───たわけモン道中記27/モミアゲ絶叫伝説───
【ケース66:兇國日輪守悠之慎/殺人考察】 キィンッ! 彰衛門「あい、とうちゃ───」 ガァアーーーンッ!!! 彰衛門「キャーーーーッ!!!?」 悠之慎「っ……!?」 転移した途端だった。 耳をつんざく轟音とともに、どこかで人が死んだ気配がした。 その気配は思ったより近い場所で感じられ───ドサッ。 冥月 「あ……!」 物音がした方向を見るのと、 ひとりの女がその場に居たふたりの人物を押した状態で倒れたのはほぼ同時。 ただ……その倒れた女の頭からは夥しいほどの血が流れ、 それが一撃で死を迎えた者の状態だということなど、 その場に居た全ての者が悟れただろう。 男  「……安芸乃弊……!」 助けられたであろう内のひとりが、包帯だらけの男を睨む。 口から出た言葉は『安芸乃弊』。 前の時代でブラックホールに飲み込んだ存在の名だった。 しかしその姿は安芸乃弊のものからはあまりにも離れている。 前世か、それとも来世なのか─── 女  「純……ちゃん?」 思考を巡らせる中、 ひとりの女───志京に良く似た女が、動かなくなった女を『純』と呼んだ。 そう……倒れた女から感じられる気配は、おかしなことに『咲桜純』のもの。 どうして、と思った時───彰衛門も一時期、 椛によって女に変えられていた時があったことを思い出した。 もしかしたらと思うまでもなく…… 俺の思考はどうやら、倒れて動かない女を桜純之上だと認めてしまったらしい。 そしてそれは、俺の隣で愕然とする彰衛門も同じようだった。 彰衛門「……近い」 冥月 「え……?」 彰衛門「……気、抜くなよ……悠之慎、冥月……。嫌なくらいの思念だ……」 悠之慎「………」 あろうことか、と言えるのだろうか。 彰衛門は安芸乃弊と呼ばれた包帯だらけの男ではなく、 女の姿になって動かない桜純之上を見て言った。 ……その時だ、確かに感じた。 反吐が出るくらいに黒い、嫌な気配を。 悠之慎「………」 その気配が純之上から流れていることに嫌気が差す。 しかもその気配が純之上のものであって純之上のものじゃないのだ。 これは…… 彰衛門「『黒』、だな。しかも殺人狂って言えるくらいにドス黒い」 悠之慎「ああ。頭に弾痕がある……ってのにまだ深層が生きてる。     どういう回復力だ……呆れを通り越して感心さえ出来る……」 冥月 「あ、あの……安芸乃弊さんと……     どうやら彦次郎さんの来世らしい人が争いを始めたみたいですけど……」 彰衛門「あっちはいい。気になるなら未来視で見てみろ、『殺し』は無い」 冥月 「え……?あ───」 彰衛門は既に月視力を発動させて『先』を見たらしい。 冥月もそれに習って発動させたようだが、 この場を離れてゆくふたりを追うことは無かった。 つまり……『殺し』は無いのだろう。 彰衛門「それより危ないのはこっちだ。あのおなごが危ない……」 志京に良く似た女は、純之上が助けた内の女の方を抱えてこの場を離れた。 だが───傍に居たもうひとり。 耳と尻尾が生えた女は純之上の傍から離れようとはしなかった。 彰衛門「───!来た!嫌になるくらいの後悔の波だ!」 彰衛門がそう叫んだ瞬間だった。 頭を撃ちぬかれた筈の純之上が一気に起き上がり、 困惑する女の首を掴んで持ち上げたのだ。 気配は完全に『黒』。 純之上の気配は深層に埋没してしまっている。 つまり───あれは純之上であって純之上じゃない。 彰衛門「二重人格───どころじゃねぇなこりゃ。『魂』のレベルで分かれてる」 悠之慎「そっちの方が好都合だ。彰衛門いいか?勝負は一瞬だけだぞ」 彰衛門「へ?───ああ、OK」 疑問の表情を浮かべる彰衛門だったが、 俺が『言』を呟き始めるのを見ると納得したように構えた。 悠之慎「冥月は『離れた瞬間』を狙って壁を作ってくれ。     出来れば次元刀レベルの壁がいい」 冥月 「離れた瞬間……?あ、あの、なんのことですか……?」 悠之慎「見てれば解る。いくぞ───“月詠の黄昏(ラグナロク)
