───FantasticFantasia-Set28/黒紫王の酷使……つまらんよこのギャグ───
【ケース62:弦月彰利/ほのぼのラグナロク……略して『ほのらぐ?』】 ドコトコトコトン!ドコトコトコトン!! 彰利 「ヤーサッサイヤーサッサイ!!」 みさお「ヤーサッサイヤーサッサイ!!」 彰利 「カシガミさまに祈りを捧げろ〜〜〜!!」 みさお「鎌を発現させるための儀式じゃなかったんですか!?」 彰利 「げぇ、バレた。あわわわ」 さて、現在修行から二日目。 といってもこの黄昏世界の中では既に十日間が経ってるわけだが。 悠介の話では、空界と黄昏との時間の流れはしっかり変えてあるのだそうだ。 時間が十倍ズレてるってのは凄まじいものだが、 そのお蔭で着々と修行は捗って……いなかったりする。 彰利 「妙だねィェ〜……どうしてキミ、鎌発現できないの?」 みさお「わたしに言われても……。     わたしの場合、『楔』として『骨子』が決まってるからじゃないですか?     ほら、鎌は出せませんけど刀にはなれますし」 彰利 「そらそうだけどね」 神魔の状態で固定されてる所為で、神にも死神にも傾けられないから鎌出せないんかね。 よう解らんが、そう考えると悠介はほんにバケモノ級だな。 既に神と死神の限界超越して、 今はリビングアーマー相手にやんちゃしてるし───あ、吹っ飛ばされた。 オー、ボコボコにされてるボコボコにされてる。 どうやら神魔状態が不安定なために上手く力を行使出来ていないらしい。 ほんにボコボコだ。 みさお「……あんな巨大な敵相手にまともにぶつかり合うのは無謀だと思うんですが」 彰利 「やぁ、なんでも正面からぶつかり合って倒さないと気が済まないとかなんとか」 みさお「わぁ……それってあの不安定な状態じゃあ絶対に無理ですよ。     神の力も死神の力もモノにしたみたいですけど、     反発する力に耐えきれてないようですし」 彰利 「オウヨ。だからその『反発する力』も修行の一環にしてるようだ。     あらゆる苦痛に耐えられる精神と肉体を作るんだとかなんとか」 みさお「うわぁ……」 彰利 「『うわぁ……』だよなぁ……」 悠介の成長率はこの黄昏において飛躍的なものにある。 自分の思考の中で修行をしているんだから、 確かに望めば望むだけのものに至るのは早いかもしれんが。 彰利 「無茶して死ぬなんてことが無けりゃいいけど───     あ、腕切られた……って腕ェッ!!?」 悠介の腕がズパァンと宙に浮く。 だが次の瞬間にはピッコロさんの如く腕を再生させて、 リビングアーマーに向かっていく悠介。 ……伊達に『ピッコロさんの気持ち』を解ってないな、悠介。 みさお「向こうの草原が焼け野原になるようにボコボコになっていってますけど」 彰利 「すげぇなぁ……俺も斬撃とか衝撃だけで地面破壊出来るようになってみてぇや」 みさお「同じ修行すれば出来るんじゃないですか?」 彰利 「……キミは悠介の修行の難易度を知らんからそんなこと言えるんだよ。     今だってあいつ、片腕に二百キロ以上の重りつけてんだぞ?     両腕で考えれば四百キロで、     胴にも足にも付けてるから……正直どれくらいなのか解らん」 みさお「……バケモノですね」 彰利 「だろぉ?なんかもう悠介が居るだけで、     かつて俺に向けられた『バケモノ』って言葉が霞んでいくよ。     見なさい、悠介が地面を踏みしめるたびに地面が少し軋んでる。     1tを迎えるのは近いぞ。神魔融合竜人状態なら絶対に重りは1tいくね。     俺の中の文部省大認定。俺も認定。超認定」 みさお「あ……でもさすがに疲れてきてるみたいですね」 彰利 「む───確かに」 振るう刃にキレが無くなってきた。 かれこれ二時間くらいリビングアーマーと戦ってるし、当然といえば当然か。 相手さん、確実に朋燐より速いし。 彰利 「だってのによくもまああれだけガンバ───あ、また吹っ飛ばされた」 みさお「さすがに旗色悪いですね。     リビングアーマーさん、悠介さんの攻撃を悉く弾いてます。     あの鎧自体にも全然傷がついてませんし」 彰利 「硬さがハンパじゃないね。マジック総帥特製のジェラルミン鍋もビックリだぜ」 みさお「て……なんかこっちに走ってきますね」 彰利 「お……そうだな。なにやら切羽詰ったような顔で───     おお、後ろからリビングアーマーが恐ろしい速さで襲い掛かってきてるぞ。     地面が爆発するくらいの踏み込みだ……速くて当たり前か」 みさお「そうですね〜……って、やっぱりなんかこっちに走ってきてるんですけど」 彰利 「おお、そういや『逃げろぉおおおおっ!』