───たわけモン道中記15/たわけモンどもの喧噪───
【ケース37:兇國日輪守悠之慎/オリビアの泉】 彰衛門「オーーーリーーービーーーアーーーッ!!!!」 デゲデゲデデーン・デッテッテデーン♪ デゲデゲデデーン・デッテッテデーン♪ デゲデゲデデゴシャア!! 彰衛門「キャーーーッ!!?」 町人の家に向かう最中、突如暴走した彰衛門に米俵一個を投擲した。 あっさりと潰れる彼だったが、 仲田くんの真似を忘れないところは流石というか馬鹿というか…… やっぱり馬鹿だな、うん。 そうだよそう、こいつは馬鹿なんだ……今さらじゃないかそんなこと。 彰衛門「あの、悠之慎さん?人に米俵投げつけて潰しておきながら、     なに『うんうん』頷いて納得しとるんですか」 悠之慎「うん?ああ、お前の馬鹿さ加減を再確認してただけだから気にするな」 彰衛門「ワタシ イマ トテモアナタヲコロシタイネー」 悠之慎「物騒なこと言ってないで起きろって。これくらいの重さで潰れててどうするんだ」 彰衛門「……キミさ、40キロが空から降ってきて『潰れるな』ってすっげぇ無茶だよ?     それも今の拙者のように風呂敷を背負っていれば尚のこと。     なんの準備も無しに耐えろだなんて……あんた、人の皮を被った鬼だね!」 悠之慎「はーいはいはい、軍曹さんはいいからとっとと起きて歩け」 彰衛門「うう……キミってほんと、とことんまでに親友だよチクショウ……。     この上無いよチクショウ……」 悠之慎「当たり前だ。大体、友情のランク付けがあるとして、親友以上なんて無いだろ」 彰衛門「ありますよ?その名は『朋友(ポンヨウ)
』!!」 悠之慎「そう来たか。けどさ、俺達は朋友にならなくても親友止まりでいいと思うぞ?」 彰衛門「むっ!?何故かね!!」 悠之慎「近すぎてちゃ解らないことってのはあるよ。だから、だな。     俺達はこういう、馬鹿やりながらもお互いを縛らない状況下の方が動きやすい」 彰衛門「む……」 それは『朋友』に対する侮辱以外の何物でもないのではなかろうか、と呟く彰衛門。 俺から言わせてもらえば、それは個人の自由であり人それぞれなわけだが…… 悠之慎「いいんだよ。俺達は互いを疑ったりできる余裕がある方がまだ笑える。     信用だけってのも疲れるだろ?     『同道朋友を売らず』って言っても、お前の場合簡単に売りそうだし。     それなら最初っから友達すぎない方が気楽だし楽しいと思う」 彰衛門「ぬう……結構憧れだったんだけどね、朋友───っと。     野菜ー、野菜は要らんかねー!     ……お?なんだ?俺の野菜が食えねぇってのか?やンのかコラ!!」 彰衛門は町人を見るなりガン飛ばしながらズカズカと詰め寄ってゆく。 野菜を配る気があるのかは……もう見るからに無いんだと思う。 裁きでもくれてやろうか───って、そっか。 悠之慎「ルドラが居るから、今はまた月操力使えるんだよな……」 試しに手の平に力を込めてみる。 すると青白い光が跳ね、俺の心を安堵させた。 悠之慎「つくづくアホゥだな俺……。     別にあいつは、能力のことなんかで俺を差別したりはしないのに」 いい加減、こういうくだらないことは思考から撤去しよう。 今の俺は、あいつの親友やってるだけで楽しいのだから。 悠之慎(───なんて、ルナに言ったら怒るんだろうな) 頬をひと掻き───しようとして、両手が塞がっていることを思い出した。 悠之慎(……つくづくアホゥ) 小さく息を吐いてから米俵を抱え直して、俺も彰衛門のあとを追うことにした。 ───……。 彰衛門「お野菜でーす!!」 ブオッ───ベゴチャア!! 町人 「ギャア!!」 ……で、追ってきてみれば。 まるで新聞を投げる配達人のように野菜を町人に投擲している彰衛門が居た。 