───UnlimitedBlackOrder-No.13不特定生命体棒人間───
【ケース34:未来悠介(再)/ラットンvs棒人間】 ───……。 悠介 「次はソーサラーラットの杖の珠だな。     ソーサラーラットってのはどんなヤツなんだ?」 チャイルドエデンを出てから数分。 俺は、ずっと南へ飛んでいるディルゼイルに小さな疑問をぶつけた。 ディルゼイルはその声に少し速度を緩めると、まるで物知り野郎の如く語った。 ディル『ソーサラーラットというのは【ミル・ラットン】のことを言う。     ラットン達の【王】は不思議な能力を持っていて、     自分の能力を他のラットンに与えることで【王】の権利と能力を渡せるのだ』 その物知り度に一瞬、とある『大往生の刺青』を持つ男を思い出したが…… すぐにその思考を振り払って真面目に返した。 悠介 「それって……しようと思えばいつでも能力継承できるってことか?」 ディル『その通りだ。しかもラットンは、     絶滅でもしない限り【王】が居なくなることはない。     何故かというと、【王】が倒れたとしてもその能力が自動的に継承されるからだ』 悠介 「ランダムでか?」 ディル『そうなるな』 ……そりゃすごい。 どんな能力が継承されるのかは知らんが、王位に困らないのはいいことだ。 悠介 「あ───それで、ミル・ラットンの能力ってなんなんだ?」 ディル『千年の寿命無しで【式】が使える。     魔力自体があまり多くは無いために、超低級の弱い式しか使えないが……     研究ではミル・ラットンが持つ式の中には【超古代魔導の式】もあるらしい』 悠介 「それって……魔力さえあればかなり強いってことか?」 ディル『そういうことになるな。だが肝心のラットンには魔力が微量しかない。     だから怖れることもなければ、緊張することもない』 悠介 「そっか」 平和なことだ。 ディル『だがそんなラットンと並び、     とある地方の縄張り争いを100年以上も前から続けている種族が居る。     それが───棒人間だ』 悠介 「………」 ディル『不老不死なんだが攻め手に欠けすぎる棒人間どもは、     結局ラットンとは決着つかず終いで現在に至る』 悠介 「そんなに弱いのか?」 ディル『双方ともに戦いに向いていないのだ。     だというのに好戦的なのでな、100を越そうとも戦いを止めようとはしない』 悠介 「好戦的って時点でもう、     ラットンはペット感覚で接することが出来ないんじゃないか?」 蛇の穴の前で聞いた話を思い出す。 確か空界人は、ラットンとはペット感覚で接してるとか言われた筈だ。 ディル『平気だ、弱いからな。     逆に好戦的という気象を【じゃれている】と受け取る輩も多いくらいだ』 けどディルゼイルはそれを言われることを先読みしていたかのように言う。 そこまで言われると、さすがにどれだけ弱いのか気になってきた。 悠介 「なぁディル」 ディル『着いたぞ』 悠介 「へ?あ……」 ハタと気づけば風は止み、景色の流れは今まさに止まっていた。 目の前にあるのは穏やかな景色。 集落、と言われるだけのことはあるなと頷けるような、いい景色の場所だった。 ……で、その景色から聞こえてくるのは『喧噪』。 まるで何かと何かが争うような音と声ばかりが聞こえる。 悠介 「これって……」 ディル『ああ。ラットンと棒人間の戦いだ。見てみるといい、呆れるぞ』 悠介 「………」 上空を見上げてみる。 そこには壁に括りつけられたように繋がる、 家のような小屋のようなものがあり……その家もどきは梯子で繋がっていた。 音と声はさらに上の方から聞こえていて、 おそらく高台のようになっているのであろうその場所へは小さな階段が続いていた。 悠介 「登れるのか?この階段」 ディル『大丈夫だろう。私が乗ったところで壊れることはない』 悠介 「……単純に凄いな、それは」 絶壁の山を削って作ったのかと思うくらいの、壁とも思える山の上。 周りは森に囲まれているためか、聞こえる物音はよく響いていた。 その声というのがまた『ギャアア』とか『チョェエ』とか、 およそペットとして扱われるような者が戦っているとは思えない声ばかり。 悠介 「………」 キュッ、と階段を踏みしめてみる。 