───FantasticFantasia-Set19/ゼノと盆栽───
【ケース44:晦悠介/そして再び旅路へ】 ───久しぶりにやった境内の掃除は、少しは心を静めるものだった。 悠介 「ふう……」 篠瀬と聖が未来に戻ってから数時間後の昼。 俺は地界の空を見上げて溜め息を吐いていた。 どうもこうもない、自分の力のことでだ。 悠介 「……ったく、冗談じゃない」 自分のものじゃない力に頼りすぎるのは好きじゃない。 どうにかして竜の力を殺さずに元の俺の状態に戻れるように出来ないだろうか。 悠介 「……はぁ。ま、出来るとしても地界じゃ無理だろうな……」 結局戻るしかないわけだ、空界に。 悠介 「何度目だったかな、もう忘れたけど───覚悟決めろよ、俺」 溜め息とともに吐かれた覚悟の言葉に、やっぱりまた溜め息が出た。 こうなればことの発端であるベリーに竜人のことを研究してもらうしかないだろう。 それとも他の方法でも探すか……? 悠介 「……っと、そっか。屠竜剣のことでじいさんに相談しようとも思ってたんだった」 そう考えると、まだやることは残ってる。 リヴァイアも俺と彰利を助けるために、 実験ってやつを放り出して失敗しちまったらしいし─── マンドラゴラも取ってこなきゃならない。 今やることは俺が元の自分の力量に戻ることと、屠竜剣のこと。 マンドラゴラを取ってきて、リヴァイアの失敗した実験を成功に導くこと。 と……四つくらいだろうか。 他にもあるとしたら、それは後で考えよう。 そこまで余裕がないんだから仕方が無い。 悠介 「よし、行くか」 箒を片付けると、ドッシリと重くのしかかった頭痛のタネを振り払うための旅に向かう。 あー……まずはリヴァイアと相談して、彰利に一緒に行くかどうか訊いて─── ───……。 ……。 で。 彰利 「へ?まだ空界に用なんてあったっけ?」 話した途端にこれだった。 悠介 「あのなぁ……そら俺の能力のことなんざお前にゃ関係ないかもしれないけどな、     まだマンドラゴラ取ってないだろうが」 彰利 「おーおー、そういやそうだ。引き受けたことそのまんまやったね」 悠介 「……お前さ、もしかして『好き』って感情手に入れるのと引き換えにボケたか?」 彰利 「イタイお言葉やね……確かに気ィ抜けてるかもしれんけど。     けどねぇ悠介?あたしゃまた幸せ探しをしようと決心したのですよ。     だからこげなオチャメも笑って見過ごしてくれると幸い。俺幸い」 悠介 「オチャメね……幸せ探すんならここに残るか?俺はすぐに空界に行くけど」 彰利 「馬鹿言うねぃ、とことん付き合うさね。     んで、向こうでやること終わったら───」 悠介 「終わったら?」 彰利 「フッ……粉雪ン家に今一度挨拶しに行く」 悠介 「挨拶って……確かお前、     一週間に一度はボクシングの相手しろって言われてたんじゃなかったっけ?     で、来なかったり負けたりしたら恋人とは認めないって」 彰利 「はうあ!!」 あ……固まった。 彰利 「うっあああああ……!!ヤベェよ思いっきり忘れてた……!!     あのオヤッサンのことだ、絶対に怒ってるぞ……!!」 悠介 「そうかもな。どうする?」 彰利 「ど、どうするったって……」 頭を抱えて悩み始める親友───だったが、 ハタと顔を上げるとガイアばりの極上スマイルを見せて言った。 彰利 「……駆け落ちってステキな響きだと思いません?」 それはもう、凄まじいほどにいい顔だった。 この場合、『ガイアに近い』って意味での『いい顔』だということを付け加えておくが。 悠介 「判断はお前任せだろ。日余は拒まないと思うぞ?」 彰利 「ゆ、悠介一緒にどう?そうすりゃメシとかの材料にも困らないし」 悠介 「知らん。そこまで付き合えるか」 彰利 「あらヒドイ!!頼むYO悠介!一緒に謝りにいっておくれYO!!」 悠介 「それはお前と日余の問題だろ?