───UnlimitedBlackOrder-No.08限界ブッチギリバトル───
【ケース19:未来悠介/強敵求めて三千里───まではいかない】 悠介 「とぁあっ!!」 ゴバァンッ!! ゴーレム「ォオオオオッ……!!」 突き出したロンギヌスがゴーレムの頭部を穿つ。 手応えは確かなもの。 現に、ゴーレムはゆっくりと倒れて塵と化した。 悠介 「くはっ……はぁ、はぁっ……!!     ったく、強いんなら強いで逃げ出すなよな……!!」 驚いたことに、ゴーレムは予想以上に強かった。 今まで戦った中じゃあ、ミノタウロスの次に強かっただろう。 困ったことに、そのボディの硬いこと硬いこと。 攻撃のことごとくを弾かれたよ。 悠介 「ま、塵も積もればなんとやらだ」 ようするに頭を集中的に狙った。 お蔭で破壊出来たが───適当な場所ばっかり狙ってたら負けてただろうな。 いやまいった、この世界っていい意味で期待を裏切るわ。 そうだよな、逃げ出すのはランクの所為で、別に俺が強くなったわけじゃないんだ。 だからランク下で梃子摺るのは道理。 学ばせてもらったよ、ゴーレム。 悠介 「さてと……聖とみさおは何処かな……」 ぐるぅりと見渡してみても、一面平原。 地平線さえ見えるその景色に一時心を奪われるが、 あまりボーっとしていられるわけでもない。 悠介 「けど───不思議なんだよな。     攻撃力が上がってるっていうか、破壊力があるっていうか」 攻撃する時、不思議と相手の弱点が解る気がする。 しかも武器を振るうと、ロンギヌスが赤く光るのだ。 何故? 悠介 「威力……弱点…………特別?いや……」 思考を回転させてみる───が、特に思い当たらなかった。 ま、いいや、あとで解るってこともあるだろ。 悠介 「でもな、こう……会心の一撃っていうのか、     当たった時に凄い爽快感があるっていうか───会心の一撃?」 マテ。 それって、あれか? 悠介 「…………アンテ」 何気なくバックパックを開いて、ミル・ミノタウロスの戦斧石を取り出してみる。 その状態で槍をヒュッと振るうと───槍が赤く光るのと同時に、石も光り輝いた。 悠介 「……これか」 納得。 なんであれだけ居たモンスターを一撃の名の下に殺せたのかが理解できたよ。 しかもこの石、基本身体能力まで向上してくれるみたいだ。 いくら俺でも、あそこまで速く槍をさばくことは出来ない。 悠介 「……ほんとに凄いんだな、この戦斧石って……」 爺さんの『大事にしろ』という言葉が、思考の中でグルグルと回転していた。 ありがとう爺さん。 それでもゴーレムは強かったです。 悠介 「よっし、最寄の街にでも寄ってみるか。えーと?ロトニウス地方の街は、っと」 ワールドマップを開いて街を探す。 近いのは───うお……マジか? 悠介 「奴隷都市、レブロウド……か」 奴隷ってのは人間が人間を奴隷にしてるのか……? それとも、モンスターに脅されているのか……? 悠介 「……だめだ、気になったらどうしようもない───行くか」 頭をコリコリと掻きながら溜め息ひとつ。 俺は、奴隷都市レブロウドを目指して歩き始めた。 【ケース20:未来悠介(再)/墓穴と甘さと最弱にして最強の黄色いもの】 悠介 「………」 レブロウドには大した間も無く辿り着いた。 見渡す限りにモンスターが存在し、 工場のようなものを作って人間を働かせていた。 スネークマン「はたらげーーーっ!!スネーク!!」 びしぃっ!! 男  「うぅっ……!!」 休めば鞭で叩かれ、頑張っても休む時間も無い。 つまり───強制労働施設みたいなものだ。 子供 「あっ……」 ドサッ─── スネークマン「ムッ───!?このガキッ!!スネーク!」 子供    「ひっ───!」 石を運んでいた子供が倒れた。 それだけで蛇顔の人型モンスターは鞭を振り上げた。 俺はその後ろから鞭をつまみ、振り下ろせないようにした。 スネークマン「あ、あれ?あれあれ?おかしいなスネーク……。        お、おいお前、鞭を握ってるかスネーク?」 悠介    「とんでもない。握ってないぞ」 スネークマン「そ、そうだよねスネーク。        うーーむ……って、つまんでるじゃねぇかスネーク!!」 悠介    「あたぁっ!!」 ボゴシャアッ!!! スネークマン「ブゲッ!!?スネーク!!」 再度振り向いたスネークマンの顔に合わせるように拳を振るい、 丁度綺麗なカウンターを決めるように殴った。 スネークマン「ブ、ググ……!き、貴様スネーク!        人間の分際でこのスネークマンさまの顔をスネーク……!」 悠介    「お前が人間を『分際』呼ばわりするなら、        俺からしてみればお前こそ分際だ」 スネークマン「な、なんだとスネーク!!        モンスターさまの恐怖、思い知らせてくれるスネーク!!        はたらげぇええーーーーっ!!!!スネーク!!」 スネークマンが鞭を振り上げる───が、 その鞭ってのは振り上げる動作がどうしても遅くなるわけで。 だからその隙だらけの状況を利用してボゴシャアと殴った。 スネークマン「ブゲッ!