───FantasticFantasia-Set??/記されていない過去の夢───
【ケース??:───/───】 ───……少女には幼馴染の少年が居た。 いつも一緒に居て、いつも一緒に遊んでいた。 ふたりにはそれぞれの夢があって、 少女は魔法使いになりたいと願い、少年は勇者になりたいと願っていた。 魔法使いの真似事をしたり、勇者の真似事をしたりと…… ふたりは穏やかな子供の頃を過ごしていた。 いつだっただろうか。 真似事の魔法がいつの間にか本当の魔術になっていたのは。 いつだっただろうか。 真似事の攻撃がいつの間にか本当の攻撃になっていたのは。 ふたりはそれぞれ励まし合って高みへと昇り、 少しは胸を張れる魔導術師と勇者になっていた。 少女の名はセシル。 少年の名はゼット。 ふたりは本当に仲のいいふたりだった。 たとえその世界が争いに包まれた場所であったとしても、 このふたりだけは笑顔を出せる唯一だったのだ。 それこそまるで恋人同士のように一緒に居て、辛い時には泣き、嬉しい時には笑った。 ───……あの出来事が起こるまでは。 ある日のことだ。 小さな村の出身だったふたりに、戦場への出撃命令が出された。 思いも寄らない事実にふたりは驚いたけれど、命令には逆らうことなんて出来なかった。 何故ならふたりはまだ『大人』と呼ぶには相応しくもなかったのだ。 ふたりは城へと連れて行かれ、戦いの仕方などを基礎から教えられ─── 少女は魔術師として、少年は剣士として戦場に駆り出された。 城の者としては、何故一介の村の娘ごときが『魔導術』を行使出来るのかは疑問だった。 その頃の実力者に言わせれば、彼女は突然変異のようなものなのだそうだ。 ───魔術行使で散った魔術は空気に弾けて酸素と一体化する。 だがそれは誰かの糧になるわけでもなく、風に流されて何かに吸収されるのだという。 恐らく、という意味では───偶然それが少女の中に吸収されたのではないか。 実力者はそう言った。 実際、習ったわけでもないのにセシルの魔導術は大したものだった。 あっという間に高い地位の魔導術師として数えられ、 少年もまたどんどんと強くなっていった。 ───しかし。それはやはり起こってしまった。 ある日のことだ。 その頃の魔導術師のひとりが提案を出した。 誰に公言するわけでもなく、少女にだけだ。 『召喚術を行使してみないか』と。 少女はまだ召喚の意味も知らなかったが、 それが何かの役に立つならとふたつ返事で頷いた。 魔導術師にしてみれば、セシルを実験台に召喚を見てみたかっただけだが─── 奇しくもそれは成功してしまった。 虚空の歪みから出現した魔物は魔導術師を喰らい、さらにセシルにも襲い掛かった。 だがそれを助ける影があった。 ───ゼットだ。 少女の幼馴染が少女を庇ったのだ。 だがゼットは腕を噛まれた状態のまま、消えてゆく歪みに引きずり込まれ─── 二度とその世界には戻ってこなかった。 少女は呆然として……それから考えることを放棄した。 それからの彼女はあまりに虚ろだった。 言われるがままに動き、生贄になれと言われればなり─── 事実、少年が消え、生贄になれと言われるまでに生きた10年間、 彼女はほとんど誰ともまともに話したりしなかった。 しかし笑う時には笑い、辛い時には確かに泣いた。 それは幼馴染を思えばこそだったのか。 今となっては、その思いを知る術などは何処にもない。 狭界に落ちた少年が助かる可能性などゼロにも満たないし、 少女は既に生贄となって消えてしまったのだから。 確かにこの世界に小さな平和は訪れたが、 人々同士が争いを続ける限りは永遠に本当の平和など訪れないのだろう。 ……争いは続いてゆく。 全てを犠牲にしてまで力を欲し、世界を欲する思考のために。 共存など微塵にも考えぬ輩どもの争いがいつかは潰えるのだとしたら、 それはきっと───どちらかが滅んだ時なのだろう。 もし少女がその場に居て、そんな世界を見たとしたら…… 少女はいったい、どんな思いを馳せるのだろう─── それこそ、今となっては解らないままの過去のこと。 セシルという名は誰にも知られることもなく、 ただ『生贄となった少女』として知られるのみだ。 そんな未来が待っていたとは知らず───いや。 たとえそんな未来が待っていると知っていたとしても、彼女は最後には笑ったのだろう。 誰よりも笑顔を好み、誰よりも平和を願った彼女ならば─── Next Menu back