───FantasticFantasia-Set03/酷使と無茶の先───
【ケース04:弦月彰利/蒼き王との刹那の邂逅、そして別れ】 ───……ガキィンッ!! 彰利 「おわぁ〜〜〜っ!!!」 剣が交差する。 弾かれた刃と刃が火花を散らし、薄暗い洞窟に数瞬の明かりを齎す。 ───目の前にはリザードマン。 以前悠介がリザードマンと出会ったっていう洞窟に来たら発見したヤツだ。 見た時は喜び勇んで戦闘開始を唱えたものだが、こいつがなかなか曲者だ。 悠介に貰ったリザードマンブレードを使っているから条件は一緒なんだが─── それにしても相手の力がかなり高い。 速く、強く、バランスが取れている。 リザードマン「ケアッ!」 彰利    「とわぁあっ!!」 振るわれた剣が空を裂く。 現在死神モードは解除してあるために、 俺は俺として戦ってるわけだが───いや驚いた、世界って広いわ。 身体能力には自信があったのに、こやつってば確実に俺より強いよ。 彰利 「むっ!いかんいかん!戦闘中に不謹慎な!」 考えごとなど後でも出来ます! 今は───今はそう、こいつとの戦いを堪能しよう! こいつは強敵だ!普通に戦うとここまで歯応えがあります!……歯応え?まあいいや。 彰利 「突ーーーき突き突き突き突き突きィイイーーーーーッ!!!」 構えたリザードブレード閃かせる。 その速さたるや、まるで九頭龍閃の出来損ないです! てんで速くありません!悠介が速すぎるんです! ていうか戦斧石だっけ!?アレ欲っすぃ!! リザードマン「ケァアッ!!」 ガゴゴギゴガガガゴギギガァンッ!!!! 彰利 「ウゲェエエーーーーッ!!!!」 また考え事なんぞしてたからでしょうか。 我が秋沙雨が悉く弾かれました。 すげぇ……マジで強いぞこいつ。 彰利 「───……」 ふと観戦してる悠介を見ると、笑いながら頷いていた。 なるほど、確かにデカい敵と戦った後だからってザコ敵なんか必要ないってことはない。 というかデカいヤツを倒せたとしても、そりゃあ自分が強くなってるわけじゃない。 だから自分よりランクが下のヤツでも十分強い……これはいいシステムです。 ザコからでも経験は積めるってことですよ。 リザードマン「ケァゥッ!!」 彰利    「おわっ!?」 ヂギィンッ!! リザードマンが振り下ろした剣が、 リザードブレードと一緒に貰ったリザードアーマーに傷をつける。 彰利 「な、なんてことを!種族装備は大事なんだぞ!?」 悠介 「傷ひとつ無く倒せるなんて思うなー。リザードマンはほんと強いぞー」 彰利 「解っとりゃあな!!とぁああっ!!」 一気に間合いを詰めて、シルバースターストーリーのアレスくんの如き剣舞を披露! しかしガギギギギゴギガンガカンゴカァンッ!!!! 彰利 「おっ───……!?」 繰り出した剣の全てが、やはり悉く弾かれる。 すげぇ……マジですげぇ。 敵さんだってのに一瞬感心しちまったよ……。 悠介 「死神化した方がいいんじゃないかー?」 彰利 「フ、フフフ……そ、そうはいかねぇ……。     悠介が死神化する前に倒せたってんなら俺だってそうするまでよ!」 言い放ち、手に持っていたリザードブレードを洞窟の地面に突き刺す。 徒手空拳になった俺を訝しげに見るリザードマンを真っ直ぐに見据え、構えた。 彰利 「来い……手加減は無用なり」 その言葉を理解したのかどうかは解らない。 だがリザードマンは『クッ……』と笑うと、俺目掛けて疾駆した。 彰利 「───……」 まだだ───まだ……あと一歩───今!! 彰利 「柳生新陰流───極意」 下から掬い上げられるように振るわれる剣を全神経を持って凝視する。 腕から手首、手から指先、 やがては剣に至る細部を視認し、それに重ねるように手を合わせる。 リザードマン「───!!」 驚愕は刹那に。 