───地上最強猫列伝『第十五章◆死闘!ヤツの名はオリバッッ!の巻』───
中井出「勇敢なる原中の戦士達よ!よくぞ集った!     言うまでもないがこれは決闘だ!確認するまでもない!!     『我ら【遊び決闘】に関しては一切の手加減無し』の名のもとに!!     全力で遊ぶ修羅となれ!立てよ戦士達!!」 全員 『オォオオオオオッ!!!!』 それぞれが咆哮。 もはや旅館の人の練習がどうとかなどを思考に遺しているヤツなど居ないのだろう。 中井出「ルールを説明するッッ!!我が原中の伝統に乗っ取り、武器は枕のみに統一!     死亡は5つ当てられた時点とする!5発当てられた者は速やかに廊下に退場!     その場での観戦を申し渡す!!」 全員 『サー・イェッサー!!』 中井出「もちろん投げられた枕は手に持つことが出来ればダメージにはならん!     そのまま球にして投げ返すがいい!!」 全員 『サー・イェッサー!!』 中井出「相手が誰であろうと手加減することなかれ!     いいかッ!今からここは戦場と化し、我らは戦士(ソルジャー)
となるのだ!!」 全員 『サー・イェッサー!!』 中井出「それでは!諸君らの健闘を祈る!!全隊整列!!」 全員 『サー・イェッサー!!』 中井出「構えェエエーーーーーー筒!!()ェエエーーーーーーッ!!!!」 全員 『Sir!YesSir!!(サー!イェッサーッ!!)』 戦いの火蓋が切って落とされた!! 俺と悠介は数個の枕を腕に抱えながら、遠慮なしに投げ続けまくる!! ボゴシャッ!! 灯村 「ぶべら!」 ドパァン!! 島田 「はべら!!」 家系の腕力にものを言わせ、5発で死ぬ筈の猛者どもを一撃の名の下に屠ってゆく。 フハハハハ!!───爽快!! 実に爽快だ!! ちなみにチーム分けは『部屋ごと』である。 つまり俺と悠介と中井出とオリバ、その四人が倒れれば俺達は負け。 一見、誰が敵だか解らん状況だが、ちゃんと分けられているわけだ。 清水 「つーかなんだありゃ!!おい!あれ見てみろあれ!!」 飯田 「あん?───オワッ!!お、おいみんな!中井出のチーム見てみろ!!     オリバが居るぞオリバが!!」 オリバ「オリバ言うなぁああーーーーーっ!!!」 ブン───ドッパァアアアアアンッ!!!!! 飯田 「じゅぎゅっ───」 パガァンッ!!ズル……ドサ。 全員 『ッ……!!』 ……飯田、枕に『吹き飛ばされ』、壁に激突して行動不能。 それを見た悠介と俺も含む全員が凍りついた。 すげぇ……ヤツは本物だ。 ───ここに、ビスケット・藍田が誕生した。 清水 「かッ……怪力無双ッ……!!」 皆川 「これほどのものかッッ……!!」 三島 「胸が……まるでケツだ……」 蒲田 「腕が……頭よりデカい……」 田辺 「だいたい技が通用するのか……?」 中村 「通用するとは思わない人は挙手!!」 全員 『ハイィッ!!』 満場一致だった。 中井出「戦力分析は終わったかね。ならば逆立ちしても勝てぬことはワカっただろう」 田辺 「ぐむっ……」 悟り猫「察しの通りだ。オリバはキミ達の遙か上に居る」 三島 「み、みんな!怖れるな!いくらオリバが強かろうと、5発当てれば死亡なんだ!」 中村 「確かにそうだが……俺まだ飯田みたいに死にたくねぇぞ……?」 清水 「つーかなんでオリバなんかが居るんだよ!     おい中井出組!こりゃどういうこった!卑怯だぞ!?     我ら原中のメンバー以外の参戦は認められないぞ!!」 中井出「ふっ……おい晦。あいつらあんなこと言ってるぜ?」 悟り猫「言ってやれ悠介。オリバの正体を」 悠介 「なんで俺に振るかな……」 中井出「だってお前、さっきから他人のフリし続けてんじゃん。俺達ゃ一連托生。     そもそもこいつをオリバにしたのはお前だろ?」 悟り猫「そして俺と中井出はそれを手伝った。共犯共犯」 悠介 「……はぁ。みんな!よく聞け!!」 