───FantasticFantasia-Set17/竜人、晦悠介───
【ケース39:晦悠介/『ディルゼイル』は空界語で『創造の剣』ってことになってる】 ───……ゆっくりと目を開ける。 見える景色は懐かしいと感じる見慣れた風景───母屋の天井だ。 悠介 「……つっ……」 ズキリと頭が痛んだ。 それはまるで、神降に行った時のような気分だった。 それで確信するのだ……自分の体は既に神側のものなのだと。 悠介 「ったく……余計なことしやがって……」 死神の場の力を遮断する膜でも創造しようかと思ったが─── 自分の生まれ育った場所でそんなことをするのは嫌で、結局創造はしなかった。 ……それでいい。 こんな辛さ、ゆっくりと慣れていけばいい。 悠介 「………」 ふとリヴァイアと目が合った。 リヴァイアは溜め息を吐いて『迷惑をかけた』とだけ言って、虚空に浮かぶ画面を見る。 不思議に思って見てみれば、画面の中には彰利と姉さんと篠瀬と日余が居た。 ……っていうことは、これは彰利の精神の中か? 悠介 「彰利にも精神干渉してたのか?」 リヴァ「お前ほど酷いものじゃあなかったけど、まあそんなところだ。     今は検察官の『好き』という感情を見つけるんだとか言って、     精神の中をうろついている」 悠介 「大丈夫か?精神干渉って長い間やってると危険だったろ」 リヴァ「だからさっきから何度も言ってるんだけどな……。     あの女ども、ちっとも聞きやしない」 悠介 「……アホゥ」 溜め息をひとつ吐き、俺は庭に出て四つの竜の珠から四飛竜を呼び出した。 精神の中でヤムベリングに吸い出されたものがなんだったのか気になったからだ。 悠介 「体調に変化はないか?」 ディル『血が……足りぬ』 ヴァル『……まともに立ってもいられません。不甲斐ないばかりです……』 アーガ『ちくしょう……あのエンシェントババアめが……』 ???『………』 その場に居る飛竜の内、一体は苦しげに俺を見て黙っていた。 そういえば───赤飛竜に会うのはこれが初めてだ。 悠介 「俺は晦悠介。お前は?」 ???『……ヘイルカイトという。以後、よろしく頼む……』 悠介 「……そっか、よろしく。じゃあお前ら少しそのままで居てくれ。     今からお前らの分析して必要な血液を創造するから」 ディル『……王よ……頼みがある』 悠介 「ん?どうした?」 ヴァル『王……貴方は融合の能力を持っているのですね……?』 悠介 「ん───ああ、それも創造してるだけだけどな。それがどうかしたか?」 言いながら分析を開始する。 まずはディルゼイルからだ。 アーガ『……面倒だからよ、俺達のこと……融合しちまってくれねぇか』 悠介 「───へ?」 ヘイル『……そうだな。四体居るよりも一体で居る方が王のためにもなるだろう……』 悠介 「ちょっと待て。     俺はやるなんて一言も言ってないぞ?なんだってそんなことになるんだよ」 ディル『解らないか……既に我ら固体では王の役には立てん……』 ヴァル『王、我らは貴方とともに在りたい。     しかし役立たずのままで傍に居るのは屈辱でしかありません』 アーガ『俺はどうでもいいんだけどよ……     エクスカリバーのこと抜きにすりゃあ、俺はあんたのことが嫌いじゃない』 ヘイル『受け入れろ、王。魔女が我らから抜き取ったのは血液だけじゃない。     魔女は我らから血液とともに力も抜き取り、王に流し込んだのだ。     理解するのだ王……指の一本で魔女があれだけ吹き飛んだ意味を』 悠介 「………」 ディル『王、どの道今のままの我らでは全てにおいて以前の我らに劣る。     それは王の理力だろうと作りだせるかは解らない。     