たわけモン道中記11 Devil 芽衣 Cry(   デビル        メイ       クライ)
【ケース27:悟り猫(再)/神社でありつつ神社っぽくないそこ】 キィンッ!! 悟り猫「あい、到着〜」 世界猫「お……神社か」 転移した場所は神社前でした。 見上げてみれば、『塚本神社』と書かれたソレを発見できた。 悟り猫「いンやぁ〜……いつ来てもすげぇわここ……。     どうしてまた神降なんだか知らんけど、ここだと死神の力が抑制されません」 世界猫「……それって単純に神への奉仕が足りないんじゃないか?」 悟り猫「いや……でもさ、それって神社としてどうよ……」 世界猫「晦神社も似たようなもんだろ。……ここまでの邪悪感はさすがに感じないが」 そう、この神社ってば神降にあるくせにむしろ、属性が闇側に傾いてる。 普通に考えて、そんな神社はここだけだと断言できます。 世界猫「ここでの辛さと後悔ってなんなんだろうな。     ……多分禄なもんじゃないだろうけど」 悟り猫「俺もそう思うナリ」 だってねぇ、噂に名高い塚本神社ですもの。 親と兄はいい人らしいけど、妹の塚本芽衣という人物の悪名はかなり酷い。 『曰く、塚本芽衣には関わるな』は、各地でもかなり有名だ。 悟り猫「……てゆゥか、神社直す気無いんかね」 神社は以前見た通りの有様。 まさにボロボロで、まさにズタボロ。 一瞬直して差し上げようとも思ったが…… そげなことをして塚本芽衣に関わるのは嫌だった。 世界猫「……おお」 と、そげな時だった。 世界猫が軽い身のこなしで賽銭箱に乗り、その上にある振り鈴にしがみ付いた。 悟り猫「……なにやっとるん?」 世界猫「一度、自分の家のヤツ以外のを鳴らしてみたかったんだよ」 悟り猫「………」 悠介も案外子供っぽいところがありますなぁ。 でもね?それって……ブチッ───ゴイィンッ!!! 世界猫「ごはぁっ!!」 ……やっぱり。 振り鈴は猫の重みにすら耐えられずあっさり落下。 当然その下に居た世界猫の頭上に大きな鈴が降った。 世界猫「ごぉおおおあぁあああ……!!!」 あー……猫の頭にあの鈴は痛いだろうなぁ……。 いやまあ、現に世界猫も頭を押さえながら震えてるから解りやすいけどね? 悟り猫「───ムッ!!」 近い!近いわゴメス!! 何者かがこの神社にやってくる!! 悟り猫「世界猫さん!準備なさい!後悔の具現がそろそろここに現れますよ!!」 世界猫「ぐっ……わ、解った……!!」 よほどのクリティカルヒットだったのでしょう……。 キノコを食べたチャトランの如くフラつく世界猫がそこに居た。 悟り猫「……先、行ってますよ?」 世界猫「わり……そうしてくれ……」 言って、世界猫はばったりと倒れた。 ……脳震盪でも起こしたんじゃあるまいね……。 悟り猫「まあしゃあないか。     創造の理力と身体能力以外は、もう完全に普通の人間ですものね」 そりゃまああげなデカい鈴が頭に落ちりゃあ、猫姿なら俺だって気絶すると思うけど。 悟り猫「さてさてそれでは修正の旅路へと───!!」 こげな神社での辛さと後悔……少なからずわくわくした俺は、 後悔レーダーで場所を探しつつ前へと進むのでした。 ───……。 ……で。 おなご1「………」 ───ドン!! おなご2「………」 ───ドン!! おなご3「………」 ───ドン!! おなご4「………」 ───ドン!! おなご5「………」 ───ドン!! おなご6「………」 ───ドォォォォォン!! ……その場に居た7人のおなごは無口だった。 よく解らんが、大太鼓を鳴らしていたが……もしかして『ONEPIECE』の真似? 