中村 「晦……?み、みんな静かにッ!!スポンサー様の発言だ!!」 全員 『サー・イェッサーッ!!』 全員がその場で気を付けをした。 皆様ほんにこういう号令っぽいのが好きだなぁ。 悠介 「信じられんかもしれんが……このオリバは『藍田亮』の変わり果てた姿だ!」 全員 『な、なんだってぇーーーっ!!!?』 またもや皆様MMR化。 田辺 「おっ……お前があの……あ、藍田……なのか……?」 清水 「藍田……な、なんて姿になっちまったんだ……!」 中村 「こりゃあ……木村が見たら卒倒だぞ……?」 三島 「今が女の風呂時間でよかったなオリバ……」 オリバ「好き勝手言うなぁっ!!」 岡田 「あ……でもよ、逆に卒倒する木村ってのも面白そうじゃないか?」 三島 「通じ合った心と心……長い時を経て、やっと伝えられた思いと想い……」 佐野 「届いた心は暖かく、彼と彼女を包み込む……」 蒲田 「しかしその実、愛した人はビスケット・オリバだった……」 全員 『面白そうだ、よしやろう』 オリバ「てめぇらぁああああああっ!!!!!」 またもや満場一致だった。 中井出「よっしゃあ!こりゃあ枕投げどころじゃねぇ!     おい野郎ども!木村夏子を捕獲せよ!そしてここへ連れてくるのだ!!」 中村 「しかしボス!女連中は今、風呂に行っているわけで!」 中井出「チィッ……!親戚筋として、     新婚でスタート地点に立ったばかりのあいつらに迷惑をかけるわけにはいかねぇ!     ……み、みんな!覚悟を決めろ!!     オリバを押さえつけるんだ!時間稼ぎをするんだ!」 全員 『なんですと!?』 中井出「ひとりでも長く押さえつけろ!!この部屋から絶対に逃がすな!     木村が……木村が風呂から上がるまで耐えろ!!」 全員 『っ……!!』 人々は恐れた。 見れば、筋肉ゴリモリのオリバがそこに居る。 その腕の太さ、体格、力強さ……どれをとっても敵わないことなど、 ここに居る全員が知っているのだ。 だが─── 中井出「総員ッ!!我らの誓いはなんぞや!!」 全員 『───!!お、押忍!!     【我らたとえ瀕死であれど、楽しみを前にして倒れることなかれ!!】』 中井出「いいか……これは命令ではない、願いだ。     だれか……ひとりでもいい。木村がオリバを見るその瞬間を……見届けてくれ」 全員 『教官殿っ……───くっ……』 中井出「返事をせんかぁっ!!」 全員 『サッ……Sir!YesSir!!(サー!イェッサーッ!!)』 中井出「……貴君らのような部下を持てて、私は幸せだった。     いいか……誰かひとりでも……生き残るんだ」 言って、中井出がオリバに向かって走りだした。 中井出「シャンドラの火を灯せェエエエーーーーーーッ!!!!」 オリバ「てめぇらなぁっ!!人の不幸をダシにして楽しむのも大概に───しろっ!!」 ベゴキャア!! 中井出「ズフェーール!!!」 ドシュンッ─── 中村 「……え?」 中村の顔の横を風が通り抜けた。 振り向いてみれば、壁に激突して倒れる中井出。 全員 『……ゴクッ……』 全員が息を呑んだ。 だが……中井出の意思を潰すわけにはいかない。 というよりは『我ら遊びの名の下に』!! 悟り猫「うおおおおっ!!中井出に続けぇええええっ!!!!」 全員 『おっ……おぉおおおおおおおっ!!!!!』 オリバ「ふっ……はははははは!!こうなりゃヤケだ!!     てめぇら全員ブチノメしてやる!!かかってこいやぁっ!!」 悟り猫「悠介!手加減して勝てる相手じゃねぇぞ!!」 悠介 「解ってる!!ッらあぁあああああああっ!!!!!」 ベッチィッ!! 悠介の渾身の拳がヒット! って……あれ? オリバ「ン〜〜……」 悠介 「うぅわっ……てんで効いてねぇ……」 中村 「あれかっ……!あの異常に太い首がショックを吸収してしまう……!!」 悟り猫「家系の腕力でもビクともしないとは……」 かなり驚きでした。 