ならば我らを四つの珠ごと融合させ、ひとつにしてほしい』 悠介 「…………」 思考する。こいつらの言葉がウソかどうか。 けど俺にはそんなものの答えが見えなかった。 だから……直接訊くしか方法が無かった。 たとえどう答えられるか予想出来ていたとしても。 悠介 「───ひとつ、聞かせてほしい。それは本心か?」 四飛竜『偽りのない本心だ。どうか王とともに居させてほしい』 悠介 「………」 こういう時、なんて言ってやればいいのか解らない。 べつに俺は力が弱まったからってこいつらを邪険に扱うつもりはない。 傍に居たいっていうなら居てくれて構わなかったし、 役立たずなんて言うつもりもなかった。 でも───ああ、そうだ。 それがこいつらの願いだっていうなら……俺はきっと叶えてやらなきゃいけないんだ。 王だなんだって言われたって、俺はいつの間にかこいつらを友達のような感覚で見てた。 いつか『友達はひとりでいい』なんて言ってた俺が、自然にだ。 おかしくて笑っちまう。 でも、だからこそ……友達の願いは叶えてやるべきなんだ。 それが、友達に対する俺の精一杯の気持ちだろうから。 悠介 「……“月詠の黄昏(ラグナロク)
”」 黄昏を創造する。 それを確認すると四飛竜はそれぞれ俺に別れの言葉を吐いて、珠の中に消えてゆく。 最後に……ディルゼイルが俺を見て言った。 『お前との旅は、私の生涯の宝だった』と。 そんな言葉を耳にしながら、四飛竜が入った四つの珠を首から取って見つめた。 そうしてからゆっくりと月癒力を創造してゆく。 悠介 「……俺もだ。お前との空の旅は、     息苦しかったし顔が痛かったけど……とても楽しいものだった」 四つの珠が輝き、ゆっくりと合わさってゆく。 俺はそれを眺めながら静かに溜め息を吐き……やがて光が治まる頃、 虚空に浮かんでいる珠を手に取った。 悠介 「………」 鼓動を感じた。 この珠の中にある確かな生命を、手の平に。 恐る恐る突付いてみれば、そこから飛び出たのは黒紫色の飛竜。 まるでバハムートを小さくしたような存在だった。 悠介 「……名前、聞いていいか?」 俺は大地に降り立った飛竜に、そっと語りかけた。 するとどうだ、黒紫の飛竜は決まりが悪そうに視線を彷徨わせて、 けど決心したように呆れと歓喜を混ぜたような声で言った。 黒紫飛竜『……ディルゼイルだ』 悠介  「───へ?」 唖然。 しかしディルゼイルと名乗った飛竜は俺の困惑も無視して語り始めた。 ディル『まったくどういうことだ……?     融合は確かに完了したというのに、何故私の意識がここにある……』 悠介 「そんなこと俺が知りたいが……えーと、ディルか?ディルなのか?」 ディル『そうだと言ったが。まあ……なんだ、その……またよろしく頼む、王。     他の飛竜には悪いが、どうやら私の意識だけが勝ち残ってしまったらしい……』 悠介 「……あー、えっと。血とか力は大丈夫か?」 ディル『問題ない。むしろ以前よりいいくらいだ』 悠介 「………」 やっぱり唖然。 仕草だの喋り方だの、果ては名前までしっかりとディルゼイルな飛竜が目の前に居る。 訳が解らなかったが……ひとつだけ解っていることがある。 それは───まったく知らない飛竜が誕生するよりは、俺は嬉しかったってこと。 まあそんなことを思いつつ、ディルゼイルに近づこうとした時───ドッカァアンッ!! 声  「ギョェエエーーーーッ!!」 声  『はうぁああーーーっ!!!』 ……家の中から騒音が聞こえたわけだ、これが。 ディルゼイルはそれを見ると小さく笑い、黒と紫を混ぜたような色の珠へと消えていった。 