”」 黄昏を発動。 刹那、純之上に気づかれたが…… 余裕の表情でニタリと笑うそいつは、得物が増えたことを喜んでいるようだった。 悠之慎「“接触(アクセス)───モード創造神(ルドラ)”」 ……失敗は許されない。 故に、意識をルドラに託して構えた。 ルドラ「───いくぞ、弦月彰利。二度は無い、心してかかれ」 彰衛門「解っとるわ!あのお方を救えるのであれば余力など残しません!まさに全力!     我が鎌よ……我が深淵に存在する『黒』に加え、     鎌が読み取った全ての闇を吸収して力とせよ───!“無形なる黒闇(ダークマター)”!!」 バギィンッ!! 彰衛門は自分の鎌に『黒』と『闇』の要素の全てを流し込むことで、 無理矢理鎌の形を変えてみせた。 それを自分の体に埋め込み、死神の気配を増幅させる。 彰衛門『準備OK!いつでもいきなされ!』 ルドラ「では行くぞ───“聖災を誇る無情の兵槍(ロンギヌス)”」 冥月 「あっ───」 ルドラが虚空にロンギヌスを創造するのと同時に、冥月がその意味を知る。 冥月はすぐに構え、それと同時にロンギヌスは発射された。 純之上「……ハッ」 純之上はそれを避けようともしない。 恐らく、自分の中にあるであろう『治癒』への絶対的な自信がそうさせた。 ……その油断さえなければ、もっと存在していられただろうに。 ───ゾフィィイインッ!!! 純之上『がはっ───!?』 ロンギヌスが当たるのとまさに同時。 女の姿の純之上から、男の姿の純之上が弾きだされた。 純之上『……!?なんだこれは───チッ!妙なことを!』 男の純之上がすぐさまに倒れゆく女の姿の純之上へと走る。 だがそこに、次元断裂という壁が発生した。 冥月 「月空力……!!」 冥月が『刀』の力とともに発動させた月空力によるものだ。 その壁に阻まれた純之上の動きが数瞬だけ停止した。 ───それが、そいつにとっての最高にして最後の失態だった。 彰衛門『いきますよ……“無制限なり我が漆黒の刃(アンリミテッドブラックオーダー)”』 唱える彰衛門の周りには様々な鎌が出現してゆく。 自身を鎌とした真の能力とは、全ての鎌を完全に自分のものにすることなんだろう。 一斉に放たれた幾つもの鎌の能力が、停止した純之上へと降り注いだ。 純之上『───!』 次の瞬間、景色が爆ぜた。 ───始まりには運命の破壊。 放たれた黒い光が対象の『治癒を使える』という決まり事を破壊した。 続くように漆黒の刃がその体を裂き、災狩の波動が腕を薙ぎ、闇薙の一閃が脚を殺し、 緋い鎌が斬り消し、混沌に変え、無に滅する。 それでも抗おうとする『黒』の時を時操の理が停止させ、 次の瞬間には殺戮を好む鎌が、文字通りその存在を『殺した』。 彰衛門『……消去完了』 ……その場には塵ひとつ残らなかった。 崩れるように倒れる女の姿の純之上と、 訳も解らず困惑する耳と尻尾を生やした女が居るだけだ。 彰衛門『っと。よし、後悔の波動、完全に沈黙。これでおーけーね?』 ルドラ「……ふむ、では交代だ。この次は汝の力で乗り越えて見せろ。     慎重になるなとは言わないが、この戦い……汝の力で十分解決できたろう」 ───キィンッ!と瞬間的な耳鳴りとともに意識が入れ替わる。 悠之慎「……そう言うなよ、確実に行きたかったんだ」 交代した瞬間、深淵に潜るルドラに言い返す───が、返事はない。 言いたいことを言うだけ言って、眠ってしまったようだった。 ……まあ、それはそれとして…… 悠之慎「……お前の鎌ってそんな使い方もあったのな」 素直な感想を彰衛門にぶつけることにした。 冥月 「あ、そうですよっ!わたしも驚きましたっ!     鎌の『能力』だけを引き出して使えるなんて、凄いです!」 冥月も驚いたらしく、凄いものを見つけた子供のように彰衛門に語りかけている。 彰衛門『ウィ?ああ……まあその、     実はこれ、行き当たりバッタリでやったら出来たというか』 悠之慎「……へ?」 