───たわけモン道中記33/猫とおなごと白玉ぜんざい───
【ケース79:悟り猫/猫喫茶】 ちりんちり〜〜ん♪ 悟り猫「ゴニャァア〜〜〜ォオ」 注文をしたい時に人を呼ぶのをベル形式にしました。 世界猫に創造してもらった高級レストランなどにあるアレを、 各テーブルに設置したのです。 これでこそアイルーっぽく振舞えるというもの。 男子生徒「うおっ!?すげぇ……モンスターハンターみてぇじゃん」 女生徒 「ほんとだね……」 男子生徒「でもさ、これってリモコンで動かす機械かなんかなのかな?      さすがに本物ってことは……」 女生徒 「あ、でもほら、三組の赤司くんたちが、      喋って二足歩行して刀を振り回す猫を見たって言ってたじゃん。      あれが本当なら在り得るかも」 男子生徒「……まあ、それもありか?      ラーメン食いにくる猫の話も、      メイドについて熱く語る猫の話もちょっとした噂になったし」 悟り猫 「ゴニャッ」 男子生徒「っと……じゃ、一応注文してみるか。お好み焼きふたつ」 悟り猫 「ゴニャァアアア〜〜〜ォオ」 注文に頷き、両手を上げながら仮厨房へと引っ込んでゆく。 その横では世界猫も俺と同じように両手を上げながら走っていて、 なかなか気分転換にはなっているようだった。 悟り猫「フッキレた?」 世界猫「慣れるとなかなか面白いな、何かになりきるのも」 悟り猫「でがしょ?」 仮厨房の中で綾稀さん家のアヤーホさんに注文表を渡す。 一応猫神様の知り合いということで納得はしてもらったけれど、 なにやら根本からバレているような気がしてならねぇ。 綾稀 「はい、えーと」 悟り猫「悟り猫です」 世界猫「世界猫だ」 綾稀 「じゃ、世界猫さん。このお好み焼きを二番テーブルにお願いね」 世界猫「よしきた」 世界猫が両手を上げると、アヤーホさんがその上にお好み焼きを乗せる。 ウエイターアイルーの基本スタイルだ。 世界猫「ゴニャァアア〜〜〜ォオ」 その状態でアイルー語を駆使する世界猫は、やはり楽しそうだった。 悟り猫「アヤーホ殿アヤーホ殿!オイラにも料理!」 綾稀 「アヤーホじゃないってば……はい。これは三番さんだよ?」 悟り猫「ゴニャァアア〜〜〜ォオ」 トスと渡された料理を手に、トカカカカカと走る。 ここからが勝負だ……! 悟り猫(落ち着け……落ち着けよ、俺……!) ウェイターアイルーたるもの、届ける料理は投げつけて置かなければいけない。 投げつけて、見事にお客様の前に置くのだ。 距離、バランス、向き、その全てがお客様の食べやすいように投げ置く必要がある。 世界猫「ゴニャッ!」 ドトッ! 男性 「おおっ!」 見れば、世界猫が投げたお好み焼きは、見事にカタチを崩さずにテーブルに投げ置かれた。 さすがだ……やるじゃねぇか世界猫。 いっちょ俺も! 悟り猫「ゴニャッ!」 ズベチャアーーーンッ!!! 男  「ぐわちゃぁああああああーーーーーーーーっ!!!」 悟り猫「ゲゲーーーーーーッ!!!!」 料理の投擲……見事に失敗。 思わず鎧をジャンククラッシュされてしまったロビンマスクの叫びを発声してしまった。 テーブルの上に乗るどころか、思いっきりお客人の顔面にブチ当ててしまったのだ。 しかも出来たてのお好み焼きの生地が彼の顔面に吸い付いて離れない。 俺は早急に男の顔面を捉えて離さないお好み焼きを排除しようとしたが─── 男  「あぢっ!あぢぢっ!み、水をくれ!水ぅううーーーっ!!!」 何を思ったのか、男が急に駆け出した! 猫神様「あ───危ない!そっちは───!」 みさお「え?あっ───!」 男が駆け出した先には開け放たれた窓。 落ちたらひとたまりもない! 悟り猫「ちぃっ───世界猫!」 世界猫「んあ?───っとわっ!?」 物凄い速さで窓へと走る男に気づいた世界猫が手を伸ばす───が、 所詮は猫の手なのであっさりと虚空を掻いてジ・エンド。 