───FantasticFantasia-Set14/ウェルドゥーンの赤い魔女───
【ケース32:弦月彰利/……ベリーさん】 ややあって、深い霧が景色を覆うウェルドゥーン山へと到着。 オイラと悠介は陸へと降りた。 彰利 「元気だせYO〜、いいじゃん武器のひとつで命が助かったんなら」 悠介 「そうだな……」 彰利 「グムムーー……」 悠介くんたらリヴァイアサンとの戦いで剣を折ってしまったらしく、滅茶苦茶沈んでます。 しかし武器が無くなったから落ち込んでいるのではなく、 どちらかといえば作ってくれた人への申し訳なさかららしい。 彰利 「えーじゃないの、リヴァイアサン倒して新たな素材手に入れたりしたんでない?     だったらそれを素材にして新たに武器作ってもらえばよいのです」 悠介 「そうだな……」 彰利 「うう……暗いよぅ……」 まるで敗北した伊藤チャンと会話してる三橋みたいな気分……。(今日から俺は!より) これは一刻も早くマンドラさんを探して引っこ抜くしか……ねェぜ!? 彰利 「押忍!早速マンドラゴラ探しに四苦八苦します!さあ!彼奴は何処ぞ!?」 ───なんて意気込んだ時でした。 我が足元をテコテコと歩く、どっかで見た覚えのある物体が居たのです。 それは…… 彰利 「タッ───タイニーさん!?」 タイニーマンドラゴラ…… 早く言えば某オンラインゲームのサルタバルタ地方に生息する植物モンスター……。 そやつにとてもよく似た物体が歩いておるのです。 彰利 「………」 あ……やばいよ? なんだかとっても戦いたい気分───!! オイラは早速“戦闘開始(セット)
”を唱え、拳を構えました。 さらにマキィンと体を光らせ、ご存知不意打ち攻撃を───!! 彰利 「ほりゃあっ!!」 ジョパァンッ!! T・M「ゴギュッ!?」 Akitoshiの攻撃、TinyMandoragoraに1のダメージ! 彰利 「ショボッ!!つーか強───」 T・M「ホギャッ!」 メゴシャァアアンッ!!!!! 彰利 「ギョォォオオオオエェエエエエエーーーーーーーッ!!!!!」 TinyMandoragoraの攻撃、Akitoshiは298のダメージ!! ───それは突然のことでした。 タイニーさんの腕が突然デカくなったと思ったら、その腕でオイラのことを殴ったのです。 その様はまるで、『土着モンスター・ニョロリン』の如き強さ……。 殴られたオイラの体は風を切り、遠く離れた岩肌に叩きつけられたのでした……。 ───……。 ……。 彰利 「……タイニーさんには間違っても攻撃しないようにしよう……」 岩肌にめり込んだ体を抜き取りながら言った。 しかしまあなんとも悲しいことよ……あいつ強すぎだよ……。 やっぱりさすがファンタジーだね……。 見た目と強さが必ずしも正比例してるとは限らないや……。 彰利 「うん、よし、普通にマンドラゴラ探しましょうか。     んー……悠介とはハグレちまったけど、なんとかなるデショ」 ウムスと頷いて歩き始めた。 しかし……まあなんとも白いことよ。 ほんとにこげなところにマンドラさんが生えてるんかねぇ。 ……いや、タイニーさんじゃなくてだよ? 彰利 「あいやしかし……これは困りましたよ?どれがマンドラさんなのか解らん」 見渡す限りの草、草、草。 どれを引っこ抜いていいものやら解らず、 まあとりあえずは手頃な草を引っ掴んで引いてみました。 するとモコリと姿を現す───……タイニーさん。 彰利 「キャアァアアアアーーーーーーーーッ!!!!」 T・M「ホキャァッ!!」 メゴシャァアアアアンッ!!!! 彰利 「ブゲェエエエエーーーーーーッ!!!!」 ……空飛びました、ええマジで。 ───……。 ……。 彰利 「次こそ、次こそ……」 ズボリ……─── T・M「………」 彰利 「………」 抜いてみたらタイニーさん……またしても俺は空を飛びました。 ───……。 彰利 「おがががが……!!つ、次こそ……!!」 ズボリ…… T・M「………」 彰利 「ギャーーーッ!!」 飛翔……。 ───……。 