───たわけモン道中記06/非凡のような平凡のようなアレコレ───
【ケース17:弦月彰利/死神化の黒い鎌】 彰利 「おるわおるわ、カメラ小僧どもがうじゃうじゃと」 遠い遠い視線の先に、石段に足を掛けた人間どもが居た。 普通じゃ見えませんがね、レオと融合した俺ならば見えるって距離ザマス。 彰利 「やれやれだのぅ、ネタならなんでもいいのかね」 ひとまず持ってるカメラとビデオカメラを全て破壊。 遠くの方で火花が散って、機械類の全ては灰燼と化しました。 キャア!花火ですよドドリアさん! 彰利 「しかし───こうなると閏璃凍弥とか精霊野郎も大変なんじゃないかね」 人間関係がこじれてなけりゃいいけど───って、ここまできて他人の心配ですか……。 彰利 「お人良しだねホント。でもまぁ確かに、あやつらとは未来でもいろいろあったし。     それにこの時代では俺や悠介を信頼してくれた。     ……正直中井出達の裏切りはショックだったけどねィェ〜」 やっぱりアタイの過去はグロすぎましたか。 ……だってのに閏璃とか精霊野郎は平気なんだよなぁ。 ああ不思議。 彰利 「ンマー、あれだ。人間どもが我らに危害を加えるつもりなら、     全力を持ってボコボコにすることにしましょう。     飛ばされた核だって空狭転移で飛ばすことが可能ですし。     その時は己が放った核で滅びるがいいわ人間!!」 石段の頂上……にはちと足りない母屋の部分で、エネルのように両手を広げてみた。 むう……なにやらよい感触ですよ? 彰利 「所詮、人の敵は人というわけか。特別に産まれた我らが妬ましいんだわきっと」 そうとでも言ってなきゃやってられん。 彰利 「おおそうそう、     上空に映し出された映像をカメラに納めたってヤツもおるかもしれん。     全部破壊しましょう!うんそれがいい!“無限を刻む真闇の魔人(アンリミテッドブラックオーダー)
”!!」 メギャアアーーン!! ……と、大層な音が鳴りましたが鎌はありません。 鎌の力を体に流すために、鎌を『骨子』にしたんです。 ようするにラグナロクと同じ要領でござる。 鎌の姿は無いけど力は引き出せる、といったやつでございます。 彰利 「カモン黒衣!さあ───この世界の過去を視て、ビデオを手にした輩に天罰を!」 黒い外套を纏った俺は、月操力を使うまでもなく跳躍し、やがて飛翔した。 彰利 「ムゥ!予想通りじゃ!」 俺の生き様を吸収して精製された鎌は、俺の予想通りのものだった。 数々の死神と出会い、既に我が身も死神側の俺は、 この鎌を発動させることで完全な死神化が可能になる。 おそらく、かつてルナっちがやっていたように人の視覚から消えることも出来るのだろう。 それに加え、人の身じゃないから『鎌』をどれだけ使おうが心配要らない。 彰利 「あとは───“時操反転(プリーヴィアス)”!」 頭に手を当てて唱えると、瞬時に人だった体が猫に変わる。 悟り猫「───OK!猫化も余裕で実行可能!“時操回帰(アフティアス)”!」 シャキィンッ! 彰利 「うっしゃあレッツハルマゲドン!     人の平和を掻き乱すバッキャロォどもに、死神の鉄槌を下してやるのだぁっ!!     うわぁっはっはっはっはっはぁっ!!」 こうして俺は雄山笑いをしつつも、見える世界の過去を辿りながら飛翔するのでした。 なぁに、すぐ済むさね。 【ケース18:晦悠介/日々是鍛錬也】 目を覚まし、メシも食い終えた俺は、神社のお堂で肉体鍛錬をしていた。 人間の体ってのは無闇に鍛えるよりむしろ、 『頭の中でこうなりたい』と思うことが必要。 そうなると話は早く、 イメージすることに特化した俺は、鍛錬の条件は誰よりも揃っていた。 悠介 「………」 秋の風は思ったよりも冷たいもので、汗が吹き出た体には正直寒い。 だがこれも忍耐力の鍛錬にもなるだろうと、そのままにしている。 