───FantasticFantasia-Set12/事の発端───
【ケース27:弦月彰利/空界貧乏奮闘記】 レファルド皇国城下町の片隅にある、暗い雰囲気が漂う一角、『セイゼル通り』。 オイラはそこにお手製の屋台を構え、ギシャアと顔を輝かせていた。 しかし我思っちまった、故に我はアリ、モハメド・アリ。 ここでオイラが普通の民にメシを食わせて金を貰ったとして、 この貧民街であるセイゼル通りの人々に無料でメシを与えたら暴動が起きるのでは? 彰利 「グムムーーー……」 これは深刻だ。 出来るだけ貧民街以外の人には知られんように行動した方がいいかもしれん。 つーか……そっか、じゃあ貧民街専門の無料お食事配布人になりゃいいんだ。 幸いにも材料なら悠介が無料で出せるわけだし。 おお、さらに思いついた。 貧民街の皆様に畑の耕し方を教えましょう。 どうやらこの世界、畑で野菜を耕すなんて風習は無い模様。 きっと新しい味に目覚めてくれるよ。 彰利 「しかし、そうなると主食がパンになるわけだよな……。     米を気に入ってくれるだろうか」 なんとなく『納豆』がタブーになりそうな予感がしました。 しかし我慢してもらうっきゃあるめぇ、メシを喰えばいろいろ安心出来るってもんです。 彰利 「だがしかしじゃ。って、さっきから『しかし』ばっかりじゃがしかしじゃ。     野菜はオイラでも作れるが、米だけはなぁ……。     悠介とみさおは米作るの上手かったよなぁ、特に悠介」 実はオイラ、野菜の栽培は得意だけど米の製作は苦手なのです。 こうなったら……やはり悠介に頼むっきゃねぇか? 彰利 「まあなにはともあれ今日の分配布してしまいましょう。     腕が鳴りますぞ〜?ゴキゴキと」 あとのことはともかく、オイラは調理にかかりました。 散々創造してもらったものを手早く料理し、 時には『彰利だけの秘密の製法、ビタミンパワーのエネルギー』を駆使したりなんだり。 しばらくすると貧民街のみなさまがのそりのそりと匂いに釣られてやってきた。 彰利 「フィーーッシュ!!」 別に魚が釣れたわけじゃありませんよ? 彰利 「さ、食べてごろうじろ。おいっしーよ?」 レバニラ炒めをサッと出す。 しかし子供さんはビクリと体を震わせると、オイラから距離を取る。 大人の人にしたってそうです。 なにやらオイラを訝しげに睨んでいるのです。 彰利 「安心しなされ坊や、代金なんぞ取ったりはしませんよ。     あたしゃ新国王と協力して貴殿らに食事を持ってきた弦月彰利という者ですじゃ」 子供 「……ゆみ……?」(キュグ〜〜……) 彰利 「ほっほっほ、お腹は正直だねぇ。どれ、騙されたと思って食べてみなさい」 子供 「…………いいの?ほんとに?」 大人 「ジョ、ジョージ!」 彰利 「ええよ、お腹いっぱい食べていきんせぇ」 大人 「おいお前!そんなこと言って俺らを騙す気だろ!     毒殺とか、そんなことを考えているんだろう!」 彰利 「たわけ!!子供がこんな暗い顔をしていていいわけがないじゃろう!!     じいやは子供の味方じゃ!!     子供がこげに痩せ細ったままなのをほうっておけるもんかい!!     ……ほれ、小僧や?た〜んとおあがり」 子供 「う、うんっ!やった!」 パァッと表情を輝かせると、小僧はレバニラ炒めをシャクシャクと食べ始めた。 大人 「あ、あぁあ……!!死んでしまう……!きっと毒が……」 子供 「───美味しいっ!!」 大人 「……え?」 彰利 「ほっほっほ、ほうかほうか、どんどんおあがり。まだまだ材料はあるからねぇ」 子供 「う、うんっ!ありがとうおっちゃん!!」 彰利 「おっちゃ───……グ、グググ……!!」 オイラ……老け顔なんかなぁ……。 そりゃあ同年代近くの知り合い中では一番顔の輪郭長いと思うけどさ……。 なんてことを考えていると、次から次へと子供が寄ってきた。 オイラはそれを嬉しく思うと、精一杯腕を振るいました。 ……結局、大人は全然手をつけようとしませんでしたけどね。 ───……。 ……。 翌日。 城から抜け出してきた悠介とともに、貧民街へと赴きました。 なんだかんだで貧民街のことが気になっていたらしい悠介は、 王としてこういう場所こそ見ておくべきだと言い切りました。 うおう……既に自分を王として認めてますよ。 けれども踏ん反り返ってるわけではござんせん。 悠介 「……暗いな、雰囲気が」 彰利 「そだねぇ。ここらへん、ちと建物と建物の感覚が狭いんだよ。     だから太陽が差し込まないし、     一日中暗いから人々の気持ちも暗くなってくんだと思う」 悠介 「だな。しかし困ったな……開けた場所がないから畑を作ることも出来ない」 彰利 「グムーーー……」 そうなのだ。 貧民街はその名のとおり貧民の住まう場所。 余分なものなど設けられておらず、ただ最低限の人が住める場所があるだけ。 