───FantasticFantasia-Set20/遙か昔の空の大陸へ───
【ケース46:晦悠介/大乱闘澄まし汁ブラザーズ】 ───そこに戦いがあった。 ようやくモンスターを見つけ、そいつの前へと降り立った俺はそいつと戦っていた。 相手はミノタウロス。 戦斧を振りかざし、創造した“草薙の叢雲(ツムガリノタチ)
”を幾度となく弾く。 しかし───これはいったいどうしたことだろう。 かつてあれほど強く感じたミノタウロスが、 こうまでも歯応えの無い敵になってしまっている。 いくらミル・ミノタウロスじゃないからといって、この差はあんまりだ。 もはや俺があの緊張感を味わうことはないのだろうか。 これは戦いなんかじゃなくて、 ただ逃げ出そうとしたネズミを猫が襲いかかってるソレと同じなんじゃないだろうか……。 そう考えると、自分の竜人化が物凄く悲しかった。 やがて幾度となく攻撃を連ねたミノタウロスはついに体力を無くし、 その場で動かなくなる。 それを、“戦闘開始(セット)”を唱えた彰利がナイフでトドメを刺して終り。 ……その行為がとても虚しいものに感じた。 『強くなる』っていうのは、案外虚しいものなんじゃないかって……そう思えてしまった。 トドメをさされたミノタウロスはそのまま塵と───化さない。 悠介  「───ありゃっ!?」 タイニー「むむっ!?」 その代わり、ミノタウロスが瞬時に骨付き肉……言わばマンガ肉へと変貌した。 なんていうかこう、ゲームボーイのSagaとかで敵を倒すと降ってくる肉みたい肉に。 タイニー「お……おおおお……!!すげぇ!すげぇよこれ!やっぱブフーの包丁だ!!」 悠介  「驚いたな……なんでもアリか?空界って」 本来なら塵と化し、戦利品しか残さない筈のモンスターが肉になった。 しかし確認のために彰利のバックパックを覗いたところ、戦利品は一切なかった。 つまりこれは……戦利品は残さないけど、相手を肉に変える魔具なのだ。 タイニー「なるホロなるホロ、腹が減った時には便利やね。      しかもミノさんの肉だからデケェデケェ」 ミノタウロスの肉は俺達の身長ほどにも達する大きさだった。 あくまで予測だが、モンスターの大きさがそのまま肉の大きさになるんじゃないだろうか。 タイニー「お、おっしゃ!早速喰ってみるべ!!      朝飯食ってなかったし、ディル殿もいい加減腹減ったっしょ!」 悠介  「……しまった、空界の旅が始まって以来、ディルって何も食ってないわ」 タイニー「キミ、結構ヒドイね」 悠介  「やかましい、その代わり俺だって食ってなかったんだよ」 ともあれ彰利が月然力・火を使って、まずは肉の表面をしっかりと焼く。 肉汁を逃がさないためだろう。 タイニー「筋肉発達しすぎてて硬くなけりゃあいいけど」 悠介  「大丈夫だろ。      筋肉っていっても俊敏性と持久力が高い筋肉だから、柔らかい方だと思う」 タイニー「そかそか。……さて、そろそろ頃合なのでミュージックスタート!」 ベッポッ♪ベッポッ♪ デントコトコテト♪デントコトコテト♪ デコテンデコテンデコテンデコテンデントンテントンテンッ♪ タイニー「ハァアッ!!───上手に焼けました〜♪」 デントテンテテントンッ♪テンッ♪ 彰利は中まで火が通った頃合を今までの経験で察知し、そこまでしてようやく火を消す。 今の音楽になんの意味があったのかは知らんが、 香ばしくも柔らかそうな香りがその場に漂う。 タイニー「ど、どれ!」 早速肉を裂いて口に運ぶ彰利。 裂かれた部分からは肉汁が溢れ出し、柔らかくこげた肉の表面にジュウウと伝う。 ピキィイインッ!!! タイニー「うぅううううまぁあああいぃいいいいぞぉおおおおおおおおおおっ!!!!!」 ドゴッシュゥウウウウウウウンッ!!!!! 美味さのあまりか、口から光を出す彰利……ほとほと人間やめてるな。 って、人のことは言えないか。 タイニー「うわヤッベェ!!今まで喰ったことのない味だぞこれ!!      恐ろしく柔らかくて恐ろしいほど肉汁たっぷりなのに全然気持ち悪くならねぇ!      表面のカリッとした食感と中のとろけるような柔らかさがたまらねェYO!!」 彰利は傍から見てもご満悦だ。 俺はそれを確認してから(まあようするに毒見させたわけだが)ディルゼイルを呼び出した。 ディル『どうした、王』 悠介 「メシ、一緒に喰おう。悪い、今までメシのことさっぱり忘れてた」 ディル『………』 悠介 「どした?腹減ってないのか?」 ディル『いいや、頂こう。退屈しない旅だったのでな、空腹など忘れていた』 悠介 「はは、それは凄いな」 骨を地面に突き立てることで立ててある肉にかぶりつくディルゼイルを見て、 俺も肉を食べ始めた。 すると……確かに信じられないくらいに美味い。 予想以上に柔らかく、しかも肉汁に嫌気が差さない上に妙な臭みもない。 これが超自然の肉か……これは地界じゃ絶対に手に入らないなぁ。 タイニー「ヌウウ、この姿じゃあ思うサマ喰えねぇな……変身解除!!」 彰利がデラックス変身ベルトのスイッチをカチリと押す。 すると小さかった彰利の姿が元の黒衣姿の彰利に戻───らない。 タイニー「……あれ?」 カチカチ……スイッチが押される。 しかし彰利はタイニーさんとやらのままで、なにも起こらない。 タイニー「えーと……いやーーーん!!」 