───地上最強猫列伝『第二十章◆闇狩!銀色の魔払い士!の巻』───
───……ゴオオオオ…… 悟り猫「ダスキンでーーーす」 手に鉄パイプと紅花を抱え、俺は蒼空院邸にやってきていた。 場所はリヴァっちに教えてもらいました、ハイ。 紅花 「あきえもんさん……なにをするきですか?」 悟り猫「遊びたいんじゃろ?とびっきりの相手が居るから遊ぼうじゃないですか」 紅花 「え……?」 悟り猫「この屋敷にロディエルさんがおわすという情報を得た!     ……体成長させてやるからハデに暴れてみせろ」 紅花 「えっ……えぇっ……?」 悠介 「お、おい彰利、そりゃいくらなんでも……」 悠介の言葉に、俺は天蓋と尺八と坊着衣を身に着けて告げた。 虚無僧猫「彰利……?それは一体誰のことかな?      俺は虚無僧テッカーを身に付けし猫。その名も……虚無僧猫だ」 悠介  「恥ずかしくないか?」 虚無僧猫「全然」 悠介  「……いろんな意味で変わらないよな、お前って」 虚無僧猫「故に最強!故に俺は美しい!」 紅花  「ねこのすがたじゃ、うつくしくないです」 悠介  「それ以前に美しくない」 虚無僧猫「容赦ないねキミたち!!いいじゃない人が自分のことどう喩えようが!!      猫でなにが悪いかね!人の姿なんかより動きやすいんだもん!いいじゃない!」 悠介  「うるさいぞ虚無僧猫。虚無僧ならもっと静かにしろ。そして尺八を吹け」 虚無僧猫「……キミも昔っから言うことキツイよね」 まあそげなところが『遠慮なし』だから気楽で重くなくていいんだけど。 気兼ねなくなんでも話せる相手ってのは、居るだけでも嬉しいものだ。 昔っから嫌われ続けだった俺と、最初からずっと一緒に居てくれた悠介だ、 一緒に居てくれて嫌だということはまず無い。 この時代の悠介との圧倒的な差……危機感や孤独感、 悲しみや創造の理力の強さといったものの差があったとしても、 この悠介は間違い無く俺が『未来を切り開いた証』なのだ。 この時代に居る悠介との性格の差に安心することがあるとしたら、 きっとそれが理由なんだ。 友達ってのはいいものだ。 他のやつらはそう意識しないだろうが、俺にとっては一生ものの宝だ。 誰でもいいわけじゃない。 悠介だから安心してなんでもやりあえる。 馬鹿やってられる。 結局俺はそれが楽しくて、悠介の友達を続けたいと思ってるのだろう。 虚無僧猫「………」 悠介  「猫の顔でニヤニヤするなよ……怖いぞ?」 虚無僧猫「フッ……その遠慮の無さにまさしく安心する」 悠介  「いきなり言われても訳が解らんが。まあ、あれだ。      ここに強敵が居るのは間違いないんだな?」 虚無僧猫「ウィ。リヴァっちに訊いたから間違いないね。      いくぜ野郎ども……。俺達の手で───歴史を変えてやるんだ!!」 悠介  「アニメみたいなことやってないで……行くなら行くぞ」 虚無僧猫「うぅわっ!急に冷たくなりやがった!      ま、まさかこの時代の空気が悠介を未来悠介に変えていっているというのか!」 な、なんだってーーーっ!!? 虚無僧猫「…………」 やっぱ自分の心の中だけでMMRやっても悲しいね……。 そう……喩えるなら、 後ろ姿で電話しながら【なんだってーーっ!】と叫んでるキバヤシさんみたいな悲しさだ。 ……想像してみても悲しいなぁオイ。 虚無僧猫「しかしさ、みんな口々に『変わってないな』とか言うけどさ。      実際俺ってかなり変わったと思うよ?ほんとに」 悠介  「そうか?」 虚無僧猫「うむ。