本当に手加減なんてしてられんのかもしれません……。 悟り猫「轟天弦月流!猫爪攻撃!!」 シャキンッ!!ザリュッ!! 爪を伸ばしてオリバに攻撃を仕掛けるッ!! 悟り猫「て……あらっ!?あららぁっ!!?」 が……オリバは無傷だった。 悟り猫「切レ……ナイ!!?」 オリバ「粗塩を肌にスリ込んである」 悟り猫「付けこの野郎!!」 オリバ「攻守交替……」 悟り猫「ま、待───」 ベゴキャッ!! 悟り猫「ギァッ───」 ゴォッ───バッシャァアアアアアアンッ!!!! ───……ぬおっ!?あ、彰利が窓ブチ破って外に吹き飛んでいっちまった! 悠介 「うおぉっ!?彰利ぃいいっ!!」 慌てて窓から外を覗いてみるが……居ない、な。 おおお……!!彰利があっさりとまあ……!! 中村 「な、なにが貴様をそこまで強くさせたのだ……!」 オリバ「愚問だな……。愛以外に人を強くするものなどあるものか」 田辺 「なんてこった……!悪夢だぜこりゃあ……!     木村との愛が成就したからってそんな、声まで変わって……!」 岡田 「オリバ!是非とも『ナオミよ♪』とかほざいてみてくれ!!」 パガァンッ!! 岡田 「へぎゅっ!」 ゴドガァンッ!!……どさ。 岡田、殴られて空を飛んで壁に激突してリタイア。 中村 「み、みんな!ひとりずつ行くのはやめろ!全員でかかれ!!」 全員 『イ、イェッサー!!』 悠介 「待てみんな!足だ!足を狙え!それがオリバの弱点だ!」 蒲田 「足!?───あぁっ!     よく見りゃオリバなのは上半身だけで、下半身は普通だぞ!」 皆川 「えっ!?あ、マジだっ!!みんな!やっちまえ!」 全員 『我ら!遊びの名の下に!!』 弱点を見つけた途端に強気になる彼らは、それはもう素直なヤツらだった。 勝つためには手段を選ばないことは元より、よってたかって集団リンチである。 皆川 「アリキックララ!!」 べちん! オリバ「くはっ!この───」 ドパァンッ!! 皆川 「ほぎゅっ!」 下田 「ああっ!皆川が枕の前に敗北を!     ───間を空けるなぁっ!絶えることなく責めろぉっ!!」 藤堂 「スライディングキィーーック!!」 オリバ「フンッ!」 ボゴッ───チャァアーーーンッ!!! 藤堂 「ギャァアアーーーーーッ!!!!」 ドガベキャズバァーーンッ!!! 下田 「と、藤堂ーーーっ!!」 おおうなんてこった! 藤堂が殴られて天上にぶつかって壁にぶつかって畳みに叩きつけられた!! うーむ……足が弱点でも怪力無双の名に偽りなし。 やっぱ強い。 佐東 「金ちゃんクラァーーッシュ!!」 ガッシ!! 佐東 「は、はああ……!!」 金的を狙った佐東が、あっさりと足を取られた。 さらにそのまま───ブォンッ!! 佐東 「うわっ───!?うわ……わぁああああああっ!!!!」 佐東はオリバに振り回された。 片手で足を掴まれ、まるでロープを振り回すかのように簡単に。 佐東 (片手デ振リ回サレテル……ッ!!80キロヲ越エルワタシガッ……!!) オリバ「ヌオオオオオオッ!!!」 ヴオッ───ドッカァアアアアンッ!!!! 佐東 「ハカッ───」 ……どさ。 佐東……片手で振り回されたあと、畳みに思いっきり叩きつけられてリタイア。 ……死なないか?あれ。 下田 「さ、佐東まで……!」 田辺 「戸惑うな!!散っていった精鋭のためにも!俺達がやらねば誰がやる!!」 蒲田 「蒲田!行きまぁああーーーーす!!」 オリバ「ン〜〜……」 突っ込んでいく蒲田を前に、オリバは余裕の表情だ。 だが───そこにこそ油断がある! 悠介 「くらえオリバよ!大仏マクラァーーッ!!!」 手に取った大仏マクラをオリバに向かって投擲!! 家系の力の全力───受けてみろ!! オリバ「ンーー……」 ドパァン!! 大仏マクラは見事にオリバの顔面に命中! しかし当然のように効いているようには見えない。 だがしかし! 