───たわけモン道中記20/ブロッコリー───
【ケース49:兇國日輪守悠之慎/高揚の先】 ───……。 手にした槍にギリリと力がこもった。 痛いくらいに握られた部分からは血が流れ、喰いしばった歯はギリギリと音を立てた。 侍  「探せ!この村に繁栄をもたらす神がいる!そいつを捜し出し、生け捕りにしろ!」 そんな声が聞こえた所為だ。 目の前には村を襲う侍ども。 泣き叫ぶ人達は逃げ惑い、村を焼かれて泣く人々も居た。 俺はそんな景色を見て、ただゆっくりと黒い笑みを浮かべた。 口から漏れる言葉はただひとつ。 悠之慎「……上等だ」 時間軸自体が違うとはいえ、また人の未来を奪おうとするヤツらが居る。 それを見た時点で俺はどこかキレ始めていたのかもしれない。 ゆっくりと歩き、けど───その視界にひとりの少女を見た時になにかを感じて、 その少女の後を追った。 ───……。 ───。 村人1「あ! お前だな! 奴らの言う神ってのは!」 少女 「え……あ……う……」 そこは神社の中だった。 見える景色の中で、村人達が少女に詰め寄って罵倒を浴びせていた。 村人2「とぼけたって無駄だ!     お前が昼間に変な男から神だって言われてんのを     ここに居るやつら全員が見てんだ!」 村人3「てめえの所為で村が……」 村人4「かまうこたぁねえ!こんな疫病神、叩き出してやれ!」 少女 「あぅ!」 村人達が少女を取り押さえようとする。 少女は怯え、抗うこともなく村人に囲まれたが─── 要芽 「てめぇらいい加減にしやがれ!!」 塚本芽衣に似た女がそれを止めた。 俺はそんな景色をどこかボゥとした思考で眺めていた。 要芽 「てめえら最低だぞ!寄ってたかってそんな小さいガキに!」 村人1「しかし要芽さま!こいつの所為で村が!」 要芽 「ったく……いいか?よく聞け。相手はそのガキを探しにきた侍達だ。     その侍達がガキを探すために何をした?」 村人2「なにって、我らの村を焼いたでしょうが!」 要芽 「そうだ。焼いたな。で、よく考えてみろ。     その侍達、最初に誰かに神のことを訊ねたか?」 村人達『………』 要芽 「訊ねられたやつはいねえだろ?     やつらは問答無用でこの村を焼き払おうとしたってことだ。     そんな連中に遊羅を渡して本当に助かると思ってんのか?」 村人1「……そ、それじゃあ……」 要芽 「そういうこった。おい、お善、珠枝」 お善 「はい……」 珠枝 「……」 避難した村人を掻き分けるように出てきたのは珠枝さんとお善さん。 その様子からは、昼間までの現実逃避の感は感じられない。 ということは、既に現実を受け入れたということか。 お善 「私達の村もそうでした……彼らの旗、鎧から見て間違いはありません。     彼らは私達の村を焼いた侍達です」 村人1「そ、そんときゃあどうして村を……」 珠枝 「金を掘り当てた……」 村人2「き、金!?」 村人3「そ、それじゃあ奴らは金を狙って……」 お善 「いいえ、実際には金なんて掘り当ててません。     彼らの本当の目的は、ただの領地拡大でした」 村人2「領地拡大……」 珠枝 「その時彼らは叫んでました。『金はどこだ!』と。     でもただ叫ぶだけで誰にも金のことを訊ねず、     ただ殺戮を繰り返すだけでした」 お善 「そこで隠れていた私と珠枝は聞いたのです。     彼らの真の目的がただの領地拡大だったと……」 村人4「それじゃあやっぱり……」 珠枝 「はい。恐らく遊羅さまのことはどこかで情報を手に入れたとしても、     この村は確実に焼き払い、自分達の領地にするつもりでしょう」 村人1「……なんてこった」 村人2「くそ!なんでこんなことに!」 槍を掴む手に力がこもる。 まったくくだらない。 領地拡大……ってことは結局あいつなんだ。 悠之慎「……皆コロがし」 キリキリと堪忍袋の緒が切れかける。 既に限界まで引き伸ばされたソレが、俺の理性をゆっくりと消してゆく。 ───そんな時だった。 声  「村の衆!よく聞け!我は今の世を直すため戦う『成町 根四門』なるもの!     世を直すには我らには財力がもっと必要だ!     よってそこに居るであろう繁栄の神を引き渡してもらいたい!     さすれば諸君らの命、助けてやらんでもない!」 ……外からそんな戯言が聞こえてきたのは。 その声は記憶の片隅に残っている、くだらない男のものだった。 村人1「……繁栄の神……」 村人2「こいつを渡せば……」 村人3「俺達は助かる……」 ───いや。 戯言は神社の中からも聞こえてきた。 本当におめでたい……あんな言葉を信じるなんて。 要芽 「んなわけねえだろ!」 村人2「やってみなくちゃ解らないでしょう、要芽さま」 村人4「少しでも助かる方法があるのならば……」 村人1「ただそのガキを渡せばいいだけなんですよ?」 要芽 「てめえら性根まで腐らせてんじゃ───」 ドガァンッ!!! 村人4「アギッッ!!?」 気づけば、村人がお堂の板張りに沈んでいた。 村人の中で一番の大男だったが、そのデカイだけの体が痙攣したまま動かなくなる。 要芽 「な、なんだてめぇは……」 悠之慎「誰でもいいだろ……それよりあんたらはここに居てくれ。     外の馬鹿野郎どもは俺がツブしてくる」 要芽 「ふざけんじゃねぇよ!ひとりでなんとかなる人数じゃ───」 悠之慎「言ったことは守る。約束してもいい。     だから……理性がある内に了承しやがれ……!!     向かう場所があるならさっさとしろ……!」 要芽 「っ……!?赤い……目……?」 村人1「う、うわっ……こいつ……普通じゃねぇぞ……!!」 悠之慎「それだけ解ってりゃ上等だ……     ここは俺に任せて、逃げる場所があるなら逃げておけ……。     これ以上追求するんだったら……覚悟くらいはしろよ……」 村人2「ふざけんじゃねえっ!よそ者を信用なんて出来るか!誰がてめぇなんかに」 ガコォンッ!! 村人2「ゲハッ!?」 詰め寄ってきた村人を殴り倒した。 まったく……本当に癪に障る。 手が無いくせに承諾しないで、八つ当たりみたいに突っかかってきやがって─── 悠之慎「もういい……お前らここで気絶してろ。動き回られたらかえって危険だ」 要芽 「なに言ってやがんだ!ここは」 ヒィンッ───ゴカカカカカァンッ!!!! 悠之慎「……疾」 槍の石突きでその場に居た全ての村人を気絶させた。 唯一意識があるのは、お堂の隅で震えていた遊羅という少女だけだった。 遊羅 「や、やめて……こないで……!     ここで動けなくなったら……純之上さんが生き返れなくなる……!」 悠之慎「───」 槍を構えたまま近づいたが、その言葉を聞くことで槍を収めるに至った。 ……そっか、この娘───神の子か。 だったら人を生き返らせることくらいは出来るかもしれない。 遊羅 「っ……!」 少女は俺が伸ばした手に自分の体を抱えるようにして震える。 別にどうこうするわけでもない。 ポンと頭を撫でてやり、小さく呟いた。 悠之慎「ここは俺に任せてくれていい。純之上を助ける手立てがあるなら行け。     追っ手なんて向かわせないから───安心して行ってこい」 遊羅 「───え……?」 縮こまってた体をゆっくりと起こすように俺を見た少女。 そんな少女に自然に微笑むと、体を起こしてやってトンと背中を押した。 遊羅 「え……え?」 悠之慎「行け。振り返るなよ」 振り向いた時、俺が正気で居られる可能性は少ない。 だから今の内。 自由が利く内に、少女をこの村から出さないと─── 遊羅 「あ、の……あなたは……」 悠之慎「やらなきゃならないことがあるんだろっ!?     こんなところで足踏みしてたら出来ることも出来ないぞ!!」 遊羅 「っ……!は、はいっ……」 真紅の眼光に射抜かれた少女は慌てて神社から飛び出した。 その後を追うわけでもないが、俺はゆっくりと神社の中から出ていった。 