詳しく言えば未来に来る度に、      違う自分を演じてて……それが自然になってたって感じだと思うんだが」 悠介  「なんだそれ。違う自分って?」 虚無僧猫「ほれ、例えば老人語を喋るようになった〜、とか。      奉行語を使うようになった〜、とか」 悠介  「ああそういうことか。それは仕方無いことだろ?      実際、お前が未来を築いたってのは俺達の時代のわけで、      その時代ではお前はもう何回か未来に行ったことのある彰利だ。      そうなれば、子供の頃から奉行語とか使っててもおかしくない」 虚無僧猫「グムッ……!つ、つまり俺はあの時代の知り合いからみれば、      子供から今の状態になるまでてんで変わってないと……?」 悠介  「そういうことだろ。確かに見せてもらった過去を考えれば、      昔のお前ってどちらかと言うと暗いヤツだったしな」 虚無僧猫「グウウ〜〜〜……!!」 そうなのだ。 最初の頃の俺ってば、それはもう暗いヤツだった。 それを悠介と春菜さんのお蔭でなんとかカバーできてた程度。 それを考えれば最初のオイラなんぞ、春菜さんは嫌いだったに違いない。 ……早まったかもね、俺。 もっと自分の印象は大事にするべきだったのかもしれない。 でも暗いままの俺って、今じゃ想像出来んしなぁ……。 紅花  「あの……いかないんですか?」 虚無僧猫「オゥ?ああ、いきますよって。んじゃあ」 悠介  「ああ、若干───じゃないな。      かなりの確率で不安だが、行かないわけにはいかないんだろ?」 虚無僧猫「しゃあないじゃない。これがこの時代に来た目的なんだから。      月操力とか死神などの『闇』部分は通用せんらしいから気をつけるように。      頼りにしてるぞ、紅花、悠介」 悠介  「……創造に闇も光もない、か?」 虚無僧猫「そゆこと。紅花は神法力が使えるだろうからそれに掛ける」 紅花  「おもいきり、たりきほんがんですね……」 虚無僧猫「キミはなにか?この虚無僧猫に犠牲になれというのか?」 悠介  「まあ落ち着け普化僧(ふかそう)
」 虚無僧猫「普化僧言うな!!虚無僧言え!」 ちなみに普化僧ってのは虚無僧の別名みたいなもんです。 というか普化僧のことを虚無僧と言います。 悠介  「いーから落ち着け。よく解らん虚無僧姿の猫なんぞが犠牲になるより、      子供中の子供に自分達が敵いそうにない相手に向かわせるお前の方が、      実際に遥かにえげつないだろ?」 虚無僧猫「………」 そうかも。 冷静になって考えて見たらかなり外道で非道だった。 虚無僧猫「……紅花さん。キミ、空狭転移でリヴァース元帥(帰します)」 紅花  「───え?や、やぁっ!」 虚無僧猫「漢たる者、赤子に近い子供を傷つけるわけにゃあいかんのですよ。      許容範囲は『高い高い』やって、      その拍子に子供の頭を天井に突き刺すくらいまでだ」 悠介  「いや、それは存分に非道だ。外道だ。傷つけだ」 虚無僧猫「やる人は癒せる人に限る!どうだぁっ!!」 悠介  「どちらにしろ非道で外道で非人道だ」 虚無僧猫「なんでやねん!!」 悠介  「あーうるさい。いいから行くぞ」 虚無僧猫「散々けなしといて仕切りますか……」 まあ、いいんだけどなぁ。 虚無僧猫「ともあれキミは転移。あとでキミで遊んでやるから待ったれや」 紅花  「『わたしと』のまちがいじゃないですか?」 虚無僧猫「キミで遊ぶのだ。小僧の慌てる顔が目に浮かぶ」 紅花  「つくづくくさってますね……」 虚無僧猫「お黙り!