───FantasticFantasia-Set??/記されていない記憶の夢───
【ケース??:───/───】 とても幸せな夢の中に居た。 人々は争ってばっかりだったけれど、 近くに居る少女は自分に希望を与えてくれたのを今でも覚えてる。 幼い頃に出会って、幼い時代を過ごし、同じ時の中を生きてきた僕たち。 きっと幸せなんだって思ってた。 世界は思うほどにやさしくはなかったけど、 その中に居る僕らは……少なくとも僕と少女は幸せなんだって思えた。 とても弱かったけれど、他人のために笑ったり泣いたりすることの出来る少女。 いつからだっただろう。 僕はそんな少女を守ってやりたいって思った。 だから剣士になって少女を守ってやるんだって意気込んでいた。 父さんに『剣士になりたい』って言ったら、すぐに稽古をつけてくれたのを覚えてる。 それは『子供が受ける』ような稽古じゃなかったし、父さんが倒れた僕に 『そんなザマで国のために死ねるか』と罵声を浴びせた頃のことも覚えてる。 世界はとても荒んでいたけれど、僕はそれでも強くなりたかった。 せめて守りたいものを守れるくらいに強くなりたかったから。 ───いつからか『僕』が『俺』に変わった。 俺は剣を振るう度に強くなっていく自分を誇り、同時にもっと上を目指したいと思った。 もちろんその全てが少女のためだった。 今も少女は俺の傍で穏やかに笑ってくれていて、 俺はいつだってその笑顔に励まされていた。 自分の魔導修行もあるだろうに、 いっつも修行を抜け出してきては、俺にも修行をサボらせて一緒に会話をさせた。 そのことで父さんに怒られるのも何度になるのか……正直もう覚えてない。 けれど……そんな時代を、とてもかけがえのないものだと感じた時代が確かにあった。 ゼット「なぁセシル。セシルはどうして俺のところに遊びに来るんだ?     セシルにも魔導の勉強があるだろ?」 セシル「うん?いいんだよ、適当で。     わたしが欲しいのは争いの力じゃなくて、……えと、人を救うための力だから」 セシルは最近、俺の顔を見てよく顔を紅くする。 目が合えば視線を逸らすし、 かといって同じように視線を逸らすとすぐ頬を膨らませて怒りもした。 そう……いつもそうだった。 普段はおしとやかなのに、俺と一緒の時だけはこうやって砕けた態度を取っていた。 ゼット「それじゃあ、今日は攻撃魔術の練習だったわけだ」 セシル「……ん。だからね、抜け出してきちゃった。     あんなことしてるよりゼットくんと一緒に居た方が───あ、あぅ」 ゼット「……?俺と一緒に居た方が……なに?」 セシル「や、あゎぅ……な、ななななんでもないよっ、うんっ」 ゼット「………」 時々に思った。 セシルはこうして俺に会いに来てはくれるけど、俺との会話はいつもぎこちない。 それはつまり…… ゼット「ん……なぁセシル」 セシル「は、はいーーーっ!!」 ゼット「うわっ!?ば、ばかっ!そんな大声出したら見つかるだろうがっ……!」 セシル「は、はぅっ……!!ご、ごめんねゼットくん……!     うぅ……やっぱりわたしってばかだぁ……」 ……もしかして俺は、セシルに嫌われてるんだろうか、とか思ってしまう。 最近なんか特にだ。 目が合えば逸らすし、ハッとした途端に俺から逃げるように他の誰かに話し掛けるし。 でも……それでもいい。 俺はセシルを守ってやりたいって思ったし、嫌われていたとしてもその心は変わらない。 そのためにはもっと強くならなきゃいけない。 この争いを終わらせることができるくらいに。 ゼット「……ん。じゃあ俺、稽古に戻るから。セシルもほどほどにしとけよ」 セシル「えっ?あ───あぅう……」 ───平和になんて遠い世界で僕たちは生きていた。 右にも左にも平穏なんてないその世界で、 僕らは『平和』へと続く夜明けをいつだって望んで。 