───FantasticFantasia-Set13/命懸けの釣りと代償───
【ケース31:晦悠介(再)/砕けた屠竜】 空界北部、漁業の町・アッサラント。 漁師 「おぉ?若いの、筏なんて持って何処に行く気だい」 完成した筏を海面に浮かべたところで、 極上のスマイルをした漁師のおっさんに訊ねられた。 悠介 「ウェルドゥーン山」 彰利 「夢の待つ場所」 だから正直に答えた。が─── 漁師 「ウェルドゥーン山……ば、馬鹿かおめぇら!     そんなもんであそこに行けるわけがねぇだろ!!」 彰利 「バカとはなんだコノヤロウ!!」 返ってきたのは罵倒のみだ。 さすがに無茶か? いや───そんなことはない筈だ……やれば出来る、出来るのだ。 漁師   「あの山にゃあ近づくんじゃあねぇ!怪我だけじゃあ済まねぇぞ!?」 悠介&彰利『私は一向にかまわんッッ!!!』 漁師   「んなっ……!?」 悠介   「ケガが怖くて夢が見れるか!!」 彰利   「夢だけでメシが喰えるか!!」 いや、それは関係ないと思うぞ彰利。 ともあれ俺達は筏に飛び乗り、櫂を手にして水を掻き始める。 漁師 「ど、どうなっても知らねぇぞーーっ!!?」 彰利 「俺も貴様がどうなろうと知らん」 漁師 「俺はべつにどうもならんわっ!!」 彰利 「さらばじゃぁあ〜〜〜〜っ!!!」 漁師のおっさんにハンケチーフを揺らす彰利をよそに、俺はひたすら櫂を動かした。 遠くなる陸と、小さくなるおっさん。 やがて十分に別れを堪能した彰利が櫂を手に水を掻く。 彰利 「え〜んやこらえぇ〜〜んやこらぁ」 悠介 「はぁ〜……空の旅もいいけど、こうしてゆったりと海を旅するのもいいなぁ」 彰利 「特に筏ってのがいい。ステキすぎるぜ」 悠介 「だな。こうして波に揺られてると釣りをしたくなる」 海を見下ろしてみれば、恐ろしく澄んだ海水が存在していた。 深いところの岩まで見えて、地界の海との雲泥の差を思い知らされる。 彰利 「おぉおお!!魚ぞ!魚がたくさんおる!!確かにこりゃあ釣りしたくなるわい!     つーわけで、ハイ」 スッと差し出される手───俺はそれに握手(アクセス)
する。 が、すぐに振り払われる。 彰利 「そうじゃござんせん!釣具と餌プリーズ!」 悠介 「………」 ……なんか今、のび太に頼られるドラえもんの気持ちが解っちまった。 なるほど、自分でなんとかしろっていうお前の考え、正しいよドラえもん。 悠介 「……ほら」 彰利 「オウサンキュネー」 でも創造しちまうあたり、俺もドラえもんも弱いらしい。 彰利 「おっ、餌は『釣りカエル』ですか。なんともモンスターハンターチックな」 彰利は早速、渡された釣竿と餌で釣りを始め、俺はそれをボ〜ッと眺めた。 悠介 「………」 空には綺麗な太陽。 陽の光はポカポカと暖かく、さらにこの海のゆったりとした波が眠気を誘う。 彰利 「おお見ろ悠介、飛び魚だ!飛び魚がおるよ〜!」 悠介 「ん───って、ほんとだ」 彰利が指差す方向には確かに飛び魚が居た。 海を跳ねるように数メートル飛翔し、やがて海に潜ってゆく。 実に飛び魚だ。 彰利 「ツッピン♪ツッピン♪と〜び〜う〜〜おツッピンピン♪」 悠介 「……随分懐かしい歌だな」 彰利 「俺も今自分で歌っててそう思ったよ……ムオッ!?」 ヘニャラと恥ずかしそうな顔をした彰利だったが、 海に垂らした糸が引くと同時に真剣な顔に変わった。 彰利 「ぬっ!くっ!こ、こりゃあデケェぜ!?大物だ!!」 悠介 「一応針は刺さったらイメージ解除するまで外れないもので、     糸も釣竿もそう簡単に切れたり折れたりしないイメージ付きだ、頑張れー」 彰利 「オ、オウヨ!!グッ……ぬ、ぬおおおおおおおおっ!!!!!」 メキメキメキメキメキメキ……!!!