そりゃあこんなんでは暗くもなるわい。 悠介 「ああでも、幸いにも街全体の壁際にあるんだな、ここ」 彰利 「む?幸いなん?」 悠介 「幸いだぞ。ちょっと離れてろ」 彰利 「?」 言われるままにちょほいと下がる。 と、悠介が肩にかけていた鞘から剣を抜いて構えた。 彰利 「え?ちょ、ちょっと悠介サン?」 悠介 「疾───!!」 ドォッガァアアアアアアアアアンッ!!!!! ───……一振りでした。 あんなにも大きく雄大であった壁は一撃で粉砕され、一部分だけ跡形も無くなってます。 彰利 「ちょちょちょちょっと悠介くん!?キミはなにをしているのかね!?」 悠介 「壁破壊すれば貧民街も広く出来るだろ?」 彰利 「や、そりゃそうだけど───!!」 言うや否や。 剣を振るう悠介はあっという間に街と外を遮断していた壁を完全に破壊してしまいました。 もちろん貧民街の周りの壁だけだけど。 悠介 「よし。あとはこの外の方にひとつずつ家を移動させて、と。あとは───」 彰利 「………」
───地界で僕らを待つ皆様…… 僕の一生の内で二度と忘れることの出来ないあの一瞬を思う時、 どうしてもそれまでのちょっとした出来事の数々が、 強い意味をもって浮かび上がってくるのです。 いつも見慣れた木々……それから、踏み潰しても踏み潰しても生えてくる雑草。 僕はいつもわざとこいつを踏みつけて歩いていました。 そしてゴミに群がる蝿でさえも、今になってみれば忘れることが出来ません。 悠介くんは王になってから実行力が増えたと思います。 まさか城壁、というか壁を破壊して貧民街拡張を考えるなんて想像もしませんでした。 その後、悠介くんは僕に貧民街の皆様の家の下部に月切力を行使させて、 家を地面から乖離したんです。 そのあとどうしたと思いますか? なんとまだ家の中に人が居るっていうのに、 それを僕の月空力で浮かせた状態で外に運びだしたんです。 さすがに無関心を貫いていた貧民街のみんなも何事かと出てきました。 そうしたら、お隣同士だった人がお隣同士じゃなくなっているじゃあありませんか。 しかも差し込まなかった陽が差しこみ、 暗いだけだったその景色が広く明るくなったのです。 驚く貧民街のみなさまをよそに、 僕と悠介くんは家を移動させて出来た空間───街の外れに、 大きな大きな畑と田圃を作りました。 やり方は後悔の旅の中でやったのとまったく同じ方法です。 月空力を駆使してあっという間に野菜や米を育てた僕ら───でしたが、 なかなか大変驚くことがありました。 同じ種籾、同じ方法で栽培した野菜や米が、地界のものとは少々違って育ったのです。 みんなは何故?と驚くでしょう。 そうです。空界と地界とでは空気も大地の栄養も水も、全てが違うのです。 環境自体が違うことで、野菜や米たちが変異を起こしたのでしょう。 けれど、だからといって不味いわけではありません。 むしろ地界で育てたものより美味しかったのです。 悠介くんはそのことに大変興味を持っていました。 確かに地界にもカリフォルニア米やタイ米といった、土地や環境での違いがありました。 それが空界でも有り得たというのだから、彼としては大変興味深いものだったのでしょう。 僕らはまるで子供のようにはしゃぎながら、 家を切り離した部分の穴を補強していきました。 もちろん散らかったゴミも、生えていた雑草も綺麗に取り除いて、 貧民街以外の場所に負けないくらいに綺麗な場所を作ったつもりです。 それから余った場所に子供たちと大人たちの憩いの場として公園を作ったのです。 ブランコや滑り台ももちろんありますし─── 水道も僕が鮮明に覚えていた『純水ピュアウォーター』を 悠介くんが無限創造として創りだすことで、ちゃんと出るようになったのです。 するとどうでしょう。 あれほど僕らを訝しげに見ていた貧民街のみんなの表情が、 僅かとはいえ明るくなったのです。 子供たちは初めて見るブランコや滑り台などに興味津々で、 大人たちは国王である悠介の泥まみれ砂まみれの姿に驚き、 渡された米や野菜の数にさらに驚きました。 やがてそれらの食べ方を教えるために僕と悠介くんが実践して調理してみせると、 それまで食べなかった大人の人達も僕らの料理を口にしてくれました。 そして大人も子供も口をそろえて言うのです。 『美味しい』と。 僕と悠介くんは手を弾き合わせて笑いました。 こうして悠介くんの存在は『やさしい国王』として貧民街に知られていきました。 けれどこうなると大変です。 貧民街の人たちだけが無料で食材を手に入れられるなんて間違ってるでしょう。 そうでなかったとしても、人間とは醜いものなのです。 きっと貧民街の外の人が知れば、食べ物を奪いにくるに違いありません。 僕と悠介くんはそれらの事柄を真剣に考えて、ある結論を出しました。 『貧民街のみんなは王様に頼まれて珍しい食材を作ってる。  貧民街のみんなはその報酬としてそれを分けてもらっている』という事実を作るのです。 