てっきり簡単に壊れるだろうと思っていたそれは存外に硬く、 石以上の硬さのもので出来ていることが予測された。 ……弱いとか言われてる存在が、どうやってこんな硬いモン作ったんだ? ディル『どうした王。行かぬのか』 悠介 「へ?ああいや、行くけど」 後押しされるように階段を登る。 絶壁の山は高く、登るたびに聞こえてくる音と声は大きくなる。 ───やがて、その山を登り終えた時……その場には確かな争いがあった。 棒人間1 「片翼の陣!整列!」 棒人間  『オーライッ!!』 ラットン1「ケキュキュキウキウ!!」 ラットン 『キューッ!!』 まるで戦争。 かたや陣形すらも完成させて敵陣に突っ込む棒人間と、 かたやその俊敏性と跳躍力で棒人間どもの陣形を空から乱すウサギのような物体。 悠介 (あれが……棒人間とラットンか) 棒人間と言われたそいつらの様は真実棒人間。 柔軟性のある棒のような身体に、 丸い球体のような頭がちょこんと乗っかっているような生物だった。 棒人間にはそれぞれに特徴があるが、その特徴は顔にのみ。 丸い顔にマジックで縦二本の線を描いたような目をしたヤツや、V字型の目をしたヤツ。 何もないのっぺらぼうな棒人間は『ポッポッポ』と言われ、 今まさに数匹のラットンに踏み潰されて『キャーーッ!!』と叫んでいた。 その様はまるで、怪虫に襲われそうになった仲田くんのようだった……。 棒人間2「ああっ!ポッポッポがやられた!」 棒人間4「チィッ!これだから名前に『クン』も無ければ、      表情に特徴もないクズは!目立たないったらない!」 ……しかも間髪入れずに救いのない罵声を浴びせられてる。 棒人間3「怯むなぁっ!我らの縄張りを守るんだぁーーーっ!!」 棒人間 『オーライ!』 棒人間が走る。 その足音は何故か大きく、戦いを見守る俺の耳に『ヒタヒタ』という音を届けた。 あんな棒みたいな足で、どうやって音が鳴るんだか。 棒人間5「くそっ!ジークンの野郎!こんな時に何処行きやがった!」 棒人間1「カルナくんに麦茶届けるついでに豆もらってくるって出てった!」 棒人間4「あっ……あの馬鹿野郎!今日が縄張り争いの日だってこと教えといたのに!」 棒人間6「帰ってきたら全員でボコってやろう!それがいい!」 棒人間 『オーライッ!!』 なんていうか……目の前に『中学時代の俺達』が居たような気がした。 俺と彰利と中井出、それと原沢南中学校のクラスメイトどもを合わせたような騒ぎが、 今まさに目の前で展開されているように見えてならない。 さしずめ、そのジークンってのが彰利ってところだろう。 ラットン「……そこまでのようだなウサギ。もう観念しろウサギ」 マテ。 ……今あのラットン、喋らなかったか? 悠介 (───あ) あのラットンの持ってるのって杖……だよな。 ってことはあいつがソーサラーラット? し、しかし語尾が『ウサギ』って……ここまであからさまはねぇだろ……。 棒人間1「ナメるな!このシークン、      腐っても自ら縄張りを明け渡すようなことはしねぇ!」 棒人間2「その通りだ!ここは我らの理想郷だ!      ウサギごときに渡すくらいなら発破して灰燼と化させる!」 シークン「馬鹿野郎!そんなことしたら住む場所が無くなるだろうが!      奪われたら奪い返せばいい!一度の敗北がなんだ!」 棒人間2「だっ───誰が馬鹿だ!馬鹿って言う方が馬鹿だこの馬鹿!!」 ……棒人間の特徴発見。 身体はちっこいのに口が悪い。 しかも協力しようって気が長続きしないから、陣形作ってもあれじゃあ乱れるわ。 ミルラットン「やれやれ、仲間割れウサギ?しょうもない連中ウサギ」 シークン  「黙れクズが!」 棒人間2  「死ね!」 ミルラットン「お前ら言うことがいちいちキツイウサギ!!        ラットン族は寂しいと死ぬんだぞウサギ!」 シークン  「フッ……解ってねぇなミル・ラットン。        我らには強力な仲間が居るんだぜ?」 ミルラットン「な、なに!?ウサギ!卑怯だぞウサギ!」 シークン  「黙れクズが!」 棒人間2  「死ね!」 ミルラットン「だから言うことキツイウサギ!クズとか死ねとか言うなウサギ!」 シークン  「スークン!こんなクズウサギは無視して───ヤツだ!ヤツを呼ぶんだ!」 スークン  「オーライ!