───FantasticFantasia-Set01/空想幻想曲(ファンタスティックファンタジア)───
【ケース01:晦悠介/旅路】 ───……その朝、俺達は普通に食事をとった。 普通に談話をして、普通にごちそうさまを言って、普通に分担の仕事をこなして。 境内の掃除を終える頃には丁度いい朝になり、空に近い場所でその空を眺めた。 悠介 「……はぁ」 吐く息は無色透明。 今日はいい天気のようで、冬に近づく季節の朝といってもそう寒いものではなかった。 彰利 「やー、なんか緊張するねー」 そうして空を眺めていると、社の上で寝転がっていた彰利が降りてくる。 俺から言わせてもらえば緊張なんてものは今朝の出来事で塵になってはいたんだが。 悠介 「そう言われると、緊張って戻ってくるもんだな……」 困ったものだ。 緊張するのが嫌だというなら断ればよかったのに。 それでもほうっておけなかったんだ、それこそ仕方ない。 彰利 「……ンム。次元の歪みを感知しました」 悠介 「そか」 言われてからゆっくりと振り向いた。 すると視線の先の虚空が歪み、歪みの中からリヴァイアが現れた。 リヴァ「すまない、待たせたか?」 既に集まっていた俺達を見たからだろう、 少し戸惑いを見せたリヴァイアはそう言ってきた。 悠介 「いや。ただ他にすることもなかったからな」 彰利 「というよりは『する余裕』が無かったんじゃけんどね」 リヴァ「……そうか。すまないと思ってる」 悠介 「気にするなよ。実際なにもやってなかったのは彰利だけで、     俺は境内の掃除やってたんだから」 彰利 「そげな……俺だけ悪いみたいに言うこたぁねぇでしょうキミ」 悠介 「事実だろ」 苦笑めいた顔でそう言った。 彰利はそれに対して真顔で『そうだ』なんて言うもんだから、 不覚にも少し笑ってしまった。 やがて状況に戸惑うリヴァイアを置き去りにして笑い合った俺達は、 手を弾き合わせてから相手の胸を殴った。 悠介 「覚悟はいいな?」 彰利 「オウヨ!死んでも生き残るぜ!」 悠介 「いや、それ死んでるから」 彰利 「え?あ、ギャア!!」 悠介 「ったく……ハハ、緊張感が無いなぁお前」 彰利 「そげなつもりはないんですがねぇ……まあいいコテ、そろそろ行くかね?」 悠介 「ああ。いいか?リヴァイア」 彰利に促され、リヴァイアに訊ねてみる。 リヴァイアは軽く『ああ』と頷くと、 すぐにその場の虚空に上乗せするように新しく大きなひずみを作り上げた。 リヴァ「ここをくぐれば空界のわたしの工房に行ける。準備はいいんだな?」 悠介 「ああ───っと、ホレ彰利。これ首にぶら下げろ」 彰利 「あ〜ん?」 俺が放り投げた物を、彰利がひょいと受け取る。 が、すぐにつけるようなことはせずに、シゲシゲと見つめた。 彰利 「……ナニコレ」 悠介 「これだこれ。俺の首に下がってるのと同じもの。     向こうでは冒険者の必需品みたいなものだよ。     モンスター倒せばランクが上がったりする」 彰利 「……んじゃなにか?このカードみたいなもん装着してゴブリンでも倒せば     レベルアップしたりするってことかね?」 悠介 「レベルアップとは違うな、ランクアップだ。     敵さんいくら倒しても強くはなれないからな」 彰利 「なるほど」 悠介 「それ首に下げて、敵と戦う時に“戦闘開始(セット)”って言うこと。     そうすりゃ戦闘記録が刻まれるって、そんな感じだと思う。     倒した敵が落とすアイテムもこの中にある『バックパック』ってやつに     自動的に入るから、敵と戦う時は絶対に“戦闘開始”の合図は忘れないこと。     忘れるとアイテムもランク経験値ももらえないと思う」 彰利 「ほほうそれはまた心の狭い」 悠介 「案外面白いぞ?     言ってみれば『戦う』って意識がスイッチみたいに押される気分だ」 彰利 「むう……なるほど。他には何か特殊能力が備わったりとかは?」 他?