幾度となく夢に見た望郷。

帰りたいのは自分じゃないことなんて、ずっと昔に知っていた。

けれどしくしくと聞こえる鼓動は、確かにずっと昔から胸にあった。

白全てを映えさせるひとつの黒があって、

けれどひとつの黒を映えさせる色は存在しなかった。

だから自分が黒を映えさせるなにかになろうと決意した。

血の海に沈んだ肉に刺さる刀の墓標を眺めながら、それでも友のためにと限界の創造。

気づけば自分は眠ったままで、目を覚ましてみれば景色はまるで変わっていた。

その時の『俺の景色』なんてものは、親友と過ごす世界に他ならなかった。

俺も結局そいつと同じだった。

そいつとの違いは、ただ俺が血に濡れず、ただ俺が黒にならなかっただけのこと。

一歩違えば真逆になっていた筈のそれは、

どうしてどの歴史でもそうあってくれなかったのか。

自分が黒になる歴史があったとしたなら、もっとあいつの救いになれたかもしれないのに。

……戻れるものなら変えてやりたい歴史がある。

でも、それをしたところであいつが救われるわけじゃないってことも知っている。

なんて悪循環だ、って悪態をつくけど……そんな悪態さえも黒に消えた。

だから。

そんな悪態を飲み込んでしまい、何も言わずに白に微笑んでいてくれるそいつが……

───悲しいといえば悲しかった───
















───たわけモン道中記01/此処に融合せし未来への胎動───
【ケース01:過去悠介/戻ってきた瞬間。戻らない瞬間】 ───……ふと、自分以外の気配に気づいた。 そいつは多分傍に居て、自分を見下ろしているんだなって、そう思う。 直感めいたものだ、確信なんてない。 けど、そいつなら多分そうするかなって……漠然とそう思った。 まったく形容しがたい直感を胸に、ゆっくりと目を開けた。 そして言う。 おはよう、って。 彰利 「ああ。もう夕方だけど……おはようだな、悠介」 目を開けた先に居たそいつは、どこかやわらかく微笑んだままにそう言う。 皮肉でもなんでもない、親友としての言葉だった。 悠介 「目、覚ましたんだな。具合はどうだ?」 目の前にそいつが居る事実で解ってそうなものを、俺は敢えて口にした。 こいつには訊かなきゃ解らない。 予測なんて腐るほど出来るけど、こいつは他人のためなら平気でウソつく馬鹿野郎だから。 彰利 「特に異常は無いかな。リヴァイアにも言われたよ、安定してるって。     逆にお前はどうなんだよ、親友」 思わずくすぐったくなるような、悪戯好きの子供のような目をするそいつ。 こいつは、どうにも俺と対面する時はこんな顔をする。 身構えてないっていうのか、身構えてないって言葉さえ身構えて無いっていうのか。 ああ、上手く要約できないけど───危うくないんだ、つまり。 悠介 「こっちも安定したみたいだ。異常は無いし、余裕だ余裕」 身体を起こしてみる。 ヒュンッて勢いをつけて起き上がってみた。 それは今まで通り実行出来て、 『家系の身体能力が無くなる』なんてことはなかったことに、少なからず安心した。 月操力に続き、それまで無くしてしまったら…… 俺はこいつに、何も言えなくなってしまうんじゃないかって少し怖れた。 けど……うん。 悠介 「お互いの目覚めを祝して」 彰利 「ん───ああ、そっか。お互いの目覚めを祝して!」 ばちぃんって音が、母屋の縁側に響いた。 その音を耳にして訪れる存在は無く、今はただ静かだった。 ただその分大きく響いた音に比例して、弾き合わせた手が真っ赤に染まっただけ。 もちろんそんな行為に素直に笑いもしたし呆れもした。 ようするに……そう、楽しかった。 彰利 「あいちちち……!!」 悠介 「ばかおまえっ……!