眼に映る景色には出てきた少女を捕らえようとする侍どもと、 逃げ遅れた村人を遊ぶように追うやつら。 ───その景色を見た時点で。    俺の理性は完全に焼ききれていた。 【ケース50:弓彰衛門/羅王】 ───そう、修羅が居た。 真紅の眼をさらに紅蓮に染めたような赤い修羅が。 300以上も存在するかもしれない軍勢の中で、その存在はあまりにも絶対的だった。 一秒経つ内に六人以上が吹き飛び、 だけどそんな人外の速さを見せ付けて尚……息をてんで乱さない。 ───武器は槍。 だがその戦い方は滅茶苦茶だ。 至近距離になれば拳を落とし、一斉に掛かられれば武器を野太刀二刀にし。 群がる侍どもの悉くを戦意喪失に追いやっていった。 ───だが、それだけでは終わらない。 命乞いをするそいつらに追撃を落とし、確実に気絶に導いていた。 殺しはしないものの、その戦い方は『晦悠介』のソレとはあまりに違った。 みさお「うわ……うわわ……!無茶苦茶です……!強すぎます……!」 彰衛門「い、いかーーん!!このままでは侍どもが危険なことに!」 みさお「え?なんで敵さんの心配してるんですか?」 彰衛門「キミがさっき言ったでしょうが!今の彼は強すぎです!     ありゃあ人に向ける力の度量を軽く超えてますよ!?     このままじゃあ何かの間違いで死人が出るやもしれません!!」 みさお「あ───うわわっ!大変です!止めなきゃ───」 彰衛門「うむ!その通り!というわけでよし行けみさお!」 みさお「はい!ってなんでわたしが!」 彰衛門「月清力で沈めるんですよ!そうでもしないと落ち着きませんよ!?」 ギャアもうなんでこったらことに!? あの悠介どんが正気を失うくらいに怒るとは───敵さんなにをやったのかね! 彰衛門「おおそうじゃ!拙者だけでは間に合わんかもしれん!     ちと聖を探してきておくれ!」 みさお「え───あ、は、はいっ!」 彰衛門「これ!ですから返事は『はい』ではなくて!!」 みさお「やかましいです!黙っててください!」 彰衛門「ぎょ、御意」 言いたいことだけ言って、みさおさんが飛ぶように駆けていってしまった。 彰衛門「…………あー」 ……やっぱ、ここは拙者が抑えるしかないんですよね? そうなんですよね……。 彰衛門「フッ……覚悟決めるか」 せめてどんな状況でも楽しまねばやってられません。 さあ行きましょう。 願わくば、我に力を─── ───……。 ……。 ドゴゴガガガガガガガォオオオオオオンッ!!!! 侍271「ひ、ひぃいいっ!!たすけ───」 パガァンッ!! 侍271「ギアッ───」 命乞いをする侍が兜を破壊されるほど強い力で薙ぎ払われた。 当然、侍は重症。 やべぇ……こりゃあやべぇよ……。 彰衛門「や、やめろブロリー!やめるんだ!やめろぉおおっ!!」 アタイは暴走状態の悠之慎に向けて月清力を放った! その途端、悠之慎の体がビクンと躍動する───が、再びあっさりと暴走。 まさしくやべぇ!すこぶるやべぇ! 月清力がてんで利かねぇYO!! 彰衛門「い、いや!距離が離れているからやもしれん!接近して当てればなんとか!」 凄まじい速度で侍どもを滅多打ちにしている悠之慎の元へ疾駆する。 瞬時に悠之慎の背後に回り、その背に月清力を流し込んだ! 彰衛門「よすんだブロリー!落ち着くんだぁっ!」 悠之慎『はぁっはっはっはっはっは……!!』 ───が、振り向きざまに手刀が落とされる。 なんとかかわそうと思ったが───ズバシュッ!! 彰衛門「ごわぁあああっ!!!」 右目がその手刀によって切られた。 なんてこった!これでは思いっきりパラガスではないか! 彰衛門「ぬおお……!月生力───はうあっ!?」 右目に月生力を流そうとした途端、目の前の暴走悠之慎が右手に光を込めた。 悠之慎『ウェェエーーーヤッ!!!』 コォッ───バガァッチュゥウウンッ!!!!! 彰衛門「ギョェエエエーーーーーーッ!!!!」 