悠介 「………」 名前が解らんのは不便だと踏み、珠を分析してみる─── と、皇竜珠という名前だということが判明。 黄竜王と読み方が被ってて妙な気分だが、まあなんとかなるだろう。 そうしていつものように苦笑すると、 俺は手にしていた皇竜珠を首に下げ、のんびりと家の中を目指すのだった。 ───……。 で。辿り着いてみれば喧噪。 春菜 「アッくん!『好き』って感情見つけたんだから解るよね!?誰が好き!?」 粉雪 「彰利!わたしのこと好きだよね!?」 夜華 「そ、その……なんだ……どうなんだ!」 彰利 「や、やめたまえキミたち!失礼ではないのかね!!     紳士である私のこんな掴みかかるようなことをして!!恥を知りたまえ恥を!!」 春菜 「知ってるから答えて!どうなの!?」 粉雪 「彰利!」 夜華 「こ、答えろ!」 彰利 「ならばまずは離したらどうかね!?     まったく最近の女の中には淑女は居ないのかね!!     見たまえ!ネクタイが曲がってしまったではないかね!!」 春菜 「アッくんネクタイなんてつけてないよ!!」 粉雪 「誤魔化さないでよ!」 夜華 「彰衛門!」 彰利 「だーーっ!!やかまっしぇーーーっ!!」 喧噪の正体は俺のよく知る四人。 いつの間に戻ってきたのか、彰利と姉さんと篠瀬と日余が騒ぎ合っていた。 悠介 「リヴァイア……これどうなってるんだ?」 しかしながら状況が掴めなかった俺は、 呆れ果てているリヴァイアに事情を訊くことにした。 すると……まあいろいろ解ったことは解った。 一応彰利は精神の中で『好き』って感情を発見することが出来たらしい。 まあその、発見出来たためにこうして問い詰められるような形になっているのは…… 救いが無い気がしないでもないが。 悠介 「へぇ……確かにそれは興味があるな。『好き』ってどんな気持ちなんだろな」 リヴァ「そんなことわたしが知るか。訊きたいなら検察官に直接訊いてみたらどうだ」 悠介 「訊くって……」 ツイ……と視線を動かしてみると、精一杯にエセ紳士を振舞って騒いでる彰利が。 悠介 「あの状態じゃあ訊くのは無理だろ」 リヴァ「……違いない」 モシャアと溜め息を吐く───とともに、ふと彰利と目が合った。 彰利 「あ───」 悠介 「………」 彰利 「助けて悠介ーーっ!!」 紳士がいきなり折れた。 ばたばたと走り、俺の背後に隠れるとニヤリと笑った。 彰利 「フワハハハハ!!俺はなにも喋らねぇぜ……!!     見た目はこんなにプリティだけど、中は……筋金入りさぁっ!!」 ───フム。 悠介 「なぁ彰利?」 彰利 「オウ?なにかね悠介」 悠介 「『好き』ってどんな気持ちだ?」 彰利 「へ?えーと……胸がドッキンコでモヤモヤして、     近くに居たいのか居たくないのかよぅと解らんものです」 悠介 「……結局よく解らんのな」 彰利 「愛とはムツカシイものなのです。特に説明が」 ……感情論ってのは難しいっていうけどな。 確かに感情がどーのこーのと話してたって、答えに辿り着くなんて難しい。 悠介 「で、結局誰が好きなんだ?それくらいは解ったんだろ?」 彰利 「んーん?オイラなんにも知らんよ?アイツらボクにウソついてるんだ」 悠介 「どう見たってお前がウソついてるようにしか見えないけどな」 彰利 「うわヒッデェ!助けを求める親友を蹴落とすと!?」 悠介 「ハッキリしてるんだったらハッキリさせりゃあいいだろ?     べつに俺はお前が誰かとくっつくようにお節介焼いたりゃしない。     お前の感情はお前のモンだろうし、お前が誰を好きになろうと応援するさ。     つまりな、この中に好きなヤツが居ないなら居ない、     居るなら居るって言ったらどうだって言ってるんだよ」 彰利 「グ、グムーーーッ!!」 