───地上最強猫列伝『第十二章◆驚愕!春菜の告白と猫裁判!の巻』───
───……朝。 少々寝不足気味の俺と真穂さんは、 小学校に行く準備をしていたキリュっちにいってらっしゃいと述べた。 桐生 「うんっ!頑張ってくるね!」 キリュっちはひとりだけ元気ハツラツ。 何故かって、俺を殴りつかれて眠ったお蔭で、 五月蝿さで眠気が飛んだ真穂さんと、痛みで眠気が飛んだ俺より長く寝れたからだ。 悟り猫「元気ですな」 真穂 「そうだね……」 さて、そんな我らはというと……今朝も早よから身支度をしていた。 同窓会の集合時間が結構早いのだ。 悟り猫「戸締りオッケ」 真穂 「ガスの元栓もオッケ」 悟り猫「では……」 真穂 「いきますか」 俺は目立たないように真穂さんの腕の中にセットイン! 普通の猫を装うためでございます。 まあ……黒と微量の朱の服を完全武装してる猫ってのは十分目立つけど。 真穂 「みんな、やっぱり変わっちゃってるかなぁ」 悟り猫「そりゃね、見違えるヤツとかも居るんでしょうな」 真穂 「まぁ……弦月くんに比べれば、みんな生易しい変化だと思うよ?」 悟り猫「よせやい照れるぜ」 真穂 「………」 悟り猫「ウィ?」 真穂 「い、急ごっか」 悟り猫「御意に」 『褒めてないんだけどなぁ』という顔を思いっきりしてる真穂さんを促し、 我らはさらに先を急ぐことにしたのでした。 ───……で、集合場所 夏子 「わぁ〜〜っ!真穂!?真穂だよねぇっ!?綺麗になったねぇ〜〜!!」 真穂 「夏子も久しぶり〜〜!あ、髪の毛切ったんだ!似合ってるよ〜〜〜!!」 麻衣香「そうそう!長いよりこっちの方が断然似合ってるよね!」 真穂 「あ───麻衣香〜〜!!」 既に懐かしの面々が集まる昂風街噴水広場。 真穂さんはさっそく見つけた友との語らいの中でにこにこと笑っている。 俺はというと…… 悟り猫「わぁ〜〜っ!中井出!?中井出だよねぇっ!?無様になったねぇ〜〜〜っ!!」 中井出「ぎゃああああッ!!!猫が喋ったぁああああっ!!!」 悟り猫「そうそう!長いよりハゲの方が断然似合ってるよね!」 清水 「ひ、ひぃいいいいっ!!!!」 凄まじい盛況だった。 真穂 「あ、ごめん、ちょっといい?」 夏子 「あ、うん。ミナちんも居るから探してみるといいよ」 真穂 「うん。ね、中井出くん」 中井出「あ、桐生!お前の連れてきたこの猫どうなってんだ!?喋ったぞ!?」 真穂 「ああこれ?これはね」 悟り猫「おっと、帽子も取らずに失礼、ジェントルメン。     我は黒衣を身に着けた猫───またの名を『弦月彰利』!……で、ございます」 真穂 「……と、いうわけなの」 全員 『………』 その時、世界はきっと止まったのだと思います。 でも次の瞬間には皆様爆笑。 中井出「ぶわぁっははははははは!!!ぶふふはははははは!!!!     あ、彰利!?これが!?ぶははははははは!!!!     お、お前どんな罰当たりしでかしたんだよ!!かははははははは!!!!」 皆さん全員が一瞬にして信じてくれました……。 少し……いやかなり、自分の過去の人間性を恨めしく思った瞬間でしたよ……。 いやしかし……さすが原中の者どもだ。 超常現象をあっさりと笑いで済ますのは相変わらずか……。 中井出「OKOK!!電話に出たままの声だ!お前ほんと彰利だ!!     変わり者だと何度も思ったけど、     今日ほどお前が変わり者だって思ったことなんてなかったわ!     がふふっ!ぶはははははははは!!!!」 悟り猫「そうですか……」 皆さんマジで爆笑。 笑いすぎて泣き出してるやつまで居るよ……。 そりゃね、信じようとしないで真穂さんがどうのこうの言われるよりはいいんですけどね、 この場合どうしようもないからやるせないですよ? 俺が人間離れしてるのは、皆様にとっては笑い話にしかならんってことですし。 それはそれでまあいいんですけど……グウウ、釈然としないっす。 藍田 「猫ねぇ……もしかして猫をイジメてたら……って、     弦月はイジメとか嫌いだもんな」 皆川 「んじゃああれだ、バーゲンセールで売ってたキャットフードを喰いすぎた」 悟り猫「人をなんだと思っとんのですかアータ……」 飯田 「いや、ここはあれだな。