ちょ、ちょっと待てスネーク!        卑怯だぞ貴様スネーク!正々堂々と勝負しろスネーク!」 悠介    「だったら鞭捨てろ。支離滅裂だぞお前」 スネークマン「馬鹿めスネーク!俺はモンスターさまだからいいのだスネーク!」 悠介    「あっそ」 ブンッ───スネークさんが鞭を振り上げる。 ボゴシャア!!───その隙に殴る。 ブンッ───また振り上げボゴシャア!! ブンッ───ボゴシャア!! ブボゴシャア!!! ボゴシャア!! スネークマン「オギャーーッ!!!て、てめぇいい加減にしろスネーク!!        こっちの行動が遅いからってボコボコボコボコ殴りやがってスネーク!!」 悠介    「だから、遅くなるって解ってるなら素手で来い。        それが正々堂々ってもんだろ」 スネークマン「馬鹿めスネーク!そんな手には乗らんスネーク!!        俺が拳になれば同等の立場になれると思ったら大間違いスネーク!!」 悠介    「言ってる意味がよく解らん───が、        どうしても武器選ぶっていうならそれでもいい。        俺も武器で立ち向かわせてもらうぞ」 言って、背中に背負っていたロンギヌスを構える。 スネークマン「あぁん?見ねぇ槍スネーク。どうせナマクラランススネークね」 悠介    「ナマクラかどうか、その目でしかと見ろ。        黄昏の槍よ……その名とともに閃け。        そして、在るべき力を我に示せ。“───聖災を誇る無情の兵槍(ロンギヌス)
”」 槍に光が灯る。 それを強く握れば握るほど、戦斧石から流れる力が強まるのか、槍が赤く輝きだす。 スネークマン「な、なにスネーク!?        こんな光で驚かそうったってそうはいかねぇスネーク!」 悠介    「───悪いけど。まともに遣り合う気の無いヤツに使う時間は無いんだ」 トパンッ───!! スネークマン「……?」 閃きは実に刹那。 石によって極限まで高められたその身体能力は、 俺自身でさえ気づかぬ間に目の前のモンスターの額を槍で貫いていた。 スネークマン「アヘ……?」 残ったのは疑問。 だが、そんな疑問もすぐに塵と化した。 村人 「な、なんということを……お前さん、なんということをしてくれたんじゃ!」 悠介 「あー、王道だからそれ以上言わなくていい。     モンスターの親玉が来るって言うんだろ?始末するから安心してくれ」 村人 「え……?」 男  「ほ、ほんとうにか……!?」 悠介 「『言ったこと』は守る。だから───約束してもいい。絶対に解放してやる」 あんなザコが番兵だなんて笑わせる。 ならばきっと、親玉も大したことは─── 村人 「お、お前さんなんにも解っちゃいねぇ!!     この都市の親玉はイエロードラゴン……!!     竜としては小さいとはいえ、その強さは適当なモンスターなぞ足元にも……!!」 悠介 「ぐあ……!!」 いきなり後悔。 ていうかまた『甘く見てた』。 うあぁ馬鹿か俺……!! 悠介 「ちなみに……ミル?」 村人 「馬鹿言うんじゃねぇ!!ミルだとしたらこんな独裁的なことはせんわ!!     竜族最弱のイエロードラゴンの中でも下の下、落ちこぼれのドラゴンじゃ!     だが、だからこそ性質が悪い!落ちこぼれでもドラゴンじゃぞ!?     実際、普通のモンスターなど相手にもならん!」 悠介 「………」 アア、ハヤマッチャッタ……。 オレノバカ……。 だが約束は……うう、守らんとなぁ……。 悠介 「……で、そのイエロードラゴンってのは何処に?」 村人 「───……もう、来るわい」 悠介 「へ?」 ───……ォオオオオオ……!! 悠介 「うわ……ヤな予感……!!!」 ォオオオオォオオオオオウゥウウンッ!!!! 悠介 「くっ!?う、うおぉおおおっ!!!?」 俺の頭上を、黄色い巨体が飛翔していった。 あの黒竜に比べれば随分小さい───とはいえ、あれは確かにドラゴンだ。 悠介 「───っ……あぁあああもう!!やってやるよドラゴン退治!!」 言い出した手前、後には引けない自分が酷く悲しかった。 ───……。 ……。 都市を出て、草原へと走った。 ここならば誰かに危険が及ぶことは無いからだ。 バサッ───ドォッゴォオオオオオンッ!!!! 悠介 「ッ……!!!」 竜が地面に降り立っただけで、立っていられないくらいの地震。 まあその、視線の先に居るドラゴンさんは、それだけ大きい。 これで───ドラゴン中最弱? イエロードラゴンの落ちこぼれ? うそだろオイ……ウソだと言ってくれ、マジで。 黄竜 『ギシャァアアアアアォオオンッ!!!!』 悠介 「ぐがっ───くぅううううっ!!!!」 咆哮……間近で聞くと鼓膜が破れそうだ。 頭に空気でも入ったのかと思うくらい、思考を吹き飛ばしやがる……!! 黄竜 『ミノタウロスバスターか……!     人間風情が……ミル・ミノタウロスを倒した程度で図に乗りおって……!     力の差というものを見せてくれよう……!』 悠介 「………」 話が出来る、と期待した刹那、その話相手から絶望の言葉が放たれた。 殺す気満々のようです。 