春菜 「どうなの!?」 粉雪 「彰利!」 夜華 「彰衛門!」 悠介 「お前らもまず落ち着け。詰め寄ってても返答が遅れるだけだろうが」 春菜 「落ち着いてなんか居られないよ!」 粉雪 「部外者は引っ込んでて!」 夜華 「彰衛門!」 悠介 「───」 部外者……ね。 確かに俺ゃあこいつらからしてみれば部外者かもしれないな。 けどそれでも興奮状態のこいつらよりは冷静に思考の回転が出来る自信がある。 なによりあーだこーだ叫びまくる状況のどこに、彰利が答える暇があるっていうのか。 悠介 「いーから、姉さんも日余も篠瀬も落ち着け」 春菜 「アッくん!」 粉雪 「彰利!」 夜華 「彰衛門!」 悠介 「……これで最後だ。落ち着け」 春菜 「答えてアッくん!」 粉雪 「彰利!誰が好きなの!?」 夜華 「彰衛門!答えろ!」 悠介 「───……」 仏の顔も三度まで───発動。 グワシィッ!! 春菜 「はうあっ!?」 粉雪 「むもっ!?」 悠介 「……落ち着けって言ってるのが……いや、聞こえてるよなぁ……?     聞こえてて無視してたんだよなぁ……?」 春菜 「あぐあっ!はおぉっ!!ちょ───悠介くん!首が!首がもげっ───!!」 粉雪 「いたたたた!!ア、アイアンクロー状態で持ち上げないで!     ってどういう腕力してるの!?ってあいたたたぁああーーーーっ!!!!」 夜華 「う、うあ……」 悠介 「篠瀬……お前も落ち着く気はないのか……?だったらぁああ……」 夜華 「はっ……や、お、落ち着きます!いえ!落ち着いています!!     ですから悠介殿も落ち着いてください!」 悠介 「俺は落ち着いてる……クックック……落ち着いておるよ……」 リヴァ「説得力がまるで無いぞ悠介」 そんなことはまるでないが。 とりあえず姉さんと日余を離し、溜め息ひとつ。 春菜 「あいたたた……もう、なにするの悠介くん……」 悠介 「落ち着かないたわけに制裁を。で、彰利?なにか言うことは?」 彰利 「アリガトウ!オイラ助かったYO!!」 悠介 「じゃなくて。好きから嫌いか、嫌いじゃないか知り合い程度にしか見てないか」 彰利 「知り合───」 三人娘『───』(ギロリ) 彰利 「…………えーと、なんだろね、もう……答えなきゃダメ?」 悠介 「強制はしないけどな。ここで答えないと結局どれだけ経っても同じことだろ?     物事を後回しにしてホントに好きなヤツ以外の気持ちを弄びたいってんなら、     俺は何も言わないけど呆れるぞ」 彰利 「あーのー、それって俺が一方的に悪いように聞こえるんですけど?」 悠介 「そりゃあ好きになるだのなんだのは個人の自由だ。     姉さんや日余や篠瀬がお前のこと好きになるのも自由だ。     それでお前だけがどうのこうの言われるのは確かに間違ってるさ。     けどさ、それならきっちりと断ればいいだろ」 彰利 「きっちりねぇ……キミは出来る?」 悠介 「残念だけど、俺にゃあ『好いた惚れた』は解らん。     だから解ってるお前に訊いてるんだよ。けど───言えっていうなら言う。     俺はルナ以外と連れ合う気はない」 声  「な、なんですってぇええーーーーっ!!?」 悠介 「へ?」 聞こえた声に振り向くと、そこに居るのは若葉と木葉。 ……帰ってたのか。 若葉 「お、おおおおおにいさま!?げ、幻聴に決まっていますが、今のは───」 悠介 「……ふむ。ああ、本気だぞ。俺はルナ以外と一緒になる気はない」 若葉 「か───ぁ……」 どさり。あ───倒れた。 木葉 「姉さん、大ショック」 悠介 「お前は驚かないんだな」 木葉 「───……」 ぽてっ。……倒れた。 