彰利 「うぶっ……ごえげ……」 顎が砕け、鼻が砕けてなお引っ張りました。 今度のこれは今までのやつと違って草の形が違うから大丈夫、絶対に……。 ズボリ…… T・M「………」 彰利 「………」 ……あの。泣いていいですか? ドカバキ!! 彰利 「ギャァアアアアアアーーーーーーーッ!!!!!」 ───……。 彰利 「もうやだ……ここ、タイニーさん多すぎだよ……」 既に13回フライトしました……お蔭で顔面変形気味です。 治しても治してもおっつかないんだもの……。 彰利 「リ、リヴァイアに“送信(トランス)”……」 顔面ボコボコ状態でリヴァイアに送話を送信。 大した間も無くそれは繋がり、俺はマンドラさんの特徴を訊くことにした。 マンドラゴラの特徴は─── ギザギザの葉が三枚、花は咲いていない、紫に近い色……それが特徴なんだそうだ。 彰利 「ところでさ、あのタイニーさんってなんなの?」 声  《たいにーさん?なんだそれは》 彰利 「ウェルドゥーン山のそこら中を歩いておるよ?時には地面に潜ってたりするし」 声  《……聞いた覚えが無い。もしかしたらそいつは召喚獣かもしれない》 彰利 「召喚獣って……」 声  《……気をつけろ。     言うのを忘れていたが、その家にはわたしの祖母の家がある。絶対に近づくなよ》 彰利 「祖母?ホッホゥ、そりゃご挨拶に行かねばなるまいて。名前は?」 声  《察しが悪いやつだなっ……!!     だからっ!ヤムベリング=ホトマシーっていうのはわたしの祖母だっ!!》 彰利 「────────────へぇえええっ!!!?     だだだだって名前に『ゼロ』が無いじゃん!!ゼロ一族じゃないじゃん!!」 声  《祖母は何かに属すのが嫌いなんだっ!だから祖父と連れ合い───い、いや!     祖父を実験体に使った時も名を変えなかった》 彰利 「実験体って……結婚したんじゃないの?」 声  《……母であるイセリアが何処で産まれたか知りたいか?》 彰利 「いや……あまり知りたくないかも……」 多分試験管とかビーカーの中とかだよ……? ああもうリヴァイアのママさんたらなんて不憫な……。 声  《……祖母が飲み空けた酒の瓶の中だ》 彰利 「アイッタァアアアアーーーーーーッ!!!!!」 痛ェ!!すっげぇ痛ェ!! なにそれ!空界の伝説に残るほどの『究極』を作り出した人が酒瓶の中で!? 声  《祖父はな、それはもう情け無い男だったが能力だけは素晴らしかった。     それで祖母に狙われ、捕まり、その……魔力と精子を抜き取られ、捨てられた。     祖父の魔力と精子は祖母の魔力と卵子とを融合させられ、母が産まれたんだ》 彰利 「……酒瓶の中で?」 声  《酒瓶の中でだ……》 あぁあああ……イタイ……イタイよトニー……!! 声  《ご、誤解がないように言っておくけどな、     わたしはちゃんと母から産まれたんだからな。     流石に酒瓶で産まれたりなんかしない》 彰利 「あ、大丈夫大丈夫……誤解なんかしとらんから……」 ただイタくてイタくて……。 彰利 「あれ?つーことはなに?ヤムさんってば結婚もしてなければ初夜もまだ?」 声  《……そういうことを孫であるわたしに訊ねるかお前は》 彰利 「訊くね!俺は!」 声  《はあ……そういうことだ。言っただろ。     【自分に見合う男が産まれるまでは男を作る気も無いらしい】って》 彰利 「はぁ……そうザンスねぇ。     でもオヴァーチャンなんでしょ?誰が好きに好んで……」 声  《……会ったら驚くぞ。外見はわたしより若い》 彰利 「あ……そ、そうスカ」(想像出来ねぇえーーーーっ!!!!*心の叫び) ツンツン。 彰利 「ウィ?悪いけど今電話中なんじゃよ。用があるならあとにしときんさい」 ?? 「誰と?」 彰利 「ダイヤルQ2です。気にしないでください」 ?? 「Q2?なにそれ」 彰利 「子供は知らなくていい───はうっ……!!」 戦慄ッッッッ……!!! 大変ですトニー!僕の目の前におなごが居ます!! しかもリヴァイアより少しだけ小さいです! 