───FantasticFantasia-Set26/星の無い空の下で───
【ケース58:弦月彰利(超再)/ウガレビサレツゾラベルジホバ】 ビュゴォオオオオオオオッ!!!!! 彰利 「うおぉおおおおおおおおっ!!!!!」 リヴァ「くあああああああああっ!!!!」 現在、ハローナル渓谷。 谷の隙間から吹き上げてくる風は容赦なく俺とリヴァちゃんを打ち付け、 その寒さに体を震わせた。 恐ろしいのはその温度差だ。 さっきの砂漠は凄まじく熱かったというのに、 この渓谷に吹き荒れる風はとんでもなく冷たいものだった───って! 寒いだけじゃねぇ!強風の所為で思うように進めねぇ!! 彰利 「ムグオオ!!砂埃が目の中に!!───ギャア!石つぶてが口ン中に!」 リヴァ「し、静かにしろ検察官!騒いだところでどうにかなるわけでもないだろっ!!」 彰利 「ンなこと言われたってさぁ!!あ、あのさリヴァちゃん……!?     敢えて触れないようにしてたけど、こんなところに人居ンの!?」 リヴァ「言うな……!!他に情報が無いんだからここを探す他無いだろう……!!」 彰利 「そらそうだけど……!もう随分進んだぞ……!?」 リヴァ「言うなと……うんっ!?」 彰利 「ど、どしたー!?」 リヴァ「人影だ!人影がある!あいつだきっと!」 彰利 「よ、よっしゃーーーっ!!会話ろリヴァちゃん!会話イベントを発生させろ!」 リヴァ「わ、解ってる!ぶぐっ!?ぶはっ!ぺっ!ぺっ!!」 ……どうやらリヴァちゃんの口の中にも葉っぱかなんかが入ったようだった。 しかし気を取り直して……というか半ばヤケクソじみた顔で先の方にいた男に話し掛けた。 リヴァ「おいお前っ!」 行商人「うぐぐ……!んあっ!?誰だぁっ!?」 リヴァ「わたしが誰かなんてことはどうでもいい!!     ここに来る前に魔導術師から黒紫の珠を買っただろう!」 行商人「あぁ〜〜ん!?あぁあれかぁっ!!あれなら」 ビシィッ!! 行商人「ぐあぁあああああっ!!!石つぶてが目にぃいいいっ!!!!」 リヴァ「そんなもの耐えてみせろ!!珠をどうした!?」 行商人「ぐおおお……!!     あ、あの珠ならこの渓谷の入り口で会ったブレイバーに売ったよ……!!」 リヴァ「ベンハーーッ!!」 ドス!! 行商人「ぶべぃっ!!」 リヴァちゃんナックルが行商人を襲う。 どうやら怒りが浸透したらしい。 リヴァ「で!?そのブレイバーは何処に行った!言え!!」 行商人「ヒ、ヒイイ!!そ、そのブレイバーならロジアーテ鍾乳洞に行きましたぁっ!!」 リヴァ「ロ、ロジアーテ……」 彰利 「ウィ?リヴァちゃん?」 リヴァ「っ〜……!!まったく!     治癒が復活したからって無茶をするブレイバーが増えたってことか!     行くぞ検察官!ロジアーテなら行ったことがあるから転移で十分だ!」 彰利 「お、おぉお、おおっ……」 行商人「あ、ところで何か入用で?」 彰利 「……おたく、プロだね」 行商人「この道で10年食ってるんで」 彰利 「それはそれは……ならばそんなアナタにこの言葉を贈らせてくれ。     『ナイス殴られっぷりだったぜ』」 それだけ言うと、突如視界がブレた。 ようするにリヴァちゃんが強引に転移を行使したわけだ。 ───……。 ……。 コーーーン……コーーーン…… 彰利 「……うあ……」 で、気づいてみれば鍾乳洞。 断続的に響く音を聞くと、間違い無く思い返されるのはあの場所。 彰利 「リヴァイア……予想なんだけど、ここってもしかして……」 リヴァ「その予想は当たってる。