───カモン!豆族の勇敢なる戦士!ナットゥー!!」 ざわっ……! ラットン陣営にざわめきが走る。 そんな中、棒人間陣営の後ろの方からひとつの謎の物体が現れた。 豆が大きくなったような姿で、額には『豆』の文字。 あたかもモアイを棒で支えているように伸びている手足は、なんとも頼り無さそうだった。 ナットゥー「アイアム・ナットゥー」 しかも何故か英語……。 さらに言えば、声がCAPCOMvsSNKのライデンの声にあまりにも似てた。 だめだ……絶対にクソの役にも立たねぇ……。 シークン「いけぇーーっ!やっちまえナットゥーッ!」 スークン「我らの土地を守るンだッッ!!ほれニークン!貴様も応援だ!」 ニークン「頑張れ〜〜っ!!」 豆の権化に何を期待しているのかは解らんが、棒人間どもは猛っていた。 ……と、そこで気づいたが…… どうやら棒人間の名前にはとことんまでに『クン』が付いているらしい。 けど、じゃあ一番最初に潰された『ポッポッポ』って名前の棒人間はなんだったんだ? 悠介 (………) 視線を移すと……今も潰れたままの状態で、 敵にも味方にも完全無視されているポッポッポが居た。 さすがに哀れだ……。 ナットゥー「フッ……この豆族の中でも最強のナットゥーが来た以上、       ウサギが栄えるのは今が旬!」 シークン 「馬鹿野郎!それじゃ負けてるだろうが!」 ナットゥー「なにぃい!?あ……ほんとだ」 スークン 「馬鹿かてめぇ!ああもうこんなヤツに縄張りの命運を任せられるか!」 ニークン 「全軍突撃ーーッ!!」 棒人間  『オーライ!!』 ……あとはもう、単純なものだった。 がむしゃらに突進しては殴り、刺し、蹴り、頭突き。 ラットンも負けてはおらず、噛み付いたり蹴り上げたり人参ソードやったり。 それぞれが一撃必殺の思いでやっているんだろうけど、どうにも攻撃力が低すぎた。 こりゃあ……100年経っても決着つかないわけだ。 悠介 (……でもな。ディルの言ってた『ジークン』ってのは……) カルナくんのところがどうとか言ってたけど、カルナって七草霞流那か? いや……同じ名前かもしれないしな。 悠介 「さて……どうしたもんかなぁ……」 その戦いは、しばらくは終わりそうにもなかった。 しかし真面目に戦っているのは様子を見れば解るわけで、 真剣勝負に横槍を刺すのは如何な物か……。 【ケース35:ジークン/昼は○○!おもいっきりミノさん!】 ───ヒタタタタタタタタタ……!!!! ミノタウロス「グゥウウオォオオオオッ!!!!」 ジークン  「ヒャァアアアアアアアアアアッ!!!!!!」 それはまさに凄絶なる逃走ッッ!! 謎の老人からまんまと逃げ出した我は、 ついうっかり脇目も振らずにミノタウロスの縄張りにまっしぐら! 気づいた時には屈強なる筋肉ゴリモリの牛顔ダンディに追われておりました!! しかもこの牛野郎の足の速いこと速いこと!! ジークン「夢……夢ぞ……!これは何かの悪い夢ぞ……!!」 我が……この我が筋肉ゴリモリの皆様に追われるなんて……! ……ちなみに言うと、我を追ってきているのは一匹二匹なんて生易しい数では無ェザマス。 なにやら『王』が殺されてしまったらしく、 そのために王座争いで苛立っていたらしいんザマス。 ジークン「ハァ〜ンァまったく、人に八つ当たりをするだなんて下の下ザマスネェ〜〜ッ。      まったくもってボケザマスゥ〜〜〜……」 ザクシャアッ!! ジークン「ギョォオオオオオオオオオッ!!!!」 すぐ横の地面が崩壊した! 斧が突き刺さるどころではなく、岩盤が衝撃でブッ飛ぶが如くってヤツザマス! ジークン「な、なにさらすんじゃボケェエーーーーッ!!!      こんなもん喰らったら死ぬだろうがこのボケ!!」 ミノさん「グォオオオオッ!!!」 ジークン「ヒャーーッ!!?」 その時我は……その斧の中心にある石に輝きを見た……。 死ぬ……死ぬな、こりゃ……。 チャイルドエデンから出てもうどれくらいか…… とうに100キロ以上を駆けた我の速力を以ってしても、ミノさんはてんで撒けやしない。 それどころかどんどんと迫って───ピタッ。 ジークン「ウィ?」 ふと、ミノタウロスどもが足を止めた。 で、気になって後ろばかり見ていた視線を前に向けると─── ……空界の中でもほぼ最悪のモンスター、ベヒーモスさんがいらっしゃいました。 ベヒーモス「ルオォオオオオオオッ!!!!!」 ジークン 「ヒャアアアアアァァァァッ!!!!!!」 放たれた咆哮に思わず絶叫。 ミノさん達は自分よりランク上のベヘモス((しょう)
