───FantasticFantasia-Set07/グラム───
【ケース17:ジークン/ゴールイン】 ヒタヒタ……ヒタ……ドシャア。 ジークン「つ……着いたザマス……」 とある集落に辿り着いた我は、走り続けた体の限界を迎えて倒れた。 麦茶は死守したが、 我自身は胃液吐かれるわ骨投げられるわ噛み付かれるわで大変ザマした……。 しかし我はついにやったのだ……モミーが居る筈のこの場所へと辿り着いたのだ……! じいさん「戻ったか?……って、なんじゃお主」 達成感に感動していると、ひとりのじいさんが我に語りかけてきた。 これは丁度いいザマス、こいつにモミーの存在を確定してもらおう。 ジークン「我はジークンぞ。この場所に居る筈のモミアゲ地界人にお届け物を持ってきた」 じいさん「モミアゲ……おお、あやつか。あやつならここにはおらんぞ」 ジークン「なんですと!?」 じいさんの何気ない言葉に大変なショックを受けた。 馬鹿な……ここにモミーが居ない……!? だったらここまでの苦労はいったい……!! ジークン「ジジイ、モミーは何処に行ったのかね?この我に話して聞かせるザマス」 じいさん「神々の泉へ行った。神々の泉の水が剣を作るために必要だったんでな」 ジークン「水?水って───」 手に持つ麦茶入りのポットを見る。 ……混じりッけなしのこの美味さ…… 我ら棒人間だけの麦茶の製法、ビタミンパワーのエネルギー…… 神々の水としての効果は一切殺してはいない筈だが、この至高の一品─── 極飲以外の目的に使用するなど…… ジークン「ッ………!!」 じいさん「……ウム?どうしたんじゃ、そんなに汗なんぞ」 ジークン「ギョオ!?な、なんでもねェザマス!!      汗なんて飾りぞ!お偉いがたにはそれが解らねェんザマス!」 じいさん「いきなりなにを言い出すんじゃ……。ところでそれは伝説の麦茶かの?」 ジークン「───!ジジイ……てめェやるね?      まさかこれを一発で麦茶と解る空界人が居るとは……」 空界人は麦茶なんぞ知らない。 知っているとすれば、我ら棒人間が麦茶の素晴らしさについて教えてやった輩だけぞ。 いやはやこんな辺境にも麦茶ファンが居るとは……さすがは麦茶ぞ。 じいさん「知っておるぞ?『麦茶』というものは棒人間たちが特殊な製法で作るものだと。      チャイルドエデンでしか取れない豆と、      神々の泉の水を使い───ムオゥッ!?」 ジークン「ギョッ!?な、なんザマスかてめェ!!いきなり叫ぶんじゃねェザマス!!」 じいさん「お、お主!その麦茶───少し分けてくれんか!?どうしても欲しいんじゃ!」 ジークン「ジ、ジジイ……」 ジジイが一心不乱に頼んできた。 その目は……ウィ、本物の目だ。 興味本位ではなく、本気でこの麦茶を欲してる目ザマス。(欲しいのは神々の泉の成分) ジークン「ウィ、いいザマショウ。しかしちょっとだけザマスぞ?      全部飲まれたら恩が返せなくなっちまうからね」 じいさん「構わん構わん!もらえるのならそれでええわい!」 ジークン「うっふっふ、仕方の無いジジイザマスねェ。      ちょほいと待ってろジジイ、今分けてやるザマス」 我は自分用に持ってきたマイグラスを取り出し、そこへ麦茶を─── じいさん「ああいやいや、それには及ばんよ。器くらいワシも常備しておる」 マイグラスに麦茶を入れようとしたところ、ジジイが綺麗な木の器をスッと差し出した。 やれやれ、ここまで麦茶を欲していたとは……ジジイ、アンタステキぞ。 フッと笑い、我はその器にコポコポと麦茶を注いだ。 じいさん「おお、助かるぞ。ロッタ!ロッタァッ!!」 ジ−クン「ウィ?」 麦茶を手に入れるや否や、ジジイが老体とは思えん速度で走ってゆく。 やがてひとつの小屋のようなものの中に入ってゆくと、他のものどもの声も響いた。 ジークン「……もしやここは密かな麦茶愛好家の集落?」 そうだ、きっとそうに違いねェザマス。 走り出してしまうほど嬉しかったとは……我も分けてあげた甲斐があるというものぞ。 どれ、少し様子を見てみようか……。 ───……。 ……十秒後。 ジークン「離せぇっ!!キサマ離せぇえええええっ!!!!      