本気でやるヤツがあるかっ!」 彰利 「なにおう!?俺が本気を出したら手ェなんて吹き飛んでるぜ!?……俺の」 悠介 「威張るなそんなもん!」 関係は前と然程変わらない。 当然と言えば当然だけど、違和感が無いと言ったら嘘になるって思った。 だから───全部話してしまおうって思った。 この世界の、多分ほとんどの人が───俺とお前の過去を知った、って。 それを通じて、月の家系のことがいろいろな人に知られた、って。 そんなことを、目覚めたばかりのこいつに言わなきゃならないんだ。 悠介 「───」 彰利 「───……」 考えが脳裏に浮かべば、それに気を取られるように会話は止まる。 そんなことは当然で、ふたり同時に考え事なんてすれば……その当然が必然にもなった。 それでもニカッと笑い合って、重く考えないようにと語り合った。 これが俺達のやり方だから。 悠介 「悪い、彰利。俺達の記憶と過去、世界中にバラまかれちまった」 彰利 「構いやしないって。そんなの、引っぱられた記憶と一緒になって見てた」 悠介 「そうなのか?」 彰利 「……サンキュな、悠介。     誰かに救われるのは怖いけど、お前に救われるのは悪くないよ」 目の前のそいつはきっと傷つくだろうと思ってた。 いや、思おうとしてたのかもしれない───だってその方が人間らしいから。 だってのにそいつは『へへへ〜』なんていつも通りに笑いやがって……ああもう、 どうしてお前はいつも、こんな時にばっかり笑うんだって怒鳴ってやりたくなった。 彰利 「お前がもう『人』だってことも知ってるし、     月操力が使えないってことも知ってるんだ。     それでも俺は、お前の親友でありたいし夢を見たままで居たい。     ───そう思うのは卑怯かな」 ……あ、今頭の中で『がつーん』って音がした。 悠介 「お前は……ったくこの馬鹿がっ!!」 よって叫んだ。 続けざまに、何言い出すんだこのドアホーーッ!!って言葉をプラスして。 彰利 「なっ……」 悠介 「お前ほんっと馬鹿な!今回ばっかりは呆れ果てたわ!!     『親友でありたい』なんて、馬鹿にするのもいい加減にしろ!     ありたいどころの問題にするまでもなく、     俺は一生お前の親友だって胸張っていける!それをお前はぁあああ……!!」 彰利 「あ、いや、えーと……」 悠介 「もういい!ほんとボロボロになっても立ち上がった自分が馬鹿みてぇだ!     この話題はおしまい!俺はお前の親友で、お前は俺の親友だ!     それはこれからもずっと永遠に変わらん!!OK!?」 彰利 「………」 怒り任せに放った言葉に、 あろうことかそいつは『ポカーン』と口を開けたまま固まってやがった。 普段そんなことをする筈がないってのに、 どうしてこいつは俺にだけは無防備な顔を見せるのか。 ……そんなの、こいつがそれだけ俺を親友だって思ってくれてるからに決まってる。 だから俺も応えたいって思うんだ。 それは絶対に偽りじゃない。 ───だってのになぁ。 彰利 「……不束者ですが、よろしくお願いします」 悠介 「───……ば、ば───」 何をおトチ狂いになられたのか、 目の前のそいつは畳みに三つ指を立てて頭を下げてきやがった。 その姿に『ばかたれぇーーーっ!!』と叫んだのがこの2秒後。 後は阿鼻叫喚。 まるで初めて会った頃のように取っ組み合いの喧嘩をして、 ボロボロになる頃には……俺達は、前よりもずっと『親友』だった。 【ケース02:弦月彰利/オメガ・アンゼルモーゼ】 ───……。 彰利 「あいちちち……!よもや本気で殴ってくるとは……!」 悠介 「お、お前な……!ちったぁ手加減ってモンを……!」 悠介と殴り合いをして数分、 ボロボロになった状態で倒れていた体を起こした俺と悠介は笑った。 