エロマンガ島に飛ばされたいのかね!?」 紅花  「ごめんなさい」 即答だった。 ……ていうかね、どうしてか月空力・空狭転移ってエロマンガ島が連想されるんだよね。 恐らくは第一印象……冥月が使った時のことが関係しているんだろうが。 空狭転移の初めての犠牲者って、確かフレイア……ママっちだったよね? (注:詳しくはIF-ルナカーニバル第六話をどうぞ) 虚無僧猫「とにもかくにも空狭転移!!」 紅花  「あっ───!!」 キィイイイ……───バジュンッ!! 月空力を発動させ、問答無用で紅花をカンパニーに転移させる。 これでOKね? 虚無僧猫「うーしゃあ、いっちょハデにいきますか悠介!」 悠介  「ほんと勝手な男だよなお前って」 虚無僧猫「今の世の中、これくらい勝手じゃないと、おなごどもにボコられるんですよ。      解ってくださいこの切ない気持ち」 悠介  「……まあ、多少は解るつもりだが。      でも俺の場合、お前みたいに殴られたりしないからなぁ。      完全に解るってのはおよそ不可能なことだ」 虚無僧猫「グ、グゥ〜〜〜ム」 そうなのだ。 俺と悠介との差は、その『殴られるか殴られないか』。 悠介を愛する人達は、どちらかというとそのおなご同士が喧嘩する感じだが、 なにを血迷ったのかこの虚無僧猫に言い寄ってくるおなご達は、 なにかと言うと俺を殴ってくる猛者どもである。 ……いや、そりゃあ暗い雰囲気が嫌いだからと皆様をからかったりはしますがね? それでボコボコって……割りに合わない気がしません? 虚無僧猫「ま、いいコテ。今はとにかくロディエルさんだ」 悠介  「嫌な予感しかしないけどな……」 こうして拙者は、ブツブツ言う悠介とともに、蒼空院邸に侵入するのでした。 ───……。 エドガー「……いつまでここに居座る気だロディ」 ロディ 「強き者が訪れるまでだ」 魔払いの末を前にする。 つい数日前からこの屋敷に居座り、 何をするでもなくわたしの目の前で強き者を待つ男を。 エドガー「魔払いの者が屈折し、強者払いに堕ちるとはな。クレイグが知ったら嘆くな」 ロディ 「どうとでも言うがいい。もはや私の思想に先祖の意思なぞ無関係だ。      『晦悠介』には借りがある。それを返しに来ただけだ」 エドガー「唯一敗北を喫した恨みか?くだらん」 ロディ 「……どうとでも言うがいい」 過去、わたしを屠ったクレイグ=アシュターブレイグの子孫とは思えない言葉。 クレイグよりも魔払いに長けているというのに、 とある敗北がきっかけで強き者を狙う亡者と化した。 その『とある敗北』が、今から約50年前。 晦悠介によって味わわされた唯一の敗北。 魔寄りの存在には例外無く強い『魔払いの者』だったこいつは、 晦悠介の『創造の理力』の前に敗れた。 創造されたものに魔も聖も無く、こいつは何も出来ないままに敗北したのだ。 自己を強者と思っていた者なら、その事実に衝撃を受けるのは当然のことだ。 エドガー「………うん?……ああ、来たか」 ロディ 「………」 外に気配を感じた。 神魔の波動がふたつ……月の家系の者だ。 ロディ 「忘れもしないこの波動……来たか、晦悠介……!!」 エドガー「………」 ロディはここに来て初めて人間らしい目をした。 が……この波動、確かに晦悠介のものだが……この時代の悠介のものとは思えない。 弱すぎるのだ。 エドガー「……まあいい」 だが気にすることもない。 この男が敗れるのならばどういう材料でも構わん。 正直目障りだ。 ───……。 悠介 「───……」 嫌な気配を感じた。 