蒲田 「ゴールデンスマァーーッシュ!!」 ブンッ───コキィンッ!! オリバ「ハオッ!!」 よし!囮作戦成功!! 悠介 「今が好機!!全軍打って出よ!!」 全員 『Sir!YesSir!!(サー!イェッサーッ!!)』 全軍の士気が上がった!! 黄金を押さえてつつ苦しんでいるオリバ目掛けて、その場に残っていた全員が駆け出す!! 中村 「おのれこのオリバめ!よくも偉大なる戦士たちを!!アリキックアリキック!!」 下田 「おい!足の筋を無理矢理伸ばして、ツらせろ!」 永田 「くすぐりはやめておけ!あれは反撃が痛い!」 岡田 「とにかくアリキックだ!立てないくらいにアリキック!!」 全員 『Sir!YesSir!!(サー!イェッサーッ!!)』 満場一致でアリキックに以降。 やはり、もはや誰も相手が藍田だという事実を覚えているヤツは居なさそうだ。 ベチベチベチベチ!! オリバ「ン〜〜……」 ───! オリバの野郎……やせ我慢して機会を探ってやがる! 悠介 「そっ……総員退避ーーーッ!!」 中村 「なにを言う!こんな絶好のチャンスを」 全員 『散ッ!!』 ババッ!! 中村 「あ、あれぇっ!?」 ガッシ。 中村 「あ、う、うあ……」 生き残りが散開する中で、逃げなかった中村があっさりと捕まった。 オリバ「オマエサンハ少シ……」 中村 「!!や、やめろ!死んじまう!やめろ!!」 両手で頭を掴まれた時点で、次に何が来るのかを悟ったのだろう。 中村は全力で暴れてみせた。 だが───ゴチャアッ!! 中村 「ぴゅぎっ!?」 オリバ「……スマートサガ足リネェ」 中村の顔面にオリバの頭がめり込む。 その場には鼻血が飛び散り、中村はぐったりと動かなくなった。 全員 『ゴ……ゴクッ……!!』 勘弁してくれ……なんだってこんな目に……って俺の所為か。 しかしこの状況で月操力とか創造の理力を使うわけにもいかないしなぁ……。 いや使おうか?どの道、オリバ化が進んでゆく藍田を前にして、 素手で向かうのは死を唱えることと同義であるわけで…… などと考えていた時だった。 声  『男子諸君〜!女子全員お風呂入り終わったよ〜!!』 ───そんな声が、廊下の方から聞こえてきたのだ!! オリバ「───!!」 そう……彼らの死は無駄ではなかったッッ!! 蒲田 「木村夏子ォオオオーーーーッ!!!!     今すぐこっちに来てくれぇええええっ!!!」 気づけば蒲田がそう叫び、オリバを取り押さえようと駆け出していた。 蒲田 「みんな!俺に力を貸してくれ!!     オリバを……俺達の手でショック死させるんだ!」 下田 「フッ……水臭ェぞ蒲田!!そんなの、ここに居るみんなが思ってた!!」 丘野 「やってやろうぜみんなぁっ!!」 全員 『Sir!YesSir!!(サー!イェッサーッ!!)』 ここに来て、生き残りの潜在能力が解き放たれた!! 恐らく木村がここに来るのに約2分弱。 俺達はその、カップラーメンも満足に完成しない時間を生き延びなければならない! そしてそれがどれほど大変なことかを、ここに居る全員が熟知しているのだッッ!! 蒲田 「シャンドラの火を灯せェエーーーーーーッ!!!!」 オリバ「ヌオオオォォォォ!!!!」 ベゴシャ! 蒲田 「ブゲッ!!」 丘野 「蒲田!?ち、ちっくしょおおおっ!!!」 下田 「押さえろ!押さえつけるんだ!戦おうだなんて思うな!」 全員 『Sir!YesSir!!(サー!イェッサーッ!!)』 コロコロと変わる号令を前にしても、クラスメイツ達は怯まなかった。 果敢にもオリバに向かい、殴られ、屠られ、空を飛び、壁にめり込み…… だがここに居る全ての勇士たちが皆、ひとつの楽しみのために必死に生きた。 灯村 「くっ……いっててて……」 島田 「たく……相変わらずどういう投擲力してんだよ晦のヤツ……」 と、その時だった。 一番最初にマクラに散った灯村と島田が目を覚ましたのだ。 