悠介 「未来の俺の知識と経験を持っててもこのザマかよ……。お前強すぎ……」 彰利 「あ〜、そっかそっか……知識と経験貰ったんだっけ……。     どうりでいきなり行動の速度が異常に上がったと……」 甘くみたつもりもなく、普通に喧嘩をした。 手加減無しに殴り合い、手加減無しに蹴り合った。 そしたらもう避ける避ける、殴る蹴る。 しかも一瞬の隙を突いて攻撃に転じるその素早さは、今までの悠介とは一線を画す。 平和ボケしてた頃とは大違いだ。 彰利 「フフフ、成長したな友よ……」 悠介 「成長って言えるのか?これ」 彰利 「……さあ」 確かに貰い物だからねぇ、成長とは違う気もする。 彰利 「槍捌きとかどうだ?未来の悠介って槍が得意だったけど」 悠介 「ふむ───槍が出ます」 キパァンッ!! 悠介の手に槍が精製される。 今までみたいに完成品がポムと出るわけじゃなくて、 手の平の上に光の粒子が瞬時に集まって、一気に固まるように。 悠介 「っと……フッ」 シュカッ───ヒュパパパパァン!!! 彰利 「オッ……オオ……」 秋の樹木に残ってた枯れ葉を突き落とすと、その小さな的を微塵突きにする悠介。 その槍捌きは……とんでもない速さだった。 悠介 「くっは!ダメだ!筋肉が付いていかねぇ!」 彰利 「なんですと!?あれでかね!!」 イメージがてんで違うとか言う悠介を信じられない目で見た。 悠介 「想像は超越出来ても肉体の超越は不可能か……。     ダメなんだよ。頭の中の『晦悠介』と俺が一致してくれない」 ヒュッと槍を構え直すと、再び槍を閃かせる。 だが─── 悠介 「ぐっはぁあああっ!!」 突然痙攣でも起こしたかのように、悠介は槍を落としてしまった。 悠介 「いってっ……!!くはぁ〜……!まいったな、未来の俺って怪物だぞ……」 起こしたかのように、どころか……どうやら筋肉の限界に負けてしまったらしい。 彰利 「筋肉の作りが違うのか?」 悠介 「ああ。家系の腕力だけに頼ってるわけじゃない。     しっかりと自分自身の力もつけてたみたいだ。イメージが追いつかない」 拾い上げた槍を一振りすると、その槍は悠介の手から消えていた。 彰利 「……創造、極めたんか?」 悠介 「どうだろな。ただ───創造出来ないものはそう無いと思う」 彰利 「そうなのか。羨ましいのぅ……あ、そだ。ラグナロク出来るんだよな?」 悠介 「ラグナロク……とは違うんだけどな。黄昏は創れる」 彰利 「名前が解らなかったからラグナロクって言っただけだって。     光の武具はどうなんだ?ロンギヌスとかアキレウスとか」 悠介 「言ったろ?未来の悠介の経験もあるし、俺自身の経験もある。     多分槍でも剣でも、なんでも創れるよ。でも俺は槍より刀剣の方が向いてそうだ。     前世の記憶が見えたからかな、そっちの方はなんとかなりそうだ」 その言葉に安心する。 あとは─── 彰利 「───……詩は、知ってるか?」 悠介 「へ?……ったく。お前、その言い方だと随分前から詩のこと知ってたろ」 知っているって解ってるのを訊くのも変な感覚よのぅ。 でも悪い気はしません。 彰利 「『自分の詩』だけはね。だからさ、用事済んだら弦月屋敷前に行かないか?」 悠介 「───……ああ、望むところだ。俺はとことんお前に付き合ってやるからさ。     だから、お前にもとことん付き合ってもらうぞ?」 彰利 「……そうだな。お前となら、それもいい」 用事ってのは『級友』との騒ぎの再開。 多分───つーか絶対、中井出達は俺達を見ていろいろ言ってくるんだろう。 嫌われるのには慣れてる。 今は、それでいい。 彰利 「ほんじゃまあ、行きますかぁ」 悠介 「そだな。