悠之慎「どうしてお前はそういうことしか出来んのかぁあああーーーーっ!!!!」 米俵の重量を移動させ、片手でふたつを持つ。 もう片方の手───右手でひとつを手にし、 溜めた力を圧縮して放つブロリーのように米俵のひとつを全力投球。 米俵はその重量をも厭わずに風を切り、 野菜の次弾を構えていた彰衛門の横っ面にドッパァーーーーン!!!! 彰衛門「じゅぎゅっ!!」 ……予想以上の速度で彰衛門の横っ面にブチ当たり、 彰衛門は奇妙な声を出しながら…… 一歩くんに殴られた唐沢さんのように、 人身事故にあったかの如く転がって動かなくなった。 町人1「おお!動かなくなったべ!」 町人2「やっちめぇ!よぐもオラさ顔に野菜投げつけてくれたっぺ!死ね!!」 彰衛門「お、おわぁ〜〜〜〜っ!!!!」 あ、いや……一応動けるらしい。 しかし町人達は容赦なく仲間を呼び、変わる代わるにストンピングを決めてゆく。 ああ……ありゃ痛いな。 丁さん「なんだべ!悠之慎じゃねぇべか!なんの用だべ!?」 悠之慎「ん───ああ丁さん。米が大量に出来たからお裾分けに来た」 輝くハゲ頭がチャームポイントの彼は丁さん。 この町の一番隅側に住んでいる……まあ、言わば隅っこ同士みたいなもんだ。 大した交流はない……といっても、 俺達には家が無いから、普段から気にかけてもらってはいる仲なわけだが。 丁さん「おぉ……なんか悪ぃなぁ……。こっちも何かお返しがでぎるといいんだけんど」 悠之慎「そんなの気にしなくていいよ。それじゃあこっちが催促してるみたいじゃないか。     これはただの親切の押し売りって言ってな、     見返りを求めての行為じゃないんだ。     だから、笑って受け取ってくれるとありがたい」 丁さん「む……そりゃあ確かにそうだ。     オメはあのアキなんたらと違ってそういうところをわがっちょおよ。     しっかしよくもまあこんだけ取れたなぁ」 悠之慎「まあ、こっちにもいろいろあってね。     ひとつの家に一個ずつ渡していくから、ごめん。ゆっくりもしてられない」 丁さん「一個ずつって……オメ、この町にどれくれぇ家があると思ってんだ!     そんなに渡したらオメの食う分、無くなるでねがぁ!」 悠之慎「大丈夫だって。米は本当に腐るほどあるから。     っと、そうだ。これを晃のとこに持っていってもらえるか?     馴染みの深く無い俺が渡すと怪しまれるかもしれない」 丁さん「よせやい……悠之慎が悪いヤツじゃねぇことくらい、     この町のヤツらなら皆知っとるよ。     あのアキなんたらだって、いっづも馬鹿はやっちゃいるが……     弱りきったこの町を賑やかにしようとして馬鹿やっとる。オラには解る」 悠之慎「……ああ。あいつ不器用だから、     ああいう方法でしか誰かを元気づけることが出来ないんだ」 丁さん「そっがぁ……損な性格しとんのだなぁ……」 まったくだ。 もうちょっと器用に立ち回れたなら、自分も傷つかずに済むっていうのに。 悠之慎「じゃ、よろしくな。俺はあの馬鹿と一緒に町回るから」 丁さん「ああ。晃ンことはオラに任しとけ。オメも頑張れよ〜」 悠之慎「ん、丁さんも頑張って」 軽く挨拶を済ませると、次の家に向かう。 悠之慎(……はぁ) 普段誰かと話す時よりも随分と楽なのは、きっとこの時代の所為だろう。 昔の人ってのは気性が荒いけど、その分筋が通ってる。 現代の若者みたいになんでも頭ごなしに否定したり我を貫き通したりじゃないから、 そのお蔭で随分と気が落ち着いていっていた。 正直───俺はチャラリーナさんと話をすれば5分と持たないと思う。 結局俺は現代人のくせに現代人らしくもない人種なのだ。 まったく……現代に居る時よりも、この過去の空気に落ち着いている自分は相当だ。 悠之慎(過去はいい。過去はいいなぁ) うんうんと頷く。 