擦れ違いざまに手を引っ掛けるように、悠之慎が俺の腹に青白い光を押し込めた途端、 俺の体は爆発とともに思いっきり遠くへと吹き飛ばされた。 その勢いは我がボディを燃え盛る家の壁に叩きつけた。 彰衛門「ゲェッホ!ゴハッ!!ち、ちとやべぇよこれ!     悠介のヤツ、マジで暴走してやがりますよ!?」 しかもまた侍ボコボコにしてるし! こうなったら実力を行使して─── 彰衛門「すまん悠之慎!しばらく気ィ失っててくれ!」 再び悠之慎のもとへと疾駆した俺は、その体に片手を付いて意識を集中させた! 彰衛門「“排撃(リジェクトォッ)
”!!!!」 バァッガァアアアンッ!!! 密着させた手の平から凄まじい衝撃が放たれる。 手の平から直接なために、骨に衝撃が走って激痛に襲われる。 彰衛門「ぐあっがぁあっ!!いたやぁああーーーっ!!!」 やっぱ痛いですこれ! 出来ればやりたくなかったんですけど場合が場合ですし───ズボァッ! 彰衛門「ヘケッ!?」 素っ頓狂な声が漏れた。 排撃の所為で広がった煙幕から手が伸びてきて拙者の頭を鷲掴みにしたんですから。 悠之慎『なんなんだぁ?今のはァァ……!』 彰衛門「ゲェエーーーーーーーッ!!!!」 やべぇ!やっぱやべぇ! 悠之慎ったらブロリーになりきってる!! 彰衛門「はっ……はぁあ……!あのぅ……話し合いをしませんか?     話し合えばきっと解り合えあうぇああぁあああっ!!!     持ち上げないで持ち上げないで!首がもげっ───もげがぎえぇえええっ!!!」 なんつー腕力でしょう!この俺が片手で持ち上げられています!! 今ならオリバに片手で振り回されたドイルさんの気持ちが解る!! などとドイルさんの気持ちを一身に受け止めていた時でした。 我が頭を掴んでいた手がスッと離されたのです。 おおゴッド!アタイの願いが届きました!私はついに解放されたのです! ───しかし次の瞬間には掬い上げるようなアッパーカットがメゴシャアアッ!!! 彰衛門「ジェルァアアーーーッ!!!!」 ……その時ボクは、大空に羽ばたいたのでした。 ───……。 ……。 彰衛門「ゲベッ!ゴボベベッ!は、はだがおでた……!」 毎度ですよもう。 やっぱり狙われた鼻はあっさりと砕けて、鼻血がチューと有り得ない勢いで飛び出てる。 悠之慎は───ああ、やっぱり侍ブチノメーション。 彰衛門「こ、こんのバカモンがぁーーーっ!!     貴様ともあろうものが理性を無くすとは何事かぁーーーっ!!!」 再び疾駆! 今度は助走を付けた飛び蹴りでございます! 彰衛門「ラァリャァッ!!」 ドゴォッ───ガシッ!! 彰衛門「あらっ!?」 蹴りは悠之慎の頬にヒットした! ……けど、てんで動じもせず拙者の足首を掴む修羅がそこに居ました。 彰衛門「お、おわっ───」 悠之慎『ケェエェアァッ!!』 ヴオッ!ドッガァンッ!! 彰衛門「オギャーーーッ!!!!」 そのまま足首を軸に投げられ、地面に叩きつけられた。 ぬおお!顔面の骨が砕けんばかりの激痛です!! 私はあまりの激痛にのた打ち回りました! ───なんてやってる間に、悠之慎は跳躍して重力を創造! 倒れた俺目掛けてヴオッ───と落下してギャアアアア!!! 彰衛門「ホアァアアッ!!!!」 ドッガァアアアアアンッ!!!! 創造された重力とともに落ちてきた悠之慎は、地面にバカデカいクレーターを作った。 彰衛門「ヒィイッ!!こんなの喰らったら刹那に絶命を約束されますよ!?     そげな契約ノー!サン!キュー!!     というわけでとんずらぁああああああっ!!!!」 無理と悟りましたから全力疾走!! 悠之慎さんと全力で戦うのは今この時じゃありませんし、 暴走した悠之慎と戦うのはなにか間違っております! だから逃走!───……したんですけどねガシィッ!! 彰衛門「ゲゴッ!?」 悠之慎『焚ッ───』 ドッゴォオオオオンッ!!!! 彰衛門「ブゲェエエーーーーーーッ!!!!!」 