冥月 「はい?」 だが───返ってきた言葉は、 あんな状況でやるべきことじゃねぇと言いたくなるようなものだった。 彰衛門「そ、そんな目で見るねぃ!!成功したんだからいいじゃん!次行こ次!」 悠之慎「……これからはもっと確実性を以ってな……」 彰衛門「うぐ……ぎょ、御意」 渋々といった感じに頷く彰衛門。 しかし即座に気を取り直すと、月空力を発動させた。 ───……。 キィンッ!! 彰衛門「よっしゃあ次はどんな後悔!?またアタイが滅ぼしてあげましょうぞ!!     さあ!相手は誰───うげぇええっ!!」 女1 「え……?」 志京?「んぐぅっ……!!」 転移した先には数人の女が居た。 やばいな……転移してきたところを見られた……。 ていうか誰だ?あの志京に似すぎてる女は。 いや、それよりも気分がすこぶる悪い……まさかここ、また神降か……? 冥月 「学校……ですね」 悠之慎「学校……だなぁ」 俺と冥月は敢えて、ひとつの問題点から視線を逸らしていた。 冥月はどうかは解らないが、俺は正直キレそうだったから。 彰衛門「また神降ですか……?ああもうダルイったら……オ?     おのれらそこでなにやっとるの?」 女2 「あ、あなた、いったい何処から……!?」 けどそんな俺達の気持ちも考えんと、ズカズカと女生徒に歩み寄る彰衛門が居た。 そして俺はもう一度見てしまった。 壁に点在する大き目のボルトと、縛られて身動きが取れずに居る志京によく似た女生徒を。 ……ハッキリ言おう。 これは、この志京似の女生徒を辱めようとしていた現場だ。 彰衛門「後悔の具現はここじゃないねぇ……別のところだ」 彰衛門の声が聞こえた。 けど、正直この旅でゲスどもを見てきた俺にとっては─── ……相手が誰であろうと関係なかった。 冥月 「───!は、悠之慎さん!?さすがに女の子相手に暴力は───」 悠之慎「………」 ポン。 冥月 「え、え……?」 俺は、俺を止めようとする冥月の頭に手を置いて言ってやった。 悠之慎「辱められる女の気持ちってのは、どんなもんだろうな」 冥月 「…………」 それだけで冥月は黙った。 冥月も女だ、それがとても怖いだろうということくらい予想はつく筈だ。 それを、他ならぬ女生徒がやろうとしていたのだ……正直頭の中に撃鉄が落ちた。 女3 「な、なによ……殴るっていうの!?」 悠之慎「……それだ」 女2 「え?」 悠之慎「男が女を殴るって行為に嫌悪を覚えるくせに、     女が女を辱めることをどうとも思わないその怠慢さ……恥を知れ」 女1 「……は?なにそれ、恥を?」 彰衛門「うわ馬鹿っ!!」 ───ヴオッ!ビヂィッ!! 女1 「ひっ……!!」 振り切ろうとした拳が女の前で止まる。 だがそれだけで女は腰を抜かしたようにその場にへたり込んだ。 彰衛門「っはぁあ……ヒヤヒヤさせんなよ……。     よいかねてめぇら!この人に対しての返事で『は?』ってのは厳禁!!     ……死にたくなければやめておけ」 何故か最後だけケンシロウの真似をする彰衛門を余所に、 俺はゆっくりとイメージを展開させた。 ……どうもこうもない。 身動きの取れない志京似の女生徒を囲むように設置されているカメラの全てを破壊した。 女2 「っ……!?」 彰衛門「ハイ♪ここで起きたことは忘れましょうね?」 驚愕する陰険女生徒を月清力で眠りに誘う彰衛門。 その手際の良さには感心する。 起きてたら殴り飛ばしてたかもしれない。 彰衛門「悠之慎〜、もうちょい考えてから行動しなさいYO〜……。     俺、まさかキミにこったらこと注意する日が来るとは思わなかったぞ〜?」 悠之慎「はぁ、まったくだな。反省してる」 目を閉じて軽く頭を叩いた。 まったくどうかしてる……冷静さを欠けば先が見えなくなるってのに。 彰衛門「で、それはそれとして……」 悠之慎「………」 冥月 「……ですよね」 俺達は身動きが取れず、 怯えた目で俺達を見る志京似の女生徒を見た……いや、厳密に言えば見てない。 