───釣竿が恐ろしいくらいにしなる。 しかし折れず、糸が切れることもない。 逆に言えばそうまでして釣れない得物となると…… 悠介 「……針が岩に挟まってるんじゃないか?」 彰利 「───…………そ、そげなことないよ!?」 かなりの動揺だった……一応予感はしてたらしい。 彰利 「ホラ悠介も手伝って!絶対に岩なんかじゃねぇんだかんな!?     岩だったとしてもそれさえも釣ったるわい!!だからホレ!!」 悠介 「解ったよ……っと、ほんとに重いな」 その引きは、俺が持ってもとても重いものだった。 岩くらいなら持ち上げられる自信があったんだが───これは相当に重い。 まあ岩っていったって根付いてる───っていったら妙だけど、 地殻自体はさすがに持ち上げられるわけがないし。 しかしそれらを考えるのはこの際あとだ。 どちらにしろ針が引っかかったまま切ったり放置したりするのは常識違反だ。 釣りをやるのならマナーを守れってのは確かにその通りだろう。 よって強引にでも持ち上げる。 悠介 「ッ───クゥウウウォオオオオオオオオッ!!!!!」 彰利 「ぬぉおおおおおおおおおっ!!!!!」 ふたりして、既に極限までにしなった竿をさらに引いた───その時だ。 竿から伸びる糸が左右に動いたのだ。 つまりこれは─── 彰利 「えっ!?ウソ!マジ!?これって何かに引っ張られてるってこと!?     なに!?もしかしてフォルテさんが釣り上げた幻の超巨大魚!?」 悠介 「誰だよ!とにかく相手が海の生き物なら釣り上げるのが釣者の勤め!!     いくぞ彰利!!全力で引く!!」 彰利 「オウヨ!!歌えぃ!野郎ども!!」 合図とともに思い切り引いた。 すると、糸がそれとともに左右に動く───これは確かに生き物だ。 ならばこちらも負けるわけにはいかない───!! 彰利   「ヨイヤッサァッ!ヨイヤッサァッ!!」 悠介   「ヨイヤッサァッ!ヨイヤッサァッ!!」 悠介&彰利『ハァア〜〜〜〜〜〜ッ!!       海ぃの〜おぉ〜〜とこぉにゃぁよぉ〜〜〜〜ォ〜〜ォ〜〜ッ!!       沖ィンのォカァ〜〜〜モメんもぉ〜〜寄り付ッかァぬゥ〜〜ッ!!       陸ンのカァ〜〜カァ〜がぁ〜泣こぉっとンもぉ〜〜〜〜っ!!!       誰ェンがァとぉ〜〜〜るやンらぁ〜〜いちばぁ〜〜〜んもぉおおりッ!!       ハァダンッチョネェ〜〜ダンッチョネェ〜♪(ヨイヤッサァ、ヨイヤッサァ)       ハァ大漁だぁ〜〜大漁だぁ〜〜♪(ヨイヤッサァ、ヨイヤッサァ)』 悠介   「って歌ってる場合かぁっ!!」 彰利   「楽しそうに歌ってたじゃないキミ!!」 悠介   「やかましい!!」 引き、さらに引く。 しかし全力を出してもなお、相手の方が引きが強い。 リールを巻くも、こちらは足場である筏ごと引っ張られている。 彰利 「おおう……何者?」 悠介 「とりあえず……バカデカイ相手ってのは間違いないと思うなぁ俺……」 彰利 「……キミと一緒に居ると、ホントバカデカイ相手とよく当たるね……」 悠介 「頼むからそんな目で見ないでくれ……」 俺だって好きで巨大なヤツにぶつかってる訳じゃない。 とはいうものの、 筏ごと引っ張られながらもとりあえず引きまくったリールの先が下にある。 その煌く魚影を見るに、大きさは相当なわけである。 俺と彰利は顔を見合わせて盛大に溜め息を吐き散らした。 ───サンハイ。 悠介&彰利『リヴァイアサンだぁあーーーーーーーっ!!!!ドゴォッパァアアアアアアアアンッッッ!!!! 海の表面張力を破壊して現れた存在はリヴァイアサン。 間違いない……この姿カタチ、絶対に間違いようがない……!! 彰利 「す、すげぇや釣りカエル!!     モンスターハンターでガノトトス(巨大水竜)を釣り上げるだけのことはある!!」 