最後の7人目のおなごは溜め息を吐いてたように見えたが……っておや? あの7人目のおなご、どこぞで見た時があるような……気の所為かね? まあそれはそれとして……OH。 悟り猫「……見事にボコボコですね……」 7人のおなごが立っている場所……まあその下の石畳ですな。 そこにはひとりのおなごとひとりのおっさんが……おがったとしぇ。 しかも後悔レーダー完璧に消えちゃってるよ……間に合わなかったようです。 悟り猫「てゆゥか……」 あれに見えるは……猫神様では? 間違い無いよ……だってネコミミも尻尾もあるし。 あれがアクセサリーじゃなかったら間違いないよきっと。 おなご5「で、このおっさん達どうするの?」 猫神様?「っていうか芽衣も椎名も、学校はどうしたの?」 ……ッ!! 今『芽衣』って言った!『芽衣』って!! ……ま、まさかこの中に『塚本芽衣』がっ……!? おなご6「嫌な予感がしたからサボった」 おなご5「芽衣ちゃんが『今、神社は悪人に狙われている』っていうから駆け付けた」 おなご3「悪人なら正にここにいるのにね」 おなご6「それってあたしのこと?」 おなご3「他に誰かいる?」 ……南無。 高まる殺気を感じた拙者は、おなご6こそ塚本芽衣だと確信した。 さらにそげな塚本さん家の芽衣さんにあげなことを言ったあの小娘に、冥福の祈りを。 悟り猫「……あ、後悔レーダーが動いた……」 それこそ南無阿弥陀仏でございます……。 ごめんよトニー、おいら塚本芽衣にだけは関わり合いたくねぇのよ……。 悟り猫「世界猫の様子でも見に行くか……」 猫手で器用に十字を切ると、ゆっくりとその場を後にした。 強く生きるのですよ、小娘……。 【ケース28:世界猫/神社の神主の思想】 ───……。 世界猫「……これでよし、と」 脳震盪から復活した俺は、振り鈴の取り付けを完了させていた。 困ったことにこの振り鈴、故意に外れやすくされているようで…… 引っ掛けるところ自体が細工されて折れ曲がっていた。 これじゃあ振った途端に落ちるのは当然だ。 世界猫「直してもいいんだが……」 それはこの神社の人物がするべきことだろう。 よっぽどの根性曲がりか極悪人じゃない限り、いずれは直すだろうし。 世界猫「浮遊の翼を消すブラックホールが出ます───弾けろ」 パキンッ───シュボォンッ!! 世界猫「……ふう」 鈴を取り付けるために創造した浮遊の翼を消す。 さすがに猫の身長であそこまで辿り着くのは無理だと思ったから創造したものだが。 世界猫「さて……これからどうしたもんかな」 向こうに見える様子は、どうにもあまりよろしくない。 数人が大太鼓を叩いているのは解るが……何故大太鼓を叩いているのかまでは謎だった。 そうこうしている内に悟り猫がとたとたと歩いてきて俺に手を上げる。 悟り猫「調子はどうかね?」 世界猫「ああ、理力で治したからどうってことない。     鈴も直したし、問題らしい問題は無いと思うぞ。……お前の方は?」 悟り猫「えーと、失敗しました」 世界猫「……へ?」 悟り猫「ですからね?失敗しました。つーか間に合いませんでした」 世界猫「………」 悟り猫「でもね〜、驚いたことにこの場所って辛さと後悔が次々に溢れてくるんですよ。     一番最初に感じたのはおっさんの後悔だったみたいだけど、     次は小娘のものだった。それなのに今度はまた別の後悔を感じてるんですよ」 世界猫「……余程に禄でもないんだな、この神社……」 悟り猫「俺もそう思う……」 それって神社としてどうなんだ……? 家の神社は参拝者こそ少ないからなんとも言えないが、 ここは明らかに神社として間違っている気がするぞ……。 世界猫「ちょっと様子を見るか。