それぞれが確固たる意思と執念を持っていた時代……そう、俺はこんな時代にこそ憧れた。 骨を埋めるならば、こういう世界にこそ埋めたい。 モンスターとの死闘の果てに散るのも悪くはないが、やっぱり───うん。 悠之慎(『人は憧れの中にこそ身を置きたがり、そして───      憧れの中にこそ、最高の自分をイメージする』か……) 遠い昔、自分の父が言っていた言葉を思い出す。 その人は煙草は吸わない人で、 だけど仕事場からタバコの匂いを持ってきてしまう人だった。 俺の姉に『臭い』と言われる度に落ち込む人だった。 今にしてみれば『自分の死を無かったものにするために息子の死を願った』人。 でも───その人が眩しいと思った時代が、確かに俺にもあったのだ。 そんな頃から『イメージ』って言葉を聞いていた自分にも苦笑するし、 俺に死んでくれと願ったその父親を嫌いになりきれない自分にさえも苦笑する。 だって───あの時逝屠が現れなければ。 父が相手が子供だからと、月蝕力を使わずにいなければ、みんな死なずに済んだのだ。 それでも父は『人』として死んでいった。 とっても情けないことだけど、俺はそんな父を誇りに思ってしまっている。 ……ほんと、なんていう悪循環。 一度眩しい者をその人の中から発見してしまった人は、 もうその人のことをそう簡単に嫌いになんかなれないのだ。 悠之慎(憧れの中での自分は、きっとどんな自分より輝いてるから。     でも───『父さん』。憧れの自分を貫いて死んでしまうことは、     それは貴方の確かな誇りに至ったのでしょうか……) 今となっては……いや。 きっと、彼が生きていたとしたって解らない。 だってこれは酷い悪循環だから。 彼は自分のことはとにかく話さない人だったし、 臨終の時だって自分を曝け出すような人ではなかったと思う。 そうなると、どうやったって彼からそれを聞くことは出来ない。 悠之慎(でも……貴方は俺の死を願った。それが答えでいいのでしょうか……) でも、例えば。 彼が望んだのは自分の生きている未来などではなく、 家族が生きている未来だったかもしれない。 そうなると……ああ、そっか───本当になんていう悪循環だろう。 もし父さんがその通りの父親だとしたら、 俺はその父親の像の中に彰利を見ていたのかもしれない。 全てを他人のために生きるなんていう、そんな生き方に憧れを抱いていたのかもしれない。 だから……その人の在り方が、時を経た今でもこんなに眩しいと─── 彰衛門「ギャアもう!おやめなさい!     悠之慎!?悠之慎ーーーッ!!とっとと先行きますよ!?     これガキ!腕にしがみ付くんじゃありません!なにぃ!?俺の傍は安心出来る!?     馬鹿野郎!俺ゃもう誰かの日常になるのはやめたんじゃい!!     なにぃ!?そんなこと関係ない!?俺の意思はどうなるのかね!」 視線の先で数人の子供に抱きつかれている彰衛門の傍を目指す。 相変わらず子供にだけは好かれやすいそいつは、 体に子供っていう実をくっつけた木のようだった。 悠之慎「なぁ彰利、今───楽しいか?」 彰衛門「あぁん!?今のこの状況を見て何処が楽しそうに見えるのかね!!     ってこれ!おやめなさい!風呂敷を引っ張るな!ギャア!黒衣を引っ張るな!     なんで子供ってモノを引っ張りたが───イヤァアアアアアアアッ!!!!     そこはダメ!ダメです!そったらことされたらアタイのウェポンが!     イヤッ!イヤァアアーーーーーッ!!!!」 子供に囲まれた彰利は、これはこれで楽しんで……いるようには見えなかった。 どう見ても子供達に衣服を剥ぎ取られそうになって泣いているようにしか見えない。 悠之慎「こらお前たち、こいつはオモチャじゃないんだぞ」 子供1「うあーっ!寝言は寝て言え魔人が来たぞー!」 