悠介 「感心してる場合かぁああーーーーーーっ!!!!!」 これはヤバイ!逃げ道がない!! 釣り上げちまったものはしょうがないが、 是非ともキャッチアンドリリース精神を全開にしたい気分だ! 悠介     「……さ、さぁ、海へお帰り?」 リヴァイアサン「キュォオオオオオオオオオゥウウウンッ!!!!」 悠介     「やっぱ無理だぁあああーーーーっ!!!!」 咆哮するリヴァイアサンを前に、なんとも物悲しい気分になる俺であった……。 彰利 「よし行け悠介!竜王の力、見せてやれ!」 悠介 「人に言う前にお前が行け!」 彰利 「なんと!?そりゃ俺に死ねって言ってるんですか!?」 悠介 「だったらお前も俺に死ねって言ってるんじゃねぇか!!」 彰利 「そったらことござんせん!!俺を騙そうったってそうはいかねぇぜ!?」 ツピシュッ───ゾッパァアアアアアアアンッ!!!!! 悠介&彰利『オギャァアーーーーーッ!!!!!』 リヴァイアサンの口から放たれた水鉄砲が 筏の中心にあった棒と旗、その先の海面を切断した。 その棒の断面図といったら─── 彰利 「お、おおおおううう……鋼鉄の街のポルナレフもびっくりの断面図……!!     水をどれだけ圧縮すりゃあこんなに綺麗に裂けるんだよ……!!」 ───まるで綺麗に割れたガラスの断面図のように滑らかだった。 その時点で言うことなんてひとつ。 悠介&彰利『逃げよっか』 これに限ると思う。 こりゃ勝てんわ。 悠介 「陸に繋がるブラックホールが───」 ツピシュンッ!! 悠介 「だわぁっ!!?」 創造しようとした途端に水鉄砲……つーか水鉄砲じゃあ済まされないくらいの水が。 彰利 「なにやっとんの!月空力───」 ツピシュンッ!! 彰利 「オギャアアッ!!?」 月空力を発動させようとした彰利にも、それは舞い降りた。 悠介 「………」 彰利 「………」 どうやら逃がす気はまるで無いようです。 どうしよう……。 リヴァイアサン『貴様らから感じるぞ……。         我が半身とも言える存在、ベヒーモスを殺したな……?』 彰利     「イエス!この人が!」 悠介     「ばっ───いきなり親友を売るヤツがあるかっ!!」 リヴァイアサン『そうか貴様が……!!許さんぞ、人間……!』 悠介     「だぁあっ!!誤解だっ!         確かに倒したのは俺だけど逆恨みされる覚えはぁああっ!!!」 彰利     「悠介悠介!ちと訊きたいんだけど!」 悠介     「なんだよこの忙しい時に!誤解解かないと大変なことになるだろ!?」 彰利     「戦いを始める時の合図ってなんだったっけ?ちと平和ボケしちまって」 悠介     「アホォッ!それは“戦闘開始(セット)”だってあれほど───ハッ!?」 戦闘開始を唱えた途端、プレートがキキィと輝いた。 彰利     「よし行け、ファイトだ友よ」 悠介     「おぉおおんのれはぁあああああああっ!!!!!」 リヴァイアサン『ギシャアアァアアアアォオッ!!!』 悠介     「っ〜〜〜……!!」 彰利     「ギャアアア耳痛ェエーーーーッ!!!!!」 鼓膜が破裂するかと思うくらいの咆哮。 それもこんなに近くでやるもんだから、筏も海面も軋む軋む。 悠介 「ああもうこうなりゃヤケだ!!いいかっ!?お前も戦えよ!?」 言いながら黄昏を創造する。と─── 彰利 「ウワ〜、綺麗なお花畑だぁ〜〜」 黄昏の景色の中、草原を駆け回るように跳ね回る馬鹿野郎が居た。 悠介 「咆哮くらって一秒経たずに逃避すんなぁあーーーーーっ!!!!」 彰利 「ヒィイごめんなさい!でもオイラ怖かったんだ!!」 悠介 「アレはお前が釣ったんだろうがぁっ!!!!」 彰利 「んー……あんま怒るとハゲるよ?」 