辛いことがあっても、最後にハッピーエンドが待っているのなら頑張れる気がしたから。 だからこそそれをバネにでもするみたいに走ってきた。 自分は強くなれたし、そこいらのモンスターにも負けないくらいに力をつけた。 けど───それでも守りたいものを守れない時っていうのはあるものなんだと理解した。 ───そんなことを思い知らされる瞬間があったんだ。 結果、俺は狭界に落ちて─── そこで、まるで死ぬ寸前の人のようにもがきながら生きてきた。 目の前にあるのはただ『弱肉強食』の世界。 殺さなければ殺され、死にたくなければ殺すしかない。 それは確かに仕方の無いことだった。 だから俺も殺し、殺すたびに相手の力が俺の中に流れてきた。 ……そう。 狭界は、殺した相手の力が自分に流れてくるという滅茶苦茶な世界だった。 そんな世界に気が狂いそうになり、 力が自分の中に流れ込んでくる度にも狂いそうになった。 だってしょうがない。俺は人間で、流れ込んでくる力は魔物のものなのだ。 許容範囲なんて、きっと一回目で砕けてた。 だからその能力が自分の心を砕こうとして、その度に抵抗する。 そんなことをしていたら『狂ってない』って断言出来ても確証なんて何処にもないんだ。 それでも俺は生きることを放棄しなかった。 『きっと帰れるから』って。 『絶対に守るから』って。 力が流れ込んでくるたびに涙を無くし、俺は『人間をやめていった』。 それでも信じた未来はあったのだ。 あいつを守るんだって……守ってやるんだって。 俺を救ってくれたあいつのために何か出来るとしたら、そんなことくらいだから。 思い出されるのはセシルとの出会いや、あいつに救われた頃のこと。 当時、他のやつらと同じで感情が死んでいるも同然だった俺は、セシルの笑顔に救われた。 だからこそ憧れた……目指すことが出来た。 あいつを守れる存在を。 『辛いこともあるけど、いつかいっぱいの【ありがとう】に会えるから。頑張ろ?』 そう言って笑ったセシルの温かみを今でも思い出せる。 だからこそ俺は生きた。 人間をやめたっていい、生きてもう一度セシルに会うために。 もうこの体は竜の鱗みたいに硬くて、やっぱり『人』とは言えないけど…… それでもあいつの悲しみや辛さを包んでやることくらいは出来ると思うから……。 だからせめて……あいつの微笑みを、守ってやれるように……。 ───…… ……歯を喰いしばって生きてきた。 涙なんてものはもう流れず、俺の中にあるのは『セシルを守る』という思いだけ。 あれからどれくらいの月日が流れたのかなんて知らないけど、 自分は誰かによって召喚された。 既に竜の姿になっていた自分が空界に現れたのはほんの小さな瞬間の中で、 俺はそんな『刹那』とも呼べる瞬間に『俺が召喚された理由』を発見した。 生贄となって塵になる女の子と目が合った時に、 その女の子がセシルだということなんてすぐに解った。 彼女はこんな姿になった俺の目を見て、 声にならない声で『おかえり』と『ごめんなさい』を呟いて消えた。 ……もし完全に狂う瞬間があったのなら、きっとその事実にこそ俺は狂ったんだと思う。 だって解ってしまったのだ……セシルがどんな経緯で生贄になんてなってしまったのかが。 だからこそ俺は傍に居た男を噛み殺し、『人』としての理性を捨てたんだと思う。 ───なんてくだらない未来だろう。 この世界には『いっぱいのありがとう』なんてなかった。 俺達はただ、流すだけの涙を流して枯れてゆくだけだったのだ。 守りたかった存在は目の前で塵と化し、同時に俺は自分の『在り方』を失った。 そうなれば『せめて』と思うのも当然だった。 セシルが望んだ平穏をこの世界に齎そうと、そう思った。 たとえそれが仮初のものでもいい…… 少しでも彼女の理想に近づくことが出来るなら、俺もそれを願えるから─── Next Menu back