ここ、ロジアーテ鍾乳洞にはいろいろな曰くがあってな。     たとえば……『人の精神を物体として具現させる』とかな」 彰利 「うあー、やっぱ精神関連かぁ……」 そうだよ……この『コーーーン』って音ってば、精神の中に入ると絶対に聞く音だもんよ。 ああ、思い返されるなぁ……精神で起こったいろいろな出来事…… リヴァ「ばかっ!考えるな!」 彰利 「むっ!?───あ、ごめん……手遅れ……」 リヴァ「な……」 目の前に何かがボワンと現れた。 ソレは煙と共に現れた。 もちろん煙っつーのはいつしか晴れるべきもので─── 彰利 「ブフゥッ!!」 リヴァ「ぷぐぐっ……!?」 俺とリヴァちゃんは同時に噴き出した。 嗚呼、誰が忘れることが出来よう……このムキムキマッスル戸愚呂(弟)夜華さん……ッ!! 彰利 「ヴッ……!ヴフッ……!!     ぶはははははは!!!バァーーーハハハハハハ!!!!」 夜華 『何を笑う、彰衛門』 彰利 「ヴァファァアアーーーーーーーッ!!!!     ッ……!!ッ〜〜〜〜…………!!!」 玄田哲章ボイスで放たれたその声が俺を笑撃の渦に飲み込んでゆく!! だ、だめだハラ痛ェ!! 俺が思考を巡らす度に戸愚呂夜華さんがムキンムキンってポージング取ってブフゥッ!!! 彰利 「ダヒャラウヒャハヒャゲハハハハハハ!!!!だはっ!!ぶはははははは!!!     リヴァッ……!!!リヴァちゃん助けっ……!!マジハラ痛ッ……!!     こいつなんとか……なんとかしてッ……!!」 リヴァ「はあ……気をしっかり持てば自然に消える。アレは検察官がなんとかしろ」 彰利 「無理無理絶対無バハハハハハハハハハ!!!     ゲホゴハガハゲホブハハハハハハ!!マァベェラスベラボォオッホホホホ!!!     ブラボォッ!!おおブラ───ボホッ!!ゲホガハッ!!」 視界が滲んで何も見えねぇ!! しかも腹痛くてもう……!! やべぇよもう!面白いよ夜華さん!!やっぱアータ最高だ!! いやそうじゃねぇ!気をしっかり持つんだ!これも悠介のため……!! 耐えろ!耐えるんだ俺……ッ!!耐え 夜華 『ぬぉおおおおおおっ!!!100%中の100%ォッ!!』 メキキメキモキ……!! 彰利 「イヤァアーーーーーーーッ!!!!!     考えないようにしようとすればするほど嫌な方向にぃいいいーーーっ!!!!」 叫んでる内にも夜華さんがどんどんとマッスルになってゆく! しかも以前の通り戸愚呂が巫女衣装を着てるカッコだからもう……!もう……!! ああ!なんか涙目の片隅でリヴァちゃんが謎の男と会話してる! くそっ!このままでは会話に置いていかれる!なんとかせねば!なんとか……!! 彰利 「そ、そうだ!100%中の100%といえば灰人の末路!     イメージせよ悠介の如く!イメージなんて得意じゃあねぇがなんとかなる筈!!     つーか悠介って何者!?普通イメージなんぞ展開しようとしても、     別のイメージが流れ込んできてごちゃまぜになるのがオチだろ!?」 例えばマッスルミレニアムをイメージしてみても、 やっぱりロープワークタワーブリッジをイメージしちまうような感じに! メゴリメゴメゴ……!! 彰利 「ほらやっぱりぃーーーーーーーっ!!!!!」 結論的にイメージは全然纏まりゃしなかった!! マイガー!サノヴァヴィッチャァアアーーーッ!!! 夜華さん(?)がどんどんと奇妙になってゆく!奇妙!?奇妙……キテレツ!? モゴモゴ…… 彰利 「ゲェエエエエーーーーッ!!!!