ひとつはセレス……いや、エドガーのものだ。 だがもうひとつは違う。 闇でありながらも闇を消す者、といった感じの波動。 恐らくこの気配の持ち主が『ロディエル』というヤツなんだろう。 虚無僧猫「ふむ……こりゃちょほいと甘く見てたね。勝てねぇわ」 気配だけで何かを悟ったのか、彰利はそう呟いていた。 そう……こちらの攻撃が効かないというのが解るのだ。 これは『闇を否定する者』の気配。 言われた通り、月操力の攻撃系のモノはなにひとつとして通用しないだろう。 虚無僧猫「つーわけで任せたぜ?」 悠介  「へ?」 何故か俺を見上げて、器用に親指を立てる彰利……というか虚無僧猫。 しばらく思考が停止してたが……ピンと来るモノがあって落胆した。 悠介  「創造の理力か……」 虚無僧猫「そゆこと」 創造するものに聖も魔も無い。 それはつまり、闇を否定する者にも通用するということ。 悠介  「お前はどうするんだ?」 虚無僧猫「適当に援護するさね。ホントに効かんかどうか確かめてみるわい」 悠介  「………」 なんで無理矢理連れてこられて、誰かと戦わなけりゃならんのだ? 理不尽な気がするんだが…… 虚無僧猫「あのね、やる気のねぇこと言ってっと本気でブッ殺されると思いますよ?」 悠介  「ん?なにがだよ」 虚無僧猫の言葉にそう返した途端だった。 俺の頭目掛けてなにかが飛ばされ、俺はそれに吹き飛ばされていた。 虚無僧猫「チィッ!言わんこっちゃねぇ!キミね、少しは『戦う』って気を起こしなされ!      そんなこっちゃマジで殺されますよ!?」 悠介  「ッ……そんなこと言われたってな……!!」 無様に屋敷の庭に倒れた俺は、屋敷の正面を見据える。 そこにはひとりの白髪の老人が立っていた。 あの男が……ロディエル? ロディ「……久しいな、晦悠介。私は復讐をするために戻ってきたよ。     全力だ。全力を持って応えてくれ……」 悠介 「なに言ってやがる……!俺はお前なんて知らねぇ!」 ロディ「忘れたというならばそれでいい。だが、復讐は果たさせてもらうぞ」 訳の解らないことを言うのとほぼ同時。 ロディエルは小さな球を取り出すと、それを親指で弾いた。 ───パガァンッ!! 悠介 「くはっ───!?」 気づいた時には俺は吹き飛ばされ、再び芝生に倒れた。 指弾……ってやつか……? ……っ……くそっ!頭がグラグラしやがる……!! 意識が……─── ───……どさっ、と倒れた悠介を横目にハフゥと溜め息。 正直、ここまであっさりとやられるとは予想外でした。 悠介ってばやっぱり平和ボケしてますね。 孫梧飯ほどではないが、これは大いなる弱体です。 そう……スッパリ言うならば、よくこの弱さでゼノを撃退できたもんだって思うくらい。 ロディ「……なんだ?気絶したフリなどで私が満足するとでも思ったか?     起きろ、起きて私と戦え」 いやはや悲しいねぇ。 俺が死んだ方が悠介は強く生きれるってことだよね? こりゃあやっぱりこの時代の悠介を連れてくるか、 それとも悠介にラグナロクを使えるようになってもらうしかないかねぇ。 それにしても……ああ情けなや……。 この時代の悠介だったら、あれしきの攻撃二発くらったところでビクともしませんよ? やっぱ平和は人を弱くしますな。 争いが無くなれば人が弱くなることと同じことですじゃ。 虚無僧猫「そこゆくダンディさん。今ンところはこれで退いてくれませんかね?」 ロディ 「……?断る。私はそいつを殺して初めて自由になれる」 虚無僧猫「殺すと来ましたか……残念ながらそれは許される行為じゃござーませんよ?」 