男は窓枠に体をぶつけ、その勢いとともに落下してしまった───!! 猫神様「あぁあああっ!!」 悟り猫「おわぁああーーーーっ!!!!」 世界猫「くそっ!衝撃吸収クッションが出ま───」 ───ドゴシャアアーーーーーーーンッ!!!! 声  『ぶ、武流豚くんが潰れたぞぉおーーーーーっ!!!』 声  『いつの間にか元に戻ってた首が、今度は折れ曲がったぞぉぉーーーーーっ!!!』 声  『だ、だが落ちてきた男は火傷以外は外傷無しだぁぁーーーーーっ!!!!』 声  『ぶ、武流豚くんが物凄い量の血を口から流してるぞぉぉーーーーっ!!!』 声  『み、耳からはドス黒い汁がコポコポと流れてるぞぉぉーーーーっ!!!』 声  『あ、で、でも大丈夫!生きてる、生きてるぞぉぉーーーーーっ!!!』 ………………。 世界猫「……なぁ。これって……助かったって言うべきなのか?」 悟り猫「微妙……。なのに客の皆様がてんで武流豚くんの心配してないし……」 なんだろうか、この暗黙の了解フィールドは。 でも確かに武流豚くんなら平気なのかもしれないって思える。 だってなぁ、さっき全身ズタボロ状態でプロパンガスで爆発したってのに、 もう復活してんだもん……。 悟り猫「ま、いいや。我らも仕事に戻りましょう」 世界猫「……だな」 我らが仕事に戻る中、みさおだけがハラハラした面持ちで窓の下を見下ろしてましたとさ。 ───……。 木郷 「あわわわ……!注文が止まらないよぅ!」 古森 「ど、どうする?綾稀さんはお手洗いに行っちゃってるし……!」 安部 「なにやってんのぉ?トロクサァ〜。あたしのヤツ出せばいいじゃぁん?」 島津 「今時ガングロでMMRな安部さんは黙ってて!!」 安部 「な、なにそれぇ?超カンジワルゥ〜」 悪いのはキミの脳と顔面だ。 とまあ、ただいまたったひとりの調理人であるアヤーホさんが『お手魔法滅怒(マホメド)
』中。 ようするにアライです。意味無いね、うん。 悟り猫「これは……出番ではないかね?」 世界猫「みさおにやらせたらどうだ?結構上達してると思う」 悟り猫「いやいや、普通の料理なら出来るんだけどさ、     まだお好み焼きだとかは教えてないんですよ。世界猫、教えた?」 世界猫「あ〜……教えてないなぁ」 悟り猫「でがしょ?ですからね、仮厨房に引き戸を創造してさ。     そんでもって『ここは決して開けないでくださいましね?』と言っておくとか」 世界猫「鶴の恩返しかよ……」 悟り猫「まあそげなとこ。どうかね?」 世界猫「……女の姿に戻るのは抵抗が……」 悟り猫「“時操回帰(アフティアス)”!!」 デゴシッ! 世界猫「あっ───てっ、てめぇっ!!」 渋る世界猫の額に我が手を付けて時操回帰発動。 世界猫はあっという間に悠黄奈さんに変わり、顔を真っ赤にさせた。 一応誰にも見られてないから平気だと───あ。 安部 「……な、ななな……」 やべぇ見られた。 今時ガングロでMMRな安部さんが見てやがった。 安部 「ちょ、ちょっとなんなわけぇ〜!?あんたらちょっと聞いてよぉ〜〜!」 佐藤 「なによっ、今時ガングロでMMRな安部さん!」 安部 「こ、こいつさぁ〜、     さっきまで猫だったのにさぁ〜、いきなり人間になったのよぉ〜?」 全員 『───……』 水を打ったような静寂。 が、次の瞬間─── 佐藤 「なに寝惚けたこと言ってんの今時ガングロでMMRな安部さん!」 島津 「今は冗談言ってる場合じゃないんだってば今時ガングロでMMRな安部さん!」 木郷 「夢見てないで少しは考えてよ今時ガングロでMMRな安部さん!!」 辰巳 「そうよ!ただでさえなんにもしてない今時ガングロでMMRな安部さん!」 悠黄奈「そうだぞ、寝言は寝て言え今時ガングロでMMRな安部さんとやら」 安部 「な、なによあんたぁ〜!」 一気に罵倒された今時ガングロでMMRな安部さんはたじろいだ。 