リザードマンの腕と剣に添えられた俺の手が、 リザードマンの手から清流の静けさの如き無駄の無い動きで剣を奪い去る。 彰利 「───無刀取り」 それに成功すると、地面に突き刺した剣を手に取ってバックステップ。 片手ずつに剣を握り、右手の剣を頭の上辺りに構え、左手の剣は右脇腹の横へと構えた。 彰利    「リザードマン……あんたの強さに経緯を表する。        あんたの強さは本物だった。        だから───物真似技だけど全力を以っていかせてもらう」 リザードマン「………」 リザードマンがゆっくりと拳を構える。 剣が無くなったからといって退くことも怯えることもない堂々とした生き様…… それにさえ誇らしさを感じた。 彰利    「月醒力&月切力解放!!奥義───」 リザードマン「ケァアアーーーッ!!!」 疾駆する影が二つ。 一直線に互いへと向かっていた影が、やがて混じり合う頃─── 彰利 「星皇十字剣!!」 俺は力を込めた剣を十字に振り下ろし、 怯むことなく拳を振るったリザードマンを───塵に変えた。 彰利 「………」 ことが終わった時、俺は静かに敬礼をしていた。 剣が当たる瞬間、確かに笑っていたそいつの誇らしさに。 戦いに散ることを怖れずに立ち向かう勇気のある者こそが、 恐らくあんな顔をすることが出来るんだろう。 種族は違えど……俺はなにかを教えてもらった気分だった。 悠介 「……どうだった?」 今まで傍観していた悠介が俺に言葉をかける。 俺はそれに、素直な言葉を返した。 彰利 「俺、まだまだ人間としても死神としても小さいわ」 出た言葉は自然と苦笑いを作らせ、そんな俺を見て悠介も苦笑した。 表情こそは苦笑いだったけど、俺は───タラララスッタンタ〜ン♪ 彰利 「……ほんと人の気分に横槍刺すの上手ェなこのプレート……」 悠介 「まったくだな……」 俺と悠介は苦笑を笑いに変えて、しばらく洞窟の中に声を響かせた。 ───……。 ……で。 それは洞窟を出てすぐのことだった。 ゴブリン「!?」 彰利  「ま゜っ……!?」 悠介  「ゴッ……」 思わず出た妙な声───だが仕方あるめぇ。 目の前に散々探したゴブリンが居るんだ。 しかも本当にガーディアンヒーローズのゴブリンに瓜二つだ。 ゴブリン「ギャッ───ギャーーーッ!!!!」 ダタタッ!! 彰利 「あっ!こ、これ!何故逃げるのかね!!」 悠介 「彰利のブレイバーランクはさっきのままだし、     ランクネームは『戦いを知る者』に変わってるだけ───ってことは……悪ぃっ!     俺が居るからだ!追ってくれ彰利!」 彰利 「オーライ!うぉおおおおゴブリィイイイインッ!!!!」 ゴブリンを追うように疾駆。 我が全速力を以って、あげなデヴなど一瞬にして───ドトトトトトト!!!! い、一瞬にして……ズバタタタタタタタ!!!! 彰利 「は、速ェエエエエーーーーーーーッ!!!!!」 信じらんねぇ!あのデヴい体の何処にこれだけの速度機能が!? エィイくそ!!こうなりゃ死神モードになってでも追いついて───グルゥリ!! 彰利  「へっ───!?」 ゴブリン「ボンゲェエエエーーーーーーッ!!!!」 メゴシャアアーーーンッ!!! 彰利 「ヘペェイヤァアーーーッ!!!」 ゴブリンの振り向きざまの鉄棘棍棒(てっかくバット)
が俺の顔面にメガヒット!! うわ痛ェ!!これ痛ェよ!! ゴブリン「グッグッグッグッグ……」 思わず転倒した俺を見下しつつ、 手の上でポンポンと鉄棘棍棒を弾ませながら近づいてくるゴブリン。 こ、この野郎……!悠介と十分に距離を取った途端に態度が豹変しやがった……!! 彰利 「ンのやろっ……!!“戦闘開始(セット)”───轟天弦月流奥義、毒霧!!」 ブシィッ!! 口の中に仕込んでおいた霧袋を噛み切って噴射!だが─── ゴブリン「グッグググ……」 彰利  「ぬおっ!?」 毒霧は鉄棘棍棒によって遮られ、 ゴブリンは余裕な表情で立てた人差し指をチッチッチッと横に振った。 