僕と悠介くんは一緒に頷くと、まずは壊した壁を直しました。 空から見下ろせばきっと正方形のように四角だった筈のそれは、 一部分だけ飛び出したカタチになってしまいました。 ───それから僕らはどうしたと思いますか? 僕らは『国王は貧民街のみんなととある食材の開発をしている』という情報を流しました。 それは上手く広まってくれて、時々貧民街を覗きにくる人が居るけれど、 好んで貧民街に立ち入ろうとする人は居ませんでした。 だから街のみんなは開発されてる食材がどんなものなのか知りません。 けれどそれも時が経つとみんなの興味から消えてゆき、 貧民街は少しずつ明るさを取り戻していったのです。 今では貧民街の人の中では僕と悠介くんを知らない人は居ないくらいです。本当です。 やがて悠介くんが溜まった仕事に目くじらを立てた大臣さんに連れて行かれたある日、 僕もついに料理教室を終了させました。 料理教室、というのも……地界の料理を貧民街の人に教えるというものです。 貧民街の人達は貧しさからか熱心にそれらを勉強して、 今日を生きる知恵を身に付けていきました。 今では子供でさえ料理が出来るほどです。 そうなればこの街に調理をしに来ていた僕の存在も、要らないものになるんでしょう。 ですが僕は満足です。 この街の人々がこんなに眩しい笑顔をするようになったのです。 それは僕の感情をやんわりと暖かくしてくれる出来事でした。 そして僕が貧民街を離れる日が訪れました。 貧民街の人達は口々にありがとうとかいつでも来てくれとか言ってくれます。 散々一緒に遊んだ子供達は、僕の体にしがみついて泣いてくれています。 僕にとってこれは、きっと一生涯忘れることの出来ない思い出になったのだと思います。 僕は泣いている子供達をやさしく撫でると、ゆっくりとみんなに手を振りました。 悲しかったけれど、僕と悠介くんはきっと、この世界で何かを救えたんだと思います。 地界のみんな、僕らはまだしばらく帰れないだろうけど、どうか安心してください。 僕らは元気にやっています。本当です。 いつかそちらの世界に帰る時が来たなら、この話の続きをしたいと思います。  私は怖い
【ケース28:晦春菜/意味不明】 春菜 「………」 なにコレ。 水穂 「春菜お姉さん、どうしたんですかそれ」 春菜 「え?あ、うん。未来の空界って場所から、リヴァイアって人……     ほら、アッくんの記憶の中に居た空界の人がアッくんの手紙を届けてくれたの」 水穂 「手紙、ですか」 春菜 「うん。手紙なんだけど……」 どうして漂流教室風になってるのか解らない。 しかも最後が『うしおととら』の『引狭(いなさ)
の日記』になってる。 水穂 「うわぁ……これ書いたの彰利さんですよね?」 春菜 「こんなこと書くのはアッくんくらいだよ。でも───悠介くんも大変だね」 水穂 「王様になったって言ってましたよね。人の王にも竜の王にも」 春菜 「お姉さんとしては、悠介くんの未来がちょっぴり心配……」 水穂 「気持ちは解りますけどね……」 王様になるってどんな気分なんだろ。 悠介くんって王様っていうよりは江戸の殿様が合ってそうなんだけどなぁ。 それ言ってみたら『殿様は乱闘殿様だけで十分だ』って言うし。 乱闘殿様ってなんだろう。 水穂 「どちらにしても……お兄さんたちが居ないと静かですね〜……」 春菜 「フラットさんも若葉ちゃんも木葉ちゃんも静かだしね。     今ここで一番騒がしいといえば───」 声  「はぁああっ!!」 声  「たぁあっ!!」 声  「やぁあっ!!」 春菜 「……あれくらいかな」 水穂 「ですね」 庭では篠瀬さんとみさおちゃんと聖ちゃんが修行してる。 弦月屋敷で戦うことはせず、どうしてここで戦ってるのかは謎だね……。 【ケース29:???/───】 ゴコォ……ン……ヴンッ。 暗い空間にふたつの映像が出現する。 双方ともに空界に存在する国の王であり、 双方ともに空界を己の手中に収めることを望んでいた。 αー2「……オウファが死んだそうだな」 αー3「当然だ。王の器ではなかったヤツだ、死してそれこそ当然」 αー2「あとは我らか。我らの内どちらかがこの空界を治める」 αー3「レファルドに新たな王が就いたらしいが?」 αー2「敵ではあるまい。むしろ今こそレファルドを落とすべきだ。     王が新たに就いた今ならば、統率力など無に等しいだろう」 αー3「なるほど?レファルドといえど、我らが結託すればレファルドにも劣らぬ。     それこそ、王が交代した今こそ楽に潰せるというもの」 αー2「フン……その後は貴様と私、どちらが上かということになるな」 αー3「望むところだ。では───」 αー2「すぐに出よう。早い内の方がいいだろう」 αー3「では今宵にでも」 αー2「ああ。なに、夜明け前にでも潰せるだろう」 αー3「クククククッ……」 ゴコォン……闇に落ちた岩が鳴るように響く音。 