救えそうなら救おう」 悟り猫「うあ、マジですか?俺塚本芽衣にだけは関わり合いたくないんだけどね……」 世界猫「塚本芽衣……───ぐあ……」 塚本芽衣……神社を担う者ならば全員が知っているであろう極悪人の名だ。 その者、金の亡者であり金のためならばなんでもする。 自分の気に入らないものは力ずくで捻じ伏せ、その捻じ伏せ方すらなんでもあり。 刃物や電球……とにかく凶器と呼べるものはなんでも使う修羅だ。 世界猫「……ああ……俺も是非とも関わり合いたくないな……」 悟り猫「でがしょ……?あげなヤツと関わったら命がいくつあっても足りんとですよ……」 なにせ、勝てる要素ならば恥もせずなんでも実行する女と聞く。 なにやら妹を溺愛してるとの噂もあったが、 言うことを聞かなければ妹でさえ攻撃対象になりかねないらしい。 ……どういう人物なのか予想がつかんぞ、まったく。 世界猫「……はぁ。悪い、ちょっとやってみたいことがあるけど、いいか?」 悟り猫「ウィ?オウヨオウヨ、そりゃ構わんが……なんぞね?」 世界猫「この神社の『徳』を高めてみようと思う。     そうすりゃその神社の関係者の徳も高まるかもしれない」 悟り猫「おお、そか。んだば俺は小娘の様子でも見てくるさね。     さすがに小娘が殺戮劇場に遭うのを見過ごすことは出来んでゴワス」 世界猫「ああ」 悟り猫が走ってゆくのを見送ると、俺も行動に移る。 えーと?まずはこの邪気をなんとかしないとな……。 世界猫「まったく……普通こういうのはその場所の神主の仕事なんだけどな……」 忙しいのかどうかは知らんが、この神社はとことんまでに放置されっぱなしだ。 そのくせ賽銭箱の周りは綺麗で、その意図が嫌になるほど納得出来る。 神社の者が金の亡者でどうするよ……。 世界猫「“時操回帰(アフティアス)”。……宮司服と邪気祓いの玉串が出ます」 元の姿に戻り、宮司服に身を包むと玉串を手に構える。 賽銭箱の横を通り、壊れたお堂の入り口部分を直し、その扉を開けて中へと入った。 悠介 「………」 すると、呆れるくらいの陰気。 こりゃあ……ルナに教えてやれば喜ぶなぁ。 悠介 「それ以前に……ここって本当に神社なのか……?」 けどまあ、ひとつだけ断言出来ることがある。 悠介 「ここで何を祈願しようと、ご利益なんて無いだろうな……」 むしろ災いが降りかかりそうだ……。 悠介 「呆れ果てていても仕方ないな……始めるか」 後ろ手にお堂の扉を閉ざすと、部屋の中心で禅を組む。 手にした玉串を振り、集中する───が。 悠介 「だぁあっ!!邪気多すぎだっ!!ここの神主は何やってんだよ!!」 充満する邪気の所為で禄に集中出来やしなかった……。 悠介 「こうなりゃ実力行使だ!     邪気を吸い込むブラックホールと場を浄化する霧が出ます!!弾けろ!」 創造の理力を以ってその場を浄化する。 しかし次から次へと邪気が溢れて来る始末。 ……なんか同じ神主として泣けてきた……。 【ケース29:悟り猫/水辺の仲間たち】 悟り猫「ッ……!!」 それは戦慄でした。 綺麗な小川が紅蓮に染まる様を、ボクは見たのです。 小川を辿って見える景色には、吊るされた小娘。 血を吐きながら苦しんでいる小娘は、先ほど塚本芽衣らしきおなごを悪人と言った小娘だ。 そして恐らく、それを吊るしているのが塚本芽衣その人なのだろう。 小娘  「げ、げふっ……うぷっ……や、やめろ塚本芽衣……!      こんなことしたって私は……貴様に屈したりなんかしな───げぼふぁっ!!」 塚本芽衣「相変わらず吐きやすいね」 決定的でした。 あっさりと名指しで呼ばれたおなごは、さらに小娘を小川に沈める。 