他は───無いよな、うん。 悠介 「無いよな?」 リヴァ「ああ、無いな。もともとそれはランクを決めるためのものだ。     持ち主のランクを刻んで、バックパックに戦利品を送る以外に能力は無い」 彰利 「ぬう、そうなのか。ちと残念……変身能力とかあったらステキだったのに」 悠介 「………」 彰利 「……?悠介?なにやら顔色がすぐれんようだが」 悠介 「い、いや……なんでもない」 頭の中にジェットモモンガーになった自分の姿が上映された。 もちろんすぐに振り払ったが。 悠介 「あー、じゃあ行くか。ここでこうしてても始まらない」 彰利 「そうじゃの。んじゃあリヴァイア、オイラ達行ってくるよ〜」 彰利がリヴァイアに向けてハンケチーフを揺らしながら言う。 リヴァ「あのな、わたしも行くんだが?」 彰利 「エェッ!?そうなの!?」 悠介 「馬鹿やってないでさっさと行くぞ」 彰利 「馬鹿とはなんだコノヤロウ!!」 悠介 「それはもういいから。ほら行くぞ」 彰利 「グ、グウムッ!!た、高松くん!ぼ、僕らは未来に向かってしまうのか!?」 悠介 「お前もう漂流教室から離れろよ……」 彰利が身に纏ってる黒衣の襟首を引っ掴んで歪みに飛び込んだ。 相変わらずギャーギャー騒ぐ彰利を余所に、 くぐった歪みの先には既にリヴァイアの工房があった。 悠介 「リヴァイア、これから俺達はどこに向かえばいい?」 リヴァ「ああ、目的地は空界の皇国であるレファルドだ。     地図から見て北に位置するフォルスウェルド地方にある国で、     空界の中でもその規模の大きさは最大と言っても過言じゃない」 彰利 「ほへー……そこの馬鹿キングがドラゴン退治を依頼した張本人?」 リヴァ「馬鹿キングか。ははっ、それは確かに的を射てる。     ああそうだな、その馬鹿キングがそもそもの発端だ」 彰利 「そかそか。したらそやつをドラゴン退治の騒ぎの中でコロがせばいいんか」 リヴァ「目的の方向性が逆方向に逸れてるが……否定したくないのが正直な話だな」 彰利 「闇討ちなら任せろ。俺はこう見えて闇討ちのプロだ」 リヴァ「そ、そうなのか検察官!だったら頼む!あの馬鹿キングを───!!」 ……アア、ヤバイよ神社に置いてきたみんな……。 俺、早くも頭が痛ェ……。 リヴァ「あ……そうだ悠介。この討伐の他に、お前に頼みたいことがある」 悠介 「んあ?なんだよ」 かけられた声に向き直る。───と、リヴァイアが真剣な目で俺を見ていた。 リヴァ「水晶の檻は確かに物理干渉以外を絶対的に弾く代物だ。     空界の式はもちろん、天地空間あらゆる世界の能力の干渉を拒絶する。     例外があるとすれば神界の力くらいなものだが、     わたしに神界の知り合いは居ない。だからお前に頼みたい」 ……頼むって、なにを? 生憎だが俺にも神の知り合いなんぞ居ないんだが……。 リヴァ「お前の創造の理力で、馬鹿キングの手から水晶の檻を転移させてほしい。     あれにはわたしが知る限りの能力の干渉を遮断する式が編みこまれている。     だがわたしがあれを作った時、まだわたしはお前には会っていなかった。     『創造者』を知らなかったわけじゃない。だが、お前のその力は     わたしが知っている『創造者』のものとは明らかに異なったものだ。     だからお前の力ならきっと出来る。     『干渉払い』を掻い潜って、なんとか───」 悠介 「……そいつ、その水晶の檻ってのを毎度持ち歩いてるのか?」 リヴァ「───ああ、それは間違い無い。     国を留守にしている間に取り戻されることを怖れているからな。     それこそ肌身離さず持っているだろうよ」 悠介 「───ん。そか。だったらドサクサで盗めるかもしれないな」 リヴァ「や、やってくれるのか?」 悠介 「乗りかかった船だろ?     その代わり、やるからには真面目に、だけど『男』として楽しませてもらう」 もっとも、転移させるとするならそれがどんなものなのか一度見なきゃいけない。 