どうやらまた呪われたらしい……なにやってんだかこいつは……。 タイニー「グッハァマジですか!?またしても!またしても脱げねぇんですか!?      いや脱げねぇっつーか戻れねぇ!!勘弁してくださいよォ〜〜〜!!      マジヤバイッスよォ〜〜〜ッ!!!やめましょうよォ〜〜ッ!!      マジヤバそうっすよねェ〜〜〜ッ!!!」 葉っぱのような両手をヒラヒラさせつつ、白目である目からドバーッと涙を流す彰利。 しかも『しくしく』と泣き出す始末……なんというか鬱陶しいことこの上なかった。 悠介  「ほら泣いてないで喰えって。良かったじゃないか、その体なら腹一杯食えるぞ」 タイニー「うう……そ、そうだね……プラス思考プラス思考……」 が。 泣いていたタイニー彰利が顔を上げ、肉に手を伸ばそうとしたその時には─── 既に肉はディルゼイルの胃袋に便利に収納されていた。 タイニー「ゲェエエーーーーーーッ!!!!」 悠介  「お前、案外大喰らいなんだな」 ディル 『竜族ならばこれくらい当然だ。      ましてやこのような美味いもの、食べたことがない』 悠介  「そか、それはよかった」 タイニー「肉……オイラの肉が……」 タイニーの姿のままでズ〜〜ンと落ち込む彰利……不気味だ。 白目なだけに余計に不気味だ。 悠介  「そう落ち込むなよ。またモンスターを肉に変えればいいだけだろ?」 タイニー「そらそうですがね……」 悠介  「まあ俺は竜人の力を抑制させるなにかを探すつもりだけど」 タイニー「エエッ!?手伝ってはくれないの!?」 ディル 『せっかく手に入れた竜の力を放棄するというのか?』 なにやら好き勝手に言われてるなぁ……。 悠介  「『せっかく』、って言われても困るんだけどな。      俺は俺の力で強くなりたい。      武器が強くなるのはそれでいいけど、俺は地道に強くなりたいよ」 タイニー「武器が強くなるのはそれでいいんかい?」 悠介  「そりゃそうだろ、武器が強いのは作ったヤツの力だ。      それは俺の力じゃないし、作ったヤツが丹精込めて鍛えたって意味だろ?      鍛冶にも熟練度ってのはあるだろうし、      その熟練度は戦う者の意味で言う『強さ』だろ?」 タイニー「ふむ……なるホロ。キミっていろいろ考えてるねェ。      けどさぁ、誰かに力もらって強くなるのイヤなら、創造の理力はどうなるん?      それって思いっきりもらいものでしょ」 悠介  「だな。けど考えてもみろ、      創造の理力っていったって、最初はハト出すだけの力だったんだぞ?      子供の頃からそんな能力だって知識の中で育ってきた。      ハトを出すのって力とは言えないだろ?」 タイニー「まあそうだわな。ってそうか。      だとしたら子供の頃に手に入れたものがハトしか出せない力だとして、      それがいろいろなものの創造に変わったのはお前の力ってわけか」 悠介  「ちと違うけどな」 確かに貰った力だけど、それは子供の頃からずっと付き合ってきたもので…… 言ってしまえば自分の一部みたいに育ってきた……一緒に成長したって感覚があるんだ。 だから一緒に強くなったって感覚もあるから気にはしてない。 ましてや『体力を削る』なんて枷があった分、自分の能力みたいに思えるのも当然だった。 一時期は使えなくなったり、碌なものを創造出来なくて嘆いてた時期もそりゃああった。 けどここまで上り詰めてこれたのも…… いろいろな事柄の先で一緒に成長できた証だって信じてる。 だからこそ……そう、だからこそだ。 竜の力とかで一気に強くなるのが気に入らない。 そこには『成長』の『せ』の字だってありゃしない。 むしろ今までの成長の過程が否定されてるみたいで気分が悪いくらいだ。 悠介  「……ようするにだ。      竜の力を手に入れるとしても、俺はその竜の力とも一緒に成長したいんだ。      もちろん竜の力ってのは厄介なくらいに強いし、      こんなこと言うのは手に入れることの出来た俺の贅沢な意思かもしれない。      けどさ、あいつら……ヴァルトゥドゥスやアーガスィーやヘイルカイトの力と      一緒に強くなりたいって思うのは贅沢なことか?      俺は……どうせ強くなるなら一から、あいつらの力と一緒に強くなりたい」 タイニー「強くなりゃいいんでないかい?これから」 悠介  「だァからっ……!!      俺は竜の力自体も『一』の状態から一緒に強くなりたいって言ってるんだ!      俺だけ『一』から初めてもなんの意味も無いだろうが!!」 タイニー「そ、そうですね」 ウガーッと怒鳴ると、彰利が少し引いてそう答えた。 ……問題はどうやって竜の力を一にするかだ。 そんなことが出来るなんて思ってること自体が笑い話なのかもしれないけど、 この空界……ファンタジーの世界ならそれが出来ると信じてる。 ていうか信じなきゃやってられん。 はぁ……どうなるんだよ俺の体……。 悠介  「……いいや。まずは屠竜剣のことでじいさんに相談しよう……。      まずは出来ることから潰していかないとな……」 タイニー「あらら、すっかり暗くなっちゃってまぁ。      元気出せよメェ〜〜ン、キミに笑顔は似合わないぜ?」 