───たわけモン道中記26/咲桜純←正体───
【ケース65:弓彰衛門(再)/神様降臨祭】 ───デゲッテッテデェーーン!!マキィーーンッ!! 彰衛門「闇を照らす霊訓!稲垣吾郎を名前で、     しかも『さん』付けで呼んでしまうキミは『ほん怖クラブ』の会員だ!」 冥月 「はい!稲垣さん!」 彰衛門「これ!そこは『はい!吾郎さん!』でしょう!」 冥月 「だってわたし、ほん怖クラブになんか入りたくないですし」 彰衛門「『なんか』って……」 ひどいねキミ。 悠之慎「アホやってないで後悔の探知しろよ……     お前しか出来ないんだから、お前が真面目にやらないでどうする」 彰衛門「グウウ……」 ───さて、時はまたもや過去景色。 今回はほんにいろいろなことが解る過去です。 そもそも事の始まりはこの時間軸に『咲桜純』が降臨したことから始まりました。 彼はここで『桜純之上』という偽名を使って、からかいの限りを尽くします。 降り立った途端に『丙辺猪(へいべい)
』ってヤツに心臓刺されて倒れた時なんか大変驚きました。 しかしそこんところも驚愕事実。 やはり彼には特殊な能力があるらしく、心臓刺されたのに起き上がってみせたんですよ。 癒しの力、でしょうね。 傷が治る過程で、確かに神側の力の波動を感じました。 彼には神か神の子の知り合いが居ると見て間違いないでしょう。 冥月 「お祭りですかー、賑やかでいいですねー」 彰衛門「暢気だねぇキミ」 そげな能力で、先に丙辺猪さんに刺されて生き絶え絶えだった男を救った純之上殿。 けどあっしはね?その能力よりむしろ、相手の名前に大変驚いたのですよ。 男の名前は『関 彦次郎』。 前の歴史で、志京殿が見た大木に掘られていた名前の内のひとつです。 ……つーことはですよ? この時代はあの時代の前の歴史ということになるわけです。 悠之慎「お……始まったぞ」 彰衛門「む?おお」 今現在、『神様降臨祭』が行われている。 我らはそれを大木の上から見下ろしている状態。 視線の先で舞いをしているのは『阿夢』さま。 あの人の名も、大木に刻まれた名前の内のひとつなのです。 しかしね?この阿夢さまがどうにもアレなんですよ。 悠之慎「……なにか因果でも引っ張ってきちまったかなぁ……お前が」 彰衛門「おっほっほ……ひ、引っ張ってきたというのならきっとキミさ、親友」 困ったことに、物凄く『塚本芽衣』に似てるんですわ。 しかしこの阿夢さま、信じられんくらいに心優しき御方です。 もし前世とかだったとしても、その事実が信じられんくらいに優しいです。 もうね、塚本芽衣の顔に似ているのが悲しくなるくらいに優しいです。 来世があれとなると、ほんとに泣けてきます。 冥月 「ここまでは彰衛門さんの時とそう変わりませんね」 彰衛門「そうじゃのう。このどれくらいか後の時代に拙者が降り立って、     楓巫女が降臨するわけですが……」 降臨と言っても南無の仕業ですけどね? なんにせよ今さら隆正の言葉を思い出しました。 妙な格好をした純之上って男が『葉流』って神の子を託されるだのどうのと。 どうやって歴史をてんてんとしてるのかは解りませんけど、 現代から見て300年前のあの時代にあったお尋ね者の号外も、 あの純之上殿本人のものなのでしょう。 食い逃げ常習犯か……ほんに大したお手並みじゃて、乱闘殿様よ。 冥月 「でも……安芸乃弊(あきのへい)と丙辺猪がこのまま引き下がりますかね」 彰衛門「そりゃないね。あやつらから感じるドス黒い気配は櫂埜上喜兵衛にそっくりだ。     死んでも死に切れずにどこまでも追ってくるタイプだぜ、ありゃあ」 安芸乃弊とは、丙辺猪とグルであり悪いことを考えておる悪人でござる。 