───FantasticFantasia-Set08/至高、極光の剣───
【ケース20:弦月彰利/至高の子、覇王の剣】 声  『各魔導船の各員に通達。     じきに蒼竜王マグナスの縄張りであるイクスキィ蒼山へと到着する。     奇襲の可能性もある、総員戦闘態勢をとるように』 ───……。  阿修羅マン「はぁ。まったく心の準備さえ出来なかったわ。この馬鹿の所為ね」 彰利   「バカとはなんだコノヤロウ!!」 バルグ  「なんじゃ、起きとったのか」 彰利   「へ?やだなぁ、俺があれくらいで気絶するわけないじゃん。       でもキミの認識はこれから阿修羅マンなんでヨロシク」 阿修羅マン「波羅蜜多ラリアットォオオーーーーーッ!!!!」 ベゴシャアンッ!!! 彰利 「ハペェエーーーーーッ!!!!」 式でスピードアップしてまでのラリアットをされました……。 どうやらこの阿修羅マン、阿修羅マンの大ファンらしい。 ───ドォオンッッ!!!! 彰利   「ギヤッ!!」 バルグ  「ムオッ!?」 阿修羅マン「な、なに!?」 彰利   「緊張感ってもんがねぇのかてめぇ!!名前の時点でふざけすぎだぞコラ!!」 阿修羅マン「なんのことよ!!」 なんでしょう? とにかく魔導船が思いっきり揺れました。 何事かと窓から外を見ようとドガァンッ!!! 彰利   「ギヤッ!!」 バルグ  「ムウ……もしや───」 彰利   「でかいぞ!!ついにきたっ、東京大地震だっ!!」 阿修羅マン「空に居るのに地震なわけがないでしょう!?ふざけないで!!」 彰利   「ふざけてんのはてめぇの名前だけだろうが!!」 阿修羅マン「だからなんのことよ!!」 ……なんだろう? しかし───窓から外を見た途端、いろんな疑問も吹き飛ぶような光景が目に映った。 リヴァ「───全員甲板に出ろ!!ブルードラゴンだ!」 バルグ「随分と早かったの……まだ縄張りには着いておらぬだろうに」 彰利 「ウウーーーッ!!!お、お腹が痛い!!苦しい……!アレーーーッ!!」 バルグ「お主……ここまで来て腹痛のフリとは……」 彰利 「ウーーーーン!!!!」 バルグ「ホレ!いい若いモンがなにをぐずっておるか!甲板へ出るんじゃ!!」 彰利 「アレーーーーッ!!!!」 俺はバルグのじっちゃんに、じいさんとは思えん力を以って甲板に連れてかれました。 このじっちゃん強いね、うん。 甲板に出ると、その広い甲板に一体のブルードラゴンが下りてきた。 周りを見渡してみれば、他の魔導船もブルードラゴンに襲われている。 いや、襲うというにはあまりに粗末だ。 相手にしてみれば『からかってやってる』って程度なのだろう。 青竜 『魔導術師が三人に……死神がひとりか。他に比べて数が少ないな』 彰利 「だったら見逃してけろ?」 青竜 『なに……?貴様、竜族の言葉が理解できるのか』 彰利 「すげぇだろ」 ほんとは悠介にもらったこの補聴器みたいなモンのお蔭なんだけどね。 リヴァ  「検察官?」 バルグ  「お主、竜の言葉が解るのか?」 阿修羅マン「適当よ絶対」 彰利   「なんだと阿修羅この野郎……」 阿修羅マン「誰が阿修羅よ!!」 彰利   「いやぁ〜すまんねキミ。       無礼で失礼で山崎でドリルで阿修羅マンなヤツだが、どうか許してほしい」 阿修羅マン「ワタシイマトテモアナタヲコロシタイネー……」 彰利   「あんたじゃ役不足だぜ」(脱臭系) 阿修羅マン「な、ななななんですってぇえええっ!!?」 叫ぶ阿修羅マンを無視してブルードラゴンを見上げる。 解っとる……解っとるよー?こいつぁあハンパじゃなく強い。 強さならベヒーモスの方が強いだろうけど、 我らが戦おうとしてるのはこのブルードラゴンどもの王、マグナスってやつだ。 そりゃあおめぇ、アレだ。 絶対にベヒーモスより強いんじゃないですか? 青竜   『言葉が解るなら話は早い。早々に失せろ。       人間ごときどうとでも出来るが、無理に殺すのは好まぬ』 彰利   「殺す?