)さんの咆哮に逃走。 我は……立ち竦んでしまったとさ……。  ◆ベヒーモス  案外有名なモンスターさん。  身体は巨大で、獅子を黒っぽくして大きくしたような感じ。  角があり、鋭い牙は今井くんの歯並みになんでも噛み砕く。  実は『バハムート』っていうのはこのベヒーモスのことで、  バハムートが竜族だと思っている人は相当のFF染めの人。  多分FF9のバハムートのキモさと角は、ベヒーモスを意識したものなのではと……。  何故バハムートって名前がベヒーモスってなったか。  その逆は?というのは、ただ単に英語での名前の誤読らしい。  *神冥書房刊『空界蔵書・バハムルとベヘモス』より ジークン「……なに?今のナレーションみたいなの」 謎ザマス。 だがこの状況は……ウィ? ベヒーモス「………」 ベヘモスさんは面倒臭そうに寝転がり、目を閉じてしまった。 どうやら我のことなど『眼中になかった』らしい。 よかったよかった………………。 ジークン「………なんだろう……素直に喜べねェザマス……」 いつしか大きなイビキをかいて寝るベヘモスさんを前に…… 我の心の中に小さな風が吹きました……。 【ケース36:未来悠介/究極の弱者】 シークン「ヘ───ヘアァーーッ!!!」 ゾブシャアッ!! ラットン32「キューーーッ!!!!」 ……ドゥ。 シークンが放った刺突(シトツ)が、最後のラットンの眉間に刺さる。 ずっと見てて解ったことだが、某人間の手足の先はかなり鋭いらしい。 およそ貫けぬものなどないといったふうに、ある意味一撃必殺の威力をもっていた。 その鋭い四肢を使っての唯一最大の技が『刺突』。 単純に刺すだけだが、これがまた中々に侮れない。 現に、最後に立っていたのは棒人間側の方だ。 ……といっても、棒人間側も丸顔にVの字を書いたような棒人間のシークンのみ。 双方の大半が、この戦いの前に散っていった……といっても死んではいないが。 シークン  「フ、フフフ……!詰めたぞ……!」 ミルラットン「王も無しによくぞここまで戦ったものウサギ。        でもここまでウサギよ。お前はワタシには触れずに負けるウサギ」 言って、ソーサラーラット……ミルラットンが、杖に付いている宝玉を輝かせて振るう。 ───式だ! シークン  「隙だらけフィニィーーッシュ!!」 ミルラットン「なにぃっ!?ウサギ!!」 ザゴシュウンッ!! ───ゴトッ……コロコロ……。 悠介    (───あ) シークン  「フ、フフフ……なかなかやるな、ラットンの王……!」 ミルラットン「貴様もな……ウサギ。        まさかこのミルラットンさまの宝玉を打ち抜くとは……」 ……で。 俺の前には杖から打ち抜かれ、転がってきた宝玉。 ……いいや、もらってしまおう。 『ゆうすけはソーサラーラットのほうぎょくをてにいれた!!』 よし、この場所にはもう用は─── 棒人間「………」 悠介 「あ」 逃げようとしたところを、階段を登って来た棒人間に見つかった。 棒人間「インヴェイジョン!!」 悠介 「へ……へっ!?」 棒人間は妙なことを叫んで口笛を吹いた。 どうやって吹いてるのかが解らない人体構造にも驚いたが、 さらに驚いた事実は……倒れていた筈の棒人間どもが一斉に起きたことだ。 棒人間 『アンローフルインヴェイジョンッ!!!』 ヒタタタタタッ!!! ヒタッ!ヒタァンッ!! 悠介  「な、なんだぁっ!?」 気づけば俺は棒人間どもに囲まれ、見ればラットンは既に屠られていた。 ……最初からそれくらいの強さを見せろよ。 シークン「人間が我らの土地になんの用か!」 スークン「言え!言わないとヒドイぞ!」 ニークン「麦茶用の熱湯かけるぞ!熱いぞ!」 ミークン「火傷で倒れても荒地の上で寝かせるぞ!痛いぞ!」 ……言ってることが滅茶苦茶だった。 悠介  「別にどこに寝かされようが構わんが……」 スークン「なにぃい!?荒地で寝るより布団で寝た方がいいに決まってるでしょう!?」 シークン「決まってるでしょう!?」 