スウ─── 悠介 「……?」 黄竜が鼻から息を吸った。 咆哮でも来るのか、と思った次の瞬間、嫌な予感とともに───俺は横に飛んだ。 コアッ───バァッガァアアアアアアアアアンッ!!!!! 悠介 「うあっ───うあぁああああああっ!!!!!」 黄竜の口から放たれたのは巨大なレーザーと見違えるほどの、高圧縮の炎。 悠介 「わ、わはっ……わははははっ……!!」 あ、あんなもん……当たったら炭も塵も残らねぇぞ……!? やばいです。 今回ばっかりはマジで死にます。 死にそうです、どころの騒ぎじゃあありません。 だって、目の前の『最弱のドラゴン』にしてみれば、 吸った息を吐くだけで高圧縮のアルファレイドが撃てるようなものなのだ。 息を吸って、吐くだけだぞ?そこになんの消費も要らない。 ……絶望的だ。 黄竜 『よく避けた、人間よ……。だが、いつまで逃げられるかな……』 悠介 「───うあ」 黄竜が息を吸う。 それも、長い首を横に逸らしながら。 ……つまり、それは───ゴォオッ───!! 悠介 「つはっ───やっぱりかあああああっ!!!!」 ギシャァアアアアアォオオオオオオオンッ!!!!! 悠介 「くあぁああああああっ!!!!」 横薙ぎの波動砲。 一直線が左から右に破壊する光になっただけだが、当たれば死ぬのだから笑えない。 俺は出来る限りの跳躍に加え、 創造した風を地面に向けて放つことで、その破滅の光をなんとかかわした。 悠介 「はっ……はぁっ!はぁっ……!!」 やべぇ……緊張感がミノタウロスの時の比じゃねぇ……。 当たれば確実に死ぬって緊張が、体力をどんどんと減らしていきやがる───!! だ、出し惜しみして勝てる相手じゃねぇ! 悠介 「染まれ染まれ染まれ染まれ、赤く紅く朱く緋く……!!」 思考のスイッチを切り替える。 自分の記憶の奥底に眠る黄昏の世界を能力で具現化し、 今見えている全ての景色を黄昏に───!! 悠介 「“黄昏を抱く創造の世界(ラグナロク)”」 ゴカッ───バガァァアアォオオオオオオオオオオンンッ!!!!!! 悠介 「いっ───!?」 黄昏を創造した瞬間、視界を覆う光が放たれた。 その意は『絶対死』。 あまりに単純な、だが確実に殺すであろう灼熱以上の熱だ。 悠介 「ほ、炎を飲み込むブラックホールが出ます!!」 イメージを弾けさせる───が、ブラックホールを展開したあとに気づいた。 悠介 (───!!しまっ……!) そう。 もしこれが『炎』じゃなかったとしたら。 高密度の赤い光だったとしたら、俺は骨すら残らない。 自分の迂闊さに呆れるが、既に逃げられるほどの余裕も無い……!! ガカッ───!!バガァアアアアアアンッ!!! 【ケース20:簾翁みさお/エデンの中のわたしたち】 ドォッゴォオオオオオオオオオオオンッ!!!! みさお「うぃいっ!?」 聖  「っ……!?」 びっくりするくらいの衝撃。 地震なんかじゃない、 なにか強大な力が何かに炸裂したような衝撃が、大きな城を軋ませた。 みさお「な、なになに……!?なんなんですかぁ……!!」 遠くから聞こえる咆哮に、今のような大きな衝撃。 それは、もう一回どころの騒ぎじゃない。 みさお「カ、カルナさん……これ、なんなんですか……?」 カルナ「……多分、どこかの命知らずが───     奴隷都市レブロウドのイエロードラゴンと戦ってるんだろ」 みさお「奴隷都市───イ、イエロードラゴン!?」 カルナ「イエロードラゴンは力では他のドラゴンに遅れをとるけど、     その分……知識が高いんだ。     だからモンスターを従えることも出来るし、司令塔にだって成り得る」 みさお「遅れを取って……この衝撃ですか?」 カルナ「ドラゴンだからね」 どういう強さの基準なのか。 あっさりと言ってのけるカルナさんは、城の城壁の上で遠くの空を眺めている。 テオ 「カルナ兄ちゃ〜ん!二番バルブがイカレちゃったから手伝って〜!」 カルナ「お───ああ、今行くっ!」 後ろ───城の中に振り返れば、忙しなさそうに駆け回る子供達。 その全てが、自分の役割を知っているように、大人顔負けの仕事をしている。 ナノス「そこの新入り〜!ちょっとこっち来いよ!仕事教えてやる!」 その中のひとりの少年が、わたしたちに手招きをする。 わたしと聖ちゃんは互いに顔を合わせたあとにコクリと頷いて、 その少年もとへと駆けていった。 ナノス「名前は?」 みさお「みさお」 聖  「聖」 わたしたちはカルナさんの時のこともあってか、苗字は名乗らないようにと心がけた。 別の世界から来たのか、とか言われたら、質問攻めにされるかもしれないからだ。 ……質問攻めは好きじゃないし、なにより聖ちゃんは顔見知りをする方だ。 そんな聖ちゃんがどうして鍛冶屋のおじさんに話し掛けたかというと─── 顔見知りよりも好奇心が勝ったからなのだろう。 ナノス「聖に……みさお、か。…………」 みさお「?───なに聖ちゃんのことジッと見てるんですか」 ナノス「えっ───!?な、なに言ってんだよ!見てねぇよ!!」 みさお「口が悪い人ですね。本当に普通に教える気があるんですか?」 ナノス「あ、当たり前だ!