とか叫んで───なにぃ!!?」 みさお「ひ、ひやぁあああああああっ!!!?」 悠介が俺達の横を通り過ぎた刹那、頭部の無いリビングアーマーが剣を振り下ろした! 俺とみさおはこれでもかってくらいに絶叫し、慌てて逃げ出した。 ……もちろんそのまま逃げられる筈もなく。 俺とみさおと悠介は、しばらくリビングアーマーにボコボコにされるハメとなった……。 ───……。 彰利 「馬鹿じゃなかと!!?」 悠介 「うぐ……」 彰利 「無茶して逃げてりゃ世話もなんもなかろうモン!?     あた自分がなんしょっとか解っとーと!?はらくしゃあ!!」 悠介 「あー……すまん」 聞いた話によれば、なんでもあのリビングさんは タイムアタックエネミーとして創造した相手だったのだそうな。 時間が無くなれば消えるため、現在はもう消えているわけだが。 彰利 「強くなるなとは言いませんがね!!     そげに勢いよく強くなっても仕方ないザマショ!?     (はや)
る気持ちも解るけどね!もうちょい少しずつ強くおなり!     相手もリビングアーマー出すより、     まずはゴブリンからミノタウロスあたりでいこうよもう!」 悠介 「すまん……気が逸ってたのは確かだ。     こうしてる間にも国が襲われたりしてないかって思うと、どうもな……」 彰利 「ぬう……そりゃあ俺は王になったことないから、     キッパリ文句言うことなど夢のまた夢だが───」 みさお「彰衛門さん、言い回しがヘンテコです」 彰利 「お、お黙り!!」 悠介 「悪かった。確かに急いで強くなろうともしてたんだ。     でもダメだな、こんなんじゃ身につくものも身につかない」 彰利 「そうYO!!特にそげなキミなど悠介らしくねぇ!     何者だてめぇ!偽者か!?このミュータントめ!!」 みさお「彰衛門さん落ち着いてください!もっとよく考えてから発言しましょうよ!」 彰利 「グ、グムゥ……」 しかしこげな急ぎ足や力ばかりを求める悠介など悠介じゃあねぇやい!! 彰利 「ともかく!キミは少々休憩を取りなさい!体を酷使しすぎですよザーボンさん!」 悠介 「誰がザーボンだ」 みさお「まったくですよ」 彰利 「こういう時に敵に回るのよそうよみさおちゃん」 みさお「からかう場合はいかなる状況をも利用せよって言ったのは彰衛門さんです」 そりゃそうだけどさ。 グムゥ……なんだかスッキリしねぇズラ。 ───おおそうだ。 彰利 「なぁ悠介?敵と戦うのは神魔融合状態に慣れてからにしないか?     じゃないと、見てるこっちはハラハラドキドキ感動スペクタクル大冒険なんだよ」 悠介 「感動できるんならいいんじゃないか?」 彰利 「そういう意味じゃねィェーーーッ!!     いいから融合状態に慣れるまで敵の創造禁止!     これは親友としての忠告だ!誰にも文句は言わせん!!」 悠介 「……そだな。さっきの戦いで『これは無茶だ』って自覚はあったんだ。     忠告、ありがたく受け取るよ、親友」 ……小さな驚きだった。 悠介の性格ならここで俺の言葉を受け取りながらも否定すると思ったのに、 悠介はあっさりと微笑んで頷いたのだ。 それは驚くくらいの不意打ちとなって、 普段苦笑じみた笑みしかみせない悠介が見せた笑みは 俺の中に喩えようのない熱さが湧き上がった。 それは……そう、照れ、と言えばいいのか…… 彰利 「……お、おお……まあよ」 ともかくそんな熱さが湧き出してきたからか、返す言葉が妙に掠れてしまった。 みさお「……なに照れてるんですか?」 彰利 「ててて照れてなどおらんわ!!何を言いだすのかねこの小娘は!!」 みさお「こむっ……!?あ、彰衛門さんこそ何を言い出すんですか!     そんなに顔真っ赤にさせて照れてないなんて言っても     説得力のカケラもありませんよ!?」 彰利 「俺ゃ貴様を説得する気など無いんだから当たり前だろが!」 みさお「んなぁっ……!!あ、あああ彰衛門さんっ!?」 彰利 「お?なんだ?やンのかコラ」 照れ隠しのために、みさおに向かってシュッシュッとシャドーボクシングをした。 みさおはそれにのってくるかのようにボクシングポーズを取って、 同じくシャドーボクシング。 そんな時、草原に座りながら俺達を見ていた悠介が小さく笑い出し─── 悠介 「くっ……あっはははははは……くふふふふ……!!」 彰利 「……悠介?」 俺はそんな悠介を見ると、 ここぞとばかりに襲い掛かってきたみさおを捌きながらも親友の目を真っ直ぐに見た。 悠介 「なぁ彰利……『ひとりじゃない』って……いいな」 彰利 「───……ああ、当ったり前だろ?」 