悠介  「……お前俺に喧嘩売ってるのか……?売ってるな……?売ってるんだな!?」 タイニー「ゲェエエーーーーッ!!!素で間違えた!!      キミに涙は似合わないって言おうとしたのに!!      しかも何気に悠介がカナリィ(笑)の部長チックなことを!!是非とも      『あいつに変なことを吹き込んだのはお前か?お前だな?お前なんだな!?』      と言ってみせてプリーズ!!さぁ!」 悠介  「飛竜の力よ我が手に宿れ……!!エネルギー!全開!!」 タイニー「ジュースティングスラッシャー!?」 悠介  「ただの拳だ馬鹿たれぇええーーーーーっ!!!!」 ヒュオッ───カカカカカカカカァンッ!!! タイニー「ゲェッ!殴るモーションの際に足首から始まる関節八箇所の同時加速!?      こ、これは───音速拳!!」 ベパァンッ!!! タイニー「じゅぎゅっ!!」 わざわざ解説してくれた彰利の顔面に拳が突き刺さった───だけでは治まらず、 地面にメゴシャとめり込んだ。 悠介 「……ってしまった!全力でやったらマズかった!!彰利!?おい彰利!!」 呼びかけてみるも、グビグビとも言わない彰利は完全に気を失っていた。 ……やっぱり人が竜の力なんて持ってると碌なことにならないな。 悠介 「……はぁ。ディル、元迷いの森に行ってもらえないか?」 ディル『承知。乗れ、一分も要らん』 悠介 「……ゆっくり、頼むな」 嫌な予感とともにディルゼイルの背に乗り─── 案の定風を切ってしまった俺は、それはもう絶叫した。 ───……。 ……。 ともあれ元迷いの森……ディルゼイルが言うには『サウザーントレント』に到着。 さっそくじいさんの鍛冶工房に入ると、探すまでもなくじいさんに見つかった。 長老 「お……なんじゃ客人、また来たのか」 悠介 「悪いじいさん、ちと相談に乗ってもらいたいんだが……」 長老 「む?」 俺は罪悪感を感じながらも、髭をモシャリと撫でたじいさんにこれまでの経緯を話した。 長老 「そうか……屠竜剣が砕けたか」 悠介 「すまないじいさん……じいさんの夢の具現って言ってもいいくらいの剣を……」 長老 「なにを言い出すんじゃ。武器はいずれ壊れるものじゃ。     作った者は神ではない。錆びぬ剣など無ければ、砕けぬ剣など有り得んよ。     じゃから……の」 悠介 「だから……?」 長老 「次のワシの夢は『折れぬ砕けぬ錆びぬ剣』じゃ!!     余生がある内に満足するのは勿体無い!!」 悠介 「そ、そか。新しい夢を持ってくれたのは嬉しいが……     あ、じゃあこの砕けた屠竜剣って役に立つか?」 言って、バックパックから砕けた屠竜剣を取り出し、じいさんに見せた。 するとじいさんは難しそうな顔をしてそれを見た。 長老 「これは……内側と外側から圧迫されて砕けたんじゃな。     おぬし、いったいなにをエンチャントして、なにに砕かれたんじゃ?」 悠介 「……あー」 えーと、なんだ? じいさんの言い方だと、これは内側と外側の圧力で砕けたということで…… つまりリヴァイアサンの力だけで砕かれたわけじゃない……? そりゃそうか、エクスカリバーなんてエンチャントすりゃあああなるわ。 悠介 「えーとだな、エクスカリバー……」 長老 「ムオッ!?お、おぬしそんなものをエンチャトしたのか!!     そんなことをすれば軽い衝撃でも砕ける可能性は出てくるわ!!     刀身の強度の基準はドラゴンの牙とオーブの強度を足したものじゃ……     ドラゴンをも殺すと云われる魔導の究極、     エクスカリバーをエンチャントすれば簡単に砕けてしまうわ……」 悠介 「……そりゃそうだ」 話聞いて納得した。 屠竜剣が壊れたのは、エクスカリバーをいつまでもエンチャントしてた俺の責任だ。 長老 「まあよいじゃろ。この屠竜剣を元にして、別の剣を作ってみよう。     ただし、材料があればじゃが……」 悠介 「材料か……また素材集めか?」 長老 「しょうがなかろう、材料も無しに錬成なんぞ出来ん」 悠介 「……で、その材料は?」 長老 「折れぬ曲がらぬの代名詞といったらアレじゃろ、オリハルコン」 悠介 「オリ───こ、この世界にあるのか!?」 長老 「いいや。今はもう無いと言われておる」 ……だめじゃん。 長老 「かつては巨人の里にあったと云われておる。     しかし今や巨人の里は滅び、何も残っていない浮遊島が残っておるだけじゃ」 悠介 「浮遊島?」 長老 「うむ。かつての名は『ノヴァルシオ』。     今ではただの浮遊島、ラピュゥタと言われておる。     伝承では見える島と見えない島があるらしいがの」 悠介 「ラピュゥタって……」 あれだろうか、アーマードコア・プロジェクトファンタズマの、 浮遊島のバトルフィールドの虚空に存在する見えない陸…… 長老 「巨人が絶滅した今となっては、その見えない島を探す手立てはない。     次元干渉を行使出来る輩の何人かが過去に行ってはみたんじゃがな。     しかし、結果は散々じゃ。巨人族は興味本位で近づく者には容赦ないんじゃ。     オリハルコンどころの騒ぎではない」 悠介 「だろうなぁ、巨人ってハンパじゃなく強かったし……」 長老 「巨人と戦ったことがあるのか?既に絶滅したものと思っておったが……」 悠介 「……ゼプシオン=イルザーグ、って知ってるか?」 