何気に悠黄奈さんまで混ざってたのには大変驚きました。 悠黄奈「あー、その。俺でよかったら厨房をやろうか?     志京───じゃなかった、綾稀、っていったか?     そいつが戻ってくるまででよかったらだけど」 木郷 「え……料理出来るの!?」 悠黄奈「それなりに」 辰巳 「ど、どうする……?」 島津 「この際贅沢言ってられないでしょ?お願いしてみよ」 佐藤 「そうだね、お願い!」 悠黄奈「……了解。んじゃあ……おい悟り猫、さっさと来い」 悟り猫「ゴニャッ」 悠黄奈さんに促され、仮厨房の中へ。 佐藤 「あ……その猫、あなたの……?」 悠黄奈「……一応、親友だ」 島津 「そうなんだ……あ、毛が入ったりしないように気をつけて」 悠黄奈「了解」 軽く頷いて厨房に立つ悠黄奈さん。 既に用意されていた材料を前に、 クワッと目を見開くと───次々と調理をこなしていった。 悠黄奈「一気にやるぞ。火の加減は任せていいな?」 悟り猫「オウヨ。ドーンと任せぇ!」 ここに来て、我らにしては珍しい合作が発動。 合作っていったも協力するだけで、作るのは悠黄奈さんなわけだけど。 ───……。 ……。 ───……それから一時間後。 亜季 「はい親子丼と焼肉丼お待ち〜!」 木郷 「……ここっていつから丼ものOKになったんだっけ……」 佐藤 「さあ……」 面倒だったんで俺もおなごにしてもらい、 メイド喫茶の看板に触れてメイド服を装着した状態で調理場に立っております。 いまやみさおさんもウェイトレスをしている有様……いやいや、忙しさってすごいです。 ……つーかね、アヤーホ殿が戻ってこないんですよ。 どこで油売っとんのかね。 もしかしてお化け屋敷に捕まった?はたまた道に迷った?それとも誰かに告白されてる? どちらにしろ解らんが、客が減らんのは事実です。 どうせだからなんでも屋にしちまおうという拙者の提案が、 あっさりと悠黄奈さんに受け入れられた証拠なんだけどね? つまり材料は悠黄奈さんが創造しております。 一度例外が受け入れられるとあとは早いもので、 あっという間にいろいろなものを頼んでくるお客さん。 さすがに作り甲斐がありますが…… 亜季 「どうする?アヤーホが来たらずらかる?」 悠黄奈「そうだな。猫に戻ってウェイターに専念しよう」 亜季 「俺、こういう場面で砕けるキミのそういうところ、大好きよ?」 悠黄奈「まあこういうのもたまにはいいだろ。さてと───あとの注文は?」 亜季 「マグロ丼だってさ。出来るかね?」 悠黄奈「ああ。面白そうだから特上の大トロ丼やってみるか?」 亜季 「おぉっほっほっほっほぉ、キミも好きねぇ〜♪んじゃ早速!」 悠黄奈「おう。大トロが出ます───弾けろ」 ───……。 ……。 亜季 「マグロ丼10杯追加だってさ……」 悠黄奈「馬鹿なことしたな……」 亜季 「さっさと作ってマグロ丼は終了しましたってことにしとこう……」 悠黄奈「だな……。あー、木郷さん。マグロ丼これで最後にしといて」 木郷 「は、はぁ……はひ……はいぃ……」 悠黄奈「………」 亜季 「………」 外の方も大変だねぇ。 もはやメイド喫茶がどうとかは関係なくなってきてるよ……。 ───……。 ピキィイイーーーンッ!! 亜季    「───来た!アヤーホ反応だ!こちらへ向かっておるよ!?」 悠黄奈   「よし!こっちは丁度作り終わった!        これを出したら一端休憩ィイイーーーッ!!!」 女子    『サー・イェッサー!!』 悠黄奈   「その返事やめぇっ!!        ああもう!お前がイェッサーイェッサー言うからだぞ!」 亜季    「だって面白いじゃん!」 木郷    「あ───ごめん!最後にひとつだけ注文が入ったんだけど!」 悠黄奈   「っと……ひとつくらいならなんとかなる。なんだ?」 木郷    「えっ……と……ファッテューチョン、っていうやつなんだけど」 悠黄奈&亜季『頼んだヤツ殴ってやるから連れてこい!!』 