彦次郎と阿夢さまの仲を裂こうとしたり、 地位欲しさに平気で人を殺そうとするようなお方なのでござる。 事実、丙辺猪に彦次郎を刺すように命じたのは安芸乃弊なのです。 あたしゃあいつが嫌いです。 だから隙があれば呆れるほどにボコってやろうかと思ってます。 ───しゃんしゃん、しゃんっ…… 冥月 「あ……そろそろ終わるみたいですよ?」 悠之慎「そうだな」 やがて、舞いも終わりを迎えようとしていた。 数々の民達が見守る中、長い長い舞いをしていた阿夢さまは───ややっ!? 冥月 「あ、あれ……?なんだか阿夢さんの様子が───」 彰衛門「う、うむ……!なにか様子がおかしいでござる……!」 そう、おかしいのだ。 阿夢さまが突然苦しみ出した。 これって……これってもしかして…… 悠之慎「お、おい……あっちの方じゃあ純之上の体が光ってるぞ?これじゃあまるで……」 ……まるで、拙者の時と同じではありませんか。 強制的に月生力を使わされたあの時と。 感覚の目で見てみると、おかしなことに阿夢さまからふたつの帯が出ているのが解った。 ひとつは純之上殿へと伸び、ひとつは神社の片隅に身を潜めていた彦次郎に。 何故彦次郎は身を潜めているのかといえば、 今のところ彦次郎は丙辺猪に殺されたことになっているから。 その方が安芸乃弊の行動を監視しやすいためにだそうだ。 しかし───阿夢さまが苦しそうに彦次郎の名前を呼んだ時、 潜めていた意味は無くなった。 彦次郎が祭りの祭壇へと駆け上り、阿夢さまを抱きとめたからです。 ───当然、村人達は騒然とした。 ムラビトンA「お、おい!あれ、彦次郎さまじゃないか?」 ムラビトンB「馬鹿な!死んだって聞いたぜ!?」 ムラビトンC「じゃあ嘘だったんだな?」 ムラビトンD「誰だ!性質の悪ぃ嘘をついたのは!」 ムラビトンE「さあな……ただ俺は通りがかりの酔っ払いに聞いたぜ?」 ムラビトンF「酔っ払い!?お前もか!?」 ムラビトンE「お前もってことは……」 ムラビトンF「ああ、俺もだ」 ムラビトンG「あ、俺も!」 ムラビトンH「そういや俺もだ!」 ……この後、『俺もだ』がZまで続いた。 一斉に喋ればいいのに、わざわざひとりずつ叫んでました。 ムラビトンA「そういやあの酔っ払い、よく安芸乃弊さまと一緒に歩いてるの見るぜ」 ムラビトンB「なに!?お前もか!」 ムラビトンA「お前もってことは……」 ムラビトンB「ああ、俺もだ!」 ムラビトンC「そういや俺もだ!」 ムラビトンD「俺もだ!」 ムラビトンE「俺もだ!」 ……やっぱりこの後、『俺もだ』がZまで。 ちなみにその『酔っ払い』ってのは何を隠そう丙辺猪さん。 恐らく彦次郎を刺した時点で、確実に殺したと思っていたのでしょう。 確かにあの斬り方だったら彼は道端で倒れたまま死んでおったでしょう。 そこに、ひとつの例外さえ降臨しなければ。 悠之慎「いやー……純之上ひとりの存在だけで、     面白いくらいに安芸乃弊の策略が穴だらけになっていくな」 彰衛門「策略なんて例外には弱いもんでしょ。     完璧なものほど第三者の介入でブチ壊れるもんですから」 冥月 「ですね。正直可哀相なくらいに穴だらけです───あ。     光が治まっていきますよ?」 言われてから見てみれば、純之上殿が櫓の祭壇に居た。 まあつまりは阿夢さまの居るところですけどね? 悠之慎「あれ……神の子、だな」 彰衛門「ウィ、間違いねぇ……」 悠之慎「しかも……驚いたな、ルドラに近い気配を感じる。     あの神の子、創造神の資質持ってるぞ」 彰衛門「なんと!?ではイメージの具現化も!?」 悠之慎「経験を積めば出来ると思う。へぇ〜……ルドラ以外にも居たんだな、創造神って」 『先が楽しみだ』と言う悠之慎を余所に、拙者は葉流に視線を集中させて月視力を発動。 