俺はもうこの場所で二年も生活してんだぞ!馬鹿にすんな!」 聖  「あ、あっ……みさおちゃん、喧嘩はダメだよ……?」 みさお「大丈夫、喧嘩にもならないから」 ナノス「……お前、ムカツクやつだな。新入りのくせに」 みさお「過ごした時間がそのままステータスになると思ってるんだったら見当違い。     経験は確かに必要だけど、技術では負けない自信がありますから」 ナノス「むっ───じゃ、じゃあこっち来い!蒸気製鉄釜のメンテナンスをやらせてやる!     あ、聖は厨房に行ってくれ。あとで俺も行くから」 聖  「え───は、はい……」 みさお「聖ちゃんは厨房でわたしは蒸気製鉄……なんですかね、この差」 ナノス「うるさいな……か弱い女の子にそんな危なっかしいことさせられるか」 みさお「……いい度胸だコノガキャア」 刀の中で100年以上を過ごしたわたしの実力、とくと味わわせてあげます……!! 【ケース21:未来悠介/死闘。限界を超え、既存を超越せし者】 ───ガカァアアアアアッ!!!! 悠介 「ォオオオオオオオッ!!!!」 光と光が弾け合う。 『炎ではなかった』それを、すぐさまに放った紅蓮に光るロンギヌスが捻り穿つ。 黄竜 「なにっ───!?」 悠介 「貫けぇええーーーーーーっ!!!!!!」 戦斧石の力を吸いだしたロンギヌスの飛翔は凄まじい。 『喰らえば死ぬ』と思わせた黄竜のレーザーを裂き殺しながら、なお先へ進む。 その先には黄竜。 光を裂き切ったその先に、驚愕を隠しきれない金色のドラゴンが居た───!! ロンギヌスはなおも輝く。 まるで俺の内なる猛りの全てを吸収するように紅蓮に染まり、 再度レーザーを放とうとした黄竜の体に突き刺さる!! ギキッ───ガガガガガガガガガガガ!!!!!!! 黄竜 『グ───グォオオオオオッ!!!!』 地を破壊するような咆哮。 輝くロンギヌスはその硬い鱗との鬩ぎ合いに火花を散らしてなお、その進行を緩めない。 ───いや、緩めない筈だった。 黄竜 『小賢しいわ人間───!!』 悠介 「なっ───!?」 黄竜が体を捻る。 まるで槍に自分の体をぶつけるように。 そして───それが紅の槍の飛翔を完全に殺した。 悠介 「───っ……!!」 驚愕は当然。 鱗だ。 たった一枚の鱗が、自分の中で信じられる最高に近い一撃を食い止めたのだ。 それも、戦斧石で高めた一撃がだ。 これが……これがドラゴン───!! かつての世界、幼い頃から憧れ、頭の中で何度もイメージした最強の空の王……!! 黄竜 『……我が竜族の鱗に、よもや傷をつけるとは……。     いいだろう、人間。貴様は久しく見ぬ強者だ。     我が名はシュバルドライン……我が実力の真、見事受け止めよ───!!』 体が震える。 竜の咆哮にじゃない。 自分の信じた『ドラゴンの像』が、こんなにも確かなものだったからだ。 ずっと信じ、思考の中のドラゴンが何度も弱いモンスターを屠っていた。 いや、きっとそんな想像の中の竜など超越した『本物』が目の前に居る。 ───足りない。 想像しろ。 今のが俺の全力か? 否。それは真実に否である。 ───もっと深くイメージしろ。 目の前に憧れた『最強』が居る。 それが誰に『最弱だ』と言われようが構わない。 竜族が『俺』を見たのだ。 『人』としてではなく、『俺』として。 それは───自分が焦がれた数十年間を上回る最高の喜び。 ───深く、紅く……! 自分が全力以上の全力も出さないで諦める馬鹿なら、とうの昔に死んでいる───! ならば全力をも超越しろ! 元よりこの体は───その『超越』こそを具現する体───!! 悠介 「“───戦闘……開始(セット)”」 黄竜 『………』 戦闘開始。 その言葉に、俺の『逃げない姿勢』に、黄竜が満足そうに笑んだ気がした。 だがそんなものは束の間。 俺は自分の中から自分以上の何かを引きずり出すイメージをして、その激痛に耐えていた。 声  《馬鹿な……自滅するつもりか汝は》 声が聞こえる。 それは、リンクしているルドラの声か─── 悠介 「ぐ、づっ……!!悪いな……ルドラ……!!     こればっかりは……───この戦いだけは───譲れねぇええええっ!!!!」 バキィイイインッ!!! 頭の中と心の中が大きな音を立てて砕けた。 ───いや。 砕けたのではなく、繋がったのだ。 思考と黄昏の融合化。 思考は直接黄昏にイメージを満たし、黄昏はその思考の全てを受け止める。 ならば今こそ、俺に創れぬものは無い。 創れぬ道理など、超越してしまえ───!! 悠介 「我は誘う。神の名、死神の名、果てに見える主の御名を。     剣は全てを切り裂き、槍はその剣さえも折り砕く。     故にその槍は全てを破壊し、抗える者を世には創世しまい───」 黄竜 『───!そうか……貴様、創造者(クリエイター)か……!     遠きに見ぬその存在、よもやこの異境で見えようとは───!!』 黄竜が翼を広げ、大きく弧を描くように首を振る。 待ちきれぬ、といった風にその口から漏れる輝きは、先ほどのレーザーの比ではない。 悠介 「砕け。抗う風をも捻り穿ち、汝は全てを切り裂く神槍たれ!!     