───UnlimitedBlackOrder-No.06全ての序章───
【ケース07:過去悠介/記憶の重層は植物人間状態さえも発動させるらしい】 悠介 「……ン」 ふと目が覚めた。 目に映る景色は……見覚えの無い───いや、見覚えならある。 『俺自身』は無いのに、でも確かに俺の中にこの景色を見た記憶がある矛盾。 悠介 「ッ……つ……!」 瞬間的な頭痛。 だが確かにそれは瞬間的なもので、すぐに消える。 悠介 「なんだ……?」 生きてきた歴史と辿ってきた歴史が滅茶苦茶だ。 これは───そう、まるで…… リヴァ「……目覚めたか」 悠介 「あ……リヴァイア?」 リヴァ「……ん。どうやら記憶の移植は成功したらしいな」 悠介 「移植……?」 なに言ってるんだ……?って、ああ……なんか納得できた。 悠介 「……あのさ。俺の中にこの時代の『晦悠介』の記憶があるんだけど。     これ、リヴァイアの仕業か?」 リヴァ「ああ。違和感はないか?」 悠介 「ありまくりだ……。     だってのにお前のこと『リヴァイア』って呼ぶことが自然に思えるし……」 リヴァ「ああそれで構わない。移植したのはわたしの独断だからな、文句は無い」 悠介 「いや……そういう問題じゃなくてだな……。     リヴァイアさ、人の精神とか記憶に干渉しないんじゃなかったのか?     そんなこと言ってたって記憶もあるんだけど」 リヴァ「……悠介」 ポム。 なにかは知らんがリヴァイアが俺の両肩に手を置いて見つめてきた。 リヴァ「お前は、危機的状況にそんなことを気にする男だったか?」 悠介 「じゃあお前はこういう質問ごとから逃げるような女だったか?     ていうかそもそも干渉云々をするヤツだったか?」 リヴァ「………」 悠介 「………」 リヴァ「危機に必要なのは信念じゃないだろ!なに言ってんだばか!!」 悠介 「逆ギレするな!!キレたいのはむしろこっちだぞ!?     あぁもうどうすんだ!頭ン中にルナと結婚したことや、     深冬に竹トンボを教えたこととかがいろいろ流れてきてるぞ!?」 リヴァ「記憶と経験を移植したんだから当たり前だろ。いい加減受け入れろ馬鹿」 悠介 「今起きたばっかりで『いい加減』もなにもねぇーーーーっ!!!」 リヴァ「あーうるさい。いいから準備しろ、これからお前を、お前の時代に送る」 悠介 「なんでだよ───って、まさか」 リヴァ「そのまさかだ。悠介の記憶を移植したんだ、解ってるだろ?」 ───ロディエル=D=シュトロヴァイツ、か。 月操力や闇系のものをことごとく無効化しやがる嫌なヤツだ。 移植された記憶が言ってる……あいつは面倒なヤツだ、と。 悠介 「って待て。彰利をこのままになんかしておけないぞ?     こいつは俺のためにラグナロクコピーしてこの状態になったんだ。     それを放ってなんて───」 リヴァ「そっちのことはこの時代の悠介と、聖とみさおがやる。     お前が心配することじゃない」 悠介 「親友心配しない馬鹿は居ない。誰が心配しようが自由だろうが」 リヴァ「……まったく、この時代の悠介といい……     なんだって『晦悠介』は検察官のことになるとしつこく食い下がるんだ」 悠介 「そんなもん、親友だからに決まってるだろうが」 リヴァ「……はぁ、そうだな。訊くまでもなかった」 大袈裟な溜め息を吐いて、リヴァイアは虚空にゲートを開く。 が……心無しか顔色が優れない。 悠介 「大丈夫か?顔色が優れないみたいだけど」 リヴァ「……なんでもない。弱齢の時期にあるのに式を使いすぎただけだ。     じきによくなる、気にするな」 悠介 「……お前の記憶の中の晦悠介は、そう言ったヤツをほっとくヤツだったか?」 リヴァ「…………お前、嫌なヤツだな」 悠介 「お互いさまだ。お節介なのはそれだけ彰利との付き合いが長いってこったろ」 リヴァ「……まったく」 リヴァイアはつまらなそうに頭を掻いた。 悠介 「この時代の俺の記憶じゃあ、ロディエルは創造の理力に弱いようだから。     お前はここで休んでろ、どうしてもダメになったら助けでも呼ぶさ」 リヴァ「なに……?待て悠介、お前は───」 悠介 「聞く耳持たんっ!」 リヴァ「なっ───」 リヴァイアの声を無視してゲートをくぐった。 ああ、当然時間軸が違えば声が届かないことくらい知ってる。 だが彰利のために何かをしようってヤツを、俺はやっぱり嫌いになれないわけで。 だから───こっちは俺だけでなんとかしよう。 それくらい出来なけりゃあ目も当てられないから。 【ケース08:ロディエル=D=シュトロヴァイツ/銀色の闇】 長いバッグが揺れていた。 