ようするに未来視だが─── 彰衛門「………」 冥月 「……?あの、どうしていきなり泣き出してるんですか?」 未来の先で、アヤーホに似たおなごとともに食い逃げをしているところや、 旅の大半を負ぶってもらっている葉流の様子が頭の中に叩き込まれた。 結論:ろくな育ち方してねぇ……。 しかもこのアヤーホに似たおなごに負ぶさってる構図、俺どっかで見たことあるよ。 なんつーかこの姿に虚無僧の天蓋付ければもう絶対間違い無いよ……。 そして俺が少女夜華さん探索の時に、 とある村で食い逃げ罪をなすりつけられたのって絶対こやつらの所為だよ……。 それを考えると、なんだか涙が……。 悠之慎「彰衛門?」 彰衛門「悠之慎……残念だけどあの神の子、良い子には育たないよ……」 悠之慎「へ?って……未来視か……」 冥月 「……わたしも見てみましたけどね。ともに旅をする相手を明らかに間違えてます。     純之上さんと一緒に育てばああいう性格にもなりますね……はぁ」 彰衛門「な、なんですかその同類を哀れむような顔は……!」 冥月 「いえ……わたしも刀の持ち主が別の人だったら、     もっと違う性格になっていたのかなと思ったら……少し悲しくなりました……」 彰衛門「本人の前で随分と失礼ですねキミ……あ、それより骨探せ骨!     もしかしたらあの神の子も骨死神が用意した存在かもしれんよ!?」 冥月 「いえ……あんなことするのは南無さんくらいでしょう」 悠之慎「根性曲がってたもんなぁ」 彰衛門「人の顔見て言わんでくださいよ!!ありゃ俺じゃねぇって言っとるでしょ!?」 ともあれ、祭りは終了した。 村人達は大いに騒ぎ、大いに飲みまくっている。 彦次郎と阿夢さまは騒ぎの中心に居て、 純之上殿は少し離れた場所で葉流と仔猫とともに居る。 彰衛門「───っとぉ、来ましたよ来ましたよぉ?後悔レーダーに反応アリ!」 悠之慎「よし、どっちだ?」 彰衛門「神社の裏ッ側の方だな。後悔の具現が蠢いておるわ」 悠之慎「神社の裏っていうと……さっき安芸乃弊と丙辺猪が歩いていった方向だな。     なんだ、あいつらをのしちまえばいいならそれを早く言え。あいつらは好かん」 冥月 「わたしもです。というわけで早く行きましょう」 彰衛門「オーケー、皆様騒いでますし、大声出したって聞こえやしませんでしょう。     レッツビギンだぁ〜〜〜っ」 さあミッション開始です! ───……。 ……。 ゴゾォ……! 彰衛門「クォックォックォッ……!!」 ただいま三階建ての神社の外壁にへばりつきつつ、 とある人物の話に耳を傾けておりマッスル。 その人物とは─── 安芸乃弊「丙辺猪……貴様覚悟はできていますよね?」 丙辺猪 「す、すいません!お許しを!お許しを!」 そう、安芸乃弊さんと丙辺猪さんです。 どうやら安芸乃弊さん、降臨祭が成功したのが悔しくて仕方ないらしいです。 安芸乃弊「貴様、言いましたよね?儀式なんか成功するはずはない、と。      彦次郎は死んでいるので私達は何もすることはないだろう、と」 丙辺猪 「は、はい……」 安芸乃弊「ではこの失態、どうしてくれるのでしょうか?」 丙辺猪 「そ、それは……」 戸惑う丙辺猪さんでしたが、 拙者としては『貴様、言いましたよね?』という言葉にステキさを感じた。 安芸乃弊「いいですか?今宵のうちに守衛頭と神の子を殺しなさい。      彦次郎は私自ら殺します」 丙辺猪 「な、なんと!安芸乃弊さまの手を煩わせなくとも……」 安芸乃弊「あなたでは信用に至らないんですよ」 丙辺猪 「そ、そんな……」 安芸乃弊「信用してもらいたくば、必ずや神の子と守衛頭を殺しなさい」 丙辺猪 「はは〜!必ずや!必ずや神の子と守衛頭を殺してみせます!」 