灯村 「え───と……な、なんだこりゃぁあああっ!!」 島田 「み、みんなっ!?どうしたぁっ!!」 ふたりが畳の上や壁の中に散った戦士達を見て驚愕する。 そりゃそうだ。 悠介 「灯村!島田!このオリバを押さえつけてくれ!!今はとにかく人手が要る!!     ───家系全力キィーーーック!!!」 ベチィンッ!! オリバ「グアッ!!」 筋肉の無い足に全力キック!! その拍子にオリバの体勢が崩れた! 悠介 「畳め!畳み込めぇえーーーーっ!!!」 全員 『Sir!YesSir!!(サー!イェッサーッ!!)』 灯村 「な、なんかよく解らんけど───島田!」 島田 「ああっ!!」 この時俺達の心が真にひとつになった。 が───時間が無いことを悟り、本気で暴れだすオリバを前に…… ドカバキベキゴキゴシャボゴドッパァアアアアアアアン!!!! 灯村&島田『ギョェエエエエーーーーーーッ!!!!』 ……島田達は、ものの見事に瞬殺された……。 丘野 「弱ェ!!」 下田 「クソの役にも立たねぇな!!」 皆川 「死ね!!」 勇敢に戦ったクラスメイツに対しての、酷すぎる言葉だった。 丘野 「こうなったら……下田」 下田 「ああ……皆川」 皆川 「解ってるさ……───晦!」 悠介 「?」 丘野、下田、皆川が俺を見て穏やかに微笑んだ。 丘野   「晦……お前は生きろ」 下田   「お前は俺達の希望となってくれ……」 皆川   「俺達の死が無駄ではなかった瞬間を、木村とともに眺めてくれ……」 悠介   「───!お、お前らまさかっ!」 丘野   「下田、皆川は左右から回れ!俺は正面から!」 下田&皆川『御意に!!』 丘野   「行くぞ!!散ッ!!」 タンッ─── 丘野の声を合図に、三人が一斉に駆け出す。 下田がオリバの左腕を押さえ、皆川がオリバの右腕を。 そして───丘野がオリバの両脚を掴んだ!! が─── オリバ「スマートジャネェ……」 ブンッ─── 下田&皆川『んなっ───』 ゴチャアッ!!! 両腕にしがみついた二人の頭を鐘楼を鳴らすかのように打ち合わせた。 ふたりは崩れ落ち、足にタックルをかましていた丘野が絶望に包まれる。 オリバ「慌タダシイコトダゼ……。三人一緒ニ来テモドウニモ出来ネェナンテナ」 丘野 「は、ああ……!!」 オリバ「急グマデモネェ……。コウシテ……ユックリ……優雅ニ殴ルノガ……」 ヴオッ─── 悠介 「───!避けろォッ!!丘野ォオーーーーッ!!」 丘野 「……同志達……あとは───任せたぁあぁあああああっ!!!!!」 ドォッガァアアアッ!!!! 天に掲げられたオリバの両腕が、丘野の両肩へと振り落とされた!! オリバ「……スマートッテモノサ」 丘野の体はその勢いで畳みへとめり込み、意識自体も完全に断たれていたようだった。 悠介 「く───っそ……くそぉおおおっ!!!!」 悔しがってる暇も無い。 丘野の最後の言葉を受け取った残り僅かなクラスメイツ達がオリバに向かって駆けるが、 倒れていた中井出が片手で掴まれ、 モーニングスターのように振り回されて武器にされている。 大した間も無くその場に居た精鋭が滅ぼされ、残りは……そう、俺だけになっていた。 オリバ「ン〜〜〜……」 悠介 「ッ……!!木村ぁああーーーーっ!!!早く来てくれぇえーーーーっ!!!!」 気分はナッパを目の前にしたクリリンだった。 オリバ「皮肉ナモンダゼ……コノ体ヲクレタアンタガ最後ニ残ルナンテナ。     悪イガ……スグニ終ワラサセテモラウゼ」 悠介 「チッ……!俺はそう簡単には負けてやらねぇぞ!!」 オリバ「スマートジャネェ」 悠介 「好きに言え!俺は───こいつらの意思を継がなきゃならねぇんだよ!!」 オリバ「そんな傍迷惑な意思なんて捨てちまえ!!」 悠介 「ヘッ、そっちの方がお前らしい!いくぜ!」 オリバ「ヌオオオオオオッ!!!!」 オリバがヒョロっちぃ足で走ってくる! 俺は他の全員が気絶しているのを確認してからイメージを開始する! 