少年はその世界に佇みながら、空港の景色を眺めている。 騒がしいその世界は、少年にとってどこの世界とも見分けがつかない気がした。 いつからか自分の好みも嫌いなものも解らなくなった少年は、 その世界が自分が住んでいた場所とは違うことにすら感心を持たなかった。 ロディ「───……」 ただ黙って歩く。 邪なるものが集うと謳われている、その場所へ。 夜が訪れるにはまだ時間がある。 それまでにはその場所へ辿り着く決意を固めながら一歩を踏み出した。 その時、どこからか辿り着いた気紛れな風が、少年の銀色の髪を揺らした。 寒気がするほどに整った顔立ちと、銀色の髪の少年。 名を、ロディエル=D=シュトロヴァイツといった。 ロディ「ッ……!」 少年の腕が躍動した。 黒い包帯で雁字搦めに巻かれたその腕が、少年の意志とは関係無く。 ロディ「まだだ……」 その躍動を片方の腕で握りつぶすように押さえると、しばらくして躍動は止まった。 ロディ「っ……、は、ぁ……」 ───少年は歩いていた。 その度に掛けているサイズの合わない眼鏡が傾く。 それを度々直して、少年は歩いていた。 揺れる銀髪が、陽光を浴びて鋭利な刃物のように輝いている。 片手に背負うように持ったバッグは、何本もの槍でも仕舞ってあるかのように長かった。 道行く人々が彼を見て振り返り、感嘆にも似た溜め息を吐いていた。 幼さは残るものの、その整った顔立ちと綺麗な銀髪がその視線を集めていた。 ロディ「あと少しだよ、姉さん……。この世界に居る闇は、僕が全て消してあげる……」 かつて、闇に肉親を殺された少年の目が狂気に満ちる。 少年は復讐のために自らが嫌う闇に堕ちた。 憎しみしかなかった少年は光には至らず、ただ堕ちていったのだ。 だがそれでも闇を狩る者としての力は尋常ではなかった。 脳裏に焼きついているものは目の前で殺された姉の姿のみ。 それを忘れぬ限り……いや、闇の全てを滅ぼさない限り彼に救いは訪れないのだろう。 ロディ「月詠街……死神が集う街、か……フフッ……滅ぼしてあげるよ、全部……」 少年はおよそその年齢からは考えられないくらいの形相で笑った。 その度に、黒い布に包まれた腕が蠢く。 ロディ「まだだ……もう少ししたら喰わせてあげるから……」 少年の左腕には混沌が存在する。 今まで殺してきた闇の怨念、肉体の全てをそこに封じ込めているのだ。 闇は下手な光で対抗するよりも、闇同士で殺しあった方が楽だからだ。 そのために自身を闇へと堕とした。 闇を滅ぼせるなら、その先の未来で自分が飲まれようと本望だ。 ロディ「さあ、()
くんだ闇の腕。     その力で、この世界に居る半端な闇を完全な闇へと変えろ。     そうすれば───僕がまた飲み込んであげるから」 ───その災いは、遙か昔に異国から流れてきたものだった。 それは彼の先祖が封印したらしく、 少年の姉が殺され、少年が復讐を誓うまでずっと封印されたままだった。 その封印を解いたのがこの少年。 少年は災いに飲まれ、左腕を混沌に蝕まれることとなった……が。 逆にそれを利用し、数々の闇を取り込んできた。 ロディ「皮肉だね。こんな形で自分の故郷に戻ってくるなんて。     そう思わないかい?時の番人」 ……そう、その災いとはかつて、遙か過去に彰利と悠介が破壊した災い。 風太に呪いを齎し、その血筋を呪いで苦しめたその存在そのものである。 ……消えてなどいなかったのだ。 逆に憎しみをもったまま、この世界に生き残っていた。 ロディ「……ああ、ああ解ってるさ。利害が一致してるんだ、拒む理由はないよ」 そうなれば復讐は当然。 未来の時間軸、悠介が創造の理力で撃退したロディエルとは違う力を持つ者は、 その腕とともに高らかに笑ったのだった。 【ケース09:未来悠介/その憧れを潰された男】 ───……。 みさお「あぁ……長い森ですね……ほんとにこっちでいいんですか……?」 悠介 「知らん」 みさお「えぇっ!?」 森の中を歩くこと数十分。 疲れはしないが飽きてきたみさおに、即答で返事を返した。 悠介 「よし、それだけ素っ頓狂な声あげられればまだまだ大丈夫だろ」 みさお「うーわー、タフですねぇ悠介さん……」 悠介 「馬鹿おまえ、ファンタジーにトキメかない男は居ないぞ?     この空気にこの雰囲気、さらには現れる暴君。ほら、わくわくするだろ?」 みさお「……顔が思いっきり子供に戻ってますね……」 聖  「楽しそう……」 悠介 「これでモンスターでも出てきてくれりゃあ文句は無いんだが」 みさお「もっ……文句なんて大ありですっ!!