───たわけモン道中記31/異常空間お化け屋敷の怪───
【ケース74:兇國日輪守悠之慎/茶の湯】 ───ドゴォォォォォン!!! 生徒A『ぶ、武流豚くんが潰れたぞぉぉぉーーーーっ!!!!』 生徒B『が、顔面がコンクリに減り込み、夥しいほどの血が流れてるぞぉぉーーーっ!!』 生徒C『上から降ってきた女の子は傷ひとつないぞぉぉぉーーーーっ!!!』 生徒D『それどころか武流豚くんの上で仁王立ちしてるぞぉぉぉーーーっ!!!』 生徒E『武流豚くんの耳から脳汁が溢れ出てるぞぉぉぉーーーーっ!!!!』 生徒F『凄まじい早さで痙攣してるぞぉぉーーーーーっ!!!』 生徒G『あ、でも大丈夫!生きてる、生きてるぞぉぉーーーーーっ!!!!』 ……いきなりだった。 和風喫茶に辿り着き、一息入れてる時にいきなりだ。 そもそも武流豚くんって……確か過去の世界で聞いた名前じゃなかったか? 暴れ馬との衝突で、暴れ馬を気絶させたっていう…… 悠介 「……脳汁出てるのに生きてるのかよ」 普通に驚いた。 少女 「………」 驚いたんだが……そんな俺を、俺がここに来てから ず〜〜〜っと睨んでるのか怯えてるのか解らない目で見てる少女が居る。 まあ、睨んでることには変わりはない。 悠介 「………」 しかもこの少女、どこかで見た顔だ。 ていうか『どこか』どころじゃない、この顔はアレだ。 過去で根四門が差し出せって叫んでた繁栄の神の───そう、遊羅だ。 悠介 「あー……」 どうしてこの時代に居るのかは解らん。 解らんが、居るんだから仕方ないな。 神降の事情はよく解らん。 神降から見れば、月詠街の事情もよく解らんのだろう。 だったらべつにいいか……今回は後悔探しはしないんだ、ゆっくりさせてもらおう。 悠介 「軽い和菓子とお茶と……そうだな、あとお汁粉貰えるか?」 遊羅 「………」 この視線……絶対に俺が死神だってことに気づいてる目、だよなぁ。 もしくはそういう気配に気づいて警戒してるだけなのか。 けどここで『なにもする気はない』とか言っても余計に警戒されるだけだろうしなぁ。 困った、堂々巡りだ。 悠介 「……あのな。べつに俺が死神だからってなにがどうってことはないだろ?     俺は楽しみに来ただけだよ。     睨んでくれてもいいが、とりあえず注文は聞いてくれないか」 遊羅 「………」 睨みつつ、暖簾をくぐってゆく遊羅神様。 人に睨まれるのには慣れてるからどうってことはないが。 ───……。 ……。 しばらくして、和菓子とお茶が運ばれてきた。 そんな時でも睨まれっぱなしだ……案外楽しい。 悠介 「ん。和菓子も案外本格的だ。これは製法から知ってなくちゃ出せない味だな。     ……そっか、作ってるヤツが和菓子に通じるなにかを勉強してるか、     それとも家が和菓子屋か甘味処のヤツか」 しかしな……これは別の意味でまずいぞ。 菓子が美味いのに、お茶があまり美味くない。 これじゃあ互いに殺し合ってしまう。 どうしたものか……これは放ってはおけないだろ。 遊羅 「……あの」 悠介 「うん?ああ丁度良かった」 遊羅 「え?」 悠介 「あー……茶葉が出ます」 ポムッ。 遊羅 「!」 隠すのも面倒で、筒に入った茶葉を創造して、驚いた顔の遊羅神様に無理矢理握らせる。 悠介 「和菓子もお汁粉も美味かった。けどお茶がダメだ。     美味しさを引き立たせるって意味ではいいかもしれないけど、     その場合一緒に口に含むと折角の味が台無しになる。     お汁粉とお茶を同時に飲むヤツなんて居るかどうか解らんが、     和菓子の場合はそうは楽観視できやしない。     すぐに客に出すお茶の茶葉をそれに変えてくれ。     