漠然と『水晶の檻を俺の手に転移させるブラックホールが出ます』なんて言っても、 水晶の檻のカタチも解らないままじゃあ無茶すぎる。 悠介 「まあいざとなったらこいつも居るし……時でも止めて盗めばなんとかなるだろ?」 彰利 「んお?おお、なるほど」 ふたりでテシンと手を合わせて笑う。 なんだかんだ言って結局、俺もこの空界の空気が好きなのだ。 その世界に居るだけでわくわくすると言えばいいのか、ともかく高揚する。 ……なんて、小さな高揚感を感じていた時だった。 リヴァ「───いや。時を止める行為は無駄だ」 リヴァイアがトーンを落とした声でそう言った。 俺と彰利は顔を見合わせて、とりあえずその訳を聞くことにした。 リヴァ「言っただろう、     水晶の檻にはわたしが知る限りの能力の干渉を遮断する式が編まれている」 彰利 「え?じゃけんど……     悠介に会う前に作ったってこたぁアタイにも会ってねぇでしょ?」 リヴァ「忘れたか。わたしとシェイドはお前らに会う以前から知り合いだった。     シェイドが身に付けていた月操力の幾つかのパターンも織り交ぜてある。     ……当然、時を止める力もだ」 彰利 「あいたーー……。     リヴァイア、キミねぇ……なんだってそげなモン作ったのかね」 リヴァ「……すまない。『干渉払い』の力を極限まで高めたものの研究中だったんだ。     言わば水晶の檻はその試作品だ。まさかそれを奪われるなんて……」 悠介 「………」 その顔からは後悔が伺えた。 そこまで来てようやく───こいつは俺達に似ているんだと感じることが出来た。 自分の作ったものが盟友を傷つけることに対する痛みを、こいつは抱えている。 他に頼れる存在が無いと言った言葉に偽りなんて無いのだろう。 つまり……リヴァイア=ゼロ=フォルグリムにとってのゼロ=クロフィックスは、 晦悠介にとっての弦月彰利という存在関係と変わらない、『たったひとりの何か』なんだ。 悠介 「───」 それに気づいた……いや、気づけた。 それで十分だ。 友達を助けようってヤツを邪険にするとバチが当たるだろう。 それ以前に俺は─── そんなことのためにドラゴンとやり合うおうっていうこいつが嫌いじゃない。 悠介 (……覚悟なんて決めてたつもりだったんだけどな) これで完全だ、もう迷わない。 俺はリヴァイアを信頼して、 このドラゴン討伐っていう地獄をたったひとりの親友と生き延びるだけだ。 悠介 「じゃ……行くか。レファルド皇国に行けばいいんだよな」 リヴァ「ああ。そこで手筈を聞いて、あとは一斉に南のイクスキィ蒼山に突撃するだけだ」 悠介 「突撃か……あ、魔導船、ってのはなんなんだ?」 確か昨日、リヴァイアが魔導船がどうとか言っていた筈だ。 何も知らないままに行動するのは危ないだろう。 リヴァ「空を飛ぶ巨大な船、と言った方が解りやすいか?     それに乗って蒼竜王マグナスと戦う。蒼竜王マグナスの俗称は飛竜王だ。     当然地上で戦うことは無い。だからこちらにも飛行手段が必要なんだ。     普段は国と国の運搬や移動などに使うが、     今回はこれを戦闘用に改造して突撃する」 彰利 「お……おおお……なんかマジで大決戦って感じがしてきたのぅ……!!     こ、この彰利も久々に猛っておるわ……!!」 悠介 「猛りすぎて藤巻十三にはなるなよ」 彰利 「やかましい!忘れなさい!!」 リヴァ「……話を続けていいか?」 悠介 「あー、悪い。続けてくれ」 隣でギャースカ言う彰利をレタスで黙らせると、俺はリヴァイアの話に耳を傾けた。 リヴァ「飛行手段は魔導船。それを何隻か用意してある。     当然飛行手段を持っていないわたしや検察官はこれに乗る。悠介は───」 悠介 「ああ。俺はディルゼイルで行く。     男として飛空艇には興味があるが……こればっかりは仕方が無い」 リヴァ「そうだな。