子供2「にげろーっ!     捕まったら『日本好き』とかいうやつにされちゃうらしいぞー!」 悠之慎「なっ……」 一瞬、頭の中が真っ白に。 だがその意味が体中に染み渡ってゆくと、俺の視線は子供達から彰衛門へと移ってゆく。 悠之慎「……なぁ彰衛門?今の子供達の言葉の意味、よ〜く知りたいんだけどなぁ」 彰衛門「ア、アゥワワワワワ」 彰衛門は俺と目を合わせようとはせず、ガタガタと震えている。 その頭をグワシと鷲掴み、立とうとしない彰衛門を無理矢理持ち上げる。 彰衛門「ごおおおお!!首が!首が抜ける!     ちょっと待て!ちゃんと立つ───立つからたんまーーーっ!!」 悠之慎「離したらどうせ逃げるだろうからこのまま話せ」 彰衛門「ゲッ……!!あ、甘いわぁーーーっ!!!」 ババッ!ドシュゥウッ!! 悠之慎「なにぃっ!?」 なんと彰衛門が俺の手を掴み、自分を回転させることで鷲掴みから逃げ出した! しかし手はそのまま離さず、回転の要領で俺の腕を踏み台にするようにして跳躍。 見事俺の手から逃げ出した。 彰衛門「フッ……修行しておるのが貴様だけとは思うな!」 悠之慎「………」 ……正直驚いた。 まさかあそこまでアクロバットな行動で逃げるとは思わなかったから。 いや、逃げるだけじゃ飽き足らず、彰衛門のヤツは俺に手招きまでしてる。 といっても手の甲を下にした、いわゆる挑発の手招き。 その視線は周りの町人に向けられていて、 つまりこいつはパフォーマンスでもして町人のみんなの不安を取り除いてやりたいのだ。 二週間経ったとはいえ、まだ町人のみんなは先に不安を覚えていることだろう。 ……やれやれだ、どこまで不器用なのか、こいつは。 ───でも子供にヘンなことを吹き込んだのは事実だから手加減はしてやらん。 彰衛門「は、はうあっ!?場の空気が凍りついた───殺気!?」 ─────────極死( きょくし) 米俵を置き、振り上げた手に短刀を創造する。 それを彰衛門に向けて投擲し、それとともに跳躍する。 彰衛門「これは───まさか!あ、あの悠之慎が!?」 ヒィンッ、と空気を裂く短刀と同じ速度で宙に舞う俺は、 手を広げ、地に背を向けた状態で彰衛門に向かってゆく。 彰衛門は『どうしたものか』と思案する内、結局短刀をまず先に叩き落とした。 ……だが。 そんな行動でも刹那の隙は発生する。 ───ガッ!! 彰衛門「うあっ───ちょ、ちょっと待った悠之慎!それは流石に───」 跳躍状態から彰衛門の頭を鷲掴みにし、空中で逆立ちをするようなカタチになる。 だが、それも数瞬。 町人達が目を疑った次の瞬間には───バキャアッ!! 彰衛門「ギッ───」 ─────────七夜( ななや) 彰衛門の首が180℃回転する。 それはつまり完全に首が折れたことを意味する。 『極死/七夜』……彰利の記憶の中にあった、某ゲームの男の殺人技である。 本当は首をもぎ取る技なのだが、さすがにそこまではやらない。 そのゲームについては俺はよく解らんが、一度やってみたいとは思ってた。 だって、な。 武器を投げて隙を作るなんて、朋燐の奥義みたいな出だしだし。 町人 「う、うわ……首がっ……!首が折れてっ……!」 俺が地面に着地すると同時に、町人のひとりが震えた声を出す。 ……とまあ、普通はここで大騒ぎになるんだが─── 彰衛門「ええっ!?誰の首が!?」 町人 「うわぁあーーーーーっ!!首が折れてるのに生きてるーーーっ!!」 ……こいつにはあまり、常識ってものが通用しない。 なにせ、180℃折れ曲がったままの頭でキョロキョロと辺りを見渡している。 これで常識人だなんて言ったらバケモンだ。 ……いや、それ以前に俺もあいつもバケモンなんだが。 彰衛門「え?ああ、いややなぁおまえはん。こりゃあ烈海王トリックですわ。     