ほほっ、このじいやを殺すときたか!」 青竜   『……?なにがおかしい』 彰利   「フッ……すべてがおかしいのだよクラースくん。       残念だが我らに阿修羅マンが居る限り、       貴様なぞ波羅蜜多ラリアットで一撃だ」 阿修羅マン「え、ええっ!?ちょ、ちょっと!!」 青竜   『いい度胸だ……!!       竜族である私を一撃で屠るだと……!?身の程を知れ、人間!!』 阿修羅マン「ちょ、ちょっとあなた!この竜なんて言ってるの!?」 彰利   「へ?ああ、『私を一撃で屠るだと?身の程を知れ!』だって。殺す気満々」 阿修羅マン「なっ……いやぁああーーーーーーーーっ!!!!!」 リヴァ  「───!来るぞ!!」 ブルードラゴンがその口に光を溜める。 恐らくそれをまともに受ければ骨も残らんでしょう。 というわけで俺は、 ベヒーモス戦いの時に密かに創造しておいたブツを手にして構えました。 彰利   「下がってろキミたち!特に阿修羅マン!さっさとしろ阿修羅!この阿修羅!」 阿修羅マン「こ、こここぉおおおお……!!!!」 彰利   「それとみなさん!チャンスは一度キリだから全力でいきなさいよ!?       それ以上は保てんからね!?」 バルグ  「なに───?」 青竜   『塵と化すがいい!!』 バシャァアォオーーーンッ!!!───轟音を撒き散らし、光が放たれた。 俺は構えたソレに変化のスイッチである言葉を紡ぐ。 彰利 「───I am the bone of my sword(体は 剣で 出来ている)!!“熾天覆う七つの円環”(ロー・アイアス)
!!」 スイッチである『言』を唱えると、ご存知七枚の花びらシールドが展開される。 三十秒きりの創造展開アイテム、黄昏の種。 それを作っておいた俺は、小さな偽黄昏を展開してシールドを張った。 ほんとはもっと長い時間保てるものを創造したかったけど、 俺の思考イメージじゃあそこまで至れませんでした。 ゴガァアアアアアーーーーーーーッ!!!!! 彰利 「ぐがっ───ぎああ……!?」 しかしさすがはドラゴン。 ベヒーモスの紫波動砲ほどではないにしろ、こりゃあ……長くは保ちません!! 彰利   「な、なにやってんのキミたち!       さっさと攻撃!戦いの最中にホウケる馬鹿が居るか!!」 リヴァ  「ハッ───す、すまない!!───魔導展開!」 バルグ  「やれやれ、この歳になってドラゴン討伐とはの……魔導展開」 阿修羅マン「まさかこの攻撃を防ぐとはねぇ……魔導展開」 彰利   「真面目にやれてめぇ!!」 阿修羅マン「真面目にやってるわよ!!なんなのよさっきから!!」 光が弱まってゆく。 シールド展開してから二十秒─── 花びらの盾が七枚から二枚になったところでドラゴンの吐いていた光はようやく停止した。 残り十秒───! 彰利 「I am the bone of my sword(我 が 骨 子 は 捻 れ 狂 う)───」 すぐさまに二枚の花びらにイメージを流して弓と矢に変換する。 悠介がたまにやる方法だが、上手くいった。 すぐにそれらをブルードラゴンに向けて引き絞る。 『矢』といっても『捻れた剣』であり、威力は相当だと記憶します。 彰利 「“───偽・螺旋剣(カラドボルグ)”!!」 アイアスともども物真似流究極奥義だが、だからこそイメージしやすい。 弓で放った螺旋の剣の矢はブルードラゴンの左目目掛けて放たれ、 貫きこそしなかったが捻り潰すことは出来た。 青竜 『グゥォオオオオオオオッ!!!!!』 痛みに吼える青竜。 そこに、三人の至高魔導術師が同時に式じゃないなにかを放つ。 青竜 『グゥッ───!?小賢しいわ!』 しかしそれを尾撃で弾くドラゴン……や、強いねこいつ。 青竜   『おのれよくも我が目を……!殺してやるぞ、人間───!!』 彰利   「えぇっ!?俺を殺す気満々!?       んーん!?ボク知らないよ!?