ギョオォオオオ麦茶!麦茶がああああああああああっ!!!!!」 我はひとりの男とひとりの女に押さえつけられていた。 アンリミテッドストリームで撃退しようとするも、 この集落に辿り着くまでにTPを使い果たしてしまったらしく、使えずにいた。 じいさん「もう少し……もう少しじゃ……!」 じいさんは我が分けてやった麦茶を、あろうことか分離機にかけていやがるのだ。 混ざった液体を分離するといわれる魔導具らしいが、 そげなもんに我が渾身の麦茶を入れるとは───!! ジークン「ぉおおおっ……!!ォオオオオオッ!!!!」 エルフ女「うわっ!血の涙流し始めましたよ!?」 ドワーフ「棒人間のくせになんて力だ……!!」 じいさん「もう少しじゃ!辛抱せい!!」 ジークン「キサマら許さんぞ!絶対に、絶対に許さん!!後悔するなら今が旬!!」 ガサガサガサガサ……!!! エルフ女「うわっ……手足がガサガサ動いてコックローチみたいで気持ち悪い……!」 ジークン「誰がゴキブリぞッッ!!?」 じいさん「よし分離した!      あとはこの神々の水と客人の持っていた竜の涙と魔物の硬貨で───!」 ジジイが謎の行動に移った。 硬貨を砂になるまで砕き、その上に水と小瓶に入った液体を流し込んだのだ。 それを勢いよく混ぜ、それがしばらく続いた頃───硬貨の砂が光を放つ砂になった。 じいさん「魔導の砂の完成じゃ……あとは───」 ウニョニョニョニョ……ブスッ。 エルフ女「いたァアアーーーーッ!!!?」 ドワーフ「レラッ!?」 手を伸ばしてエルフ女の手に刺突(シトツ)
。 その瞬間に我の右半身は自由を手に入れ、 完全な自由を得るために左半身を押さえつけているドワーフの手にも刺突をブスッと贈呈。 ドワーフ「いッてぇっ!!」 その拍子に解放された我はすぐさま退き、ポットを手にして目を輝かせた。 ジークン「いい度胸ぞキサマら……この我の麦茶を飲まずに利用するとは……」 マイグラスに麦茶を注ぐと、ゆっくりと飲んでゆく。 ジークン「ジジイ……キサマは我の親切心を踏みにじったのだ……。      宣言しよう、キサマは若者にまで時間を遡らせて罵る」 じいさん「どういう宣言じゃ……」 ジークン「馬鹿め!我らはコロがしだけはしねェのザマスよ!!      だからその立派なお髭がしばらくは触れんように時間を遡らせてやる!」 じいさん「時間を───?そ、そうか!      お主がジークン……!ミル・棒人間のジークンか!」 ジークン「さっき自己紹介しただろうがボケ!もう忘れたの!?」 エルフ女「長老……!」 ドワーフ「長老!」 じいさん「下がっておれ!      またとないチャンスじゃ……この魔導の砂、今ここで時の砂に変えるぞ!」 ジークン「アンリミテッドストリーム!!」 ズピシュンッ───どっかぁあああああああんっ!!!! じいさん「ムォオオオッ!!!」 エルフ女「長老!?」 ジジイに目からの光線を発射───だが避けられた。 ジークン「避けるなんて卑怯だぞボケ!大人しく死ね!」 じいさん「お、お主コロがしはしないんじゃなかったのか!!」 ジークン「言葉のアヤぞ!!では今こそキサマが若人に戻る瞬間!!“次元の理力”(ディメンションフォース)!!」 我が右手に次元の力よ宿れ! ジジイに向かってヒタタタタと走り寄り、跳躍とともに次元の力を解放!! しかしジジイは何を思ったのか、先ほど作った砂の入った器を我が手に押し付けたのだ! 途端─── ジークン「ギョォオオオオオオーーーーーーーーッ!!!!」 ズズッチュゥウウウウウン!!!と我の体の中から何かが吸い取られてゆくではないか! すぐに離れようとしたがその余力さえ奪われ─── ───……。 ……。 ????「あの……カサカサに干からびて動かなくなっちゃいましたよ……?」 ????「うわー、まるで干物だなこりゃ……」 ????「よ、よし……時の砂が完成したぞ!      これでこの塊の時を戻せば、元の素材へと戻る筈じゃ!!      とはいえ───ロッタ。今度こそ次は無いぞ?竜の涙はもうない。      時の砂で時間を戻せるのは一度っきりじゃ。一度使えば壊れてしまうからの」 ????「時を戻すって……この場所のですか?」 ????「バカモン、そんなことをしたら戻せるのはせいぜいで五時間程度じゃ。      じゃから時間を戻すのはこの塊の時間だけじゃ。      これらが素材に戻れば言うことなどないのじゃからな。……始めるぞ?」 ????「は、はい!」 …………声が聞こえる……忌々しい者どもの声が……! お、おのれ……!我は死なんぞ……!必ず……必ずキサマらに復讐してくれる……!! ……あ、でも今はムリ……───意識が……意識が───…… 【ケース18:弦月彰利/馬鹿者】 ゴンゴンゴンゴンゴン───目の前の巨大な飛空船が奇妙な音を出していた。 名を魔導船。 幾つも並べてある黒塗りの船に、うざったいくらいの人が乗り込んでゆく。 ───時は昼。 俺とリヴァイアは皇国レファルドに来ると、馬鹿キングに魔導船に乗るように指示された。 危うく殺しにかかろうとした時、リヴァイアが止めてくれてよかった。 彰利 「悠介は……」 リヴァ「居ない、な。遅れているのか、それとも───」 彰利 「………」 悠介は現れなかった。 それが俺の心をどうしようもないくらいに破壊衝動で満たしてゆく。 今すぐ暴れ出して、この破壊衝動を掻き消したいのに─── その心の中にこそ、それをやったら戻れないと懇願する俺が居た。 彰利 (……大丈夫、落ち着け───) あいつはきっと大丈夫だから。 すぐに来るさ……きっと来る。 俺は気を紛らわせるためにリヴァイアに向き直った。 魔導船の構造だのなんだの、くだらないことを話し合っていれば気も紛れるだろう。 けど─── リヴァ「………」 彰利 「オウ?」 そのリヴァイアの様子がヘンだった。 これは───そっか。 彰利 「リヴァイア……怖いのか?」 リヴァ「検察官……ああ、情けないな。至高魔導術師ともあろう者が……」 彰利 「いや、クラスなんて関係ないだろ。     こんな大勢の居る場所で厠行きを我慢してりゃあ」 瞬間、我が右頬を的確に捉える拳がミゴシャッ!!! ───……。 彰利 「おぶっ!おぶぅっ!!」 喋り途中だった所為で舌噛んだ……おお痛い。 リヴァ「はぁ……あのな、検察官……こんな状況でなにを言い出すんだお前は……」 彰利 「今のはなかなかでしたよ……?」 リヴァ「わたしはべつにそんなもの我慢してなんか───あ」 彰利 「ウィ?」 リヴァイアが数瞬だけ行動を停止した。 もしや……ついにビッグウェーブが? 彰利 「我慢はいけません!動けなくなる前に厠へ!」 刹那、我が鼻っ柱を捉える拳が眼前へとゴチャアッ!!! ───……。 彰利 「フバーハ!!フバッ……フバーハ!!」 鼻が見事に潰された……血が……止まらねぇさ……。 鼻で息が出来ないもんだから口で息してるんですがね? 口の方も舌噛んだから痛いのなんのって。 リヴァ「まったく……検察官、場の空気を柔らかくするのは勝手だが、     もう少し方法っていうものを考えてくれ」 彰利 「え?なにそれ」 リヴァ「なにって、この暗い雰囲気を壊そうとしてあんなことを言ったんじゃないのか?」 彰利 「……え?激烈もれそうだったのを我慢してたから暗かったんじゃないの?」 次の瞬間、我が顎を的確に捉える光輝く魔導ナックルがコペキャアッ!!! ───……。 彰利 「あがぁ〜〜〜……あがぁ〜〜〜〜……」 顎に攻撃を喰らう前に、 郭海王の消力の真似をして顎を自ら外したんだが……あまりの痛さに涙が出てきた……。 しかも避けるタイミング誤って、外れた顎部分殴られたからもう痛いのなんのって……。 リヴァ「……もういい、魔導船に乗ろう」 彰利 「あがぁ〜〜〜……」 鼻を潰し、鼻血を盛大に出し、外れた顎の中の舌から血を流すボクは、 リヴァイアに連れそうように悠然に魔導船へと乗り込みました。 そこに居たのは─── グルグルのドリル髪をしたおなごと、ひとりの老人だった。  ◆グルグルのドリル髪───ぐるぐるのどりるがみ  古来よりこの髪型は『かわい毛』と呼ばれ、『可愛げがない』という語源はここにある。  よく金髪お嬢がやる髪型だが、そのお嬢自体に可愛げがないのは  グルグルのドリル髪自体が『かわい毛』だからである。  故に常に傲慢であり、他者を見下す態度をとってしまうのだという。  *神冥書房刊『ヴァルキリープロファイル/アリューゼの囁き』より ドリル「あら?リヴァイアさん、ダーリンは何処?」 リヴァ「悠介ならまだだ。検察官、する必要もないが一応紹介する。     このドリルの名はルーゼン=ラグラツェル。     わたしと同じ、空界至高魔導術師のひとりだ」 ドリル「誰がドリルよっ!!ちょっとリヴァイアさん?     しばらくナマで見ない内にまた随分と生意気になったんじゃなくて……?」 リヴァ「そういうお前は化粧に厚みがかかったな。臭いから寄るな」 ドリル「なっ……なんですってぇ!?」 リヴァ「そしてこの老人がバルグ=オーツェルン。     空界至高魔導術師のひとりで、わたしの母の知人でもある」 バルグ「バルグじゃ。よろしゅうの、若いの」 シャクンッ! 彰利 「よろしゅう」 顎を直して設楽(したら)さんの真似を発動……だからどうってこともない。 ドリル「で、坊や?あなたはなんなの?」 彰利 「俺はハーン!よろしく頼むぜ!」 リヴァ「検察官……それはもういい……」 彰利 「そ、そうですか」 結構好きなんだが。 ガーディアンヒーローズって名作だよね。 彰利 「俺は弦月彰利でござる。よろしゅうドリルさん」 ドリル「ドリルじゃないわよ!」 彰利 「山崎竜二って呼んでいい?」 ドリル「わたしはルーゼン……ルーゼン=ラグラツェルよ!よく覚えておきなさい!」 彰利 「よろしく山崎さん」 ドリル「……この坊やコロがしていいかしら……」 彰利 「お?なんだ?やンのかコラ」 モシャアアアと山崎さんが闘気を出す中、俺は軽いフットワークとジャブをして構えた。 リヴァ「ふたりとも落ち着け……わたしたちが争ってどうなるわけでもないだろう……」 彰利 「押忍!どうなるわけでもございます!     山崎さんの厚化粧を全部取ってすっぴんにしてみたいです!」 ドリル「冗談じゃないわ!このお化粧をするのにどれだけ時間がかかると思って!?」 彰利 「知らん!」 ドリル「こ、このっ……よぅくお聞きなさい坊や!わたしは───」 彰利 「山崎さん山崎さん!!蛇使いやってみて蛇使い!シャーーーッ!って!!」 ドリル「聞けぇええええーーーーっ!!!」 彰利 「ところでキサマ、さっきダーリンとかほざいてたよね?     しかもリヴァイアの返答が『悠介だったらまだだ』。     それってなにか?悠介のことをダーリンって呼んでるってことか?」 ドリル「あなたには関係のないことだわ。     わたしがあの人をどう呼ぼうがあなたには関係ないもの」 彰利 「じゃあ俺がキミのこと『ドボルザーク』って呼んでもキミには関係ないよね?」 ドリル「ありまくるわよ!!」 彰利 「やかましい!!キッサマよりにもよって悠介をダーリンなどと!!     あたしゃそんなもん認めませんよ!!実家に帰れこの泥棒猫!!」 ドリル「何を訳の解らないこと叫んでいるの!あなたこそ出ておゆきなさい!!」 彰利 「おぉおーーっ!?やるってのかコラ!言っとくが俺ャア弱ェぜ!?」 ドリル「へえ!?それじゃあどれだけ弱いか試して……弱っ───弱い!?」 彰利 「ブフーーッ!!どれだけ弱いか試すだってこのドリル!     ちょっと聞いてよリヴァちゃん!!このドリル馬鹿だぜ馬鹿!!馬鹿ドリル!!」 ドリル「ギ、ギィイイイイーーーーーーッ!!!!」 リヴァ「はぁ……」 バルグ「ほっほっほ、こりゃあ賑やかになったもんじゃあ」 ───山崎さんと騒ぐ中、魔導船とやらはゆっくりと動き出した。 潜水艦ヨロシクの小さな窓から見える大地はゆっくりと離れてゆき、 プロペラもなんにもない魔導船は確かに空を飛んでいた。 彰利 「おお……こりゃあ素晴らしい。実にファンタジー」 ドリル「フン、技術遅れの地界人らしい反応だこと。     この船が浮くことがそんなに珍しい?」 彰利 「ねぇリヴァっち、この船って山崎さんが作ったの?」 ドリル「山崎じゃないわよ!!」 リヴァ「リヴァっちはやめろ……魔導船を作ったのはわたしの母が最初だ。     それを元に、数々の魔導術師が集まって量産していった」 彰利 「そうなん?