折られる瞬間に頚椎を外したから首は折れてへん───フンッ!!」 ゴキャキャッ!メキャリ! 彰衛門「ね?」 彰衛門が頚椎を嵌め直す。 とまあそれはいいんだが─── 悠之慎「あー……一言忠告しとくけど。360度回転した状態で嵌めてるぞ、お前」 彰衛門「え?───ギャア!!」 どこまでも人間離れしてる莫迦(ばか)が居た。 捻れた状態で首を嵌めていた彰衛門は、そのまま再び首を掴み───メキキッ! 彰衛門「いたやぁあああああっ!!!!」 大いに苦しんだ。 悠之慎「お前さ、どうやったら360度回転した状態で首を嵌められるんだよ……」 彰衛門「折ろうとした張本人にそげなこと言われたかないわい!!     あぁもう痛ェ!!すまんが悠之慎、首外してくれません!?     こういうのって自分じゃ思いっきり出来ないよ!」 悠之慎「……今まで生きてきた中で、『首外してくれ』なんて頼まれたの初めてだぞ……」 彰衛門「俺だってこんなこと頼むの初めてじゃい!!     ていうかさ、なんでまたアタイの首を折ろうなんて思ったの?」 悠之慎「人のことを陰口してるようなヤツには容赦しない性質なんでな」 彰衛門「陰口とは失礼な!俺ゃ堂々と言いましたよ!?」 悠之慎「尚性質悪いわ……!!」 ゴキュリャアッ!! 彰衛門「ホゲェエーーーッ!!!!」 町人 「ひえっ……!?」 悠之慎「パイルダー・オォーーン!!」 ぐりんっ───ガッキィイイインッッ!! 彰衛門「ぐええ痛やぁあーーーーっ!!!!」 強引に外した頚椎と骨を無理矢理噛み合わせる。 その痛さは尋常じゃなかろうが、 『絵に住む鬼』の真似をする余裕があるようだから平気だろう。 彰衛門「おがががが……うががががががががが……!!」 悠之慎「ホレ、アホゥやってないでさっさと回るぞ」 彰衛門「お、押忍……」 町人 「ちょ、ちょっと待った!今……首が折れてなかったか!?」 彰衛門「むっ!?いい質問です!!」 痛んでいるのであろう首を押さえつつ、ちょっぴり涙目の彼は町人にスマイルを贈った。 彰衛門「よいですか?今のは万国吃驚ショーといいましてね?     まあ平たく言えば折れたように見せただけなのです」 町人 「み、見せただけって……」 彰衛門「拙者のような達人になれば、     首を折られようと何されようと死んだりはしないのですよ。     修行の賜物です。だからご安心を」 町人 「は、はあ……」 それで一応納得したのか、町人は首を傾げて自分の家へと戻っていった。 彰衛門「……ふう、危なかった。まったく悠之慎さん?     もうちょっと周りを見てから実行してもらわないと困りますことよ?」 悠之慎「狼髏館回頭閃骨殺で篠瀬達の首を折りまくってたお前にだけは言われたくない」 彰衛門「あれは南無であって俺じゃあありませんよ失礼な!!     キミはなにかね!?私を馬鹿にしておるのかね!」 悠之慎「するまでもなく莫迦だろうが」 彰衛門「あ、そうね。って納得しちゃダメだった!やいコラテメコラダーリンこの野郎!」 悠之慎「あーやかましい。御託はいいからさっさと先行け親友」 彰衛門「そげにぶっきらぼうに親友とか言われても……うう、ちくしょう……。     ロディエルさんに立ち向かったあの心優しいダーリンはいったい何処に……」 悠之慎「ダーリン言うな。……お前の未来を守りたいって思った気持ちに偽りは無いよ。     けど、俺は俺、お前はお前だろ?     さっきも言ったけど、俺達は莫迦やってられるくらいの関係が丁度いいんだよ。     仲良くなりすぎちゃあ出来なくなることだってきっとある」 彰衛門「それって殴り合いとか?」 悠之慎「ん?……ははっ、どうだろな。     けどさ、俺とお前って前世でも出会った途端に殴りあったんだぞ?     