後ろを向いたまま訊ねるという方法に出てる。 彰衛門「えーと……キミ、志京殿?」 志京?「……んぐっ!?んぐぐ、んぐぅ、んぐぅ……!?」 彰衛門「違うらしい」 冥月 「『えっ?志京さんを知ってるの?』って言ってます」 悠之慎「……お前な」 彰衛門「軽いジョークですよジョーク♪     ジョッ!ジョーク!ジョッ!ここはジョークアベニュー!」 悠之慎「じゃ、馬鹿はほっといて、と。冥月、頼む」 冥月 「あ、はい」 志京似の女生徒の下着は足首あたりまで下げられていた。 直視したくなかった一番の原因はこれだが、 これが人の逆鱗に触れようとした事実でもある。 冥月 「……はい、もうこっち向いても大丈夫ですよ」 悠之慎「悪い」 そうしてようやく、志京似の女生徒の顔を見た。 猿ぐつわは取られていない……よくやった冥月。 正直ここでいろいろ問い詰められるのは困る。 彰衛門「ンー……ありゃ、後悔反応消えてるわ。志京殿もどきを助けただけで終わり?」 悠之慎「当たり前だ。女がこんな場所で身動き取れない状態でいたら、     後に起こることなんて反吐が出る」 彰衛門「そりゃまあ、見るからに相撲部っぽい場所だしね、ここ。     で……キミってジャパニーズ巫女さま?ていうか魔王アヤーホ?」 志京?「───……」 ビキッ……!! 彰衛門「ややっ!?」 悠之慎「なんか今……ボルト溶接された壁が軋まなかったか?」 冥月 「……いえ、ヒビも入ってませんけど……」 彰衛門「ンー、まあいいや。後悔が消えたならこのままで去りますか?」 志京?「んぐっ!?んぐぐぐんぐぐむぅっ!!」 冥月 「『えぇっ!?助けてくれないの!?』って言ってます」 彰衛門「押忍。んだってけしぇ、オイラキミのこと嫌いですから。     まったくなっちょらん!よいかね魔王アヤーホさん!     いくら記憶喪失といえど、殿様にあげな暴言を吐いた事実、     この弓彰衛門───忘れたわけではござらんぞ!?」 志京?「んぐむぐ……むぐぐぐっ!?」 冥月 「『殿様……純ちゃん!?』って言ってます」 彰衛門「然り!だいたいですね!俺ゃキミに言っておきたいことがあったんですよ!     よいかね!?キミはとても大変な大罪を犯したのです!!     巫女さんでありながらメイド服を装着するなどなんたる了見!!     昔っからね!メイドさんと巫女装束は相容れないものでありましてね!     ───聞いておるのかね!!」 志京?「………」 冥月 「なんだか物凄く冷めた目で見られてますよ?」 悠之慎「ああ、こりゃ変質者を見る目だな。     よかったなー、言い得て妙だ……というかその通りだ」 彰衛門「やかましゃあ!!」 というかそもそも、『殿様=咲桜純』という方程式はどうかと思う。 彰衛門「とにかくですね!あたしゃキミに一言物申す!メイド服とは───」 悠之慎「ン───彰衛門、外」 彰衛門「アァン!?なんじゃね───って、こりゃまた暑苦しい気配ですな」 感じた気配は幾つかの存在。 ここに用があるってことは相撲部員なんだろうけど───ガチャッ。 部員1「ふぅ〜、今日もいい汗かいたどすこい!!」 部員2「お疲れさまッスどすこい!!」 部員3「いやぁ〜、今日の練習はハードだったどすこ……どすこい!?」 入ってきたのは確かに相撲部員のようだった。 みるからに太い……間違えようもないだろう。 部員1「お、お前らどすこい真性なる部室どすこいでなにしてるどすこい!?」 部員2「ぶ、部長どすこい!床に女生徒どすこいが倒れているどすこい!」 部員3「こ、これは頂いてもよいということどすこい!?」 冥月 「暑ッ苦しいですね……」 入ってくるなり騒ぎ出した相撲部員を一目見ての冥月の感想。 相当に嫌そうだった。 彰衛門「よし行け悠之慎、後悔レーダーに反応アリだ。     魔王アヤーホをこのままにしておくのはマズイらしい」 悠之慎「お前が解決するんだろ……?