悠介 「疾───!」 ブォンッ!ゴォゥンッ! 悠介 「つ、は……!はっ……はぁっ……!!」 重さ50キロの脇差を片手ずつに持ち、振るってゆく。 最初は平気だったんだが、これがまた少し振るうだけでどんどん体力が削られてゆく。 悠介 「く、っ……はッ!フゥッ!せィッ!───たァッ!フッ!はァーーッ!!」 それでも鍛錬はやめない。 絶対に追いついて、追い抜いてやるって誓った。 それは確かな目標であり、この刺激が無くなってしまった世界での最高の楽しみだ。 自分が頑張ることで自分を高められるんだ、これほど嬉しい状況は無い。 ズルッ───ガヂヂャァンッ! 悠介 「くぁっ……!」 汗で滑ったのか、脇差二刀が手から落ちた。 二刀は円を描いて石畳を滑ることもせず、ただ重苦しい音を立てて石畳にヒビを刻んだ。 悠介 「はっ、はぁっ……!くぁ……、っ……はぁっ……!     うあ……は、はぁ……手の皮、はぁ……剥けてやがる……!」 見れば、手の平は皮が剥けて血だらけになっていた。 落ちた脇差の柄にも血がべっとりと付いていて、 汗で滑ったと感じていたものの正体は自分の血液だったらしい。 悠介 「ヤバイな……はぁ、疲れで……痛覚が……は、はぁ……麻痺してた……」 考えてみればブッ通し。 早朝にメシを用意した俺は、朝と呼べる時間帯には食い終え─── それから境内の掃除をしてすぐに鍛錬、だった。 空の上には太陽。 既に時刻は昼を回っていることだろう。 悠介 「ちょっと一服するか……あがぐあぁあっ!!!!?」 座ろうとして大勢を変えた途端、体の至る所に痺れを伴う激痛。 まあ、ようするに……忘れてた痛みや疲労を体が思い出してしまったということだろう。 たまらずにその場に座り込み、大きく息を吐いた。 悠介 「い、いぢぢぢぢ……!」 脇差を振り回している間でも体全体の筋肉を動かすようにイメージしてた代償らしい。 全身がミシミシと軋むように悲鳴を上げ、立ち上がろうとしても出来なかった。 イメージトレーニングは度が過ぎると体を壊しかねないということがよ〜く解った。 悠介 「あ〜、ここで回復の霧とか出したら台無しになるんだろうか……」 とはいっても、早く強くなりたいのは人間として当然の意識だ。 ボーッとする時間がもったいないというか、目標があるとどうしても気が急いてしまう。 悠介 「確か筋肉って休ませない内に必要以上のトレーニングすると、     疲れやすい筋肉になるんだよな……」 それこそ世に言う伊達マッスル。 俺が欲しいのは見てくれだけの筋肉じゃなくて、 細いけど密集していて、俊敏性にも持久力にも優れている筋肉だ。 ただデカイだけの筋肉では、窓ガラス一枚磨いただけで息が切れる。 力、俊敏、柔軟、持久などなど、いろいろな要素のある筋肉が一番だ。 それを作るためにはバランス良くやらなきゃならない。 悠介 「一番の問題は……どれくらいが丁度いい鍛錬になるのか、だよなぁ」 家系の身体能力はほんとバケモノ級だ。 けれどそれは、別に筋肉に根付いてるってわけじゃない。 だから自分の体をどう鍛えたらいいのかの上限が判断しづらい。 悠介 「───ダメだ、ジッとしてられない……」 体をじんわりと回復させる霧を創造し、イメージには『二日分の休息』を編み込む。 筋肉に十分な休息を取らせるために必要な時間は約二日。 悠介 「く、はっ……」 ───あとは。 悠介 「思考を紡げ。意識を繋げ。異端の思考よ例外を創造れ。(連ねるは言。連言より軌道と成す。意は創造と化し、その在り方は正に人。)     矛盾を抱きつつ既存を創り、既存を抱きつつ矛盾を目指せ。(無二で在りつつ無二に在らず、唯一でありながら既に虚無。)     枷は己の心にあり。臆せぬ思考が既存を潰す。(束ねる思考は例外に堕ち、虚無なる無象は有象へ換わる。)     