普通、こんな場所におなごがひとりで居るでしょうか!! それってつまり───!! 彰利 「あ、あのー……オイラこの場所にマンドラゴラ探しに来たんだけど。知らない?」 ?? 「マンドラゴラ?そこらへんに生えてるじゃない。     どれでも取ってっていーわよ?その代わり───」 彰利 「そ、その代わり……?」 ?? 「モルモットになって?」 彰利 「ビンゴォオーーーーーーッ!!!!」 大激走!!もちろん脇目も振らずに!! しかし!ああしかし!! ?? 「うふふふふ〜♪ど〜こ行〜くの?」 彰利 「キャーーーッ!!!」 トーントーンとまるで軽く跳ねるようにオイラの横に付いてくるおなご!! やべぇ逃げられねぇ!!しからば───!! 彰利 「ごめんなさい!     オイラおつかい頼まれただけだからモルモットにはなれないのです!!」 ゾシャシャアと立ち止まって説明開始。 しかしおなごはクススッと笑って言いました。 ?? 「それじゃあ、魂くださいなっ?」 ……放たれた言葉がこげなもんじゃなかったら、惚れちまいそうな可愛らしい笑顔でした。 彰利 「美しいお嬢さん……どうかこれから僕がすることをお許しください」 スッと近づき、小さくスベスベの肌をした顎をクイと持ち上げた。 やがて俺はソッと口を寄せてゆき───ブシィッ!! ?? 「くぁぅうっ!!?」 ご存知、轟天弦月流毒霧をプレゼント。 見事に彼女の目を襲った毒霧は、彼女の視界を完全に塞いだのでした。 彰利 「とんずらぁああーーーーーーーーっ!!!!」 もちろん俺は、彼女が苦しんでいる間に逃げました。 ああ、自由ってステキです。 ───……。 ……。 ドパタタタタタタ……!! 彰利 「ハァアアまったく冗談じゃあ……ねェぜ!?っと、悠介ハッケーン!!」 悠介 「んあ……ああ彰利か……」 彰利 「まだ腐ってたんかい!ところでキミに頼みがある!     今から俺が想像するものを創造してくれ!」 悠介 「なんだよ……今俺は……」 彰利 「───ヤムベリング=ホトマシーと遭遇した」 悠介 「よし、何を創ればいい?」 彰利 「ワァオ……」 凄まじい変わりようでした。 どうやら空界の歴史書には相当なことが書かれていたらしい……。 彰利 「えーと……よいかね?     オイラがイメージしたものを創造してくれりゃあそれでよいです」 悠介 「ああ、そりゃ構わない」 彰利 「よっしゃ!───イメージ完了!ハイどうぞ」 悠介 「よし───弾けろ!!」 ポポムッ! イメージが弾かれると同時にその場にふたつのベルトが創造される。 俺はその内のひとつを手早く装着し、ボタンをポチリと押した。 するとポムという音とともに我輩の体がタイニーマンドラゴラへと変わった。 悠介 「……お前、それって」 Tさん「Tさん……略さずに言えばタイニーさんだ」 言って、クルクルと回転して光合成をする俺を見て、ポカンと口を開ける悠介。 Tさん「さ、キミも早く。     このままでは人体実験から、果てはあげなことやそげなことまで」 悠介 「コレつけて……どうすりゃいいんだ?」 Tさん「そこ、そこのスイッチを押せばよいんですよ」 悠介 「これか?」 ポチリと悠介がスイッチを押す。 するとポムという音とともにTさん二号に変貌。 Tさん二号「こりゃまた……妙なモン創らせたなぁ」 Tさん一号「こうしないとヤバそうなんよ。ひとまず───」 ザッ─── Tさん一号「───!!」 気配を感じました。 俺は咄嗟にTさん二号に『声を出すな』とアイコンタクト───二号はしっかりと頷いた。 ……次の瞬間。 ?? 「あー、そこゆくマンドラちゃん達〜」 Tたち『!!』 聞こえた声にビックゥと緊張を走らせた。 恐る恐る振り向いてみれば、そこに居るのはヤムベリングさん。(確信はないが) ??   「ここらへんにツンツンした頭のコ、走ってこなかった?」 Tさん一号「…………」 その質問に対し、ユラユラと動きながら葉っぱのような手をヒラヒラと動かした。 ?? 「…………ふむ。てっきり変装でもしたのかと思ってたけど。     