この阿修羅マンがやれって言ったんだよ!?」 阿修羅マン「あ、あなたねぇっ!!」 バルグ  「緊迫感というものが無いな……」 リヴァ  「考えたら負けだぞ、バルグ……」 阿修羅マンに罪をなすりつけつつ、俺はダークマターを展開。 ダークイーターを強化して─── 彰利 「チョェエエーーーーッ!!!!」 青竜 『グッ───!?』 ザバシャァッ!! 青竜 『グォオオオオオオオオオッ!!!!!!』 右目へと一閃を振り切ると、その視力の全てを奪い去りました!! バルグ  「お、おおお!やりおった!」 彰利   「ヘイ阿修羅マン!波羅蜜多ラリアットだ!!」 阿修羅マン「やらないわよっ!!」 バルグ  「小僧!どんどん攻撃せい!サポートは我らがしよう!」 彰利   「あ、そりゃ無理ってもんだぜじーさん。       俺の全力じゃあ、せいぜい比較的に柔らかい目を潰すくらいだ。       硬い鱗なんてとてもとても」 バルグ  「むごっ!?」 リヴァ  「チィッ───どうすれば……!そうだ検察官!       さっき放った弓矢をもう一度───」 彰利   「無理。もう三十秒経ったから種が砕けて消えた」 リヴァ  「………」 我らは視力を失って苦しむドラゴンを前に、これからの前途を思った。 ───なんて時。 声  『う、うわぁああああっ!!もうだめだぁっ!!救援!救援を求む!!』 隣の魔導船からそんな声が届いた。 恐らく無線かなんかだったんだろうけど───うお、ところどころが燃えてるじゃねぇの。 彰利 「……なに?もしかして劣勢?」 バルグ「当たり前じゃ……土台無理な話だったんじゃ、ドラゴンと戦うなど」 彰利 「ン〜……あ、いや待った。なんとかならぁ!!」 思いつきだが、俺は目を失って暴れ出そうとした青竜へと疾駆。 やがて空を飛び、手に月壊力を込め─── 彰利 「“排撃(リジェクト)ォッ”!!」 バガァアンッ!!───眼球が潰れたその目の窪みの中に排撃を見舞う! 骨まで硬いようでヒビさえ入れられなかったが───脳の方はそうはいかない。 青竜 『グギャァアアォオオオオオンッッ!!!!』 結果、ブルードラゴンは暴れながら倒れ伏し、やがて動かなくなった。 彰利 「成ッ敗ッ!!」 俺はその竜の上に乗ってズビシィとポーズを取る……美しい。 バルグ「バカモン!!まだじゃ!」 彰利 「バカとはなんだコノヤ───」 ドボォッ!! 彰利 「けはっ……!?」 一閃。 動かなかった筈の竜が尾を振り、俺の脇腹と骨を完全に砕いた。 俺の体は吹き飛ばされ、甲板をだらしなく滑った。 青竜   『許さん……許さんぞ……!!貴様ら、もはや逃がさん……!!』 リヴァ  「バルグ!阿修羅マン!行動停止の式だ!」 阿修羅マン「ちょっとリヴァイアさん!?       こんな時にあなたまでその呼び方を使うのはやめないさい!!」 バルグ  「言ってる場合ではない!フラついている今が好機じゃ!!」 ……三人がドラゴンに、編んだ式を絡めてゆく。 だがドラゴンは視覚がないためかとにかく暴れ、式の悉くを弾いてゆく。 まるで駄々っ子だな、まったく……。 彰利 「い、っつ……!!」 こっちは骨と内臓がズタズタだ。 月生力を流してはいるんだけど、どういうこったか回復が遅い。 この世界に来た時から感じていた違和感───いつもより回復が遅いんだ。 彰利 「くそったれ───!!」 でも、だからって死んでなんかやらない。 絶対に生きてあいつと再会するんだ。 そしてまたくだらなくも楽しい日常に身を置いて、そして……そして───!! 彰利 「“無形なる黒闇(ダークマター)───モード運命破壊せし漆黒の鎌(デスティニーブレイカー)……”!」 血を吐きながら立ち上がった。 回復が遅いという決まりごとを破壊し、瞬時に回復するとともに転移。 ブルードラゴンの頭上に移動するとともに鎌から黒い光を放つ。 意はベヒーモスの時と同じ、『耐久力を切り殺す』というもの。 