なぁ〜んだ……     偉そうに威張りくさりおって……無い胸張って見下してんじゃねぇよドリルが」 ドリル「ちょっとあなた……今の言葉もう一度ハッキリ言ってみなさい」 彰利 「カスが!!」 ドリル「そんな言葉一言も言ってなかったでしょう!!」 彰利 「お〜?聞こえてたくせにわざわざ聞きなおしたのかねぇ〜〜〜?     しょぉおおおがねぇえええなぁあああ〜〜〜〜!!!     まったくよぉおおお〜〜〜〜しょぉおおおおがねぇええええなぁあああっ!!!     そこまでいうならよぉおおおお言ってやるぜナランチャァアア〜〜〜っ!!!!」 ドリル「全力を以って敵と見なすわ……地獄に堕ちろコノヤロウ」 彰利 「ブチコロがしてくれるわぁあーーーーーーーっ!!!!」 ドリル「やかましぃいいいーーーーーーーっ!!!!!」 やがて始まるドンパチ。 リヴァイアとバルグのじっちゃんは他人のフリをするかのように外の景色を眺めている。 他人のフリするっつーてもこの船に居るのって俺たちだけだから意味ないのに。 ドリル「覚悟なさい……!謝るなら今の内よ……!」 彰利 「剛麺ナサイヨ〜。よし、謝ったから許せ」 ドリル「コロがすわ」 彰利 「いきなりウソかよ……これだからヤクザでドリルな山崎さんは……」 ドリル「山崎さんじゃないわぁっ!!」 山崎ドリル(フルネームとして認識)が指に光を込めて式を描いてゆく。 俺はその隙にドリルさんの目の前に転移し─── ドリル「なっ───!?」 ブシィッ!! ドリル「くわっ!?」 毒霧を贈呈。 ドリル「あぐあぁあーーーっ!!目、目がぁっ!!」 彰利 「ややっ!?これ!そこは『あぁ〜〜、目がぁあ〜〜目がぁあ〜〜』でしょう!!     キミは英雄じゃない!」 バルグ「訳が解らんの……」 リヴァ「気にしていたら疲れるだけだぞ」 彰利 「あらヒドイ!!リヴァちゃんたらいつからそげに冷たい娘ッ子に!」 ドリル「こ、この……!もう許さなくてよ……!?」 彰利 「もうちょっと黙ってなさい!」 ゾブシュッ! ドリル「くあぁあーーーーーーっ!!!」 少し開いた瞳にサミング贈呈。 結果、山崎ドリルはひとりローリングクレイドルでその場を転がりまわった。 彰利 「おやおややんちゃな子だねぇ……     いくら飛空船が珍しいからってそんなにハシャいじゃって」 ドリル「こ、コロがす……!!ブチコロがしてさしあげますわ……!!」 彰利 「ややっ!?大変だドリルさん!外にドラゴンが!」 ドリル「えぇっ!?」 ガバッ!と起き上がるドリルさん。 すぐさま小さな窓へと走り─── 彰利 「ウソじゃ」 窓へと辿り着く前に言ってあげました。 すると阿修羅面(怒り)でこちらに振り向くドリルさん。 彰利 「よしドリル!そこで『カカカーーー!!』と笑うんだ!!     もしくは腕を二本生やして『波羅蜜多(ハラミツタ)ラリアット〜〜〜ッ!』とか言うんだ!     そしたら『すまなんだぁ〜〜〜っ』って盛大に謝ってやるから!さあ!!」 ドリル「波羅蜜多ラリアット〜〜〜ッ!!」 彰利 「ゲゲーーーッ!!!」 なんと! 驚いたことに血管ムキムキになったドリルさんが式を編んで自分の右脇に当てると、 そこから二本の腕が伸びてきた!! やがてそれを最初からある生腕に絡ませると阿修羅面(怒り)のままで疾駆! 彰利 「お、おわぁ〜〜〜〜っ!!!な、なにがいったいどうなってんの!?     まさかマジでやってくれるとは思わなかった!!     あ、いや!ちょっと待って!待って!!     ラリアットは痛そうじゃないけどそれよりキミの顔が怖い!!怖いって!!     キミどうやりゃそんな顔出来んの!?顔面神経痛!?     じゃなくて!ってあれ!?足が動かねぇ!!キッサマなにしやがった!!     え?少しだけ動きを止める式?───てめぇ汚ェぞ!!     や、やめろ!そげなの卑怯じゃねぇか!正々堂々と戦え腰抜けが!!     やめろ!やめヴァアアアアーーーーーーーッ!!!!」 【ケース19:晦悠介/屠竜剣】 ───体を引きずるようにして、ようやく集落へと戻った。 樹木を倒しながら森から出ようとしたのが良かったのか、 倒れた木々を伝っていけば迷うことなく集落に着いた。 それでもかなりの時間が経過していて、恐らく今はもう昼をすぎようとしている頃だろう。 