俺が一緒に行く理由が一切無い」 彰利 「グ、グゥウウ〜〜〜〜」 頭を抱えながらデンプシーロールをする彰利。 困惑してるんだか遊んでるんだか解らんなこれは。 悠介 「で、実際どうする?マンドラゴラ探しだけでも手伝うか、     それとも日余のオヤッサンのところ行くか。     ……というか、そもそもどうして日余だったんだ?     俺は案外お前は篠瀬とくっつくって思ってたのに」 彰利 「いやまあアレですよ。粉雪と付き合ってた高校時代を思い出したらさ、     案外スッキリと自分の気持ちってのが解った。     もちろん『好き』って感情が無けりゃあ解らなかったことだけどさ」 悠介 「……それじゃあつまり?」 彰利 「まあなんですか?そういうことだと思いますよ」 どうもこうもない、つまりこいつは仮にも恋人として付き合ってた時間を思えばこそ、 日余のことが好きだという自覚に至ったってわけだ。 言ってみればそれは、 高校の時に彰利と恋人になっていれば誰でも良かったのかもしれないと予測させるもの。 その頃に姉さんでも篠瀬でも、 彰利の傍にちゃんと居られたならどうなってたか解らなかったってことだ。 ……姉さん、つまらない誤解で見事に敗退したなぁ。 悠介 「………」 彰利 「ウィ?」 いや……こいつが義兄になるのは想像に容易くないが……というより冗談じゃない。 悠介 「……で、結局どうするんだ?行くか行かないか」 彰利 「押忍、マンドラ探し、付き合うよ。     ただし超獣決戦はもう勘弁。もうこの体はオイラだけの体じゃないから」 悠介 「お前な、人をなんだと……。     俺と一緒に居ると絶対にデカいヤツと戦うハメになるとか思ってないだろうな」 彰利 「激烈思ってます、ええマジで」 悠介 「………」 そんなことはない、とハッキリ言えない自分がかなり悲しかった。 悠介 「そか。じゃあリヴァイアのところに行くか。     俺達の所為で実験を台無しにしちまったし」 彰利 「へ?あ、そっか、そういや『長い間放置すると危険な実験』だとか言ってたねぇ」 そもそもの原因はベリーにあるわけだが。 ともあれ頷き合うと拳を合わせ、 その場の空気をこれでもかというくらいに吸ってからリヴァイアの居る母屋へと向かった。 今度はいつ戻れるか解らないからだ。 ───……。 ……で、空界。 会って早々『実験の続きがしたい、早く戻るぞ』と言うリヴァイアに連れられ、 あっという間もなく連れてこられたリヴァイアの工房で呆然とした。 彰利 「……オイラ、メシまだだったのに……」 悠介 「俺もだ……」 リヴァ「そう言うな。今行っている実験が成功すれば、     珍しいものが食べられるようになる」 彰利 「珍しいもの?なにさそれ」 リヴァ「それは成功してからのお楽しみってことにしてくれるとありがたい」 彰利 「隠し事かね……まあよいデショ、     ともかくマンドラさん取ってくりゃいいのだね?」 リヴァ「ああ、それで十分だ」 彰利 「御意」 ニヤリと頷く彰利をよそに、俺は少々考え事をしていた。 ベリーのことだし、ちと厄介かもという意味で。 悠介 「なぁリヴァイア。マンドラゴラ取りに行くのはいいけど、     やっぱりまた海から行くしかないのか?     あいつのことだから転移とかの次元の歪みを遮断する壁とか貼ってそうだし」 リヴァ「ああ、それは大丈夫だろう。ヤムベリングも今は大人しくしてるから、     空からでも転移でもウェルドゥーン山には行ける筈だ」 悠介 「そか。それ聞いて安心した。     でも一応───あの山を覆っていた霧を遮断する膜が出ます……と。弾けろ」 用心に越したことはない。 俺と彰利の体に透明の膜を張り、一息ついたところで準備は整った。 悠介 「じゃ、行くか」 彰利 「オウヨ。そんじゃあリヴァイア、行ってくるダニ」 リヴァ「ああ。わたしは第一工程からやり直しだ……これだから魔導錬金術は面倒なんだ」 ぼやくリヴァイアだったが、自分の手で何かを生み出せるのが嬉しいことは事実らしい。 ともあれ虚空にブラクホールを創造した俺は彰利とともにそれをくぐり、 一路……というのも変だが、ウェルドゥーン山へ向かった。 【ケース45:弦月彰利/オリーブヴィレッヂ】 ズズ…… 彰利 「ワ〜〜オ、素晴らしいデ〜ス遊戯(ゲーム)
