───FantasticFantasia-Set18/未来さんへのさようなら───
【ケース42:晦悠介/宴会】 ───ややあって、時は夕刻。 彰利 「え、ええと、皆様……今日はボクらの愛の劇場へお集まり頂き、まことに……」 悠介 「長いぞー」 彰利 「喋ったばっかでしょうが!!」 完成した料理の数を見て目を真ん丸くする者や、既に酒を開けて騒ぐ者、 その中でカチンコチンになりながら隣に日余を置いて演説する彰利。 居間には家族の他にリヴァイアとヤムベリングが居て、 酒を飲んでるヤツってのがこのふたりと姉さんと篠瀬と義妹ふたりだったりする。 夜華 「うぐっ……くぅう……わたしは……わたしはなぁああ……」 春菜 「解る、解るよぉ篠瀬さん……     こんなわたしたちを差し置いて、日余さん選ぶなんてアッくんが悪いのよぅ……」 若葉 「おにいさまが……おにいさまがぁああ……」 木葉 「姉さん、大敗退」 若葉 「未成年がどうとかなんてもう関係ありません……今日は飲むわわたし……」 木葉 「わたしも付き合います、姉さん」 ベリー「地界のお酒も美味しいわね〜。ああもうなにちまちま飲んでンのリヴァイア。     こーいうのはね、ガーッといかなきゃだめなのよガーッと」 リヴァ「いや、わたしは」 ベリー「なァに!?あたしの酒が飲めないっての!?」 リヴァ「この酒は悠介が知り合いから譲ってもらったものらしいぞ」 ベリー「なぁああああによぉお……     相応しい男に巡り会えた途端にフラレたあたしの気持ち、     少しは汲んでくれたっていーじゃないのよぉおお……」 リヴァ「……まったく、いい歳をしてなに言ってるんだか」 ベリー「い〜〜い?夢や恋に年齢制限なんか無いの。     ンなこと言ってるとあっという間にしわくちゃになるわよ」 ……なんだか大変なことになってるのは言うまでもない。 ていうかこいつら酒に弱すぎ……完全に酔っ払ってやがる。 ルナ 「あひゃひゃひゃひゃ!!ゆーすけゆーすけー!飲んでる!?ね、飲んでるー!?」 悠介 「酒臭いから寄るな……」 ルナ 「む。いーじゃんそれくらい。おいしーならそれでさー」 悠介 「………」 ……あれから、ルナが目を覚ました途端に 彰利は俺が言ったことの全てをルナに話やがった。 お蔭で歓喜乱舞したルナははしゃぎまくり、 眠らせてなんとかしようと酒を飲ませたら余計に騒ぎ出して現在に至る。 ───がばしっ。 悠介 「うわっ……こ、こらっ!抱きつくなッ!」 ルナ 「んふふふふ〜〜、ゆーすけー……♪」 悠介 「完全に酔っ払ってるな……」 既に収集が付かなくなった状況に溜め息を吐きつつ、喧噪の景色を見渡した。 するとその中でゼノに酌をする水穂の姿があり、意外にもゼノもゆったりと微笑んでいた。 悠介 「………」 変われば変わるもんだな、と思いながら……なんだかそれを喜んでいる自分が居る。 あとは野となれ山となれ。 ああいうゆったりしたふたりを見ながら余生を生きるのもいいもんだと思う。 悠介 「まあ……余生っていっても、あと千年以上はあるわけだが」 ベリー「なぁに言ってんのよぅ〜〜……。     悠介の場合、あと三千年以上は寿命で死ぬことないわよぅ〜?」 悠介 「ヤムベリング……」 ベリー「ベリーでいいわよぅ」 悠介 「じゃあベリー───ってそうじゃないっ!     三千年ってなんだ!?どういうことだ!?」 ベリー「え〜……?だってさぁ、悠介ったら千年の寿命の原水に潜ったんでしょ〜……?     それは体に染み付いてたわけだし、     今は飛竜の血液と力を飲み込んだ状態をわたしがいじくったから、     竜人に近い状態なわけだし……ほらぁ、     千年の寿命の原水って竜族にしか効果ないし、そうなれば……ね?解るでしょ?」 悠介 「………」 竜人?ナニソレ…… ベリー「あはははは、竜人ってのはねぇ〜……竜の力を手に入れた人間のことを言うの〜。     