その意を込めた黒い光がブルードラゴンの鱗を照らし─── 彰利 「“モードチェンジ───殺戮を蝕す狂気の大鎌(ジェノサイドエクリプス)”!!」 瞬時にモードチェンジ。 休む間も無く鎌を閃かせ───ザガシャァアアアッ!!! 青竜 『ルォオオオオオオッ!!!?』 『殺し』に長けたその鎌で背中の鱗の大半を削り殺した───!! 彰利 「リヴァイアァーーーーッ!!!!」 渾身でいったためにバランスを崩した俺に追撃は不可能と判断して、 構えていたリヴァイアにあとを託した。 リヴァイアは最初から解っていたかのように手に魔力を溜め─── バルグ「ハッ───!?イ、イカン!よすんじゃリヴァイア!!それは───」 リヴァ「“LuminousDestory(至光にて万物を砕かん)───ッ……あぁああああああああっ!!!!!」 リヴァイアの腕が見る見るうちに焼けてゆく。 その様は、あまりの魔力に腕が耐えられなくなっているように見えた。 リヴァ「Fill agains Fill. Sword of SupremeRuler(満たし、更に満たせ。その意が覇王の剣と化するまで)───Excaliver(魔導極光剣)”!!」 フィンッ───ガカァッ!!ゾファァッシャァアアアアアンッ!!!! 青竜 『ギッ───!?グゥォオオオオオオオッ!!!!!』 紡がれた言とともに、その場に極光を生んだ。 光は空気を裂くような轟音を放ち、 極光の剣と化してブルードラゴンの背を切り裂くと、完全に塵へ変えた。 しかしそれだけでは終わらない。 遠くの景色で他の魔導船を襲っていたドラゴンさえも切り裂き殺すと、 遠くに見えた山の形を完全に変えるほどの破壊を齎した。 彰利 「お……うあ……」 唖然。 そりゃ、唖然とするしかない。 あれだけ苦労してやっとこさ破壊したブルードラゴンの鱗が一撃で切り裂かれた。 彰利 「うお……な、なんだいなんだい!リヴァイアったらやれば出来るんじゃん!!     てめぇ今まで出し惜しみしてたのかね!?」 リヴァ「さ、騒ぐな……まだ来る……!」 彰利 「や、そりゃそうだけどね」 ……なんかヤバイです。 リヴァイアったら全力で撃ったらしく、かなり疲弊してます。 彰利 「って、オイ!キミその腕……」 見れば、リヴァイアの腕は焼き焦げたように黒く染まり、 さらに骨が砕けているようだった。 彰利 「どうすりゃこげな状態になるのかね!?月生力───!!」 バルグ「愚かなことを……!アレを使いおったな……?」 彰利 「アレ?なにそれ」 リヴァイアの腕に月生力を流しながら聞く。 するとバルグのじっちゃんは髭を撫でながらも話し始めてくれた。 バルグ「知ってるかどうかは知らんが、この空界には未知の式が存在する。     式もそうなら、魔導魔術も魔導錬金術も未だ究極には至っておらん。     しかし、そんな魔導術と式を合わせ、ひとつの『究極』を作り出した者がおった。     それが───リヴァイアの母、イセリア=ゼロ=フォルフィックス」 彰利 「あー……じっちゃんの知り合いなんだっけ?そいつどうなったん?」 バルグ「死におったよ。『究極』をリヴァイアに託し、とある竜王の力を封印しての」 彰利 「───へ?」 とある竜王って……え? バルグ「イセリアは空界で至高に至った創造者(クリエイター)じゃった。     ブレイバーとしても魔導クラスとしても強者で、     しかし無闇矢鱈とモンスターを殺すわけでもない。     そういった意味で、様々な者たちに尊敬されておった」 彰利 「リヴァイア……」 リヴァ「……言っただろう、『創造者を知らないわけじゃない』って。     母がそうだったんだ、当たり前だ」 バルグ「うむ。しかしある日、イセリアは己の限界を知った。     母として子をふたり産み、力も体力も落ちていったあやつは、     『せめて』と黄竜王シュバルドラインに戒めをつけて死んでいった。     その頃のシュバルドラインは無駄に知力が高い分、     竜王の中では一番のクセモノじゃったからの。     