ボ〜イ」 悠介 「いきなりなに言ってんだお前は……」 ブラックホールから降り立ってからの第一声が呆れ声で返された。 ただ『ズズ……』って効果音が鳴ったから、 何か『遊戯王』チックなことしなきゃイカンと思っただけなんだが。 まあいいコテ、それはそれとしてマンドラさん探しを開始しませう。 彰利 「しっかし見事に晴れてるねィェ〜」 悠介 「そうだな」 大変驚いたことに、降りた先のウェルドゥーン山には霧がまるで無かった。 蒼空の下のウェルドゥーン山はなかなか見晴らしのいい場所で、 周りが海に囲まれてる分、その景色の美麗さも相当ステキなものでした。 なるホロ、こげなところならひとり暮らしに最適さ。 しかし…… 彰利 「案外低い位置にあったんだねェ、ベリーさんのお屋敷」 オイラの言葉に悠介が頷く。 そうなのだ、ベリーの屋敷は山の頂上にあったわけじゃなく、 本当に案外低い場所にあった。 昨日来た時は霧の所為でよく解らなかったけど、どうやらこの山にはまだ上があるらしい。 悠介 「となると……マンドラゴラは頂上付近にあるんだろうな」 彰利 「そうなん?なしてそう思うん?」 悠介 「直感っていうか……この世界での経験上……かな……」 なにやらやたらと影の入った表情でしっとりと言う悠介。 どうやらこの世界で相当苦労したらしい……ってそりゃそうか。 俺だってベヒーモスやら青竜との戦いだけで十分だって思えるのに、 悠介の場合それ以外にもバカデカいモンスターと戦ったんだもんねィェ〜。 そら影も差すわな。 彰利 「まあそう暗くならんとォ。マンドラ採りマショ?     タイニーさんには細心の注意を払って」 悠介 「タイニーさんって、山中テコテコ歩いてるアレだよな?」 彰利 「アレだ」 悠介がそこらじゅうに居るタイニーさんを指差し、オイラは深く頷いた。 ヘタに手を出さなけりゃあ大丈夫だとは思うけど、それでも注意はしときましょう。 本気で強いし。 彰利 「うーしゃあ!そんではピクニックがてらにマンドラ採集だ〜!」 悠介 「……そだな、マンドラゴラがどう叫ぶのかは気になるところではあるし」 こうしてボクらのマンドラ探しは始まりました。 彰利 「山を越え谷を越え、ボクらの町にやってきた、ハットリくんがやってきた。     谷も越えなければ町も無いしハットリくんも居ないが気にするな」 悠介 「いいから登れたわけ」 彰利 「オウヨ!」 なんにしても山の中間あたりまではタイニーさんしかおらんらしく…… ベリーさんが『そこらへんに生えてるじゃない』とか言ってたのは、 ただ単にオイラをタイニーさんの手でブチノメーションしたかっただけらしい。 ヒドイよね、あの人。 彰利 「じゃけんど……マジでタイニーさんがもっさりと居るね。なんとかなりません?」 悠介 「相手から攻撃してくるわけじゃないだろ?なんとかする意味もないじゃないか」 彰利 「そらそうですけどねィェ〜……」 なんというかこう……うろつかれると鬱陶しいというかなんというか。 彰利 「のう悠介や?オイラ、このデラックス変身ベルトでタイニーさんになるからさ、     オイラを肩に乗せて一気に頂上付近まで上ってくれへん?」 悠介 「そんなことするまでもなく死神のお前なら簡単に登れるだろが」 彰利 「いやいやだってさ、竜人の力って見てみたいじゃない?     男として興味をそそられます」 悠介 「暢気でいいな、お前って」 彰利 「それがアタイのイイところーっ!!」 