木郷    「え、えぇっ!?これって料理じゃないの!?」 料理です。 しっかり料理だけど……いや、料理と言えるのかは難しいところだ。 亜季 「い、いかん!グズグズしてる暇はありませんよ!?」 悠黄奈「チィッ───やるぞ亜季!仏跳牆(ファッテューチョン)作りだ!」 亜季 「オ、オウヨ!蒸す時間は月空力でなんとかならぁ!     悠黄奈さんはアレよろしくね!?」 悠黄奈「じゃ、こっちは調理に移るから!これ運んでおいてくれ!」 悠黄奈さんが先ほど作り終えた料理を木郷さんらに渡す。 それを手にし、木郷さんらが仮厨房から離れたその刹那、 悠黄奈さんが仏跳牆用の巨大な器を創造する。 さらにはその中にナマコ、鹿の尾、山椒魚、シイタケ、 干しアワビ、干し貝柱、ナマコ、魚の浮き袋、烏鶏、 朝鮮人参、クコ、ハクビシンなどなどをごっさりと創造してゆく。 悠黄奈「よっしゃあ!頼むぞ亜季!」 亜季 「よござんす!月空力&月然力・火+水!」 能力を解放して、巨大な器と中身を蒸してゆく。 悠黄奈「くはっ……熱いな……!」 亜季 「そりゃそうザンスよ……。     器の周りだけ時間を速めてるんだから、蒸気が出るのもそれだけ速いのです……」 悠黄奈「ぐあ……頭痛がしてきた……」 亜季 「───む!これでOK!出来ましたぞ!」 悠黄奈「速いなオイ……」 亜季 「だって具材入れて蒸すだけだもの。ちゃんと八時間分は蒸したから大丈夫じゃよ」 悠黄奈「そか。じゃあ───」 亜季 「ウィ。ご開帳〜」 蓋を覆っていた紙を剥がして、いざ蓋を開ける───と、 なんとも言えぬ柔らかな香りが鼻腔をくすぐった。 亜季&悠黄奈『……ゴクリ』 いやゴクリじゃねぇって! たしかに相当の量を作ったが、これはあくまでお客様のもの! メイドさんたる者、奉仕の心を損なってはならん! 俺は仏跳牆をコーヒーカップに注ぐと、仮厨房の暖簾をくぐって人を探した。 亜季 「おっと、そこの佐藤さ〜ん?これ、仏跳牆ね〜」 佐藤 「えっ!?もう出来たの!?って……これ、ただのスープじゃあ……」 亜季 「いやいや、このスープが仏跳牆なのです。それよりこれ出したら休憩にしましょ?     そろそろ皆様疲れてきたでしょ?」 佐藤 「『疲れた』なんてものじゃないかも……。     今元気に動いてるのって、桜ちゃんとみさおちゃんだけだもん……」 亜季 「あ、あらそう……だったら注文受けるのも人を入れるのもやめときんさいよ?」 佐藤 「了解〜……」 心底疲れているのか、仏跳牆を持った佐藤さんはゆらゆらと歩いていった。 それを確認すると、俺と悠黄奈さんは目を合わせて頷き合い、 さっさと猫になってその場からとんずらした。 ウェイターに徹する案はやっぱり却下です。 ───……。 ……。 みさお「あぁ〜……ちょっと大変でした……」 その後、申し合わせたかのように外で待機していたみさおと合流。 外っていうのは実際の外で、校舎の外を表します、ハイ。 世界猫「こっちもいろいろ大変だった……」 みさお「そうなんですか?って、そうですよね。でも自業自得じゃないですか?     料理する人がふたりなのに『なんでも屋』にしちゃう方が悪いです」 悟り猫「そりゃ解っとりますけどね。普通さ、仏跳牆なんて頼みますかね?」 みさお「……ファ……?」 悟り猫「仏跳牆。修行中の坊さんもこの匂いを嗅ぐとたまらなくなって、     塀をも飛び越えてやってくる、って意味の名前でござる。     いろいろな愚材を大きな壷のような器にたくさん入れて、     それに蓋をして六時間から八時間を蒸すのです」 みさお「……それを作ったんですか?」 世界猫「月空力と月然力と創造の理力を合わせてな……」 みさお「うわぁ……」 みさおは感心と呆れを混ぜたような顔で俺と世界猫を見た。 そりゃね、そげなもんを一気に作るとなるといろいろと面倒でしたし。 