長老 「うむ、巨人族の英雄じゃな。そのゼプシオンがどうかしたのかの?」 悠介 「その亡霊と戦った。ここが迷いの森だった頃、森の中にあった石碑の前でな」 長老 「ほう……あの亡霊か。あれがゼプシオンだったとはの。間違いないのかな?」 悠介 「自分から名乗ってた。ウソつくようなヤツには見えなかったし」 長老 「……そうか」 じいさんは再びヒゲをもしゃもしゃと撫で、溜め息を吐いた。 長老 「どちらにせよオリハルコンは空界にはもう無いと言われておる。     ゼプシオンを倒してオリハルコンが手に入った、     などという奇跡でも起こればよかったんじゃがな」 悠介 「残念だけどそういうことはなかったなぁ……っと、     他になにか必要な素材はあるか?」 長老 「また竜族の牙などがあればいいんじゃが……どうじゃ?」 悠介 「ああ、蒼竜王の牙とかがある。     他にもリヴァイアサンの素材だとかなんだとかあるけど……」 長老 「…………おぬし、少し見ないだけでどんどんと滅茶苦茶な人物になっていくのぅ」 悠介 「滅茶苦茶じゃないと思うが……」 長老 「ドラグーンブレイバーのブレイバーランクに、     ドラゴンマスターのランクネーム……それのどこが滅茶苦茶じゃないと……?」 悠介 「………」 キツイ言葉だな……耳が痛い。 だが断じて好きでそうなったわけじゃないぞ。 悠介 「まあいいや、この中で必要な材料を取ってくれ。     それが終わったら、俺と彰利で過去の巨人の里に行ってみる」 長老 「なんと……本気で行くのか?巨人は見知った者以外には厳しいぞ」 悠介 「……それなら望むところだ。     巨人っていうくらいなら、強さのなんたるかを知ってると思う。     正直言うとさ、俺……今の自分の力に迷いを感じてる。     困ったことに竜の力ってのが体に染み込んじまっててさ、     馬鹿みたいな強さ手に入れて……自分の力が解らなくなってきた」 長老 「ほう……では巨人に戦いを挑むと?」 悠介 「どうだろな、場合に寄るよ。けど一応オリハルコンは探してみるよ。     そっちはもういいのか?」 長老 「ウム。欲しい材料は全て取り出させてもらったわい。     おぬしはすぐに向かうのか?」 悠介 「ああ。なんていうのかな、出来ることはやっておきたいから」 長老 「そうかそうか。ではワシの方も出来ることをやっておくかの。     オリハルコンを鍛えるには、ワシの手元にあるものではダメじゃからの。     ……やれやれ、ポリットイーターに素材でも集めてもらうかのぅ」 悠介 「………?」 ポリットイーターって名前になにか引っかかりを感じたけど、 必要な素材が取り出されたバックパックを収納して歩き出し、外へ出た。 木の幹の傍らに倒れてたタイニー彰利を拾い上げ、ブンブカとシェイクする。 悠介 「……起きないな」 完全に白目をむいてる……いや、白目なのは最初からか。 仕方ない、久々に─── 悠介 「───裁き」 バチィッ!!バリバリバリバリバリィイイイイッ!!!! タイニー「アゴゲェエエエッ!!!げごがごがげげがぁああああああっ!!!!」 あぁ起きた。 起きたところで裁きを停止。一息を─── タイニー「いきなりなにするのかねキミはっ!!今のが気絶してる人にすることかね!?」 悠介  「無事でなによりだ。というわけで過去に行こう」 タイニー「……キミ、時々マジでヒドイよね」 悠介  「遠慮が無いって言ってくれ。お前以外にこんな遠慮無しにぶつかるかよ」 タイニー「それって愛!?」 悠介  「友情汚したいなら否定してやらん」 タイニー「友情唱えてくれるならもっとフレンドリーを感じさせておくれよ!」 悠介  「あー……お前との友情ってさ、わざわざ友情がどうとか言うものかな」 タイニー「んにゃ、全然。からかってるだけだし」 悠介  「……いい性格してるよお前」 タイニー「だってさぁ、俺達の間で友情がどうのなんて今さらじゃん。      友情なんざ何年も前に確信してることだし、喧嘩は臨終前にやるって決めたし。      けど、文句だって言うし愚痴だってこぼす。      からかったりもするし呆れることも究極である。それが俺達の間柄だろ?」 フレンドリーを感じさせろって言ったのはキサマなんだが……。 まあここであーだこーだ言っても始まらん。 悠介  「わぁったわぁった、いいから次行こう」 タイニー「次って?」 悠介  「ん」 大空を指差す。 空界歴史書によれば、巨人の里はかつてこの森の上にあったらしい。 見上げてみても何も無いが─── 巨人の里の大地には見える大陸と見えない大陸があったそうだ。 悠介 「ディル、ちょっといいか?」 皇竜珠を突付いてディルゼイルを呼び出す。 ───が、皇竜珠から出て地面に降り立ったディルゼイルはちと難しい顔をしていた。 悠介 「ディル?巨人の里の場所を知ってたら案内してほしいんだけど」 ディル『……それは無理だな』 悠介 「無理───ってどうしてだ?」 ディル『巨人族と竜族は敵対関係にある。     既にその大陸に巨人が居ないとはいえ、そこへ行くのは憚れる』 悠介 「あー、そうなのか。じゃあ場所を教えてくれるだけでいい。どこらへんにある?」 ディル『……すまんな、王。