酢だこさん太郎を千個買ってそれを食ったとか」 悟り猫「関係ねぇ!!」 多分……当然だとは思うが、皆様完全には信じてない。 内心驚いてるヤツも居るだろう。 けどそんなものはすぐに馴れるんだと思う。 気軽にいこう。 ここに居る奴らは、俺と悠介が心を許した馬鹿者達なんだから。 三島 「あ、晦来たぞ!相変わらずモミアゲ長いぞ!」 悠介 「会って言う言葉がそれかよ……」 少し離れたところで悠介登場。 その顔は───うむ、中々吹っ切れた顔をしておりますよ? どれ、ちと会話でも───ガッシ。 悟り猫「ややっ!?」 真穂 「ゆ〜みは〜りくんっ♪」 悟り猫「あら真穂さん。どぎゃんしたとよ?アタイを持ち上げたりして」 真穂 「ん、ちょっと言っておきたいことがあって」 悟り猫「告白?」 真穂 「リバースパワーボム、していい?」 悟り猫「ごめんなさい……」 猫の姿でそれはシャレにならん……。 真穂 「あのね、弦月くん。弦月くんさ、多分誤解してるよ?」 悟り猫「む?誤解とな?───……話を聞きましょうか」 真穂 「うん。弦月くんってヘンに意地にならないから助かるよ」 悟り猫「褒めてませんね?」 真穂 「これは褒めてるの。     ……あのね、わたしとお母さんは弦月くんの過去を見ても受け入れられたよね?」 悟り猫「然り」 真穂 「でも晦くんとその家族は弦月くんのことを可哀相だとか、自分が悪いとか思った」 悟り猫「む、そうザマスね」 真穂 「それってさ、喜んでいいことだと思うよ?」 悟り猫「なんと!それはなにかね!?我輩悟り猫に哀れ猫になれというのかね!」 真穂 「落ち着いて弦月くん。あのね、晦くん達は当事者だからショックを受けすぎたの」 悟り猫「……む?」 真穂 「ほら、弦月くんの100年余りの苦痛と抵抗は晦くんの家族によるものでしょ?     弦月くんの生きる意味は晦くんのため。     ほら、そう考えるとみんながみんな悪く思うのは当然なんだよ」 悟り猫「むむむ……して?」 真穂 「だからさ、そこでみんなが『何も言えなくなる』のは当然なんだと思うんだ」 悟り猫「ぬう……したら、水穂ちゃんはどうなるのかね?     水穂ちゃんは条件的に真穂さんやキリュっちに近いぜよ?」 水穂ちゃんには自分を責めるような条件なんて無かった筈───あ、いや…… 真穂 「『変態オカマホモコン』……」 悟り猫「やっぱそれですか……」 それが無ければ水穂ちゃんも理解者になってたかと思うとショック……。 確かに生涯かけての不名誉なあだ名ですからね……。 小心のくせに責任感の強い水穂ちゃんのことだ、 普通の人の数倍は『悪い』と思ったに違いない。 真穂 「だからね?許してあげてほしいんだよ……。     あの場面で何も言えなかったのは、     それだけ弦月くんのことを思ってくれたからなんだよ……?」 悟り猫「むむ……しかしですね、     俺は悠介にだけはあんな風にしてもらいたくなかったんですよ?     黙ったままになるなんて……勘弁ノリスケだったんですよ?」 真穂 「弦月くん……それこそ無理だよ。     だって弦月くんの『運命の無限地獄』は晦くんの所為で始まっちゃったんだよ?     よっぽどの自分本位の人じゃないと、     あそこで図々しく話し掛けたりなんか出来ないよ」 悟り猫「ぬう……」 したら……したら……俺が間違っていたというのか……? 俺が信じきれなかったとでも……いうのだろうか。 悟り猫「しかし……だとしたら俺は取り返しのつかないことをしてしまいましたよ?     信じるべき友を誤解してしまったのです。     こげな俺に何ができると申されるか……」 真穂 「……本当に、弦月くんの友達になれた人は幸せだね……」 悟り猫「何を申されるか!俺を騙そうったってそうはいかねぇぞ小娘が!」 真穂 「弦月くんってさ……小さい頃から褒められたことないんだよね……?」 悟り猫「え?俺を褒める人など居るわけがないでしょう」 真穂 (何度か褒められてたみたいだけど……『褒められた経験』が無い所為で、     褒められてるって受け取れないんだろうなぁ……) 悟り猫「真穂さん?」 