どうせ味わわせるなら全てが美味しい方がいいに決まってる」 遊羅 「え……えと……」 悠介 「久しぶりにゆっくり出来た気分だ。じゃあこれ、代金な」 遊羅神様に代金を渡すと、さっさと和風喫茶を出た。 作ってたヤツが誰かは知らんが、 そいつの家が本当に和菓子屋か甘味処ならば是非一度訪ねてみたいもんだ。 さて……次は何処に行くか。 ───……。 ……。 ───ドグシャアアアアーーーーーッッッ!!!! 生徒A『ぶ、武流豚くんが轢かれたぞぉぉぉーーーーーっ!!!!』 生徒B『二階の窓から凄い勢いで降ってきた椅子の角に直撃だぁぁぁーーーーーっ!!!』 生徒C『凄い勢いで地面と平行に宙を飛んでるぞぉぉぉーーーーっ!!!!』 生徒D『あ、コンクリの壁に当たってようやくその動きを止めたぞぉぉーーーーっ!!!』 生徒E『コンクリの壁が粉々になったぞぉぉーーーーっ!!!!』 生徒F『み、耳や鼻や口からドス黒い血が流れてるぞぉぉぉーーーーーっ!!!!』 生徒G『く、首が720度曲がってるぞぉぉぉーーーーーっ!!!!』 生徒H『大丈夫!生きてる!生きてるぞぉぉぉーーーーーーーっ!!!!』 …………あー……えーと、その。なんだ? 彰利に習ってメイド喫茶で腹を満たしに来たのはいいが、 なにやら外の方からシャレにならない声が聞こえてきたんだが。 悠介 「ていうかオイ……武流豚くん、さっき別の場所で脳汁出してなかったか……?」 あれで生きてて、しかも首が720度曲がっても生きてるって…… 悠介 「……俺ってまだまだ井の中の蛙だな」 俺だったらそんな事態になったら死んでる……ていうか普通は死ぬ。 そもそも720度曲がったら捻じ切れやしないか? ……まあいい、深く考えるのはよそう。 目に映る人達はどうしてかみんな、武流豚くんのことは全然気にしてないようだし。 もしかしたら暗黙の了解のようなものがあるのかもしれない。 悠介 「さて、と」 俺もそれに習い、武流豚くんのことは気にしないことにした。 メニューを流すように見てみるが、これといって目を引くようなものはない。 だが、俺はここに来るきっかけとなった言葉を思い出していた。 というかその言葉が無ければこういう場所には絶対来ない。 ……さて、その言葉だが─── 俺が聞いた言葉とは、『頼めばなんでも作ってくれる』という噂だ。 なんでも、とくれば───たとえデマであろうが試しすのが人だ。 しかしそんな心を見透かすかのように、 『丼ものの注文はご遠慮願います』と書かれた紙が壁に貼ってあった。 女  「お決まりですか?」 悠介 「軽いものならなんでも作れるか?」 女  「え……えっと、どこでそんな大ボラを……」 悠介 「道行く男がここでお子様ランチを頼んだら作ってもらえたらしいぞって話してた」 女  「うあ……」 しこたま嫌そうな顔をする女が目の前に居た。 どうやらなんでも作れるというのはデマだったらしい。ある意味で真実でもあるらしいが。 悠介 「解った、じゃあおにぎりを頼む。     メニューにはないけど、そっちで工夫してくれると助かる」 女  「……酔っ払ってます?」 悠介 「いきなりだなオイ……一応、体調体温ともに正常のつもりだが?     ダメで元々だ。作ってる人に言ってみてくれ」 女  「…………はぁ。あの、もし出来るとしても、人に言ったりしないでくださいね」 悠介 「もちろん。誓ってもいい」 女  「じゃあ……」 女は疲れた風な顔で厨房へと下がっていった。 そこでなにかしら話している。 ……───しばらくして戻ってきた女の手には、おにぎりふたつが乗せられた皿が。 女  「それじゃあ、ごゆっくり……」 複雑そうな顔で下がる女に小さく言葉を返しておにぎりを見る。 悠介 「……へえ」 まずお新香で舌を慣らしてからおにぎりを一口頬張る。 