だったらお前がどすこいたちをなんとかしろよ」 彰衛門「な、なにを言うのかね!キミこそ毎度毎度ゲスどもを始末してるんだから!」 悠之慎「よし行け冥月」 冥月 「わたしに振らないでください……むせ返る汗の匂いで吐きそうです……」 ……はぁ。 悠之慎   「あー……おいそこのどすこいども」 部長    「な、なんだどすこい!?        俺どすこいはこれから女生徒どすこいの下半身のつっぱりの仕方を、        部員どすこいたちに教えなければならないどすこい!        モミアゲどすこいは黙ってろどすこい!        相手どすこいの裸を知ることは日本相撲には必要なことどすこい!        裸の付き合いこそ日本相撲どすこいの神秘どすこい!!」 彰衛門&冥月『あぁあっ!!言ってはいけないことを!!』 部長    「なにどすこい!?部外者どすこいは黙」 バガチャァッ!! 部長 「どブゲッ!?」 びしゃあっ!! 彰衛門「ひぃっ!?」 冥月 「うわっ!わわわ……!!」 腹に溜まった脂肪ごと殴り倒してやったら、吐き出された血液が部室の壁に飛沫を描いた。 部員2「ぶ、部長どすこいが!?」 悠之慎「日本相撲……?裸の神秘……?ふっ……ふはは……あはははははは!!!!」 部員3「な、なんてことをするどすこい!?もう辛抱たまらんどすこい!!」 彰衛門「だぁあっ!!馬鹿っ!逃げなさい!死にたいのかね!!」 冥月 「あの……無駄ですよ?悠之慎さん、真紅眼モードに入っちゃいましたから……」 彰衛門「……じゃ、せめてとばっちり受けんように逃げとこっか……」 冥月 「そうですね……」 志京?「んんっ!?んんぐぐっ!んぐーーっ!!」 冥月 「何処かに行く前に助けて欲しい的なことを訴えてますが」 彰衛門「無視。キミはそこで、日本の伝統を馬鹿にした存在の末路を見届けてください。     ああなった悠之慎なんて滅多に見れるものではありませんよ?よかったねぇ〜」 志京?「んぐうっ……くふっ!んふっ!」 冥月 「……全然嬉しそうじゃないですね……しかも唸りすぎて疲れてるみたいです」 彰衛門「THE・シカト!」 冥月 「嫌いな人にはとことん鬼ですねぇ……」 バキゴキドボゴシャガゴシャメゴシャドッカァンッ!!!! 部員2「ぎゃあああああっ!!俺どすこいの腕がぁああああっ!!!!」 部員3「た、たすけ───ど、どすこぉおおおおい!!!」 悠之慎「あははははは!!!砕けろ砕けろ砕けろォオオオッ!!!!」 彰衛門「アア、ナニモキコエナイ、ナニモキコエナイ……」 冥月 「ヘイワデスネー、トッテモヘイワデスネー……って。     部室が赤く彩られる前に魔王さんを解放して逃げますか」 彰衛門「そうだね……。殿様の反応も近くに感じられるし、     このどすこいたちも助かるでしょう。     しっかしナイスネーミングですよね魔王アヤーホって。     咲桜純殿のネーミングセンスには脱帽でござる」 志京?「───……」 ビキィッ……! 彰衛門「……あの。なんか今、物凄く嫌な寒気を感じたんですけど」 冥月 「そうですか?別に感じませんでしたよ?」 志京?「んぐ……んぐふふふふ……!」 彰衛門「……冥月さん?通訳お願い」 冥月 「『ふふふ……純ちゃん……許さないから……!』だそうですけど」 彰衛門「……なんでしょうね。まあいいや、んじゃあ───     キャアア大変!相撲部の部室で綾稀さんが襲われてるYO!」 冥月 「わっ!?」 志京?「んぐっ!?」 彰衛門「押忍!これですぐに朋友である殿様は来訪しますぞアヤーホ!!     よかったですね!というわけで俺はキミを助けません!     悠之慎ー!そろそろ行きますぞー!」 メゴシャアアンッ!!!! 部員3「どすこぉおおおいっ!!!?ど、どす───どぶげぁっ!!」 部員2「ゆ、許してどすこい!勘弁どすこい!助けてどすこい!!     痛いどすこい死ぬどすこい!ひ、ひぃいいどすこい!!」 悠之慎「あはははははははははは!!!!!」 