や、夜華さんがキテレツに!!」 モキモキ…… 彰利 「ゲ、ゲェエーーーーッ!!!キテレツがコロ助に!?」 メコメコ…… 彰利 「キャーーーッ!!ゲェーーーッとか言ってたらコロ助がキン肉マンに!!」 ゴキモキ…… 彰利 「ヒイイ!キャーーッとか言ってた所為で     キン肉マンが怪虫に襲われそうになった漂流教室の仲田くんに!!     タスケテー!タスケテーーッ!!収集つかなくなってきたYOーーーッ!!」 今こそ……自分の頭の中を呪いたい気分だった。 嗚呼、俺のアホ……漂流教室ってイメージした途端に、 仲田くんが高松くんと大友くんが融合したような姿にッ……!! でもどうせならこのまま、どこまで変身するかを見届けるのも一興か……。 リヴァ「いつまで遊んでるんだ検察官、次に行くぞ」 彰利 「へ?つ、次って?」 リヴァ「ここもハズレだ。次はロックスフォールの滝だ」 彰利 「……なんか俺、こういう盥回しイベントを最初に作ったゲーム会社、     ブッ潰したくなってきた」 もしくはサマルトリアの王子を殴りたい気分だチクショウ。 ───……。 ……。 彰利 「おお〜〜〜、マッスルフォールだマッスルフォール」 リヴァ「ロックスフォールだ」 彰利 「……解っとるわい」 現在ロクスフォールなる滝の前。 随分と巨大な滝だが、落下する水の下にはひとりのハゲが居る。 どうやら修行僧かなんからしい。 彰利 「あいつ?」 リヴァ「恐らくな」 回数が重なるごとにリヴァちゃんの口調が荒くなっていってる。 どうやら相当にムカついているらしい。 もっと温厚にいかなきゃやってられんだろうに。 リヴァ「面倒は好きじゃない。     前は好きでも嫌いでもなかったが今嫌いになった。今すぐ行くぞ」 彰利 「アイヨー」 だばだばと落ちてゆく水を眺めつつ、煙のように吹き上がる水飛沫の下へ向かう。 と……やはりハゲがブツブツ言いながら滝に打たれていた。 俺はそんなハゲにズンズンと近づきながら言う。 彰利 「オウコラハゲデブアブラムシ、ウチの弟が随分世話に」 ハゲ 「カァアアーーーーッ!!!!」 ボゴシャア!! 彰利 「つぶつぶーーーーっ!!!!」 話し掛けた途端に居合い蹴りされちまった。 しかも思いっきり頬にキマった所為で頬が三角形い凹む。 彰利 「うきっ!うきっ!!うきぃいいいっ!!」 さらに言えば奇妙な具合に顎の縫合がゴキュリとハズレ、顎と耳の下あたりに大激痛襲来! ハゲ 「貴様……この拙に何用か」 彰利 「〜〜〜ッ……!!」 シャクンッ!!───外れた顎を根性で直し、ハゲをギヌロと睨む。 彰利 「何用か、じゃねぇっつの!!用件も聞かねぇでいきなり何しやがる!!」 ハゲ 「喝ッ!!」 彰利 「ぬう!!」 ハゲの連撃! コマンドどうする!? 1:バッスーピンコオ拳 2:見事なマ・ワ・シ・受け 3:音速拳 4:飛竜の拳ガード 5:ダニエルさん 結論:5 彰利 「ライトサークル」 ガシィッ! ハゲ 「ウヌッ!?」 彰利 「レフトサークル」 バシィッ!! ハゲ 「うぬうっ!?」 彰利 「ハイ、アップ、ダウンねダニエルさん」 ビシィバシィッ!! ハゲの連撃を悉くガード!オウマーベェラス!! ハゲ 「フッフ……貴様、中々やるな……!」 彰利 「フフフ、お手前こそ……!で、そげな貴殿に訊きたいのだが……     ブレイバーから黒紫の珠を頂戴しなかったか?」 ハゲ 「ヌ……あの珠か。あの珠ならば拙の母に送ったが」 リヴァ「ベンハーーッ!!!」 バシィッ!! リヴァ「な、なにっ!?」 ハゲ 「不意打ちとは卑怯なり……!