途端、口の中でほぐれるように崩れる飯の塊。 飯と飯の間に空気がある証拠だ───握り方は文句のつけようがない。 お新香は流石に市販のものだ、これはしょうがないところだろう。 しかしこりゃ驚いた……米の焚き方から握り方までかなりの腕じゃないか。 塩加減もいい。 飯を抱くように付けられた海苔もパリッとしてるから食べてて気持ちがいい。 一粒一粒立っている米に、中の具が随分と合っている。 しかしこれは……どうなんだ? 米を炊いたのと握ったヤツは同一か? いや……これは違うな。 米を焚いたヤツは違うヤツだと判断しよう。 この飯の美味さから考えるに、炊いたヤツがこれを作ればもっと美味かったと思う。 米は日本の心だ……その深層に潜む事柄くらい、飯を食べれば解りもしよう。 悠介 「……チィ、一足遅かったってことか」 案外彰利と一緒にここに来ていれば、米を焚いたヤツが握ったものを食えたかもしれない。 これでも十分に美味いんだが、それより上の可能性があるとなると惜しいのは事実だ。 俺ならこの塩加減、あと七粒は多く入れる。 さらには中の具に少し工夫することだろう……いやしかし、 握り方は本当に文句のつけどころがない。 悠介 「驚いたな……ここってどういう高校なんだ?」 和風喫茶に続いてメイド喫茶でまで驚かされるなんて。 悠介 「……ん、ごちそうさま」 おにぎりを食べ終えた俺は、どこか満ちた気分になっていた。 まさか文化祭レベルでこんなものが食えるとは思わなかった。 漣の文化祭の出し物は最悪だったからなぁ……。 美味いって思えるものが何ひとつなかったのを覚えてる。 悠介 「ご馳走様。作った人に言伝てくれないか?     文化祭でこんなおにぎり食べられるとは思わなかった。ありがとう、って」 女  「はあ……」 悠介 「で、会計は?」 女  「え〜と、五百円です」 悠介 「……結構いくのな」 量的に考えれば少し高い……が、あの味を考えればそれも納得出来るってもんだ。 一度頷いてから懐から財布を取り出しすと、 店員さんに五百円を渡してのんびりと店を出た。 【ケース75:簾翁みさお/涙の脱出】 女生徒「いらっしゃいませー、どうぞー、     最初は怖いけどだんだんと怖くなくなるお化け屋敷ですよー」 キョロキョロと周りを見渡しながら歩いていると、ふとお化け屋敷を見つける。 妙な格好をしている女の人は呼び込み役のようで、 笑顔の中になにかを混ぜたような顔で客を誘っている。 女生徒「いらっしゃ───あ」 みさお「あ」 目が合った。 途端、とろけるようなやさしい笑顔でわたしに語りかけてくる女生徒さん。 女生徒「キミ、入ってみない?」 みさお「え───わ、わたし、ですか?」 女生徒「そう、とってもカワイイキ・ミ♪」 みさお「え、えっと……」 どうしよう。 べつにお化けが怖いってことはない、はず。 怖くはないだろうけど、脅かされるのは好きじゃない。 となると……あ。 男の人「お、お化け屋敷あるじゃん。な、入ろうぜ?」 思考していると、お化け屋敷の教室の引き戸を見て笑うカップルさんが現れた。 女の人「やだー、そんなこと言って抱きつかれようって魂胆でしょ〜」 男の人「いーじゃねぇか。あ、ふたりだけど、いいか?」 いいか?と女生徒さんに聞く男の人。 いいかもなにも、入ってもらえなかったら作った意味もないんだから─── 女生徒「男はダメです」 ……そう、入れないわけが───えぇ!? 男の人「あ?なんだよそれ」 女生徒「男なんて邪魔なだけです。     肝試しというのは女の人が入って叫ぶからこそ意味があるんです。     肝の小さい男なんて男じゃない。肝の大きい男は入る必要がない。     ほら、男が入る意味なんてないじゃないですか。