それとともに映像のふたつが消えてゆく。 ───こうして、ひとつの国を狙ったふたつの国が結託した戦いが始まった。 ───……。 ……。 ザッ…… 兵士 「第一部隊から第十二部隊、配置完了しました」 隊長 「うむ。では合図とともに一斉に突撃を開始するぞ」 兵士 「ハッ」 隊長 「サン、ニィ、イチ───」 声  「ゼロ……」 隊長 「───!?何ヤツ!?」 隊長を始め、兵士たちが聞こえた声に振り向く。 そこには紙袋を被ったひとりの男が居た。 校務仮面「校務仮面だ」 隊長  「こ───!?」 兵士  「た、隊長、どうしましょう!」 隊長  「ここで騒ぐのは得策ではない───瞬殺せよ」 兵士  「ハッ───!!」 兵士達が剣や槍を構える。 やがてそれは紙袋を被った男───校務仮面へと襲い掛かる。 兵士1 「はぁっ!!」 校務仮面「遅い」 ピシィンッ!! 兵士1「なっ……!?」 兵士2「馬鹿な……!?」 が、振るった武具の全てが校務仮面の指先によって掴まれた。 校務仮面はそれらを指先で掴んだまま、押しても引いてもビクともしない。 隊長 「どういうことだ!?くっ……構わん!     ここは第一部隊に任せて他部隊はレファルドへと突撃せよ!」 兵士 『了解!』 兵士たちや他の隊の隊長が走る。 校務仮面はそれを確認すると消えた。 すると他部隊の前に別の校務仮面が現れる。 否。それはただ、兵士達にはそう見えただけだろう。 この場に居る敵はただひとりだ。 兵士9「っ!?馬鹿な、瞬間移動!?」 隊長2「惑わされるな!切り殺せ!」 兵士4「ハッ!」 兵士達が構える。 が、構えた瞬間にはその第二部隊が全滅する。 隊長11「ば、馬鹿な……たったひとりに……!?」 校務仮面「寝言は寝て言え。多数でかかったからってひとりに勝てる道理なんて無い」 隊長11「何者だ貴様……!!レファルドにこんな兵士が居るなど……!!」 校務仮面「校務仮面だ。校務仮面は校務仮面以外のなにものでもない。      即ち校務仮面であるならば校務仮面の素顔は絶対に秘密なのだ」 隊長12「素顔……?そうか、素顔を見れば誰かなど───」 校務仮面「素顔を見たいというのなら全力で抗うぞ。      校務仮面の素顔は絶対に秘密なのだ」 校務仮面が爆ぜた。 刹那、その場で人が吹き飛ぶ。 喩えるならば台風に巻き込まれた人間、とでもいうのだろうか。 ともかくその場に居た兵士や隊長たちの悉くは始末され、自国へと輸送された。 【ケース30:晦悠介/ムァンドゥルァグォルァ】 悠介 「くあぁ……ぁあふぅ……」 彰利 「眠そうやね。どしたん?」 庭でウォルトデニスを観察していた時だった。 ふと出た欠伸を彰利に見られ、俺は苦笑する。 悠介 「や……最近忙しいだろ?修行する暇なかったから夜中にやったんだけどさ……」 彰利 「夜中に?修行の虫やねぇキミ。     つーかさ、そげなもん国民に見られたら大変じゃない?」 悠介 「ああ、そう思って校務仮面被って修行してたんだ。     そしたら妙な騎士団みたいなやつらがこのレファルドに攻めてきてな?     それ追い返してた所為で無駄な時間を削っちまってな……。     その分挽回しようとしたら寝る時間無くなっちまって……」 彰利 「……あのねぇ王様?そげな無茶してるといくら死神でも死ぬよ?」 悠介 「解ってるんだけどなぁ……くぁあああ……」 彰利 「あい解った、んじゃあキミの体の時間を早めるから寝なさい。     そうすりゃ現実時間では短くてもキミの体感時間では十分寝れるデショ」 悠介 「ん……悪い、頼むわ」 彰利 「任せろ」 こくりと頷くと、俺は庭の木にもたれかかるように寝転がる。 それからゆっくりと目を閉じると、 体の周りに何か暖かな空気が入れられるような感触を覚える。 それに身を任せることで、俺はゆったりとしたまどろみに誘われるのだった。 ───……。 ……で、目を覚ます。 悠介 「……スッキリしたけどさ。寝たって感じがしないよな」 目を覚ましたのは二分後。 実際には俺は七時間は寝たことになってるんだが、 現実としての時間ではそんなもんだった。 よく寝たくせに出る溜め息を噛み締め、ゆっくりと立ち上がった───そんな時。 リヴァ「悠介───に検察官も居たか、丁度いい」 悠介 「リヴァイア?」 空間の歪みを通って現れるリヴァイアが居た。 彰利 「丁度いいってどないしたん。ワイに〜……なにか用か?」 リヴァ「ああすまない、手っ取り早く言えばそうなんだ。     そうなのに検察官の行動パターンは読みづらくてな、     なかなか捕まえられなかった」 彰利 「捕まえるって……なんか物騒だねぇ。まあいいコテ、話聞きましょ」 リヴァ「助かる。ちょっと素材収集を頼まれてくれないか?」 悠介 「素材……」 彰利 「収集……?」 