悠介 「はっ……は……づっ……」 集落の入り口はひっそりとしていて、 だが奥から聞こえる何かを()つ音は俺に微かな期待を齎した。 悠介 「っ……、くそ……!」 急ぎたいけど体が動かない。 もしかしたら何かの偶然が重なって、剣を鍛てるようになったのかもしれない。 そう思ったらますます急ぎたいのに、もう走る力も残っていなかった。 けど─── 悠介 「……神々の水も次元虫ってやつも無しに、成功なんて……」 有り得ないだろう。 期待するだけ無駄だ。 ……無駄だ、と思った筈なのに。 悠介 「っ……!」 それでも俺の体はなにかを求めて歩いていた。 足を引きずるようにズルズルと。 やがて音の発生現場である錬成工房に辿り着くと、ゆっくりとその中へ入り───ガツッ! 悠介 「うあっ!?」 何かに躓き、体勢を立て直すことも出来ないままに倒れた。 瞬間、砕けていた腕に激痛が走り、視界が白く点滅する。 悠介 「かっ……はっ……!?」 それでもなんとか躓いたものを見た───ら、それはジークンだった。 ……探しても居ないわけだ。 こんなところに居たなんて───って。 悠介 「……あ、くっ……」 ポットの中に入った麦茶を発見した。 丁度良かった、喉が痛くなるくらいに喉が渇いていたところだ。 俺は床に転がっていたポットを手に持つと、 倒れた状態のまま口の中に流し込んで飲み下した。 すると───どうだろう。 あれだけ苦しかった体の軋みが薄れてゆくじゃないか。 そればかりか深淵に存在するルドラの反応が蘇り─── 悠介 「───これって」 思い出した。 棒人間が作る麦茶って、確か神々の泉の…… 悠介 「よし───!傷を癒して骨を元通りにする霧が出ます!」 イメージを解放し、いつも通り弾けさせる。 ───と、きちんと創造は成功し、俺の体が完全に回復する! 悠介 「お───おぉおお……!!おっしゃあああーーーっ!!!!!」 両手を上げて叫んだ……これが嬉しくないわけがない。 なんだかんだいって、コレが無くちゃしっくりこないのだ。 しかしこれくらいの量じゃああまり回復しないのか、またすぐにルドラの反応が弱くなる。 悠介 「………」 ジークンには悪いと思ったが、俺は麦茶の残りを全て飲ませてもらうことにした。 ご馳走さん、ジークン。 悠介 「……いや……本気でありがとうだジークン。     こんなに早く理力が戻るとは思わなかった」 試しに小さな黄昏を作ってみる。 ───……成功。 よし、異常はなさそうだ。 悠介 「よし、あとは神々の泉に行って水を───」 声  「その必要はないわい」 悠介 「へ?……って、じいさん」 工房の奥からのそりと現れたのは長老のじいさん。 その手には───紫色の鞘に納められた剣が握られていた。 悠介 「じいさん……それ───」 長老 「うむ。そこの棒人間のお蔭じゃ。     そやつの麦茶と次元能力のお蔭で時の砂が出来たんじゃよ。     あとは塊の時を巻き戻し、     それぞれの素材の姿に戻してやれば第一工程からやり直すことが出来た」 悠介 「それじゃあ」 長老 「……うむ。受け取ってくれるかの、客人。ワシの一世一代の最高作品、屠竜剣を」 悠介 「………」 差し出された剣を、おずおずと受け取った。 ……瞬間、その軽さに驚く。 鞘から抜いてみればシャアアと綺麗な音が鳴り、 刀身に至っては透き通ったガラスのように輝いていた。 長老 「ワシが作った、お主にしか使えん剣じゃ。     ところでお主───力はまだ戻らんか?」 悠介 「あ、いや───さっき戻った。今なら創造も可能だ」 長老 「おお、それは丁度よかった。お主……なにかこの剣に付加させてみんか?     どんなものでもええ。     武器にしろ魔力にしろ式にしろ、なんだって付加できるぞい」 悠介 「そうなのか?」 長老 「刀身がオーブと竜の牙と爪を溶かしたもので出来ておるんじゃ。     頑丈さはもちろん、オーブとしての能力付加も完備じゃわい」 悠介 「へえ……」 透き通る刀身と、鮮やかな造型の柄に鍔部分。 剣に対して『鍔』なんて言葉を使うかどうかなんて知らないが、 一目見て気に入ったことは確かだった。 