うわヤベェ……こいつすっげぇムカツク。 リザードマンみたいな正統派モンスターとの戦いの後だとさらにムカツク! いや、そりゃ人のこと言えた義理じゃないけどさ。 ゴブリン「グケェエーーーーッ!!!」 彰利  「───」 上から下ろすように振るわれた鉄棘棍棒を、 右腕一本を構えたスタイルでドゴォッ!と受け止める。 ゴブリン「ゲッ!?」 彰利  「これぞオリバの一撃さえも受け止めた奥義……龍書文ガード」 でも棘が刺さった所為で腕からチューーッと血が噴き出してます。 彰利  「………」 ゴブリン「………」 彰利  「サミング!」 ドチュッ!! ゴブリン「ウビーーーッ!!」 龍書文ガードに驚いてたゴブリンのつぶらな瞳にサミング一閃。 ゴブリンは体を折るようにして目を庇い、鉄棘棍棒を落としました。 俺はそれを拾い上げると、 先ほどゴブリンがやったようにそれを手の上でポンポンと弾ませながら近づいた。 ゴブリン「グググ……!?」 困惑声とともに、目は閉じたままだが俺を見上げるゴブリンくん。 そげな彼に─── 彰利 「このヤローーーッ!!     あんなチンケな技でこの将軍さまにケンカ売ろうなんて10年早いぜーーっ!!」 キン肉ドライバーを破ったのに何故かキレて キン肉マンをパイプ椅子で殴る悪魔将軍のように鉄棘棍棒での乱撃をプレセント!! メゴゴシャグチャベキャゴキャメキャゴボシャメゴシャギョパァンッ!! ゴブリン「ギギギーーーッ!!!」 加減無しの撲殺劇場開始から僅か数秒で、ゴブリンは塵と化しましたとさ。 彰利 「成敗!!」 トドメにズビシィとポーズ。 おお美しい……俺様美麗、超美麗。 悠介 「な〜にやっとるんだお前は」 彰利 「ムッ!?おお悠介」 追いついてきた悠介に向き直って親指を立ててみせる。 ランクチェンジの音は鳴らなかったが、一応ゴブリンをボコれたので気分スッキリ。 彰利 「さ〜てと。なんつーたっけか……ジークン、だっけ。目ェ覚ました?」 悠介 「いや、未だ気絶中だ。     軽すぎるから邪魔にもならないが……言われなきゃ忘れたままだった」 忘れてたんか。 まあそりゃ当然かもしれんが。 悠介 「次行くか?次って言っても時間まで何をするってわけでもないんだが」 彰利 「そうだなぁ。戦いのコツってのはなんとなく解ったし……」 俺の場合、ただの武力行使って言うんだろうけどね。 戦いなんてそげなもんデショ。頭あまり良くないから作戦なんざござーませんし。 悠介 「………」 彰利 「……悠介?」 悠介 「へ?あ……ああ、どした?」 彰利 「いや、そりゃ俺のセリフだけど」 悠介は自分の手を見てホウケていた。 あの悠介がホウケるってこたぁ……多分なにかあったんだろうけど。 悠介 「……いや、なんでもない。行こう」 悠介は苦笑を漏らしてディルゼイルを呼び出した。 気にはなったけど、悠介がディルゼイルに乗るのを見ると俺もそれに習った。 悠介 「ディル、レブロウドに寄ってくれ。今度こそあそこのジジイに人罰を加える」 ディル『飽きないな、王よ』 悠介 「飽きる飽きないの問題じゃないんだけどなぁ」 ディル『それよりいいのか?なにやら本調子ではなさそうだが』 彰利 「オ───やっぱそうなん?」 悠介 「……気にするな。休めばなんとかなるさ」 言って、やっぱり自分の手の平を見下ろす悠介。 手の平に何があるのかは知らんが─── とりあえずディルゼイルは俺達を乗せて空へと舞った。 ディル『レブロウド、だな。     随分西の方まで来てしまったな、このまま西へ飛んだ方が速そうだ』 彰利 「それでなくても速いだろうに」 悠介 「同意見だ」 ディル『効率問題のことを言っているのだがな───、……!?』 悠介 「───!!」 彰利 「へ?」 一瞬にして、悠介の目が驚愕の色に変わった。 