貴様、命が惜しくないようだな……!     我こそは空界にその人ありと謳われた伝説の武人、ドゥアンクァンなるぞ!!」 彰利 「武人つーたらダンカンじゃないの?夢幻闘舞の」 ハゲ 「ドゥアンクァンだ。そして拙の奥義は無限頭部だ。     頭の数が無限に増えたように見える奥義だ」 意味ねぇ!!めっさ意味ねぇ!!ごっさ意味ねぇ!! 彰利 「で?その母者の居る場所は!?その珠は俺の親友の形見なのだ!!」 ハゲ 「なにっ!?それを早く言わんか馬鹿者!!」 彰利 「バカとはなんだコノヤロウ!!」 リヴァ「そんなところで怒ってる場合か!」 彰利 「だってYO!!」 リヴァ「うるさいっ!静かに見てろっ!!」 彰利 「グ、グウムッ」 怒られてしまった……。 ハゲ 「説の母はロトニウスの外れにある復興都市ユウスケに居る」 復興都市ユウスケって…… 彰利 「……なんの因果かね」 リヴァ「知るか……」 まったくだ。 彰利 「ん〜だば、返してもらってもいいのかね?」 ハゲ 「ああ構わぬ。貴様のものとは知らずに失礼した」 リヴァ「よし、急ぐぞ」 彰利 「押忍」 盥回しってすっげぇ面倒だよね、マジで。 ───……。 ……。 ───復興都市ユウスケ。 母者 「珠……?いえ、そんなものは届けられていませんが」 彰利 「なんと!?」 早速なんだが、あっさり頓挫というかなんというか。 ともかく珠の在り処が全く解らなくなってしまった。 グウム、どうしたものかー…… 老人 「おお、その珠じゃったら知っとるぞ。奇妙な色をしとったのでのぅ。     この街に不吉を齎すに違いないと思い、捨ててきたわい」 彰利 「ジジィイイイイイーーーッ!!!!てめぇええええーーーーーっ!!!!」 老人 「ヒャッ……ヒャアアーーーッ!!?な、なにをなさる!     ヒィイ退却じゃーーーっ!!!」 ビジュンッ!! 彰利 「あっ……だぁくそっ!!逃げやがった!!何処に捨てたんだよ黒紫の珠ァッ!!」 つーか魔導魔術師だったのかアイツ!! 男性 「申し訳ありません、ウチのジジイが何かをやらかしたみたいで……」 彰利 「むっ!?誰かねキミは!」 男性 「名乗るほどの者じゃありません。     それより……黒紫の珠というのはこれですよね?」 彰利 「ややっ!?」 リヴァ「それはっ……!!」 男性が見せた手の上にあるのは珠!しかも黒紫の珠! おおベラボー!!ついに!ついに見つけたぜ〜〜〜っ!!! 彰利 「それをおくれでないかい!?」 男性 「あの……差し出がましいようですが、     少しでいいですからお金を寄付してくれないでしょうか。     見ての通り、この街は寂れているもので……」 リヴァ「交換条件か。いいだろう、いくら欲しい」 男性 「えっ……いいんですかっ!?」 リヴァ「いらないならそれでいい。だがわたしたちは急いでいるんだ。     困ったことにこの女が黒竜王に狙われていてな。     急がないと、それこそこの街が灰燼と化す可能性もある」 そう言って、眠ったままのみさおさんを見せるリヴァちゃん。 ちなみにみさおさんはリヴァちゃんが背中に背負ってる。 男性 「ひえっ……!?で、ででででは100G$(ゴルデット)