それだけは言えぬ』 悠介 「へ?あ、おいっ」 ディルはそれだけ言うと皇竜珠の中に消えてしまった。 俺と彰利はディルゼイルのディルゼイルらしくない態度に唖然とするだけだ。 悠介  「言えないって……」 タイニー「あのディル殿が悠介に隠し事とは……そこまで敵対してたってこと……?」 これはまいったな……場所が解らないんじゃ八方塞り───なわけがないな。 考えてみれば『過去では』この森の上空に浮遊大陸があるわけだ。 だったらなにもこの時代で大陸を探さなくても、過去に行けば─── 悠介  「悪い彰利、早速だけど過去に飛んでくれ」 タイニー「過去?どれくらいかね」 悠介  「ざっと3000」 タイニー「ぶっ!?さ、三千ッ!?」 悠介  「いや……もっと前でもいいかもしれないけど……ん、やっぱり三千年前でいい」 タイニー「おぉおおお……俺、そんな昔に遡るの初めてなんだけど……。      つーかなに……?創世されてんの……?」 悠介  「されてるされてる。創世されてなかったらベリーは生まれてないだろ」 タイニー「いや、あのエンシェンドババアのことだから歳をサバ読みしたかもしれんし」 悠介  「そりゃ有り得るな……けど、一応その時代に転移してくれ。三千年前だ」 タイニー「御意……つーかさ、キミ超越創造で月空力創造して一気に飛べない?      ブラックホール転移出来るなら座標確認くらいできるっしょ?」 悠介  「ああ、そりゃ無理だ。転移は出来るっていっても同じ歴史間でだけだ」 タイニー「えー?出来るだろぉ」 悠介  「………」 ……ええい出来んというのに。 出来るとしたら何かの力を辿って、引き寄せるように転移させる程度だ。 実際、ベリーの時がそうだった。 ……正直、精神の中に引っ張り込めるとまでは思ってなかったが。 悠介  「俺が歴史干渉出来るとしたら、相手を引っ張り込む程度だ。      自分自身が歴史干渉するなんて無理なんだよ」 タイニー「いやぁ〜……絶対出来ると思うけどなぁ」 言いつつ、月空力を創造する彰利。 その過程、俺を見てニヤリと笑う。 ん───ああ。 悠介 「───分析、開始」 彰利が発動させた月空力の分析を開始する。 が───歴史に干渉するだけあって、その構造は複雑だった。 悠介 「づっ───」 深く分析しようとした瞬間、割れるような頭痛に襲われた。 その時にハッとした。 悠介 「……アホゥ」 溜め息とともに分析を解除した。 まったく……なんて馬鹿。 今自分でやろうとしてることこそ他人の力で強くなろうってものじゃないか。 タイニー「およ?やめるん?」 悠介  「これ以上自分を追い詰めたくない。早く行こう」 タイニー「あいよぅ!レッツゴゥ暦間移動!!」 眩い緑と白を混ぜたような光が蔓延する……暦間移動が行使されようとしている。 眩しさに少し目を閉じ、何気なく息を吐いた───その時だ。 声   「待ってください!」 タイニー「なにやつ!?」 突然聞こえた声に目を開き、彰利はすぐさまに言葉を返した。 『なにやつ』もなにもない。 この声は─── 悠介 「みさお……!?」 そう、みさおだ。 何も言わず、現代に置いて来たはずなのに─── タイニー「貴様ァ……何故ここに!!」 ダオスの真似をしているタイニー彰利はこの際無視しよう。 悠介 「みさお、なんで来た?空界には来たくないって言ってたじゃないか」 みさお「……朝目が覚めたら、聖ちゃんが居ませんでした。     事情を聞いてみたら篠瀬さんと一緒に未来に行ったって……。     それで……どうしてわたしに何も言わずに行ったんだって……     友達なのになんで全然話してくれなかったんだって……怒ってきました」 悠介 「みさお……俺が訊いてるのはな」 みさお「……置いていかないでくださいって言ったじゃないですか……。     怖いとかそんなこと言ってられる余裕なんてなかったんです……。     現代に戻っても、わたしに普通に接してくれる人なんて居ません。     親しい人なんて聖ちゃんと篠瀬さんくらいだったのに……」 悠介 「だからって……解ってるのか?この世界はやさしくない。     死なないだろうなんて思ってたって死ぬし、守りたいって思ってても守れない。     お前は……そんなものに耐えられるのか?」 みさお「………」 みさおがキュッと袴を握り、震えている。 説教なんて言うつもりはない。 ただ危険だと解ってる場所に、覚悟のないヤツを置いておくわけにはいかない。 俺が『守りたい』ヤツの中には、ちゃんとみさおも入っているのだから。 けどみさおは地面に涙を弾かせると同時に俺を睨んだ。 みさお 「それでもっ……それでも約束してくれたじゃないですか!      もう置いていかないって!一緒に居てくれるって!      わたしはもう……あの現代で生きていくって決めたんです……!      それなのに親しい人がひとりも居ない場所で待っているなんて嫌なんです!      だからこうして追いかけてきたんじゃないですか!      どうして解ってくれないんですか!?」 悠介  「みさお……」 みさお 「これ……聖ちゃんのプレートを譲り受けてきました。      自分はもう使わないから、って……。彰衛門さんのことをお願いって……」 タイニー「なんとまあ……マジすか?」 