悟り猫「さぁて。それはそれとしてこれからどぎゃんしましょう」 テシッと両前足の肉球を合わせて言う。 じゃけんど世界猫とみさおには特に考えはないらしく、 これといった提案は出ませんでした。 ぬう、かくいう俺も提案なんぞございません。 世界猫「……普通に休憩するか。よし、和風喫茶に行こう」 悟り猫「おお、そういや俺、まだ和風喫茶には行ってなかったよ」 みさお「メイド喫茶以外には行ってないの間違いじゃないですか?」 悟り猫「実はそうでござる」 適当な談話をしながら再び校舎内へ。 さて……世界猫が『行こう』とおっしゃるような和風喫茶……どげなもんデショ? 【ケース80:簾翁みさお/和ッ風ゥ!(クロノア風)】 引き戸を開けてすぐのところにあった暖簾をくぐると、 その先はいろいろと改良が加えられたおごそかな空間でした。 少女 「いら───……」 けれど、迎えてくれたのは神の子の波動を持つ女の子の警戒するような視線。 わたしの他が猫である所為で、その視線は自然とわたしだけに向けられてます……。 悟り猫(これ!こげな好機はまたと無い!言うんだ!     『一目で解った。ビリビリ来たね。アンタ俺に惚れてる』と!) みさお(そんなの彰衛門さんが言ってくださいよ!) 悟り猫(なんと!?バカヤロコノヤロォ、     こげな状況はなんとでも利用して人をからかえとあれほど教えたでしょう!?) みさお(教えられてないですけど) 悟り猫(そうですね) 途端に黙ってしまった彰衛門さんを余所に、 一角の席へと無言で誘う少女に促されつつ着席。 なんだか物凄く場の空気が重くなったような……。 悟り猫(ほれ見ンさい!キミがからかわなかったからこげなことに!) みさお(だったら彰衛門さんがやればよかったじゃないですか!) 悟り猫(なんだと!?人に罪を擦り付ける気だな!?) みさお(罪がどうとかの問題じゃないです!     それよりも手をぐるぐる回さないでください!) 悟り猫(ウウッ……!知らず知らずの内に漂流教室やってる自分が怖い……) みさお(……無意識だったんですか、それ……) それはそれで凄い。 世界猫「喜べ悟り猫、お前に吉報だ」 小声で騒ぐわたしたちを完璧に無視してお品書きを見ていた世界猫さんがニヤリと笑う。 その笑みの意味がよく解らなかったわたしは『なんですか?』と訊いた。 世界猫「ああ、白玉ぜんざいがあるんだ」 みさお「ああっ、あの彰衛門さんが是が非でも食べたかったっていうあの?」 悟り猫「ま、待たれよ!いつの間に是が非でもになってたんスカ!?     俺、そげなこと言った覚えが……!!」 みさお「すいませーん、白玉ぜんざいと三色だんごと───」 世界猫「俺はお汁粉でいい」 チラリと見ると、 それに合わせるようなタイミングで自分の食べたいものを言う世界猫さん。 みさお「あ、ハイ。お汁粉お願いしまーす」 一通りの注文を言い終えて、わたしは一息をついた。 ……その左正面で、彰衛門さんが悲しそうな顔で落ち込んでた。 悟り猫「俺に選択の余地は無しっすか……」 ああ、凄まじい鬱加減だ。 なんていうか『鬱』がオーラになって滲み出てきそうな感じさえする。 今、かつての時代で白玉ぜんざいを欲したことを悔やんでいるのかもしれない。 世界猫「そう落ち込むなって。     お前はここで白玉ぜんざいを喰うために生まれてきたと言っても過言ではない。     そう考えれば、くよくよなんてしてられないだろ?」 悟り猫「安ッ!!俺の千年の人生、たった350円の価値ですか!?」 世界猫「そうじゃなくてだな……」 悟り猫「そうか……俺の価値って白玉ぜんざいだったのか……。     真穂さん……やっぱ人の生き方に価値なんて付けるもんじゃねぇよ……。     俺様後悔、超後悔……。まさか俺の人生が白玉ぜんざいだったなんて……」 世界猫「聞け、まず聞け。