で……!!」 リヴァ「……何気に欲張りだな。まあいい、蒼竜王討伐の礼金で十分足りるくらいだ」 彰利 「100ゴルデットって地界の金でいくらくらい?」 リヴァ「100万」 彰利 「むはっ!?」 高すぎだろオイ!ボッタクリーナスって呼んでいいか!? シンジラレナイ!ナンテコト!! ……まあそれよりシンジラレナイのは、 100万なんて金額を平気な顔で現ナマで払うリヴァちゃんなんだが。 リヴァ「じゃあ、それは貰っていくぞ」 男性 「は、はい!申し訳ありません!」 リヴァちゃんは男性が差し出した竜の珠を手に取って俺を見た。 その目が言う。『行くぞ』と。 俺はその目に『御意』という言葉を込めたウィンクを返して、同時に転移を行使した。 さあ、いよいよ神龍(シェンロン)の復活だ! ……じゃなくて、悠介の復活だ! つーても死んでないけど。 【ケース59:弦月彰利(すこぶる再)/トニートニーモンゴリアンチョッパー】 彰利 「カシガミさまに祈りを捧げろ〜〜〜っ!!」 ドコトコトコトンッ!ドコトコトコトンッ!! ドコトコトコトンッ!ドコトコトコトンッ!! リヴァ「別に祈りを捧げなくても呼び出せるぞ」 彰利 「場のノリは人類の至宝!!」 呆れを飛ばしてくるリヴァちゃんにズビシィとポーズを取って返事する。 オオここにステキな瞬間降臨!故に最強!故に俺は美しい!! 彰利 「ところで……どうやって悠介を珠から出すの?」 リヴァ「悠介がいつもやっていたようにしたらいい。つまり……」 ココンッ───リヴァちゃんが珠を軽く小突く。 するとそこからシュバァンと翼をはためかせて舞い降りるディル殿と─── 彰利 「───うおう」 リヴァ「……まあ、当然だろうな」 ───……一体の翼竜が落ちた。 信じられないことだが、どうやらこの翼竜が悠介らしい。 彰利 「ンマー……この珠って確か、竜以外は入れないから……」 リヴァ「そういうことだ。あの状況で悠介を助けるためにはこうする他なかったんだろう」 つまりこうだ。 極光を放たれ、消滅するしかなかった悠介はディル殿の手によって確かに珠の中に入った。 けれども竜の珠の中に入れるのは竜族のみ。 となれば───悠介が生き残る手段はひとつだけだ。 悠介の魂に染み付き、既に竜族側に傾いた魂と竜として構成され始めていた体のみを 強引に竜の珠の中に入れた、と…… 彰利 「……ほんと人間ヤメちまったぁなぁ……」 リヴァ「悠介の場合は命があればまだいい方だろう。     あの黒竜王とやり合って生き残れたのはこいつくらいなものだ」 彰利 「そらそうだ、あの強さはちと尋常じゃない」 なにせ悠介が一方的にやられるしかなかったくらいだ。 誰と比較するまでもない、 俺が強いって感じた悠介が一方的にやられたならあいつは間違い無く強い。 彰利 「ま、それなら考えてもどうしようもねぇわな。     どうするよリヴァイア、このドラゴン悠介」 リヴァ「気絶してるようだな。     一応目を覚ましてもらわないと話はもなにもあったんもんじゃない」 彰利 「ディル殿、悠介ってば生きてるよね?」 ディル『ああ、死んではいない。ただそのままほうっておけば死ぬぞ』 彰利 「そかそか、ん〜だば回復は俺に任せてもらおうか。     リヴァちゃんはキツケをお願い」 リヴァ「解った。それと……ディルゼイル、だったな。     お前は珠の中に戻っておいた方がいい。今のお前は竜の気配が強すぎる。     黒竜王にしてみれば見つけてくださいって言われてるようなものだ」 ディル『解っている。王を頼むぞ』 彰利 「オウヨ?オウヨオウヨ〜!!」 ディル殿の頼みに胸を張り、ついでに親指も立てて返答した。 任されるのは上等ってことで。 俺の全身全霊にかけて、悠介を死なせたりなどはしない。 どんな姿になろうと親友は親友だ。 ディル殿が珠の中に戻るのを横目に、俺はスッキリした笑みとともに構えた。 