その度に小娘は吐血し、綺麗な小川を紅蓮に染めてゆく。 悟り猫(あ、悪魔や……!ありゃあ……悪魔やで……!!) さっき相手にした包丁ラリ男が坊やに見えてきたよ俺……。 これが……これが真の極悪人というヤツか……!! 悟り猫(あ……また吐いた) 誰が何かを言ったわけでもないのに『なんだとぉーーっ!』と叫んだ小娘が吐血。 血液不足で狂い始めましたか……? おなご5「また吐いたね」 おなご2「な、なあ……そんな身体の弱いやつに拷問なんてやって大丈夫なのか?」 おなご1「折角綺麗な川なのに、真紅に染まっていってますけど……」 おなご4「ルリも懲りなければ芽衣も容赦しないからなぁ……」 でも助けようとする人は誰も居ませんでした。 ……恐らく塚本芽衣という人物は知人にも恐れられているのでしょう。 うーあ……余計に関わり合いたくなくなったよ俺……。 悟り猫「む……」 考え事をしてる中、塚本芽衣を含む小娘以外のおなごたちが神社の方へと向かっていった。 俺はそれを好機と取り、せめて小娘(ルリというらしい)に近寄る。 悟り猫「これ、大丈夫かね」 ルリ 「げほっ!がはほっ!」 おおう……盛大に吐血してますね。 まるで晦神社に来たばっかりのセレっちのようだ。 悟り猫「待っといで……すぐに月生力を流してあげますからね……ベホイミ♪」 パァアア…… ルリ 「うぶへぁあっ!!」 ゲフゥッ!! 悟り猫「おわぁーーーっ!!!」 なんたること!月生力を流した途端に吐きやがりましたよ!? つーか…… 悟り猫「ンマー!なんという驚愕的事実!ア、アータ死神と神の子でねが!!     しかも奇跡の魔法も無しに存在出来てるよ……」 あー、でも吐血の理由がよ〜く解りました。 奇跡の魔法の助けも無しに神と死神の混血が存在するなんて、かなり無茶な話だ。 奇跡の魔法が無けりゃあ未来で起きた出来事は治めることが出来なかったわけだし。 なんとかしてやりたいところだが、奇跡の魔法を持っておる知人なんぞ滅多です。 悟り猫「ンマー、一応存命出来てるみたいだし……     キミはなかなか強い意志の下に産まれたんザマスね?そういうことにしましょう」 ルリ 「ね、猫が喋って……うべあはっ!!」 悟り猫「あの……あまり喋らん方がいいですよ?     待っといで、今ロープを外してあげますから」 ルリ 「よ、余計なことするなっ!     そんなことをされたら私が塚本芽衣に屈服したことにごぶぁはぁっ!!!」 悟り猫「………」 なんだか見てらんなくなってきた……。 悟り猫「あの……正気ですか?相手はあの塚本芽衣ですよ?     このままじゃあキミ、明日の朝……なんて甘いか。     塚本芽衣の気が変わるまでずっとこのままですよ?」 ルリ 「屈服するよりマシだ!わ、私は───げぶぉぁはぁっ!!」 悟り猫「あーあー!解った!解りましたからもう喋らんといて!!     このまま放置すればいいんでしょ!?解りましたよもう!!」 流石にこれ以上血を吐かれては困りますよ……つーかよく死なないよね。 悟り猫「しからば拙者はこれにて失礼をば。     でもね、多分キミ後悔するよ?レーダーがそう言ってる」 ルリ 「こ、後悔なんて……」 悟り猫「しからばちと失礼して───月視力!!」 ピキィイイン!! 月視力を発動させ、ルリっちの未来を見る。 すると……塚本芽衣にロープを下ろされ、 小川にダイヴしてそのまま放置されるルリっちの姿が!! 悟り猫「おわぁああああああああっ!!!!!」 な、なんスカこりゃあ!!人間のやることですか!? 足はロープで縛られてるんですよ!? あんなことされりゃあ窒息死するでしょう!? しかも塚本さん家の芽衣さんたらなんでもなさそうな顔でどっか行っちゃうし……! 