体も落ち着いてきたし」 不思議な感覚だった。 嫌われるって解ってるのに、その場に行くことに恐怖なんて無い。 むしろ、相手がどんな風に怖がってくれるのかが楽しみなくらいだった。 自分がおかしいのかって思ったけど─── 目の前に居る悠介も、ブラックホールを創造しながらそんなことを言っていた。 ……ちょっと呆れはしたけど、やがてそうすることが当然みたいにふたりで笑った。 悠介 「よっしゃあ!いっちょ嫌われに行くかぁ!!」 彰利 「まったく、つくづく『家系』って言葉から離れられないよなぁ俺達!」 悠介はもう月操力なんか使えない。 それでも『俺が月の家系だってことに変わりは無いんだ』って笑った。 『せっかく解放されたのに、馬鹿だな』って言う俺に対して、そう笑ってみせたのだった。 【ケース03:晦悠介/たわけモン道中記】 ───……ズボァッ!! 彰利 「ヨゥメェ〜〜ン!!」 全員 『っ……!!』 ざわっ……! 悠介 「おお」 旅館の部屋に出た途端、その場に居たらしい元クラスメイツどもが恐怖に凍りついた。 ……ふむ。 悠介 「中井出よ」 中井出「っ───!!」 中井出の肩が飛び跳ねる。 目を合わせないようにしているらしく、うろうろと視線が彷徨ってるのがよく解る。 悠介 「言うまでもないけど───これで、本当に『友情ごっこ』は終わりだな」 中井出「……ごっこなんてものを続けてきた覚えなんて……ねぇよ……!」 それが答えだ。 つまり、事実に気づいたこいつらにしてみれば、 それはごっこにも満たないものだったってことだ。 そして……中学の頃の俺は間違ってなかったってことだろう。 『こいつらに俺達の何が解る』 そんなこと、とっくの昔に気づいてた。 所詮普通の地界人に、俺達を受け入れられるヤツなんて居ないのだ。 彰利 「中井出よ……そして原沢南中学校の元クラスメイツ達よ……。     今日はお別れを言いに来たよ」 藍田 「………」 彰利 「な、悠介」 悠介 「ああ」 多分、打ち合わせなんかしなくたって……言いたいことなんて決まってる。 だから一呼吸おいてからふたりで言った。 『こんな俺達と、馬鹿騒ぎしてくれてありがとう』と。 それで終わり。 俺と彰利は震える原中のクラスメイト達と、永遠の絶交をしたのだ。 やがて俺達は、ゆっくりとその場から離れた。 ブラックホールを創るわけでも、月空力で飛ぶわけでもない。 ただゆっくりと、襖を開けてその広い部屋から出て行った。 ……そんな俺達を見ても、誰も何も言ってきやしない。 怖がってるのがよく解った。 そんな中で、小さく声を呟かせるやつらも居た。 声  「人殺し……」 声  「バケモノ……」 声  「……ウエストポーチ」 ドボォッ!! 声  「はきゅうっ!!」 悠介 (……?) なんだかよく聞き取れなかった言葉もあったんだが─── そんな言葉で……俺達が楽しく過ごせた時間の代金は十分だ。 そんな言葉だけで俺達と一緒に騒いでくれて、本当にありがとう。 それから───お前らでも笑えないくらいの黒い過去で、本当にごめん。 ……ゆっくりと、後ろ手に閉めた襖の先から安堵の息が聞こえる。 そんなものを耳に、俺と彰利は顔を見合わせて声を殺して笑った。 彰利 「じゃ、次は……」 悠介 「この旅館の主だな。世話になったから礼くらいは言いたい」 彰利 「オッケイ。しっかしアレだなぁ……。     これから商店街とか行っても、モノ売ってもらえるかどうか」 悠介 「片っ端から創造するさ。もうフッ切れた」 彰利 「おお、だったら俺に遊戯ボーイアドバンスをくれ」 悠介 「『繋げればゲームが出来る』って程度のイメージしか出来ないぞ?     