安芸乃弊「しっかりと事故と見せかけるのですよ?」 丙辺猪 「承知しております!」 安芸乃弊「次はないと思いなさい」 丙辺猪 「は、はは〜!」 声   「……ああ。『次』は無いな」 へ? ってうわ!嫌な予感!俺この殺気、感じたことあるよ!? 安芸乃弊「───!?誰です!」 ─────────極死( きょくし) 彰衛門 「うわやっぱり!!これ貴様!死にたくなければ避けなさい!」 安芸乃弊「上───!?」 ゲッ!声かけた所為で逆に上に気ィ取られてるよ安芸乃弊さん! そうこうしてる間に闇の夜に浮かぶ月に照らされた短刀が投擲とともに輝き─── 丙辺猪「安芸乃弊さま!危ねぇ!!」 殺気を感じ取ったのだろう、丙辺猪さんがその短刀を弾いてしまいました。 じゃけんど……気づいた時にはもう遅い。 短刀と同じ速度で宙に舞っていた彼は、 短刀を弾いた丙辺猪の頭を逆立ちの状態で掴み───バギィッ!! 丙辺猪「ブゲッ───」 ─────────七夜( ななや) 一撃の下、丙辺猪さんの首の骨を捻り壊した。 安芸乃弊「なっ───」 声   「油断大敵、です」 彰衛門 「ややっ!?」 丙辺猪さんに気を取られていた拙者は、 声のした方向───安芸乃弊さんの方を即座に見た。 しかしその頃には彼女が放った胴回し回転蹴りが安芸乃弊さんの頬に突き刺さってました。 ……当然、安芸乃弊さんあっさり気絶。 彰衛門「ゲェエエエエーーーーーーッ!!!!」 ……なんてことでしょう。 頃合を待っていたために、懲悪の機会を奪われてしまった……。 何気に今か今かと待っていたのに……! 彰衛門「な、なんで倒しちゃうんだよぅ!ボクが倒す筈だったんだぞ!?」 拙者は安芸乃弊さんと丙辺猪さんを瞬殺してしまったふたり─── 悠之慎と冥月に向かって罵倒を飛ばした。 悠之慎「アホゥ、あれだけ聞けばこいつらが悪巧みしてることなんて解るだろ。     そんなヤツに一秒でも意識を持たせておくのは気に入らない」 冥月 「以下同文」 彰衛門「『文』じゃないじゃん!!『声』じゃん!!返せようボクの見せ場!     これからかっこよくふたりを成敗するつもりだったんだぞ!?」 冥月 「あ〜カッコイイ、彰衛門さんはカッコイイですよ〜」 彰衛門「なにその気の抜けた返事!     カッコイイとか本気で思ってないのが丸解り返事!     そんなので騙されるほど間抜けじゃありませんよ!?」 悠之慎「間抜けって自覚はあったのか」 ザグシャアッ!!(心に言葉が突き刺さる音) 彰衛門「ッ……!!」 痛い……痛いッスよ悠之慎さん……!! 言葉って絶対武器になるよ……凶器だよ……! 冥月 「で、彰衛門さん。もう後悔反応はありませんかね」 冥月さんが丙辺猪さんの首を癒しつつ言う。 おお、一応息あったのね。 でもそれも束の間で、安芸乃弊さん共々あっと言う間にブラックホールに捨てられた。 彰衛門「………」 冥月 「イジケないでくださいよ。漢らしくないですよ?」 漢……?漢……漢! 彰衛門「そ、そうだよね!漢らしくないよね!よし!うむ!     えーとですね、後悔の反応は───あります!まだ終わっちゃいないぜ!?」 冥月 「えっ……!?」 彰衛門「次の後悔反応はこの神社の三階でござる!……近い!近いわゴメス!」 悠之慎「だから誰だよ……」 彰衛門「あ……そうそう!今度の相手は俺が倒すんだかんな!?手ェ出したらヒドイぞ!」 悠之慎「あ〜あハイハイ。強そうなのはお前に任せるよ。ザコは任せておけ」 彰衛門「苦しゅうない」 納得しあった我らは、喜び勇んで……とは違うけど、 とにかく神社の三階へと向かったのでした。 【ケース66:関彦次郎/刺客の来訪】 神社の三階にある阿夢さまの寝所。 