悠介 「オリバを麻痺させる雷光が出ま───ぁああああああああっ!!!!?」 驚愕!! 俺のすぐ目の前に、中井出の亡骸が飛翔してきた!! 俺はそれを寸でのところで避け、オリバを見た。(注:中井出は再び壁に激突) すると─── オリバ「いいじゃないかソノダッ!!全員に勝ったらブラックベルトだッ!!」 次弾(蒲田)を装填するオリバが居た。 ……やべぇ。 完全に見境無くしてる。 ブンッ─── 悠介 「う、お───うおぉおおおっ!!!」 蒲田が風を切る! 俺に向かって、ダイビングピーチボンバーをせんがために飛翔する!! 俺はやはりそれを避け───がっしゃぁああああんっ!!!! 悠介 「あ……」 蒲田がケツで窓ガラスをブチ破り、外界へと旅立った。 何処へ飛んでいったのかは知らんが、ひとまずは冥福を祈る。 それが終わると俺はオリバに向き直り─── 再び装填されている中井出を見て、泣いてやりたくなった。 オリバは中井出に恨みでもあるんだろうか。 ───と、そんなことを考えている時だった。 声  「ほんとだって。夏子が呼ばれてたんだから」 声  「気の所為じゃないの?わたし、聞こえなかったよ?」 木村夏子と村瀬麻衣香の声が聞こえたのだ! 近い……あと少しだ!あと少しで俺達の勝利だ!! ───などと、廊下の方に気を取られたのが最大中の最大の油断だった。 悠介 「はっ!?だ、だわぁああああああああっ!!!!!」 飛んできていた中井出に気づけず、俺はその肉の塊に吹き飛ばされ、壁に激突して気絶。 最後に『とんずらぁーーーっ!!』というオリバボイスと、 窓ガラスをブチ破る音が聞こえた。 すまないみんな……俺は、お前らの意思を成就させることが出来なかった……。 ───……。 悟り猫「……強かったな、オリバ……」 悠介 「そーだな……」 木村が来る前になんとか復活した彰利のお蔭で、 クラスメイツの治療と壊れた箇所の修繕は無事終わった。 (時間に余裕が無かったので時を止めて) オリバはというと、やはり彰利がここに戻ってきた時には既に居なかったらしく、 今もなお行方不明である。 復活した我らが歯を噛み締める中、訪れた木村がいろいろ訊いてきたが、 目的の人物を逃がしてしまったことも手伝い、特に伝えられる事実は無かった。 中井出「なぁ彰利、晦。俺達の傷とか部屋の修理もお前らの能力か?」 ふと、そっと俺達に近づいて小声で話す中井出。 俺と彰利は顔を見合わせてから中井出に向き直り、頷いた。 中井出「へ〜、便利だな。しかしさ、どうしてかめはめ波を撃たなかったんだ?     遠慮せずにいくらでも撃てばよかったのに」 悠介 「あの状況で撃ってたら混乱を招くだけだろ?」 中井出「いや、逆にヒーローとか言ってたな、俺達なら」 悟り猫「それはそうかもしれんのぅ……ちと勿体の無いことをした」 悠介 「そうか?撃っても効いたかどうか……」 悟り猫「そうね……」 中井出「そうだな……」 ヤツは怪物級の強さを誇ってた。 おそらく喰らっても『ン〜〜……』とか言ってたに違いない。 中井出「ここじゃ話づらいな……部屋、戻るか」 悟り猫「そうザマスね」 悠介 「ああ」 ───……。 ───……。 中井出「で……オリバは何処に行ったんかね」 悠介 「あれだろ。5時間経つまで逃げ回る気なんだ」 中井出「そっか。恥ずかしがらずに全てを曝け出せばいいのに」 悠介 「それで木村に嫌われたら一生トラウマになるだろうな」 中井出「違いない」 悟り猫「そうなったら漢として生きていけばいいのよ……」 悠介 「強制的にさせるようなものじゃないだろ、漢ってのは」 悟り猫「せっかくだから一生オリバのままにさせておくとか」 中井出「泣くだろうなぁ」 悠介 「怒るだろうなぁ」 悟り猫「殺されるだろうなぁ」 碌な結果になりそうもない。 悠介 「ま、あまり遊ぶのもなんだしな。えーと……オリバ───じゃなかった。     