ロディ 「珍妙な姿……小さな体のようだが解る。貴様は闇の者だな?      私に退けと謳うならば実力を行使するのみで謳え」 虚無僧猫「あらら……」 やっぱりですよ。 強者ってのはどうしてこう戦うことでしか解決出来ませんかねぇ。 虚無僧猫「よろしい。では拙者が少しだけ相手をいたそう。だがまずは異翔転移」 月空力で気絶者を早々にヒュキンと退散させる。 まったくもって情けなや。 虚無僧猫「さあ、どこからでもかかってきなさい」 ロディ 「………」 背負っていた巨大な筒を開け、ロディエル氏は変わった形の銃を取り出した。 虚無僧猫「亜人殺しの光銃か。エドガーを仕留めたっていう」 ロディ 「知っているのか」 虚無僧猫「エドガーから聞いたことがあってね。      銀色の銃身に、銀色の弾丸を放つっていうアレだろ?」 ロディ 「それはもう1000年以上前のものだ。      かつて吸血鬼殺しを生業としていた租、      ガルハイン=ブラッドベートが開発したものをさらに改良した銃。      それがこの、闇を纏う者の全てを殺す銃……フルウノングンだ」 虚無僧猫「名前なんぞどうでもいいけどね。ま、よいコテ。やろうか」 ロディ 「祭りだ(ファイエル)」 お互いに向かい合ってから走り出した。 ただ、目の前の敵を仕留めるだけのために。 虚無僧猫「お手並み拝見ブラスト!」 ドチュンッ!───パァンッ!! 虚無僧猫「あら……」 撃った光弾は翳された手によってあっさりと消された。 闇が効かないというのはホンマらしいです。 属性が光だとしても、結局攻撃系月操力には闇が混ざってるようです……。 だが、どうやらあの銀色のグローブの力で消されていると見た。 ようするにだ。 虚無僧猫「……狙うは“排撃(リジェクト)”か」 直接ブチ当てればいい。 問題があるとしたら、どうやって懐に入り込むかだな。 これだけ堂々としてるヤツだ、自分の弱点を知らないとは思えない。 転移して一気に懐に……いや。 飛翔転移も月操力に過ぎない。 最悪、出現する瞬間にあのグローブで消される可能性もある。 虚無僧猫「ああもう考えたって仕方ねぇ!」 考えるのは得意じゃあねぇザマス! 俺は地面をしっかりと踏んだのち、弾けるように地を蹴って走った。 それを確認してからでも余裕があるように、ロディエルは銃身を俺に向ける。 どれだけ俺の足が早かろうと、弾丸の速度には敵わない。 虚無僧猫「ならどうするか?───こういうのはどうでしょう」 ちと消費がデカイが─── 虚無僧猫「ザ・ワールドォオオーーーッ!!───時よ止まれ!!」 目を深紅にさせて能力を発動させる。 刹那、全ての景色の色と音は消し飛び、その世界で動ける存在が俺だけになる。 俺はすぐさまに駆け出し、止まった『風』が動きを鈍くする世界で手を構えた。 対象は目の前の男。 意識の集中を爆発させ、その胸に手をついた。 虚無僧猫「“排撃(リジェクトォッ)”!!!」 バガァアンッ!!! 月壊力を発動。 重い月操力を二つ使うことで疲労が体を覆うが、そうも言ってられなかった。 理由は───こいつの服の質にありやがった。 虚無僧猫「うわコイツ汚ねぇ!!」 その服に魔払いの銀が縫いこまれてやがったのだ。 当然、魔の属性の高い月壊力は無効化され、俺は消費しただけ。 既に時を止めているのも限界……ならば! 虚無僧猫「ホアタァ!!」 ボゴシャアッ!! 顔面を一発殴っておきました。 それが終わるとさっさと離れ、時を元に戻す。 