後ろから頭を鷲掴みされて地面に叩きつけられました! しかも悠之慎たら逆立ちのような格好で全体重プラスしてくれやがってます! 彰衛門「こ、このっ───ヘアァッ!!」 ベチィンッ!! 空いている足で再び悠之慎の顔面を蹴った。 刹那だがそのために悠之慎の握力が弱まり、俺は逃れることに成功。 もちろん悠之慎の手からであって、戦闘からというわけではござんせん。 ああ無情。 彰衛門「……強いな、ドッポ・オロチ……感動的なほどに」 体勢を整えて悠之慎を見る。 ちと荒療治になるが───アルファレイドで腕の一本でも弾けば正気に戻るだろう。 彰衛門「……つくづくバケモンですよね、俺らって」 既に腕の一本を吹き飛ばしたり治したりが慣れすぎてる自分が怖い。 彰衛門「しかしこれも正気を見失った自業自得と知りなされ!     アァルファレイドッ───カタストロファァーーーッ!!!!」 ガゴォッッチュゥウウウウーーーン!!!!! 我が手から鋭く眩い、だが黒く染まった光が放たれる。 それは瞬時に疾駆してきた悠之慎にクリティカルヒットして───ってぇっ!! 彰衛門「ターッ!!お馬鹿ァアーーーッ!!いきなり走ってくる子がおりますかぁっ!!」 巨大な『黒』の波動に飲まれた悠之慎! 果たして彼の安否は!? 次回!たわけモン道中記第二十章! 『危険な二人!最強戦士は眠れない……かも!?』 ……ごらん、あれゴバァッ!! 彰衛門「おわぁああああああああああっ!!!!!」 なんてことでしょう!私はあまりの出来事に大変驚きました!! 黒い闇を裂くようにして、彼の手が現れて拙者の頭を掴んだのです! 彰衛門「なんでぇっ!?ってしまったぁああーーーっ!!!」 月蝕力!そうです、彼にはそれがありました!! アルファレイド───というか月操力じゃあ悠之慎は傷つけられません! 彰衛門「ああもう!     まるでアルベイン流に属さない半端モンの剣士の気分だよこのダオスさまめ!!     ───なんて言ってる場合じゃございませんでしたぁああーーーーっ!!!!」 振るわれた豪腕が目の前に迫ります! しかも頭掴まれてるから逃げられな─── 彰衛門「あっ!いやっ!待って!待ブベッチャアァーーーッ!!!」 喋り途中の拙者の頬に鋭い角度からのアッパーカット!! ゴキベキと的確にジョーを狙い撃ちしたそれは、見事に我が顎を破壊したのです!! しかもそれだけでは留まらず、拙者は再び大空へと羽ばたいたのでした。 彰衛門「うきっ!うきっ!!うきぃいいーーーっ!!!」 あまりの激痛に顎を押さえて泣き叫びました! 痛い!痛いよムーミン! 彰衛門「ゲバッホヘ!ゴッホ!!げ、げげげ月生力!!」 顎に月生力を流して回復完了! 次いで大地に立っている悠之慎を見下ろす。 思いっきり空に飛ばしてくれやがりましたが、 この空に飛ばされた状態を利用しない手はねぇ〜〜〜っ!! 彰衛門「いくぜよ───月然力・重力!!」 体に重力を落とし、悠之慎目掛けて一気に落ちる!! この速度を利用した一撃で悠之慎の正気を取り戻してドゴチャアッ!! 彰衛門「はぶぅいっ!!」 重力をプラスして落ちた途端、拳を避けられた上に頭突きで落とされた。 さらに地面に落下した拙者を水面蹴りでベゴシャアと吹き飛ばす悠之慎。 彰衛門「げぼぉあっ!!」 その蹴りの威力たるや、 重力を発生させたままの拙者を地面と平行に吹き飛ばすほどのものだ。 数メートル空の旅を進呈された拙者はようやく地面を転がると、 すぐさまに体勢を立て直そうとして 彰衛門「へっ───!?」 立て直そうとして、瞬時に疾駆してきた悠之慎に驚愕する。 彰衛門「やっ!ちょ、ちょっと待───!!!」 ドッパァアンッ!!! 彰衛門「ギョベェオアッ!!!」 本日数回目のフライトです。 立ち上がろうとした拙者は脇腹を蹴り上げられ、胃液を吐きながら空に舞った。 悠之慎『とっておきだァ……ッ!!』 キュアァアアア…………ッッ!! 