真穂 「あ、ううん、なんでもない」 ぬう……なんだってんでしょ。 真穂 「弦月くん、自分が悪いと思った時にすることは何かな?」 悟り猫「切腹」 真穂 「死んじゃダメでしょ!」 悟り猫「そげな……キリュっちみたいな怒り方せんかて……」 真穂 「とにかくだめ。謝れるなら謝らなきゃだめ。解るよね?」 悟り猫「グウウ……そりゃ解りますがね」 半ば感情が浮上してしまうと、以前平気で出来たものがやり辛くなったりするんですよね。 感情が戻るのって、いいことばっかじゃございませんよ。 だが『悪いと解ってるのに謝らない』のは漢族にとっての恥。 謝らねば漢ではない!! 悟り猫「真穂さん、感謝いたす……。拙者、行ってくるでござる!」 真穂 「え?う、うん」 俺は真穂さんの腕の中から飛び降り、中井出と話している悠介の前まで走った。 ……と、その傍に居る更待先輩殿も発見。 俺はふたりの傍まで駆け寄り、少し離れた場所で座り込んだ。 悠介 「うん?」 春菜 「猫?」 ふたりは正座の足幅を広げたような格好で座る猫を見て、少し戸惑いを見せる。 だが俺は構わず、まずは刀を鞘ごと腰から抜いて傍らに置く。 次に帽子を取ってその傍に置き、地面に両手(前足)をついて、深々と土下座。 悟り猫「お二方……拙者が間違っており申した!!     非礼の数々───なにとぞ!なにとぞお許し頂戴致したく存ずる所存!!」 悠介 「───」 春菜 「……ね、ねこが……ねねね猫が……?」 中井出「……なにやってんのお前」 頭を下げる中、中井出が『相変わらず訳の解らん行動に出るな』と呟いた。 だが、俺は顔を上げない。 許しを得るまでは面を上げるわけにはいかぬのです、武士として。 真穂 「晦くん、更待先輩、お久しぶり」 悠介 「あ……桐生か。久しぶり……といきたいところなんだが、状況がイマイチ掴めん」 春菜 「な、なんだか喋る猫さんに謝られちゃって……」 真穂 「土下座かぁ……よっぽど悪いって感じたんだね」 そりゃそうです。 勘違いで人を誤解することほど悪いことはありません。 誤解で嫌われる人の気持ち、誰よりも知っておりますから。 悠介 「桐生の知り合いか?この猫」 真穂 「弦月くん」 悠介 「へ?」 真穂 「弦月くんなの、この猫」 悠介 「………」 春菜 「…………ゆ、弦月……くん?どどどどうして!?」 真穂 「それが……『みさお』って娘に前々世に遡らされたみたいで……」 春菜 「そうじゃなくて!!」 真穂 「え?」 春菜 「どうして弦月くんが土下座なんかしなきゃならないの!?」 悠介 「彰利やめろ!お前が土下座する理由なんて何も無いだろうが!」 がっし!! お二方が拙者の面を上げようと掴んできた。 だが面は上げませぬ。 悟り猫「拙者……悟り猫でありながら貴君らの真意を読み取れず、     誤解したままで姿を消すなど……!!     漢として失格の極み!!拙者、自分が許せぬのでございます!!     お望みとあらばこの腹、見事掻っ捌いてみせましょうぞ!!」 悠介 「やめろ馬鹿っ!!そんなことされたって嬉しくねぇよ!!」 悟り猫「バカとはなんだコノヤロウ!!」 春菜 「弦月くん!反応する部分がおかしいよ!!」 お二方が家系力で強引に面を上げさせようとする。 が、それでも拙者は微動だにはせなんだ……。 悟り猫「しかし……!拙者、己が情けなく存じます……!     拙者はたったひとりの親友を信じきることが出来なかったのです……!!     これは……これは親友として明らかなる失態!!     如何なる処罰も甘んじてお受けいたしましょうぞ!!」 悠介 「じゃあ顔上げろ!」 悟り猫「……なりませぬ!なりませぬぞ殿……!!     斯様な生温い処罰、この悟り猫……お受けするわけには参りませぬ!!」 悠介 「だったら処罰はあとで考える!今は顔を上げろ!」 春菜 「そうだよ!謝られたって嬉しくもなんともないよ!     わたしたちあれからずっと考えたんだよ!?     わたしたちこそちゃんと謝って、お礼も言わなきゃいけなかったのに……!」 悟り猫「と、殿……お春殿……」 真穂 「……弦月くん。