悠介の場合四体の異なる竜族から力を取り込んだから、     前代未聞の竜人だけどね〜……。惜しい……ほんと惜しいよぅ……     それがなんで他人の手に渡っちゃうんだかぁ……」 悠介 「疑問をさっさと答えてくれるのはありがたいけどな……。     人の体散々いじくって、どういうつもりだよ……」 ベリー「だってわたしぃ、どうせなら凄まじい人が夫になるほうがよかったんだもの……。     そうなれば創造神で元死神で創造者で召喚師で魔導魔術師で竜王で竜人な     ステキな夫が手に入る筈だったのよぅ〜……」 悠介 「……お前臭い。顔真っ赤だし、飲みすぎたろ……」 ベリー「これが飲まずにいられるかぁーーーっつーの!     せっかく完成させた最高の旦那が他の女に靡くなんてどうかしてるわよぅ!!     オヤジィ!焼酎もう一杯!」 悠介 「何処のオッサンだお前は……」 竜人ねぇ……ゴブリンに憧れてファンタジーに降り立った俺が、竜人ねぇ……。 みさお「あの……なんで泣いてるんですか?」 悠介 「いや……若かったなぁって……」 戻れるものなら戻りたいというのは贅沢だな……。 そうなったら三飛竜とフェンリルやグリフォンの存在が無になる。 悠介 「ところで……竜人になったらなにがどうってわけでもないんだろ?」 ベリー「んんー……?そうねぇ……至るところに至ればドラゴンにもなれるわよぅ……?」 悠介 「全力で却下する。元に戻す方法は?」 ベリー「……あー無理無理。悠介の場合、どう足掻いたって元には戻れないよー。     もう竜族の血と力が染み付いた千年の寿命が魂に根付いちゃってるもの。     こりゃ、今の空界の魔導術じゃあどうにも出来ないわ」 悠介 「………」 あぁ……目の前が真っ暗に……。 みさお「わぁあっ!ゆ、悠介さん気をしっかり!」 悠介 「ハッ!……わ、悪い……」 ……罰だろうか……興味本位でファンタジーに踏み込んだ罰だろうか……。 しかしな、神よ……って神は俺だ……ああもう嫌だ、この状況……。 彰利 「いよーぅ悠介!飲んでる!?飲んでるか!?ン!?んん〜〜!?」 悠介 「……お前は気楽そうでいいな……」 彰利 「へ?なんじゃいそりゃ。ンマー確かにこうしてラヴラヴしてますけどね?     ンーーマッ!ンンンーーーマッ!!」 粉雪 「あ、あぅう……」 日余に狂おしいほどの接吻をマチュリマチュリとする彰利。 ……もう完全に吹っ切れたらしい。 彰利 「やー、挨拶の時はガチゴチだったけど、オイラもう悟ったね。     みんな聞いてないなら固まる必要ねぇわな」 そりゃそうだ。 彰利 「で、親友よ。なに落ち込んでんの?」 悠介 「あー……?ああ……落ち込むなってのが無茶だろ……」 彰利 「何故に?」 みさお「彰衛門さん、悠介さん……神様になっちゃったんです」 彰利 「ゴッド?つーてもさ、前から死神だったじゃない。神様っしょ?」 みさお「じゃなくて。正真正銘、死神から神様に変わっちゃったんです。     気配探ってみてください、しっかり神力が感じられますから」 彰利 「フム?……っと、マジですな。貴様ボクらを裏切るのかっ!?」 悠介 「いきなりそれか……あのな、力が変わろうが俺は俺だ。     お前にとことん付き合うって言ったのはウソじゃないし、     神側になったからってこの街からおさらばするつもりなんてない」 彰利 「ンマー!そうなのかい!?それ言わなきゃだーめーだーよー!」 悠介 「でだ。それとは別のところで困ったことがある」 彰利 「あ〜〜〜ん?」 モンスターハンターのじいさんの真似をする彰利にゴシャアアアと溜め息を返してやり、 話の続きをすることにする。 悠介 「俺、竜人になっちまった」 彰利 「ユージーン!?」 悠介 「充満せし魔力の下、我が呼びかけに応えよ……。     契約は完了せり……出でよ、バハムー───」 ベリー「やめやめぇええええええっ!!!!ここを滅ぼす気!?」 悠介 「そんなもんと契約させたのはお前だろうが!!」 彰利 「や……なにでツッコミ入れようとしたのかは知らんけど、     場所が滅ぶようなものでツッコミなんぞ入れてほしくないんですが?」 悠介 「お前がヘンなこと言うからだ。ユージーンじゃなくて竜人。     竜の人って書くやつ───だよな?」 ベリー「そ、竜人」 彰利 「ユージーン!?」 ベリー「……“魔導(エクス)