その視線を追うように後ろに振り向けば───空を浮く巨大な蒼竜を視認した。 瞬時に思考が停止して体が完全に動かなくなった。 ……これは恐怖だ。 目の前に絶対的とも思える存在…… きっとこれから俺たちが突撃することになるであろう対象が、そこに存在していたのだ。 ───だが。 その恐怖は目の前に出現した黒い穴によって掻き消された。 ……いや。詳しく言えば、 創造したブラックホールに俺を突き飛ばした悠介の行動によって掻き消された。 驚いた俺はブラックホールに転移を強制されながらも悠介に向き直り─── けれど、きっと後に続くだろうと思っていた悠介は苦しそうに片膝を着いて、 ブラックホールに飛び込むことはしなかった。 ……それで全てを理解した。 悠介がホウケていたことや、自分の手の平を見てたこと。 恐らく、ベヒーモスとの戦いの中で無茶な創造をしすぎた所為で、 満足な創造が出来ないでいたんだ。 だってのに俺なんかを逃がすために創造を行使して─── 彰利 「っ───悠介ぇええええええーーーーーーーっ!!!!!」 ───ブラックホールによって黒く塗りつぶされてゆく光景が、 蒼竜の口から放たれた光によって真っ白に染まってゆく。 目に見える視界……手を伸ばそうとしても届かなかった視界の先で。 光に包まれながら俺に笑いかけた悠介の姿が…… 気を失う前の俺が見た、最後の景色だった───。 【ケース05:リヴァイア=ゼロ=フォルグリム】 ───……。 オウファ「では……シュバルドラインを倒したという地界人は連れてきたんだな?」 リヴァ 「ああ。なにもかも貴様の思惑通りに進んでいるぞ」 オウファ「フン……思ってもないことを言うなリヴァイア。      御託を並べるよりもまず、私を殺したくて仕方が無いのだろうに」 リヴァ 「死んでくれるのなら魂のレベルから分解して塵にしてやるさ。      なんだったら存在過程の根本から消してやってもいい」 オウファ「リヴァイアァ……出来もしないことを言うな。      私の手にこの水晶の檻がある限り、      水晶の檻はもちろん持っている私にさえ魔術も魔導も法術も式も効かない。      唯一絶対の弱点である物理的攻撃でさえ、仕掛ける猶予も与えない。      お前が構えた瞬間に私は水晶を持つ手に力を込めるだけの時間があればいい。      万策が尽きているのなら従え。盟友を失いたくはあるまい?」 リヴァ 「……相変わらずお前の思考回路にはヘドが出る」 レファルド皇国との通信を設けたはいいが、 先ほどから怒りで頭の中がどうかしそうだった。 ゼロは水晶が割れた程度では死にはしないが、 それでもあいつを傷つけたくない理由がある。 あいつはわたしが守らなければならない。 そのためには、たとえ誰を裏切ってでも─── オウファ「それで。その地界人とやらは何処だ?」 リヴァ 「知らないな。そこらを動き回ってるんじゃないか?なんなら探してみればいい。      お前の大好きな『皇国の民たち』ならすぐに探してくれるんじゃないか?」 オウファ「───……」 ピクリ、とオウファの顔が引き攣る───怒った証拠だ。 リヴァ 「感に障ったか?ああだが何も怒ることはない。      そんな怒りなぞ、お前が吐く言葉や二酸化炭素、      貴様という存在に対するわたしの怒りに比べれば、遙かに薄っぺらなものだ」 オウファ「貴様……我が手の内にゼロが居ることを忘れたか?      『魔人』と呼ばれたこいつも、今や俺の一存で簡単に殺せるんだぞ!」 リヴァ 「勘違いしているようだから言っておく。      そいつに傷のひとつでも付けてみろ……貴様、来世は永劫に来ぬものと思え」 オウファ「───!」 オウファは肩を跳ね上がらせ、だが息を整えるとわたしを見下してきた。 オウファ「な、なんだ……?同条件だとでも言いたいのか?      