それを潰しておきたかったんじゃろう」 彰利 「───あ」 バルグ「どうした?」 彰利 「あ、いや、シュバルなんたらとは関係ないけど……そっか、そういうことか」 なんかいろいろ解っちまった。 リヴァイアがゼロなんたらを助けようとする理由。 彰利 「えっとさ、間違ってたら違うって言ってほしいんだけど。     リヴァイアとゼロなんたらって……姉弟?」 リヴァ「───……」 バルグ「……うむ。詳しく言えば異父姉弟というものじゃ。     リヴァイアは空界で産まれ、ゼロは天界で産まれた。     空界にも天界にも、『ゼロ』と名のつく一族はひとつ限り。     イセリア=ゼロ=フォルフィックスの血を引く者のみじゃ」 彰利 「リヴァイア……」 リヴァ「………」 リヴァイアは俺の目から目を逸らした。 あまり知られたくなかったんだろう。 別にいいのにねぇ?リヴァイアの弟だっていうなら、それこそ全力で助けてやるってのに。 彰利 「あー……でもなんだって『盟友』って関係にあるの?     『ワタシあなたのお姉ちゃんYO!!』とか言って抱きつけばいいのに」 バルグ「生きた時間が違いすぎるんじゃ。リヴァイアは既に千年以上生きている。     それに対し、ゼロ=クロフィックスは300と生きていまい。     姉や弟と言うにはあまりに離れているんじゃ。     ゼロはどうかは解らんが、リヴァイアは既に弟などとは思えまい」 彰利 「だから盟友?」 バルグ「そういうことじゃ。人間、誰しもそれなりの悩みを抱えておる。     リヴァイアはゼロを弟として迎え入れることが出来なかったが、     その代わり盟友として受け入れた。ゼロにとってもそちらの方がええじゃろう。     突然現れた輩に『わたしは姉だ』などと言われたところで……     あやつが喜ぶようなことはあるまいて」 彰利 「ところで『究極』ってなに?」 バルグ「……おぬしいい度胸しておるな……。自分から聞いておいていきなり流すか」 彰利 「いやぁ……それほどでも」 バルグ「褒めとらんわっ!」 彰利 「しゃあないじゃん!暗い雰囲気って嫌いなんだもん!つーわけでなに!?     さっき使ったのが究極なら、名前だけでも教えてたもれ!」 バルグ「………」 バルグのじっちゃんはモシャアと溜め息を吐き、リヴァイアに『いいか?』と訊ねた。 リヴァイアはそれに好きにしろと返す。 バルグ「やれやれ……よいか?イセリアが極め、     編み出した空界での現最高魔導魔術の式───名をエクスカリバー」 彰利 「エクスカリバー……って、マジですか?」 バルグ「マジじゃ。なにを喩えてマジかと訊くのかは解らんが、そういう名の式じゃ。     極光を以って紡ぎ出し、魔導でそれを高め、さらに式で編み繋ぐ。     極めれば敵無しじゃが、リヴァイアは極めておらんでの。     その結果がこの腕じゃ。極めておれば、こんなことにはならんのじゃがの」 彰利 「リヴァイア以外のヤツらは出来るん?」 バルグ「いいや。現時点でエクスカリバーを操れるのは、     ただひとりを抜かしてリヴァイアだけじゃ。     それも、リヴァイアが異端視される中で尊敬される所以(ゆえん)でもある」 彰利 「なんとまあ……」 リヴァイア専用究極奥義ッスカ……いいなぁそういうの。 ただひとり、ってのは多分イセリアさんのことだろうし。 彰利 「ところでこの世界、なんでこんなに治癒が遅いの?     俺、これでも全力で月生力───回復の波動送ってんだけど」 バルグ「それは……人が犯してしまった最大の罪によるものじゃ。     今となってはどうにもならん」 彰利 「そうなん?しゃあない───“運命破壊せし漆黒の鎌(デスティニーブレイカー)”」 再び回復力の運命を破壊。 リヴァイアの腕を即座に治し、ホッと一息。 バルグ「……おかしなことを出来るんじゃな」 彰利 「すげぇだろ」 バルグ「……その偉そうな部分さえなければいいんじゃがなぁ」 彰利 「面と向かってヒドイよじいさん……それはそれとして!     