───」 彰利 「ギャア!ちょっとなにする気だてめぇ!!     ツッコミにしてはヤバすぎるでしょそれ!!」 ベリー「───……そんなことないわよ。     さっき悠介がやろうとしたものなんかより数倍やさしいわ」 彰利 「……悠介クン、キミってやつは……」 悠介 「言って改めてくれるお前なら、俺だってあんなことしようとせんわ」 悲しそうな顔で俺を見る彰利に当然の言葉を返す。 しかしあまり気にもしなかったかのようにニヤリと笑い、彼は先を促した。 彰利 「で、なに?その竜人って」 ベリー「竜の血と力を持つ人間の俗称。     わたしは死んでた赤竜王の力をほんの少しだけ手に入れたクチだけどね。     悠介の場合それ以上。飛竜四体の力と千年の寿命の原水の魔力を手に入れて、     多分今じゃ黄昏創るまでもなく召喚行使出来るんじゃない?」 悠介 「知らん」 ベリー「……ほんとに真面目に聞く気ないのね」 悠介 「大体、なんでお前ここでメシ食ってるんだ?用が済んだんならとっとと帰れ」 ベリー「容赦ないわねぇ……精神干渉で調べた歴史によれば、     悠介って弦月彰利以外には比較的やさしい方じゃなかったっけ?     ぶっきらぼうなりに」 彰利 「フッ……まだまだ甘いな小娘が」 ベリー「あんたにゃ話し掛けてないから黙ってて変態オカマホモコン」 彰利 「キサマにまで言われる筋合いねぇわ!!……ともかく!     悠介はね、無礼者とたわけには容赦ないんですよ?     物事を『古臭い』だのなんだの言うヤツには特に」 ベリー「古臭いって……ああ」 ふむ、と頷くベリー。……だったが、特にどうするというわけでもなく酒を飲んだ。 ベリー「なぁるほどなるほど、よーするに悠介、     キミはキミの細胞や精神が物語るように世界の歴史が好きなわけだ。     そんでもって現代にはさほど興味はないと。     けどファンタジーに憧れる童心は持っていて、     それがきっかけで今やドラゴンマスター、と」 悠介 「わざわざあらすじ語るなよな……泣けてくる」 そう……そうなんだ。 俺はただ憧れてただけなのに…… ブレイバーランクが“竜を駆る勇者(ドラグーンブレイバー)”で、ランクネームが“四竜を統べる竜王(ドラゴンマスター)”……。 みさお「相変わらず奇妙な部分で苦労してるんですね……」 悠介 「ほっといてくれ……」 べつに好きでこうなったわけじゃないんだよ俺は……。 彰利 「ほっほっほ!     きっといっつもアタイのこと殴ってたからバチが当たったのよバチが!」 みさお「殴られるのは全部彰衛門さんの自業自得ですけどね」 彰利 「でも今この現状ではオイラ関係ないもの。だからきっと悠介が悪いのよ」 悠介 「元はと言えばお前のために     千年の寿命取りに行くことがきっかけだったんだけどな……」 彰利 「こ、これ!失礼だぞキミ!責任を転嫁する気かね!!     しかもなにその握り拳!またボクを殴ろうっていうのか!?     そ、それ見たことか!やっぱ殴るんじゃないの!だからバチが当たるのだよ!」 悠介 「……じゃ、デコピンだ」 彰利 「ほ?ほっほっほ!このじいやがデコピンごときで参るものか!     やってみれ!何発でも耐えてみせましょうぞ!!」 悠介 「何発でもだな……?」 彰利 「二言はねぇぜ!?俺様無敵!超無敵!!」 髪を押さえて身構える彰利の額に力を込めた指を構えた。 