素材収集ってアレか……? ルーゼンの干渉払いの時みたいに各地から集めたりとかなんとか…… リヴァ「そんなあからさまに嫌そうな顔をするヤツがあるか。     心配しなくても採集箇所はひとつだけ。     手に入れてほしい素材もそう多くないんだ」 悠介 「それならリヴァイアだけでもいけるんじゃないか?」 リヴァ「あー……すまん。     今やっている実験、あまり長い間目を離すと大変なことになるんだ。     だから放置は出来ない。そこでお前らに頼みたいわけなんだが……」 彰利 「よっしゃよいデショ。丁度暇してたし、やりましょう」 リヴァ「そうか、助かる」 ニコリと笑うリヴァイア。 だがしかし取ってきてほしい素材も聞かずに承諾するのは得策じゃない。 俺は念のためにリヴァイアにその点について問い詰めてみた。 するとあっさりと白状。……そりゃそうか、取ってきてほしいって言ってんだから。 リヴァ「取ってきてほしいのは『マンドラゴラ』だ」 悠介 「なにぃっ!?」 彰利 「マジで!?」 リヴァ「え?あ、ああ……本当だが……」 悠介 「マ、ママママママンドラゴラ……!!」 彰利 「マンドラゴラ……マンドラゴラ!!なんとファンタジックな響き!!     抜けばたちまち『ギャーーッ!!』と叫ぶと云われた伝説の植物!!」 悠介 「こ、これを見ないでファンタジーは語れないと云われた伝説の植物!!」 彰利 「叫び声を聞けばたちまち死に至ると云われるマンドラゴラ……!!」 悠介 「彰利!!」 悠介 「悠介!!」 ガッシィッ!───腕をぶつけ合わせ、ニヤリと笑う。 次の瞬間にはリヴァイアを睨んで─── リヴァ  「あ……す、すまん、やっぱり嫌か?」 悠介&彰利『喜んで承諾しよう!!』 思いっきり頷いていた。 リヴァ「………………そ、そうか……」 悠介 「で!?何処だ!何処に行けばいい!」 彰利 「言えぇええーーーっ!!言わんとこのレタスの命が無いわよーーーっ!!?」 悠介 「せめて『人質』にしような、彰利」 彰利 「えぇっ!?最強の『質』じゃん!人より重ェぜ!?」 悠介 「で、何処に行けばいい?」 彰利 「……やっぱ無視っすか」 言葉通り彰利を無視し、リヴァイアに訊ねる。 と、リヴァイアは溜め息混じりにコメカミを押さえつつ口を開いた。 リヴァ「……竜族……赤竜王ドラグネイルの領域になるんだが、     空界の北にあるウェルドゥーン山という場所に生えているものだ。     無茶だと思うならやめてくれていい。無理に行くような場所じゃない」 彰利 「赤竜王っすか……もしかして強い?」 リヴァ「……一度も見たことがない。困ったことに空界のどの歴史の本にも、     赤竜王ドラグネイルの情報だけは載っていないんだ」 悠介 「マンドラゴラか竜王か……選べってことか……」 彰利 「なぁ〜に言っとんの、こっちには悠介とリヴァイアが居るじゃない。     どんなドラゴンが来ようと、マグナスの時みたいにチョチョイのチョイよぉ!」 悠介 「………」 リヴァ「いや、検察官、わたしは……」 悠介 「……彰利、言っておくけど俺は『力』を支配の道具に使う気はないぞ」 彰利 「おろ?……ってまあ、悠介の性格上、そうなるか」 彰利は『たはは』と頭を掻き、『んじゃあ諦めるか?』と訊ねてくる。 俺はそれに対して思ったままの言葉で答えた。 悠介 「ん。ちともったいないけど無駄に刺激しない方がいい。     竜を斬れる武器と竜に立ち向かえる魔導の式があるからって、     それを盾に竜族に攻め入るのって、前国王と変わらないだろ?     それに……そんな力に溺れた戦いをすれば、絶対に負ける。     俺はこうして修行しながら守りたいものを守れればそれでいいよ」 彰利 「そか。伊達マッスル漫画界代表の     『大人版・孫悟飯』みたいに平和ボケするなよ〜?」 悠介 「平和ボケしてたら修行なんてしないだろ」 彰利 「……それもそうか。あ、じゃあ悠介、今日はちとその修行につき合わせてくれ。     鬱憤晴らし……ってわけでもないけど、少し体動かしたい」 彰利の提案を耳に、少し思案すると頷いた。 悠介 「解った。よく寝たし、寝起きの体を動かすか。     ───イメージ解放。染まれ染まれ染まれ染まれ、赤く紅く朱く緋く───」 イメージを解放する。 深淵を引きずり出すが如く、言を連ね、イメージを重ね─── やがて纏まったものの全てを世界として創造する。 悠介 「“───月詠の黄昏(ラグナロク)”」 イメージを弾けさせると、その場が俺を中心に黄昏の景色へと変わってゆく。 その景色を見ると、彰利もリヴァイアも感心したような顔をした。 彰利 「おー、相変わらず見事なもんじゃのー」 リヴァ「そうだな。世界を創造出来る存在なんて、天地空間中を探して何人居ることやら」 彰利 「オイラ、悠介しか知らんけど」 リヴァ「……わたしもだ」 口に出される言葉は、 なんだか呆れと感心を足して2で割ることもなく素で出したような声質だった。 