ゲーム自体もどういう内容か解らん」 彰利 「……じゃあ、創造出来るのって食い物とか服くらいじゃないですか」 悠介 「ん……そういうことになるかな」 応用が利かないな……なんとかモノの構造を読み取る方法は無いものか。 彰利 「お、旅館の主とその女将さん発見」 悠介 「おお、それは是非挨拶せねば」 厨房の方でわやわやと何かをやってたふたりを発見。 俺達はなんの気兼ねもなく厨房へと侵入して、ふたりに声をかけた。 悠介 「ども」 彰利 「チィイイ〜〜ッス」 真由美「え?あ」 鷹志 「あんたらか。どした?」 が、ふたりは震えることも驚くこともなく、どちらかと言うと親しげに話し掛けてきた。 彰利 「えーと……あ、あったあった。はむっ、と……」 彰利、何を考え付いたのか近くにあった『ひじき』を口に含み─── 彰利 「食べちゃうぞ小僧〜!!ボバーーーーッ!!!」 ……ヒゲ女の真似をしていた。 しかしふたりとも、笑い出す始末。 鷹志 「くはははっ……ヒゲ女か?それ……」 悠介 「しかも解るのか……」 予想外だ。 このふたり、確実に俺達の過去を見た上で、それでも笑ってる。 鷹志 「何を言いに来たのかは知らん。けどな、俺達はお前らのこと嫌いじゃないぞ」 彰利 「ウィ?いきなり何を言い出すのかね」 鷹志 「聞けって。未来の凍弥がお前らに世話になったってのは、     悪いけど見させてもらったし───」 真由美「与一くんがお世話になったのも、     サクラちゃんがお世話になったのも見させてもらったから」 鷹志 「ズバリ言うと、別に怖くもなんともない。     お前らと一緒に来たやつらはガタガタになってたけど……     まあ人それぞれってヤツか。大体人殺した責任がどうとか言う以前に、     1000年も生きてりゃとっくの昔に時効だろ?気にすんなよ」 真由美「逆に色々なことが出来る人が、     サクラちゃんとか以外に居るんだなって安心しちゃったよ。     うん、あなたたちは全然間違って無い」 彰利 「………」 悠介 「………」 一気に語られた、目の前のふたりの本音。 ……本気で呆れた。 こんなヤツ、居るんだな……。 真由美「そうそう、そろそろここに来る人が居ると思うから、まだ何処にも行かないでね」 彰利 「今……なんと?」 真由美「え?ああ、あははっ、それ本当に言うんだね」 彰利 「グムッ……!」 真由美「困った時は『グムー』で、驚いた時が『ゲェーッ』だよね?」 彰利 「ゲェーーッ!!……はっ!?」 真由美「あはは、ほら」 彰利 「グ、グムーーーーッ!!」 おお、彰利が遊ばれてる。 珍しい、とまではいかない光景だが……面識の無い人に遊ばれるのは珍しいと思う。 彰利 「何を失礼なこの小娘が!お、俺だって貴様のことは知っておるよ!?」 真由美「……そうなの?」 彰利 「まず!……えーと、髪が長い」 真由美「………」 彰利 「それから……うむ!スタイルも良し!大きすぎず小さすぎず、バランス型だ!     しかし安産型と見た!きっとよい家族に恵まれるでしょう!!」 真由美「〜〜〜っ……!!!」 悠介 「彰利……ちょっと黙れ……黙ってくれ……。その人、顔真っ赤だ……」 鷹志 「お前なぁ……そりゃセクハラって言うんだぞ?」 彰利 「え?本当のことを言ったんですがね……ちなみに初夜は体験済みですか?」 メゴシャア!!! 彰利 「ジュネーブ!!」 悠介 「黙れって言ってるだろが!!恥ずかしいことベラベラ口に出すな!!」 彰利 「ぶげげ……!だ、だからってアータ、何も例の如く鼻潰さんでも……!!」 殴られた鼻を押さえつつ言う彰利。 『黒』ってこと関係無しに、 普通に変態オカマホモコン搭載なんじゃなかろうか、こいつの場合。 鷹志 「……お前らって、ほんと映像の中のまんまなのな……」 悠介 「ぐっ……」 思いっきり呆れられてしまった……ああくそ、恥ずかしいったらない。 