悠介  「………」 なんていうか、誰かを罵倒する時だけ統率力を見せるそいつらの姿が、 まさに原沢南中学校の者どもに見えて仕方が無かった。 ヒタタタタタタタタ…………!! シークン「円の動き」 スークン「円の動き」 悠介  「ってコラ!集団で人の周りを『円の動き』で囲むのはやめろ!!」  ◆円の動き───えんのうごき  対象を軸に、円を描くように横歩きで移動する技。  アウトボクサーがよくやるようなアレに近いもの。  結構相手の神経を逆撫でさせる。  *神冥書房刊『純情』より シークン「ふわははは!この速度、この人数ならば誰が誰なのか解るまい!」 スークン「貴様はこのまま、狙った人物を攻撃できずに我らの前に倒れるのだ!」 ニークン「倒れるのだ!」 悠介  「…………」 えーと……ボゴシャア!! シークン「キャーーッ!!」 スークン「あぁっ!?シークンが!」 足を振るうと、あっさりとシークンの顔面に俺の足がめり込んだ。 ……顔は中々に柔らかいらしい。 スークン「シークン!?シークン!!」 ニークン「だめだ!完全に泡吹いてる!担架だ!担架持って来い!」 トークン「オ、オーライ!!」 悠介  「………」 凄まじいほどに弱ェ……。 しかも罪悪感がハンパじゃねぇ……。 まさか軽い一撃で泡まで吹いて倒れるとは……。 スークン「なにしやがんだてめぇ!!コロがすぞ!?」 ニークン「コロがすぞ!?」 ムキー!と怒るふたり……というか二体の棒人間。 なんだか知らんが、俺が悪いらしい。 悠介  「あのさ、お前ら俺に戦い挑んだんじゃないのか?」 スークン「おうとも!これは神聖なる戦い!」 ニークン「今日が貴様の命日だ!お花を添えてやるから今すぐ死ね!!」 ノークン「クズが!」 オークン「死ね!」 悠介  「お前らなぁ……」 頭痛くなってきた……。 悠介  「もういいだろ?俺はもう帰るから、縄張り争い頑張ってくれ」 シークン「実は我々の縄張り争いを見た者は例外なく殺さねばならんのだ」 悠介  「ウソつけ!今作っただろその戒律!ていうかもう治ったのかよ!!」 シークン「フッ、俺達ゃ不死身だ。あの程度の攻撃、なんてことない」 スークン「昔は『まんがポッポッポ』とか表して、      スタントマンじみたことを命がけでやったものさ」 ニークン「轢かれたり潰れたり沈んだり爆発したり、大変だったねぇ……」 シークン「だから今更殴られたくらいで死にはせん」 棒人間 『死にはせん!!』 悠介  「よかったな。それじゃ」 スークン「待たれよ」 ガッシィッ!! 悠介 「なんだよオワァアーーーーッ!!!!」 肩を掴まれたから振り向いてみれば、スークンの腕が信じられないくらいに伸びていた。 スークン「我ら、頭以外は伸縮自在」 シークン「これくらいで驚いてたらこの世界じゃ生きていけないぜ?」 ……えらいやつらに捕まっちまった……。 もういいや、無視して帰ろう……。 次は……確か神々の泉の水、だったな……。 シークン「ところでキミ、神々の泉の水で作った麦茶、飲まない?美味いよ?」 悠介  「………」 神よ……俺になんか恨みでもあるのか……? 悠介  「……あのさ。神々の泉が何処にあるか知ってるのか?」 シークン「んむ?愚問である」 スークン「愚問だね」 ニークン「死ね!」 ボゴシャア!! ニークン「キャーーーッ!!!」 ノークン「あぁっ!ニークンの蹴られた顔面がドイルさんみたいにヘコんだ!」 悠介  「ドイルさん知ってるのかよ!」 シークン「え?え〜と……50年以上前になるかな。      この集落に現れた出ュ浮=東郷って骨が置いてった漫画に描いてあった」 悠介  「出ュ浮って……」 あれか?“線路は続くよ(やまのてせん)”の。 空界にも出現してたのか……。 悠介  「まあその骨のことは捨てといて。泉は何処にあるんだ?」 シークン「フッ……」 スークン「ただじゃあ教えられんなぁああああ〜〜〜」 悠介  「………」 うーわー、すっげぇ嫌な性格……。 悠介  「……何が望みだ」 シークン「ボディ〜ガ〜ドになってくれ。      泉に行くためにはモンスターの巣を潜り抜けなければならないんだ。      だからそこまでの道のスケープゴー……ゲフッ!ゲフンッ!!      ……ボディーガードになってくれ」 悠介  「ちょっと待てコラ!