そういう関係が崩れるのはなんだかもったいないだろ」 彰衛門「殴り合えない関係がもったいないねぇ……キミ、正気ですか?」 悠之慎「やかましい。悪かったな、乱暴者で」 彰衛門「まったくじゃよ。でもまあ……うん。お前となら悪くない」 それだけ言うと、彰衛門は照れくさそうに笑った。 頭をカリカリと掻いて───多分、照れ隠しなんだろう───笑みを漏らした。 彰衛門「んじゃ、さっさと配っちまいますか。     って、考えてみればまったくおかしな話だよな。     現代じゃあご近所付き合いなんて考えずに生きてきた俺達が、     今こうやってご近所のために行動してるなんて」 悠之慎「そうだな。考えてみれば初めての体験かもしれない」 彰衛門「悠之慎はいいよな〜、ぶっきらぼうのくせに人受けはいいんだもの。     俺なんか見ろよ……大人には莫迦にされて、何故か子供にばっかウケてる。     なんでかなぁ、大人は何も解っちゃくれないんですよ」 悠之慎「お前の態度が怪しいからだろ?」 彰衛門「なんつーか容赦ないねキミ……」 悠之慎「そんなの昔っからだ。今さら言ってどうするんだよ」 彰衛門「グウ〜ム……」 ───結局。 会話はそこらで中断させ、俺と彰衛門は米と野菜と果実を配って回った。 町人たちはレタスに大変驚いていたが、 『美味しいし瑞々しいから食いんさい』という彰衛門の言葉に後押しされて試食。 ……それからは、レタスはその町で人気野菜となった。 【ケース38:弓彰衛門/タクシム】 ───過去に住んでから三ヶ月。 彰衛門「はっけよぉ〜い……」 バッ! 彰衛門「たらったたらった〜!はぁ〜〜!のこったのこった!」 平太 「うっ、く、このっ……!」 弥太郎「うぐぐぐぐ……!!」 えーと、ハイ?司会の弓彰衛門です。 現在子供を集めた小さな相撲大会をやっております。 何故か子供にばっか好かれるアタイはその状況を逆手に取り、 子供達が歌って踊れるような状況を作って進ぜようと策を練ったわけですよ。 その結果がこの相撲。 町の子供達を集めて最強を決める戦いが今始まったのです。 ……ああ、ちなみにマワシは悠之慎に創造してもらいました。 悠之慎たら『相撲……それはいいなっ』とふたつ返事でOKを出して、 本格的な土俵まで創造しちゃいましたよ。 彰衛門「のこった〜!のこった〜!のこれこの野郎!!ほれ平太ァ!のこれのこれ!」 平太 「く、くっ……」 さて───この町、すっかり俺と悠之慎が食材作り屋となってしまい、 些か未来が心配になっている状況ではありますが…… それでもみなさまは健やかに暮らしております。 今では俺と悠之慎を怪しむ者もおらず、我らもゆったりと生活しておりますじゃ。 これが数年後には誰かに壊されてしまうなど……正直考えたくありません。 弥太郎「ふっ!はっ!」 べしっ!べしんっ! 平太 「うぐっ!くぐっ!」 平太がツッパリで押しやられてゆく。 むう……やはり体格差というものは出てしまうものなのか? 町の人々の中には太った輩などはおらぬが、身長の差はどうしても出てきてしまう。 平太はその中でも郡を抜いてちっこかった。 そのため───ダンッ! 平太 「うあっ……!」 こうして、粘ることは出来ても勝てることなど滅多に無い。 あっさりと弥太郎に倒されてしまった平太は、砂まみれになっても一礼をして下がった。 むう……男なり、平太。 彰衛門「弥太のォ〜山〜」 弥太郎「ごっつぁんです」 一応、勝者は『ごっつぁんです』と言うのが規則だと教えてあります。 随分と偏っちゃあいるが、楽しめればそれで良し。 賞品として普段は絶対に配布しない完熟桃を渡すと、 弥太郎は弾けるような笑顔でそれを食した。 弥太郎「うぅううっ……!うめぇええ……!!」 じ〜んと味を噛み締めているのだろう。 頬を押さえて、喜びに震える弥太郎さんがおがったとしぇ。 