彰利が嬉しいのかどうか微妙な顔でみさおが首にかけているプレートを見た。 けど俺は彰利とは違い、みさおの目を直視すると、ジッと見つめた。 悠介 「本当にいいのか?俺達はこれから三千年前に飛ぶ。     巨人が住むって言われてる空中浮遊島に行くんだ。     ヘタをすれば帰ってこれなくなるかもしれない。それでもいいのか?」 みさお「っ……はい。わたしは彰衛門さんと悠介さんと一緒に行きます」 やっぱり少し震えたみさおだったが、しっかりと頷いて俺の目を見つめ返した。 俺はそれに溜め息を返してから……───ゆっくりと頷いた。 悠介  「解ったよ。ただし、自分の身は自分で守ること。      他人を当てにしてて死んでも責任はとれないぞ」 みさお 「解ってます。戦いになっても出来るだけ戦わずに逃げろ、ですよね」 悠介  「そういうこと。いいか、彰利」 タイニー「……ふむ、いいじゃろう。 娘を守るのは親の務め……既に粉雪にも      『我輩と添い遂げると無条件でみさおさんが付きますよ?』と言ってあるし」 みさお 「え……返事は?」 タイニー「もちろん『OK』じゃよ。だからの、みさお。      もうじいやのことを完全に親と思ってよいぞよ。      じいやは逃げも隠れも……しねぇぜ〜〜〜っ!!」 なんで最後をキン肉マン風にするのかは解らんが…… そんなもんでもみさおは嬉しかったらしい。 溜まっていた涙を流し、彰利に抱きついた。 みさお 「うぐっ……うっ……うぁああああん……!!      おとうさん……おとうさんっ……!!」 タイニー「うむうむ……よしよし。      みさおはこんなに大きくなったのに泣いてばっかりで、恥ずかしいねぇ」 いや、タイニー顔でそんなこと言われてもな。 タイニー「だがの、みさおや。      じいやはそげなみさおがじいやのことをおと───おとうさん!?」 ドギャアと驚いた彰利が目を真ん丸に見開く……いや、真ん丸なのは仕様だった。 タイニー「なんとこの小娘が!じいやのことをおとうさんと呼びおるか!」 みさお 「ぐすっ……うぅっ……だ……だめなんですか……?      親と思っていいって……言ったじゃないですかぁ……」 タイニー「全然オッケー!!雨でも風でも大丈夫!!むしろ呼べ!呼びなさい!      ああもう可愛いねコノヤロ!!タワッシワッシワッシワッシワッシ!!!」 ゴリリゴリゴリゴリリリリ!!───彰利がみさおの頭に顎を擦り付ける。 しかしその姿はタイニーなため、みさおは物凄く屈まなければいけないわけで…… 予想通り、みさおは苦しそうにしていた。(無理矢理屈まされて) 悠介  「彰利、話が纏まったところでさっさと行こう」 タイニー「アイヤー待たれよ!      悠介、悠介の分のデラックス変身ベルト、みさおに渡して」 悠介  「……まあ、いいけど」 既に次元の彼方へと消えていた変身ベルトを創造してみさおに渡す。 みさおはそれを受け取ってシゲシゲと見つめるが、 彰利が世話焼きオヤジのように腰に巻いてやると、スイッチを押してタイニー化させた。 タイニー二号「わっ……な、なにこれ……」 タイニー一号「デラックス変身ベルトによって変化できるタイニーマンドラゴラ。        某オンラインゲームのサルタバルタ地方に生息する」 タイニー二号「……なんだかいきなり先行き不安になってきました」 悠介    「先に立つ後悔があればなぁ」 漫画の表現で言う『横に並んだ縦線』を頭の上に出して俯いているみさお。 もはや後の祭りだ。 せっかくだからと、一度押したらスイッチが戻らなくなるように仕掛けてある。 タイニー一号「そのスイッチ変身できて、もういっちょ押すと戻れるって寸法じゃ。        いつでも好きな時に変身するとええ」 タイニー二号「……あの。さっきから押してるんですけど戻りません……」 タイニー一号「あれ?……あの、悠介サン?」 悠介    「よかったな、仲間が増えて」 タイニー一号「ゲッ……う、うちの娘になんてことしよるかこのモミが!」 悠介    「モミ言うな!ていうか眩しくて仕方ないわ!        月空力発動させるならさっさとしろ!」 タイニー一号「あ、忘れてた。んじゃまあみさおの件はまたいつか考える方向で」 タイニー二号「そういう言い回しされると、大体流れますよね……」 みさおの言葉なんか気にする風でもなく、光が集中する。 それが弾けるとともにバジュンという音が高鳴り─── 悠介   「───お?」 タイニー2「わ……」 タイニー1「あー、やっぱり……」 気づけば時空の中を漂っていた。 タイニー1「遡る時間が長すぎるから時空間を流れる時間が長すぎるんじゃよ〜……。       気をつけたまえよ〜?       前にも言ったけど、歪みに飲まれたり落ちたりしたら何処に飛ぶか解らんよ」 悠介   「解ってる。前に飲まれたから覚えてるよ」 確かあの時だったな、月永と会ったのは。 タイニー2「…………長いですね」 悠介   「そうだな」 漂うことどのくらいだろうか。 流されるようにふよふよと時空の中を漂い、向かう先は三千年前……さすがに長いな。 と思った矢先に景色が開けた───途端、凶々しい森の中に俺達は立っていた。 悠介   「迷いの森か……」 タイニー1「うわぁ、嫌な雰囲気……って、これからどうする?