こういう時はね、     顔をあげて『ありがとう』って言えばいいんだよ」 悟り猫「お真……だ、だが拙者は……」 真穂 「どうして武士語になってるのかは解らないけど……ねぇ、弦月くん。     弦月くんは土下座するくらい反省したんだよね?     それだけ『悪い』って感じたんだよね?だったら……もういいんじゃないかな」 悟り猫「お真……」 拙者はこの時になって初めて顔を上げた。 そこでは、殿とお春殿が座るような格好で拙者に位を合わせておられて…… 悟り猫「と、殿!いけませぬ!     あっしのようなごんだくれの前で座をとるなんて!」 中井出「彰利の位が下がったな……」 藍田 「『拙者』から『あっし』になったしな」 真穂 「笑っちゃダメだからね?弦月くん、今必死だから」 中井出「解ってるよ。俺だって伊達にあいつらと付き合ってたわけじゃない」 藍田 「弦月って冗談でも土下座なんかするヤツじゃなかったしな。     謝る場面はちゃんと選ぶヤツだ」 悠介 「彰利……すまなかった。     俺なんかのためにお前があれだけ頑張ってくれたってのに……     俺、お前にお礼も言えてなかった……許してくれ───いや、ありがとう」 悟り猫「殿……───は、ははぁあぁっ……!も、もったいないお言葉……!」 春菜 「弦月くん!」 悟り猫「なんぞね!」 中井出「いきなり偉そうになったな……」 藍田 「晦と更待先輩とじゃあ位に差があるってことだろ」 外野がなにやら五月蝿いでござるが、拙者……まだ気が済みませぬ。 春菜 「頭下げちゃだめだよ、わたし謝ってないんだから……」 悟り猫「だがお春殿……拙者はあなた方の謝罪の態度を逆手に受け取ってしまい……」 春菜 「弦月くんの辛さに比べたら、あんなのなんでもなかったよ。     だから……ね?もう頭を下げるのはやめにしよ……?     あの時、謝ることもしないで黙ってたわたしの方に非があるんだから……」 悟り猫「お春殿……───か、かたじけないっ……!!」 拙者はもう一度頭を下げ、心のモヤを一掃するのに励んだ。 春菜 「あ、あのね……?     それでさ、今度こそまたわたしとお友達になってくれるかな……」 悟り猫「図にお乗りじゃないよ小娘!それとこれとは別問題!!」 春菜 「あれ……?」 中井出「おお、また偉そうになった。しかも姐御風」 藍田 「コロコロ変わるやっちゃなぁ……」 春菜 「な、なんで!?     だってわたし、もう本当に弦月くんのこと誤解なんかしてないよ!?」 悟り猫「そもさん!」 春菜 「せっぱ!」 悟り猫「ヌシは何故に拙者と友になりたいと申されるか!」 春菜 「あの時みたいに一緒に『楽しい』を感じたいからだよ!」 悟り猫「それはヌシにとって、殿さえ居ればどうとでもなる感情でござろう!!」 悠介 「あ、ちょっと待て彰利!それ以上踏み込むとお前、さらに……」 春菜 「……ふふん……聞きたい?」 悟り猫「なにがかね!」 悠介 「いや聞けって!姉さんはお前が───」 悟り猫「え?」 春菜 「わたし、更待春菜改め晦春菜は───弦月くんのことが男の子として好きです!」 悟り猫「───」 ───……思考停止。 …………ポク、ポク、ポク……チーン。 全員 『な、なんだってぇーーーーっ!!!!?』 その時、俺を含むその場の全員がMMRと化した。 悟り猫「な、なんでやねん!ワイをからかおうったってそうはいかんでぇ!?」 中井出「いや、なんで関西弁よ」 藍田 「中井出、この際ツッコミは後だ。今は話に集中しろ」 中井出「御意」 悟り猫「大体先輩殿は悠介のことが好きだったんでしょうが!     浮気は俺の大嫌いな行為ですよ!?怒りますよ!?」 春菜 「……そうなの?」 悠介 「ああ、あいつは恋愛関連には真面目すぎるんだ」 春菜 「そうじゃなくて。わたし、悠介くんのこと好きだったの?って」 悠介 「そういうこと、面と向かって訊くかね……。俺が知るわけないだろうが」 春菜 「だよねぇ。わたし、一言も悠介くんが好きだなんて言った覚えないよ?」 悟り猫「バカこくでね!!一回くらいあったっぺ!えぇーーっ!!?」 春菜 「あったとしても家族として、友達としてだよ」 悠介 「知ってっかー?