まいったなぁ、何処に行ったんだか」 ヤムベリングさんが頭をコリコリと掻きながら歩いてゆく。 オイラと二号はモシャアアアアと溜め息を吐いた。 Tさん二号「……魔女っていうからもっとしわくちゃかと思ってたのに」 ??   「そう?わたしとしてももう少し警戒心強いと思ったのに」 Tさん一号「へ?」 ムンズと頭が掴まれた。 後ろを向こうと思っても頭ごと持ち上げられ、どうにも後ろを見るどころじゃない。 しかし頭を掴むてがゆっくりと動くと───その顔が我らの眼前に曝け出された。 ?? 「やぁやぁお客さん、いらっしゃい」 Tたち『きゃああああーーーーーっ!!!!』 振り向かされた先に居たのはヤムベリングさんでした。 Tさん一号「あ、あの……ヤムベリング=ホトマシーさんとお見受けしますが……」 ??   「え?あはははは、なに、わたしのこと誰かに聞いてきたの?」 ……やっぱりヤムベリングさんっすか……。 Tさん一号「えーとですね?オイラあなたの孫のリヴァイアに頼まれてマンドラゴラを」 Tさん二号「へ?って、えぇっ!?孫ぉおおおおおっ!!!?」 ヤム   「うん?なんだ、そっちのキミは知らなかったの?       ってそうそう、わたしのことはベリーって呼ぶこと」 Tさん一号「へっ!?いえいえ!おばあちゃんをそんな風に呼ぶなんて恐れ多い!」 ベリー  「───」(ビシッ) Tさん二号「うわ馬鹿っ!!」 Tさん一号「へ?」 メキキッ!! Tさん一号「ごぁああっ!!?」 頭蓋……!!頭蓋がメキキって……!! ベリー  「おばあちゃん……!?おばあちゃんってだぁれっ!!?」 Tさん一号「オギャアアアアーーーーーッッ!!!!」 おぅっ!爪がっ!爪がめり込んでっ!頭蓋がメキッて!ぬおっ!おうっ!! ベリー  「いぃ〜〜〜い?どう見たってわたしは可愛い『お姉ちゃん』でしょぉ!?       そのわたしの何処を見ておばあちゃんなんて言うの!?」 Tさん一号「……可愛いお姉ちゃんって誰?」 ベリー  「───」 ズバァン!グシャッ!!! Tさん一号「ギャヤヤーーーッ!!!」 ベリ−  「かァわいいオネェサンってだァれェ!?」 Tさん一号「あ、あなたです……!!」 地面に投げ捨てられて容赦なく踏まれました……こりゃ痛い。 『俺が質問してんだ馬鹿野郎』くらい言いたかったんだが、この人マジで怖いです……。 ベリー  「よろしい。もう間違えないようにね?というわけでこっちいらっしゃい。       ちょっと貴方たちのこと調べたいわ」 Tさん一号「いえ急ぎますのでこれで」 メキリッッ!! Tさん一号「いえあの……是非立ち寄らせてくださひ……」 ベリー  「よ〜ろしい」 Tさん二号「……なにかが決定的に間違ってる……」 万力以上の力が頭を圧迫した時、オイラはもう頷いてました。 うう、怖いよぅ……。 【ケース33:弦月彰利(再)/ようこそここへ、遊ぼうよパラダイスロスト】 ガコッ……ガチャン。 霧だらけの山の高い位置にぽつんと点在していた屋敷があった。 屋敷、といっても無駄に広いわけでもなく、 たしかにここなら魔女は住んでそうだなと思うような場所だ。 俺と悠介はタイニーさんの姿のままでそこの内部に連れてこられ、 今丁度後ろで入り口のドアが閉ざされたところだった。 Tさん一号「ひんやりと寒いですな……」 Tさん二号「そうだな……」 屋敷の中は寒かった。 家庭にあるであろうぬくもりもなにも皆無。 ……まあ俺から言わせてもらえば家庭のぬくもりなんて解らないわけだが。 溜め息を吐く俺をよそに、ベリーさんはどんどんと歩いてゆく。 ドアを開け、廊下を歩き、階段を下りて階段を登って。 やがてとあるドアを開けると、そこには見覚えが少しあるような場所が存在していた。 ベリー「さ、ここがわたしの工房。ゆっくりしていくといいわよ」 ……あぁそっか、ここってリヴァイアの工房の雰囲気に似てるんだ。 どうりで見覚えがあるような気がしたわけだ。 Tさん一号「で……オイラたちここでどうなるんでしょうか」 ベリー  「んー?まあそれは置いといて」 Tさん一号「えぇっ!?