だからとっとと失せろ」 男の人「オイ……今何気に最後の方に殺意が込められてなかったか……?」 女生徒「そんなことありません。さ、そちらの女性のかた、ズイと中へ」 女の人「…………向こう、いこっか」 男の人「そだな」 女生徒「ああっ!?何故!?ここでこそ女性の肝が試されるというのに!」 引き止めるように語る女生徒さんだったけれど、 カップルのふたりはそそくさと去ってしまった。 女生徒「チッ、惜しい……」 呼び込みの女生徒さんがタンノくんになった瞬間だった。 女生徒「このままではいかん……!     誰か可愛い女に入ってもらわねば悠さまに顔向けが───あ」 みさお「うあ……」 狂ったような目とわたしの目が合ってしまいました。 どうしましょう、危険信号が津波のごとく溢れてきてます。 女生徒「おひとりさまごあんな〜い♪」 ガシィッ!! みさお「ひゃっ!?やっ……ま、待ってください、わたし入るなんて───」 女生徒「これはわたしの呼び込みとしての決定だ!誰にも文句は言わせん!!!」 みさお「どういう理屈ですか───あ、あぁあああっ!!!」 文句を言い終える暇もなく、 わたしは引き戸の奥から溢れ出た幾つもの腕に引き寄せられてしまった。 恐怖には少し抗体が出来てると思っていたわたしだったけれど、 ここにある恐怖は普通の『怖い』じゃなかった……。 驚かすとかそういうものじゃなくて、その─── みさお「あっ……ぁあああああああっ!!!いやです!やめてください!     やっ───やだぁあああああああああっ!!!!!」 頭の中が真っ白になったわたしは、即座に暗いお化け屋敷の中から転移して抜け出した。 呼び込みの女生徒さんが驚いていたけれど、そんなことは気にしないで走った。 ───……。 ……。 モニュモニュ…… 悠介 「……む、これはちと意外。喫茶以外に素晴らしい場所は無いのか?     クレープも試したしたこ焼きも試したが……まいったな、平均すぎる───お?」 だだだだだだだ……!! 悠介 「ああ、みさおじゃないか。丁度よかった、クレープ食べる───」 どかぁっ!! 悠介 「ぉごっ!!」 反応を探知しながら探したふたりの中で、近かった悠介さんの胴に抱きついた。 悠介 「げほっ!ごほっ!……ばっ……ばかたれ……!     モノ食ってる人の腹に飛びつく馬鹿が居るか……!」 そんなものは知らない。 甘えたい時はいつでも甘えろって言ったのは悠介さんだ。 彰衛門さんも言っていたけれど意識反応が無いから悠介さんしか居ない。 悠介 「……みさお?お前……泣いてるのか?」 みさお「っ……く……うっく……」 怖かった。 あんなものはお化け屋敷じゃない。 妙な息遣いとともに体中を触られ、四方八方から引っ張られる。 しかもそれをやっているのが男性ではなく女性なのだ。 あそこは危険だ……普通じゃない。 悠介 「ああ……困ったな。こういう時はどうすりゃいいのか解らん。     彰利は───反応が無いな。あー……みさお?なにがあったか話してくれないか?     俺に出来ることだったらなんでもするから」 みさお「うぐっ……ふぐっ…………〜〜……うぅうう〜〜〜……」 体が震えた。 嗚咽ばっかりが喉を打つ。 けれど思うことは『許せない』って思いだけ。 ───悠介さんが自分に出来る範囲のことをしてくれるのなら。 なにがあったのかを知りたいというのなら。 わたしは迷ったりはしなかった。 誰か、誰かこの怖さを共感してくれる人が欲しかったから。 だからわたしは、悠介さんの体に張ってある神力遮断の膜の内側に手を当てて、 そこにひとつの神魔融合法術を流し込んだ───途端! ヒパァンッ!!……という音とともに、『彼』が『彼女』へ変わった。 悠介 「……へ?」 困惑の表情で目を泳がせる悠介さん。 