悠介 「髪の毛毟り取ってからリヴァイアサンに捧げられるのと、     そのままでリヴァイアサンに捧げられるのとどっちがいい……?」 彰利 「オイラ頑張ってリヴァイアサンと戦うよ!!」 悠介 「そうか、じゃああとは任せた」 彰利 「ちょっとキミそりゃないんじゃない!?」 ツピシュゾッッパァアアアアアンッ!!!! 悠介&彰利『おわぁああーーーーーっ!!!!!』 筏がバラバラに裂かれた───なんてことだ、そうだった。 会話なんてしてる場合じゃない。 悠介 「ッ───海に沈まない地盤が出ます!弾けろ!」 イメージを弾かせ、ここら一帯の海の上に地盤を張ると同時に疾駆。 彰利もそれに習い─── 彰利 「とんずらぁああーーーーーっ!!!」 ───信じらんねぇ!あの野郎逃げやがった!! 悠介 「こっ───こらてめぇええええっ!!!」 彰利 「ごめんよ高松くん!ぼく怖かったんだ!!」 逃げる彰利に向けて閃速疾駆。 地盤を踏み砕き、風を切るとあっと言う間に追いついた。 彰利 「速ェエエエーーーーーーッ!!!!」 悠介 「これはこれは……随分とお久しぶりですねぇ……」 彰利 「……えーと。てへっ?」 その後彼はリヴァイアサンが見ている前で、俺の手によってボコボコにされた。 ───で。 悠介 「───ハッ!」 と気づけば、ぐったりして動かなくなった彰利。 悠介 「あー……」 それとはべつに、ゆっくりと振り向けば─── む〜〜〜んと威圧感を発しながら空に浮いているリヴァイアサン。 リヴァイアサン『友を傷つけぬために気絶させたか……いいだろう。         その意気に免じて、その男には手を出さないでやる』 悠介     「………」 しかもなにやら盛大に誤解していらっしゃる。 ていうか俺が固定目標かよ……。 リヴァイアサン『感じる……感じるぞ。ベヒーモスを殺したのは貴様だ。         確かにな、貴様以外に興味などない……他の者が居ても邪魔なだけだ』 勘弁してください。 リヴァイアサン『どうした、構えよ。そのまま死にたいか』 悠介     「死にたくは───ないな」 戦うしかないのか……───覚悟、決めろよ……俺。 悠介 「“───戦闘、開始(セット)”」 自分の意思として戦闘開始を唱えると、不思議と覚悟が決まった。 リヴァイアサン『クォオオオオオオオッ!!!』 悠介     「───!!」 放たれる咆哮。 ドラゴンではないのに、目の前のリヴァイアサンが放つ咆哮は竜族のそれに酷似していた。 俺はすぐさま背に掛けている鞘から屠竜剣を抜いて構えた。 悠介 「“Light(ともせ)───”」 指に光を。虚空に式を。 ───編み、そして紡げ───望むべき力……! 悠介 「疾───!!」 描いた光が俺の中に消える。 描いた式は力を増幅させるもの。 俺の頭の中に撃鉄が落ち、軽い興奮状態を齎した。 爆発させるように地盤を蹴り弾き、リヴァイアサンへと疾駆した。 リヴァイアサン『クォォウウッ!!』 バジュゥウンンッッ!!! 悠介 「くわっ!?」 しかし放たれた水撃が地盤を砕くと、疾駆が止められる。 が、疾駆を止める代わりに跳躍。 リヴァイアサンに向かって屠竜剣を振るった。 リヴァイアサン『フン───』 ギヂィイインッ!!! 悠介 「ッ───!?」 振り切るが、その鱗にはせいぜい傷をつけることが出来た程度だった。 切り裂くまでには至らない───! 悠介 「ど、どういう堅さ───……!?」 驚愕するのも刹那。 横から瞬速で襲い掛かってきた尾撃が、 とっさに構えた俺の腕を砕き───さらに俺の体を地盤へと叩き付けた。 悠介 「かっ……は……!!───チィッ!!」 息が詰まったが無理矢理体を起こして構える。 しかし─── 悠介 「っ……つはっ……!!」 鋭い眩暈が意識を襲う。 