伝えることはこれくらいだけど……聞きたいこととかはあるか?」 彰利 「あ、ハイハイハーイ!!オイラオイラー!」 レタスを食し終えた彰利が手を上げてアピール……もう喰ったのか? リヴァ「なんだ、わたしに答えられることならなんでも答えるぞ」 彰利 「しからば───例えばだけどさ。     そのドラゴンと戦う際にオイラが『戦闘開始』って言っても、     オイラにはちゃんと経験値は来るのかな」 リヴァ「複数での戦闘では、その本人がどれだけ戦闘に貢献したかで配分が決まる。     逃げ回っていたところでランクはアップしないぞ」 彰利 「ふむふむ……んだば、ブラストとか遠距離攻撃ばっかしてたらどうなる?」 リヴァ「それに威力があって、相手がそれだけ怯めば変わってくる。     言ったろ、戦いに貢献出来なければ意味がないんだ。     そういう意味ではたとえドラゴンの皮膚に傷ひとつ付けられない法術でも、     それがドラゴンの目に当たることで目眩ましになれば貢献に繋がるな?     そうすれば役立たずの存在もランクアップに繋がることがある」 彰利 「……結構細部まで行き届いてんのね。こりゃ面白そうだ」 悠介 「ドラゴン相手にその『面白い』がいつまで続くかねぇ……」 彰利 「まあ!なんですのこの子ったら!     人が楽しみにしていることに水を差すつもり!?」 悠介 「そんなつもりは毛頭無いよ。     ホレ行くぞ、地図によると……そう遠くないみたいだ」 バックパックから取り出した地図を見て位置を確認する。 ───と、広げた途端にゆっくりと文字を変えてゆくとある場所に気がついた。 悠介 「……リヴァイア。     この地図ってもしかして町の名前とかも新しいものに更新するのか?」 リヴァ「うん?ああ、便利だろう。だから一枚あれば新規に買う必要なんてないんだ」 悠介 「そっか……ところで訊きたいんだが、これってなんて書いてあるんだ?」 リヴァ「……?どこだ?」 俺の地図を覗き込むリヴァイアにその位置を教える。 あまりいい思い出のないその場所は、今ようやく名前を変え終えていたようだった。 リヴァ「これは……空界文字で『復興都市ユウスケ』と───」 悠介 「ジジィイーーーーッ!!!てめぇええーーーーっ!!!!」 あンのクソジジイまたやりやがった!! 確かに名前は変わっちゃいるが、大事なところが変わってねぇ!! 悠介 「ああくそ信じられねぇ!!いくぞ彰利!向かう先はレブロウドだ!!」 彰利 「レブ?ユウスケじゃねぇの?」 悠介 「やかましい!レブロウドだ!!いいな!?」 彰利 「お、押忍」 俺は怒りのままにドアを開けて空界のリヴァイアの屋敷に出た。 もちろん悠長に出入り口に向かうこともなく、窓を開け放ってディルゼイルに乗る。 悠介 「早く来い彰利!行くぞ!」 彰利 「ノ、ノゥ!落ち着きたまえよキミ!     男たるもの、外道にならんためにも落ち着きが必要だよ?」 悠介 「……お前にそういうこと言われる日が来るとは思わなかった」 でもその意外性が頭の中を落ち着かせてくれた。 落ち着け俺、地界で『怒らない』って決めたばっかりじゃないか。 悠介 「───よし、落ち着いた。でも乗ってくれ、     どちらにしろレファルドってとこには行かなきゃいけないだろ?」 彰利 「ぬう……オイラ長ったらしいイベントなんかよりもゴブリン見てェよゴブリン。     ガーディアンヒーローズの格好のゴブリンのくせに、     凄まじい速さって噂のゴブリンを」 悠介 「気持ちは解らんでもないが……」 どうしたもんか。と─── リヴァ「先にレファルドに行こう。手筈を聞いておけば、あとの行動もやりやすい。     突撃開始時刻が速まる可能性もある」 考えあぐねているところにリヴァイアの助言が届いた。 俺と彰利はすぐさまそれに賛同。 だってなぁ、リヴァイアの方がこの世界には詳しいし。 適材適所と効率問題には大人しく従った方が身のためだ。