そんな悠介さんに、わたしは震える声で訴えた。 みさお「わたっ……わたしっ……!あんな屈辱初めてです……!     あんなこと……ゆるせなっ……うぐっ……う、うぁあああああん……!!」 悠介 「あ、おいみさお!?泣く前にこの体なんとかしてくれ!     つーかこれやったのお前か!?なんで女なんだよ!俺は───」 みさお「ひっく……ひゃっく……おぁ……おばけやしき……うっく……     わたし……ゆるせな……うくっ……」 悠介 「お化け屋敷……?ってお前!あそこ入ったのか!?」 涙しながら頷いた。 悠介 「あぁ……合点がいった。よく無事に戻ってきたな、みさお。     歩いてる途中で耳にしたんだけどな。     この高校のお化け屋敷、まあその……なんだ、全員が女生徒らしくて、     しかもアッチの方向に傾いてるやつららしいんだ。     客は女しか入れないで、男は完全に拒むとか……」 みさお「そんな……そんなのっ、わたし知りません……!     でも、ゆるせなくて、うくっ……」 悠介 「許せないって……俺にどうしろと」 みさお「ひっく……っく……空狭……転移……」 悠介 「───へ?あ、馬鹿お前!まさか俺をそこに飛ばす気か!?     ってそうか!だから俺を女に───やめろ馬鹿!     それは解決法が明らかに違うだろ!     いやそりゃあ俺だって何が解決になるかなんて知らん!     知らんがその方法は明らかに間違ってると声を大にして言える!!     だから待て!待ア゙ァアアアアアアーーーーーーーーッ!!!!!」 ビジュンッ───…… 【ケース76:弦月彰利/お空の下で】 彰利 「フッ……蒼空が蒼空だぜ……」 ドガシャアアーーーーンッ!!!! ドゴメシャバキベキゴバァアーーーンッ!!! 彰利 「なにやら校内が騒がしいようじゃけんど、     こんな空の下で寝転がることのなんと気持ちのいいことよ……」 あれから魔王アヤーホにボコられた拙者は、 いつの間にか屋上で大の字になって倒れてました。 それはまあどうでもいいんですが……なんでしょうね、下の方。 女生徒どもが叫ぶ声に混じって、恥ずかしさと恐怖を合わせたような声が聞こえるんだが。 しかもそっちの方から死神反応……ってこれ悠介じゃん。 彰利 「……ありゃ?でも反応が微妙に違うような……」 不思議ですね、行ってみましょうか。 回復させた体を起こして、ゆっくりと学び舎へと続く屋上のドアを開けて中へ。 したら、ますます大きくなる喧噪がそこにありました。 階段を下りる中、数人のおなごと擦れ違ったが……まあなんデショね。 お姫様みたいな格好をしたおなごが居ました。貴重です。 ───……。 ……で。 彰利 「あー……なんだかいろいろ訳解らん」 視線の先ではモミアゲがセクシーなおなごが暴れていました。 その体に必死に纏わりつこうとするおなご達をばったばったと薙ぎ払ってます。 ───もにゅり。 モミ子さん「ぐわわわぁあああーーーーーーーっ!!!!!」 デゴシッ!! 女生徒「あふぅんY」 胸を鷲掴みにされたモミさんの手刀が女生徒の首に落とされ、女生徒は気絶。 だが別の女生徒が次々と襲い掛かってゆくなかで、 モミ子さんは相当困っているようだった。 感じる気配の反応は……ああ、ありゃあ間違いなく悠介だ。 何があったのかは解らんけど、べっぴんさんになっちゃってまあ。 あ、でも泣いてる。 恐ろしき百合世界に絶望しているんでしょう。 悠介らしくないね〜、いつもみたいに槍かなんかでも創造して、 石突き六連で気絶させちまえばいいのに。 ……まあそれだけ状況に困ってるんでしょうけどね。 しかしヤバイですよ?このままだと未体験の状況への恐怖のあまりに─── モミ子さん「よっ……寄るな寄るな寄るなぁああああああっ!!!」 