悟り猫「………」 ルリ 「……?」 悟り猫「……あの。ほんとに、ほんっっっっとォオオオに、このままでいいのね?」 ルリ 「く、くどいぞっ!私は誰の力も借りずに塚本芽衣をゲッファァアアッ!!」 悟り猫「キャーーーッ!!」 再び小川が紅蓮に染まりました。 悟り猫「わーーーっ!!解った解りました!このままにしときますから!     頑張れとだけ言っておきます!頑張れルリっち!死ぬんでねぇぞ!     キミはどっちかっつーと『我ら側』のお子だ!キミの未来に幸あらんことを!!」 後ろ髪を引かれる思いをしつつも、その場を後にした。 いやはや、気分は優れません。 助けられる者を助けられない気分ってのはこんなもんなんでしょうな。 じゃけんど本人がああ言ってるけぇのぅ……仕方あんめぇ。 ───……。 ……で、お堂側に戻ってみれば…… 塚本芽衣「ねえおっさん……なんで金もなしにこの神社にきたのかな?      お参りするためじゃないの?」 おっさん「ふん!貴様のような小娘に言う筋合いはないわ!!      いいからこのロープを解け!!」 塚本芽衣「もしかして父さん達の知り合いかな?」 おっさん「こんなところにワシの知り合いなどおらん!      まったく、貴様はどういう育てられ方したんだ!親の顔が見てみたいわ!!」 はい先生、俺もまったく同じ意見です。 つーか……あのおっさんってさっき塚本芽衣にボコられてたおっさんじゃん。 しかし一緒に居たおなごはおらんようです。 もしかして逃げた? 塚本芽衣「これはすいませんでした。何分まだ巫女になって日が浅いもので」 おっさん「ふん!まだ見習いということか!?      ここの神主も何を考えておるんだ一体!!      こんな未熟者に神社を任せて自分達は母屋でお茶か!?」 塚本芽衣「いえいえ、神主様は今温泉旅行に行ってまして」 おっさん「かっ!それこそ本気で神経疑うわ!!      自分達は温泉旅行で大切な筈の神社をこんな小娘達に任せるとはな!!」 はい先生、俺も全く同じ意見です。 でもそれ以上言うのは非常に危険だと思います。 おなご5「お、おじさん!!」 塚本芽衣「椎名ちゃん、抑えて抑えて」 椎名? 「でも……っ!!」 塚本芽衣「お客様のお帰りなんだよ? ちゃんと笑顔で見送ってあげないと」 椎名? 「……っ!?」 ……おお、後悔の念が凄まじい勢いで膨れ上がってきてます。 どうやら後悔するべき瞬間はここだったようです。 でも助けません。 だっていくら相手が塚本芽衣だとはいえ、あのおっさんは言いすぎだ。 なに、いくら塚本芽衣でもそこまでヒドイことはせんでしょう。 現に今だってあげにサワヤカに言葉を放ってるわけだし。 ……まあ、そげなモンは建前で、黒である俺にゃあその裏がよく解りますけど。 俺の予想ではきっとこうなるでしょう。 全てはおっさんが帰ろうとした矢先に起こります。 塚本芽衣「失礼しました、それではまたのご礼拝をお待ちしております」 おっさん「ふん!誰が来るか!!」 おっさんが怒りを露にしながら歩いてゆく。 その足はすぐに石段へと向かい、下りようとする足は宙に浮く。 ───その刹那でした。 塚本芽衣「もっとも……生きてこの神社から出られたらだけどね」 予想通りに疾駆した塚本芽衣は、おっさんの背に勢いの付いた蹴りを進呈。 おっさんは何が起きたのかも解らん表情のままに長い石段をゴロゴロと転げ落ち…… 塚本芽衣は、それを見て高らかに笑っていた。 悟り猫「あー……人でありながら悪魔の気配を放つヤツ、初めて見たよ俺……」 おっさんよ……後悔を正す前にまず、塚本芽衣に関わったことを後悔なさい。 