想像は留まりを知らず、想像は無限に換わり、創造すらも無限に換える。(その在り方は神が如く。越せぬ壁など我が身にあらず、我が意思こそが無限の自由。)     生きた軌跡は至福に遠く、その思い出は黄昏へと集約せん(ならばその在り方をここに示し、無限の自由を世界と謳え)」 黄昏を創造する。 言を唱えるとじんわりと広がるように、お堂が黄昏の草原へと変わってゆく。 悠介 「……この世界も、完全にモノに出来なきゃな……」 ふたりに譲り受けた詩の世界。 それに慣れておかないと、いざという時に無様に終わる可能性が高い。 だから未来の俺がそうしたように、俺もそこに追いつかないといけない。 まだ土台すらも出来てない状態なんだ、誰よりも頑張らなけりゃ誰も守れない。 悠介 「───っし!」 体が回復したのを確認すると、勢いを付けて立ち上がる。 心なし、筋肉が引き締まったような錯覚を感じながら、 けれどそれが励みになって、さらに鍛錬を続ける気になれた。 石畳から草原に変わった地面から脇差二刀を拾い上げ、治した手でしっかりと握る。 悠介 「どんな状況で戦うかも解らないからな。血は付けたままでやろう」 ぬるぬると滑るが、かえってそれがいい。 離さないようにすると案外意識が研ぎ澄まされる。 悠介 「───イメージ、解放」 『相手』を創造する。 それは『朋燐』であり、まずとにかく越してやりたい相手No.1候補だ。 鍛錬は……自己鍛錬、実戦の繰り返しでいいだろう。 朋燐 『───疾』 悠介 「いざ───!」 両者の地面が爆ぜる。 間合いなどは瞬時に消え、ぶつかる脇差と脇差が火花を散らす。 ……まったく嫌になる。 自分が創造した朋燐は嫌になるくらいにしっかりと強く、 同時にそれは、俺がこいつを強いと認めすぎてるってこと。 その事実がかなり癪だった。 癪だったのに───ガッシャァアアアンッ!!! 悠介 「───!」 ……なんてこったって言葉ってこういう時に使うんだと思う。 俺は自分のイメージに負けてしまった。 朋燐 『───』 勝敗が決した時点で朋燐が消えてゆく。 俺は俺で草原に倒れながら自分の手を見てから視界を覆った。 悠介 「……やっぱり、だよなぁ」 自分のイメージでさえこうなのだ。 あの時の朋燐は、きっと本気なんて出しちゃいなかった。 それがこういう結果を出したんだ、俺自身も薄々感じていたんだろう。 相手にもならないんだったら、やっぱり自分を高めていくしかない。 悠介 「くっそ……!今に見てろ……!」 目標が強固になった。 この意思は曲げてやらん……!絶対にあの野郎を越えてやる……! ───……。 創造しておいた時計が夜の七時を示す。 俺は血反吐を吐きながら草原に横たわって、時計の針が動く音を聞いていた。 手は治しても治しても血豆で潰れ、 筋肉という筋肉は次から次へと溢れ返るイメージに追いつけず、何度か断裂。 しかしイメージばかりは留まることを知らず、追いつけない身体がもどかしく感じていた。 悠介 「ぐ、ぶ……」 そしてまた吐く。 眩暈と痺れが体を支配すると、 俺の体はもう限界だと訴えるかのように動こうともしなかった。 体は少しだけ作れてきた。 無駄ではなかったと喜んだものだが、一日で筋肉を作るというのは自殺行為だった。 日に幾度もの鍛錬と、 それに必要な二日間の休息を何度も何度も繰り返し、確かに筋肉は発達しようと頑張った。 だが───その急激な肉体変動は、嘔吐や眩暈、激痛を伴ったわけで─── 悠介 「ぎ、……、……」 ただとにかく気が狂わんばかりだった。 今は落ち着いてきてくれた方だが、数分前は絶叫無しでは耐えられない有様だった。 悠介 「あ、ああ……」 人体をナメることなかれ。 人が成長する過程を能力でスッ飛ばすとは何事かと、肉体が怒っているようだった。 痛みを創造で和らげなかったのは、そんな怒りを受け取りたかったからだ。 