俺なぁ、中学の頃、     姉さんにお前のこと訊かれまくってた時期があったんだぞー」 春菜 「めっ!」 ドシュッッ!! 悠介 「うごっ!」 先輩殿、悠介に地獄突き。 春菜 「余計なこと言っちゃだめでしょ!?怒るよ!?」 悠介 「もう怒ってるだろが……」 春菜 「と、とにかくね!?わたしは……弦月くんのことが好きなの!     だから───と、友達からまたやり直ししよ!?ね!?」 悟り猫「今……なんと?」 春菜 「好きだったの!弦月くんのことが!     で、でもずっと昔に見た血塗れの男の子が弦月くんだってことが解ったら……     なんだかわたし、怖くなっちゃって……!ごめんね弦月くん!     わたし……ほんとは弦月くんを傷つけるようなこと言いたくなかったのに!!     一度誤解しちゃったら止められなくなっちゃって……わたし……」 悟り猫「俺を……マジすか?」 真穂 「……あのね、多分弦月くんの過去を見た人なら全員気づいたと思うよ?     更待先輩の弦月くんへの行為とか言動、全部好きの裏返しとか戸惑いとかだもん。     キツイ言葉言ったあと、凄く辛そうな顔してた。     記憶に残ってるのにどうしてそれをちゃんと見てあげなかったのかが不思議だよ」 悟り猫「なんとまあ……マジすか」 ってことは……なに? 晦家の面々も全員気づいてるし、やたらと夜華さんが先輩殿につっかかったのって……え? マジでマジすか……? 中井出「アー……あのさ、でも彰利って日余と付き合ってたわけだろ?     恋愛ごとに関して真面目だと自負する彰利がその告白を受けるかね」 全員 『な、なんだってぇーーーっ!!?』 再びMMR化。 藍田 「マ、マジかよ!あ───そういや日余来てねぇぞ!?」 夏子 「うそっ!?久しぶりに会いたかったのに!」 津嶋 「『付き合ってた』って……フッたの!?フッたのね弦月くん!!」 藍田 「そうか!だから来ないんだな!?」 悟り猫「ターーーッ!!なにやらシャレにならん状況がここに!?     こ、これ中井出!なに許可も得ずに暴露しちゃってますかね!!     暴露の理由を簡潔かつ平明に答えてもらいたいものだね!!」 中井出「面白そうだから」 悟り猫「あの……それって俺に対する侮辱以外のなにものでもありませんよね?」 中井出「クラスメイツ魂だ。侮辱じゃないぞ」 そうは思えないんですけどこの状況……。 悠介 「いっつも冷やかしてた側がそっち側に行くのはどんな気分だ?」 悟り猫「最高すぎて逃げ出したい気分だよちくしょう……」 悠介 「逃げる前にほれ、姉さんが返事を待ってるぞ」 悟り猫「グ、グムーーーッ!!!」 春菜 「…………!」 見れば、カタカタと震えている先輩殿。 だがしかし、俺はもう愛だの恋だのはしないと心に決めましたしね。 悟り猫「先輩殿……いい言葉を教えてさしあげましょう。受け売りですが、いい言葉です。     『男と女の間に友情は有り得ない。     情熱、敵意、崇拝、恋愛はある。だが友情は有り得ない』。     どうです?最強でしょ?」 春菜 「え……じゃあ恋愛でいいの?」 悟り猫「ゲゲェエエエーーーーッ!!!!!ノゥッ!!受け取る場所が違います!!     友情は有り得ないのです!だから友達から始めるもなにもないの!OK!?」 春菜 「そんな……」 悟り猫「第一に!あたしゃもう愛だの恋だのなんて懲り懲りなんですよ!!     もう誰も愛しません!誰も好きにならんとです!!解りますかね!!」 春菜 「そんな……そんなの───解らないよそんなの!!」 悟り猫「なんと!?何故かね!先生はあなたをそげな娘に育てた覚えはありませんよ!?」 春菜 「育てられてないもん!そんなことよりもだよ!     誰も好きにならないなんて……そんな悲しいこと言わないでよ!     そんなの悲しすぎるでしょ!?今まで辛い思いしてきたんじゃない!     だったらもう……幸せになってもいいじゃない……!うっく……ふぇええ……」 悟り猫「ゲェエエエーーーーーーーーッ!!!!」 中井出「うわっ!彰利が先輩を泣かしたぁっ!!」 悟り猫「えっ!?や───ち、違う!違うのですよ!?」 藍田 「弦月……お前ってやつは……」 飯田 「女を泣かせるとは……。     『漢・弦月』も長い年月の末に変わってしまったようだな……」 悟り猫「ノゥッ!!待って!皆様お待ちになって!!」 かつてのクラスメイツが輪になって俺に言葉を投げた。 しかし不思議なことに『罵倒』は飛ばず、 少ししてからようやく、からかわれていることに気づいた。 そうでした、こういう奴らでしたよ……。 藍田 「なぁ弦月、ほんとに誰とも付き合う気無いのか?」 悟り猫「SirYesSir(サーイェッサー)