落ち方からして死んじゃいないと思うから言いますが、二度とここには来ないように。 ……などと思う前に、塚本芽衣以外のおなご達がおっさんの介抱に向かった。 まあ当然ですな、あのままじゃ死ぬって。 悟り猫「さてどうしたもんかな、やはり塚本芽衣には関わり合いたくない」 このままとんずらしちゃおっか? いや、その前にまず世界猫の姿が見えん……彼はいずこへ? 悟り猫「ンー……お?なにやらお堂の中から異様な気配。     邪気が消えては現れ、現れては消えておるぜよ」 よく解らんが、もしかして世界猫ってばあそこで何かやってる? いかんぜよいかんぜよ……!そげなとこ見られたら、ただでは済まんぜよ……!! 悟り猫「神主として、昔好きとして、     神社を良くしようって気持ちは解らんでもないですがね……!!     ここはヤバイ……ヤバイんじゃあああ……!!」 俺は慌ててお堂へと駆け、その行動を止めようとした。 ───が、その時。 塚本芽衣「………」 悟り猫 「キャーーーーーーーッ!!!!!」 笑い声が止まったと思い、振り返ってみれば……そこには拙者を見ている悪魔が。 思わず、怪虫に襲われそうになった仲田くんの叫びが口から放たれてしまった。 悟り猫「は、はああ……!!」 思わず摩利支天さまに祈りたくなるような状況がここに。 だからせめて心の中だけでも余裕であろうと、それを唱えました。 悟り猫「な〜まくさ〜まんだ〜ば〜さらなんせんだんま〜か〜ろしゃな……。     はああ〜〜〜!!ま、摩利支天さま!!」 したっけね?塚本さん家の芽衣さんったら目の色変えて疾駆してきたんですよ。 ええまあ、以前この神降であった若人達と同じ考えでしょうね……。 この言葉を話す猫こと悟り猫をテレビ局にでも売って金にしようと思ったのでしょう。 ああ……俺ゃ真性馬鹿ですか? こげな時に摩利支天さまやりゃあ、そげな目で見られるのは当然じゃないですか。 悟り猫「ノ、ノゥッ!!お待ちになって!     拙者は悟り猫と申す者!この神社には参拝に来ただけなんですよ!!」 ぬおお……もうちょっと上手い言い訳は出せないのか俺の口は……! こげな言葉で止まるほど、塚本芽衣は生易しい存在では───ピタッ。 悟り猫「ややっ!?」 ……止まったッス。 しかもなにやら満面の笑みですよ? 塚本芽衣「なんだ、参拝者だったんだ。さくらんの知り合い?」 ……錯乱? 塚本芽衣「いやいやそんなことはどうでもいっか。それでお客様、お賽銭のほどは?      猫だからってくだらんもん出したらブッ殺すよ?」 うーわー、なにやら滅茶苦茶期待されてます。 つーか普通にブッ殺すとか言わんでください。 悟り猫「これこれ、猫だからといってナメてもらっては困ります。     見よ!これぞ世に云う『猫に小判』!!」 言って、月空力で小判を一枚だけ転移させる。 もちろんカンタロスや真穂さんが噛んだものですが。 塚本芽衣「おお!なんとリッチな!」 ……なんつーか滅茶苦茶素直な反応でした。 しかもいきなり小判奪って噛み付いてるし。 塚本芽衣「ほ、本物だ……!」 悟り猫 「然り。この悟り猫、間違っても紛いモノを賽銭箱に投じることなどしません」 塚本芽衣「……もっと持ってるよね?」 悟り猫 「へ?」 塚本芽衣「またまた、素っ頓狂な声出さないでさぁ〜。      自信満々に『猫に小判』とか言ったんだからまだまだあるでしょ。      ちょっと持ち物検査させてよ、ね?悪いようにはしないから……クックック」 悟り猫 「あ、あの……笑い声からして悪いようにしか見えませんけど……?」 塚本芽衣「馬鹿野郎!いったい誰がこの壊れた神社を直すと思っとるかっ!      