私はそこに座を取って阿夢さまと向かい合い、ちょっとした話をしていた。 彦次郎「やはり葉流さまは純之上に任せた方がよかったのではないですか?」 阿夢 「いいえ。純之上さんを信じてないわけではありませんが、     やはり目の届くところに置いておきたいのです」 彦次郎「親馬鹿というものですか。純之上、唖然としておりましたね」 阿夢 「ふふ、面白い顔でしたね」 彦次郎「くく、確かに……」 あの時の純之上の顔ときたら、全く面白い顔をしていた。 本人に言うのはさすがに悪いが、内心さぞ笑かしてもらったものだ。 阿夢 「純之上さん、不思議な方ですね」 彦次郎「そうですね。     本人は異界のものと申しておりましたが、今でも(にわか)に信じられません」 阿夢 「そうですね。でも純之上さんの心はとても帰りたがっています。     あの証明書を見ましたか?」 彦次郎「はい。知らぬ名が沢山刻まれていました」 阿夢 「それだけ大切な人がいらっしゃるのですね」 彦次郎「肉親のものもありましたね」 阿夢 「はい……」 純之上には本当に世話になった。 出来ることなら我が手で元の世界に帰してやりたい。 これまでの大恩に応えるためにも。 阿夢 「純之上さん、帰る方法は見つかるのでしょうか?」 彦次郎「解りません……異界の者の出現など前代未聞ですから」 阿夢 「前代未聞ですか……もし帰ることが出来なかったら……」 彦次郎「はい。その時はずっとこの場で我らと暮らしていただきましょう」 阿夢 「そうですね。私達は証明書に名を書かれた友なのですから」 彦次郎「そうです───……!?」 ……殺気!?  阿夢 「どうかしたのですか?彦次郎」 彦次郎「しっ!動かないで下さい!」 殺気の数は……ひとつ……ふたつ……みっつ……十人くらいは居そうだ。 私は静かに愛刀『疾空』に手を延ばし、それを腰に構えた。 阿夢 「彦次郎……」 恐らく阿夢さまも気づいたのであろう───この場に溢れる異様な空気に。 彦次郎「そこだ!!」 掛け声とともに天井に刀を突き刺す! ───ドスッ! ???「ギャオオォォーーーーーーッ!!!!!」 確かな手応え!まずは一匹! それを合図に、至る場所から刺客が現れた。 さらに天井からは人影が落ち─── ???「あいたたたた!!まったくなにをするのかね!     助かる気がないの!?痛いじゃない!」 ……どういうわけか、物凄い剣幕で私に罵声を浴びせてきた。 しかも確かな手応えを感じた筈が、相手はピンピンしている。 これは一体……? 【ケース67:弓彰衛門/悲しみのワルツ】 突如、我が脇腹を襲う激痛に天井から落下した。 というのも、いつでも行動に移れるように天井の一部を外せるようにしておいたのですが。 彰衛門「あいたたたた!!まったくなにをするのかね!     助かる気がないの!?痛いじゃない!」 阿夢さまの部屋に落下した拙者はまず言いたいことを言ってから構えた。 外野から『よっ!カッコ悪いぞ彰衛門!』とか聞こえてきますが、 それに罵声を返して刺客の皆様を迎え撃つ。 彰衛門「来い───十秒でカタをつけてやる!」 木刀を構えて意気込みました。 敵さんはアタイの武器を見て勝気に突っ込んでくるのみです。 彰衛門「まさに不届き!そげな刀でアタイを斬るおつもりかえ!     宣言しよう!貴様らは誰ひとり、我を斬りつけることなく眠りにつくだろう!!」 そう!こやつらなどアタイの敵ではない!! 見せてくれようぞ!我が力をズバシュゥッ!!! 彰衛門「キャーーーーッ!!!?」 そう……あやつらなど敵ではなかった。 しかし意外な所に敵は潜んでいたのです。 彰衛門「カカカカカカ……!!ひ、彦次郎さんたらなにするの……!?」 その敵さんとは彦次郎さん。 