声  『おーい!来たぞ鷹志ーーっ!!』 と、そんな時、玄関側から声が聞こえた。 それを聞いたふたりが顔を見合わせてパタパタと厨房を出てゆくと、 悠介 「そこには鼻血を出した変態の姿だけが残されたっ……!!」 彰利 「わざわざ口で言わないでくださる!?とっても傷つくじゃないですか!!」 それでも手を離した鼻からは、もう鼻血など出ていない。 さすが彰利だ。 だってのにブツクサと文句を飛ばし、 でも最後には『うん、ダーリンはそれでいい。ヘンに気ィ使われたら怒ってた』と笑った。 ……殴ったこと言ってるのか? だとしたらそんなことは当たり前だ。 あんな映像見たからって、俺がどう変わるかとかそんなことは無い。 ただ、唯一の親友を意地でも幸せにしてやりたい、って思っただけなんだから。 ───ドタドタドタドタ……! 悠介 「うん?」 彰利 「オウ?」 複数の足音を耳にした。 ふと厨房の出入り口を見てみれば、 廊下を滑るように……というか思いっきり滑って登場した幾つかの影。 その中のひとりが豪快にズッコケてたが、気にしないでおこう。 悠介 「あ」 彰利 「お───精霊野郎!」 その中に穂岸遥一郎が居た。 しかもその穂岸遥一郎がとんでもないことを言ってきた。 遥一郎  「よっ、久しぶり」 悠介&彰利『───へ?』 当然、俺と彰利は訳も解らずに固まるのだった─── 【ケース04:弦月彰利/精霊野郎】 ───……。 悠介 「───……つまり、お前と、そっちの……」 澄音 「蒼木澄音。澄音って呼んで欲しい」 悠介 「澄音、か。そいつは、未来の頃の記憶を持ってるのか?」 遥一郎「そういうことになる。最初は驚いたもんだけどさ。     未来のことを知ってる理由は……正直良く解らない。     けど、予想なら立てられるし、今はそれで納得してる。     しかしさ、空中にお前らの映像が現れた時、本気で何事かと思った」 悠介 「ふむ……」 凍弥 「しっかし時空転移ね。     驚くなってのが無茶な話だが……俺としては羨ましいな、うん」 鷹志 「馬鹿かお前は、こいつらの過去見たろ?相応の覚悟が無いヤツが軽く言うなよ」 悠介 「いや、構わない。むしろ軽く見てくれた方がこっちとしても重くない」 凍弥 「そら見ろこの馬鹿」 鷹志 「あからさまに言い返すなっ!!」 ……さて、ダーリンこと悠介がいろいろな方々とお話をする中、 アタイはひとりのおなごと向き合っておりもうした。 あ、ちなみにここは管理室みたいな場所で、 そうそう誰かが入ってくるようなことはござんせん。 彰利 「ここ、じゃね」 パタン。 オセロがひっくり返る。 そう……アタイは凝りもせず、またオセロをやっているのです。 でも……なんですかね、目の前のおなごには負ける気がせんのですよ。 雪音 「えっと……ここ」 パタン。 彰利 「む。ではここに」 パタン。 おなごの名は観咲雪音。 精霊野郎と風野郎に引っ付いてきた、究極の馬鹿である。 雪音 「むむっ……!じゃ、じゃあここ」 パタパタ……。 彰利 「ホホッ───とったぁあーーっ!!」 パタァンッ!! パタタタタタタタ!!! 雪音 「あ、あ───あぁああああっ!!!!」 その様はまるで麻奈。 かつて、風太と結婚して緋芽を生んだ、あの伝説馬鹿にそっくりだった。 ……まあその、馬鹿っぷりも見事に。 雪音 「ま、待った!今の待ったぁーーーっ!!」 彰利 「ほっほっほ、勝負に待ったは無しですじゃ」 雪音 「うぐぐぐぐ……!!しょ、勝負だぁーーーっ!!!」 彰利 「勝負なら今してるでしょうが!!」 呆れたことに、なんでも勝負で解決したがるところまでそっくりだった。 