好んでモンスターと戦う人が居ますかっ!」 悠介 「居るが?彰利なら絶対に歓喜乱舞するぞ」 みさお「あー……そうですね……そうですよねぇ……」 悠介 「いじけるなって、泣く子も黙る開祖の血筋が何を恐れる」 みさお「……あのですね。彰衛門さんに身をもって教えられましたけどね、     経験は才能で補えるものじゃないんですよ……?     才能を経験で支えるんであって、才能だけじゃなんにもならないんです」 悠介 「……ふむ」 まあ、あいつらしい考えかもしれない。 聖  「モンスター……パパ、喜ぶんだ……。パパが喜ぶならわたしも───」 みさお「だ、だだだだめぇっ!!聖ちゃんはそんなことしなくていいの!」 悠介 「………」 みさお「……な、なんですか?」 悠介 「い〜や、べつに?」 何気なく苦笑する。 みさおはどうにも聖に対して過保護だ。 ああもちろん友達として接してる。 俺の言う『過保護』に当てはまるのは、『汚れて欲しくない』って部分での過保護。 つまり、必要以上に友達やってるってことだ。 ……そこまで構いすぎて、鬱陶しく思われなきゃいいが。 モモンガ「ギチュッ!ギチュウ!!」 悠介  「───うん?どうしたモモンガ」 モモンガ「ギチュウ!ギチュウ!!」 悠介  「…………ギチュウじゃ解らんが」 突如、肩に乗っかっていたジェットモモンガが、森の先を見ながら騒ぎ出した。 ……ちなみに他のモモンガにはなんとか帰ってもらったから、今はこいつ一匹である。 みさお「うわ……なんだか嫌な予感が消えません……」 聖  「う、うん……わたしも……」 悠介 「モ、モンスター……?モンスターか!?」 みさお「子供ふたりが怯えてる中で、目を輝かせないでくださいっ!!」 悠介 「馬鹿おまえっ!ファンタジーにモンスターが出ないで何が冒険だ!」 みさお「わたしたちは冒険しにここに来てるわけじゃないでしょう!?」 悠介 「いちいちもっとも!だが男としてモンスターを一目見ずには居られまい!     彰利だって絶対許す!文部省認定!」 みさお「絶対!?普通こういう場合は『きっと』とか言うでしょう!?」 悠介 「知らん!!」 みさお「わぁああっ!!ゆ、悠介さん!     いつもの冷静で理知的な悠介さんに戻ってくださいぃいいいっ!!」 悠介 「大丈夫だ!俺は冷静だ!竹の槍と鍋の蓋と薬草が出ます!」 シャキィンッ!! 『ゆうすけはたけのやりと、なべのふたをそうびした!!』 みさお「冷静ならもっとマシな武具出してくださいよ!!」 悠介 「援護は頼むぞ僧侶!」 聖  「え───は、はいっ!頑張りますっ!」 みさお「聞いてくださいっ!って聖ちゃぁああああああんっ!!!!」 悠介 「ボーッとするな魔法使い!」 みさお「まほっ───!?ちょ、ちょっと待ってください!     勇者ごっこもいいですけど───ってほんとは全然よくないですが、     自分を勇者に喩えるならもっといい武器をですね!!」 悠介 「勇者?フッ……なにを馬鹿な。俺は遊び人だ」 みさお「あぁあああっ!最悪だぁああーーーっ!!!     うわぁあああん悠介さんがおかしくなっちゃったよぉおおーーーっ!!!!」 ガサ───ガササササササッ!!!! みさお「わっ、わっ……な、なにか来ますよっ!?」 みさおの声に振り返る。 と───確かに遠くの方から草を掻き分けるような音が聞こえ、それが近づいてくるのだ。 俺はそんな状況を、どこかわくわくした状態で受け取り─── もうひとつ竹の槍を創造して、みさおに渡してこう言った。 悠介 「いけ、矢島。じゅうまんボルトだ」 みさお「誰ですか矢島って!!」 凄まじい怒号だった。 聖     「───来ますっ!」 悠介&みさお「───!!」 聖の声とまさに同時。 草を割った影から、巨大な影が飛び出した───!! みさお「か、かかかかか……!!かまっ……カマ、ドウマ……!!?」 それは巨大なカマドウマだった。 悠介 「……よりにもよって、虫型のモンスターかよ……。     どうせならオークとかゴブリンとかが良かったんだが……」 みさお「冷静に残念がってる場合ですかぁっ!!」 悠介 「落ち着けってみさお。巨大ゴキブリじゃないだけマシだろ?」 ───ビタッ。 悠介 「うん?背中になにか……」 みさお「───……」(ビシッ……) 聖  「…………」(ほえ〜〜……) 悠介 「…………?」 背中に何かが張り付いたような感触。 どうせモモンガだろうと踏んでいた俺は、石のように固まるみさおと、 珍しいものを見たといった感じの聖の顔を見て……それがモモンガじゃないことを悟った。 