彰利 「よし、全力でいくぜよ!月生力発動───ゴフホッ!!?」 リヴァ「───!?け、検察官っ!?」 彰利 「っ……!く、口の中を切っただけだ!!」 オウマイガァ……吐血だよオイ。 俺様びっくり、超びっくり……ってしまったぁ……!! そういやゾーンイーターの中でフルブレイクなんか使っちまったんだった……!! しかも死神の力も月操力も大半上乗せしたもんだから……あら大変。 彰利 「フフフ、どうやら俺の後先考えねぇ行動が裏目に出たらしいぜ……?     だがよ、ここでやめたら男じゃあねぇぜ……」 界王神の付き人のキビトよ、貴様の力を分けてくれ……! 彰利 「カイカイ!!!!」(違う) 倒れているドラゴン悠介の背中に手の平を当てて月生力を流し込む! だがその度に世界が回り、視界が滅茶苦茶に歪んでゆく。 彰利 「うぶっ……!?」 まるで性質の悪いジェットコースターに乗ったかのような感覚。 視界が定まらず、歪む視界とともに体の平衡感覚までもが歪んでゆく。 あ、ダメだこの感覚。 月の上でフルブレイクカタストロファー使おうとした時の感覚と同じだ……。 月操力がもう枯渇してる……やべ……立ってられ───……トサッ。 彰利 「…………?」 倒れかけた体が何かに支えられた。 歪んだ視界でソレを見ようとしても、何がなんだか……相変わらず何も解らない。 ただ声が聞こえた。 『心配かけてすみません。あとはわたしがやりますから』と。 そんな声を聞いたからだろうか。 俺の意識は俺の意思なんてまったく無視して安心しちまって、 俺はあっさりと意識を失った。 ───……。 ……。 彰利 「……ん……」 ゆっくりと目を開けた。 随分と眠ってしまっていたようで、世界は暗闇に染まっていた。 どうやら俺はそのまま外で倒れていたらしく、そのままの視線で見た空に溜め息を上げた。 そうしてからふと気づき、回りを見渡してみる───と、 見渡すまでもなく俺の胸の上で眠っているみさおと、 視界の先で疲れ果てて寝ているリヴァイアと……空を見上げている人影を見た。 人影ってのは言うまでもない───悠介だ。 悠介 「ん……よっ、起きたのか」 親友は起きた俺に気づくと、いつも通りの苦笑めいた顔で軽く手を上げた。 俺もそれに軽く『よぅ』と手を上げて返し、溜め息とともに同じ空を見上げた。 悠介 「……空界には星は無いんだな」 彰利 「だな。まあ……空間に存在する世界には     宇宙空間なんてものは存在しないのかもしれないな」 悠介 「そうなると、空の先って気になるよな」 彰利 「……言われてみれば、そうかもしれない」 何気ない会話と、何気ない微笑。 あんなことが起きた後だっていうのに、俺達はまるで変わらなかった。 彰利 「……ま、お約束だ。訊くまでもないと思うけど、体はどうしたんだ?」 悠介 「どうした、って……酷く曖昧な訊き方だな。でもまあ訊きたいことは解るよ。     一応自分の体くらい分析はしてたからな、     今はこうして自分の体を創り変えることで元には戻してある。……外見はな」 彰利 「……外見だけ?」 悠介 「ああ。だってしょうがない。俺の体はもう、魂のレベルからして竜族側なんだ。     今まで少しは否定してたんだけどな、竜の珠に入った時点でもうダメだ。     俺はもう魂の細部から体の細部に至るまで竜族だ。     それを創り変えて、人間の格好をしてるにすぎない」 彰利 「うおう……じゃあ神の力も死神の力も神魔融合の力も使えないと?」 悠介 「いや、そんなことはない。