!!」 悠介 「どうしても?その理由は?」 悟り猫「フフフ、知りたがりは長生きせんぞ?」 悠介 「お前さ、ここで話さないと生きて帰れないぞ?」 悟り猫「え?」 見れば、マジ泣きしてる先輩殿を暖かく見守るつぶらな瞳と、 俺を射抜くような凝視をする者ども。 おお……ここに軍隊が結成された。 真穂 「うん……わたしも気になるかな。     弦月くんの過去だけじゃあ、弦月くんの気持ちまでは解らないからね」 おおあなたヒドイ人。 過去を見て、さらに俺の心も知りたいですか。 悟り猫「フッ……いいだろう。しからば教えてやる……我が心の内を!!」 こうして俺は、無知な彼らにボクの心の内を暴露するのでした……。 ───……。 中井出「『俺を好きになっても苦労するだけ……』」 藍田 「『俺なんぞを好きになったから、あんな辛い思いをするから……』」 悠介 「『だから俺なんかを好きになっても意味がない……』ね」 全員 『っはぁああ〜〜〜〜〜〜〜〜……』 全員が全員、長い長い思いっきりな溜め息をつきました。 悠介 「お前さぁ、本気で自分の幸せ探す気あるのか?」 悟り猫「ありますよ失礼な!なにかねこの無礼者は!     これ中井出!この無礼者を手打ちに致せ!!」 中井出「さっきまで『殿』って呼んでた相手にこれだよ……さすがだな」 藍田 「で、なに。日余と恋仲になってから、不覚にも別の誰かに唇奪われて?」 夏子 「それを浮気と勘違いした粉雪が悲しんだから別れた?」 悟り猫「違いますよ失礼な!フラレたのは俺の方!!     解る!?そこんとこ誤解しないでよね!ボクちゃんぷんぷんですよ!?」 悠介 「気持ち悪いから真面目に話せ」 悟り猫「面と向かって気持ち悪いとか言わんでください」 つーかね、先輩殿がてんで泣き止みませんけど……どうしたもんでしょう? などとおろおろしてたら、真穂さんが俺を抱きかかえた。 悟り猫「ややっ!?なにをなさる!」 真穂 「先輩はね、フラレちゃったからもあるけど……     もっと別のところで泣いてるんだよ?」 悟り猫「別のところ?何処そこ」 真穂 「恋人にもなれない。『友達』になるのも許してもらえない。そんなところ。     ねぇ弦月くん。男女の間に友情は有り得ないって、本気で信じてる?」 悟り猫「まさか。あげなもんはただの先人の言葉でしょ?     でもさ、先輩殿の場合はもう『俺のことが好き』って感情が出ちまってる。     それはさ、『友情』で抑えてられるものですか?     同じおなごとしてそう思えますか?」 真穂 「あ……うん、そうだよね……」 悟り猫「だからね?ここはややこしくしないためにも、ここで終わらせるのが一番で」 中井出「柴野に頼んで日余連れてきたぞ〜!」 悟り猫「中井出ぇえっ!!てめぇええええええっ!!!!!」 話はまだまだややこしくなりそうでした……。 ───どくん……どくん……どくん……。 悟り猫「っ……!!」 粉雪 「………」 春菜 「………」 夜華 「………」 えーと、こういうのを修羅場ってゆゥんだよね? つーかどうして秋の公園の芝生で座り話なんぞせにゃあならんの? 悟り猫「あのさ……なんで夜華さんまで連れてきたの?」 悠介 「こういう話に参加するべき人だからだ。     わざわざブラックホール経由で連れてきたんだ、もっと喜べ」 悟り猫「で、でもね?あのね?もうちょっと俺のこと考えてもらわんと……」 悠介 「諦めろ。面白いことを見つけた中井出の勢いは誰にも止められん」 悟り猫「ウッウッ……」 本気で泣きたくなるような状況です。 勘弁してください……。 