脅す側と脅される側ではないとでも……」 リヴァ 「フン、性根の割には頭が回るじゃないか。ええ?オウファ。その通りだよ。      貴様はその水晶を持っているから存命出来ているだけに過ぎない。      貴様がそれを割った瞬間、貴様は確実に『生』とは無縁の塵と化すだろうよ。      ───あまりわたしを甞めるなよオウファ」 オウファ「……フ、フン……強がりを。      どの道この水晶が私の盾であることに変わりは無いではないか」 リヴァ 「だったら肌身離さず持ってるんだな。      お前の手の内にある間は大人しくしておいてやる」 オウファ「───チッ!」 ブツンッ……通信が一方的に切られた。 まあいい、下衆の顔など長く見る価値もない。 リヴァ「ゼロ……」 ……死なせなどしない。 たとえ不老不死だろうが、苦しいものは苦しいし、痛いものは痛いだろう。 そんなことをさせないためにも…… リヴァ「蒼竜王への突撃……避けては通れないか」 勝つなど不可能だ。 力を封じられたシュバルドラインでさえ、どう足掻いても勝てぬと理解できる強さだった。 それ以上と、人間が戦う……?馬鹿な、そんなものは無駄死にだ。 リヴァ「……だが」 それでもあいつの命には代えられない。 あいつだけはどんなことをしても助けなければいけないのだ。 リヴァ「………」 検察官と悠介の信頼を裏切ってしまうことになるかもしれない。 勝てぬと解っている戦いに連れ出すなど、死ねと言ってるのと変わらない。 しかし、それでもわたしは───…… 【ケース06:弦月彰利/信じること】 ───………… 彰利 「───……っ!?」 意識が戻った刹那、俺は飛び上がるように体を跳ね上がらせた。 すぐに辺りを見渡す、が─── 彰利 「……お、おい……」 その場にあるのはジークンの姿と緑に包まれた大きな城だけで、 肝心なものの存在が決定的に欠けていた。 彰利 「ゆ、悠介……?冗談だろ……?隠れて脅かそうってんだろ……?     ははっ……に、似合わねぇからさ……出て、こいよ……」 辺りが異様に静かだった。 思考が困惑しか回転させず、訳も解らないままに叫びたくなる。 けれどその前にやることがあった。 悠介の気配を探ることだ。 彰利 「は、は……大丈夫、大丈夫だ……絶対居るから……。     近くに居るに決まってんだ……あいつあれで、ふざけるの好きだから……。     こうやって調べようとすると出てくるんだ……はは、お見通しだっての……」 気配の探知を開始する。 けれど……もちろん俺を驚かすような存在は何処にもない。 やがて─── 彰利 「なんの冗談だよ……!オイ……!!悠介!悠介ぇえっ!!!」 ───俺は、あいつの気配がまるで感じられないことに絶望した。 死んだ……?あいつが……? 彰利 「気配消してるだけなんだろ!?     鎌取り出して死神化を解除してから気配消したとか     そんな手の込んだことしてるんだろ!?出てこいよ!いい加減俺でも怒るぞ!?」 ……叫べど、返事なんて返ってきやしない。 ただ時折に吹く風が草花を揺らす音が、ただ耳に残ってゆく……。 ───嘘だ。嘘だ……嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ、嘘だ……!!! あいつが死んだ?死んだだって!?ふざけるな!そんなことがあってたまるか!! 気配を探る時に何処か見逃したんだ!もう一度─── 彰利 「あ───いや!あれがあった!───悠介に“送信(トランス)”!」 送話の式だ。 こんな時にこそ使わないでどうする。 彰利 「そうだ……使わない手は無いんだ……。だから───」 ……だから、早く出ろ……!出て安心させてくれよ……!! くそ……くそ!くそくそくそくそぉっ!!どうしてだよ!どうして出ねぇんだよ!! 彰利 「だめだ……落ち着け……!落ち着くんだよ、俺……!!」 