軍資金も無しに直せるか!!だから出せ!惜しむことなく出せ!!」 悟り猫 「ヒャアアアーーーーッ!!!男らしいぃーーーっ!!!」 ……その後。 俺は塚本芽衣に捕まり、生爪を剥がされたり吊るされたりなどの拷問をされることになる。 そりゃあもう殴られるわ蹴られるわ、剥がされるわ折られるわ。 ほとほと悪魔であるその娘ッ子は、 人間で居られることを疑ってしまうほどの狂気っぷりでした。 ……で、現在はロープで吊るされて小川に沈められているところです。 塚本芽衣「オラオラ仔猫ォ!さっさと出さンかいクラッ!!      その若さで墓石入りとうなかろうがオォ!!?」 ザパリ……。 悟り猫 「げほっ……がはほっ……!や、やめろぉ……オルカサルベージめ……!      貴様、何故拙者にこのようなことを……!」 塚本芽衣「なんで、ってかね。キミ見てると兄貴さん思い出すから」 悟り猫 「とっても傍迷惑ーーーーッ!!!!」 塚本芽衣「それよかさぁ、出すモン出して楽になっちゃいなよ。      あたしゃ親切で言ってンだよ?      どっちみち盗られンならさぁ……怪我する前のが良くないか?ン?」 悟り猫 「あの……どのツラ下げて怪我する前にとかぬかしやがりますか……?」 言って、全ての爪が剥がされた前足を見せる。 すると満面の笑みで─── 塚本芽衣「知らん」 ───との返答。 ああ……なんだか今、この神社が暗黒に満ちている理由が物凄く理解できた……。 悟り猫 「フフフ……だがな、芽衣さんや……貴様は大変なミスを犯した……。      捕まえていればいいものを、拙者を離したのだからな……」 塚本芽衣「?なにそれ」 悟り猫 「我が名は悟り猫……常識に縛られるような生き方なんぞはしておりません。      それでは拙者はこれにて失礼させていただきますよ。飛翔転移!」 キィイイッ───ビジュンッ!! 月空力を発動させ、その場から逃走を図りました。 いやはやまったく冗談ではありません!こげな場所、もう二度と来るものですか! ───シュタンッ!! 悟り猫「世界猫ォーーーッ!!世界猫やぁーーーっ!!!     今すぐここから逃げますよぉーーーっ!!」 お堂前に転移した拙者はすぐさまに月生力を発動。 死神の回復力を待つ前にそれを治した。 そんな中、俺の声が届いたのか扉を開けて現れる世界猫……じゃなくて悠介。 いつの間に人型に戻ったのかは知らんけど、その姿は宮司のソレそのものだった。 悟り猫「悠介?」 悠介 「……だめだこの神社……よっぽど神から見放されてる」 悟り猫「そりゃそうだと断言出来る」 だってねぇ、あげなおなごが居るようではとてもとても……。 悟り猫「んじゃ、さっさと次行きますか。     この場所の後悔の沈静は出来なかったけど、ありゃあ全てが自業自得だ。     全ては一点に集います。『塚本芽衣』に関わったこと事態がそもそもだ」 悠介 「まったくだな……“時操反転(プリーヴィアス)”」 悠介が世界猫に変わるのを見届けてから月空力を発動させる。 もう一秒たりともこの場に居たくありませんよあたしゃあ。 ニコニコ笑顔で仔猫の生爪剥がすって最強すぎますよ? ただ欲張ろうとしたから『ナメとんのか小娘がァ!!』って言っただけでアレだ。 強欲な上に自制しようともしないんじゃあ救いがなさすぎる……。 まるで妙な方向に曲がった範馬勇次郎だよ……。 世界猫「……次の後悔が、塚本芽衣に関わり合いの無い場所であることを願おうか」 悟り猫「ほんとにね……」 そうして、虚空に渦巻く渦に身を投じた。 さてさて……次の後悔さんはどなたの後悔なんでしょうね……。 Next Menu back