さあ行けリヴァイア!もういっちょエクスカリバー!オイラまた見てみたい!」 バルグ「無茶を言うでない馬鹿モンが!!」 彰利 「バカとはなんだコノヤロウ!!」 バルグ「先ほどの威力を見たじゃろう!アレは竜だけでなく万物を切り裂く極光じゃ!     連発などすればこの空界自体に亀裂が出来かねん!!」 彰利 「ウソつけこのやろう!せいぜい山が吹き飛ぶくらいだろうが!」 バルグ「バカモン!」 彰利 「バカとはなんだコノヤロウ!!」 バルグ「山ではなく地面に極光が落ちたらどうなると思うとる!     それこそ地面が割れ、修復不可能になるわ!!     おぬしの言うとおりこの世界は治癒が欠けているのじゃ!     その状態で大地に穴でも開けば一貫のお終いじゃ!!」 彰利 「なんと!?……だったら上空に撃てばいいんじゃない?」 バルグ「ブルードラゴンがそう都合よく上方向のみから来ると思うとるのか!」 彰利 「激烈思ってます!!」 バルグ「こ、このたわけっ───」 ドガァアアアアンッッ!!!! バルグ「ムォオオッ!!?」 彰利 「くあっ……!!」 ───突然の衝撃。 魔導船が揺れ、急に足場を大きく揺らされた俺達は甲板の上に倒れこんだ。 リヴァ  「な、なんだ……!?」 阿修羅マン「あなたたちねぇっ!!人が懸命に戦ってる最中に普通論争なんかする!?       『なんだ?』じゃないわよ!!さっさと構えなさい!!」 あ……会話に入ってこないなと思ったら戦ってたのか。 戦ってたというよりは他の船のサポートしてたみたいだけど。 阿修羅マン「横っ!来ますわよ!!」 彰利   「へ?」 ドガァアンッ!!! 彰利 「ゲハァッ!!?」 いきなりだった。 横から飛翔してきたドラゴンが、俺にグライダースパイクかましやがった。 俺は再び甲板を滑るように吹き飛び、壁に当たって倒れた。 彰利 「ゲッハ……!!づ……たまんねぇな、おい……!!」 一撃で致命傷だ。 死神モ−ドだからそう簡単には死なないが、だからこそ気が狂うくらいに痛い。 見れば脇腹は深くえぐれ、気持ち悪いくらいに血が流れている。 すぐにそれを治すと立ち上がり、 甲板に下りてこようとせずに上空で停止したドラゴンを見据えた。 彰利 「お、おい……あれって……」 嫌な予感。 ドラゴンが空中で羽ばたきながら停止して、俺達を見下ろしている状況─── 次に来るっていったらなんだ? バルグ  「───!まさかレーザーを撃つつもりか!?」 阿修羅マン「じょ、冗談じゃないわ!       あそこから撃たれたら、運良くハズレても魔導船が貫かれて爆死よ!?」 リヴァ  「っ……」 阿修羅マン「ちょっとあなた!さっきの七枚の盾、もう一度やりなさいよ!!」 彰利   「出来ねぇよ!       いつでも使えてるならここでボ〜っとしてるわけねぇだろうが!!」 阿修羅マン「っ〜〜〜……じゃあどうしますの!?このままじゃ全員お陀仏じゃない!」 リヴァ  「───わたしがやる。       幸い相手は上空だ───エクスカリバーが地面を抉ることはない」 バルグ  「なにっ!?よせというのが解らんのか!!       治癒されたとはいえ、あんな瞬時に極度の魔導消費をする極光を放てば       今度こそ無事には済まんぞ!!」 リヴァ  「どの道それしか方法が無いだろう───       あの高さではわたしたちにはどうしようもない」 阿修羅マン「それはそうだけれど……」 リヴァ  「このまま待っていても死ぬだけだ!だったら───やるしかない!!」 リヴァイアが疾駆する。 甲板の一番高いところまで上り、その上で両手に式の光を集めてゆく。 リヴァ「LuminousDestory(至光にて万物を砕かん)───Fill agains Fill. Sword of SupremeRuler(満たし、更に満たせ。その意が覇王の剣と化するまで)───!!」 