虚無僧猫「───そして時は動きだす」 メキョッ! ロディ「うぶっ!?」 リジェクトの『衝撃』のみがロディエルを襲う中、殴った顔面がメシャリとヘコんだ。 やはり時を止めたあとの拳は一番威力高いかもしれん。 ロディ 「……なにをした」 虚無僧猫「拙者には黙秘権があり、      自己に不利と思われる証言についてはこれを拒否することが認められてます。      よって黙秘!失せろ!」 ロディ 「………」 あらヤバイ。 ロディエルさんたらマジな目つきで銃構えましたよ? じょ、冗談じゃあねぇぜ!? もしあのグローブや服がフルウノングンと同じ材質で作られてるシロモノだとしたら、 あんなんで撃たれたらとんでもないことになりそうじゃわい! 内側から蝕まれて、魔が殺されて、当然月の家系である肉体はボロボロに……! 虚無僧猫「よし、ここは戦術的撤退ぞ」 付き合ってられません。 ここはやはり創造の理力があった方が───あ、いや……待てよ? 虚無僧猫「……出来るかどうかより……むしろ一番使いたくなかったアレなら……」 ……うむ、或いはなんとかなるかもしれん。 でもなぁ、ほんに使いたくないしなぁ。 虚無僧猫「どうするよ……このまま逃げるか、足掻いてみるか」 そげなものは考えるまでもない。 戦いますよ?足掻きますよ? 虚無僧猫「ではいきましょう!!“冥府誘う深淵の災い(ハデスディザスター)”!」 鎌を出現させて構える。 カタは一瞬でつくだろう。 まあその、上手くいけば……ですけどね? 虚無僧猫「チョエエエーーーーッ!!突貫!!」 天蓋をワサワサと揺らしながら走る。 予想以上に安定性が無いね、天蓋って。 虚無僧猫の姿って実戦にはてんで不向きということが解った瞬間でした。 ロディ 「発射(フォイエル)!!」 ガガンッ!!ガンッ! 銀の弾丸が放たれる。 俺はそれに対して月空力の微弱発動させて、 『全ての速度をゆっくり』にすることで避けた。 虚無僧猫「そう、単純なことだったのだ!フフフ、高松くん!この勝負は僕の勝ちだ!」 鎌を振り上げ、ただひとつをイメージした。 虚無僧猫「モードチェンジ!“運命破壊せし漆黒の鎌(デスティニーブレイカー)”!!」 唱えるとハデスディザスターが即座に形を変える。 美麗なる漆黒色の鎌がこの手の中に戻ってきたのだ。 ほんに、出来れば使いたくなかったんですがね。 だってレオっぽくて嫌じゃない。 虚無僧猫「我、虚無僧猫の名において!      ロディエルが身に着けている『魔払い』には、      魔が効かないという既定を破壊する!」 刹那に漆黒が閃く。 その闇に照らされた瞬間、ロディエルの装備は意味を為さなくなった。 ロディ 「……?なにをした」 虚無僧猫「秘密ですじゃ!───ヴッ……」 あ、あらいやだわ……眩暈……? デスティニーブレイカーって結構精神力使うのね……! そ、そりゃそうだよね、運命とか決められ事を破壊するのって、 創造を実現させるのと同じくらい世界に背いてるものね……。 しかも多分、効果時間ってのがありそうだ。 うう、いいなぁラグナロクは。 羨ましいよ。 あれほどの絶対空間があろうか?いや無い……反語。 虚無僧猫「ヌウウ……!一撃でカタを……ア、アルファレイド……」 ビキッ!! 虚無僧猫「いたやぁああーーーーっ!!!」 ぐああダメです!! アルファレイド使えるだけの精神力も月操力も残ってません!! 虚無僧猫「しからば───ブラストッ!!」 ドチュンッ!! 威力はちんまいが、人ひとり倒すのならばこれで十分……! さあどうか!? ロディ「……?