今凄まじい本音が漏れただろ!」 スークン「なんのことかね?僕にゃあ聞こえなかったけどね」 悠介  「聞こえなかったもなにも、      今ハッキリと『スケープゴート』って言いそうになってただろうが!!」 ノークン「いきなり何を言い出すかと思えば……」 ニークン「耳が腐ってるんだぜコイツ」 メゴシャアッ!! ニークン「キャーーッ!!!」 思いっきり蹴ったニークンの顔面がヘコんだ。 シークン「あぁっ!せっかく治ったニークンがまたドイルさんに!」 悠介  「って、ちょっと待て!お前ら地界の文字解るのか!?      漫画っていっても日本語だろうが!」 スークン「カルナくんに教えてもらった」 ニークン「ていうか我ら、日本に住んでたこともアリ」 シークン「とある馬鹿研究者の次元の穴に巻き込まれて、狭界に飛ばされただけだし」 悠介  「………」 地界人でカルナっていったらもう、あいつなんだろうなぁ。 悠介  「はぁ……解ったよ、とにかくその泉まで行ければ文句はないんだな?」 スークン「えぇっ!?スケープゴート、頼まれてくれるのかね!?」 悠介  「……お前。ほんとコロがすぞ……」 こいつらほんと、人を馬鹿にするのが上手いよ……。 しかも人を怒らせることまで上手いとくる……手の付けようがないよ。 悠介  「運ぶからついてきてくれ。その場所は洞窟の中ってわけじゃないんだろ?」 シークン「一応。風の吹かない綺麗な森の中の泉がそうなのだ」 悠介  「───……え?」 風の吹かない森?それって…… ……ああ、確かにあそこは神聖だ。 神々の泉っていうのも頷ける気がする。 悠介  「ちょっといいか?」 足元をうろちょろと駆け回る棒人間の中の、シークンをムンズと掴み上げる。 シークン「ぐおっ!?な、なにしやがるてめぇ!首がモゲッ……モゲゲッ……!!!」 悠介  「掴み心地いいな、お前」 シークン「くまかかかかか……!!」 顔面をアイアンクローの要領で掴まれたシークンがジタバタと暴れる。 俺はそれを完璧に無視してブラックホールを作り出した。 スークン「こ、これは!次元の穴!?」 シークン「おお!慎也クンの次元の穴以来じゃないか!」 ニークン「あの時、誤ってこの穴をくぐらなければなぁ……」 ノークン「狭界なんて場所に飛ばされて、随分と地獄を見たっけ……」 シークン「この世界に召喚術があって、本当に良かったよ……」 悠介  「………」 こいつらはこいつらで、いろいろ苦労しているらしい。 シークン「で、若者よ。こんな物騒なものを作って、我らをどうする気だ。      ……ハッ!?ま、まさか我らを狭界に捨てる気か!?」 スークン「なんだと!?この悪魔!」 ニークン「デビル!」 ノークン「デーボ!」 悠介  「結局悪魔かよ!……そうじゃなくて。多分この先が神々の泉になってると思う。      それを確かめるために、スークンを連れて行くだけだ」 シークン「うそつけコノヤロウ!そんなこと言って、我らを殺す気だな!?」 悠介  「不死身なんだろ?」 スークン「不死身でも痛いもんは痛いんだ!それくらい別れモミアゲボケ!」 ベゴチャア!! スークン「ヘキャアアーーーーッ!!!」 失礼なことを言ったス−クンを思いっきり殴ると、まるで彰利のような悲鳴を上げた。 しかも壁にブチ当たってぐったりと動かなくなってしまった……。 こいつら弱すぎるくせに口が悪すぎだ……。 悠介  「とにかく行ってくるから。ここで待っててくれ」 ニークン「くそっ!そうやって人質を取られてたらなにも出来ないと解ってて……!」 悠介  「へ?いや、だからな?スークンを掴んでるのは案内したいからで───」 ノークン「うそだ!このモミアゲ!」 ニークン「モミアゲ!」 悠介  「───命が惜しくないようだなてめぇら……」 ニークン「不死身の我らに果てなどないわぁああーーーーーっ!!!!」 レディ───ファイッ!! ドゴゴシャベキゴキドゴボゴズパァンゴパァンビタァン!!!!! ───ユー・ウィン!! 悠介 「……やっぱり泣きたくなるくらいに弱ェ……」 瞬殺だった。 21名も居た棒人間どもは、その全てが究極のザコと言ってもいいほどに弱かった。 悠介 「口ほどにも無いって言葉、きっとこいつらにこそ相応しいんだろうな……」 強敵とは会ってきたけど、ここまでザコなのも珍しい。 