悠介 「『傍迷惑なところ』の間違いだろ」 彰利 「即答!?」 溜め息ひとつ吐いて、悠介はズンズンと山道を登ってゆく。 ベリーさんが作ったのかどうかは解らんけど、一応この山には道って言えるものはあった。 オイラはそげな道をデラックス変身ベルトを回転させることで変身し、 タイニーさんの姿でトトトトと駆け上ってゆく。 悠介  「結局変身したのか?」 タイニー「オウヨ。やー、やっぱいいね。見える景色がまず違うよ」 悠介  「そんなの猫になっても同じだろ?」 タイニー「キミ……それ元も子もないよ……」 そういやそうだった、オイラたちには猫化の能力がありました。 タイニー「いやー、でも結構悠介の歩幅に合わせるの大変だわ。      よくこれで逃走者の速度に追いつけるもんだなタイニーさん」 悠介  「なんの話だよ」 タイニー「なにって……タイニーさん。      某オンラインゲームのサルタバルタ地方に生息する      マンドラゴラ系モンスターでゴワスよ?」 悠介  「………」 今もなお影が差した顔で見下ろされてしまった……。 いい加減吹っ切れればよいのに。 タイニー「ところでさぁ悠介?タイニーさんのみならず、      マンドラゴラ系モンスターってよくこんな体であんな攻撃力誇れるよね」 悠介  「俺に言われても知るか、そんなこと。      大体お前、パイロットウィングス以外ろくにゲームやったことがないくせに      どうしてそうゲームの知識に詳しいんだよ」 タイニー「フッ……世の中にはいろいろあるんじゃよ。      そして俺もそのいろいろの中のひとつにすぎん……。      この世の全てを理解することなど不可能ならば、      ただのひとつを極めることもまた不可能。だから気にしない気にしない」 悠介  「時々お前、理解の範疇を超越する物体になるよな───って、それはいつもか」 タイニー「人を超次元生命体みたいに言わんでつかぁさい」 人をなんだと思っとるんですかねこの親友は……。 ───……。 ……と、話しながらもドカドカ進んでいき……ようやく頂上へと辿り着いた。 タイニー「フ〜〜〜ア〜〜〜ムア〜〜〜〜〜イ!!!!」 悠介  「いきなりどうした?頭に草でも生えたか?……って、生えてるな」 タイニー「いきなり失礼だぞキサマ!!この草はタイニーさんの証じゃないか!!」 悠介  「で、いきなりどうしたんだ?」 タイニー「や……なにやら叫ばなきゃならんような気がしまして。気にせんでください」 自分でも何故にあげなこと叫んだのかが解らん。 きっと気にしちゃいかんのだろう。 悠介     「ところで……」 タイニー   「う、うむ……」 タイニー&悠介『これか?マンドラゴラって……』 山頂の中心には、小さく生えた物体があった。 マンドラゴラ……のようには見えない。 なんだろねぇと悠介に訊こうとしたところ、 最初は首を捻っていた悠介が真剣な顔になってそれを見つめていた。 タイニー「あのー……悠介?」 悠介  「この形……この生え方……もしかしてこれって───っと、分析開始」 よう解らんけど悠介が生えている物体の分析を開始する。 ……と、あまり経たない内に溜め息を漏らして『やっぱりだ……』と呟いた。 悠介  「これ、地界で言う『松』だ」 タイニー「そうなん!?って……空界に松なんてあるん?」 悠介  「ところどころ違う部分もあるけど、      ここにこうして存在してるんだから疑いようもないだろ」 タイニー「どれ、引っこ抜いてみよう」 グワシとタイニーハンドで掴み、いざ細心の注意と腕力を以って……!! 悠介 「ば、ばかやめろっ!千切れたらどうする───」 ズボリャア!! 悠介  「あ」 タイニー「お?」 案外簡単に抜けました。 しかもその根っ子が───人のカタチをしている。 しっかりと目と口があり、閉ざされていた目がゆっくりと開き─── 松  『ギャァアアアアアアアアアッ!!!!!!』 