更に意外だったのは、 この場に集まった皆の衆は我らのことが恐ろしくないとおっしゃる。 疑問をぶつけてみれば、満場一致で『過去は過去で今は今だろ』とのこと。 ようするに気にしてないって意味らしい。 悠介は悠介ですっかり意気投合してケタケタと笑い合っている。 かくいう俺も、案外居心地が良かったりする。 なんでかというと…… 雪音 「次!次にらめっこしよ!!これなら負けない自信があるよーーっ!!」 彰利 「……ぷくっ……」 雪音 「あっ!あっぷっぷって言う前に笑うなーーっ!!」 目の前のこいつも、悠介と話しているあいつも、過去で見たその通りの性格すぎたのだ。 だから落ち着ける。 精霊野郎もそのままだし、閏璃に至っては……遠慮無く罵倒争いが出来る。 ようするに喧噪に慣れているヤツらなんだ。 しかも俺達の過去を見て、その上で自然に笑って話し掛けてくれている。 それは……自分が夢見ていた理想郷に近い光景ではなかったか。 雪音 「じゃ、いくよ?に〜らめっこし〜ましょ♪」 彰利 「断る」 雪音 「断るなーーーっ!!そこは『わ〜らう〜と負〜けよ♪』だよ!?」 彰利 「しゃあないのう、ならば全力でかかってきなさい」 雪音 「ふっふっふ……積年の恨み、晴らしてくれようぞーーっ!!」 彰利 「オセロで負けると『積年』になるのか……」 雪音 「むむ!?訳解んないこと言って逃げようったってそーはいかないよ!?     ゲンツキさん!今日がキミの命日だよーーっ!!」 彰利 「だーーっ!!     ゲンツキじゃなくてユミハリだってさっきから言ってんでしょうが!!」 雪音 「漢字が難しいのが悪いんだよ!わたし悪くないもん!!     さー!しょーぶだーーーっ!!!」 ハワーッ!!と叫ぶ目の前の雪音さん。 なんとも元気だが、長時間付き合うと疲れそうだ……このアタイがですよ? こやつ、信じられんくらいの体力馬鹿ぞ……。 雪音 「にーらめっこしーましょ!わーらうーとまーけよー!あっぷっぷ!!」 彰利 「焚ッ!!」 メシャ! 雪音 「ばぷぅっ!!?」 ……勝負は一瞬にして決着が付きました……。 一気に顔を変形させたことが効いたのか、雪音さんは畳みの上で転げ回って笑ってます。 彰利 「……キミさ、なんでも勝負で決めたがるくせにどうしてそう弱いのかね……」 麻奈の時といい、ほとほと似ているおなごに悲しみを覚えました。 ハッキリ言ってビーダッシュほどに超弱い。(意味不明) 彰利 「さて───皆の衆、なんだってアタイ達に会いたいと思ったのか、     ひとまずそれを聞かせておく霊・守太郎くん」 凍弥 「……懐かしいこと言うな」 悠介 「まぁよ、まぁあああよ。キミは何故ここに来たのかね?」 凍弥 「知れたこと……これを見よ!!」 閏璃がゲーム機とゲームをバックから取り出した。 しかもそれは─── 彰利&凍弥『ONEPIECE!!グランドバトル3!!』 そう……かつての時代、菜苗さんにコテンパンにやられたゲームだ。 彰利 「そうか……俺と遣り合おうってハラか」 凍弥 「フッ……未来の俺と今の俺……どっちの腕が上か試したいだけさ!!」 彰利 「よっしゃあ勝負ぞ!!返り討ちにしてくれるわ!     パイロットウィングスで、     どんな風力だろうと満点に頭から突っ込める俺の実力───とくと知れ!」 凍弥 「グランドバトル関係ねぇ!!」 ───そんなわけで、 ゲームとゲーム機を管理室に勝手に取り付け、勝手に盛り上がってゆく我ら。 もう話し合ってる悠介達のことなど完璧に無視でした。 エネル『ィヤッハッハッハッハ!!』 彰利 「ィヤッハッハッハッハ!!」 ドゴシャーーーーンッ!!! 彰利 「…………ィヤ……」 ……で、いきなり負けた。 Next Menu back