吐いたために涙に滲む視界で、悠之慎の手の平に雷光が込められた。 彰衛門「ぐあっ───た、退魔の絶対防御壁!!」 喰らったらヤバイという直感!すぐに壁を発生させ、体を防御する!! ……が、それはミステイクだったと僅か二秒後に気づかされました。 ひとつ、あることを思い出したんですよ。 『創造物に月操力なんて関係無い』 すぐに転移で避けようと思ったけど間に合いませんでした。 ああ、すぐ目の前に雷光が───って俺もうこんなことばっか!! もういやです!泣きたいです!涙で威力が消せるならいくらでも泣くのに! あぁあああそげなこと思ってる間に雷光が!雷光がぁあぁあああっ!!! 【ケース51:簾翁みさお/ハルマゲドンバスター】 ボガシャァォオオオオオオオオンンンッッ!!!!! 声  「ウェギャァアアォオオオオオオオオッ!!!!!」 絶叫が響き渡りました。 確認するまでもなく間違えようがありません、これは彰衛門さんです。 みさお「急ごう、聖ちゃん」 聖  「う、うん……」 あの暴走様はちょっと尋常じゃなかった。 いくら彰衛門さんでも、相当に梃子摺るんじゃないだろうか……。 ……うん、本当に急がないと。 頷きをひとつして神社から村の方へと向かう。 村の家についていた火は消えているみたいだ。 ……消えている、というか……削り消されたというか。 遠くに見えるその景色では、今もなお砂煙が噴き上がるように舞って─── 大きな家が瞬時に瓦礫の山になったり、絶叫が聞こえたり……もう大変らしい。 ……ちなみに『絶叫』というのは他の誰でもない、彰衛門さんの絶叫だ。 聖  「っ!」 みさお「あっ───聖ちゃん!」 そんな絶叫を聞いた聖ちゃんは信じられないくらいの速さで村の方へ走っていった。 わたしもすぐにそれを追う……けど。 みさお(……嫌な予感が全然消えません……) 怖いとかじゃなくて、ただ嫌な予感を感じます。 ええほんと、怖い予感とかじゃないんですよ……。 みさお(暴走した悠介さん、本当に呆れるほど滅茶苦茶ですからね……) わたしが感じているのはそういう嫌な予感である。 正直に言えば村の方─── というか悠介さんの居る場所に向かいたくなんかないんですけどね……はぁ。 ───……。 ……。 ボゴシャア!! 彰衛門「つぶつぶーーーっ!!!」 聖  「パパァッ!!」 ……辿り着いてみれば、案の定嫌な予感は当たっていた。 村周りには侍の山が気絶したまま動かない。 彰衛門「うきっ!うきっ!うきぃいいーーっ!!!!」 彰衛門さんは彰衛門さんで、悠之慎さんに顎を砕かれて地面を転がりまわっている。 見るだけなら愉快そうだけど、どうにもそれだけじゃないらしい。 聖  「っ……よくもパパをっ……!やっぱり嫌い───大嫌いっ!!」 聖ちゃんが手に光を込め、悠之慎さんに向けて放った。 けどわたしはそれを制止しようとした。 酷く嫌な予感が頭の中によぎったから。 みさお「待───」 ───間に合わない。 光は悠之慎さんに当たり、爆煙を噴き上げた。 それを確認すると聖ちゃんが彰衛門さんに駆け寄る。 ダメだ、そんなことをしたら───!! コォアッ─── 聖  「え……?」 彰衛門「ややっ!?」 みさお「───!!」 間に合わないっ!! みさお「くぅっ!!」 煙から放たれた光が聖ちゃんに向けて放たれる。 怖れていた恐怖……攻撃されれば誰だってそっちを向くのは当然なのだ。 だからこそ聖ちゃんには攻撃をしてほしくなかったのに───!! みさお(間に合って……!!) わたしはそこらへんにあった何かを手に掴んで、それを思い切り投げた。 月然力・風と重力を駆使して、風の抵抗を無くしたり軽くしたりして瞬時に届くように。 『刀』の力を引き出して全力で行使した。 その甲斐もあってか投げた何かはその場に届き───ドゴッチュゥウウウンッ!!!! 根四門「キャーーーーーッ!!!!」 ……星になったその人を見て初めて、投げた物体が人であることに気づいた。 彰衛門「気を付けなされ!