中井出「えー、さて。第一回弦月彰利修羅場会場、     司会進行は私、中井出博光がお送りいたします。     さっそくですが元彼女の日余粉雪さん。弦月彰利をどうお思いですか?」 粉雪 「……関係ないよ」 中井出「はい?」 粉雪 「もうわたしとあきと───弦月くんはなんでもないんだから……関係ない」 中井出「ホッホォ〜ゥ?ならば何故に同窓会をすっぽかそうとしましたか?」 粉雪 「それは……」 中井出「まぁよいデショ。では次に更待先輩。どう思いますか?」 春菜 「好きだよ……。恋人がダメなら友達でいいから……」 中井出「むう。中々尽くすタイプと見受けられますね。     では……最後になりましたが、えっと……篠瀬さん?」 夜華 「……何故わたしが貴様らの前で言わなければならない」 中井出「ごもっとも。さて、そういうことでございますが……罪人弦月彰利よ!     キミの意見を聞かせてもらおうか!?ン!?」 俺の時だけ裁判風かよ……。 悟り猫「黙秘権を主張します」 中井出「弦月彰利よ!貴様には黙秘権はない!!」 悟り猫「うわひでっ!!権利略奪罪じゃねぇか!」 中井出「罪状にそのようなものは無いと私が断言する!発言せよ弦月彰利!!」 野郎……明らかに俺を劣勢状態にしたいらしいな……。 悟り猫「えーと、俺はもう誰も好きにならんので、俺を好きになるのもやめてください」 春菜 「意義アリだよ!」 中井出「はい更待先輩!」 春菜 「それじゃあ弦月くんの幸せはどこに見つかるの!?わたし解らないよ!」 悟り猫「それはね……?よぅくお聞き坊や……。     それは……そう、幸せの蒼い鳥を見つけた時に見つかるんだよ……?」 中井出「サンダーバードか」 悟り猫「違いますよ!!」 中井出「あー、罪人よ。キミには必要とされる発言以外は許可されておらん!黙れタコ!」 悟り猫「やろっ……!!」 悠介 「はいストップ」 バチィッ!! 悟り猫「ひょげぇえぃっ!!」 背後に立ってる悠介からのまさかの裁き! ヒドイ!この人たち人の皮を被った悪魔だわ!! 悟り猫「あ、あのですね……?俺がそれを幸せだって思えたら幸せでしょ……?     なして俺が裁き受けなきゃならんのですか……?」 悠介 「なんとなく」 ……あなたヒドイ人。 中井出「さて……先輩?罪人はサンダーバードを見つけられれば幸せだそうですが」 悟り猫「待てコラ!納得するなよそれで!」 カンカンカン!! 中井出「静粛に!!」 悟り猫「裁判官!静かにするのは貴様だけだと思います!つーか黙れ!!     そもそもそのハンマーみたいなのどっから出したのさ!」 中井出「藍田が持ってた」 藍田 「俺、大学の土木サークルに居るから。持ってないと落ち着かなくて」 悟り猫「『持って』ないじゃん……持ってるの中井出じゃん……落ち着いてるじゃん……」 藍田 「お前を見守るのに忙しいからだ」 悟り猫「忙しいんじゃなくて『楽しい』んだよね?」 藍田 「正直その通りだ」 なにやら今、ハルマゲドンを起こしたくなった神の気持ちが解った気がした。 夜華 「すまん、発言していいか」 中井出「ほい、えー……篠瀬さん」 夜華 「彰衛門。貴様が自分の幸せを探すことを邪魔するつもりはない。     ああ、それはそれでいいと思っている。だが、与えられる幸せはどうなる?」 悟り猫「バカヤロコノヤロォ、幸せなんて与えられるわけねェだろが。ねぇ?」 全員 『……………』 悟り猫「あ、あら?なんすかみんな、その目は……」 中井出「普通、幸せの大半って与えられるものだよな……?」 悟り猫「うそつけ裁判官この野郎!!俺ゃそげなもん与えられたためしはねぇぞ!?」 中井出「それってよっぽど込み合った家庭事情だったってことか?」 悟り猫「───」 家庭、事情。 家庭……家族……───家族……!? 中井出「あ、あら……?な、なんか体が震えて……?」 藍田 「え……?中井出、お前もか……?」 夏子 「え……藍田くんも……!?」 真穂 (……っ!弦月くんっ……!落ち着いてっ……!) その『殺気』に気づいたのか、真穂さんが俺の肩を掴んで揺すってくれた。 ……お蔭で、なんとか漏れ出した殺気は影に隠れて……はぁ。 