さて……この桃、ほんに大人にも子供にも配布したことなどないものです。 俺が秘蔵として作成した究極ジューシィ桃でござる故。 それがある日、近所のワルガキがかっぱらいおってね? それの味が口伝で伝わって、まあ……現在に至る。 かっぱらいに来る子供が増えたから、こうしてバトルの賞品にしたってこってすよ。 彰衛門「平太……強くおなりなさい。桃はいつでも貴様を待っておるよ……」 ……正直な話、そろそろこの時代でやることが少なくなってきました。 悠之慎に頼んで遊び道具一式でも創造してもらうかなぁ。 それで秋守さん誘って日がな一日ゴールデンゲーム三昧でも。 【ケース39:弓彰衛門(再)/タクシム2】 ───過去に住んでから一年。 丁さん「大変だべ!晃ンとこのふみが子供を産みそうだべ!」 彰衛門「なんだべ!ほんとだべか!!」 丁さん「ほんとだべ!ウソついてどうするだべ!」 彰衛門「まったくだべ!したらとっとと行くだべ!」 丁さん「そうだべ!早く行くだべ!!」 一年。 そう……一年です。 日々に愛を育む晃くんにしてみれば遅すぎたくらいのお産。 しかしついに、ふみさんが子供を産もうとしております。 さて───こんな時に、悠之慎は何処に行っておるのでしょうね。 丁さん「なぁにやってるだべ!さっさと来るだべ!」 彰衛門「待つだべ!悠之慎は何処にいるだべ!?」 丁さん「悠之慎ならもうふみさんの所に行っただべ!さっきそこで会っただべから!」 彰衛門「『だべから』ってなんだべ!!」 丁さん「うるせぇだべ!いいから来るだべ!」 彰衛門「解っただべ!行くだべ!」 ハワァーーッ!とよく解らん叫びを上げて、拙者と丁さんは駆け出した。 ふみさんのお宅は確か丁さんの家からそう離れておらんかった筈じゃて、すぐ見つかるわ。 ───……。 ドガシャアアーーーーーーーン!!!! 彰衛門「ズイホォーーーッ!!!」 で、辿り着いた途端にブッ飛ばされました。 お善 「殿方の立ち入りは禁じます。お産時だというのに、なんですかまったく」 彰衛門「なんだとてめぇ!お産時だからこそ見守りに来たんじゃなかと!     それをなんだいちきしょい!今日からキミのことヨウカンって呼んでやる!」 お善 「妙な理屈は要りません。だから黙っててください」 彰衛門「グゥウ……!!」 お善 「兄上のような唸り声をあげないでください。     女性の肌は好きな殿方にのみ見せるべきなんですから、     晃さん以外が立ち入ることは許されませんよ」 彰衛門「キミだって入るくせに……」 お善 「……彰衛門さんって屁理屈だけはお上手ですよね」 彰衛門「よせやい照れるぜ。というわけで見守らせて?」 お善 「だめです」 即答でした。 しかも家の戸はぴしゃんと閉ざされ、拙者はただ悲しい風に吹かれるのでした……。 悠之慎「産気付いた女性の家の前で立ちっ放しになるなよ……」 彰衛門「なんですと!?って悠之慎じゃないですか。何処行ってたん?」 悠之慎「ああ、お産に必要なものを創造して渡してきた。     その後はお前探してただけだけど」 彰衛門「入れ違いって状況か……。     てっきり中に居るもんだとばっかり思ってたから侵入したのに」 悠之慎「ああ、思いっきりブッ飛ばされてたな」 見てたんスカ……。 彰衛門「しかしこう……なんつーかソワソワしますなぁ。     緋芽ン時もそうだったなぁ……あの時ゃ確か悠之慎が取り上げたんだっけ?     なんかこう……真っ赤になりながら」 悠之慎「やっ……やかましいっ!忘れろっ!!」 彰衛門「昔の人にラマーズ法をやらせてたのは驚いたけどもね。     じゃがしかし……これがまたどういうわけかサマになっててねぇ。     あたしゃキミの手さばきに驚きましたよ」 悠之慎「俺としては秋守の伴侶の珠枝の顔に驚いたけどな」 彰衛門「んむ?ああ、あの賽銭泥棒の顔に似すぎてたっていう?」 