屠竜剣……屠竜剣か。 長老 「どうする?付加をやめるか?」 悠介 「いや、とある武器を付加させたい。大丈夫か?」 長老 「ああ大丈夫じゃよ。どんな武器じゃ?」 悠介 「ん、ちょっと待っててくれ。───イメージ、解放。     思考を紡げ。意識を繋げ。異端の思考よ例外を創造れ。(連ねるは言。連言より軌道と成す。意は創造と化し、その在り方は正に人。)     矛盾を抱きつつ既存を創り、既存を抱きつつ矛盾を目指せ。(無二で在りつつ無二に在らず、唯一でありながら既に虚無。)     枷は己の心にあり。臆せぬ思考が既存を潰す。(束ねる思考は例外に堕ち、虚無なる無象は有象へ換わる。)     想像は留まりを知らず、想像は無限に換わり、創造すらも無限に換える。(その在り方は神が如く。越せぬ壁など我が身にあらず、我が意思こそが無限の自由。)     生きた軌跡は至福に遠く、その思い出は黄昏へと集約せん(ならばその在り方をここに示し、無限の自由を世界と謳え)」 イメージを深く深く染めてゆく。 黄昏を作り、だがより鮮明に。 その在り方の全てを超越にて創造する。 やがて俺の手に出現した武器は───“全てを切り裂く英雄の輝剣(バルムンク)”。 詳しく言えば、その『全てを切り裂く』っていうイメージを竜のみに絞った剣だ。 名は“屠竜剣(グラム)”。 バルムンクの別名だが、これこそ竜を切り裂いたと云われる伝説の剣だ。 イメージからの創造物でしかないが、それでも出来得る限りのイメージを詰めて創造した。 悠介 「これを頼む。出来るか?」 長老 「ほほっ……こりゃあたまげた。ほんに創造者だったとは。     あい分かった。実践するからよぅ見とれ、何かの役には立つじゃろ」 悠介 「……ん。頼む」 言って、じいさんに屠竜剣二本を渡す。 形が違うけど、そのふたつはどちらも屠竜剣の意味を持っている。 それを合体させるような気分は、なんだか嬉しいものだった。 長老 「よいかな?武具や魔導などを付加させる場合、     剣と柄の間のこの宝玉にそれらを埋め込むんじゃ」 悠介 「埋め込む?こんな小さいものにどうやって」 長老 「考えてもみぃ。     お主、召喚獣のオーブを持っとるなら召喚獣を連れておるんじゃろ?     じゃったら最初、こんなオーブのどこにあんなデカいもんが入ってたと思う」 悠介 「あ───」 そういえばそうだ。 グリフォンやフェンリルが入るにはちと小さすぎる。 長老 「そういうことじゃ。     この刀身と宝玉にはオーブと氷の結晶を混ぜ合わせたからの。     それこそどれほど巨大なものでも付加出来るぞい」 悠介 「そうなのか……。     あ、じゃあ他にいろいろなものをいっぺんに付加させるってことは?」 長老 「それは無理じゃな。付加出来るのはひとつまでじゃ。     多くを付加させるなんてことをすれば、竜殺しの効果も薄れるじゃろ。     その代わり、付加できる力の最大値は無限といってもええ」 悠介 「へえ……あ、じゃあ早速やってみてくれ。覚えておきたい」 長老 「む、ええじゃろ。     といっても、ただ“支力付加(エンチャント)”と唱えれば魔力の蓋が開くからの。     あとはこの宝玉に付加させたいものを重ねればそれでええ。     ほれ、唱えてみい。これはお主の武器じゃからの、     ワシの言葉では開かんのじゃ」 悠介 「あ……あ、ああ───“支力付加(エンチャント)”」 パキン───唱えると、軽い音がした。 じいさんはそれを確認するとグラムを屠竜剣に重ねるように合わせた。 すると───グラムが光り輝き、屠竜剣に溶け込んでゆく。 長老 「とまあ、こういうわけじゃ。     エンチャントを解除するなら“支力解除(アンエンチャント)”と唱えればええ」 悠介 「───“支力解除(アンエンチャント)”」 パキン───唱えると、軽い音とともにグラムが弾き出された。 悠介 「お……おおお……こりゃ面白い」 長老 「そう、それじゃよ。その顔が見れるから鍛冶錬成工房のはたまらん。     武具は男の浪漫じゃからのぅ。     最近はブレイバーも減って、その楽しみが無くなっておったところにお主が来た。     