悠介 「えーと……落ち着こう。手鏡が出ます」 ポムッ……。 手鏡を創造する。 黄昏はまだ使えそうにないが、軽いものならまだまだ創造出来そうだ。 悠介 「す〜〜はぁあ〜〜……ハイッ!!」 深呼吸してから一気に手鏡を覗いてみた。 すると……ギチギチと動く長細い触角と、どっかで見たようなツヤツヤなボディが…… 悠介 「おわっ───おわぁあああああっ!!!!!!」 その名、コックローチ。 遙か昔より世界に存在するという超生命力を持つ生き物───!! 悠介 「バ、バックエルボォーーッ!!」 ギュルッ───ゴシャアッ!! ゴキ 「ギィイーーーーッ!!!」 悠介 「おわぁああああっ!!!!喋ったぁああああああっ!!!!」 巨大ゴキにエルボーした俺も俺なら、ギィーーーッ!!と鳴くゴキもゴキだった。 だがなんとかゴキを背中から剥がした俺に、空から降り落ちるものがあった!! 悠介 「なっ───ってカマドウマァアアーーーッ!!?」 夢も希望もありゃしない。 悠介 「俺の望んだファンタジーはこんなもんじゃねぇえーーーーっ!!!」 竹の槍を引き絞るように握る。 次にそれを捻るように突き出し─── 悠介 「“螺旋は在りしを突き穿つ(スパイラル・エア)”───!!」 ヒュッ───パガシャァアアアッ!!!! 槍の先から放たれる捻れた空気が巨大カマドウマを破壊する。 ゴキ 「ギッ!?」 悠介 「……よくも『男』の夢をこんな形でブチ壊してくれたなてめぇ……!!     覚悟───できてんだろうな……!!」 ゴキ 「ギ!?ギギッ!!?」 槍の持ち方を打突から投擲に変える。 滅ぼし方は決まった。 八つ当たりだろうが構わん。 ファンタジーにおけるモンスターとは、 男の冒険に対する夢の中ではそれほど(たか)いものなのだ。 ゴキ 「ギィイーーッ!!!」 死を予感したのか、ゴキの野郎が逃げ出した───が、逃がす気などさらさら無い。 悠介 「逃がすかァアアアアーーーーーッ!!!!!     男の夢を抱いて死ねェエエエーーーーッ!!!!」 振り被った槍を投擲する。 家系の力と怒りの全て、さらには冒険に憧れる男達の夢と希望を乗せた竹の槍が、 空気を螺旋に穿ちながら逃げ出すゴキブリへと向かい───ギパァアンッ!!!! ゴキ 「ゴゲェッ───……」 その存在を、森の木の数本とともに穿ち、捻り殺した。 悠介 「はぁっ……はぁっ……!!」 みさお「う、わ……うわぁ……!竹の槍なのになんて威力……!」 悠介 「───みさお、聖っ!!」 みさお「はっ、はひっ!?」 聖  「はい」 悠介 「チャイルドエデンを探しながらもっとまともなモンスターを探すぞ!!     これは男たちの夢であり願いだ!!拒否は許さん!!」 みさお「えっ───えぇええええええええっ!!!!!?」 悠介 「落胆させんなファンタジー!!オークだ!ゴブリンだ!ドラゴンだぁああっ!!」 聖  「あ、あの……モンスターさんを見つければ、     パパも喜んでくれるんですよ……ね?」 悠介 「当然だ!歓喜乱舞間違い無し!」 聖  「───!が、頑張りますっ!」 みさお「いやぁあああああ聖ちゃぁあああああああんっ!!!!!」 喚き散らすみさおを無視するように駆け出した。 待ってろ彰利! すぐにオークかゴブリンを持って帰るからなっ!!(注:目的忘却状態) 【ケース10:簾翁みさお/とうとう奴もイカレちまった】 ───森を突き進むこと数十分。 その遠くの景色に、確かな光を見い出しました。 悠介 「よし明かりだ!森の外に出れるぞ!」 聖  「は、はいっ」 みさお「うう……悠介さんと聖ちゃんが壊れちゃったよぅ……」 悠介 「人聞きの悪いこと言うな、俺はしっかりと冷静だぞ」 みさお「うう……」 聖  「行コ、みさおちゃん」 きゅっ……と、聖ちゃんがわたしの手を握って引いてくれる。 ああ……今はこのやさしさが逆に悲しいです……。 悠介 「よし、まずは街を探してモンスターの出そうな場所を聞いて……」 悲しみを抱いているわたしを余所に、 悠介さんはブツブツ言いながら森の外を目指して歩く。 ああもう……完全に目的忘れてます。 モンスターの出そうな場所を探すのが目的じゃなくて、 チャイルドエデンを探すのが目的の筈なのに。 みさお「あの……悠介さん?」 悠介 「いや、それとも……───ん?どした?」 ズリャァッ─── みさお「あ」 聖  「え?」 悠介 「───……ぉおおおぉおおおおおおっ!!!!!?」 唖然。 森を抜けた悠介さんの身に待っていたのは、高い高い崖でした。 わたしと聖ちゃんは落下してゆく悠介さんを慌てて目に収め─── 悠介 「くっ───カモーーーンモモンガ!!」 