さっさと移動したいけど」 悠介   「んーーー……ほれ上」 タイニー1「む?おお」 彰利が空を仰ぐ───と、その場には巨大な大陸があった。 支えが有るわけでもない、見事に浮いた大陸だ……すげぇ、ビバ・ファンタジィ。 悠介   「よし飛べ彰利。俺を引っ張って」 タイニー1「キサマ空くらい飛べんのか!?」 悠介   「飛べる方がどうかしてるんだ!       お前自分が飛べるからって常識外れになるな!」 タイニー1「キミに常識外れとか言われたかないですよ!       創造出来るんだったら風でもなんでも創造して空飛べばいいじゃねぇの!!」 悠介   「……しゃあないか」 タイニー1「なんすかそりゃあ!」 ギャースカ騒ぐタイニー彰利をよそに風を創造する。 さらに重力を消すようにイメージを解放、上手く風に乗って宙に浮く。 タイニー1「……出来るじゃねぇかコノヤロウ……」 悠介   「出来るぞ?」 タイニー1「ワタシイマトテモアナタヲコロシタイネー」 悠介   「は〜いはいはい、それはいいからとっとと行こう」 タイニー2「悠介さんって死神にも神にもなったのに、なんで空飛べないんですか?」 死神は……ルナもゼノもシェイドも飛んでたからなんとなく解るけど、 神はなんだか意味が違う気がするが……? そもそも一時とはいえ死神になったからって自分が空飛べるだなんて思わなかったし。 ていうか……そもそもなんで飛べるんだ?不思議でしょうがない。 悠介   「まあいいや、行くか」 タイニー2「ラジャーです」 さらに風を起こして空に浮き、それに続くようにみさおが月空力で空を飛ぶ。 それを見て彰利がニヤリと笑い─── タイニー1「俺も負けてられねぇぜ〜〜〜っ!!月然力・風!!       ここですか!?ここですか!?ここですかぁあーーーーっ!!!!」 ジュゴォオオオオオオッ!!!!───月空力じゃなく、月然力で飛ぼうとする。 ……が、その場に台風でも訪れたのかと呆れるくらいに 樹を薙ぎ倒すわ葉っぱを吹き飛ばすわ……物凄いことになってる。 ……ていうか飛べてない。 悠介   「普通に月空力で飛べ!」 タイニー1「おかしいよコレ!体ちっこいのに体重だけはそのままなん!?       軽くなっててもいいじゃん!」 悠介   「いーから風止めろ!止めろっつーの!!」 タイニー2「森がボロボロになっちゃいますよ!」 タイニー1「お、俺は負けてねぇ〜〜〜っ!!」 悠介   「負けてねぇじゃねぇ!!       対抗意識燃やすのはいいから環境破壊はそれくらいにしとけ!!」 タイニー1「ち、ちくしょ〜〜〜っ!!言っておくが負けたわけじゃねぇぜ!?」 悠介   「わぁったからさっさとやめろ!」 タイニー1「オーライ親友!月空力!」 唱えた途端、彰利が一気に空に浮く。 勢いよく風を切り、空へ空へと飛びドゴシャアッ!!! タイニー1「ペゲッ!!」 悠介   「あ」 タイニー2「うわっ……いたっ……!」 高い高い位置にある浮遊大陸の底に突き刺さった。 ……あー……なんと言ったらいいものか。 どうしてこう馬鹿なんだあいつは……。 悠介 「彰利〜?無事か〜?」 風を操り大陸の底まで飛ぶ。 そこでは……ああもう感心するくらい見事に突き刺さってるよ。 マンドラゴラなのに頭から埋まるとは…… 悠介 「痙攣もしてないな……こりゃ見事だ」 一応、大陸の底からタイニー彰利をボコリと抜き取る……と、見事に気絶中。 悠介 「はぁ……裁き」 バヂィィイイッ!! タイニー1「オギャアアアーーーーーーーッ!!!!」 呆れながら再び裁きを流してキツケにした。 効果は───あー、起きた起きた。 タイニー1「なにしやがんのアータ!もっとやさしく起こそうよ!」 悠介   「そうだな、次からは鼻ワサビの刑でいこう。       鼻の中にワサビエキスをこう……流すんだ」 タイニー1「嬉しくなくて涙が出てくるわい……」 悠介   「いーから上行こう。第一目的はオリハルコンだろ?」 タイニー1「第一目的?……第二目的は?」 悠介   「ゼプシオンに一騎打ちを挑んでみる。竜人の力使った状態でだ」 そう、歴史書によれば、この時代にゼプシオンは居る筈だ。 巨人の寿命は凄まじいらしく、ゼプシオンの生きた歴史も七百から八百とも云われてる。 つまり……ゼプシオンが挑もうとした黒竜王ミルハザードも、 そんなに前から未来の歴史までずっと大空の王として存命してきたのだ。 タイニー1「あー……でも竜人の力、嫌いだったんじゃなかったん?」 悠介   「……いろいろ思うところがあるんだ。だから、な?」 タイニー1「まあ俺は拒む理由なんぞないから付き合うけど。       オリハルコンってどんなんだろね。       やっぱりゲームみたいに少々橙色なのかな」 悠介   「どうだろなぁ。さすがに実物なんて見たことがないからなんとも言えないな」 そこんところはかなり楽しみではあった。 ゼプシオンとの戦いも目的であったとしても、 オリハルコンはファンタジー武具の最高峰代表だし。気になるのは仕方ない。 ───トン。 空を飛び、大陸の上に降り立った俺と彰利とみさおはひとまず一息─── 声  《大庭園内に竜族反応!!総員、ただちに殲滅に移れ!!》 ───一息入れる間もなかった。 タイニー2「速いですね……」 タイニー1「竜族反応って……ディル殿?」 