肉体の訴えを聞いてやれなければ鍛える以前に体が付いてこないって思ったからだ。 悠介 「……アナボリックステロイドを飲んで……     肉体変動に苦しんだジャック・ハンマーの気持ち……今なら解る……」 体がギシギシと悲鳴を上げている。 こりゃ絶対動けないな……あー、ちくしょう。 悠介 「でも……これだけ無茶したのってどれくらいぶりかな……」 なんだか清々しい気分だった。 あまり深いところで『これをこうしよう』って決めることがなかった自分にとって、 今の自分は過去の自分が憧れていた一部分に到達出来ている。 『人の在り方に絶望した』っていうのは、何も他人にばっかり言えたものじゃない。 目的も持たずにダラダラ生きる自分にこそ、心のどこかで呆れていた。 そんな俺が目的を持てたことに、自分はきっと喜んでいる。 悠介 「……でも今日はもう無理……体が動かない……」 もういい、今日はここでこのまま寝てしまおう。 一応この世界に『暖かさ』を創造して、と……よし、これでOKだ。 悠介 「あ〜……疲れた……」 けれども体を支配する痛みや疲労は、 無意味に生きた今までよりもよっぽど心地のいいものだった。 【ケース19:晦水穂/水曜どうしましょう】 ボーン、ボーン、ボーン…… 水穂 「……七時、ですねぇ」 時刻は夜の七時。 料理が出来ない晦家の晩ご飯は聖ちゃんが作ってくれて、 いろいろな準備を終えたわたしたちはお兄さんの帰りを今か今かと待っていた。 若葉 「……まさかおにいさま、ご自分の誕生日を忘れているんじゃないでしょうね……」 木葉 「有り得ます、というよりは……そうとしか考えられないかと」 セレス「一通り探してはみましたけど、神社のお堂で眠っていましたよ。     どういうわけかお堂が草原になっていましたけど」 粉雪 「……あ、じゃあこの時代の晦くんも黄昏が創れるってこと?」 春菜 「え……聞いたことなかったけど。     実際、同窓会の時も使おうとしても使えなかったみたいだし」 みさお「それはそれとして、皆さんよく彰衛門さんの『アレ』って言葉だけで、     今日が悠介さんの誕生日だって解りましたね」 若葉 「解ったというよりは片時も忘れていなかったと言うべきですね」 木葉 「然りです、姉さん」 みさお「……それじゃあ、彰衛門さんの誕生日を知ってる人、誰か居ませんか?」 全員 『───……』 全員沈黙。 聖ちゃんは絶対に知ってると思ったのに、知らないようだった。 みさお「やっぱり誰も知りませんか……。     過去の記憶にも誕生日のことに関してだけは一切語られてないんですよね……」 水穂 「あ……そういえば……」 ……あんな人生だ、生きることのみに精一杯で、 自分の誕生日なんて忘れてしまったに違いない。 水穂 「それじゃあこういうのはどうでしょうか。     彰利さんさえよければ、今日を誕生日にしてしまうというのは」 みさお「あ、それいいです。わたしは賛成ですけど───」 聖  「わたしも、賛成……」 みさお「聖ちゃんも賛成組です。他には誰か……」 夜華 「産まれた日時を偽るのはどうかとは思うが……     彰衛門は誰からもその誕生を祝ってもらえなかったのだ、     そのような忌まわしい誕生の日など捨て、     今日をその日にしてしまってもいいと思う。わたしは賛成だ」 春菜 「ん、わたしも賛成だね」 次々と賛成の意見が上がる。 なんとなくそれを耳にしながら─── 水穂 (……あれ?) ふと小さな疑問を感じて、日余さんに訊ねてみた。 水穂 「あの───日余さんは彰利さんの幼馴染でしたよね?     それなのに知らないんですか?」 粉雪 「……うん。彰利って……子供の頃から自分のことを蔑ろにしてたから、     訊いてみても全然話してくれなかったの」 水穂 「あ……」 確かに、彰利さんはあまり自分のことは話さない。 