藍田の口の中にオリバ効果を消す液体が出ます、と。弾けろ」 イメージを弾かせる。 多分上手くいったとは思うが…… こればっかりは藍田が戻ってこないと確認のしようがない。 中井出「それだけでいいのか?」 悠介 「ああ。イメージが上手く纏まれば何処にでも創造出来る」 中井出「そ、それって他の誰かのイメージも出来るもんなのか?」 悠介 「?ああ、一応は」 中井出「俺のイメージを具現化してくれ!!」 中井出、なにやら鼻息を荒くして懇願。 どうしたものかと思いつつ……面白半分を発動させ、中井出の額に指をつけた。 悠介 「頭の中にイメージを鮮明に映し出してくれ」 中井出「任せろ!」 悠介 「纏まったら俺の腕を掴め。それを合図に創造する」 中井出「サー・イェッサー!!うぬぬぬぬ……!!」 悟り猫「………」 彰利がボ〜ッと見守る中、しばらく経ってからようやく中井出が俺の腕を掴む。 それを合図に、俺は理力を解放した。 ───ボムンッ!! 中井出「どうだっ!?───っしゃああああああっ!!!」 創造されたものを見て中井出が両腕を上げて跪きながら叫んだ。 ああ、プラトーンのポーズだな。 悟り猫「でさ……この裸体のおなご、なんなのさ」 中井出「俺の言うことをなんでも聞く裸のねーちゃん」 当然ブラックホール行きだった。 中井出「おわぁああーーーーっ!!!お、俺のドリームがぁあーーーっ!!!」 ズゴゴゴ……きゅぽん。 中井出「お、おおお……!!な、なんとしたことか……!     俺のドリームが消えてしまった……!!」 悠介 「お前な……能力はもっと有意義に使うもんだ。     俺は欲望一直線を放置するほどめでたい思考回路してないぞ」 悟り猫「まったくけしからん!おなごを欲望の捌け口にしようとは!」 中井出「馬鹿野郎!!欲望ではない!ドリームだ!!     男として一度は夢見るものを今なお追って何が悪い!!」 悠介 「どちらにしろけしからんわ!!」 中井出「うう……でもまあいいや……一応は、     『俺の言うことをなんでも聞く裸のねーちゃん』自身は見れたんだし……」 悟り猫「とことんクズですなこいつ……」 悠介 「夢と欲望がごっちゃになってるんだ、止めても無駄だ」 中井出「本人が居る前でそういうこと言うかね……」 悠介 「言われたくなかったら、そういう人間に見られるように努めろ、馬鹿者」 中井出「ご、ごもっとも……」 さて、それはそれとして……だ。 中井出「あ、あれ?なんで拳鳴らしながら近づくのかな……」 悠介 「つまらんものを創造させた罰だ。     ああ、安心しろ。殴ったらちゃんと治療してやる」 中井出「でも痛いことには変わりは無い……んだよな?」 悠介 「当たり前だ!!」 中井出「だわぁっ!!ちょ、ちょっと待───」 ドカグチャベキャボゴガスゴスゴチャ!! 中井出「いぎゃぁああああああああっ!!!!」 ───……十字を切りました。 ええ、だって悠介ってば手加減しなかったんですもの。 中井出は空飛んだり壁にめり込んだりと、 それはもう網膜に地獄を上映されていることでしょう。 悠介としても、 自分の能力を欲望の創造なんぞに使われたのが気に入らんかったのでしょう。 いやはや、悠介には黙って慈しみの調べを仕込ませてはもらったが…… それでも余りあるほどに吹き飛んでますな、中井出。 悟り猫「悠介〜、そのへんにしないと死ぬぞ〜」 悠介 「どうせお前が能力流してるんだろっ!?だったら気の済むまでやらせろ!!」 悟り猫「あらら、バレてた……」 しかも少々キレ気味のようでした。 こりゃあ無理に止めたらとばっちりが来ますな。 中井出「あ、彰利ッ!!ヘルプ!ヘルプミーーッ!!」 悟り猫「バードンミー!バードンミー!!」 中井出「な、なんだそりゃ───あぁああっ!!」 ボゴシャア! 中井出「ぶべら!!」 悟り猫「悠介〜?俺、もう月操力がカラに近いんだけど〜?」 悠介 「───ッチィ!!」 