悠介  「じゃ、行くか」 シークン「………」 ヌンチャク代わりに振り回したシ−クンが、俺の手の中でぐったりとしている。 だってこいつらの頭って武器にすると『ボイーン!』とか鳴って面白いんだもの。 かと思いきや、時にメシャアと堅くなるらしく、ついつい調子に乗って振り回しすぎた。 悠介 「……反省点だな」 夢中になりすぎるのはいけない。 そんなことを思いつつ、俺はブラックホールをくぐるのだった。 ───……。 ……。 で、くぐった先は、自分を救ってくれた光の差す森と泉。 悠介  「ここで間違い無いか?」 スークン「ああ……間違い無い」 悠介  「そうか───ってなんでお前らが居るんだよ!」 シークンの意見を聞こうとすると、 何故か先ほどブチノメした筈の棒人間どもが、その場にワラワラと存在していた。 悠介  「お前ら……ほんと呆れるくらい不死身だな」 シークン「任せてくれたまえ」 スークン「まだまだ若いモンには負けん」 悠介  「年寄りだったのか、そうか」 ニークン「貴様には負けるがな」 悠介  「誰がいつ貴様らに年齢を教えたか!」 シークン「はっはっは、照れてやがる」 スークン「気持ち悪いやつだな」 ニークン「死ね!」 ガシッ。 ニークン「え?」 ガボシャアン!! ニークン「ゴバァアーーーーッ!!!!」 途轍もなくむかつくニークンを逆さに持ち、神々の泉に顔だけを突っ込んだ。 悠介 「ほォォォォれ美味いかァ〜?美味いだろォォォォ……!!!」 ガボボッ!ゴボゴボッ!!! ニークン「グベボッ!ガベボベフボボベボ───………………」 …………………………シ〜〜〜ン……。 悠介 「……あれ?」 ザパリ……。 悠介  「……おい?」 ニークン「…………」(ぐったり……) ……すげぇ。 10秒ももたずに溺死した。 シークン「気をつけろボケ!我ら棒人間は水が天敵なんだ!      この手は水の抵抗がゼロであり、水に落ちれば死、あるのみ!!」 悠介  「威張るなよそんなもん!!」 スークン「しかし麦茶が好きなのは事実。それだけは譲れん」 悠介  「水が苦手なのに麦茶は好きなのか……。      お前ら……ほんとよく解らない生物だな……」 シークン「そういうキミは何故そんなにモミアゲが長いんだ?」 ゲシッ。 シークン「あれ?」 ガボシャァアアアアアアアアンッ!!!!! シークン「キャーーーーァアアアアアアアアアアッ!!!!」 バシャバシャゴボゴボ……ブク……………… シークンを泉に蹴り落として5秒。 彼はあっさりと溺死して泉の底で動かなくなった。 『あれ?』とか言った所為で、ろくに酸素を吸ってなかったんだろう。 悠介  「よし、あいつは無視して水を汲むか」 スークン「オーライ」 中々に見殺しスキル満点だった。 ───……。 ───神々の泉の水(シークンエキス配合)を汲み取り、ついでにシークンを回収した。 その後に棒人間の集落に戻り、俺は何かを言われる前にディルゼイルに乗った。 シークン「あぁっ!!逃げる気かてめぇ!よくも溺死させやがったな!」 ニークン「死刑に処する!降りて来いてめぇ!」 あっさりと溺死状態から復活したふたりは、俺を見上げて罵倒を飛ばしまくってきている。 だがシカト。 ディルゼイルに言って、加齢樹がある場所へ向かってもらった。 ───……。 ……バサァッ!! 空から舞い降りる。 ずっと遠くからでも解るくらいにとてつもなく巨大な樹を前に、 自分が小さな豆だと思えてしまうほどの大きさに唖然とした。 悠介 「で、でっけぇえなぁ……」 ディル『ああ。この世界で一番大きい樹だ。樹齢千年以上と言われている。     一説では、千年の寿命を作り出しているのはこの樹だとも言われている』 悠介 「そうなのか……って、そんな樹の枝を取っていいのか?」 ディル『平気だ。枝ではなく、欠片を持っていくだけでもいい』 悠介 「そっか。じゃあ」 大樹以上に大樹であるその樹の幹の傍に歩くと─── 悠介 「……これでもいいのか?」 小さな枝を拾って、ディルに見せる。 ディルはそれでいいと頷くと、早く済ませようと言った。 なにか急いでいたような気もする……ので。 それとなく訊いてみると、トンデモナイ話が聞けた。 なんでもあの樹の傍には、日暮れとともに西の竜王が現れるそうだ。 ……逃げておいてよかった。 あのままあそこに居たらコロがされていただろう……。 【ケース37:未来悠介(再)/材料収集……完了】 ───バサァッ!! 悠介 「……っと」 塔の傍に降り立つ。 呆れるくらいに高い塔を見上げ、それから入り口のドアをノックした。 ガチャァッ!! 悠介  「ダーリン言うな」 ルーゼン「ダッ───……やりますわね」 悠介  「こんなことで褒められても嬉しくないわ」 ルーゼン「まあいいでしょう。材料は集めましたわね?」 悠介  「ほれ、全部揃ってる筈だけど」 ルーゼン「……ふんふん、ええ、確かに揃ってますわね」 ルーゼンが、集めた材料をじっくりと観察して言う。 はぁ……なんにせよ、ひと段落か。 出来ればもう、棒人間関連は勘弁だ。 悠介  「それで……すぐに作れるか?」 ルーゼン「至高魔導術師を甞めないでほしですわね。      こんなもの、5分もいりませんわ」 悠介  「……そっか、そりゃよかった。頼むな」 ルーゼン「ええ。リヴァイアさんに負けない、      最高の干渉払いの手袋を作ってみせますわ───ダーリンのために!!」 悠介  「ダーリン言うなっての!!」 ルーゼン「ハニー!?」 悠介  「やかましい!それはいいからさっさと作ってくれ!!」 ルーゼン「怒るとハゲますわよ?」 悠介  「じゃあしゃあ!!さっさとやれ!」 ルーゼン「ウフフホホホホホ、夫の怒りに一身に耐えるのも妻の勤め」 悠介  「俺ゃ既婚者だ!」 ルーゼン「照れなくてもいいのよ、ちょっと待っててね、ウフフフフ」 キィ……バタン。 目の前のドアが閉まった。 悠介 「……はぁ〜〜ぁぁあ……」 助かった、という感覚が身体を満たす。 しかしああいう人種って、 どうして『既婚者』とかいう理屈がてんで通用しないんだろう。 理屈というよりは事実なんだが……聞く気がまず無いんだよな。 それで騒ぐだけ騒いだら自滅するタイプでドッカァンッ!! 悠介 「───……」 おい……今、炸裂音が聞こえたぞ……? 悠介 「まさかとは思うが、揃えた材料全部破壊されたなんてことはないよな……」 声  「キィイイーーヤァアアーーーッ!!!     ダーリンが集めた材料が全て灰燼と化しましたわぁーーっ!!!」 悠介 「ごぉおおおぁああああああああっ!!!!」 忘れてた……。 このテの性格のヤツは絶対にお約束というか、 嫌な方の期待を裏切らないヤツだった……。 悠介 「おぉおおっ!!!ぉおおぉぉぉぉぉっ!!!」 やべぇ泣ける。 あぁいう性格のヤツは、どうして人に苦労をかけるのか……。 そりゃあ彰利のためなら構いやしないんだが、 ルーゼンのためにまた奔走するのなんて冗談じゃないぞ……。 声  「まぁいいですわ。予備があった筈だからそれを使いましょ」 悠介 「最初っからそれ使えよ!!」 俺ゃあなんのために材料集めに行ったんだよ!! チュイン、ガタガタトカカカカカ……。 叫んでみても、聞こえるのは作業しているような音のみ。 ……無視かよ。 ガチャッ……。 ルーゼン「ふぅ、終わりましたわダーリン」 悠介  「だからっ……!ダーリンともハニーとも呼ぶな!」 ルーゼン「照れなくてもいいわよ。それじゃあこれ、約束のものね」 悠介  「……人の話、真面目に聞く気があるんだろうか……」 しかし差し出される手袋は受け取る俺。 ああ……なんか悲しい。 ───けどまあこれで彰利が救えるなら安いか。 悠介  「まあ、サンキュな。それじゃあ俺、急ぐから」 ルーゼン「待ちなさい。精製料を請求しますわ」 悠介  「……ちゃっかりしてんなこの……!なにが望みだ……」 ルーゼン「それはもう、キスを」 悠介  「キス?そっか。えーと……ほれ」 ビタァンッ! ルーゼン「ヒキャアッ!?」 たわけごとをぬかすルーゼンの顔に、 活きのいいキス(魚)を創造して投げつけた。 悠介  「じゃ、確かに」 ルーゼン「えぇっ!?ちょ───なんなのこのウィリブ(魚)は!」 悠介  「地界の魚で『キス』って名前のものだ。じゃあな」 ルーゼン「なぁああーーーーっ!!?」 ルーゼンに確かな代金……代金? まあいい、代金を渡した俺は、なんの蟠りもなくその場から逃走した。 嗚呼よかった、要求されたのがキスで。 さぁ〜て、さっさと千年の寿命を回収して帰るかぁ。 Next Menu back