置かないでよ!大事なことだよコレ!!」 ベリー  「なんか文句あんの?」 Tさん一号「アリマセン……」 ベリー  「よろしい」 困った……この人、まず目が怖いです。 人には生きた分だけ凄みがあるっていうけどありゃホントだ。 ベリー「べつに心配せんでも取って喰ったりゃしないわよ。     ただ意識調査と資料が欲しいだけだから」 言って、オイラと悠介を離すベリーさん。 俺と悠介は顔を見合わせて『どうしたもんか……』と盛大に溜め息をついた。 ベリー  「ハイそっちのマンドラちゃん。あんたそこ座って」 Tさん一号「オイラ?」 ベリー  「そーよ、早く」 Tさん一号「ケッ、自由が手に入れば俺のものぞ?誰に命令してんだエンシェントババア」 ビジュンッ!ゾッパァアアンッ!!!! Tさん一号「……ハカ……」 ベリー  「美しいお姉さんって───だぁれぇ?」 Tさん一号「ア、アナタデス、ハイ……」 ……オイラのすぐ横に『加減されたエクスカリバー』が放たれました。 ダメです、逆らったら死にます。 この人ただのエンシェントババア(太古のババア)じゃないです。 それから年寄り扱いは寿命を滅亡させます、気をつけましょう。 というわけで指定された場所に座ったオイラは、これからの自分の行く末を案じた。 ベリー「“接続(アクセス)───”」 オイラが座るのを確認すると、 ベリーさんは虚空に躍らせるように指を這わせ、次々と何かを処理してゆく。 ベリーさんの目の前には妙な画面が展開されており、 次々と上から下へと流れていっている。 ベリー  「ふんふん、死神ね。それも特殊な鎌を持った。こりゃ珍しい」 Tさん一号「珍しくないから返してクラサイ」 ベリー  「次はあんたね。ほらちゃちゃっと動く」 Tさん一号「無視っすか……」 俺がその場を離れると、次は悠介が底に座る。 まあ悠介というかタイニーさんというか。 ベリー「“接続(アクセス)”」 言が唱えられると、画面が新たに展開される。 そこには呆れるくらいの文字があり、しかし空界文字なのでなにひとつ解りませんです。 ベリー  「こっちも死神───だけど妙だね。       死神のくせに神の波動も持っていて、それもこれは『創造神』のもの。       さらにドラゴンルーラーの称号も持っていて、       わたしが召喚したベヒーモスもリヴァイアサンも殺してみせた、と」 Tさん二号「……ありゃあんたの仕業か……」 ベリー  「ん、そうよ?いつか誰かが倒してくれるのを待ってたってわけよ。       キミ、ベヒーモスとリヴァイアサンのオーブ出して。早く」 Tさん二号「ちょっと待った。       リヴァイアサンは解らないけどベヒーモスのオーブなんて持ってない。       それは確認したから間違いないぞ」 ベリー  「御託はどうでもいいから出せって言ってんのが聞こえないの?       ベヒーモスとリヴァイアサンは元々が一対の存在。       片方倒したところでオーブなんて永久に手に入らないわよ。       解ったらほらオーブ。出しなさい」 Tさん二号「………」 二号が溜め息を撒き散らしながらアンテを唱える。 するとその場にデカいバックパックが出現し、ゴシャアと落ちる。 二号はベルトを外して悠介に戻ると、その中を物色し始めた。 ベリー「あ゙……」 それを見て何故か愕然とするベリーさん。 何事かは知らんが、何か気に障ったんじゃあるまいな……。 悠介 「……本気かよ……本当にオーブがふたつありやがる……」 そんな中で、悠介がその手にふたつのオーブを手にしていた。 ベリーさんはそれを見るとハッとして、フムと頷く。 ベリー「……竜王の珠は?持ってるでしょ」 悠介 「ああ。黄竜珠と緑竜珠と蒼竜珠だ」 首に下げてはいたが、黒衣に隠れていた珠を見せる。 ほうほう……今までじっくり見たことはなかったが、アレが…… ベリー「解ったわ、んじゃあコレあげる。四つ無いとカッコつかないしね」 悠介 「へ?」 ヒョイと投げられた赤い珠を受け取る悠介。つーか…… 悠介 「お、おいこれって……」 ベリー「んあ?