ゴチャグチャバギョボギョガゴシャメシャグチョアアッ!! 部員 『どすこぉおおおおおおいぃいいっ!!!』 彰衛門「……冥月さん。次の転移の座標教えるから悠之慎の方お願い……」 冥月 「はい……」 ───……キィイイ───バシュンッ!! 赤く染まった景色が一気に歪む……その過程。 離れてゆく景色の中で『純ちゃんのバカァーーーッ!!』という声とともに、 凄まじい炸裂音を聞いた気がした……。 【ケース67:兇國日輪守悠之慎(再)/落胆さん】 ───……正直俺は苛立っていた。 原因は簡単だ、この世の男どもに心底落胆したからだ。 女にしたってそうだ……なんだあれは。 嫌なことが起こらない場所に後悔なんてものは無いだろうけど、 それにしたって我慢ならないものばかりだ。 彰衛門「あの……落ち着きません?そげな怖い顔、キミに似合わんよ?」 冥月 「そうですよ……苛立つ気持ちは解りますけど……」 悠之慎「あー……解ってはいるんだけどな……」 怒ったってしょうがない。 むしろ逆に、この機会に『怒り』というものに慣れるべき……なんだけどなぁ。 悠之慎「ひとつ聞きたいんだが……咲桜純関連ってどうしてこう後悔が多いんだ?」 彰衛門「いやそれ逆に俺が訊きたい」 冥月 「ですよね……」 現在俺達は燃え盛る屋敷の中で『後悔』を待っている。 酸素は創造してるからどうってことないが、 火事である屋敷の中で時を待ちつつ立っているのが物凄く馬鹿らしく思える。 悠之慎「……あのさ。     あそこにいる八車とかいうのを黙らせればいいんだろ?だったら───」 彰衛門「ノンノンノンノン、それはいけませんよ悠之慎さん。     よいですか?我らが目的を持って旅をしているように、     殿様にも目的があって旅をしているのです。     彼の歴史は彼が築くべきであり、我らはあくまで裏役でござる。     つーわけで……解るでしょ?」 悠之慎「……お前ってほんとアレ好きな。解ったよ」 ───……。 ……。 燃え盛る炎の中、 八車(安芸乃弊の来世らしい)は純之上の手で火あぶりにされ、瀕死の重傷を負わされた。 それは純之上が取った恐ろしい行動で、 八車を巻き込んで火の海に飛び込むというものだった。 しかし殺すことはせず、 火傷により息絶え絶えの八車を風呂場へと運ぶと、湯船の中へと投げ込んだ。 俺と彰衛門と冥月はそんな景色を見届けたのち、創造したブツの中で目を輝かせた。 言うまでもないが、校務仮面という名の紙袋である。 校務仮面1号「……OK、こっちは始末しておきます。        次元の狭間に放り込んでくるから、キミたちは純之上殿の方を頼ンます」 校務仮面2号「解った」 校務仮面3号「はい、じゃあお任せします」 純之上はその体に四人もの人を抱えている。 その内のふたりは既に死んだような状態。 そんなふたりと自分を月影力で繋いで、月癒力を流し込んでいるのは3号。 しかしそれは『死なない程度』に流しているくらいだ。 殺されたと言っても過言ではないふたりが急に蘇れば、 そこには妙な疑問が生まれてしまうだろう。 彰衛門───1号の言う通りだ。 純之上は純之上で、懸命にその場にある状況をなんとかしようとしている。 あいつの未来はあいつが築くべきだ……俺達はあからさまにそれを手伝うべきじゃない。 俺達がしているものはあくまで後悔を殺す旅だ。 校務仮面2号「行くぞ3号」 校務仮面3号「何気に楽しんでます?校務仮面」 校務仮面2号「黙秘」 燃える屋敷から飛び出した。 壁を破壊して出るなんて方法だったが、そんな俺達に驚く者は居なかった。 ───いや、見ようとする人が居なかったというべきか。 地面に降り立った俺と3号が見たものは、 火傷のために肌が焼け爛れた姿で、人を抱きかかえてる純之上だ。 その純之上がその場に居た村人たちから『化け物』と罵られ、 棒切れや石などで殴られているのだ。 その内に『殺せ』という声までもが村人全体の口から放たれ始める。 ……なんて馬鹿な。 