みさお「それで、竜人になったらなにか特典とかあるんですか?」 ベリー「んー……まず力が大幅にアップ」 バゴチャアアッ!! 彰利 「ギョェエエエーーーーッ!!!!」 メゴシャドシャァアアアンッ!!!ガラガラガラガラ…… 悠介 「あっ……て、てめぇっ!!     大袈裟に吹っ飛んだフリして一発でチャラにしようって魂胆か!?     いやそれよりもどうしてくれんだ!壁に穴空いただろうが!!」 彰利 「いぎゃあああああっ!!!いぎゃぎゃああああああっ!!     頭蓋が!頭蓋があぁあっ!!ちょ、ちょちょちょちょっと待って!     こんな威力冗談じゃねぇ!!マジで額に穴空くぜ!?」 悠介 「そんなこと言って逃げようったってそうはいかねぇぞコラ……。     何発でもよかったんだよなぁ……?男に二言はねぇよなぁ……」 彰利 「イ、イヤァアアアア……イヤァアアアアアアッ!!!     助けてゴッドォオオーーーーーッ!!!!」 悠介 「逃がさん」 彰利 「やだぁああーーーーっ!!!」 逃げ出した彰利の足を掴んで引き寄せた。 みさお「他には?」 ベリー「わたしの場合もそうだったように、まず魔力が桁外れに上昇する。     悠介の場合は千年の寿命の原水も浴びたわけだからほんとに桁外れねぇ。     あとは───皮膚も竜並みに頑丈になるだろうし……     ああでもそれが遺伝するってことは一切ないわ。     イセリアがそうだったように、     悠介に子供が出来てもその子に竜の力が遺伝することは絶対に無い。     それはイセリアの身体と精神に干渉して調べつくしたから間違い無いわ」 みさお「……イセリアって誰ですか?」 ベゴチャアアアンッ!!ベゴチャアアアンッ!!ベゴチャッ!!ベゴチャアアッ!!!! 彰利 「オゲギャアァアアアアッ!!!!     死ぬ!!死んでしまう!!助けて誰かぁあああーーーっ!!!」 悠介 「デコピンで人が死ぬかたわけ!!このっ!逃げるな!!」 彰利 「撤回します!二言を唱えさせてください!僕の負けデチュ!!」 悠介 「だめだ許さん」 彰利 「オギャアアアアアーーーーーーッ!!!!!」 ベリー「まああ〜〜……なんにせよ、     シールド張ったわたしでさえデコピンで気絶させられたんだから……     普通の人がくらったら、まあ無事じゃあ済まないわねぇ」 みさお「え……───うわわわぁあああっ!!!悠介さんストップストップ!!     そんなにやったら彰衛門さん死んじゃいます!!」 悠介 「月癒力は任せたぞ、みさお」 みさお「殺す気満々ですか!?」 悠介 「いや、流石に冗談」 パッと手を離した刹那、彰利がドシャアと倒れた。 悠介 「……はぁ。地道に強くなることに喜びがあったのになぁ……」 竜の力を得た俺は、案外落胆していた。 俺はどちらかというと力を手に入れるためにはしっかりとした過程を望む男だ。 それがある日突然、なにかの力を手に入れた〜とかで強くなるのは好きじゃない。 だからこそ修行してたわけだし、 そんな過程も無しに得た力をそうそう信用できるだろうか。 ……俺なら無理だ。 悠介 「慣れなきゃいけないか……。     制御出来ずに力を行使すれば、絶対になにかを傷つけることになる」 ベリー「うひゃひゃひゃひゃ、悠介って『力』を理解してるねぇ〜〜っ!!」 悠介 「誰の所為でこんなことになったと思ってんだこの馬鹿っ……!!」 ベリー「悪いのは悠介でしょ。ここまでわたしの興味を擽る要素を持ってたキミが悪い」 悠介 「お前の興味なんぞ知るかぁあっ!!」 こうなったら修行だ……力を制御するんだ。 パワーセーブが出来れば大丈夫……きっと大丈夫だ。 最悪のことにはならない筈だ……。 そう思った俺はさっそくその場を立ち、庭へ出て黄昏を創造。 悠介 「───……」 集中してじっくりと耐えられる重さを選んでゆく。 