言ったろ、分析したし創り変えたって。     ようするにまあ……魂は竜族に染まったけど、体は相変わらずってわけだ。     怒れば死神側になるし、穏やかになれば神側になる。     両方合わされば神魔融合状態になるし、その状態を竜の力で固定できたりもする。     ……今のこの状態は特に冷静な状態って意味合い……つまり人間側ってことだ」 彰利 「よっ、人間超越者っ!」 悠介 「ほっとけたわけ」 濃い溜め息とともに頭をくしゃりと掻く親友は、再び空を見上げた。 彰利 「……なぁ、これからどうする?正直、俺は黒竜王とお前が闘うのは反対だ。     今回は奇跡みたいな偶然で生き残れたけど、次がそうとは限らないだろ。     それに───言っちゃあなんだけど、あいつにゃあ勝てる気がしない」 悠介 「……ん。そうだな」 彰利 「……なんだそら、解ってたのか」 悠介 「当たり前だろ、戦ってみれば嫌でも解っちまう」 彰利 「だったらやめちまえって。     こう言うのは自分の生き方否定するみたいで嫌だけどさ。     お前が傷つく必要ねぇじゃん。俺達がこの世界とどれだけ関係がある?」 悠介 「……俺は国王であり竜王だ。それだけの関係がある」 彰利 「あぁ……言い方が悪かった。そこまでする義理や人情は必要なのか、ってことだ」 親友の返答に、今度は俺が頭を掻きながら質問した。 ……真面目な話だ、そんなことは悠介だって解ってる筈だ。 だってのに─── 悠介 「……わり、彰利。俺さ、あいつを楽にさせたいって思っちまったんだ。     守るもののために狂っちまったあいつに、     もう休んでいいんだって言ってやりたい」 ───親友は、俺の目を真っ直ぐに見て、 苦笑なんかじゃない自然な笑みを浮かべて……そう言いやがったのだ。 その笑顔を見たらもう、いろいろなことが馬鹿馬鹿しくなっちまって。 俺は、親友が立ち向かおうとしたら猛反対しようって構えてたっていうのに─── 彰利 「ぷっ……く、くははっ……あはははははっ……」 どういうわけか、笑っちまったんだ。 そうして笑っちまったらもうダメだった。 頑なに拒もうとしてた心があっさり折れちまって、いつしか本気になって笑ってた。 悠介 「……なんだよ。笑うとこか?ここ」 彰利 「あはははははははっ……!!」 悠介の少し困った顔も気にすることもなく笑った。 だってしょうがない。 そんな考えが、かつての自分に似てたのだから。 だからこそ、本当にこいつはつくづく親友だ、なんて思ってしまった。 彰利 「くひっ……くははっ……はは、しょ、勝算は、あはっ、あるのかっ……?」 悠介 「まず落ち着こうな。……勝算は特に無いな。     こうなったらもう更に鍛錬積むしかないだろ。     じいさんに剣作ってもらって、     それとともに俺も竜人の力に慣れていけば……少しは近づけるんじゃないか?」 彰利 「俺からは離れていくけどな。───くふっ!ぶふふはっ……!!」 悠介 「だから……何がおかしくて笑ってるんだよお前は……」 彰利 「ぶははははははははは!!ぶははははははは!!ぶっは!!ぶはははははは!!」 訊かれると余計に湧き上がってくるんだから性質が悪い。 でも───うん、嫌な気分じゃなかったからそれでいいって思えた。 正直、フォードなんたらってヤツを探すのを忘れていたけど─── もういい加減、じいさんのところに着いてる頃だろう。 だったら今はこうして、心地のいい笑いに包まれていよう。 例えそれが束の間のものだったとしても─── Next Menu back