悠介   「いや。珠の中に入っている限り、       竜族の反応はこの世界から遮断されるらしい。       だからこの珠に入ってるディルの反応が外に漏れることは無い筈だ」 タイニー1「つーことは……」 悠介   「そういうこったろうな。       彰利、オリハルコン探しはお前に任せるわ。俺はあいつら引きつけておく」 タイニー1「引き付けるったって相手は巨人だろ?」 悠介   「危ないって思ったらブラックホールででも逃げるさ。       その時はこの大陸の底で会おう。そんじゃ───散ッ!!」 言いたいことだけ告げて疾駆して彰利とみさおから離れた。 恐らく俺と一緒に居れば確実に狙われることになるだろう。 彰利の言う通りだ……相手は巨人であり、俺達とは基本が違う。 本当のバケモノと化した俺はともかく、彰利やみさおにしてみればいい迷惑だろう。 だったら言ったとおり、俺が巨人どもを引き付けなければ─── タイニー1「や、ちょっとお待ち!まだ話が───うおっ!?」 タイニー2「わひゃあっ!?」 轟音とともに巨人が彰利とみさおの周りを駆け抜ける。 あれだけの巨体だ、マンドラゴラ状態の彰利たちはそう簡単には見つからないだろう。 あとは俺が───!! 【ケース47:タイニーマンドラゴラ一号/水曜どうしましょう(再)】 パパァァアアア〜〜……キラキラ…… タイニー1「いや、暢気に光合成してる場合じゃねぇって」 タイニー2「意味あったんですかこれ……」 状況に動揺して思わず光合成しちまったい。 一緒に光合成してたみさおの視線がすこぶる痛い。 タイニー1「それよりも……」 悠介が大勢の巨人に追われていっちまった。 一歩の幅が全然違うからすぐに捕まると思ったけど、 悠介の速度は真実人間から離れたものだった。 ありゃあ巨人でも捕まえられねぇわ。 つまり俺は、ゆっくりと安心してオリハルコンを探せるってわけだ。 タイニー1「しっかしすげぇ反応の速さだなぁ……よっぽど竜族が嫌いなのか」 大陸に降り立った途端だったもんなぁ……速すぎるよ。 ……よし、悠介が言ったとおり、引きつけてくれてる内にオリハルコンを探そう。 何処にあるか解らないんだったら虱潰しだ。 見つかったら送話で連絡し合えばいいわけだし。 タイニー1「よっしゃ、まずは巨人どもが走ってきた場所からだ」 タイニー2「あっちですか。庭園かなんかですかね」 ウムスと頷き走り出す。 歩こうと思って走り出しちまったのは、 やっぱり巨人に追われていった悠介が心配だったからという原因もあったんだろう。 ───……。 トトトトトトト…… タイニー2「うわぁあああ〜〜〜〜……」 タイニー1「うっひゃぁああああ〜〜……やっべぇえええなコレ」 ファンタジー万歳だ……すっげぇ幻想的っつーか…… 信じらん……この俺が表現出来ねぇ事態があるとは。 幻想的としか言いようが無いのだ。 この大陸、下の景色とは比べものにならんほど眩しすぎる。 下の景色はボロボロっつーか、荒れてます。 でもここは空気もいい方だし、思わず心ドキドキ。 『天空の城ラピュタ』のラピュタを崩壊前で喩えたら多分こんな感じ……以上だが。 綺麗だよ美しいよ眩しいよ……俺、トキメいてるよ……。 ああ……ああもう……! タイニー1「俺!今とっても輝いてる!!」 ギシャアアア!! タイニー2「うひゃっ!?い、いきなり光らないでください!」 タイニー1「イッツァ無礼講!!」 フェイスフラッシュしてまで喜びを最大表現。 おおステキ!おおベラボー!! 誰かに見られた〜なんてことはないから安心だ。 いや〜……すっげぇ綺麗だこの大陸……っつーか大庭園。 タイニー1「いかん、思考がバラバラじゃないですか」 よし落ち着こうぜ俺。 こんな絶景見つけて思考するなってのは無理だけど、そりゃまあしょうがないことだ。 今は一刻も早くオリハルコン見つけて悠介と合流することを考えよう。 タイニー1「けどね……なんていうかね……」 デカすぎるのよこの大陸……。 さすが巨人の住む場所だと言いたくなるくらいにデケェ。 時たま見かける建物や扉のデケェことデケェこと。 タイニー1「さて……幻の金属……金属?まあいいや、金属だ。       とにかく幻の金属オリハルコンともなれば、       そこらに落ちてるなんてことはないだろう。       この大陸に鉱山があるとするなら、ちとそれを探してみよう」 タイニー2「鉱山、ですか」 最初の目的を決めた俺は、タイニーのままでトトトと走った。 ヘタに人に戻って巨人に見つかったら目も当てられない。 タイニー1「今回は本気でオリハルコンを探して、       悠介と合流することを第一条件にしよう」 タイニー2「そうですね。目的がしっかりしてる彰衛門さんなんて珍しいです」 タイニー1「とても失礼じゃねキミ。ていうか『おとうさん』とは呼んでくれないの?」 タイニー2「呼びたい時に呼びますから」 タイニー1「グムムー……まあいい、今はそれよりオリハルコンだ。       必ずやそれを手に入れ、さらに必ず生きて帰ると誓おう」 そう心に決めた俺は全力疾走した。 それを追いかけるみさおもやはり全力疾走。 体重そのまんまのくせに足音が小さいのは、タイニーさんの利点といえば利点だった。 Next Menu back