……今回ばかりは特に。 【ケース02:弦月彰利/新鮮世界】 ───ビジュンッ!! 彰利 「イエイ」 あれからリヴァイアの提案で、 リヴァイアの式を使ってレファルドという皇国に転移した我ら。 そんな中でオイラはステキポーズを取りながら舞い降りた。 悠介 「ここがレファルド皇国か。……広いんだなぁ」 リヴァ「さっきも言ったように、レファルドは空界の中でも一番の大きさを誇る巨大国だ。     人口がどれくらい居るかは解らないが、     それでも他の場所より少ないってことはないと思う」 ……当然無視されましたけどね。 まあでも細かいことは気にしねぇ、オイラ強く生きるよトニー。グレイト。 ───ドンッ! 彰利 「ギャア!?」 兵士 「馬鹿野郎!何処見て歩いてんだ!気をつけろ!」 彰利 「ば、馬鹿とはなんだこの野郎!!     そもそも俺まだ歩いてねぇよ!?てめぇこそ気をつけろ!!」 兵士 「なんだと!?名を名乗れ貴様!」 彰利 「俺はハーン!よろしく頼むぜ!」 兵士 「チッ……今は貴様などに構っている暇はない!」 彰利 「あらヒドイ!!つーかオイオイオイ!!名乗れって言っといて無視っすか!?」 それだけ言うと兵士姿のおっさんは走り去ってしまいました。 なにをそんなに急いでたんでしょうか───ハッ!? 彰利 「そ、そうか……きっと膀胱が破裂しそうだったんだな?」 悠介 「それはないだろ……」 彰利 「ややっ!?」 ステキポーズは完全に無視してくれたくせに、こげな細かいところではツッコム悠介くん。 しかしまあ……無視されないのはよいことです。 彰利 「皆様慌ただしいねィェ。落ち着きってものがねぇズラ」 リヴァ「それはそうだろう。ドラゴン討伐は命懸けだ、半端な覚悟じゃ戦えない」 彰利 「ウィ?だったらなんで突撃すんのさ。     怖いなら突撃なんてしなけりゃよござんしょ?」 家庭を持つ人だって居るに決まってる。 そんな人が無理に出るのは間違ってはおりませんか? リヴァ「考えていることの大凡は想像がつくけどな。     『皇国』っていうのは『王』が絶対的存在なんだ。     命令されれば突撃しないわけにはいかない」 彰利 「……大袈裟に腐ってんのねここ」 悠介 「まったくだな。感心しない」 皇国ってのは名ばかりか? こんなに綺麗な国なのに、内面がクズでは話にもならない。 いっそハルマゲドンでも起こしたい気分になってくる。 彰利 「王を攫って血祭りにあげるのはどうだろうか」 リヴァ「輝いた提案だが、今はまだ無理だ。     あいつが水晶の檻を持っている限り、わたしたちは手出しが出来ない」 彰利 「ぬう……なんかやたらとムカツキますな」 クズ王ってのはゲームの世界だけじゃないのか。 やるせないというか、やってられないというか。 悠介 「ヘコむなよ。この戦いが終わるまでに水晶の檻を強奪して、     その後にボコれば済むことだろ?」 彰利 「む……そらそうだけど」 別にヘコんでたわけじゃないスけどね。 彰利 「して、リヴァイア?我輩アポカリプスはなにをすればいいのかね?」 リヴァ「アポ……?」 悠介 「リヴァイア、こいつの一人称をわざわざ気にしてると疲れるだけだ。     付き合う必要はないから用件だけを言うのがいい」 リヴァ「そうなのか?」 彰利 「これ!そげなことをすれば礼節を欠くことになるのですよ!?     真面目にしないとダメでござる!」 悠介 「一番真面目じゃないお前がそういうこと言うか?」 彰利 「ゲゲェエーーーーッ!!!!」 真面目じゃないって……親友が面と向かって真面目じゃないって……!! 言い返してやりたかったが事実だったんで無理でした……うう、ちくしょう。 リヴァ「落ち込むな検察官……まずは広場に行こう。     そこでオウファっていう馬鹿キングがありがたい自殺命令演説をしている」 悠介 「解るのか?」 リヴァ「あいつは筋金入りの下衆だ。