我が名は晦悠介!!神の槍よ!その総力を我が前に示せぇええええっ!!!!」 黄竜 『ォオオオオオオオオオオオオッ!!!!!』 放たれる咆哮と光。 直視すれば目が潰れてしまうくらいの紅蓮の光が俺に向けて放たれた。 もはやどこへ避けようとも自分は消えるだろう。 ならば───生を望むのならば、この光に打ち勝て───!! 悠介 「“───魔剣を砕く主神の輝槍(グングニル)”!!!!」 視界が朱に染まる。 我が絶叫とともに放たれた極光なる神の槍は、 その意を以って、我が生涯対面するであろう最強の敵に向かって飛翔する。 名をグングニル。 かつて、全てを切り裂いたとさえ云われる剣、グラムを破壊したオーディンの神槍。 その破壊力、イメージを以って、文字の連なりから放たれた極光は巨大な光を迎え撃つ。 悠介 「ッ……!!ぐ、ぅうううう……!!!!」 イメージは続く。 冗談じゃない、ここでイメージを止めてみろ、刹那に蒸発するのは俺の方だ。 足りない。 まだだ───まだ創造しろ。 より強大に、より美しく輝く光であれ───!! 悠介 「ッ───ガァアアアアアッ!!!!!」 ボコッ───ギャガガガガガガガガァアアアアアンッ!!!! 押し出すイメージを増幅する。 それは黄竜の光を押し、前進を成功させた。 黄竜 『温いわ、人間───!!』 ドックンッ───ゴコォオカァアアアアアアアアォオオンッ!!!!!! 悠介 「ぐあぁあああああああっ!!!!?」 イメージを支える手が弾けるように。 自分の腕が裂けるように血が噴き出した。 だが止まない。 イメージは奥底から湧き出し、むしろ力が沸きあがってくる。    思考を紡げ。意識を繋げ。異端の思考よ例外を創造れ。(連ねるは言。連言より軌道と成す。意は創造と化し、その在り方は正に人。) 深く遠い景色───深遠から聞こえてくる声は、ルドラの声ではない。 しかしそれが、確実に自分の想像を高いものにしてゆく。 悠介 「ぎ、ぐ……!!」 イメージしろ。 いや───詠え、と。 その言葉の連なりが訴えかけてくる。   生きた軌跡は至福に遠く、その思い出は黄昏へと集約せん。(ならばその在り方をここに示し、無限の自由を世界と謳え。) それはどんな景色だっただろう。 美しく、ただ草原のみが存在する景色を、俺はいつ───美しいと感じたのか。 悠介 「グ、───ア、ガッ───アァアアアアアアアッ!!!!!」 頭の中の歯車がガッチリと噛み合わさる。 聞こえる声はさらに大きくなる。 それに呼応するように、自分の中の『枷』が外れてゆく。 目の前の光を『強いものと思い込むな』と。 『憧れは超えた時にこそ意味がある』と。 ならば─── 悠介 「“───超越せよ汝(クリエイション)”」 創れ、創れ───!! このグングニルで足りないのなら、より強大に創り換えろ───!!    想像は留まりを知らず、想像は無限に換わり、創造すらも無限に換える(その在り方は神が如く。越せぬ壁など我が身にあらず、我が意思こそが無限の自由)───!! 悠介 「“神槍、是総てを無限と穿つ(グングニル)”!!!」 腕が破裂する。 頭が灼熱し、己で放った力に己が砕けてゆく。 だが───それよりも先に、その神槍は目の前の光を砕いてゆく───!! 黄竜 『───!!な、なんだと……!?こんな、馬鹿な───!!』 コォッ───ボッゴォオオオオオオンッ!!!!! 黄竜は更なる光を光に連ねる。 だが、その抵抗は虚無に帰す。 黄竜 『ッ───!!?』 眼前にあった光は塵と化し、神槍は勢いを止めることも無く黄色の竜へと突き進む。 黄竜 『おのれぇえっ───!!!』 ガカァッ───ギチィイイイッ!!!! 悠介 「なっ───に……!?」 黄竜は一角の角を突き出し、それでグングニルを受け止めた。 ロンギヌスの時の蒸し返しだ───槍は硬い角を削るに至らない……!! 悠介 「ッ───!!こ、のっ……!!」 勝利の確信なんて甘っちょろい。 この強敵を前に、なにを勝った気でいやがる───!! 気を緩ますな!!まだ足りない───!!もっと、より深く超越しろ───!! 黄竜 『オォオオオオオッ!!!!!』 悠介 「───!!」 黄竜の口が光に輝く。 考えやがる───角でグングニルを抑えて、レーザーで殺そうって気か……!! 悠介 「くそっ……!!こォの……野郎ォオオオオオオッ!!!!!」 湧き出たイメージを次々と弾く。 より硬く、より鋭く、より高密度に───!! 悠介 「砕け、砕け、砕け、砕け……!!弾けろ、弾けろ、弾けろ、弾けろ……!!」 黄竜 『ガァアアアアアアッ!!!!』 キュバァアア───ゴカァアアアアアアッ!!!!! 放たれる咆哮と光。 角で抑えていたグングニルを押し退けるように圧縮されたそれは、 砕けた俺の腕をさらに砕く。 ……っ……!!支えが続かねぇ……!! 悠介 「が、はっ……!!」 落ちた血が波動に消える。 その振動と衝撃は凄まじく、頭がグワングワンと揺れ動く。 だが。 その深淵から湧き出てくるイメージに枯渇は無い。 ───ならば詠え。想像こそ……創造こそが無限の自由。無限の世界───!! 