セレス「悠介さん……」 悠介 「おわぁっ!?って、居たのかセレス……」 セレス「今ならまだ間に合います……!懸命な判断を!     あんな馬鹿死神とくっついても禄なことになりませんよ!?     悠介さんは水穂さんと一緒になった方が───!!」 悠介 「あー、そりゃ考え直した方がいい。     水穂ならゼノと一緒の方がいいんじゃないか?」 セレス「うぐっ……確かに最近の水穂さんとゼノの間には奇妙な空間がありますが……」 悠介 「大体、決めるのは俺じゃなくて水穂だろ?     本人が居ないところでどーのこーの決めたってしょうがない。     そんなの、本人の気持ちを無視して許婚を決める馬鹿親みたいなもんだ」 セレス「馬鹿親ですか……」 悠介 「俺と彰利はお互い、親には恵まれなかったけどな。だからこそ知ってる。     本人の気持ちを無視した行動がどれだけ人を傷つけるのか。つーわけで彰利」 彰利 「あー……」 向き直ると、彰利は随分と嫌そうな顔で頬をコリコリと掻いた。 よーするにあれだ、こいつはただ大勢の前で言うのが恥ずかしいだけなのだ。 それはつまり、好きな相手が誰なのかが解っているわけで─── 彰利 「えーと、キミたち?ハッキリ言えばホントに諦める?     相当傷つくことになると思うのに、それでも納得出来るのかね?」 春菜 「覚悟は出来てるよ」 粉雪 「うん、わたしも」 夜華 「……好きにしろ」 彰利 「だはぁ……あ〜あ……。     ルナっちや義妹ふたりに迫られてた悠介をからかうのが至福だった俺が、     なんだってこんな目に……」 因果応報って知ってるか、彰利よ……。 彰利 「っしゃあ!!オイラも男だ!キッチリバッチリ言おうじゃあねぇの!!     ───その前にVTRをどうぞ」 悠介 「オイ」 【ケース40:弦月彰利/ちょっと時間は遡り】 ザムザムザムザム…… 彰利 「なぁなぁキミたちYO〜……いつまで探すんだ〜い?」 春菜 「アッくんの気持ちが見つかるまでだよ」 彰利 「ン〜なもんどうでもいいじゃないのYO〜……     キミたちゃなにが不満でそげなもん探すんだ〜い?」 粉雪 「いい加減ハッキリさせたいの。好きなら好き、嫌いなら嫌いって。     想い続ける方の身にもなってよ」 彰利 「馬鹿野郎!いっつも女ばっかり悩んでるみたいに言うなテメコラ!!     俺は俺らしく生きてきて、べつに誰に好きになってくれって言った覚えもない!     それがなんだって『想い続ける方の身にも〜』とかなんとか     言われなけりゃならねぇのよ!!それって絶対間違ってるぞ!?     いくら温厚なボクでも怒るぞ!?想い続ける方の気持ちがどうとか言うなら、     勝手に想われ続けられてあーだこーだ言われる俺の身にもなれよ!」 粉雪 「う……」 春菜 「………」 夜華 「………」 彰利 「キミたちね、マジで根本から間違ってるよ?     愛だの恋だのをしちまったら、しちまった方が偉ェの?     振り向いてもらえなかったら振り向かなかった方が悪なの?     ふざけんな、それじゃあ相手の気持ちなんてどうでもいいってことじゃねぇの」 やってられん……なんだってこんなことになったんだ? 俺はただ遊んだり騒いだり歌ったり踊ったりしながら、 親友とともに馬鹿やっていられりゃあそれでよかったのに。 粉雪 「でも、それじゃあ、好きになった気持ちはどうすればいいの?     解ってる!?辛いんだよ!?」 彰利 「しゃーから待てっつーとるでしょうが。     そんな辛さを押し付けられる俺の身にもなれっつーとるの。     一方的に考えるからそうなるんですよ。     