話したとしても、冗談が混じっててどこまでが本当なのかがまるで解らないんだ。 春菜 「……ね、みさおちゃん。アッくんって『感情』を受け入れたんだよね?     でも……今日のアッくん、どう思った?」 みさお「え───あ、はい……なんだか『らしく』なかったです。     まだ戸惑いが感じられました」 春菜 「あぁ……やっぱり」 粉雪 「まだ『彰利』に話し掛けられてるって感じられないっていえばいいのかな。     ううん、感情に馴染みきれてないって感じかな」 みさお「聖ちゃんはどう思う?」 聖  「……戸惑いでも馴染みでもないよ」 みさお「え?」 聖  「パパはただ、自分の感情のままに動いてるだけだよ……。     それを、わたしたちが『らしくない』とか『戸惑ってる』とか感じてるだけ」 みさお「え……じゃああの変態オカマホモコン状態の彰衛門さんも、     感情のままの彰衛門さん?」 聖  「あれはふざけてるだけだよ。でも、ふざけることも感情といえば感情だから」 みさお「………」 みさおちゃんが感心したように、ほう……と息を吐く。 わたしは感心するより驚いた。 よく見てるんだなぁって。 ……あれ?それって結局感心かな。 水穂 「わたしも賛成ですけど……お姉さん方はどうですか?」 若葉 「う……」 木葉 「………」 お姉さんふたりはわたしから目を逸らした。 その態度には……やっぱり今までの負い目のようなものも混ざっているのだろう。 今まで散々彰利さんを否定してきて、それ以外の対応を知らなかったふたりだから。 春菜お姉さんはわたしたちを居間に集めるなり、 『わたし、アッくんのこと好きなんだー』とか言い出して、 なんだかスッキリした顔をしてた。 それで負い目なんてものは少しからず消えていったんだと思う。 でも、このふたりは違う。 ゼノ 「今さらだな。なにを悩む、貴様ら」 水穂 「ゼノさん?」 ゼノ 「弦月彰利の誕生の日を晦悠介と同じく見るのが嫌か?     それは何故だ?あの男が今でも嫌いなら嫌いとハッキリ言ったらどうだ」 若葉 「っ……!き、嫌いな、わけじゃ……」 木葉 「その言葉を出せば『ならばなにを悩む』と言われますよ、姉さん」 若葉 「そんなことは解ってます!でも……」 ゼノ 「……このような場合での人間の感情は未だ理解に至らぬな」 水穂 「そこのところは同意見です」 若葉 「水穂っ!貴女どっちの味方!?」 水穂 「え?ゼノさんです」 若葉 「くはっ……!」 だってゼノさん間違ったこと言ってないし。 春菜 「嫌いなら嫌いってハッキリ言えばいいと思うよ?」 夜華 「まったくだ。彰衛門はべつにこの家に住んでいるわけではないのだからな」 粉雪 「晦くん関係で顔を合わせることはあっても、話すことなんて無いと思うよ。     だって彰利って自分を嫌ってる人には容赦無い方だから」 聖  「でも嫌いになりきれないところが可哀相……」 粉雪 「そうなんだよね……。なんだかんだでお節介だし」 春菜 「そこのところは若葉ちゃんと木葉ちゃんが一番良く知ってると思うけど」 知らないと思う。 だって『お節介された』ってこと自体気づいてないだろうし。 セレス「大まかな話をする前に、まず本人が居なければ話にもなりませんよ?     まずは悠介さんと弦月さんを連れてくるべきです」 みさお「そうですね。でも───彰衛門さんの反応、外国の方にありますけど」 聖  「うん」 春菜 「え?なんで?」 みさお「さあ……」 水穂 「あ、それはなんとなく解ります。     多分、ビデオカメラとか写真を消していってるんだと思いますよ?」 春菜 「写真って……空に映し出されたっていう過去の映像の?」 ゼノ 「ふむ……。確かにあれは人が知るべき歴史ではないだろう。     消しておいた方がどちらのためにもなる」 ルナ 「だったらシェイドに頼めばよかったのに。