自分を見失うな……そうなったらその時点で自分は暴れ出しちまいそうだ。 ……そんな、自分の精神との葛藤をしている時だった。 俺の傍で動く存在があったのだ。 ジークン「ウ、ウググ……?」 彰利  「………」 それは……ようやく目を覚ましたジークンだった。 だが、それがなんだというのだろう。 俺は親友であるあいつにこそ傍に居てほしいと思ったのに……。 彰利  「今さらお目覚めかよ……どんな気分だ?」 ジークン「……ウィ?」 知らず、口調に『黒』が混ざっていた。 罵倒するつもりも無いのに、嫌味が混ざったような声が自然に喉から漏れてゆく。 ジークン「……我は恐怖を乗り越えた。目覚めは最高だ。      最高だが……これは一大事ぞ。どうやらお連れが大変な様子と見る」 彰利  「だからどうだっていうんだよ……」 ジークン「フッ……探してやろうって言ってンのよ(われ)ァ」 彰利  「───なに?」 その言葉に苛立ちが消え、しかし増しもした。 自分が必死になって探していた気配をこいつが見つけられるとでもいうのか? ジークン「二度も助けられては恩を返さんわけにもいかねぇザマス。      どれどれ……丁度ここはチャイルドエデンみたいだから、      カルナくんに渡した麦茶を飲ませてもらってTPを回復しよう」 彰利  「……?」 ジークンがヒタヒタと歩き、緑に包まれた城の門の近くに手を付いた。 すると───ペッペケペー!と奇妙な音が鳴り、見上げる城壁の上に人が現れる。 男   「ジークンかー?どうしたんだー」 ジークン「ヤー、カルナくん。実はちょいと麦茶を分けてほしいんザマス。      まだ残ってるよね?」 カルナ 「ああ、一応あるけど……」 ジークン「それをおくれ?恩人が大変なことになってるようなんで、      TPが必要なんザマスよ」 カルナ 「お前の恩人……?怪しいヤツじゃないだろうな……」 ジークン「そりゃどういう意味ぞッッ!!?      いや、そりゃあモミアゲがセクシーなヘンなヤツだったザマスけどね」 カルナ 「モミアゲって……もしかしてあいつか?」 ジークン「知るかボケ」 カルナ 「口が減らねぇな……ほら」 カルナ、と呼ばれた男が城壁の上からポットを投げる。 ジークンはそれを針金のようだけど 柔軟性のある腕なのかなんなのか解らないものでキャッチした。 やがてポットに目一杯入っている……(麦茶か?)……を一気にギュポンッ!!と飲んだ。 ジークン「フゥォオ……蘇るようザマス」 彰利  「麦茶なんか飲んでどうしようってんだよ」 ジークン「やれやれ……なに怒ってんのだこのボケは……。      いいかねボケ、これから我はミル・棒人間として能力を発動させるザマス。      邪魔するんじゃねぇザマスよ?」 彰利  「………」 返事をするのも馬鹿らしくなっていた。 こんなヤツに構ってる暇は無い……悠介を探さないと─── ジークン「我は『時の理力』を手に入れた……故に我は歴史の証人となりましょう!      ディメンションフォース!!      サーチモード発動!対象はセクシーなモミアゲの地界人!      ……………………該当アリ、生命反応確認。生きてるザマスよ?」 彰利  「───!?本当か!?」 ジークン「……なんザマスかてめぇ……この我を疑ってんのかボケ……」 彰利  「俺は『本当か?』って訊いたんだよ……とっとと質問に答えろハゲ……」 ジークン「ハッ……!?な、なんてこと言いやがんだボケェエーーーーッ!!!!      我ら棒人間は生命の息吹を体感した頃から髪なんぞ無い!見くびるなボケ!」 彰利  「どうなんだよハゲ!悠介は生きてるのか!?どこに居るんだ!!」 ジークン「モミアゲは生きている!でも何処かは死んでも教えねぇザマス!      人が親切心を出してやればなんザマスかまったく!!      我ァもう知らん!