第一ですね、あたしゃちゃんと誰も好きじゃないって言った筈ですよ?     それなのに想い続けられてどーのこーの言われて……。     キミたちこそ好意を持ってくれてる人に     『誰も好きじゃない』って言ったその時の俺の気持ち、理解できる?」 春菜 「あ……」 粉雪 「………」 彰利 「これだから愛だの恋だのは嫌なんだ……多重になれば絶対に誰かが悪者になる。     俺は宗次がそういうヤツだったからこそそんなヤツに近づきたくなかった。     それがなんですか、自分の気持ちばっかり一方的に押し付けて、     具合が悪くなれば俺が悪いだのなんだの……     キミたちね、そんなことばっかり続けられればいくら俺だって本気で怒るよ?」 春菜 「で、でも」 彰利 「でももヘチマもね!!えーがらうだうだくっちゃべっとらんと足動かすだ!!」 春菜 「………」 はぁ〜あ、色恋沙汰なんて冗談じゃねぇや……。 世の中綺麗な恋愛だけで済んだら喧嘩はいらねぇってね。 まったく遣る瀬無い。 夜華 「───……貴様の言い分は解った。ならば次で最後にしょう」 彰利 「夜華さん?」 今まであまり喋らなかった夜華さんが、ふと呟くようにそう言った。 けど立ち止まることはなかったから俺もそのまま歩く。 夜華 「次だ。貴様の『好き』とかいう感情が手に入ったら、     その時は本当の貴様の心を聞かせろ。それがどんなものでも、わたしは納得する」 彰利 「夜華さん……」 春菜 「最後かぁ……うん、確かにその方がいいかもね。     あ、でももしその時にも『誰も好きじゃない』って思えたとしても、     わたしたちを避けるようなことはしないこと。いいかな、アッくん」 彰利 「バカヤロコノヤロォ、俺がそげなクズ鉄に劣ることをするとお思いか」 春菜 「だね。考えるまでもなかったよ」 粉雪 「じゃあ、ちょっと怖いけど……早く彰利の気持ちを探さないとね」 彰利 「ンだね。そんじゃあ行きますか……」 こうしてボクらは旅に出たのです。 真実の愛を探す旅に─── 【ケース41:晦悠介/愛ってなんか薄っぺらに感じられるよね】 彰利 「まあそんなこんなでボクは真実の想いに至ったわけですが……」 悠介 「お前……それでよく人の背中の後ろに隠れられたもんだな」 彰利 「悠介クン?状況の何を利用してでも相手をからかうのはもはや鉄則じゃよ?」 そんな鉄則はいらん。 それよりもだ。 悠介 「で?お前の気持ちはガッチリ固まってるのか?」 彰利 「オウヨ、不思議なくらいに固まってるぜ?     もうその人のことを思うと夜も眠れないから朝寝するくらいYO」 悠介 「御託はいいからとっとと言え」 彰利 「オウヨ!キミが勇気ある告白をしたんだ!     ならば親友であるこの俺もそれに順じなければ!!つーわけで告白!     我輩アポカリプスが好きな人は───!!」 春菜 「好きな人は……!?」 彰利 「春菜さん!」 春菜 「えっ───わ、わたしっ!?」 彰利 「んにゃ、ごめん」 春菜 「え……?」 彰利 「夜華さん!」 夜華 「……謝るな。そうなるのは解ってた」 彰利 「ぬ……でもごめん」 春菜 「え……篠瀬さんでもないとすると……」 その場に居た、意識のある者たちの視線が一点に集中する。 粉雪 「え……え?」 彰利 「……粉雪」 粉雪 「ちょ、ちょっと待ってよ……いいの?わたしで」 彰利 「ごめん」 粉雪 「───へ?」 全員 『へ……?』 全員唖然。 三人に謝った彰利は頬をコリコリと掻いて視線を泳がしている。 やがて何かを言おうとした瞬間─── 若葉 「こンの贅沢者がぁあああーーーーっ!!!!」 木葉 「姉さん、鈍器です」 セレス「好いている思いの全部を否定するなんて何様ですかぁあああっ!!」 