悠介さんが口笛を吹く。 すると───森の木からあれよあれよという間にモモンガの軍勢が現れて、 悠介さんの体にくっついてゆく。 悠介 「超変身!!ジェェーーーットモモン」 ドッパァアーーーーーンッ!!!!! 悠介 「ギャアアアーーーーーーーッ!!!!!!」 みさお「あ」 聖  「あ……」 変身文句を叫ぶ中、悠介さんはずぅっと下の方にある川に落下した。 当然モモンガはその瞬間に逃走したが、悠介さんはそうはいかなかったらしい。 聖  「あ、あ……」 みさお「……行こう、聖ちゃん。     きっとあの悠介さんは、わたしたちの知ってる悠介さんじゃなかったんだよ……」 聖  「で、でも……パパが喜んでくれるなら、モンスターさん探さないと……」 みさお「……あのね、聖ちゃん?モンスター探すよりもまず、     彰衛門さんが目を覚ましてくれなきゃなんにもならないでしょ?」 聖  「あ……」 みさお「だから、ね?チャイルドエデンを探そ?     モンスターさんは彰衛門さんが目覚めた時に、一緒に探せばいいんだから」 聖  「でも……でもわたし、パパを驚かせたくて……」 みさお「───……」 そりゃあ、目覚めた時にオークとかゴブリンが居たら誰でも驚くだろうけど。 でも───ああもういい子だなぁ聖ちゃん……。 彰衛門さんに育てられたのに、どうしてこんないい子に育ったのかがまるで謎ですよ。 みさお「聖ちゃん?彰衛門さんはきっと───     ううん、絶対に聖ちゃんと一緒にモンスターを探す方が嬉しいに決まってるよ。     だから、今はモンスターのことは忘れよう?」 聖  「…………うん」 残念そうに呟く聖ちゃん。 ……そんな聖ちゃんが、思わず抱きしめたくなるくらいに可愛かった。 あ───言っておきますが、わたしにそっち側の趣味はありませんよ? 可愛いものを可愛いと言うのは当然の感想というものですから。 って、誰に言ってるんでしょうね、もう……。 みさお「じゃあ行こっか。ずっとあっちの方に街みたいなのがあるから、     まずはそこに行ってみよ?」 聖  「うん───月空力」 フワッ…… 聖ちゃんが月空力で空中に浮く。 わたしもそれに続くように月空力を発動させて宙に浮いた。 既に流れていってしまった悠介さんには申し訳ないけど、 頭を冷やしてもらった方がいいだろう。 聖ちゃんには聞こえないようにそっと溜め息をひとつして、 わたしと聖ちゃんは手を繋いだまま、その街へと飛び立った。 【ケース12:簾翁みさお(再)/ブレイバー聖さん】 ───…………人集技工の街/アントエンハンス みさお「うわぁ……大きな街だねぇ……」 聖  「うん……すごい……」 街へと辿り着いたわたしと聖ちゃんは感嘆の声を漏らした。 だってこの街、本当にすごい。 とても人が作ったとは思えないくらいに凝った作りをしてる。 地界じゃ考えられない技工だ。 しかも、もっと驚いたのがこの街に来るまでの道のりだ。 えっと……うん、この言葉が一番合う。 『一面自然』 無駄な建物一切無く、ただ草原と平野が続いている。 本当にゲームの中みたいな世界なのだ。 歩く人たちはローブみたいなものを着た人や、 地界じゃ絶対に見れないようなものを着てる人まで居る。 でも一番『ああ』って頷けたのは、鎧……プレートメイルを装備している人を見た時。 本当にファンタジーだなぁって思えた。 青年 「おっちゃん!剣出来てるっ!?」 鍛冶屋「おうぼうず、出来てるぜ。ホレ」 青年 「サンキュー!よおっし、俺がこの世界の勇者になってやる!」 鍛冶屋「スライムにやられるのがオチだな」 青年 「へへんっ、言ってろいっ!」 鍛冶屋「ああ、冒険に出るんならランクライセンスの発行、忘れるなよ」 青年 「もう貰ってるって。まだなんのランクもないけど、     すぐにスライムハンター以上に上がってやるさ!」 鍛冶屋「はっはっは、ランク外のスライムルーザーにならないように祈っててやるよ」 鍛冶屋もあえば武器屋もある。 勇者に憧れる人も居れば、魔術を極めようとしてる人も居る。 ……いいな、この世界は『目標』に溢れてる。 地界みたいに自堕落的に生きてる人は本当に少なそうだ。 聖  「あの……らんくらいせんすってなんですか?」 鍛冶屋「ん?なんだい嬢ちゃん───っと、その服……もしかして外から来た子かい?」 みさお「え───あれぇっ!?」 それは驚愕でした。 すぐ隣に居た筈の聖ちゃんが、いつの間にか鍛冶屋さんに話し掛けていたのですから。 鍛冶屋「ま、いいや。俺たち武器職人は旅人の味方だ。     