彰利 「まあいいコテ。悠介〜、悠介の修行道具貸してくれ〜。リヴァイアもやる?」 リヴァ「……魔導術師としては興味があるな。     解った、修行道具ってやつをわたしにも貸してくれ」 悠介 「俺と同じのでいいのか?」 彰利 「オウヨ」 リヴァ「違うのをやってもデータにならないだろ。ほら、いいから貸せ」 悠介 「解った。本当に、いいんだな?」 リヴァ「……?くどいな。いいったらいい」 彰利 「そうじゃよ、さっさとしなされ」 悠介 「……まあ、いいけどさ」 イメージを解放、脇差二刀と野太刀、 篭手に胸当てに具足にその他もろもろを、直接装備させた状態で創造して渡す。 全て俺が使ってるのと同じものだが───ドゴォンッ!! 彰利 「グギィイイイイイイーーーーーーーーッ!!!!!!」 リヴァ「ぐあぁああああああーーーーーーーーっ!!!!!!」 ……双方ともに黄昏の草原に潰れた。 悠介 「……だいじょぶかー?」 彰利 「いででいでででで!!重っ!!重いっ!!痛い!!やめっ!ギャアアッ!!」 リヴァ「ば、ばばばば……げはっ!ば、かっ!こんなものが修行になるかぁっ!!」 悠介 「……今俺が身に着けてるのもそれなんだが」 彰利 「なんと!?」 リヴァ「……ぐふっ」(がくり) あ、死んだ。───じゃなくて気絶した。 悪いことをしたと思いながら、気絶したリヴァイアの装備を解除する。 ……彰利はそのままだが。 悠介 「彰利も死神なんだから鍛えれば平気になると思うぞ?     俺も……まあ『平気』って域には至ってないけど、振るうことは出来るし」 彰利 「…………これ、暇さえあれば毎日……?」 悠介 「ん?そうだぞ。やっぱり守りたいものを守りたい時に守れないのは嫌だからな」 彰利 「………」 彰利が信じられないものを見る目で俺を見上げた。 そして言うのだ。 『重力装置を使って潰れかけたヤムチャの気持ちが解った』と。 彰利 「キミさ、ぬぐっ……しょぉおおおおおっ!!!     この分ならっ……ドラゴンくらい……平気で担げるんじゃないかね……っ!!」 ズゴゴゴゴと無理矢理立ち上がる彰利。 その額には血管が浮き出てる。 悠介 「ドラゴンじゃないけど、飛竜なら持ち上げたぞ」 彰利 「ナニモンですかアータ!!」 ドゴォンッ!!! 彰利 「アモゲェエーーーーーーッ!!!!」 力の配分を間違えた刹那、彰利が黄昏の草原に沈んだ。 集中、乱すべからず。 彰利 「あぅう……あうぅううう……重い……重いYO……」 悠介 「鍛錬するに越したことはないぞー。スタミナも付くし、いろいろ楽しいぞ」 彰利 「スタミナって……あ、じゃあオイラダッシュ力付けたいわ。     なにかカリキュラムとかある?」 悠介 「カリキュラムがどうとかは知らんが……     少しずつ重りをつけて走り回るのがいいんじゃないか?」 彰利 「……疲れそうだからヤダー」 悠介 「お前、修行には向かねぇわ」 彰利 「任せろ」 威張るなよ、そんなもん……。 彰利 「しかしさ、ホンマにウェルドゥーン山に行く気無い?」 悠介 「行く気はある。あるけど事情と期待は別だろ?     好んで赤竜族と戦う気はないし、     現状が静かに進んでるならそれでいいんじゃないか?」 彰利 「そうじゃなくてさ。べつにさ、戦えって言ってるわけじゃねェンザマスよ。     行くか行かないか。これだけ。俺達は赤竜と戦うために行くんじゃなくて、     マンドラゴラを採りにいくだけ。この意味、履き違えんように」 悠介 「………」 まあ……そりゃそうなんだが、そう簡単に行くだろうか。 どうにもこの世界は俺に対して意地悪だ。 マンドラゴラ採った途端にギシャアアアォオオオンって赤竜が現れるに決まってる。 しかし……嗚呼、だがしかしだ。 マンドラゴラ……ファンタジーの真髄であるマンドラゴラ……。 悠介 「……なぁ彰利?よくよく考えたらマンドラゴラって     ファンタジーってわけでもないんじゃないかと思ったんだが」 彰利 「……あのねぇ悠介?     普通に考えて地界なんぞに叫び声を聞いただけで死ぬなんて草があると思うかね?     地界に無くて空界にありゃあそりゃもうファンタジーなの。解る?」 悠介 「無茶苦茶だなオイ」 気持ちはよく解るが。 彰利 「大体、ファンタジーってのは空想幻想妄想って意味なんだから、     俺達が思い描いたモンがここにあるなら───それはファンタジー!     オゥファンタジー!!ステキファンタジー!!」 悠介 「………」 凄まじい勢いではしゃぐ馬鹿者が居た。 ついさっきまで、 リヴァイアから見た俺もこんな感じだったのかと思うと少々恥ずかしかったりもする。 けど……うん、恥ずかしいだけで悪い気はしない。 悠介 「───よし、行ってみるか」 彰利 「マジかね!?」 悠介 「マジだ。というわけで……リヴァイア〜?」 