万端なキリュっちを前に、テーブルに立って構える。 キリュっちはというとわくわくとした感じに笑顔だ。 桐生 「わくわく……♪」 いや、つーか自分でわくわく言ってます。 仕方ありませんね、あまり焦らすのもなんですし─── 俺はキリュっちの頬に一度、軽く肉球を押し付けてから少し離した。 桐生 「?」 悟り猫「あたぁっ!!」 ボゴシャア!! 桐生 「ぴうっ!?」 次の瞬間、見事なまでの寸勁がキリュっちの頬に炸裂していた。 俺は殴ったままの状態で窓から差し込む朝日を浴びて、 あたかも『バキ20巻177話目』の李海王のように拳をキラキラと輝かせていた。 美しい……美しすぎるぜ李海王!! 桐生 「アァア〜〜〜キィイイ〜〜〜ちゃぁあ〜〜ん〜〜〜〜!!?」 悟り猫「は、はかかか……!!」 でも俺は別の意味で美しくなるのかもしれません。 そう……美しく散る。 桐生 「ねぇアキちゃん?女の子に手をあげる人って最低なんだよ?知ってる?」 悟り猫「全く知らんとです!!」 自信満々に答えた刹那、 俺はキリュっちの鋭いカラティェーチョップから始まる乱撃によってボコボコにされた。 Next Menu back