両の手に眩いばかりの極光が集まってゆく。 しかしその過程でどんどんとリヴァイアの腕は焼き焦げてゆき、その表情が苦悶に歪む。 ───だが。 それでもリヴァイアは光の錬成をやめない。 ただ一心に上空のブルードラゴンを見据え、 やがて両手の極光を合わせて光の剣を作り出す。 ───その時だった。 剣を振るおうとしたリヴァイアより先に、上空のブルードラゴンがレーザーを解き放った。 リヴァ「───!!」 当たれば何も残らないであろう竜族最大の一撃。 それを眼前に、しかしリヴァイアは一歩も退こうとはしなかった。 リヴァ「(しま)いにしよう───Excaliver(魔導極光剣)”!!」 バガァッ!!ガガァァッッキィイイイイイイインッ!!!! リヴァイアが剣を振るうのと、レーザーが剣に重なるのはほぼ同時。 しかしエクスカリバーは竜族最大の攻撃をその光の刀身に受けてなお砕けない。 そればかりか─── リヴァ「ぬるい───!!!」 バガァァアアアォオオオオオオンッッッ!!!! 彰利 「くぁあっ───!!」 轟音を高鳴らせ、そのレーザーを破壊してみせたのだ。 それでもなお極光の剣の波動はブルードラゴンへと飛翔し───!! 青竜 『───!?ば、馬鹿な……ぁああああああああっ!!!!!』 その輝きを以って、上空に居たブルードラゴンを一撃のもとに両断、塵に変えてみせた。 彰利 「……!!」 ……正直震えた。 凄まじいその威力と凄まじいその輝きに。 そして俺は解っちまったんだ…… 馬鹿キングがゼロなんたらを人質にしてまでリヴァイアに固執する理由が。 そりゃそうだ、あいつならここまで強いヤツを片腕として置いておきたくもなるだろう。 リヴァ「ぐっ、……!!あぁあっ……!!」 けれどこれは諸刃の剣。 極めない限りはこうして腕が砕け、 けれど俺は───なんとなくだけどリヴァイアはそれを極める気なんてないと感じてる。 使えるからなんだということもないのだ。 襲われれば使うだろうけど、 そんなものはこうして竜の巣に突っ込まない限りは滅多になかったことだ。 リヴァイアは争いなんて好まないだろう。 だったらそこに『極める意味』などないのだ。 彰利 「大丈夫かね?」 俺はそんなリヴァイアの傍らに走り、すぐに腕を回復してやった。 回復するのにわざわざデスティニーブレイカーを使わなきゃいけないのは面倒だが。 リヴァ「くそっ、すまない……今のが限界だ……!魔導力がもうカラだ……!」 彰利 「いや……よくやってくれたよ。少し休んでいなされ」 そうは言うも─── 次から次へと後を絶たないブルードラゴンの群れに、流石に眩暈がする。 ───そんな時だ。 声  『な、なにをしている!!イクスキィ蒼山は!マグナスは目の前なんだぞ!!     貴様ら命を捨ててでもマグナスを殺せ!私を───私を王にしろ!!』 馬鹿みたいな声が聞こえた。 魔導船に備え付けてあるのか、スピーカーで聞くように大きく聞こえたクズの罵倒。 彰利 「───」 ───今度こそ撃鉄は落ちた。 俺の中で静かに何かが切れ、俺は運命破壊せし漆黒の鎌を構えた。 彰利 「なぁリヴァイア。人ひとり殺すくらいの余力、残ってるか?」 リヴァ「……?な、なにをする気だ……?」 彰利 「決まってる。この鎌で水晶の檻の干渉払いを殺す。     その後は転移でもなんでも実行したらいい。     ……もう一度聞くぞ、クズひとり殺す余力、残ってるか?」 リヴァ「……心許ないな。せめて全力で殺してやりたかった」 彰利 「いい返事だ───!!」 目が真紅へ変わる。 俺の内側から力が沸き上がり、視界を紅蓮に染めてもなお紅蓮へ。 力の解放が終わると同時に別の魔導船へ転移する───いや、する筈だった。 だが。この魔導船の前に飛翔してきた巨大な存在を目にした途端、 別の船に転移するだなんて思考は吹き飛んだ。 彰利 「───……ッ!!」 忘れもしない。 構えすらとる余裕も与えず、試すかのように悠介を吹き飛ばしてみせたその蒼竜。 