するとどうだろう……少し前までは片手で150キロあたりでもうダメだったのに、 今じゃあ200キロでも軽い。 その事実が俺の頭の中を怒りで一杯にした。 悠介 「ふざけんなぁっ!!!こんな風に力手に入れても嬉しくねぇよっ!!     こんなんじゃっ……     こんなんじゃ今までなんのために修行してきたのか解らねぇじゃねぇかあっ!!」 怒りのままに重くした脇差二刀を振るい、振り絞るように叫んだ。 しかし怒りは治まらず、俺はただただ重さを感じるまで刀を重くし、 それらを振るっていった。 【ケース43:弦月彰利/荒れるダーリン アディオスボンジョリーノ風味】 ……はぁ。 彰利 「荒れてるねぇ」 みさお「荒れてますねぇ」 ベリー「べつにいいのにねぇ?簡単に強くなれるならそれでいいじゃん」 すっかり暗くなったお外の一部が黄昏に染まり、そこで刀を振り回している悠介を見た。 ……やっぱり荒れてますな。 みさお「悠介さん、過程を求める人ですからね。     強くなるにはそれなりの説得力が欲しいんだと思います。     『竜から力を吸い出して強くなった』じゃあ納得なんてしませんし喜びませんよ。     だって自分の力で強くなったわけじゃないんですから」 彰利 「あたしゃそういうのもありだと思うけどねぇ。     力を欲してるんだから、手に入ることに文句なんぞないでしょう」 みさお「……そういうところでは妙に生真面目な人ですからね、悠介さん……」 彰利 「だぁねぇ……今回のはまさにそれだし」 再び刀を振り回して叫んでる悠介をチラッ……と見る。 いや、マジで怒ってますわ。 ベリー「まあソレを言うなら、悠介の性格上あの力を封印することはないわねぇ」 彰利 「あ〜〜〜ん?なんでじゃい」 ベリー「だってあの力、四飛竜のものだもの。召喚獣を利用したことだけで怒った彼が、     一緒に居る飛竜の力を拒絶するわけがないわ」 彰利 「飛竜の力って……あ〜あ、ディルとかのか。     キミほんと魔女だね、手段選ばない方っしょ」 ベリー「効率問題で手段選んでたり躊躇してたら至れるところにも至れないものよ。     だからそれでいいの。文句ある?」 彰利 「あるような無いような。     まあけど、文句があるとしてもそれを実行するべきは悠介だろ?     それをオイラが奪うのはあんまりだし。だから───やすらかに眠れ(レスト・イン・ピース)」 ベリー「え?」 ドバァォンッ!!───外の黄昏の草原が爆発した。 ……いや、詳しく言えば何かが弾けたような衝撃。 刹那にベリーさんの背後に出現する白い影は、確認するまでもなく彼でしょう。 悠介 「堂々巡り……ククク……俺の性格を嫌ってくらい利用した手だ……。     そうだよなぁ……俺なら自分の中の竜人の力を分析すれば排除も出来るさ……。     けど、それをしたら力を吸われたディルたちに救いがねぇ……。     結局俺は竜人のままで居るしかねぇし、なにもかもお前の思い通り……か?」 ベリー「え、えーと……話し合いましょ悠介。当初の予定ならこのあとわたしが     怒った悠介を体で慰めてあげる予定だったんだけど、     人の所有物に手を出すほど無粋じゃないし……」 彰利 「あ」 みさお「あ」 ベリー「え?」 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………!!!! あ、ヤバイです。 神になった筈の悠介から黒いオーラが…… 悠介 「い〜〜いこと教えてやろうかベリィ〜……。     俺もなぁ、彰利と同じでなぁ……っ!!     体を差し出せば男がなんでも許すと思ってる女が大嫌いなんだよっ!!!」 ベリー「わはっ……ほ、ほんとに?」 問いかけてくるベリーさんに、俺とみさおは思いっきり深く頷いた。 するとみるみる内にサァッと真っ青になるベリーさん。 お前もうおしまい。バイバイ。───ゴパァアンッ!!! ベリー「ふきゅうっ!?」 