立っていられず、思わず膝をついてしまった。 リヴァイアサン『クォオオオオオオオッ!!!』 そこへ水撃が放たれる。 なんとか避けようとしたが───ゾパァアンッ!! 悠介 「ッ───!?が、ぐぁああああああっ!!!」 足の先が水撃によって裂かれた。 次の瞬間には血が溢れ、立つことさえままならなくなる。 悠介     「ッ……!!」 リヴァイアサン『……弱い。貴様、それでよくもベヒーモスを殺せたものだ……』 悠介     「ぐ、づ……!!───足を治す霧が出ます!」 足の先を治し、立ち上がる。 その様子を見たリヴァイアサンが顔をしかめ、鼻で笑った。 リヴァイアサン『───そうか、貴様……創造者(クリエイター)か』 悠介     「っ……」 立ち上がるが、まだ視界が定まらない。 このままじゃあ満足に戦えないと判断した俺は、 体の中に魔力を流し込んでグリフォンとフェンリルを召喚。 さらに黄竜珠と緑竜珠と蒼竜珠から ディルゼイル、ヴァルトゥドゥス、アーガスィーを呼び出した。 それらが目の前の敵を見て一言。 フェンリル『リヴァイアサンか……』 グリフォン『王よ……』 ディル  『無茶も大概にしてほしいのだがな……』 ヴァル  『命が要らないのですか、王』 アーガ  『無茶が好きなのか蒼竜王』 悠介   「……最初に言っておくけどな。       俺だって好きで強くてデカい敵と戦ってるわけじゃないぞ……?」 フェンリル『ベヒーモスに蒼竜王マグナス、       次にリヴァイアサンとくればな……そう思われても仕方が無いがな』 悠介   「あー……くあっ」 返事を返そうと思ったが、眩暈とともに俺は倒れた。 ディル『王?』 悠介 「だ、大丈夫だ……眩暈がしただけだ」 意識を集中させる。 だが───完全に回復するまで時間がかかりそうだった。 イメージを力に変えて戦う俺としては、脳震盪や眩暈は相当に厄介なものだった。 リヴァイアサン『召喚獣に異なる竜族の飛竜か……これは驚きだな。         それで、そいつらを出してどうする気だ?』 悠介     「………」 リヴァイアサン『……そうか。ベヒーモスもこうして囲んで殺したわけか。         それならばあのベヒーモスが死するのも頷けるがな』 悠介     「………」 リヴァイアサン『───なんとか言ったらどうだ?それとも図星か?』 悠介     「………」 リヴァイアサン『つまらんな。もういい、消えろ───!!』 悠介     「───っし!!」 リヴァイアサン『ぬ───!?』 立ち上がると同時に召喚獣と飛竜の全てを帰還させる。 召喚獣と飛竜から小さな罵倒も届けられたが、だからって退けない。 リヴァイアサン『貴様……まさか私とひとりで戦う気か』 悠介     「お前がそれを望んでるんだろ?         普通に時間を稼いでもらおうと思ってあいつらを出したけどな、         お前が御託並べ続けてくれたお蔭で頭の方も落ち着いた」 リヴァイアサン『───なに?まさか貴様、最初からひとりで───!?』 悠介     「死神、晦悠介。お前に一騎打ちを申し込む」 リヴァイアサン『フッ───これは滑稽だ。この私とひとりで戦───』 悠介     「“伎装弓術(レンジ/アロー)死生担う毒巨槍(アキレウス)”」 バジュンッ───ガギィンッ!! リヴァイアサン『ぬ───!?』 悠介     「言おう言おうと思ったけどな。お前、うるさいよ」 弓で放ったアキレウスが 屠竜剣で削ったリヴァイアサンの鱗に突き刺さる───が。 リヴァイアサンの尾撃によって弾かれる。 リヴァイアサン『小賢しい……不意打ちが貴様の戦略か?』 悠介     「不意打ち?……おかしなことを言うなよ。         戦闘開始を唱えた時にもう戦いは始まってるだろ。         