彰利 「ッ〜〜〜……てめぇぇえええっ!!!!」 蒼竜王『ギシャァアアォオオンッ!!!』 俺の怒号を掻き消すかのように放たれた咆哮。 大気さえ震えるそれに耳を塞ぐこともせず、ただ蒼竜を睨んだ。 いや、睨んだつもりでいたが既に俺は走っていた。 転移することも忘れ、怒りのままに疾駆し─── その顔面めがけて跳躍し、鎌を振るっていたのだ。 ガガァッキィインッ!!! 彰利 「ッ───!?」 だが。 鱗の頑丈さを殺した筈のデスティニーブレイカーはその鱗に傷ひとつ刻めない───!! 蒼竜王『ぬるいぬるい……。     なにを怒っているのかは知らぬが、人の憤怒などこの程度のものか』 彰利 「───な……んだと……!?なにを怒っているのか……知らないだぁっ!!?」 鎌を振るう。 幾度と無くモードチェンジをし、斬り、刺し、払い───しかし傷ひとつ付けられない。 こんな馬鹿な話があるかっ!? 悠介を吹き飛ばした存在が目の前に居るのに傷ひとつ───!? 彰利 「くそっ───くそぉっ!!」 実力の差、存在としての大きさ───その全てで俺の上をゆく竜王が居た。 デスティニーブレイカーは壊す既定の存在が巨大であればあるほど壊せる時間が短い。 俺とこの竜との器では、 こいつの鱗の強度の既定を殺すことなどそれこそ一瞬にも満たないのだ。 けど─── 彰利 「だからって許せるかよぉおおおおっ!!!!」 浮遊し、今度は他よりは柔らかいであろう目を狙う。 鎌を横に一閃し潰しにかかるが───バシャアッ……!! 彰利 「……え……?」 その前に、俺の体を鋭い牙が噛み砕いていた。 彰利 「け……っ……は───!!」 口から血が溢れる。 上下から圧をかけられ、骨と肉が簡単に砕け、ミンチになってゆくのが解る。 彰利 「がっ───あ、は───!!」 必死にもがく。 普通なら絶命しているだろう激痛だが、死神の体がそれを許さない。 彰利 「───!!」 ビジュンッ───! 蒼竜王『……フン?』 死の激痛に耐えている中、なんとか思い出せた転移で逃げ出した。 見下ろせば自分の内臓がハッキリと見え、 砕かれた骨が立つことさえ許さずに俺を甲板へ叩きつけた。 グシャッ、って音が鳴る。 意識は朦朧とし、けれどそんな虚ろな視界も俺を見下ろす竜王を見た瞬間に吹き飛んだ。 彰利 「っ……、は……!まだ……だ……!!」 致命傷の意を殺し、回復も半端に駆け出した。 リヴァ「ばかっ!やめ───」 リヴァイアが何か言っていた。 けれど俺の標的はこいつしかいないんだ、止まる必要なんてどこにもない。 蒼竜王『目障りだ、蝿めが───バガァッ───ォオオオオオンッ!!! 瞬時に放たれる巨大なレーザー。 それを転移でかわし、竜王の───文字通り目の前に現れると、 鎌をジェノサイドエクリプスに変化させて一閃───!! ジャギィイィンッ!!! 彰利 「なっ───!?」 しかしそれさえも、硬く閉じられた瞼なんかに弾かれた。 蒼竜王『遅すぎるわ。遅い蝿に逃走手段など無いな』 バガァアンッ!!! 彰利 「けはッ───!!」 尾撃───だったと思う。 速すぎて見えず、だが確かに俺は固い何かに叩き落され、甲板に落下した。 リヴァ「検察官!!」 そこにリヴァイアが駆け寄ってくるが、俺はやはり蒼竜を睨み続けた。 蒼竜王『フン……しぶとさだけは立派だな』 彰利 「黙れよ……」 蒼竜王『なに……?』 彰利 「黙れって言ったんだ!!」 疾駆する。 今度こそ、なんて思わない。 ただあらん限りの力を振り絞るイメージだけを漲らせる。 蒼竜王『翼の無い蝿ごときが生意気な……消えろ』 巨大な口に溜められた光に、視界が真っ白に染まる。 光が放たれればきっと俺を塵も残らないだろう。 勝負になんてならないけど───それは一瞬の勝負だ! 俺にとっては傷をつけられるかつけられないかくらいの勝負だ。 けどそれには意味があるから……!! せめて傷のひとつでも付けてやらなきゃ……気が済まねぇっ!!! Next Menu back