どうせ今は暇だしな、教えてやるよ」 聖  「あっ……ありがとうございます」 鍛冶屋「お……はっはっはっはっは!!     こりゃまいった、今時恐ろしいくらいに礼儀正しい子だ!     気に入ったぜ、なんでも聞いてくれ!」 聖  「は、はい、それでは『らんくらいせんす』のことを……」 鍛冶屋「よしきた。いいかい、ランクライセンスってのは『経験値』みたいなもんだ。     そいつがどれだけモンスターと戦って勝ったかが記されるっていう、     魔導魔術で出来たライセンスカードだ。     それをつけないと冒険者としては認められない。     ああ、別に自分で倒した数を書くんじゃあねぇぞ?     倒したモンスターの強さ、数が自動的に刻み込まれるんだ」 聖  「そうなんですか……あ、それではモンスターさんに負けた場合は……?」 鍛冶屋「自分のランクより弱い敵に負ければランクダウンは避けられないだろうな。     それとは逆に、自分のランクより高いモンスターを倒せば、     一気に上位ランクに行ける。まあちと無茶だろうがな」 聖  「そうですか……」 鍛冶屋「お嬢ちゃん、こんな当たり前のことを知らないとこを見ると……     空界に来るのは初めてだな?」 聖  「え───は、はい」 鍛冶屋「いやぁ懐かしいねぇ、外の世界から人が来るなんてどれくらいぶりだ?     外からくるヤツは目が輝いてるから好きだぜ?     『こういう世界に憧れてた』ってのが一目で解る」 聖  「そうなんですか」 鍛冶屋「ああ。まあ、大体が金持ってなくて武器も買えないヤツばっかだったがな。     そういうヤツは誰かの手伝いをして金を稼いでる。     丁度ポリットイーターのフォード=ゼルブライトと一緒に居る小僧がそうだった」 聖  「………」 ……えーと……どうしよう。 聖ちゃんてば話に夢中になってる。 今なにを言っても無駄だと思うし、 無理矢理引き剥がそうものなら嫌われかねない夢中っぷりだ。 みさお「はぁ……いいや、折角だからわたしも話を聞こ……」 興味が無いわけではないし、むしろ気になるほうだ。 それなら状況に流されるのも悪くない。 ……そう、目的さえ忘れなければ、ですけど。 ───……。 で……どうしてこうなっちゃうんでしょうかね……。 聖  「……!!」 隣では、ランクライセンスカードを首に下げた聖ちゃんが、 竹の槍を持って目を輝かせている。 ああえっと、聖ちゃんが持ってるのは悠介さんがわたしに渡したものだ。 つまりわたしは徒手空拳(としゅくうけん)。 手ぶらでてこてこと歩いていた。 ───で。何があったかというと、これまた単純な経緯だったりする。 鍛冶屋さんに気に入られた聖ちゃんは、 鍛冶屋さんが持っていたランクライセンスを譲ってもらったのだ。 それは鍛冶屋さんが知り合いの魔導魔術師に貰ったものらしく、まだ無名だった。 聖ちゃんはそれを首に下げることで、 晴れてこの世界で言うブレイバー(勇者のこと)候補に選ばれたのだ。 この世界では冒険をしてモンスターを狩る者のことをブレイバーというらしい。 ちょいとランクカードを見せてもらうと、 そこには『駆け出しブレイバー』と書かれていた。 ……思うんだけど、聖ちゃんに『生き物を殺すこと』が出来るんだろうか。 モンスターとはいえ、聖ちゃんが生き物を殺す場面なんて想像にも至らない。 もしかしてこのカード、とんでもなく無駄になるんじゃ─── 聖  「あ───“戦闘開始(セット)”」 みさお「え?」 ブツブツと考えごとをしている隣りで、 聖ちゃんがカードに戦闘開始を知らせる言葉を発していた。 その手には“不浄を滅する災狩の大鎌(ディザスティングヴァニッシャー)”。 視線の先にはスライム───ってうわぁ!やる気満々だ!! 聖  「たぁああーーーっ!!」 ヒュッ───ゾフィィンッ!! スライム「ピギューーッ!!」 ……ボシュンッ!! 斬られたスライムは微塵になって消えた。 みさお「え───?」 けど、そんな状況よりも聖ちゃんの行動に驚いていた。 何故って、自分の考えを思いっきり覆してくれたんだから、驚かない方がどうかしてる。 でも考えてみる。 聖ちゃんは元・災狩の死神だ。 それだけの災いを殺し、それだけの悲しみを知っている。 だからこそ、無闇に……それこそランクのためなんかに生き物を殺したりはしない筈。 けど───もしそれが。 その倒すべき存在が『災い』だったら? みさお「“不浄を滅する災狩の大鎌(ディザスティングヴァニッシャー)”で斬れた……」 ということは……全てかどうかは解らないけど、 この世界に居るモンスターは災いであって…… 聖  「……はふ」 ……なんだ、そっか。 