ゴパパァァンッ!! タイニー「うぎゃぁああああああああっ!!!!」 悠介  「ぐぁあああああああっ!!!!」 凄まじい絶叫が放たれた。 お蔭で俺の鼓膜は爆砕し、どうやら悠介も例外ではなかったらしく、耳を押さえて蹲った。 当の松といったら、叫ぶだけ叫んだらガクリと死んでしまった。 おぉおおおお……!!なにやらやたらムカツク……!! でもひとまずは耳を回復させ、鼓膜と聴覚を元通りにした。 悠介  「〜〜っ……つぁ……なんだったんだよおい……。      竜族の咆哮くらっても破れなかった鼓膜が破壊されたぞ……?」 どうやら悠介ももう鼓膜を治したらしく、しかし耳を押さえながら訊いてくる。 なんだったのかなんて、俺の方こそ訊きたいところだ。 声   「それは『ピネトレーマンドラゴラ』っていって、      発見例がとても少ないマンドラゴラよ」 タイニー「ムムッ!?なにやつ!!」 ベリー 「わたしー!わたしわたしー!」 悠介  「一回言えば解る」 ベリー 「わはー、いいじゃないどうでも」 にぱー、っと満面の笑顔で登場したのはベリーさん。 ベリー 「けど、珍しいもの手に入れたのねぇ。ね、それ譲ってくれない?      三千年生きたけど、この目で見たのは初めてだわ」 タイニー「ダメでゴワス。      こいつにゃあ鼓膜破壊されたから、蘇生させてからたっぷり復讐する」 ベリー 「鼓膜って……ああ、さっきの凄い声ね。      ピネトレーマンドラゴラはね、      地界で云われてるマンドラゴラと違って鼓膜を破壊する能力があるのよ。      その声を少しでも聞けば鼓膜の炸裂は免れないっていう一種の呪いね」 タイニー「ものすげぇ迷惑な能力……」 悠介  「ベリーはどうだったんだ?      『さっきの凄い声』って言うからには聞こえたんだろ?」 ベリー 「……しっかり破裂したわよ。もう治したけど」 物凄く迷惑そうな顔で俺と悠介を見るベリーさん。 どうやらマジで破裂したらしい。 ベリー 「でもほんと驚いたわ。      ずっとここで暮らしてたけど、ここにピネトレーが生えるなんてね。      絶滅種だとも言われてるくらい貴重なんだけど……」 タイニー「ほうほう……そいつぁ〜珍しいモンを掘り当てたぜ〜〜〜っ!!      ……死んでるけど」 ベリー 「仮死状態になってるだけよ。土に戻せばまた元気になるから。      だから、ね?それちょうだい?研究したいわ」 悠介  「ン───……“複製せよ汝(クリエイション)”」 ねだるベリーさんをよそに、悠介がピネトレーマンドラゴラとやらを複製する。 それをベリーさんに渡すと、俺を見て『名案がある』と言った。 それは───いやいや、それは後で語るとしよう。 今はまずノーマルマンドラゴラさんの採取だ。 タイニー「これベリーさんや?ここらへんにある草はどれもマンド───って居ねェ!!」 悠介  「ベリーならピネトレーマンドラゴラ持って転移して消えたぞ」 タイニー「いつの間に……」 てんで気づかんかった……。 タイニー「悠介、分析レッツゴー!      草を調べてそれがマンドラゴラかどうか確かめるんだ!」 悠介  「片っ端から抜いてみたらどうだ?その方が速いだろ」 タイニー「俺もうタイニーさんに殴られンのヤだよ!!原作と違って強ェんだよマジで!」 ヤツの強さは殴られなきゃ解らねぇ……! 原作では頭突きで攻撃してくる筈なのに、 こっちだと葉っぱみたいな手を筋肉ゴリモリの腕に変えて殴ってくるんだ……!! おお、考えただけでも恐ろしい……!! その姿はまさしく『密林の王者、熱帯ニョロリン』に勝るとも劣らぬ……!! 悠介 「うりゃ」 ズボォッ! タイニー「おわぁあーーーっ!!ちょっとキミ!      人の話も聞かんとなにあっさり抜いて───アレ?」 抜いた先の根にあるのはタイニーさんじゃなかった。 