口だけは達者だが、     言ってることは『俺のために死ね』と言ってるのと変わらない」 なるほどそりゃ下衆だ。 鉄槌でも食らわしたいところだけど、リヴァイアの言うとおり今は無理ザンス。 などと思いつつ、既に歩き始めているリヴァイアの後を追って歩く。 リヴァ「それでも一応そこで手筈は話されると思う。     いいか悠介、検察官。自分が地界人であることをあまり言いふらすなよ。     みんな殺気立ってる。     基本が空界人より弱い地界人がこの戦いに参加するだなんてことが知れたら、     『足手まとい』と称して集団リンチだ」 彰利 「返り討ちだコノヤロウ」 リヴァ「相手を間違えるな検察官。憎むべきはこんな命令を下したオウファだ。     王が変わるまでは本当に平和な国だったんだ、解ってくれ」 彰利 「グウウ……」 しかしね?こう皆様が殺気立ってると悲しいじゃない。 人は笑うことが出来るのですよ?感情を持っていられてるなら笑うべきです。 悠介 「だから。俺達が笑顔作りに貢献すりゃいいだけだろ?」 彰利 「あら悠介さん……って、なに普通に心読んでんの?」 悠介 「お?当たったか。     なんかな、お前が暗そうな顔してたからそんなとこじゃないかなって思った。     気にするなよ。言ったばっかりだけど、ようは王が変わればいいわけだ。     どちらにしろ下衆な王ってのは懲悪されるって相場が決まってる」 彰利 「ああ、アレね?王じゃないけど偉そうなヤツは死ぬってやつ。     映画とかだと怪物に食われたり、逃げ出そうとして事故ったり……なるほど。     ここがファンタジーなら、部下に殺されるかドラゴンにひと飲みにされるか、     はたまた……」 チラリとリヴァイアを見る。 小声で話していたためか、今の聞こえなかったらしいリヴァイアは首を小さく傾げた。 悠介 「……だな。俺としてはそうなってほしい」 彰利 「そのためにも人質は助けんとね。うーしゃあ、やる気が出てまいりましたぞ〜!     ……でもさ。初めて戦うモンスターがドラゴンって、     やっぱりちょっと……いや、かなりシャレにならんのですが」 悠介 「突撃開始時刻にはまだ時間があるって言ってたろ、     だからそれまでにゴブリンと戦うのもいいんじゃないか?」 彰利 「おおそれナイス!で、リヴァっち、その説明場所ってまだ?」 リヴァ「こ、こらっ、リヴァっちって呼ぶなって言ったろ……!」 彰利 「む!?」 なにやら周りの目を気にしながら言うリヴァイア……もしかして? 彰利 「リヴァイアよ……キミがそこまで我慢しておるとは……」 リヴァ「な、なにがだ……」 彰利 「すまんの、案内ばかりさせて。厠へ行っといで?待っててあげるから」 リヴァ「───!!」 その瞬間、彼女の拳が光り輝きましベゴチャアッ!! ───……。 彰利 「ゲホハッ!ゲッホゲッホ!!は、はだが……!!」 例の如く鼻が折られました……もう涙が止まりません。 リヴァ「ここが広場だ。城の一部分と繋がっている唯一の場所だな。     あのテラスまがいの場所から大層な演説を始めるんだ、聞いてて耳が腐る」 悠介 「そう言うなって。聞かないわけにはいかないんだろ?」 リヴァ「だから耳が腐るっていってるんだ。     ありがたく受け取る聴衆なんてものはここに存在しない」 俺が盛大に鼻血を流してる中、悠介とリヴァイアはなにやら会話を楽しんでおります。 でもボクは挫けません。無視されるのには慣れてマッスル。……うれしくねぇけど。 リヴァ「……始まるぞ。一応耳を傾けておいてくれ」 悠介 「……善処する」 彰利 「ホッホォ〜、こりゃまた……」 太鼓のような音が聞こえたと思ったら、 テラスもどきに人相の悪いオッサンが出てきました。 いや〜……王っていうか悪役っぽい顔だねありゃあ。 人を三人は殺してるって顔だぜ?。 王  『国民よ、よくぞ立ち上がってくれた。     我らは南の空の王、蒼竜王マグナスに突撃を仕掛ける。     