ドゴシャズバァーーンッ!!───ベリーさんがデコピンで空を飛んだ。 それを追うようにゆっくりと歩く悠介からは、まさに神の如き力の波動が……!! ベリー「いたっ!いた……っ!いたっ……!!     ちょ、ちょっと!なんであんたこんなもの何発も喰らってて今平気なのよ!」 彰利 「歴史が違うんだよ」 ベリー「なによそれふざけないで!!」 歴史は関係ないが、指先に灯した月然力・火を息で吹き消した途端に怒られました。 なんで怒られたんだろね……。 とかなんとか思っている内にベリーさんは悠介にアイアンクローされ、 そのまま片腕で持ち上げられた。 彰利 「うわー、あれ何度もやられてるけど本気で痛いんだよね」 みさお「ですよね……特に首が」 彰利 「そう、特に首が」 ベリーさんも例に漏れずジタバタもがいておりますし。 彰利 「……あっちは悠介に任せて、オイラたちも楽しみましょうか」 みさお「そうですね」 ベリーさんを完全無視し、オイラ達は料理に向かい合った。 隣に居た粉雪は既に春菜さんと夜華さんに捕まって酒を飲まされていたようで、 顔を真っ赤にして目を回している。 ただ─── 彰利 「おろ?聖は?」 みさお「あれ……居ませんね」 聖だけは、この宴会場の何処を探しても見当たらなかった。 彰利 「まあよいデショ、聖も子供じゃあござんせん。     きっとなにか思うことがあるに違いねぇや」 みさお「そうですけどね……なんか引っかかります」 彰利 「まあよ、まああああよ、みさおさん一杯いきなさい」 みさお「わたし未成年です」 彰利 「刀の中とはいえ100以上生きてりゃ十分じゃい!」 みさお「無茶苦茶言わないでくださいよ!」 ……そうして騒いでいく内に、いつしか我らは眠りにおち─── 気づけば朝は訪れ、ボクらは新たな日常を迎えることになりました。 ───……。 ……。 ザムッ─── 朝日の差す晦神社の境内に、小さな荷物が置かれた。 持ち主は夜華さんで、それが帰り支度だということを俺は知っていました。 彰利 「ほんに帰るのかえ?」 夜華 「ああ。無理にこの時代に残る理由もなくなった。     刀の極みに至るのはどの時代だろうと出来るし、     そもそもわたしには楓さまを見守る使命がある」 彰利 「……そか。そんじゃあ……楓のこと、頼みましたよ?     小僧じゃあイマイチ任せきれねぇ」 夜華 「任せておけ。腑抜けないためにも暇を見つけたら刀技の修行に付き合わせるさ」 彰利 「うんむ、では達者での───ムッ!?」 手を振るなんてことをせず、敬礼しようとした矢先でした。 夜華さんに抱きつく姿があり、それこそが昨日途中から姿を消していた聖だった。 夜華 「聖……?どうしたんだ」 聖  「………」 彰利 「聖さん?」 聖は夜華さんに抱き付きながら、俺を見た。 それはしばらく続いたけど、やがて覚悟を決めたかのように聖が目を瞑った。 聖  「パパ……ごめんなさい。わたし、ママと一緒に未来に行く……」 彰利 「……ほ?」 夜華 「ひ、聖?」 意外や意外……聞き間違いですか?と訊ねてしまいそうなくらい意外な言葉が出ました。 そしてもちろん私は大変驚きました。 彰利 「未来に行くって……この時代を離れるってことかの?」 聖  「そうだよ……未来で、ママと一緒に暮らすの……」 彰利 「本気なのかえ……?」 聖  「う……うん。だってママ、きっと向こうじゃひとりぼっちだから……。     パパには粉雪さんが居るけど、ママには誰も居ないから……」 夜華 「聖……お前……」 彰利 「なんとまあ……」 驚くなってのが無理だった。 自惚れるつもりはなかったが、 あのパパッ子だった聖が……我が手元から離れるというのだ。 しかも夜華さんを思いやって。 彰利 「………」 俺は聖に近づいて、その頭をやさしく撫でてやった。 聖  「パパ……?」 