隙だらけのアタイの背中をバッサリいってくれました。 アタイはゆっくりと振り向きつつそう言うが、 彦次郎さんたら拙者から阿夢さまを守るかのように構えるんですよ。 ……ワァ、俺完全に敵だと思われてる。 しかも外野の悠之慎と冥月が待機してる方向からは、狂おしいほどの笑い声が……。 ちくしょう!あとで覚えておれよ!? 彰衛門「あ、あのね?ボクね?ただキミ達を敵から守ろうと思って……」 彦次郎「戯言を!」 彰衛門「即答!?」 凄まじい速さで戯言扱い……。 あの……俺ってこの旅の中でとことんまでに信用されてない気がするんですけど……? 彰衛門「ああもう!とにかく刺客は拙者がなんとかいたしますから、     貴殿はそこで待機しておりなさい!」 彦次郎「なにっ!?それはどういう───」 彰衛門「あー!うっさいうっさい!どうせボカァ信用されませんよ!     疑るってんなら黙っててよもう!どーせボクが悪いのさ!それでいいでしょ!?」 既に外野側は爆笑中だ。 その声に反応した刺客のひとりがそちらへ駆け寄っていったが、 一秒も経たずにボコボコになって吹き飛び帰ってきた。 それに気づいた刺客のみなさまがそちらへ駆けて行く。 ……これはいけません!拙者の得物が無くなってしまいます! 彰衛門「ポセイドンウェーーィッ!!」 ゴッパァーーンッ!!! 刺客2「ほごっ!!」 外野へ向かう刺客のひとりをラリアットで始末。 彰衛門「フォーール!!」 ドゴシャア!! 刺客2「ギャーーッ!!」 もちろん倒れた相手にグリフォールをやるのも忘れません。 ちなみにグリフォールってのはただのボディプレスです。 彰衛門「トタァーーッ!!」 それから急いで立ち上がった俺は、外野へ向かう者どもにプロレス技のオンパレード。 その場に居た刺客全てをプロレス技で気絶に導き、 最後から数えて三人までにはキン肉族三大奥義を進呈。 当然動かなくなりました。 彰衛門「アーーーイムナンバーーワーーン!!!」 そして拙者はその人の山の頂上で腕を上げて叫びました───その時。 声  「阿夢さま!ここは危険です!早く逃げましょう!」 謎のおっさんがその場に駆け込んできて叫んだのです。 阿夢さま「あ、あなたは?」 おっさん「あっしの名は生平老(きへいろう)と申します!      この神社に刺客が入ったと聞いたので、急い、で…………あれ?」 部屋の中を見渡すおっさん。 しかしその場には動く刺客などおらんかったのです。 生平老「ど、どうなってんだこりゃあ……。     あの人数で手はず通りにいかなかったってぇことか……?」 大変な驚きだったんでしょう。 おっさんはあっさりとボロを出しました。 拙者はそげなおっさんの頭にポンと手を乗せて 生平老「え?」 彰衛門「マキシマリベンジャーーーッ!!!」 ゴッパァーーーン!!!! 生平老「ぎょぶべはぁっ!!!」 畳みに叩きつけてあげました。 さらに抱え上げてその頭を膝の上に落とし、 さらにさらに上空へと投げて落ちてきたところにドゴシャッ!! 彰衛門「あ」 ……落ちてくるどころか、天井に頭が突き刺さって落ちてこなくなってしまった……。 彰衛門 「えーと……うわぁっはっはっはっは!!!」 彦次郎 「………」 阿夢さま「………」 呆然と拙者を見る彦次郎と阿夢さまの視線を雄山笑いで遣り過ごす。 いやはやまいったね、どうにも。 彰衛門「えーと、そっちに隠れてる三人、出てくるなら今の内だけど?」 彦次郎「なにっ!?まだ居たのか!?」 彦次郎の驚愕とともに襖を破って現れたのは三人の刺客。 どうやらヤケクソ気味らしく、俺ではなく彦次郎と阿夢さまと葉流を狙って駆け出した。 彰衛門「はっ!い、いか〜〜〜ん!」 俺はターちゃん(岸谷さん)の如く叫び、すぐさま葉流さんに呼びかけた! 