あ、ヤバイ。 ボクの視力の間違いじゃなければ、今彼……じゃなくて彼女の目が真紅に変わりました。 そうなると次に来るのは───ブワァアアアアアッ!!!! 彰利 「黄昏ェエエーーーーッ!!!?」 廊下の一角が黄昏に変貌していきます。 これはかなりアレです、ヤバイです。 彰利 「や、やめろブロリー!やめるんだ!やめろぉおおーーーっ!!!」 すぐに月清力を流して落ち着かせようと思ったら、 次の瞬間には虚空にいくつものスーパーボールが創造されました。 で、もちろん俺もろとも女生徒へと発射されるスーパーボール。 一応理性は残ってるらしい……槍とか剣を創造されたら大変でした。 でも───ドゴメゴメシャゴキャゴガガガガガァアンッ!!!! 彰利   「いてっ!?いてぇ!!結構イテェよこれ!ちょ───落ち着きなさい!       こげなもん女生徒にぶつけたら痣が出来てしまうでしょう!?       ……え?一生モンの傷を負わされるよりマシ?       あー……もしかしてきみ、その着衣の乱れは」 モミ子さん「言うなぁあああああああっ!!!!」 彰利   「キャアアアアーーーーーーッ!!!!?」 そこから先はよく覚えてません。 確かな恐怖の中、虚空に煌く槍を見たような気もしますが……というか思い出したくない。 ───……。 ……。 彰利 「……そりゃさ、     あの騒ぎのことは『特撮じゃよー!』の言葉で納得されたからいいけどさ。     さすがに校内で黄昏はないでしょう悠黄奈(ゆきな)
さん」 悠黄奈「うるせぇ!お前にっ……!お前に女として人に襲われた俺の気持ちが解るかぁっ!     そもそも悠黄奈とか勝手に名前つけてんじゃねぇ!!」 彰利 「うおう……怒ってますなぁ。まあいいじゃない、純潔は守ったんでしょ?」 悠黄奈「そういう問題じゃねぇ!!」 彰利 「す、すいま千円」 悠黄奈さん(悠介)は相当荒れてます。 そりゃそうでしょう、おなごの集団に襲われたらしいのですから。 あ、ちなみに悠黄奈さんが暴れたために壊れた場所の修繕はしっかりとしておきました。 彰利 「しっかしなんでまた……何故におなごになってんのキミ」 悠黄奈「……みさおが先にあそこで襲われたんだよ。     あそこ、男は入れないらしいから俺を女にしたんだろうよ……。     『許せない』って言ってな、俺をあそこに直に転移させやがった」 彰利 「ほうほう」 悠黄奈「明るいところに居たのにいきなり暗い場所にだぞ?     当然目が慣れてないってこともあって……いきなり襲われた」 彰利 「………」 案外冷静に喋っとるなぁ思った矢先、いつの間にか大気が震えていることに気づきました。 今現在休憩所に居るわけですが、ちと危険です。 悠黄奈「……今回のことで男に襲われる瞬間の女の気持ちってのがよ〜く解った……。     あんなことを考えてるやつらは死んだほうがいい……いや、死ぬべきだ」 彰利 「そ、そこまでっすか……」 すげぇ……あの悠介にここまで言わせるとは。 彰利 「で……キミ、戻らんの?」 悠黄奈「この屈辱を身に刻むんだ……しばらくは女のままでいい……」 彰利 「そ、そうですか」 やべぇよ……近くに居るだけで体が固まる気分だよ……。 お、おのれお化け屋敷め……!なにしたかったのかは知らんが、マジで恨むぞ……? 悠黄奈「よもやあなたが忘れることはあるまい……。     この心楽しい川の岸辺に、ふたりがともに佇んだことを……」 彰利 「ウ、ウィ?悠黄奈さん?」 悠黄奈「それがなんだというのだ……かつてあんなにも煌いていたものが、     いまやわたしの目の前から永久に消え去ったからといって───     草原の輝きと花々の誇らしさ……そんな日々は帰ってきはしない。     