悠之慎「そ。正直目を疑った。けどまあ前世だろうがなんだろうが、どうでもいいことだ」 彰衛門「ふむ……て、話逸らしましたな?」 悠之慎「知らん。それより───」 彰衛門「む?」 悠之慎が少し険しい顔をする。 こういう時の悠之慎はちと怖い。 悠之慎「……後悔レーダーの方はどうだ?もうあれから一年だ」 彰衛門「ふむ……そうねィェ〜、少し反応が見られる。そろそろだと思うよ?」 悠之慎「そか。悪い、最近よくない噂を聞いたから気になってな」 彰衛門「んにゃ、そりゃいいけど。悪い噂ってどんなん?」 悠之慎「ああ……どっかのお偉い馬鹿野郎が領土を広げるために無茶してるってやつ。     なんでも、適当な理由をつけて村や町を襲って自分の領土にしてるらしい」 彰衛門「なんとまあ……」 マジすか? ウヒャア、そりゃいかんわ……悠之慎が怒ってる理由が解った。 私利私欲のために人を殺すヤツ、心の底から嫌いだからなぁ悠之慎ったら。 悠之慎「───それじゃ、俺は町の外で様子でも見てるよ。     これからそいつらが来るまで門番人生だから、町のことは任せた」 彰衛門「なんですと!?     おいおいコナラァ、ひとりでいいカッコしようったってそうはいかねぇぜ?     拙者にもいいところをよこしなさい。瞬殺ですよ?」 悠之慎「馬鹿かお前は……ふたりとも戦場に立ったら、誰が町を守るんだよ」 彰衛門「む……しかしですね、     それならば俺が戦場に立ってキミが町を守るって寸法でもよいでしょう?」 悠之慎「一番心配なのは子供だろ?     子供達は俺の言うことなんか聞かないんだから、お前が町に残るべきだ」 彰衛門「グムッ……!!」 なんてこと……!こんな時に子供に好かれやすい体質が裏目に……! 彰衛門「あーもう解ったよ……アタイが残りゃいいんでしょ、まったく……」 悠之慎「拗ねるなよ。晃のためだ」 彰衛門「……キミがひとりの男に入れ込むなんて珍しいよね。どげな心境の変化で?」 悠之慎「べつに……男が男の生き様を応援するのは当然のことだろ?     久しぶりに覚悟が座った男に会えたんだ、     せめて天寿の全うさせるくらいはさせてやりたいだろ」 彰衛門「覚悟が座った男ねぇ……。悠之慎、キミってよっぽど現代ッ子が嫌いなんだねぇ」 悠之慎「現代に居るやつらの大半があれくらいの男だったら俺も文句なんて無いよ。     でも、そんなの無理だろ?」 彰衛門「ああ、そりゃ確かに無理だ」 男にしたっておなごにしたって、まず性格が悪いからね。 そう考えれば確かに昔の人はカタブツだけど性根はそうそう曲がってない。 じゃけんど……たまに曲がりすぎたヤツが居ると、 そういうヤツは決まって他人に迷惑をかける。 悠之慎はそういうヤツが大嫌いなのだ。 悠之慎「じゃあ俺は戻るけど。お前はどうする?」 彰衛門「ウィ?……ふむ、拙者は秋守を撒きこんでオセロでもやりますわ。     最近勝てなくなってきたから」 悠之慎「お前……ほんとオセロ好きな」 彰衛門「任せろ」 つーかね、秋守のヤツは中々に遊びが得意です。 隙あらば平気でイカサマするところなどは流石としか言いようが無い。 しかしそげなイカサマも対抗してやりあえば、それすらもゲームになって面白い。 ゲームの一式は悠之慎に創造してもらったし…… 最近ではほんに、どのゲームでも勝つのが難しくなってきた。 彰衛門「ほいじゃあ俺は秋守さん家に冷やかしに行ってくらぁ」 悠之慎「俺は門番に。頑張れよ」 彰衛門「フッ、任せてくれたまえ!」 今日こそは彼奴めをぎゃふんと言わせてくれようぞ!! ───……。 パタン。 彰衛門「ありません……」 秋守 「………」 オセロ開始五分で決着。 酷く哀れみを込めた秋守の視線だけが、ボクのハートに痛かった。 Next Menu back