チィってアータ……ストレス溜まってたんかな……って、ああ……そっか。 あの神社であのおなご達に囲まれてりゃあストレスも溜まるわなぁ。 気持ちは解る。 悟り猫「悠介〜、レタスプリーズ」 悠介 「……はぁ」 中井出「うげげ……」 どしゃっ……。 ようやく気が済んだのか、悠介が拳を納めた。 ……ちなみに中井出はというと、 顔面ばかりと狙われたミッキー・ロジャースの如く海坊主フェイスになっていた。 実に無残だ。 悠介 「けどさ、実際お前ってどうなんだ?     高校に居た頃とかはしょっちゅう女好きの雰囲気出してただろ」 悟り猫「ほえ?なに言っとるのかね。ありゃあ悠介の反応見て楽しんでただけですよ?」 悠介 「……おい、つまりなにか……?     お前はず〜〜〜っとそうやって俺をからかってただけだと?」 悟り猫「イエス!」 悠介 「…………はぁあああ〜〜〜〜〜……」 凄まじく長い溜め息を吐かれてしまった。 悟り猫「ほっほっほ、漢であるこの俺が、     ほんにおなごをどうにかしようなどと考えるわけないでしょう?     からかうことはあっても、故意に傷つけるようなことはしませんよ?」 悠介 「骨の時に『聖』って神の子を泣かしたのは?」 悟り猫「あれは南無の意思であって俺の意思じゃないのでセーフ。     それから小野田に関しては正当なバウンドナックルでした。     劇の最中に家族のことを口にしたあいつが悪い」 悠介 「小野田って……あー、あいつか。この時間軸じゃあ殴らなかったよな?」 悟り猫「うむ。殴ったのは未来側の方の時間軸ですじゃ。     見事なバウンドだったと聞いております」 悠介 「そか。……まあいい、お前が俺をからかったってのは、     それだけ素直にぶつかってきてたってことだろうしな」 悟り猫「そういうことなり。からかわれているという事態に気づけなかった時点で、     貴様はからかわれる事態が自然となっていたというわけですよ」 悠介 「してやられてたってことか……」 苦笑するように息を吐く悠介。 その顔はどちらかというと楽しそうな顔でございました。 などというやりとりをしていると、ふと襖が開かれた。 藍田 「ただいま……」 藍田だった。 悟り猫「おお藍田、今まで何処に行ってたんだ?探してなかったんだぞ?」 藍田 「探せよ!……ああいや、部屋から飛び出してしばらくしたら、     こうやって元に戻ったんだけどさ。     ほら、女達が風呂から戻ってくるところだったからさ、     それで外うろついてたら『覗いてた』とか思われるかもしれないだろ?     だから時間経つの待ってから来た」 悟り猫「思われるどころか、ほんに覗いてたのでは?」 藍田 「覗くかっ!!俺ゃあもう夏子以外の女に興味なんてねぇんだよ!!」 悟り猫「おおっ!言いおったわ!」 悠介 「言い切ったな……」 悟り猫「フッ……貴様とは大違いだな」 悠介 「今のお前に言われたくはない」 悟り猫「なにを申されるか……俺は誰も好きにならないとハッキリ決めてあるわい。     だから貴様よりは上に立っているのだよ」 悠介 「いや違うな……俺だって誰かが好きだなどと言った覚えはない。     向こうが勝手にギャースカ騒いでるだけだ」 悟り猫「ほっほっほ、ヒドイやっちゃなぁ〜〜〜」 悠介 「なにを言う、お前には負ける」 悟り猫「ほほっ、これこれ照れるでない。お手前の方こそ真に外道ぞ」 悠介 「いやいや遠慮するな、お前こそ真の外道だ」 悟り猫「ほっほっほ、いやいや……」 悠介 「はっはっは、なんのなんの……」 悟り猫「………」 悠介 「………」 悟り猫「お前の方が外道だっつの!!」 悠介 「今のお前にゃ言われたくねぇっての!!!」 藍田 「よく解らんが、ハッキリしないのはどの道残酷だと思うぞ?」 二人 『………』 言われちまったよ元オリバに……。 流石は愛を語る男だ……。 Next Menu back