みさおさんに聖さん!     今の悠之慎にゃあ物理攻撃も月操力も利きません!!     刹那にでも油断したら顔面捕まれるから気をつけ」 ガッシィッ!!!! 彰衛門「イヤァアアアアアーーーーーーッ!!!!!」 注意した途端、彰衛門さんが頭を掴まれてた。 そのまま地面に散らばった瓦礫に顔面を叩きつけられて『ギョェエーーッ!!』と絶叫。 みさお「注意した人が捕まってどうするんですかぁっ!!!」 彰衛門「あ、あとを、た、頼んだ……」 コトッ……。(彰衛門さんの手が地面に落ちる音) みさお「ど、独眼鉄ーーーーっ!!!!」 お、俺達は忘れない……。 独眼鉄……貴様のような男が居たことを……。 彰衛門「誰が独眼鉄だこの野郎!!」 みさお「文句言うくらいなら独眼鉄の真似なんかしないでください!」 彰衛門「ごもっとも!つーわけでみさお、聖!今の内に全力で悠之慎ブッチメるぞ!!」 みさお「え……?今の内って……」 彰衛門「ハッキリ言いますよ!?悠之慎に武器持たせちゃならねぇ!     今でも反則なくらいに強いけどね、あやつアレでも手加減してるほうですよ!?     武器を持って超反則!黄昏使って究極の反則!     それに比べりゃ素手の悠之慎なんて生易しいにも程がありますよ!?」 みさお「うぇっ……!?そ、そんな!じゃあどうするんですか!?」 彰衛門「三人同時に月清力発動させるんじゃ!キミの『刀』の月操力増幅と聖の静沈の力、     そんでもって拙者のただの───……ただの……月操力で……」 みさお「ヘンなところで落ち込まないでください!!     いいじゃないですか!月光力で多少は能力が増幅されてるんですから!」 彰衛門「いいんだ……どうせボクは悲しい空の下に生まれた漢なのさ……。     慰めなんていらねぇYO……同情なんていらねぇYO……」 彰衛門さんがイジケだして地面に『の』の字を書き始めた───途端、 メゴシャァーーンッ!!! 彰衛門「オギャーーーッ!!!」 悠之慎さんに頭を掴まれて地面に叩きつけられた。 ……救いがないです彰衛門さん。 彰衛門「タスケテー!タスケテー!!この人さっきから俺しか狙ってねぇYO!!     なんか俺に恨みでもあるんですかねこの人!!」 みさお「無いとでも思ってたんですか!?」 彰衛門「えっ!?あるのっ!?」 視界の先で、彰衛門さんが大変驚いていた。 で、驚いた次の瞬間には重力を相乗させた悠之慎さんの落下によって踏まれ、絶叫。 さらに潰れた彰衛門さんから離れるついでに、悠之慎さんは雷光弾を投げつけた。 彰衛門「ゲェエエエエーーーーーーーッ!!!!」 みさお「わぁあああああーーーーーーーーっ!!!!」 聖  「っ……!!」 その『ついで』がどれだけの威力を持っているのか瞬時に悟ったわたしたちは、 慌ててその場からの逃走を図った!! わたしは聖ちゃんと一緒に全力で空に逃げ、 彰衛門さんもそうしようとして───ムンズ。 彰衛門「あ、あれっ?キャアアアーーーーーーッ!!!!」 悠之慎さんに足首を掴まれて絶叫。 逃げ道を失った彰衛門さんはやがて、 地面に接触すると同時に発生した巨大な光の半球にゆっくりと飲まれ─── 彰衛門「あ、いやっ!なんで足掴んでるの!?それどころじゃないでしょ!?     え!?関係無い!?大有りだよ!なに言ってんの!?だから離して!?ねっ!?     悪い条件じゃないでしょ!?───へ?条件なんて聞いてない?     だだだってこんな切羽詰まった状態でどんな駆け引きが組めるの!?     そんなのボクの方こそ知りたいよ!だから離して!離してぇえええっ!!!     あっ!いやっ!足の先からゆっくりと痛みがっ!ダメッ!それ以上はダメッ!!     離してっ!いやぁあああ離してぇえええっ!!!ギャアアアアアアアッ!!!!」 体の全てが破壊の半球に飲まれる頃。 その場所にはただ……彰衛門さんの絶叫だけが轟いた。 Next Menu back