俺は気絶しているリヴァイアの頬をぴしゃんぴしゃんと叩いた───が、起きない。 どうしたものかと途方に暮れると、その横で倒れてる馬鹿者が目ではなく顔を輝かせた。 彰利 「無粋!実に無粋!!おなごを起こす時はキスって相場が決まっとるんじゃい!!     顔黒ン次は緑って決まっとるンじゃい!!ビッグバーン先生ステキ!!」 悠介 「落ち着け。どうしてもやるっていうなら止めないが、責任はちゃんと取れよ?     お前、どうせまだ『男の欲望』が尽きてないだろ?     接吻なんかしたら絶対にキレて襲いかかるぞ」 彰利 「や……そんな軽蔑した目で見られると所在無いっつーかなんつーか……」 悠介 「もしそんなことになったら俺はお前のこと『藤巻十三』って呼び続けるが」 彰利 「自然に起きるの待とうか」 悠介 「それがいい」 ガイアばりのスマイル(かなり引き攣ってる)をしながら頷く彰利。 しかしながら、どちらにせよリヴァイアが起きるまでは暇である俺達は、 仕方なく───というわけでもないけど、 やっぱり修行に身を費やすことに決めたのだった。 彰利 「ふんぎんがぁあーーーーーーっ!!!!」 彰利は付けた重りをそのままに歩く練習をして、 俺はそれらを付けながら武具を振るってゆく。 ───……。 それが大体30分くらい続いた頃だろうか。 リヴァイアがゆっくりと目を覚まし、俺達を見て呆れていた。(主に動かない彰利を見て) リヴァ「……あまり無茶はするな。     重力鍛錬は少しずつ重さを増やしていかないと意味がない」 彰利 「ウゲゲ……そ、そうなん……?」 リヴァ「ああ。極端に重いもので鍛えた筋肉は瞬間的な力こそはあるが、持久力が無い。     そんな筋肉じゃあ窓ガラス一枚拭くだけで疲れるぞ」 彰利 「ウワー……じゃああそこであの重さを平気で振り回して、     しかも息切れしてないあの人何者?」 リヴァ「それだけ少しずつ高めていった証拠じゃないのか?     身体分析してみても、どれも理想的なものに至っている。     人体っていうのは不思議なんだ。ただ鍛えるだけじゃ高みなんかには行けない。     鍛えることと思考とが合わさって初めて高みに至れるんだ。つまり───」 彰利 「……鍛錬の鬼で思考も得意な悠介だからこそ、あそこまで至れると?」 リヴァ「まあ……そういうことになる」 彰利 「………」 リヴァ「………」 彰利とリヴァイアが俺をじぃ〜〜〜っと見てくる。 今度のは確実に感心などはなく、呆れだけの視線だった。 ───……。 ……。 一通り体を動かしたところで彰利とリヴァイアが座っている場所へと歩いた。 彰利 「つーわけで、オイラたちウェルドゥーン山に行くよ」 リヴァ「本当かっ!?助かる!」 彰利 「えらい喜びようですな」 会話は既にウェルドゥーン山の話に変わっていたらしく、 彰利の言うとおりリヴァイアは嬉しそうにしていた。 悠介 「マンドラゴラってちゃんとあれなんだよな?抜くと叫ぶ草」 リヴァ「ああ。確かに抜くと叫ぶな。けどその声を聞いたら死ぬなんてことはない」 悠介 「なんだそうなのか。     惜しいな、せっかく犬の代わりに彰利に引っこ抜かせようとしたのに」 彰利 「悪鬼ですかアータ!!」 悠介 「ああいや、冗談だよ冗談」 彰利 「グゥウウムムウウ〜〜〜ッ!!!」 しかし少々意外だった。 叫び声を聞いても死ぬことは無いのか…… まあ伝承ってのはあれでいい加減な部分もあるからな。 歴史は好きだが、伝承の誤りを考えるのもなかなか楽しい。 悠介 「とにかくそのマンドラゴラを採ってくればいいんだよな?」 リヴァ「ああ。ドラゴンと戦えなんて言わない。ただ───」 悠介 「ただ?」 リヴァ「ウェルドゥーン山には船でしか行けないんだ。周りは海と深い霧に覆われてる。     飛竜で向かうのは諦めた方がいい」 悠介 「そうなのか……ディルとかならなんとか出来そうなんだけどな」 リヴァ「あそこの霧は感覚を惑わす。狂いたくなければ大人しく海を渡っていけ」 狂うって…… 彰利 「質問。リヴァイアってばなんでそげなこと知ってんの?狂うだのなんだの」 悠介 「ああ、俺も疑問に思った。なんでだ?」 リヴァ「………」 訊きたいことを彰利が言うもんだから俺もつい聞きたくなって言ってみた。 ……が、リヴァイアは疲れたような顔をして溜め息をつくと───ひとつの名を口にした。 リヴァ「ヤムベリング=ホトマシー、という魔術師が作った霧なんだ。     先に確信させておきたいことがある。『魔導術師』じゃない、『魔術師』だ」 悠介 「魔術師……」 彰利 「それって魔女とかそういう方向での魔術?」 リヴァ「魔女か。確かにな、その名前はあいつによく合ってる」 悠介 「……?」 『あいつ』、ってことは……知ってる仲なのか? 悠介   「なぁリヴァイア、そのヤムベリングとかいうヤツとは知り合いなのか?」 