まあお前が御託を並べてくれたお蔭で助かったんだけどな。         だからもう話はいい。         ひとりで勝てるなんて最初から思ってないけどな、         復讐を考えてるヤツと大人数で戦うのは趣味じゃない」 リヴァイアサン『戯言だな。         趣味がどうので命が救えるならば迷わずそうするべきだろうに』 悠介     「お前はそうするのか?……しないだろ。         自分がやらないことを人に押し付けるのは感心しないぜリヴァイアサン」 リヴァイアサン『……ほう。目つきが変わったな。         先ほどまでの柔らかい目つきがウソのようだ』 悠介     「───“三十矢の地槍(ゲイボルグ)”」 キィッ───バジュンッ!! リヴァイアサン『ぬっ───!?』 放った槍が三十の矢へとなり、リヴァイアサンに降りかかる。 しかしそれを微動だにせず全て受け切ると、リヴァイアサンは俺を睨んだ。 リヴァイアサン『貴様……』 悠介     「言っただろ。復讐しに来たヤツや敵討ちに来たヤツに遠慮はしない。         復讐や敵討ちなら相手が殺す気で来るのは当然だ。         だったら恐怖なんて邪魔な感情はこの際捨てるべきだ。         ……安心してくれ、だからって慢心するつもりも甞める気もない。         俺はただ全力で、あんたと戦うだけだ」 黄昏が紅蓮に染まり、それと同じくして俺の目が真紅に染まる。 悠介 「……勝とうだなんて思わない。ただ最後に……俺が生きていられればそれでいい」 キィ、と弓を引き絞る。 創造された槍───不避死を齎す破生の竜槍(ゲイボルグ)を見て、リヴァイアサンは不適に笑った。 リヴァイアサン『生きれるか?私を前に』 悠介     「生きるさ。そのためには───あんたが邪魔だ!!」 バガァッチュゥウウウウンッ!!!───ゲイボルグが空を裂く。 リヴァイアサンの顔目掛けて放ったそれは、 しかし変則的に向きを変えるとリヴァイアサンの体のとある部分へと突き刺さった。 いや、厳密には鱗に傷も付けてないが───それで十分だった。 悠介     「……そこが心臓か」 リヴァイアサン『なに───!?貴様、何故……!!』 強すぎる力に頼るのは好きじゃない。 けど───全力で行くって決めたから。 だから───!! 悠介 「───魔導、展開!!“伎装剣術(レンジ/ブレイク)”!!」 式を描き、自分の中にそれを叩き込む。 それとともに俺の中に『魔導』が精製され、それが引き金となって屠竜剣が輝きだす。 熟練を積んだ魔導術師なら『魔導展開』の言を言うだけで魔導を精製できるが、 俺みたいな素人は式を描いて引き出してやらなきゃいけない。 魔導を精製する理由はふたつある。 ───ひとつ。 エクスカリバーをより強力に放つため。 ───ふたつ。 式の効果をより高めるため───!! 悠介 「疾───!!」 式を描き、力と速度を上昇させる。 地盤を爆発させるように弾かせて疾駆し、一気に距離を詰めてゆく。 リヴァイアサン『なにを企んでいるのかは知らんがな───!!         人間なぞ我が尾撃で……!』 尾撃が振るわれる。 その速度たるや、まるで勢いに乗った鞭が弾かれる瞬間のようだった。 だが───! 悠介 「“黄竜斬光剣(エクスカリバー)”!!!」 ザギィイイイイイインッッ!!!! 剣を覆う黄金の輝きが、巨大な尾を斬り砕く───!! リヴァイアサン『グゥォオオオオオオオンッ!!!!』 弧を描き消滅する尾と、それに次ぐように放たれる咆哮。 しかしそうしてリヴァイアサンが怯んだ時、俺はもう次の攻撃に出ていた。 ───油断することなかれ。 敵は一撃で倒せると思うな。追の撃も無しに戦いを成せる訳も無し───!! 