やばいな……やっぱ俺に対する『家族』って言葉を聞くと、理性が飛びかける……。 悠介 「中井出に悪気はないだろ。気にするなよ」 悟り猫「中井出に対して殺気なんて出しませんよ失礼な。     俺はただ家族に……か、かかか家族っ……に……!!     くっ……そっ……!!なんであんなヤツらを思い出さなきゃなんねぇんだ……!」 悠介 「ばかっ!落ち着け!」 悟り猫「バカとはなんだコノヤロウ!!」 真穂 「………」 悠介 「………」 悟り猫「おお、殺気が消えた」 悠介 「真面目に心配した自分がアホゥに見えた……」 真穂 「わたしも……ちょっと呆れちゃったかな……」 悟り猫「な、なんですかこの……」 皆さん好き勝手言ってくれちゃってもう……。 悟り猫「なぁ中井出裁判官さんやー?いい加減、目的地に行きませんかー?」 中井出「だめだ」 悟り猫「てめぇにゃ情ってもんがねぇのか!!」 中井出「ええい黙らっしゃい!!我ら一人身の嫉妬、貴様が受けんで誰が受ける!!」 悟り猫「ンなもん俺にゃあ関係ないでしょうが!!」 中井出「関係大ありである!!貴様ひとりが何故モテる!しかも三人!許すまじ!」 悟り猫「おい裁判官!思いっきり私情挟むなや!!」 中井出「黙れ小僧!さ、他に発言したい者は?」 無情ッスね……。 ほんとに情のカケラもねぇや……。 春菜 「はい」 中井出「ほい、更待先輩」 春菜 「どうしても友達もダメなのかな」 中井出「罪人!答えろ!」 悟り猫「態度違いすぎるぞてめぇ!!」 中井出「黙れ!とっとと答えろ!」 悟り猫「グウウ……!あ、あのですね先輩殿?     友達で居るのが嫌だって言ったのはキミですよ?     それがいまさらどのツラ下げてそげなこと言いますか?     俺ゃね、『友情』を安っぽく見る人なんぞとは友達にはなりたくありません」 春菜 「やっ……安っぽくなんか……ないもん……」 悟り猫「そでゲスか?では聞かせてもらいましょう。     キミは俺の友達に戻ってなにがやりたいんだ?」 春菜 「え……?」 悟り猫「とりあえず、なってから決めるか?」 春菜 「………」 悟り猫「よく覚えときんしゃい先輩殿。そういう考えが今の状況を作ったんですよ」 中井出「話が見えんから黙れ!」 悟り猫「ヒドイねキミ……」 とっとと答えろとか言ってたくせに……。 悟り猫「あのね、俺はもう『人類皆キョウダイ』で行くことにしたの。     キョーダイは恋愛なんぞしないし結婚もしない。     友達にもならなければそれ以上もない。     だからね、オイラに好意をもつなんてことはおやめなさい。     こげな俺を好きになったかて、辛くなるだけですよ」 中井出「彰利にしては珍しい正論だ」 悟り猫「おい司会」 ここまで言いたいことをハッキリと優劣つけて言うヤツが司会でいいのか? 悟り猫「なぁ皆様?いい加減目的地に行きたいよね?ね?」 全員 『私は一向に構わんッッ!!』 悟り猫「なんでみんな烈海王になるの!?」 周りはみんな敵でした。 どうしてこんなことになってしまったんだろう……。 俺は……間違っていたのか……? 中井出「判決を申し渡す!」 全員 『速ッ!!』 悟り猫「いいぞ〜!もう終わらせましょうや〜!」 中井出「今日から好きなだけ彰利と一緒に居て、     とことんまでに愛想を尽かさなかった者が伴侶となるべし!」 悟り猫「ゲェエエエーーーーーッ!!!!こ、これ中井出!?     麿が望んでいたのは斯様な言葉ではないぞえ!?」 中井出「ハッキリしないお前が悪い!!」 悟り猫「ハッキリしたでしょうが!!俺は誰も好きにならんって!」 中井出「そんな『逃げ』は許さん!」 悟り猫「……ねぇ悠介、真穂さん……。     この心の痛みを知らぬハルマゲドン馬鹿殴っていい……?」 悠介 「俺は全力で応援するぞ」 真穂 「わたしも……」 呆れるようなふたりの顔に、ガイアばりの極上スマイルで応えて構えた。 やがてバゴチャア!!という炸裂音とともに、 叫ぶ間も無く大地に沈む(文字通り)中井出を余所に、俺は天を仰いだ。 ああ神よ……いつかチェーンソーで斬殺してやるから待ってろ……と。 Next Menu back