悠介 「“創造の理力”(フォースオブクリエイション)!!!!」 グヂリ、と血管が切れるような感触を味わってもなお。 吐き気に襲われようとなお、止まることを知らずにイメージする。 砕け、貫け、捻り穿て。 想像は無限の泉。 そこに枷はなく、我が意思こそが無限の自由───!! 悠介 「っ───オォオオアァアアアアアアアアッ!!!!!!」 噛み合わさった歯車が高速回転をする。 刹那、自分の中にある『深淵』が湧き上がり、それが『深淵』ではなくなった。 故に───手を伸ばすまでもなく、想像と創造が同化される───!! 悠介 「貫けェエエエーーーーーーーッ!!!!!」 見える黄昏は、とうに紅蓮。 何故か『約束の木』が消えたその黄昏が、放たれた創造を詩に変えて光を貫いた。 そして───ギ、ギギギッ───バギィンッ!!! 黄竜 『──────!?』 ついに、その角さえも折り砕く───!! 黄竜 『ば、馬鹿な───グォオオオオオオッ!!!!?』 貫く神槍は止まらない。 角を折った先にある眉間へと一直線に突き刺さり、それを穿つ─── 黄竜 『お、のれ……!!よもや人間なぞに我が竜族の誇りを───!!』 ───いや、穿つに至らない───!! (誇り)さえ折った光は、竜の鱗を貫かない!! 悠介 「く、はっ……!!真実バケモノだなちくしょう……!!」 こ、こっちはもう……意識が保ってられねぇ……!! くそっ……血が足りねぇ……!! 他の部分にイメージを繋げてる余裕もねぇ……!! 黄竜 『グ、オォ……!!!』 ビギッ……バギンッ……!! 悠介 「───!?」 黄竜 『グッ───!?馬鹿な……!!我が鱗まで穿つと───!?』 悠介 「っ……い、け……───いけぇえええええええっ!!!!!」 イメージを振り絞る。 これが好機だと言わんばかりに、せり上がった『深淵』とともにそれを吐き出した。 黄竜 『グッ……グゥウウォオオ……!!!───…る…な、人間……!!』 悠介 「……?」 黄竜 『()めるな!!人間!!!ゴオッ───ビジッ……ビリビリッ……!! 悠介 「なっ───」 凄まじい咆哮。 放たれた猛りは草や我が身だけに留まらず、空気さえも震わせた。 誇りを砕かれた竜は、なおも抗う。 ───そして。その信じがたい光景は、次の瞬間には訪れていた───!! 黄竜 『ゴ、ォオ……グゥオォオオオオオオッ!!!!』 ギキキッ───ビギィンッ!!ガッ───ガカァアッチュウウゥウウウウン!!!! 悠介 「───!?なっ、ばっ───うそだろっ!!?」 信じられない光景。 視界の中に立つその竜は、その額で───グングニルを空へと弾いてみせたのだ───!! 悠介 「っ───!!」 すぐさまに体を回復させる霧を創造し、 体中にある傷を回復させる───などと余計なことを思考した刹那!! ゴガァッ───ドゴォッチュゥウウウウウウンッ!!!!! 悠介 「───!!しまっ───」 黄竜から放たれたレーザーが、 なんとか避けようとした俺の片足を根こそぎ消し去った……! 悠介 「がっ───ぐ、あぁああああああっ!!!!!」 馬鹿な……!!何考えてやがる……!! 誇りを砕かれた竜が、悠長に回復なんて待ってくれるわけねぇだろうが……!! 黄竜 『終わりだ、人間!!』 黄竜の口に光が溜まる。 よほどの高圧縮なのだろう、溜めがハンパじゃない。 だが───やはりその『トドメ』。 勝利を確信した瞬間にこそ油断が生じるのだ。 悠介 「っ……づっ……!!く、ははっ……!!───黄竜、俺の───勝ちだ!!」 黄竜 『なに───!?』 黄昏は消えてない。 ならば─── 悠介 「呼応し、舞い降りろ───“神槍、是総てを無限と穿つ(グングニル)”!!!!」 天空を貫かんとするその槍を、イメージと連結させて落とす───!! その先には、レーザーを放とうと首を上に逸らし、口を開けた黄竜が───!! 黄竜 『───!!』 驚愕した時にはもう遅い。 大口を開けたその『鱗の無い部分』に、極光を纏う神槍は舞い降りた───!! ゾボォンッ!!バガッ───ギシャァアアアアアアアアアアアッ!!!!! 黄竜 『ガッ───グォオアァアアアアアアアッ!!!!』 光が暴れ狂う。 ただ目の前の黄竜を破壊せよと何度も上乗せしたイメージが、 破壊してなお黄竜の中で暴れまわっていた。 悠介 「は、は……ざ、ざまぁ……みやがれ……」 言ってはみるが、こっちは本当に限界。 なんとか消された足と血を創造してから、大の字に倒れた。 ───それが、恐らくは油断だったのだ。 黄竜 『グォオオオオオッ!!!     ニンゲン!!おのれ───ニンゲンごときがぁあああっ!!!』 悠介 「はっ───」 神槍に体を形成する大部分を破壊されていながらもなお。 その誇りを既に破壊されていてもなお、その巨竜は敵である俺を見据えていた。 そしてその口からは、放たれるべく高圧縮にためられた光が───!! ドガォッ───バォオオオオオオオオオォォォォォォ……ゥウウン……!!! 悠介 「───ッ……!!」 ───……、黄昏の空へと、放たれた。 悠介 「え……?」 ……見れば、黄竜の目は既に潰れていた。 