悠介 「ォオオオオオオオッ!!!!」 屠竜剣にさらなる輝きが灯り、黄金に赤が混ざる。 それはまるで、戦斧石の輝きにも似た極光だった。 リヴァイアサン『小僧がぁあああああっ!!!!』 虚空に水の塊が精製される。 次の瞬間には放たれ、あたかも弾丸のように俺へと向かってくる。 しかし既にイメージなんてものは頭の中に叩き込んである。 あとは引き金を! 悠介 「イメージ、超越にて解放!“無限を紡ぐ剣槍の瞬き(インフィニティ・バレット・アームズ)”!!!」 イメージの解放とともに、虚空より幾数もの剣と槍が放たれる。 それは確実に水の弾丸を弾き殺し、それでもなおリヴァイアサンに襲い掛かる。 それらの全ては超越された光の武具であり、 既にベヒーモスに効かなかった“既存”ではない。 狙うは───傷のある心臓部分のみ! リヴァイアサン『小癪───!!』 が、リヴァイアサンは己の心臓部分を守るように体を折る。 光の剣槍の悉くが堅い鱗を削り、弾かれるが─── その中の数本が軌道を変えてでも心臓を狙う。 ……ゲイボルグだ。 悠介 「───!」 それを確認すると同時に、 虚空から出てはリヴァイアサンを襲う武具にイメージを流して創り変える。 創り変えられ、空気を裂くのは当然不避死を齎す破生の竜槍(ゲイボルグ)。 飛翔する武具の全てがリヴァイアサンの心臓を狙って飛翔する。 リヴァイアサン『ッ───おのれぇええええええっ!!!』 再度の咆哮に耳を傷めながらも、俺も風を斬る。 イメージを屠竜剣に流し、式で跳躍力を強化し、さらに式を重ねて魔導を最大に───!! 悠介 「至光にて万物を砕かん!     満たし、さらに満たせ!その意が覇王の剣と化するまで!」 屠竜剣から放たれる極光が、文字通り極なる光へと変貌する。 それを強く握ると黄金の輝きに赤が混ざる。 ───そんなこと今さらだ。 この屠竜剣の錬成に戦斧石が使われているなら、 あの細工好きのじいさんが中途半端な仕事をするわけがない───!! 悠介     「おぉおおおおおおおおおぁあああああっ!!!!」 リヴァイアサン『忌々しい小僧めがぁああああああっ!!!!』 リヴァイアサンが俺に向けて水撃を放つ─── 刹那、駆けていた体が爆発するように前へと進み、水撃は俺の背後の地盤を砕くのみ。 身体能力の向上に加え、漲る力の感覚はまさに戦斧石のそれだった。 リヴァイアサン『ガァアアアアッ!!!』 次々と心臓を穿とうと突き刺さるゲイボルグを前にしても、 リヴァイアサンは俺のみに的を絞った。 その意を示すかのように上下から襲い掛かる鋭い顎。 悠介 「イメージ変換───“三十矢の地槍(ゲイボルグ)”!!」 飛翔する槍にイメージを流し、再び変換する。 刹那、心臓を穿とうとしていた槍以外のゲイボルグが、 高い位置にあるひとつを残して全て三十矢へと変わる。 ドゴザガガガガガァアアォオオオオンッ!!! リヴァイアサン『ぬっ───!?おのれぇえっ!!』 リヴァイアサンの巨大な口へと、まるで光の散弾銃のように降り荒れる三十矢。 それが幾つも襲い掛かるのだ、相手としては鬱陶しいことこの上ないだろう。 しかしそれでもリヴァイアサンは俺を噛み殺そうと顎を降ろした!! リヴァイアサン『塵と砕いてくれる!!』 悠介     「甘いんだよッ───!!」 リヴァイアサン『なにっ!?』 それはリヴァイアサンにとっては意外な伏線だっただろう。 屠竜剣で砕き、アキレウスの毒で少しずつ侵食されていた皮膚にそれは落とされた。 捻り穿ち、さらに砕き─── 轟音を立てて皮膚を貫かんとする光は魔剣を砕く主神の輝槍(グングニル)。 高い位置に存在していた一本のゲイボルグを変換させておいたものだ。 文字の連なりから放たれた極光は凄まじく、 超越を実行するまでもなく鱗が砕けたリヴァイアサンの皮膚を裂き殺してゆく。 