記憶操作できるから、簡単よ?」 みさお「ルナさん……そういうことは先に言ってください……」 ルナ 「や、ホモっちなら知ってるかと思って。     じゃあ今からでも頼んで、世界中から月の家系関連の記憶を消してもらえば?」 みさお「ば?って……ルナさん、頼んでくれないんですか?」 ルナ 「わたしアイツ嫌い」 即答でした。 水穂 「じゃあ、誰か頼みやすい人とかは……」 ルナ 「ホモっちに見せてもらった過去からすると、未来に居る『椛』って娘ね。     一応シェイドの母親みたいなものらしいから」 ルヒド「そんな回りくどいことしなくてもやってあげるけどね」 女全員『うっひゃぁあああっ!!?』 絶叫。 いつの間にか現れていた穏やか顔の黒衣の人…… 彰利さんの過去によれば『シェイド=エリウルヒドさん』は、にっこり笑って言った。 ルヒド「暇だからやってあげるよ。     代償はなにも要らないし、なにか言うことを聞けっていうことも無い。     どう?望む限りは実行するけど」 この人に頼めば月の家系の記憶は、周りの人の中から消えてゆく。 そうすればお姉さん達やお兄さん達は今まで通り普通に生活できる……。 それはいいことだと思う。思うけど……何か違う気がする。 春菜 「それじゃあ……」 聖  「───待って、ください」 春菜 「え?」 水穂 「聖、ちゃん?」 聖  「記憶を消すのは、     『月の家系』のことを良く思ってない人達だけに……してください」 みさお「……うん、それはいいかもしれません。     だってそうしないと、水穂さんの記憶からも消えることになりますし」 水穂 「あ……」 そっか。 そういえば、そうなのかもしれない。 ……危なかった、ちょっとホッとしました……。 ルヒド「うん、それじゃあ」 言って、シェイドさんはパチンと指を鳴らした。 それでにっこりと笑ったままで、動こうとしない。 春菜 「……?記憶、消しにいかないのかな」 ルヒド「え?もう終わったけど」 女全員『速ッ!!』 ルヒド「もっとゆっくりとやった方がよかったのかな。     それとも───記憶を全部消そうか?リフレッシュできて面白そうだけど」 春菜 「わーーっ!!やらなくていいっ!やらなくていいよっ!!」 ルヒド「あはは、うん、やらないよ。ちょっと残念だけどね」 水穂 「残念がらないでくださいよ……」 どうにも掴み所の無い人だ。 彰利さんの記憶の通りの人だな、と納得できてしまった。 えーと、一応わたしの中にはみんなの記憶も彰利さんとお兄さんの記憶は残ってる。 うん、安心。 でも……実際どうなんだろう。 家系の人を良く思ってない人の中から、月の家系のことは消えたんだと思うけど…… そういう不快感は、やっぱり心の中に残ったりするものなのかな。 ───なんて。 そんなことを思っていた時、家の呼び鈴が鳴った。 ルナさんとセレスさんとゼノさんは気づいていたようで、別に気にする様子も無かった。 聴力がいいにも程っていうものがあるなぁと、わたしは思った。 水穂 「……え?」 全員 『ん』 そんな中、何故か皆さんがわたしをジッと見る。 ……ようするに、キミが出なさいと言いたいんだと思う。 別に嫌だったわけでもないわたしは、促されるままに玄関へと駆けた。 長い廊下を通り抜け、やがて見えてきた玄関に手をかけて開け───パパァン!パァン!! 水穂 「ひゃっ……!?」 声  『ハッピーバースデー!』 ───……開けた途端、炸裂する音。 わたしは何がなんだか解らず、クラッカーから飛び出した紙クズみたいなものや、 名前があるかどうかも解らない長い紙を頭からモップお化けのように被って呆然とした。 男  「……ありゃ。晦じゃないぞ?」 女  「え?間違えた?」 ……目の前に居る人達は、なんかどこかで見たことあるような人達だった。 Next Menu back