それはしっかりとマンドラゴラで、 ミギャアアアアアとドイルさんのような声を上げて動かなくなった。 タイニー「ほえ……なんだい。やっぱり山頂にしかマンドラゴラはなかったってことか」 俺も悠介に習い、草を掴んで抜き去った。 するとボコリという音とともに姿を現す───タイニーさん。 タイニー「あ……えっと、どうも。す、姿見れば解るよね?フレンドフレンド」 T・M 「ホキャアッ!!」 メゴシャアアアアアアッ!!!! タイニー「ギョォォオオエェエエエエエエエエーーーーーッ!!!!!」 ……ボクは空を飛びました。 ───……。 ……。 タイニー「……ね?とっても凶暴でしょ……?」 悠介  「そうだな……ていうか戻ってくるの速かったな」 タイニー「月空力で転移したからね……」 おお顔イタイ……。 こんなヒラヒラした葉っぱの手がどうしてゴリモリマッスルになるんだか……。 悠介  「じゃ、戻るか。マンドラゴラも手に入れたし」 タイニー「んだな。とっととけェるべ」 行きは悠介のブラックホールで来たので、帰りはオイラの月空力で飛翔転移。 ───あっという間にバジュンッてなもんで、 見える景色はウェルドゥーン山からリヴァイア工房前へと一気に変わった。 タイニー「ィヤッホゥッ!」 ウォーマシンの真似をしつつ工房のドアを開け、いざクエストクリアへ! リヴァ 「悠介に検察官か、取れた───か?」 タイニー「ウィ?」 ……開けたはいいけど、まず目が合って……リヴァイアが固まった。 主に俺を見たままで。 ……えーと、何が悪かったのだ? 固まる要素などなにもなかった筈だが───ハッ!そ、そうか!挨拶が悪かったのだ! ウォーマシンじゃあダメだったのだ!!ならばえーと……そ、そうだ! タイニー「パ、パンナコッタナタデココナッツタピオカ!!!」 俺はタイニーさんの姿で葉っぱのような両手を上げながら腰をクネクネと動かした!! うむパーフェクトゥッ!!頭の上で手を合わせることが出来なかったのは残念だが、 それ以外は文句のつけどころも無いくらいにパーフェクトゥッ!! リヴァ 「………」 タイニー「あれ?」 しかしリヴァイアは余計に固まるだけだった。 なにがいけない……ハッ!そ、そうか!ふりつけだ! 俺としたことが振り付けを忘れるとは!! ───俺はまず月醒光を虚空からスポットライトのように下ろし、 その場でクルクルと回転して光合成をしてみせた。 やがて光と回転が終わる頃、もう一度両手を上げて腰をクネクネ動かす。 タイニー「パンナコッタナタデココナッツタピオカ!!」 リヴァ 「………」 だめでした……物凄く可哀相な人を見る目で見られてる……。 おかしいよ森写歩郎(しんじゃぶろう)くん……どうしてオイラがこげな目で見られなきゃならんの……? 悠介 「このたわけのことは気にしなくていいから。ほら、マンドラゴラ」 リヴァ「あ、ああ……助かる。あとはそれを入れるだけだったんだ」 悠介 「そか。そりゃ丁度よかった」 鮮やかにオイラの存在自体が無視される中、悠介がリヴァイアにマンドラゴラを渡す。 それが終わると悠介は俺を見下ろしてニヤリと笑った。 悠介  「リヴァイア、その実験が終わるのっていつだ?」 リヴァ 「そんなに時間はかからない。      ただこの魔導錬金術が完成すれば、面白いものが食べられるのは確かだ」 タイニー「そりゃ楽しみですなぁ……んじゃあ我らはちと地界に戻ります」 リヴァ 「地界に?忘れ物か?」 タイニー「んにゃ。このピネトレーマンドラゴラをとある人にプレゼントするんです」 リヴァ 「そうか───なにぃっ!?」 タイニー「キャーーーッ!?」 何を思ったのか、座っていた椅子から弾けるように駆けてきたリヴァイアが、 オイラの葉っぱのような手の中にあるピネトレーマンドラゴラを見る。 リヴァ 「ピ……ピネトレーマンドラゴラ……!!      実物を見るのは初めてだ……!こ、これもウェルドゥーン山にあったのか!?」 