結局聖ちゃんは生き物殺しなんかしてない。 『災い』に堕ちたものは『現象』であり、既に『生き物』ですらない。 そのことは、彰衛門さんとともに過ごした聖ちゃんが一番知ってる。 災いを救うことはその鎌で斬ることのみ。 ならばこそ聖ちゃんはスライムを斬ったのだ。 聖  「行こ、みさおちゃん」 みさお「……うんっ、聖ちゃん」 振り向くその顔が笑みであることをわたしは喜んだ。 ああ、聖ちゃんが彰衛門さんに懐くなんてこと、当たり前だった。 あの人は本当にいろいろなことを、聖ちゃんに教えてきたのだろう。 それこそ、実の父親以上にやさしく。 みさお「………」 今この子を支えてあげられるのは、隣りに居る自分だ。 ───今は、わたしが支えよう。 いつか、『何かを斬る』という小さな罪悪感が塊になった時、 その生き方は間違いなんかじゃなかったって……聖ちゃんが胸を張れるように。 みさお「よぉっし!目指せ!“真なる勇者”(トゥルースブレイバー)!!     どんどん行こっ、聖ちゃんっ!」 聖  「えっ───う、うんっ、頑張るっ」 聖ちゃんの持っている竹の槍を返してもらい、それを天に向けて突き出して声を上げた。 ───ファンタジーにわくわくしない人なんて居ない。 あながち、それは間違いじゃなかったのかもしれない。(……注:目的忘却状態) 【ケース12:未来悠介/流されて……泥沼】 ───……ドドドドドドド……パシャアンッ!! 悠介 「ぉおおおおおおおおおおおっ!!!!!???」 ふと気づけば目の前に滝。 しかも半端な高さじゃない。 ちなみに『目の前』ってのは、実際に目の前に『滝』があるのであって、 流れている自分の見ている先にあるのではなく、あくまで目の前。 つまり───落下している俺が見ているということ。 悠介 「死ぬ……死ぬな、こりゃ───」 なんて言ってみる。 けど死ぬ気などさらさら無いわけで、俺はイメージを増幅させて竹の槍を創造した。 ……ゴキブリ殺した槍なんて持ってられないだろ? 悠介 「出でよ烈風!スパイラル・エアァーーーッ!!!」 先ほどカマドウマを一撃の下に屠った螺旋の風を放つ。 当然下に。 それによって俺の体にかかる落下速度が中和され、 その状態を確認してから今度は自分の体が滝壺ではなく草原に落ちるように風を放つ。 悠介 「───っと」 トンッ、と。 ひとまずは無事着地。 しかし─── 悠介 「まいったな、実際どこにどう行けばいいか解らん」 街を探す───にしたって、その街は何処なんだ!? ああもう、何かを探すのは苦手なんだよ俺は……! 方向音痴ってことはないんだが、 昔っから何かを探すことにかけては失敗ばっかりしていた。 そんな俺が、物(……っていうか街だけど)探し───? 悠介 「……自分で言うのもなんだが、物凄く不安だ……」 前途はとても多難になりそうだった……。 ───……。 ………………。 ……で。 悠介 「ここは何処なんだろうな……」 地平線が余裕で見える平原の真っ只中、何気なく見つけた小屋に何気なく寄ってみた。 すると……そこは『旅のライセンス屋』というものだった。 よく見れば小屋の底に車輪のようなものがついている。 どうやらきちんと『旅のライセンス屋』らしい。 ……なんのライセンスかは知らんが。 魔術師「異形の服……あなた、この世界の住人ではありませんね?」 悠介 「───それは正解だが……お前は?」 魔術師「申し遅れました。私はミルグナント=ロハイムという者。     魔導魔術に手を染め、魔導錬金術にも手を染める魔術師です」 悠介 「魔導と錬金……リヴァイアみたいなものか?」 魔術師「え───」 ピシリ、という効果音が合ってそうな顔で、目の前のそいつは固まった。 魔術師「あの……リヴァイアさまの、お知り合い……ですか?」 悠介 「へ?あ、ああ、一応、同じ目標のために頑張ってる身だが」 ……って、彰利のこと忘れてた!! うわヤバイ!! 魔術師「これは、ご無礼を。ですが見たところランクライセンスは持っていない様子。     作成いたしましょうか?ああ、もちろんお代はいりません」 悠介 「ランクライセンス?……ちょっと詳しく聞かせてもらっていいか?」 魔術師「ええ、もちろん構いません」 彰利のことも気にかかったが、そこはそれ……ファンタジーに焦がれる男というやつだ。 こればっかりは好奇心を抑えられん。 彰利、今しばらく待っていてくれ……!! ───……。 ……。 魔術師「と、いうわけです。つまりこのライセンスは、     高めれば高めるほどこの世界でのランクとなるのです。     