恐らく、グングニルが角を折り、眉間に突き刺さった時に───既に潰れていたのだろう。 それでもその竜は敵である俺を見据えていたのだ。 ……これがドラゴン。 自分が憧れて止まなかった、その存在か─── 黄竜 『グ、───……ォ、ォオ……!!』 バガッ───ドォッガァアアアアアアアアアンッ!!!! 黄竜 『───……』 黄竜の中で暴れる光が、ついに力を抱えきれなくなって爆発した。 黄竜は内側から完全に破壊され、やがて───塵となって消えた。 悠介 「───……、あ、は……あ……」 起き上がらせていた体が自然と倒れ、俺は尻餅をついて安堵の息を吐いた。 悠介 「は、ははは……た、助かっ……た……」 出たのはそんな言葉。 『勝った』とか『勝てた』なんて、酔った言葉じゃない。 あれが本当の死闘ってやつなんだと、本気で実感した。 一言で言えば、『もう勘弁だ』だ。 軽いことは言わないようにしよう、うん。マジで。 悠介 「は……はぁあ……」 黄昏の中では体力の消耗無しで創造出来るとはいえ、 この戦いは本当に『精神』に響く戦いだった。 神経磨り減るどころの騒ぎじゃない。 自分の死ぬ未来しか見えない戦いなんて初めてだった。 悠介 「………」 大の字。 そんな状態で転がったまま、ただゆっくりと元に戻ってゆく黄昏の空を見上げた。 『ラグナロク』とは違う、別の黄昏。 いつの間に変わったのか、そこに約束の木は無い。 でも───どうしてだか。 こんな景色を一度、ずっと昔に見たような気がする───タラララスッタンタ〜〜ン♪ 悠介 「………」 感傷すらもさせてくれないのか、このカードは。 でも、見れば銀色のカードが黒く輝くカードに変わっていた。 悠介 「…………」 あーあ……これでまた、モンスター達に逃げられるんだろうなぁ……。 けど───なんだろな。 今の戦い、凄く身に染みることも学べることもあった。 なんて言えばいいのか……全力以上の全力を出して、だからこそ勝てて…… しかも、それに胸を張れそうな気がするっていう……そんないい気分だ。 悠介 「勝てた……んだよな、ドラゴンに」 噛み締めるように呟いた。 勝利に酔うような言葉は出さないつもりだったのに、 その言葉は自分を認めさせようと勝手に出た。 悠介 「っ……ははっ───よっしゃぁああああああああああっ!!!!!!!」 声高らか。 寝転がったままに両手両脚を跳ね上がらせて叫んだ。 相手がドラゴンの中でも最弱だったかどうかなんて関係ない。 俺からしてみれば最高に強いやつで、しかもそれに勝てたのだから。 ───誰でもいい。 この喜びを誰かに伝えたかった。 そう、たとえば自分の大親友であるアイツに─── 悠介 「って忘れてたぁああああああああああああっ!!!!!」 ゴメンナサイ、ダイシンユウ。 死闘の中で完全にキミのこと忘れてました。 悠介 「───うっし!精神も落ち着いてきたし、消費も黄昏の発動分くらいだ!     あとは奴隷都市からモンスターどもを排除して───」 妙にハイになってた俺は、少し痛む頭を振りながら奴隷都市へと駆け出した。 ……なんとなく、後の展開が読めながら。 【ケース22:未来悠介(再)/ドラゴンブレイバー悠介さん】 で、奴隷都市レブロウド。 スネークマン2「ギャーーーーーーッ!!!!」 スネークマン3「ギャッ!!ギャーーーーーッ!!!!」 ……しっかり予想通りだった。 番兵であるスネークマンどもは俺を見るなりとんずら。 中ボス扱いだったミル・スネークマンも裸足で逃げ出す始末……。 一応捕まえて、『この都市にモンスターを近寄らせたらブッコロがすぞ』と言っておいた。  ◆コロがす  『殺す』の控え語。  皆殺しの場合は『皆コロがし』、ブッ殺すの場合は『ブッコロがす』。  *神冥書房刊『アニメ、魁!クロマティ高校の誘惑』  村人 「し、信じられん……!!ドラゴンをひとりで倒すとは……!     それも無傷でじゃあ……!!!」 悠介 「へ?あ、いや、さすがに無傷ってわけじゃないんだが───」 村人 「あいや何も言うな!その『ドラゴンスレイヤー』のランクネームを見れば解る!     お主は確かにドラゴンを倒したのじゃ!それは曲げようの無い事実!!」 悠介 「いや、だからな?って聞けコラ」 村人 「驚いた……おぉ驚いたわい……!     最初見た時はただのモミアゲの長い若造かと思っていたのにのう……!」 悠介 「……こいつ殴っていいか?」 男  「あ、いえ……一応こんなジジイでも村長なので……」 ……村長だったのかよこいつ。 悠介 「じゃ、とにかく約束は果たしたから。俺はこれで失礼するよ」 男  「なっ───待ってください!なにかお礼をさせてください!     あなたはこの都市を救ってくれた英雄なのですよ!?     お礼を!せめてなにかを受け取ってください!」 悠介 「()らん(0.1秒)」 男  「むごっ!?」 村長 「じゃったらなにかよこせ若造!ホレ!     どォオオせ竜を倒して金目のモンをたんまり持っとんのじゃろ!えぇーーっ!?」 男  「黙れジジイ!!」 ボゴシャ!! 村長 「ブベイッ!!」 あ、殴られた。 