タイニー「オウヨ。山頂にひっそりと存在しておったよ?      それを引っこ抜いてきたんでさぁ。そして地界の誰かさんにプレゼント」 リヴァ 「……これ、譲ってくれないか?」 タイニー「よいですよ?」 言って、悠介を見ると───既に複製してありました。 すげぇや……こうなることを見越しておったのか。 悠介 「ほい。複製品だけど違いは無い筈だ」 リヴァ「あ、ああ、助かる!」 ピネトレーさんを手にしたリヴァイアは椅子に座り直すと、 実験を行いながら物凄いスピードでピネトレーさんの調査を開始した。 元気がいいねぇ。 タイニー「そんじゃあ俺達は───」 悠介  「だな。行くか」 工房のドアをノックして地界に繋げ、外に出て時空転移。 俺達で言う現代の晦神社に転移した俺達は、早速母屋へと駆け込んだ。 ───……。 ……。 ゼノ  「なに……?盆栽?」 タイニー「イエース!!ここにステキな松があります!      これを育ててみる気はないかね!?」 誰かさん───ゼノを前にして、 悠介が創造した鉢にきっちりと植えたピネトレーさんをハイと差し出す。 目的とはコレ。 ゼノに盆栽をやらせてみようという悠介の提案だった。 ゼノ  「くだらぬな。我はそんなものに割く時など持ち合わせていない」 タイニー「ホッ、逃げるのかえ?」 ゼノ  「なに……?」 タイニー「言っとくがなぁ、悠介は未来に居る時に盆栽を手がけていて、      しかも立派なカタチに仕上げたんだぞ」 悠介  「へ?俺、お前に盆栽見せたっけ」 タイニー「マジでやってたんスカ!?」 吹っかけのつもりが、思わぬ真実を知ってしまった……。 すげぇや……さすが悠介だ……。 ゼノ  「貴様が……?」 悠介  「まあ一応。やってると愛着が湧くぞ?案外気になってくる」 ゼノ  「………」 タイニー「みさおの話によればキミ、      精神の中で悠介にやられっぱなしだったらしいじゃない。      このまま負けっぱなしでええのかい?」 ゼノ  「ぐぬっ……!」 悠介  「?なんだよそれ」 タイニー「なんでもねぇズラよ?」 なんでもねぇけど、ゼノは確かにいつもの閉じ目のままわなわなと震えている。 もう少しじゃぜ? タイニー「……逃げるのかえ?」(ボソリ) ゼノ  「逃げる!?この我がか!───いいだろう、その挑発に乗ってやる!!      それを寄越せ!貴様の盆栽とやらに勝るものを育ててくれる!!」 チョロかった。 悠介 「じゃあまずは盆栽についていろいろ知っておかなきゃな。     んーーーー……………………弾けろ」 ポムッ。 随分と長いイメージの果て、悠介が一冊の分厚い本を創造して、それをゼノに渡す。 ゼノ 「……?なんだこれは」 悠介 「盆栽の本。それに必要なこといろいろ書いてあるから」 ゼノ 「敵に塩を送るか……後悔するがいい、必ず貴様に敗北の味わわせてくれる」 ゼノから殺気が放たれる。 敗北って……盆栽の鉢植えで撲殺されるのだろうか。 なんにせよ目的を果たした我らはすぐさま転移し、空界へと戻ったのでした。 ───……。 ガチャリ。 タイニー「ただいまギョ〜」 工房のドアを開けて挨拶。 やはり礼節は弁えんといかんね、紳士として。 『何事にも臆さず冷静に規律を尊び年配者は敬う。  レディーを待たすは恥と知り勝負相手の手加減は無礼と心得、  ティータイムの時間を設ける余裕も忘れない』 それが紳士でござるらしい。 例の如く無視はされたが、俺は挫けない男ぞ。 タイニー「実験とやらは終わったの?」 ……と、訊ねてみるも……リヴァイアはピネトレーマンドラゴラにお熱のようで、 やっぱり完全無視───というわけでもないらしい。とある一角を指差しております。 悠介 「……?」 俺より先にそれに気づいた悠介が指差された物体に近寄って手に取り、 シゲシゲと見つめる。 それは……どう見てもナイフだった。 