彰利 「子供だ子供だと思っていたけれど……     いつの間にかこんなに大きくなっていたんだねぇ……。     じいやは嬉しいよ、聖……。じいやはなんにもしてやれないけど、     どうかママを支えてやってやっておくれ……」 聖  「パパ……うんっ」 なんだか嬉しかった。 ここ最近聖に構ってやることが出来なかったけど、 聖はそれでも立派に育ってくれたのかもしれないって思えたから。 彰利 「それじゃあ夜華さん……聖を頼みます」 夜華 「……ああ。こんな出来のいい娘を無下に扱ったら罰が当たる。     貴様に言われるまでもない。必ずわたしの手で素晴らしい大人に育てて見せる」 彰利 「……ん。     料理も裁縫も出来なければ高いところが苦手で泳げもしない夜華さんだけど、     そこは百歩譲って───」 ザグシャアッ!!! 彰利 「オギャアアアーーーーッ!!!」 百歩を譲ろうとした瞬間、思いっきり斬られました。 夜華 「貴様はっ……!!何故最後くらい笑って見送れんのだ!!」 彰利 「笑ってましたよ失礼な!ガイアばりの極上スマイルで!!」 夜華 「黙れっ!わ、わたしだって料理くらい───」 彰利 「まず口内江戸っ子症候群を治すことをオススメしますぞ」 夜華 「……口の減らないヤツだ」 彰利 「ひとつしか無いからね。減ったら大変だ」 夜華 「そういうことではなくてだな……ああもういい、始めてくれ」 彰利 「アラホラサッサー!!」 ビッと敬礼して月空力を発動させる。 それとともに急に『別れる』って実感が沸きあがってきて、なんだか寂しさが溢れた。 彰利 「夜華さん、いろいろあったけど楽しかったぞえ。     機会があったらそっち遊びに行くから、その時はヨロシク」 夜華 「来なくていい」 彰利 「あらヒドイ!!ひ、聖さん?遊びに行っていいよね?」 聖  「来なくていいよ」 彰利 「ギャアヒドイ!!なんで!?なして!?」 夜華 「落ち着く時間くらい寄越せ。     その代わり、落ち着いたらわたしたちがこっちに来る」 彰利 「そうなん?」 聖  「うん。……絶対に、会いに行くから……待っててパパ」 ニコリと、目の端に涙を浮かべながら笑う聖さん。 ……まいりました。そげな顔されたら待ってるしかねぇじゃねぇの。 彰利 「解り申した。この弦月彰利、うぬらの降臨を心よりお待ちいたそう。     たとえそれが何年、何十年先でも構わん。私は待っておるよ」 夜華 「その時あの女と喧嘩別れでもしてたら、わたしが貴様を貰ってやろうか?」 彰利 「大きなお世話ですよ失礼な!……あ、でも相当破局っぽかったらヨロシク」 聖  「……パパ、浮気は許さないよ?」 彰利 「グムッ……それ言われるとオラ辛ェ」 会話をする中、いよいよ月空力の輝きが濃いものになってくる。 俺はそれに気づくともう一度敬礼をして、ふたりを見送った。 彰利 「アディオスふたりとも!いつの日かまた会いましょうぞ」 夜華 「いつになるかは知らないがな」 聖  「うん。またね、パパ」 光が視界を覆い、弾けた。 咄嗟に目を瞑り───目を開けた時にはもうふたりは居なくなっていた。 彰利 「フフフ……俺は待っているぞ……。     夜華さん、貴様が強者になって帰ってくるのを……」 何もない虚空に言葉を投げ、その場をあとにする。 多分、嫁と娘と別れる男の気分ってこんなもんなんだろうと本気で思った。 だからこそ粉雪のことを大事にしなきゃいけないって思えたし、 みさおのことも大事にしなきゃいけないって思えた。 彰利 「……よし。いっちょ幸せになりますかぁっ」 いつか放棄した幸せ探しを───もう一度やってみようと思う。 以前はその意味さえ解らなかった俺だったけど、 今は人を好きになることも誰かを本気で大事に思うことも出来る俺だから。 ……いいさ、のんびりやっていこう。 とことん付き合ってくれる親友と、一緒に居てくれる幼馴染とともに─── Next Menu back