だがわたしたちはもう悲しむまい……。     残されたものの中にこそ。幼い思い出の中にこそ。見い出すのだ……力を」 彰利 「おーい……聞いております?」 悠黄奈「───よし落ち着いた。次行くぞ彰利!」 彰利 「速ッ!!ってそれでいいのかね!?」 悠黄奈「構うか!俺はさっさと忘れたいんだよ!」 彰利 「身に刻むっていったばっかじゃん!」 悠黄奈「それは屈辱問題の話だ!俺が忘れたいのは『女として女に襲われた事実』だ!」 彰利 「……あ、ナルホロ」 『誰かに襲われた女の気持ち』は身に刻むけど、 自分自身がおなごに襲われた事実は忘れたいと、そういうことっすね? 彰利 「おっしゃあ付き合いますよ悠黄奈さん!レッツビギンだぁ〜〜!」 悠黄奈「……なぁ、お前もしかして俺のことずっと悠黄奈って呼ぶ気か?」 彰利 「馬鹿野郎!姿が変わってるのに名前を変えんでなんとする!     そりゃあアレだぞ!?     山田くんが校務仮面かぶっても山田くんだって言ってるようなもんだぞ!?     だから名付けよう!キミの名は悠黄奈!『昏黄(くらき) 悠黄奈(ゆきな)』だ!     苗字は『黄昏』を逆に置いただけで、悠黄奈の黄は黄昏の黄。奈は適当」 悠黄奈「誰だよ山田って」 彰利 「喩えの人物である!つーか自分の名前に関してはスルーですか?     まあいいコテ!つーわけでまずみさおさんを探しましょう!     この文化祭、思ったよりカオスな文化祭ですよ!?ひとり歩きは危険です!」 悠黄奈「あぁ……身に染みてよく解ってるよ」 そりゃねぇ、女になって、しかも女に襲われたとあっちゃあ。 彰利 「で、なにかに目覚めそうになったりした?」 悠黄奈「下劣な輩に死を───」 彰利 「え───あ、ギャアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」 瞬間、世界が輝きました。 襲われたばかりの彼───いや、彼女には今の言葉はタブーだったようです……。 ───……。 ……。 彰利 「……さて、激しくバウンドしたところで次行ってみましょうか」 悠黄奈「はぁ……もうどうにでもしてくれ、考えるのも疲れた……」 うおう、かなりまいってるご様子。 これはいけません。 彰利 「いろいろ忘れたい時にはやっぱりメシでしょう。腹、入る?」 悠黄奈「おにぎりふたつとお汁粉と和菓子とお茶を飲んだが……。     ああいや、喰う。喰ってやる。     ヤケ喰いする女の気持ち、今なら解る気がする」 彰利 「おお、すっかりおなごの気持ちが解る人になったのかね」 悠黄奈「いっぺん帰れない場所に逝ってみるかコラ……」 彰利 「遠慮します……」 今の彼……ああもう彼女でいいや。 今の彼女はちとシャレになりません。 妙な冷やかしはやめといた方が良さそうですね─── ということでメイド喫茶です。 悠黄奈「メイド喫茶か……     確かに美味い場所っていったらここか和風喫茶くらいだしな」 彰利 「およ?珍しい。悠黄奈さんが認めた和風喫茶が文化祭であるなんて」 悠黄奈「素直にいい味出してたぞ?     あれはちゃんと味を守ってる家が作るような味だった。     ちょっと至らない部分もあったけど、     こういうところなら十分通用する」 彰利 「とっても偉そうですねキミ。     外見同年代が言うようなセリフじゃないよ?」 悠黄奈「たわけ、こちとら未来で和菓子や甘味の修行をした身だぞ?     ダメなものはきちんとダメって言わないと和菓子がダメになる」 彰利 「修行って……」 そこまで行くと、もう趣味の域を超えてる気がするよ俺……。 彰利 「そういや煎餅焼いてきたこともあったっけ……しかも美味かった」 悠黄奈「あれよりまだ美味く作れるヤツは居る。