いまさらこのような弱い力を」 ロディエルさんがグローブを身に付けた手を翳す。 だが───ボゴォオンッ!! ロディ「なにっ───!?」 翳した手は、腕の付け根に衝突した光に腕ごと弾かれた。 つまり……ロディエルさんの腕が吹き飛びました。 ロディ「ガッ……!ガァアアアアアアッ!!!」 う、うむ!やはり魔払いの者というだけで、特別化け物とかそういうことはないらしい! 体は生身の人間───イケルぜ!? 虚無僧猫「ほっほっほ、小僧ォォォォ……よォも生意気な態度取ってくれたのォォォォ」 ケンシロウさながら、猫の手の指をコキコキと鳴らしながら、 肩あたりを押さえるロディエルに近づく。 勝ったッッ!!俺の勝ちだッッ!! でも、子供の頃に習っただろ? 『相手が勝ち誇った時、そいつは既に敗北してる』って。 ロディ「くっ───舐めるな!!」 ロディエルさんは吹き飛んだ腕を拾うと肩口に付け、 その上から文字が連ねられた布を雁字搦めに巻きつけた。 巻き終えると傷口の部分に指を這わせてブツブツと呪文のようなものを口走り─── それで、血は完全に止まりました。 虚無僧猫「ゲッ───ゲェエエーーーーーッ!!!!」 なんと!ロディエルさんは千切れた腕をくっつけ、ワキワキと動かして見せたのです! すげぇ!人の身でありながら治癒を!?アンタすげぇよ! ロディ「不浄を清める誓いの十字をここに……!     我は、眼前に立ち塞がる邪なる者を打ち滅ぼす絶対の正義なり!“禁ずる(エイメン)”!!」 バァンッ!! 虚無僧猫「へっ……?」 首に下げたロザリオを握り、ロディエルがそう唱えた瞬間だった。 なんと俺の腕が吹き飛び、先ほどのロディエルと同じような状況になったのだ。 つーか…… 虚無僧猫「アイヤァアアアアーーーーーーーーーッ!!!!」 大激痛!! 痛い!こりゃ痛い!! ち、ちくしょう!こりゃあれか!? 傷つけられたことをそのまま相手に返すまじないかなんかか!? おお痛い!だが俺だって吹き飛んだ腕くらい治せるわい! 虚無僧猫「ベホイミ♪」 パアアアア…… 千切れた腕を肩口につけ、月生力でハイ安心♪ 虚無僧猫「お、おのれ小童が!よくもやりおったな!?」 つーかね!?この人すげぇヤなタイプ!! 戦いづらいったらありゃしない! 逝屠みたいなヤツならゴリ押しでなんとかなりそうなものを! なんとかブッチメてやりたいところだが、もう月操力が飛翔転移分しか残っとらん。 虚無僧猫「………」 ロディ 「………」 目が合った。 虚無僧猫「きょっ……今日はこれくらいにしといたるわぁあああーーーーーっ!!!!!」 今の状態でまともに戦おうものなら……負けるとは思わんが、ボコられること間違いなし。 考えに至ったらすぐさま実行! 俺は月空力を発動させて逃走を図った。 ───……キィンッ! 虚無僧猫「グ、グウウ……!!」 レイヴナスカンパニーに転移した俺は、 完璧に癒しきれてない腕を押さえてその場に倒れた。 虚無僧猫「グムム……」 隣には気絶した悠介と、悠介の上に乗って俺を見てる紅花。 ……どうやらイメージした通り、メイさんの牢屋に飛べたらしい。 いやしかし……あー、ダメだぁ。 やっぱ死神でもないのに鎌を使うのって精神力使うようですな……すっげぇ疲れたよ。 紅花  「あきえもんさん……?」 虚無僧猫「すまん、ちょいと寝るわ……」 パドラック……僕もう疲れたよ……。 などとまあ、くだらんことを考えつつ、俺は意識を失ったのでした。 ロディエルの始末は悠介に任せた方がよさそうです、マジで。 Next Menu back