俺が言いたかったのはだな……」 物凄い勢いで落ち込んでゆく彰衛門さんを宥める世界猫さんの図。 なんだかんだで親友が落ち込みすぎるとフォローする世界猫さんは、 あまり人をからかうのには向いていないのかもしれない。 彰衛門さんにしたってそうだけど、結局相手が弱ってしまうと放ってはおけないんだ。 みさお(だったらそこまでからかわなければいいのに) そう思うのは当然のこと。 でもふたりはそれさえ楽しんでいるようで、そんな関係が羨ましかった。 ……うん。弦月屋敷に戻ったら、聖ちゃんともっと親睦を深めるよう頑張ろう。 ───……。 ……。 ……ややあって、それぞれの目の前に置かれたそれぞれの品物。 わたしの前にはお茶と三色だんご、世界猫さんの前にはお汁粉とお茶。 で、彰衛門さんの前には……やっぱり白玉ぜんざいとお茶。 それを、まるで自分を慈しむかのような目で見つめる彰衛門さんが居た。 悟り猫「俺の価値……俺の存在理由……。     喰うぜ……そして俺は───白玉ぜんざい、お前を越えてゆく……」 さっきから涙を流しっぱなしの彰衛門さん。 まあつまり、世界猫さんの説得……といえるのかどうかは解らないものは失敗に終わった。 頭をコリカリと掻く世界猫さんと落ち込みまくってる彰衛門さん。 そんな二匹の猫を正面に、わたしは三色だんごを食べた。 世界猫「ゴギャアアーーーーーーーッ!!!!」 ……そんな中、突如絶叫する世界猫さん。 お汁粉を口に含んだ途端だ……って、あ───猫舌。 悟り猫「……ほ?ほ───ほっほっほ!そ、そうか!     貴様がいくら世界を創れようともそこはそれ、所詮世界猫!     この悟り猫の領域には未だ至ってはおらぬのですな!?     クォックォックォッ!やった!勝った!仕留めた!」 みさお「なにを仕留めたんですか」 悟り猫「知らん!」 本気で熱がる世界猫さんを余所に、急に元気になった彰衛門さん。 心なし、体毛にツヤが出てきてます。 病は気から、ですか? さらにそんな彰衛門さんを余所に、お汁粉の椀を両前足で掴んで溜め息を吐く世界猫さん。 次に連ねる言葉は─── 世界猫「……口内に味覚を殺さない耐熱膜が出ます」 ……予想通りのものでした。 やがてズズズとお汁粉をすする世界猫さんを見て、再び落ち込む彰衛門さん。 悟り猫「……俺が……この悟り猫が散々の時をかけて悟ってきたものが……」 劣等感ってヤツですかね。 彰衛門さんは誰かに差を感じる必要なんてないのに。 悟り猫「もういい!ヤケだ!俺、これからこの学園に災厄をもたらす!     これは俺の悟り猫としての決定だ!誰にも文句は言わせん!」 みさお「災厄って?」 悟り猫「ヘン!んがっくふ……今さらなに言ったって……むぐごふ……遅いんだかんな!?     後悔するなら……むぐっ……今が旬なんだかんな……!?んがごふ……」 みさお「……?」 罵倒しつつも白玉ぜんざいを掻っ込む彰衛門さん。 わたしと世界猫さんが唖然とした表情で見守る中、 やがてはそれを食べ終えた彰衛門さんは『支払いヨロシク』といって消え去ってしまった。 みさお「これが……災厄?」 世界猫「いや、経験上それは絶対に有り得ない。     あいつのことだ、もっと嫌なことをするぞ」 みさお「予想とかつきますか?」 世界猫「考える悪巧みだけは凡骨で、どうせ禄でもねぇことなんだろうけど。     時々アタリを引いちまうのが彰利だからな……想像がつかん」 みさお「うーん……って、なんだか外の方が騒がしいですね───ってまさか」 世界猫「そう考えるのが妥当だが……」 座っていた場所は窓際ではなかったために、外の様子を見ることは出来ない。 が─── 声  『う、うわぁああーーーっ!!!     不気味に笑ってるピエロが突然現れたぁああーーーーっ!!!』 ……その一言で、わたしには『災厄』がなんなのかが解ってしまった。 世界猫「……みさお?」 