高い者になれば、王城だろうと入れると言います」 悠介 「そうなのか……で、本当に無料でいいのか?」 魔術師「はい。リヴァイアさまは学会では鼻つまみ者ですが、     純粋に魔導魔術や魔導錬金術に憧れる者ならば、尊敬しても足りないお方です。     その知り合いの人が目的を同じくして頑張っている。     それを放ってなどおけませんよ」 悠介 「……すまない、助かる」 魔術師「いえ。それで───なにか武具は要り様ですか?     簡単なものなら金属から錬成できますが」 悠介 「錬成か……自分で創造出来るから、無理に頼む必要も無いんだが……」 魔術師「え───?」 でもなぁ、こういう場合、ファンタジーの世界に住む人が作ってこそ価値があるというか。 魔術師「ちょ、ちょっと待ってください……あなた、今なんと言いましたか?     その、創造、がどうとか……」 悠介 「うん?ああ、創造の理力だ。イメージを具現化する力だが……どした?」 魔術師「───……し、失礼しましたぁああああああっ!!!!」 悠介 「オワッ!?」 魔術師、いきなり立ち上がってお辞儀。 しかもかなり慌ててるっていうか───え?なんですかこの状況。 魔術師「ま、まさか貴方が伝説に聞く『創造者(クリエイター)』だったとは……!!     魔術師風情が一端のことを……!お許しください!!」 悠介 「───……」 ……マテ。 何故俺はいきなり謝られてるんだ? むしろこっちが感謝したいくらいなのに。 いろいろ説明して納得してもらうか? ああ……でもなぁ……なんかこの魔術師の目、すっげぇ輝いてるし……。 なんつーか夢に溢れた目って言えばいいのか……とにかく憧れに出会えたような目だ……。 魔術師「あ、あのっ!是非、差支えが無ければ創造物を譲ってもらえないでしょうか!     今日の記念にしたいのです!!」 悠介 「え───ああ、まあそれは別にいいんだが……」 ……いいか、なにも夢を壊すようなことをしなくても。 悠介 「何を出して欲しい?」 魔術師「え!?希望を出してもいいのですか!?」 悠介 「漠然と何かを出す方がよっぽど面倒だ。リクエストを頼む」 魔術師「は、はい!では───浮遊を可能にする道具を!」 悠介 「浮遊、か……なるほど。じゃあ、いくぞ───」 頭の中でスイッチを切り替えるように唱える。 『クリエイション』 その言葉が頭の中の歯車となって、ガッチリと能力と意識、体力を繋げる。 あとは纏めたイメージを弾けさせるだけだ。 悠介 「貼ったものを浮遊させる札が出ます───」 ヒィン───パキィンッ! ……手に現れる札。 それは、イメージした通りの綺麗な札だった。 悠介 「ほら、これを浮かせたいものに貼り付けろ。     移動したい時は札を貼り付けた状態で、場所のイメージをしろ。それで動く」 魔術師「……………」 悠介 「うおっ!!?」 振り向くと、魔術師は感動して泣いていた。 魔術師「うぐっ……くぐぐっ……!!う、疑ってたわけじゃあありません……!!     ありませんけど……!本物の創造者(クリエイター)に遭えるなんて……!     か、母さん……俺、旅のライセンス屋になって良かった……!!」 悠介 「…………いや、よく解らんが……受け取ってくれ。     こんなもんでよかったら、ライセンスの代金だと思って」 魔術師「とんでもないです……!もう、なんて言っていいのか……!     魔術師の最高峰、創造者の創造を見させてもらっただけで……!!     なんかもう胸がいっぱいで……!代金の代わりだなんてとんでもない……!     これは俺の一生の宝です……!!大事にします……!!」 悠介 「……そんなに泣かれても困るんだけどな……」 頭をコリコリと掻きながら、ひとまずはライセンスカードを首に下げた。 すると、そのカードに謎の文字が現れる。 魔術師「ユウスケ=ツゴモリ……それがあなたの名前ですか。     その名前、一生忘れません……!よかったらまた寄ってくださいね……!」 悠介 「あ、ああ……」 未だに涙を流し続ける魔術師を残し、俺は静かに小屋をあとにするのだった。 ……空界じゃあ、創造の理力ってそこまで昂いものだったんだなぁ……。 って、普通に考えればどの世界でもそうか。 イメージを具現化なんて、それこそ規格外の能力だ。 驚かない方がどうかしてるか。 悠介 「に、したってなぁ……なにも泣くことないだろ……」 どこに居ても出てしまうであろう俺の溜め息は、 やっぱりこの世界でも吐かれるのであった……。 Next Menu back