だからこそ修行したんだ」 彰利 「そこまで来るともう趣味じゃないって」 悠黄奈「そうでもないだろ───って、とにかく入ろう。     嫌なことはさっさと忘れるにかぎ───っと」 ふとした拍子でした。 悠黄奈さんの後ろを通ろうとしたカップルが悠黄奈の背中に衝突。 進もうとした悠黄奈さんはバランスを崩して、 メイド喫茶の看板にトンと手を付いた───途端。 ポムッ。 悠黄奈「…………へ?」 彰利 「キャア!?」 目の前の悠黄奈さんの服装が、 瞬時に細部まで素晴らしい出来栄えのメイド服に変わっていました。 し、しかし待て! この看板───さっき来た時も少し気にはしていたが、どう見たってアレだ! かつてエロッパゲ鶴本にキャンプファイアーを待たずに燃やされた、 我が渾身のメイド喫茶の看板!! 間違い無い!これは俺が作ったものですよ!? だってちゃんと右下の隅にA・Yって書いてあるもの! もしや……もしや先ほど俺が何処かへ飛ばした思念を、 神降のどこかにおわす神様が受信してくだすったのか!? これはなんたる嬉しい誤算!まさかこげなことが起こりうるとは! ……でもね?やっぱり誤算は誤算でしかないんです。 だって、メイド姿の悠黄奈さんがゆっくりと殺気を発して……!! 彰利 「カ、カカカカカカ……!!」 ヤバイ、振り向きたくない……! 振り向くっつーてもすぐ右を見れば彼女が居るんですけど、 だからこそ振り向きたくない……! 悠黄奈「メイドっていったらお前だよな……」 彰利 「キャーーーッ!!?」 突如、グワシと頭を鷲掴みされました! しかもゆ〜〜〜っくりと無理矢理に振り向かされます! その視線の先には、 驚くほどの造型の素晴らしいメイド服を着た悠黄奈さんが! つーかこれ、 俺が衣川ラーメンの親父さんに贈ろうとして作ったパーフェクトメイド服じゃん。 間違いないよ、この造型は絶対に忘れません。 とんでもない誤算ですゴッド!俺今あなたを恨んでる! なにもこげな時にこげな場所にこの看板作らんでも! しかもこれ、看板に触っただけで着衣をメイド服に変換させられる機能搭載ですよ!? ステキなことはステキですけど、メイド服はメイド業を愛する人にこそ着て欲しい! そう思うのは贅沢ですか!? 彰利 「お、おぉおおお怒る前にさっ、ほらっ、することがあるでしょ!?     メイド服が気に入らないなら脱いじゃえばいいじゃない!ね!?」 悠黄奈「どういう呪いなのか脱げねぇんだよ……!!」 彰利 「ななななんですとぉおおおーーーーーっ!!?」 なんてことでしょう。 どこぞのゴッド(だと思う)は、俺の『着ぐるみの呪い』まで再現してしまったようです。 このままでは顔を真っ赤にして拙者を睨む悠黄奈さんは、 それはもう美しきメイドさんのままってことになってしまいます。 しかも解決方法がまるで解らん。 悠黄奈「覚悟は出来たか……?俺は出来てる……」 彰利 「で、出来てないから堪忍して?」 悠黄奈「だめだ」 即答でした、ええ解ってましたとも。 彼女の言う『覚悟』とは、この格好で文化祭を回る覚悟でしょう。 そしてそげな悠黄奈さんが俺に求める『覚悟』とは、当然殴られる覚悟です。 彰利 「いや……でもさ、なんつーか今回ばかりはボク、悪くないよね?     俺、ただ心にたまったモヤモヤをテレパスーで送っただけだもん。     だからこうして殴られる理由が見つからな───あ!いや!やめて!     やめジェルァアアアーーーーーッ!!!!!」 空を飛んだことは何度もありました、ええ。 でも、メイド美少女になった親友に殴られて、 廊下の先の先の先にある壁まで吹き飛んだのは初めてでした。 嗚呼、今日もナイスフライトだった……。 Next Menu back