それまで気絶していた若葉や木葉、傍観していたセレスが彰利に襲い掛かった!! 彰利 「え?あ、いやちょっと待って!!まだ続きが」 若葉 「問答無用ォオオーーーーーーッ!!!!」 彰利 「キャッ───キャアアアーーーーーッ!!!!」 ドゴベキゴキバキガンゴシャベキゴシャドゴベゴドカバキメゴシャアアッ!!!! 彰利 「ぎょよわぇあよぉあおガァアアアーーーーーーッ!!!!!」 ───……。 ……。 ……やがて、殴り疲れたのか若葉と木葉、セレスがその場をあとにした頃…… 彰利はボコボコの顔でノソリと起き上がって呟いた。 彰利 「……な、なんか……栗田さんとなかなかくっつかなくて     ボコボコにされてた山岡さんの気持ちが今なら解る……」 そんなものは解らなかった方が幸せだったかもしれないが。 粉雪 「彰利……大丈夫?」 彰利 「おお、すまんの坊や……」 粉雪 「坊やって……あのねぇ……」 ともあれ、その場に居るのが俺と日余と姉さんと篠瀬、それとリヴァイアになった頃。 彰利はゆっくりと溜め息をついて言葉の続きを話した。 彰利 「えっとね、落ち着いて聞いてほしい。     俺ゃ確かにみんなに謝ったけど、粉雪のだけには続きがあったんだ」 粉雪 「わたし……?」 彰利 「最初に言った『ごめん』はその続きのことで最初に謝っておきたかっただけ。     ま、その……つまり……」 春菜 「……ん、そっか。アッくんは日余さんのことが好きなんだね?」 粉雪 「え───」 夜華 「それが貴様が出した答えならなにも言わない。     だが……最後まできちんと言ってほしい。胸を張ってだ」 彰利 「キツイ注文するなぁ夜華さん……」 それでも彰利は胸を張って、ボコボコの顔のまま今までで一番いい笑顔で言った。 彰利 「ごめん、春菜さん、夜華さん。俺、やっぱ粉雪が好きだわ」 粉雪 「───!」 春菜 「……そっか」 夜華 「……ああ、答えが出たならそれでいい」 粉雪 「そんな……いいの?わたしなんかで───     だってわたし、すぐ嫉妬するし誤解するし……」 彰利 「嫉妬しても誤解しても、     話をちゃんと聞いてくれりゃあべつにそんなん気にしませんよあたしゃあ。     キミの悪いところは怒ると人の話を聞こうとしなくなるとこだ。     まずそれを直してクラサイ、マジで」 粉雪 「うぐ……」 彰利 「それと。一度別れたってのに好きだなんて言って悪い。     さっきの『ごめん』はこれのことを言ってたんだ」 『それでボコボコにされるとは思わなかったけどね』と苦笑する彰利。 そんな彼を見て、姉さんも篠瀬も少し寂しそうな顔をした。 悠介 「話もひと段落か。よし、腹減ってないか?久しぶりに腕振るおうか」 春菜 「悠介くん!わたし大盛りね!」 夜華 「わ、わたしもお願いします!」 悠介 「了解だ。一応、ヤケ喰いする女の気持ちは解るからな……」 春菜 「?なに言ってるの悠介くん」 悠介 「いや……こっちの話だ……思い出したくもない」 ともあれ黒衣───いや、今は白いから白衣って言うべきなのか? それの袖を巻くって台所へと歩いた。 声  「悠介くーん?ここで倒れたままの     フラットさんとゼノ助さんとみさおちゃんと知らない人、どうするのー?」 悠介 「メシが出来れば起きるだろ、ほっといていいぞー」 知らない人ってのはヤムベリングのことだろう。 気絶してるんだったら都合のいいことこの上ない。 俺は早速、以前創造した俺専用フライパンを手に調理にかかった。 悠介 「……?そういや……」 ふと気になった。 聖は……何処に行ったんだ? Next Menu back