言ってなかったっけ。現赤竜王はわたし。     そんでもって、飽きたからあげる」 悠介 「なっ……」 あ、飽きたからあげるって…… ベリー「いいから首に下げて。早く」 悠介 「………」 納得いかない顔で、しかししっかりと赤竜珠を首に下げる悠介。 すると───タラララスッタンタ〜ン♪ 突如、その場に蔓延していた空気をブチ壊す気の抜けた音楽が鳴った。 ベリー「……よし、と。“四竜を統べる竜王(ドラゴンマスター)”の誕生ね。案外あっけなかったなぁ。     もっとウワーとかキャーとかいう喜びがあると思ったのに」 悠介 「珠自体を投げ渡されたりしなければそうなってたと思うな。     それより───前赤竜王はどうなったんだ?」 ベリー「死んでるわよ、随分と前に。     その珠を持ってたのだって、わたしがたまたまその死期に居合わせただけ。     ようするに寿命だったのよ」 悠介 「寿命……」 ベリー「それよりこの世界の癒しを治してくれたようね。ありがとう、感謝するわ。     もっともっと早くにこの世界に居てくれたなら、赤竜王も子孫を残せただろうに」 悠介 「───じゃあ。この世界にはもう───」 ベリー「居ないわ、赤竜なんて存在は。     残ってるのはその赤竜珠と、ワイバーンの存在だけ」 悠介 「………」 ギリッ……という音が聞こえた。 その音が、悠介が歯を噛み締めた音だなんてことはすぐに理解できた。 ベリー「あんたが悔やむ必要なんて無いけどね。まあいい、それより───」 悠介 「……?なんだよ」 ベリー「そのオーブと契約するの?だったらちょっと試してみたいことがあるんだけど」 悠介 「……手にしたものを試さないのはファンタジー世界に立つ男として恥ずべき行為。     やるさ、契約してやる」 ベリー「そ。じゃあ───」 ベリーさんが悠介が持つオーブを手に取った───瞬間、ニヤリと笑って手を翳す。 悠介 「っ……!?てめっ───」 何かを感知したであろう悠介だったが、あっという間にその場に崩れ落ちてしまった。 やがて───ベリーの目が俺に向けられる。 ベリー「創造神と鎌をコピーする死神かぁ……しばらく退屈しないで済みそうねぇ」 Tさん「ッ───」 なんて愚か。 リヴァイアの忠告も忘れて、どうして俺はいつの間にかこいつの言うとおりに動いてた? そもそもヘンだった。 今までなら殴られようがなにしようが人には逆らってた俺がこの有様…… まさか─── ベリー「接続してるから考えてることなんて筒抜けだけどね。     そう、ようするにこの山を覆ってる霧を吸い込んだ時点で、     とっくの昔にあんたたちの意思なんてものはイカレてたってこと」 Tさん「ぐっ───この……!!」 人の道を教えてやろうと駆け出した。 が───その瞬間に地面が目の前に迫り、どうしてか俺は転倒した。 Tさん「あぐっ……!?ど、どうなって……」 ベリー「魔導術師にして魔術師である存在の工房……いわば相手の壇上で暴れるなんて、     それは最初からステージを履き違えたバカにしか出来ないこと。     そしてそんな馬鹿に遅れを取るほど力が足りないなんてことはない」 Tさん「ば、ばかとはなんだこの……やろう……!!」 ベリー「へえ、ねばるわね。普通なら気絶して動けなくなるところなのに」 Tさん「ふ、ふふふ……あ、生憎このワシは……強ぇえのよ……」 ベリー「そのザマでよく───っ!?」 その時、どうしてか視界が崩れた。 なにが起こったのかは解らなかったが、感じたのは次元の歪み。 抗う力もなかった俺は、そのままその歪みに身を任せた。 ベリー「……リヴァイアか。     わたしの魔力を感知したら転移する仕掛けでもかけてたってことね。     いいわ、今日のところはこれでお帰り。     ここにはまた来るだろうから、その時はいろいろしてあげるわ」 転移する瞬間、最後に聞こえたのはそんな言葉。 しかし満足に聞き取ることさえ出来ず、俺の意識は深い深いところへと沈んでいった……。 Next Menu back