あいつの様子を見れば解る。 純之上は、自分の焼け爛れた体を後回しにしてまで、 動かないふたりに治癒の力を流している。 刺されようが、殴られようが。 けれども周りのやつらは『柔瓦を、沙枝を殺した化け物を許さない』だとか、 解った風な口を聞くだけだ。 その場に居てそれを見てたっていうなら頷こう……。 だが、その場に居たわけでもなく勝手な自己解釈で、 『人の命を懸命に救おうとしているヤツ』を許さないだのと───! 校務仮面3号「あ、あの……2号さん……」 校務仮面2号「……悪い。我慢できねぇ」 ───次の瞬間、俺の体は地面を蹴り砕いていた。 ───……。 ……。 十秒後、全ては終わっていた。 ヤケクソになった3号は倒れたふたり(柔互と沙枝というらしい)を 月癒力で完全に復活させ、純之上には嫌ってくらいの月生力を流した。 ……言うまでもなく、その場で意識があるのは純之上と茜って少女だけだ。 他の馬鹿どもは全員気絶させた。 校務仮面2号「はぁ……」 校務仮面3号「ご苦労さまです」 ……ちなみに。 馬鹿どもの始末は全速力で移動しながらやったから、正直疲れてる。 どういう訳か1号のヤツ、純之上に会うのを拒んでる気がするからそうしたんだが。 一応姿は見られてない筈だ。 校務仮面2号「で……彰衛門は?」 校務仮面3号「まだ屋敷の中なんじゃ───あ」 ゴガシャッ!がらがらごしゃーーーーん……! 声  「ギャアアーーーーーーッ!!!!」 …………振り向いた先で、燃えていた屋敷が崩れ落ちた。 それに呼応するように聞こえた絶叫は間違いなくあの馬鹿者のもので…… 校務仮面2号「………」 校務仮面3号「………」 俺と3号は、隠れながらも凄まじい勢いの溜め息を吐くのであった……。 ───……。 ……。 キヒィンッ!! 彰衛門「ハイ到着ゥ!ああもう!」 次の後悔へと転移した頃、彼の顔は煤だらけだった。 そんな彼を横目に冥月の耳に顔を寄せて言葉を発した。 悠之慎「よし冥月、今日からあいつの名はインドだ」 冥月 「インドですか」 彰衛門「内緒話なら声小さくしろって言ったでしょ!?やめてよもう!」 内緒にする気がないからどうでもいいんだが───って。 悠之慎「あー……彰衛門?ここって見覚えないか?」 彰衛門「ウィ?って……あらら、丁さんの家じゃないですか。     ……あっちには秋守の家も……あれ?」 冥月 「え……じゃあ戻ってきちゃったんですか?」 彰衛門「んにゃ……しっかり後悔レーダーは感じられる。     しかもこりゃ───大変!晃くん家から後悔反応があるわ!?」 悠之慎「───!?晃っ───!!」 すぐさまに疾駆した。 あいつの身に何が起きたのか、それともこれから起きるのかは解らない。 だが男としてあいつの応援をしたいと思った以上、ジッとなんてしていられなかった。 声  「〜〜〜!?〜〜〜!!」 声  「っ!?〜〜〜!?〜〜〜〜!!!!」 その過程、置き去りにした彰衛門が何かを叫び、それを聞いた冥月が何かを叫んだ。 だがそんなことを気にする余裕も無く晃の家の前に辿り着くと、 その引き戸を一気にスパァンと開け放ち─── 悠之慎「晃っ!無事───」 晃  「うぃっ……!?」 ふみ 「きっ───!?」 ……開け放ち……大後悔。 俺の頭の中で高速思考が展開され───結論に至った途端、 俺は晃とふみさんともども叫んだ。 悠之慎「お、おわぁああーーーーーーっ!!!!」 晃  「うわっ!うわぁあああーーーーっ!!!」 ふみ 「きゃああああああーーーーっ!!!!」 悠之慎「おわぁああーーーーっ!!!おわぁあーーーーっ!!!」 晃  「うわわぁあああーーーーーーっ!!!!」 ふみ 「きゃああーーっ!!きゃあああーーーっ!!!」 悠之慎「おわぁあああああーーーーーーっ!!!!」 なんというか……まあ、はっきり言えばふたりは交わっていた。 そんな現場を目の当たりにしまう事態に至り、流石に叫ばずにはいられなかった……。 Next Menu back