悠介 「リヴァイア、これは?」 リヴァ「……………」 悠介が訊いてみても熱中。 こりゃダメだ、もう戻ってこれないところへ旅立ってしまったらしい。 悠介  「なんだろな、よく解らん」 タイニー「これで変わったものが喰えるって……どういうことだ?」 さて、いろいろ考えてみましょう。 こりゃどう見てもナイフ……しかし食事用のナイフじゃない。 どう見ても戦闘用ナイフであり、何気にキラキラ輝いとります。 武器……武器? タイニー「は……はうあ!!」 悠介  「彰利?」 そ、そうか!もしやとは思ったがそうなのか!! 俺はすぐさま工房のドアをノックして空界に繋げ、 悠介が持っている包丁を手にドアを開けた。 タイニー「悠介!今すぐ外に出て実験に移るぜ〜〜〜っ!」 悠介  「おいっ……なにか解ったのかっ?」 タイニー「オウヨ!こりゃ多分『ブフーの包丁』だ!」 悠介  「ブフー?───って、あれか!」 理解に至ったらしい悠介が俺と一緒に工房から飛び出し、 そのままの勢いでリヴァイアの屋敷の窓をブチ破って外へ繰り出した。 タイニー「モンスター!モンスターはいずこ!?」 悠介  「ディル、頼む!」 その場でキョロキョロとモンスターを探すオイラをよそに、 悠介が黒と紫を合わせたような珠を突付く。 するとそこからゴファァアンッと音を立てて舞い上がる───黒紫色の飛竜。 飛竜  『呼んだか、王よ』 悠介  「悪いディル、実験のためにモンスターを探したい。乗せてくれ」 飛竜  『確認するまでもないだろう。私は王の役に立つために在る』 悠介  「助かるっ!ほら乗れ彰利!」 タイニー「……えーと。この飛竜、ディルなん?」 悠介  「……?そうだぞ?」 タイニー「なんつーか色が違うような気がするんすけど」 悠介  「いろいろあったんだ。いいから乗れ」 タイニー「御意」 ともあれ浮遊してディルに乗る。 途端にディルが翼をはためかせ、一気に景色は上空へ。 で─── タイニー「あの……乗っといて今さらなんだけどさ。      悠介ってこの色のディルに乗るの初めて?」 悠介  「ん……そうだな」 タイニー「そっか……それじゃあ訊くべきだと思うから訊くけどさ……。      『いろいろあった』って言ってたけどさ、ディルってパワーアップとかした?」 悠介  「……そうだな。したと思うぞ」 タイニー「そ、そか……じゃあさ、じゃあさぁ……」 悠介  「……?なんだよ、言いたいことがあるならハッキリ言え」 タイニー「……前よりも速度上がってるってことだよね……?」 悠介  「───……あ゙」 王様が固まった。 刹那、バオッという羽ばたく音とともに景色が流星になった。 タイニー&悠介『だわぁあああああああおぉっ!!!!!』 よく『風を切る』なんて表現があるけど、これはそれ以上だと思った。 切るだけじゃ飽き足らず、引き裂いて粉微塵にしようかって速さです。 でもボクらが飛んでるわけではありません。 ブレーキなんて無いし、安全装置もありません。 悠介が止まってくれって言おうとした瞬間、 飛んできた葉っぱがオイラの頬を軽々しく切り刻みました。 物凄い速さです。ていうか死にます。 こんな状態で例えば砂埃でも飛んで来たら───ってビヂヂヂヂヂヂヂッ!!! タイニー&悠介『あでであいだだいだだだだぁあああああっ!!!!』 考えてた矢先に砂埃に襲われました。大激痛です。 俺は体を襲った痛みを和らげるために体をさすり、悠介は目だけをさすっていました。 どうやら体はさほど痛くなかった模様……やっぱり竜人ってやつになったからでしょうか。 しかしさすがはディル殿……目的地に辿り着くまでは何を言っても聞きやしません。 しかもその目的地ってのがモンスターなわけだから、 モンスターが見つかるまで止まる気がないってことです。 そしてボクらは願うのです。どうか早くモンスターが見つかりますようにと…… Next Menu back