男  「失礼しました……“竜殺しの勇者”(ドラゴンブレイバー)になんという無礼を……」 悠介 「いや、むしろ俺が殴りたかったくらいだから」 気にしないでくれ、と続けた。 むしろこのジジイを殴ることが『お礼』なら、喜んで受け取るんだが……。 でも───そっか、そういやまだバックパック調べてなかったよな。 悠介 「アンテ」 ランクカードに手を添えて唱える。 現れたバックパックは……うお、なんかデカくなってるんだが……? って、そうか。 ここに来る前にゴブリンやらオークやらゴーレムを消しまくったんだっけ。 悠介 「えーと……?」 バックパックを開けて、戦利品を調べてみる。 ジジイ「ど、れ、ど、れ?」 ボゴシャア!! ジジイ「ベボッ!!」 男  「遠慮ってもんを弁えろクソジジイ!!」 ……既に『村長』って認識ではなく『ジジイ』で認識している自分が怖い。 悠介 「黄竜の鱗、黄竜の爪、黄竜の涙に黄竜の角、黄竜の尾棘……黄竜の髭。     ……ゴブリンの棍棒にキラービーの針?それに……なんだこりゃ」 ジジイ「お、───おぉおおっ!!そ、それはまさしくミルシュバルドの───     シュバルドラインの黄竜珠!!お、お主!黄竜王とまで戦ったのか!!」 悠介 「───……」 えーと、ちょっと待て? ……黄竜……王? 『ミル』……シュバルド? それじゃあなにか?さっきの黄竜は黄竜の中の黄竜で、 角を折られてあそこまで激昂したのは、王の誇りを折られたから───? 悠介 「は……は、はははは……」 ジジイ「む?ほ、ほっほっほっほ!!」 悠介 「あはは、はははは、あ───あはははははは!!!!     ジジイィイイッ!!!てめぇえええええええっ!!!!」 ジジイ「む、むおおっ!!?ヒイイなにをなさる!!」 悠介 「なァにが『落ちこぼれで最弱のドラゴン』だ!!てめぇ一発殴らせろ!!」 ジジイ「ひ、ひぃい退却じゃああーーーっ!!!!」 フィンッ───ビジュンッ!! 悠介 「なっ───あ……消えやがった!!ちくしょう!!」 式で転移しやがったのか!?まさか魔導魔術使いだったとは───!! 男  「ま、まあそう怒らないで。あのジジイの目は耄碌(もうろく)してますから。     これは確かに『最弱のドラゴン』の宝珠ですよ」 悠介 「……そ、っか……」 ……まいった、あれで『最弱』か。 男  「ですが、黄竜シュバルドラインは確かに黄竜王だった存在なのです」 悠介 「へ?なんだそれ」 男  「黄竜王シュバルドライン……     かつてはこの空界の東の王として君臨した誇り高き知性竜。     北には赤竜王ドラグネイル、南には蒼竜王マグナス。     西には緑竜王グルグリーズ。     そして……空界に住まう四竜を統べる最強、     竜王の中の竜王が───黒竜王ミルハザード」 悠介 「……───」 黒竜。 その言葉を聞いて、姿だけで自分に『絶対の恐怖』を知らしめたあの存在を思い出した。 男  「黄竜王シュバルドラインは東の王だった。     けれど───遙か昔、この世界に存在した『創造者』と戦い、     その戦いの中で『戒め』を受けたのです」 悠介 「クリエイター……?」 じゃあ、あいつが俺を創造者だと知った時のあの猛り様は─── ……そっか、王である自分を堕とした者と同じ創造者だ、憎かったんだろうな……。 男  「創造者は己の命と引き換えにシュバルドラインを戒めました。     そのためにシュバルドラインは堕ち、王の中では最弱になってしまった」 悠介 「───ちょっと待て。     じゃあ俺がもし戒めの無いシュバルドラインと戦ってたら───」 男  「一秒、保ったかどうか……」 悠介 「………」 そりゃそうだ、堕ちた状態であれだけ強かったんだぞ……? 男  「シュバルドラインが堕ちたと聞いて、数々のブレイバー達が戦いを挑みました。     ですが……流石は黄竜王。     挑んだブレイバーは近寄ることも出来ずに消滅しました」 悠介 「想像に容易いな……」 戦ったから解る。 あいつには絶対に近寄れない。 男  「創造者は言ったそうです。     『自分と同じ創造者を殺すことが出来れば、お前の力は解放される』って」 悠介 「……なるほど」 あそこまでムキになった理由はそれか。 死力を賭しても向かってきた訳が理解できた。 男  「けど、いろいろあったけどあのシュバルドラインに勝つ人が現れるなんて……。     正直、信じられませんよ」 悠介 「………」 運が良かっただけ、だなんて……きっと言ってはいけないことだ。 あいつは全力を出して、俺もそれに全力で立ち向かった。 それは誇れることだし、あの戦いは誇れる戦いだった。 男  「で、お礼……受け取ってくれます?」 悠介 「大却下。悪い、急いでるんだ」 男  「そんな───あ、だったらこの都市にあなたの名前を付け───」 悠介 「やめいっ!!そんなことしやがったら本気で怒るぞコロがすぞ!!」 男  「うぅ……」 押し黙った男の隙をついて走り出す。 まったく冗談じゃない───! 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