みさお「あちゃあ……」 頭を痛める他なかった。 声  『あ、あいつはまさか……ドナルド!?』 声  『いや違う!よく見ろ!     あいつはドナルドの宿敵……マサクゥルドナルドのピエロ、【マサルド】だ!!』 声  『なっ……』 声  『誰だぁっ!!スマイルテイクアウトした奴はぁぁああっ!!』 外の方はもう大変なことになっているようでした。 そんな中、ビジュンッていう音とともに元の席に転移してきた彰衛門さんが居た。 みさお「彰衛門さん……まさか……」 悟り猫「ふっふっふ……言ったでしょう、最高の恐怖をプレゼントしてあげるって」 みさお「言われてませんけど……     まさか本当に『スマイル』をテイクアウトしたんですか……?」 悟り猫「ウィ。名義は『風峰高等学校に居る者たち』で。     いや驚いたよ、神降のマサドナルドってデリバリーまでしてくれるんだねぇ。     スマイルまでデリバリーしてくれるとは正直思わなかったけど」 みさお「それで空狭転移で一気にここまで転移させたわけですか……」 悟り猫「だってさ、道が解らなかったら可哀相じゃん?」 みさお「じゃん?じゃないですよ……どうするんですか外の騒ぎ……」 悟り猫「知りません」 無情でした。 悟り猫「きっと誰かが止めてくれるさね。     おそらくあのマサルド、生徒全員にスマイルを見せないと止まらんだろうし」 世界猫「体張ってるなぁ……」 悟り猫「代々ドナルドもマサルドも、     中途半端な気持ちではなれないことが密かに有名なのですよ。     子供達の前で道化になることや、     人が嫌がることを平気でやれるようなスーパースター。それがピエロというもの。     だからね?ああして無償で人々にスマイルを送り届けるのも『誇り』の内なのだ」 世界猫「傍迷惑な誇りだな……」 みさお「ええ、ほんとに……」 って……あれ? みさお「あ、あの……彰衛門さん?つかぬことをお訊きしますが……     名義は『風峰高等学校に居る者たち』なんですよね?」 悟り猫「ウィ?そうだけど」 みさお「それって……わたしたちも危険ってことじゃないですか?」 悟り猫「………」 世界猫「………」 瞬時に、その場に冷たい空気が流れ込んだ。 世界猫「……風峰高等学校の外に続くブラックホールが出ます……」 ビジュンッ!ゾバァ……! 悟り猫「ややっ!?こ、これ!」 世界猫さん、さっさとブラックホールを創造して逃走。 ご丁寧にブラックホールを閉じていっちゃいました。 悟り猫「……えーと」 みさお「………」 ドグシャァアアアーーーーーーーン!!!!! 声  『ぶ、武流豚くんが潰れたぞぉぉおーーーーーっ!!!!』 声  『この騒ぎで倒れた出店の下敷きだぁぁーーーーっ!!!』 声  『綿菓子屋の暖簾が真っ赤に染まっていってるぞぉぉーーーっ!!』 声  『わ、綿菓子屋のヤツらは全員無傷だぞぉぉーーーーっ!!!』 声  『出店の骨組みが絡まって武流豚くんの首が折れてるぞぉぉーーーーっ!!!!』 声  『顔面が綿菓子器にハマってて妙な煙を出してるぞぉぉーーーっ!!!』 声  『またプロパンガスが爆発して武流豚が吹き飛んだぞぉぉーーーっ!!!』 声  『か、かなりの高さから顔面で着地したぞぉぉーーーっ!!!!』 声  『瞬く間に地面が真っ赤に染まっていってるぞぉぉーーーっ!!!』 声  『あ、で、でも生きてる!生きてるぞぉぉおーーーーっ!!!!』 …………。 悟り猫「あー……逃げよっか?」 みさお「……そうですね」 月空力展開。 一応全員分の代金を置いていってくれたらしい世界猫さんに習うように、 わたしと彰衛門さんは逃走した。 もちろんその日は戻るのがなんだか怖くて、別の場所で一日を過ごしました。 どうか風峰高校のみなさんが無事でありますように、とは祈っても…… どうしてか武流豚くんの心配だけはてんでしてない自分が居た。 Next Menu back