てめぇになんぞ恩を感じる必要など皆無ぞ!      我はひとりでモミアゲに神々の泉で作った超麦茶を届けに行くザマス!」 彰利  「俺も連れてけ!!何処だ!」 ジークン「クックック……貴様はそこで爪でも噛んでろボケめ……。      我はその間に届けてくるザマス。モミアゲは相当弱ってるようだから、      飲めば深淵から回復する『超麦茶』はかなりありがたいに違いねぇザマス。      ───……それではごきげんよう!!」 ビジュンッ!! 彰利 「あっ───てめっ!」 驚いたことに、ジークンはその場から消え失せてみせた。 走り去ったとかではなく、次元移動のようなもので実際に消えてみせたのだ。 つまり……逃げられた。 彰利 「くそっ!」 舌打ちをした。……したのに、心は驚くほどに安堵していた。 ───悠介が生きてる。 真実かどうかは解らないままにしろ、 その言葉は俺の濁った気持ちも余裕の無い気持ちも払拭してくれた。 彰利 「……俺が一番『あいつが生きてる』って信じなけりゃならねぇんだった。     それなのにあーだこーだ焦っちまって……」 情けない限りだ。 親友のためにあそこまで取り乱せる自分が誇らしくもあったけど。 どちらにせよ、俺は俺で今の自分に出来ることをすればいい。 ジークンが何処に行ったのかは知らんが、 あいつが悠介を助けるようなことを言ってたのは確かだ。 今は、その可能性に賭けよう。 彰利 「よし、まずはリヴァイアの所にでも行ってみよう。何処が東西南北か解らねぇ」 地図を広げてみても、文字すら解らないから動きようがない。 そう思った俺は、俺を見下ろしているカルナってヤツを一度見た後、 リヴァイアの工房へと転移した。 【ケース07:ジークン/ヨー!グッドサイダー】 ビジュンッ! ジークン「ヘロウ」 我は次元移動を行使して集落へと降り立った。 すぐにカルナくんに貰った麦茶用の豆を確認───ウィ、ござるデショ。 ジークン「したらすぐに製作にかかりましょうぞ!クッキングスタートゥ!!」 ヒタタタタと集落の中央にある水を溜めてある場所へと走り───絶句。 ジークン「ギョオ!?ね、無ェザマス!神々の泉の水が無ェザマス!!」 何事ぞ!?これはいったい─── ジークン「つ、集え!我が眷属たちよ!」 手をクルリと曲げて口に当て、口笛を鳴らす。 すると瞬時に我がもとへ集い───我を集団リンチにする眷族たち!! ジークン「ギョッ……ギョォオオオオーーーーーッ!!!      な、なにしやがんだボケェーーッ!!」 シークン「てめぇえええっ!!!集落が大変な時に何処行ってやがったんだコラァッ!!」 スークン「縄張り争いがあることを教えといただろうが!!」 ニークン「死ね!死んでしまえ!!」 ジークン「ええい離せィボケども!!」 ドゴベキボコベコガンゴンガン!!! 棒人間『ギャーーーッ!!!!』 円の動きとともに攻撃を仕掛けてきた棒人間どもに足払いをキメると、 それぞれが躓いて隣の棒人間にヘッドバッド。 一瞬にしてドミノ倒しの要領でそれぞれにヘッドバッドした棒人間どもが動かなくなった。 ……やっぱり弱いよな、我ら……。 ジークン「しかしこれは困りものぞ……泉の水が無ければ回復は出来ねぇザマス……」 取りに行くしか無ェザマスね。 やれやれザマスが…… 二回も助けられたからには恩を返さなければ王としてクズに違いねぇザマス。 ならば最高の麦茶を作ってみせようぞ……我の全技術を以って。 我はまず神々の泉へとディメンションジャンプしてガボシャアアーーーーンッ!!!! ジークン「ギョォオオオオオオーーーーーーーッ!!!!!」 ……座標を誤っていきなり泉の中に落下した。 もちろん丸い顔と細い棒で出来ているこの体に水抵抗などある筈もなく、 いくら水を掻いたところで浮くことも出来ず─── 我は浅い泉の底にコポコポと沈んでいった。 Next Menu back