リヴァイアサン『ガァアアアアアアアアッ!!!!』 悠介     「疾───!!」 それはまさに一瞬の怯み。 グングニルが皮膚を捻り穿とうとする激痛に怯んだ時に出た、一瞬だが最大の隙だった。 ───いや。隙が出来るのも当然なのだろう。 かつて、否……今まで生きた生涯、あの鱗を貫ける武具など存在し得なかった。 しかしそれが穿たれ、肉を傷つけられるなど恐らく初めての体験。 その激痛に、一瞬たりとも怯むことなく居られるなど不可能だったのだろう。 俺はその一瞬の隙をついてリヴァイアサンの顎の下をくぐり抜け、 未だゲイボルグたちが貫かんとしている心臓部分まで一気に駆けた。 リヴァイアサン『グォオオオッ!!!小僧がぁっ!!』 しかし。 駆ける俺を横から襲うものがあった。 それは髭であり、だがそんなものでさえ大きさ自体が違えば凶器にでもなんでもなる。 現に───ゾパァンッ!! 悠介 「ぎあっ───!?」 いとも簡単に、俺の右腿の先の感覚が消失した。 絞められたどころの騒ぎじゃない。 文字通り消失したのだ……弧を描き、地盤に落ちる右足とともに。 悠介 「ッ───ツガァアアーーーーーッ!!!」 だが回復など後でいい。 そう───俺は以前にも足を失い、後悔を噛み締めた。 真剣勝負の中で───それも命のやり取りの中で自ら隙を産むわけにはいかないんだ!! 悠介 「届けッ───!!“黄竜(エクス)ッ……斬光剣(カリバ)ァアアアーーーーーーッ”!!!!」 ガカァアアッ!!キィイイイイインッ!!! 片足一本での心許ない跳躍と、しかし渾身の力で振るわれるエクスカリバー。 その極光は鋭い音を放ち、ゲイボルグが削っていた鱗を完全に斬り裂く! リヴァイアサン『グギャァアアアアォオオオオオンンッッ!!!!!』 絶叫はまるで雷鳴。 海面を波立たせ、飛沫さえも飛ばすそれの大きさは超常現象めいていた。 だが確実に黄金の屠竜剣はリヴァイアサンの鱗と皮膚を突き破り、 ついには心臓を斬り裂いていた。 リヴァイアサン『グッ……馬鹿な!!ベヒーモスだけではなく私までもが───!?         ……ッ……いいだろう……貴様の力、しかと見届けた。だが───!ギヂィンッ!! 悠介 「ッ!?」 黄金の屠竜剣が悲鳴を上げた。 嫌な予感がして振り返ろうとしたが───ガシャァアアアンッ!!!! 悠介 「なっ───……!?」 割れた音さえ涼しげに。 俺が手にしていた屠竜剣は、バラバラに砕け散った。 リヴァイアサン『ッ……クッ……フハハハハ……ただでは消えてやらぬ……!         だがこれで……ベヒーモスのことは忘れよう……。         せいぜい足掻け、人間の小僧……』 言い残されたことはそれだけ。 リヴァイアサンは大きな咆哮を上げ、やがて───塵となって消滅した。 悠介 「……───」 だが。 そうして戦いを終えてもまだ、俺は砕けた屠竜剣を見下ろして呆然としていた。 悠介 「───あ……っ───足を治す霧が出ます……弾けろ」 しかしふと我に返ると切り裂かれた足を治し─── 砕けた屠竜剣をバックパックに入れてその場に倒れた。 悠介 「……落ち着けよ、俺……」 向かってきた敵を倒せたんだ、それは素直に喜ぶべきだ。 そしてそれは、屠竜剣が無ければ出来なかったこと。 また作れるかなんて解らないけど、まずはゆっくりと落ち着けばいい。 悠介 「…………はぁ」 しかしこの胸の中に渦巻く嫌な感じは決して消えない。 落ち着きようがなくなった俺は未だ倒れている彰利を起こした。 錬成工房のじいさんの所に行こうとも思ったが、 自分の都合でリヴァイアの頼まれごとを後回しにするのは嫌だった俺は、 彰利とともにそのままウェルドゥーン山へと向かった。 Next Menu back