リヴァ  「知ってる、というよりは空界で知らないヤツは居ないってくらいの存在だ。       この空界で魔導魔術、魔導錬金術、式以外の力───魔術。       その魔術自体を作ったのがヤムベリングなんだ」 悠介&彰利『な、なんだってぇええーーーーーーっ!!!!?』 その時俺と彰利はMMRと化した。 ───って待てよ? 悠介 「ヤムベリング……ヤムベリング=ホトマシー───ってあぁあっ!!」 彰利 「ギャア!?な、なに!?なにごと!?」 ヤムベリング=ホトマシー……そういやそんな名前をレファルドの蔵書で見たぞ……!? 齢二千以上とか言われてる、空界に唯一存在する『魔女』だった筈だ……。 魔術理論を確立させ、それを実践してみせたばかりじゃなく─── 弟子入りした者にそれを教え、世界に広めた第一人者とも云われている。 今や『クグリューゲルス』っていう魔術専門の街まで存在するほどらしい。 ……とまあ、そこまでは良かったんだが。 悠介 「あのさぁリヴァイア……。     伝承が正しければ、確かそいつ……物凄く性格が悪かったんじゃ……」 リヴァ「……その伝承、恐らく一字一句間違いないぞ。     魔術を世界に広めるだけ広めると、やることも無くなったらしく……     どんどんとやることがおかしな方向に曲がっていったんだ。     それこそ『魔女』のようにだ。     ホレ薬を作って道行く男女に飲ませて無理矢理結婚させたり、     適当な人物を攫って薬の実験体にしたり、と……」 彰利 「ウヒョウ……そら大変」 リヴァ「『ある意味で』母の知り合いだったんだがな、まあ……ハッキリ言えばゼロは     母が無理矢理飲まされたホレ薬の所為で産まれたと言っても過言なんかじゃない」 彰利 「アイタァアーーッ!!それ痛いよキミ!!」 リヴァ「父は早くに逝ったからな。     まあその、その寂しさからというのもあったかもしれない。     しかしたまたま行った天界でその効果が出てしまったんだ。     あとはもう済し崩しとしか言いようがない」 悠介 「………」 なんか頭痛くなってきた……。 リヴァ「けど気をつけろ。遊び好きだが実力は確かだ。     精神干渉なんかやられた日には戻ってこれない可能性もある」 彰利 「なんとまあ……マジすか」 リヴァ「特に悠介。お前の黄昏はあいつの心を擽りすぎると思う。     捕まったら最後、一から無限まで研究され続けるぞ。薬漬けなんてまだいい方だ」 悠介 「イヤな性格してんだなぁ……」 彰利 「男のひとつも作らんかったん?」 リヴァ「自分に見合う男が産まれるまでは男を作る気も無いらしい。     ここで言う『見合う』っていうのは実力だの興味だのの対象を言う。     いいか、これだけは言っておくぞ。あいつは『珍しいもの』に目がない。     悠介の黄昏にしろ検察官の鎌にしろ、今まででは考えられない能力だ。     あいつは……その、そういう『血』を研究するためなら、     自分の体さえ平気で差し出すような女……だと思う。     前例なんて無いから断言は出来ないが、あいつは絶対にそういうヤツだ。     ……いいか、絶対に捕まるなよ」 悠介 「……言われるまでも……」 彰利 「ない、よな……」 是非とも捕まりたくないと心から思った。 そのためにも空から行くのはやめておいた方がよさそうだ。 悠介 「じゃあ……えーと?船って何処から出るんだ?」 リヴァ「好んでウェルドゥーン山に定期便を出す馬鹿なんて居ない。     船を作るか誰かに頼むしかないだろうな」 彰利 「うあー……マジすか」 リヴァ「困ることなんてないだろ。     ここに国王が居るんだ、船のひとつやふたつ、民に作らせればいい」 悠介 「却下。俺は極力国の権力には頼らないことにしてる。     船くらい俺と彰利で作るさ」 彰利 「俺もッスカ!?」 悠介 「お前もッス」 彰利 「うう……切ねぇっす……だがしかし!     悠介よ、ここはひとつ男らしく(いかだ)で行くべきではないかね?」 悠介 「それだ。やっぱり日々に刺激を求めるなら根本から危機的状況に追い込むべきだ」 リヴァ「……どうなっても知らないからな」 リヴァイアはモシャアと溜め息を吐きつつその場を離れた。 しかしハタと何かを思い出したようにこちらに戻ってきて、式を編んで俺達に振り撒いた。 悠介 「リヴァイア?」 リヴァ「保険だ。期待はするなよ」 悠介 「……?」 それだけ言うとリヴァイアは歩いていってしまった。 何処に行くつもりなのかは知らないが……俺と彰利は顔を見合わせて笑った。 悠介 「よっしゃあ筏作りだ!張り切ろうぜ親友!!」 彰利 「おうとも親友!グゥウウウッレイトゥ!!」 こうして俺達のマンドラゴラを求めた旅は始まった。 始まりは準備からとも言うかもしれないし、 まだ筏も出来てないだろうというツッコミはご遠慮願いたい。 Next Menu back