時は【時雨の刻】。皆、それまで万全の準備を整えておいてほしい』 おっさんがペラペラと用意されていた言葉を放っていく。 こりゃありがたみがないねぇ……って、ところで…… 彰利 (……時雨の刻ってなに?) リヴァ(空界の時間帯のひとつだ。時雨の日……ああ、明日のことだがな。     時雨の刻っていうのは明日の昼頃ということになる。     朝が『時』、昼が『刻』、夜が『深』。大雑把に分けるとこんな感じだ) 彰利 (ナルホロ) つまり突撃は明日ってことか。 それまではゴブリンと戦えるってこったよね? 王  『国民達の弛まぬ努力に期待する。見事マグナスを打ち倒すのだ!!』 国民 『うぉおおおおおおーーーーーっ!!!!』 王が一喝をするように叫ぶと、周りの国民や兵士が一気に叫んだ。 ……こりゃどうなってんの? 彰利 「ちょ、ちょいとリヴァイア?あの王って嫌われ者じゃないの?」 リヴァ「言ったろ、口だけは達者なヤツなんだ。     じゃなきゃああして王になれたりはしない」 『それから嫌っているのはわたしだけだ』と加えるリヴァイアに些か呆然。 じゃけんど……嫌っている人物が知り合いなら、それに順ずるのが男意気というもの。 既に漢意気じゃないのが悲しいが、もう受け入れましょう。 彰利 「我輩は男である。故に迷わない」 タロウじゃないのは気にするな……とは続かない。それこそ気にしないでOKさ。 悠介 「……言いたいことだけいって戻ってったな。こんなんでいいのか?」 リヴァ「民には考えている余裕なんてない。     焦れば焦るほど誰かの意見に流されやすくなるのはどの世界の人間も同じだ。     あの下衆はそういう姑息なことばかり心得ているんだ。     だからあんなヤツが王のままでも国民が黙ったままだ」 彰利 「なるほどねぇ……」 どちらにしろ下衆ってことには変わりはないのね。 リヴァ「じゃあこれからは自由時間だ。明日の昼までにはもう一度ここに集まってくれ。     それから───ああ、時刻変動があるかもしれない。     送話の式を編んで渡しておく」 彰利 「送話の式?ナニソレ」 リヴァ「離れてる状態でも会話が出来る式だ。持っていれば何処でも話が出来る」 彰利 「おおそりゃ便利!前に貰った転移の式と同じ使い方でいいのかね?」 リヴァ「ああ。話したいって思えば使える。     言葉の受信は『“アクセス”』で、送信が『“トランス”』。     ただし使えるのはわたしと悠介と検察官の間でだけだ。     話したいヤツの名前を言ってトランスって言って、     相手がアクセスって言えば繋がる」 説明しながらリヴァイアが俺と悠介の体に光の連なりを埋め込んでゆく。 彰利 「……もう出来んの?」 リヴァ「ああ。やってみようか───検察官に“送信(トランス)”」 ジジッ─── 彰利 「うおっ!?え、えっと……なんか耳の方でジジッて音が……」 リヴァ「それを感じ取ったら“受信(アクセス)”だ」 彰利 「ぎょ、御意……“受信(アクセス)”」 ジンッ─── 声  《聞こえるか?》 彰利 「お───おおお!!こりゃステキ!聞こえる!聞こえるよ!」 悠介 「面白そうだな……彰利にトランス」 ジジッ─── 彰利 「あ、アクセス」 ジンッ─── 声2 《聞こえるかー?》 彰利 「聞こえる聞こえる!やべぇ!面白いよこれ!」 声2 《カスカスカスカスカスカスカスカスカスカスカスカスカスカスカスカス》 彰利 「イヤァアーーーーーーーーッ!!!!面白くねぇえーーーーーーっ!!!!     なにコレ!つーかなに!?なんでカスカス言ってんの!?     あ、イヤッ……耳塞ぎたいのに頭の中に直接響いてきてるから塞いでも意味ない!     やめてやめてぇえーーーっ!!カスカス言わないでぇええーーーっ!!!」 声2 《いや、面白がってるヤツを蹴落としてみたかったんだ》 彰利 「イジメッ子ですかアータ!!ちょ、ちょっとリヴァイア!?     