彰衛門「葉流さん!思考を紡ぐのです!     頭にイメージしたものを自分の内側から外に押し出して具現化させるのです!     貴様ならば出来る!自分を───信じるのだぁぁあっ!!」 葉流 「………」 ……寝てやがりました。 彰衛門「ターーッ!このお馬鹿ーーーっ!!!」 拙者は阿夢さまの腕の中でのんびりと寝入っている葉流さんに罵倒を飛ばしました。 そりゃね!?子供なんだから眠るのは当然ですよ!?寝る子は育ちますよ!? でもこげな騒動の中で寝たままなんて、どんな神経しとるんですか! 彰衛門「い、いかん!間に合わーーーん!!」 仕方無く拙者はあまり取りたくなかった行動に出ました。 彰衛門「『冥月』───来い!!」 手を広げ、意識を集中させる。 刹那、刃と刃が瞬時に擦れ合ったような音とともに、俺の手に冥月刀が転移する。 彰衛門「次元刀ォオーーーッ!!!」 それに月空力を込めて一閃。 その剣閃はゴゴォッキィンッ!という音を鳴らし、 刺客三人が手にしていた刀を消し斬った。 刺客ども『なっ……!?』 それを確認するとすぐに疾駆。 駆けながら冥月刀に呼びかけて冥月に戻ってもらい、一緒に駆け出した。 その先には刀を振り切ろうとする彦次郎。 彰衛門「チョエェーーリァッ!!」 冥月 「はぁっ!!」 ドカカッ!! 刺客ども『ぐはっ!?』 彦次郎 「なにっ!?」 俺と冥月は彦次郎の刀が刺客を斬る前に、なんとか刺客どもを蹴り飛ばすことに成功した。 彦次郎にとっては、それが『刺客を助けた』ようにも見えたのだろう。 彼は拙者と冥月さんを睨んできました。 彰衛門「このたわけめ!」 彦次郎「なっ……なんだと!?」 冥月 「そうです!たわけです!」 彦次郎「なにを突然訳の解らぬことを!貴様らやはり───」 彰衛門「お黙り!!貴様、今自分がなにをしようとしたのか解っておるのかね!」 彦次郎「何を……?命を守ろうとしたのだ!それのどこが悪い!」 彰衛門「ンなこと言ってるんじゃありません!     キミは今、子の前で人を殺そうとしたのですよ!?」 彦次郎「な、……う……」 彰衛門「見るに、貴様は相当な刀の使い手と見た!     ならばあの一瞬で相手に武器が無くなったことなど解っていたでしょう!     武器の無い無抵抗な存在を、キミは子の前で斬ろうとしたのですよ!?」 冥月 「反省点です!今のは彦次郎さんが悪いです!」 彦次郎「し、しかし私はどのようなことをしても阿夢さまと葉流さまを守る義務が……」 彰衛門「ノゥッ!義務ではダメです!意思としてやりなさい!     キミは阿夢さまを愛しているのでしょう!?     ならば人を斬り殺し、血を見せるなど滅多なことでは───」 声  「彰衛門!純之上が来た!ずらかるぞ!」 彰衛門「なんと!?」 これはいけません! 他のお方ならいいが、彼とこの時間軸で会うのはよろしくない気がする! 彰衛門「と、とにかく!よいですな!?まずは逃げることを考えなさい!     矢鱈に人を斬ることなかれ!子の前で斬るなどもっての他!おーけーね!?」 彦次郎「ま、待て!貴様は───」 彰衛門「とんずらぁあーーーっ!!!」 傍に居た冥月さんを抱きかかえてとんずら。 そのまま神社の欄干側まで駆け、その場に居た悠之慎とともに時空転移。 レーダーで探知してみたけどこの時代にはもう後悔は無いみたいなので、次です次! 彰衛門「しかしキミが『ずらかるぞ』とか言うと妙な感じだよね」 悠之慎「やかましい」 彰衛門「なんかさ、阿夢さまって不思議と『さま』を付けたくなる名前だったよね?」 冥月 「知りません」 彰衛門「……真面目に返事する気、ゼロですか……」 なにはともあれ、この時代でのお勤めは終わったのでした。 Next Menu back