それも屠竜剣の錬成願いじゃ……ワシは嬉しかったぞい」 悠介 「はは……じいさんの夢が叶ってなによりだ。“支力付加(エンチャント)”」 じいさんがグラムを持って待っていたので、エンチャントを唱えて魔力の蓋を開く。 じいさんは再び屠竜剣にグラムを融合させて、ホワホワと笑っていた。 ───……。 ───やがて完成した屠竜剣グラムを手に、俺はじいさんにお礼の言葉を言っていた。 じいさんはじいさんで『夢が叶った』と笑い、俺にお礼を言っている。 レラとロッタは作業の手伝いで完全に疲れきって、今は奥の方でぶっ倒れているそうだ。 悠介 「じゃあ俺……そろそろ行くな。こんな剣作ってくれて、本当にありがとうな」 長老 「ワシの方こそじゃよ。いい夢見させてもらったわい。     ……っと、そうじゃそうじゃ。お主に言っておかねばならんことがあったな」 悠介 「……?なんかあったっけ」 長老 「アレじゃよ。『時の砂が手に入れば、弓は嫌でも手に入る』じゃよ」 悠介 「あ、ああ───そういえばあれ、どういう意味だったんだ?」 長老 「ほほほっ……」 じいさんは意地悪そうに笑い、俺を見上げた。 どうやら訊いてくれるのを待っていたようだ。 教えたくてウズウズしているって感じだし。 長老 「鞘から剣を抜いて、“伎装弓術(レンジ/アロー)”と言ってみい」 悠介 「……?“伎装弓術(レンジ/アロー)”」 言われた通り唱えてみる。 すると───瞬時に剣の刀身が中心の線から二つに割れ開き、光り輝いて形を変える。 それは……紛れも無く弓だった。 悠介 「こ、これって……」 長老 「ワシは武器に細工をするのが好きでのぅ。いつもこう細工をしておるんじゃよ。     特に今回は剣全体にオーブの欠片と属性の結晶を使っておるから、     言を唱えれば形が変わるようにありったけの魔力を込めておる。     弓を剣に戻したい時は“伎装剣術(レンジ/ブレイク)”じゃ。上手く使い分け、楽しんでくれ」 悠介 「楽しむって……」 そりゃ確かに使ってみたくてウズウズしてるが。 ひとまずレンジ/ブレイクを唱え、弓を剣に戻して鞘へ納める。 悠介 「矢が無いけど……どうするんだ?」 長老 「おぬしは創造者じゃろ?そこらへんはなんとかせぃ」 悠介 「妙なところで中途半端だな……まあいいや、実際助かった。     奥のふたりにも礼を言っといてくれ。特にレラに」 長老 「結局ロッタは足を引っ張っただけじゃしな……」 悠介 「まったくだ。───じゃ、俺行くな」 長老 「うむ、達者でな」 黄竜珠をココンと突付き、ディルゼイルを珠から呼び出す。 悠介 「ちょっとじっとしててくれな、ディル」 ディル『解っている、王』 そう言うディルゼイルを直視して分析を開始。 ディルゼイルの中にある『再生が完全じゃない部分』、翼と尻尾の部分を超越にて創造。 再生し、元通りにする。 悠介 「どうだ?違和感はあるか?」 ディル『いいや、以前よりも具合がいい。些細の問題もないな』 悠介 「そか、そりゃよかった。じゃあ───頼む」 ディル『承知───!!』 なんだか久しぶりに聞いた気がするディルゼイルの『承知』に、なんだか笑みが漏れた。 笑いながらディルゼイルの背に乗ると、 ディルゼイルを見た途端に腰を抜かしたらしいじいさんに別れの言葉を叫んで飛翔する。 悠介 「ディル、急いでくれ。早くしないと間に合わないかもしれない───!!」 ディル『解っている。だが───』 悠介 「だが?」 ディル『……フフッ。またこうして空を飛ぶことが出来て嬉しいぞ、王よ』 悠介 「ディル……ははっ───よし!!行くぞディル!!     冒険にはほど遠いけど、この空を思う様に飛ぼう!!」 ディル『応ッ!!』 飛翔する。 鬱葱と生い茂った木々を突き抜け続け、やがて大空の下に舞い上がった俺とディルゼイル。 その空気を思い切り吸うと、今度は気持ちを切り替えるかのように風を切る飛翔。 縦への飛翔が横への飛翔に変わると、 もう一度この世界の空を飛ぶことが出来たのだと改めて実感した。 ───あとはもう突っ走るだけだ。 彰利とリヴァイアが待つであろう、蒼竜王の居るイクスキィ蒼山へ───!! Next Menu back