これアクセス切るのってどうすりゃいいの!?」 声1 《“切断(カティング)”って言えばいい。それで切断される》 カティング?カッティングじゃないんだ。 彰利 「え、ええと……?」 声2 《カスカスカスカスカスカスカスカスカスカスカスカス》 彰利 「ギャアしつけぇ!!カットカット!!じゃなかった!カティング!!」 ブツンッ─── 悠介 「……お?」 彰利 「キミね!近くに居るのにわざわざカスって言葉送信しますかね普通!!」 悠介 「だから、面白がってるから蹴落としたかったんだって」 彰利 「鬼かキサマ!!     純粋にファンタジーっぽいものを楽しんでいる男になんたる態度!!」 悠介 「だってなぁ……俺だけ一番最初に戦ったのがコックローチって不公平じゃないか。     俺だって純粋にファンタジーを楽しみたかったんだぞ……?」 彰利 「コックローチ……って、ゴキブリ?」 悠介 「なんでもない、忘れてくれ……」 手で顔を覆って、ゴファアシャアと溜め息を吐く悠介くん。 ああこりゃ相当悲しい目に合ったのでしょう。 悠介 「……じゃ、行くか。ああリヴァイア、この式、ありがとな」 リヴァ「気にするな。それからそれはそのまま持っていてくれて構わない。     ただ状態や状況によっては使えないこともあれば、     なにかの拍子に使えなくなる場合もある。そういう時は諦めろ」 悠介 「了解」 彰利 「御意。うっしゃあゴブリンだゴブリン!行こうぜ悠介!オイラやっちゃうよ!?」 悠介 「俺としてはアントエンハンスの近くにある森に行きたい気分だな……」 彰利 「へ?そこに何かおるの?」 悠介 「ゴキ───ゲフッ!ゲフンッ!!あー……モンスターだ」 彰利 「ちょっと待てキサマ!今ゴキとか言ったろ!!」 悠介 「幻聴だろ、しっかりしろよお前」 彰利 「いーや聞いたね!!間違い無く聞いたね!!」 悠介 「じゃー行くかぁ、まずはミノタウロスと戦ってみようなぁ?彰利〜」 彰利 「えぇっ!?最初はやっぱスライムかゴブリンかオークっしょ!?」 悠介 「スライムは諦めろ。探したところで多分見つからん」 彰利 「え?なにそれ」 スライムの身になにかが起きた……?それとも最初から存在しないとか? 悠介 「リヴァイアはどうする?」 リヴァ「わたしは自分の工房に戻ってるつもりだ。時刻が速まったら連絡が来る筈だ。     そうなった時、お前らにそれを伝えるためだ」 彰利 「おお……すまないねぇ坊や……。あ、なにか必要なもんとかある?     冒険の心は依頼からってね。なにか取ってきましょう」 悠介 「彰利、ハッキリ言うぞ?この世界で安請け合いだけはするな」 彰利 「へ?なにそれ」 悠介 「俺の経験から語られる言葉」 ……なにかあったんかね。 けどそれって結局自業自得? いやいや待て、そうだとしても俺がもしこれからリヴァイアに頼まれごとをしたとして、 それを承諾して悲しい目に遭うのも自業自得? そいつぁあいけません。 ファンタジーの自業自得ってキツイものばっかりだし。 彰利 「やっぱ前言撤回致す。ちと怖いので」 リヴァ「別に頼みごとはないから心配するな。それじゃあわたしは戻るぞ」 悠介 「ああ」 ───ビジュンッ!! 式を描いたリヴァイアはそのままその場から消え去った。 そうしてからムシャアと息を吐いて、悠介の背中をボスンと叩く。 彰利 「では行きましょうか?夢と希望が溢れる外へ……」 悠介 「夢と希望があるかどうかは戦うモンスターで決まるけどなー」 なにやら棒読みのような言葉を発する悠介くん……こいつぁあいけません。 ファンタジーに来た時くらいは性格をハジケさせなきゃ損ですよ? 彰利   「で、先にひとつ訊きたかったんだけどさ」 悠介   「うん?ああ俺もだ彰利。丁度良かった」 彰利&悠介『……出口、どっちだ?』 …………なんとも悲しいファンタジーデビューがここにあった……。 Next Menu back