考えてることが似ていたからだろうか。 笑う悠介とともに、俺もやがて笑った。 ───で、笑った瞬間にみさおさんのナックルが俺の頬にモゴシャアとクリーンヒット。 その瞬間に、両手にグローブの代わりに 慈しみの調べを宿したボクらの戦いは始まったのでした。 ドシュシュッ!バオバオッ!ビッ!ブバッ!! デゲデデゲデデゲデデ〜ン♪ 彰利 「やりました弦月彰利選手!圧倒的なリーチの差でみさお選手をタコ殴りです!     今大会の優勝者は弦月選手に決定です!!ハワァーーーーッ!!」 みさお「うぐぐ……!!彰衛門さん大人気ないです……」 彰利 「勝負に情けは無用でござる!オォハラショーセルゲイハラショーサンボ!!     ハラショー同士ザンギエフ!!褒めよ筋肉称えよ祖国!ともに唱えよ友情最高!」 フハハハハハ!!不死身!不老不死!!フフフフ、スタンドパワー!! どれをとってもこのDIOを越えるものなどおらぬ!! DIOさま最強!俺も最強! ……などと思ってみても、少し横を見てみればそげな言葉も霞むわけで。 悠介 「ッ……ォオオオオオッ!!!」 キュバァンッ!! ……既に何度目になるのか、神魔融合状態を発動させる悠介を横目に見た。 その様はほんに超野菜人。 髪が金色になって浮き上がり、目は赤く染まる。 結構離れているというのにすげぇ気だ……!オラの数倍はありそうだ……! しかしその状態を固定要素もなく保つのはなかなかに大変らしく、 しばらくしてからまた見てみると神側になってたり死神側になってたりと落ち着かない。 だが今度は中々順調らしく、脇差二刀を振り回し始めた。 が───バジュンッ!! 悠介 「っ……がはっ……!?」 変身っつーのもなんだとは思うが、変身がいきなり解けた。 途端に悠介は草原に倒れ、しばらくピクピクと痙攣。 ……何事? みさお「ようするにアレですよ。えーと、母上です」 彰利 「ははうえ?…………悠介はママンだったのか!」 みさお「ちーがーいーまーすっ!あのですね、母上……細かに言えば『楓』ですけど、     その人は神の身でありながら死神の力を欲して、やがて死にましたよね?     それはどうしてだったか覚えてます?」 彰利 「馬鹿野郎〜〜っ、この俺をお甞めじゃねぇぜ〜〜〜っ!!」 なるほど、つまりは悠介の神魔融合状態は、 『奇跡の魔法』が無かった状態の楓と同じようなものってわけか。 そりゃあ動けなくもなるわな。 彰利 「……つーことはなに?     悠介ってば奇跡の魔法をその身に宿せば困りごとなど何もナッスィン?」 みさお「それ以前に奇跡の魔法なんてそうそう手に入らないと思いますよ?」 彰利 「ンー……いや、それがそうでもない」 みさお「え……どこかにあるんですか?」 彰利 「まあよまあよ、ちょほいと俺っちに名案がある。     悠介もとうとう気絶しちまったみたいだし、     ちょいとルドラっちかソードか解らんけどそやつに相談してみるわ」 みさお「……?」 ───……。 で、現在ソードさんだった彼を前に会話中。 みさおさんに聞かせるのもなんとなく躊躇われたんで、 みさおさんには約束の木の下で待ってもらってる。 ソード「……なるほど?つまりはそういうことか」 彰利 「フフフ、そういうことだ。     宿主である悠介を死なせたくなかったら言う通りにしやがれ〜〜〜っ!!」 ソード「助けたいのか脅迫したいのかどっちなんだ、汝は……」 彰利 「両方さ!んで!?どうなん!?」 ソード「勝手なことをすれば汝が怒られるが?」 彰利 「構わん!怒られることよりも俺は悠介の命の方が大事だ!」 ソード「……そうか」 ことの全てを話すと、ソードさんはあっさり頷いてくれた。 ちなみに本名はなんでゴワスかと訊いてみたんだが、あっさりと流された。 ソード「───いいか、各世界の者にはその世界の『回路』がある。     地界には地界の回路、空界には空界の回路がある。     あそこに居るみさおにしてみれば、神界冥界地界天界の回路を持っている。     汝の場合はそこから『天界』の回路が無い状態だ」 彰利 「な、なにーーーっ!?     サ、サイヤ人の大臣候補であるこの俺があんな小娘に劣っているというのか!!」 ソード「ふざけるのも大概にしろ馬鹿者」 彰利 「ぎょ、御意」 怒られてしまった……。 つーか言ってみてなんだが、何故に大臣候補? ソード「知っての通り、みさおには神と死神の力と血、     地界人の血と天界の奇跡の魔法が流れている。     しかし汝には奇跡の魔法がない。解るな?」 彰利 「んぉ……あ〜ぁ、つまり『回路』ってのは世界の特性みたいなものってわけか。     ようするに俺の中に奇跡の魔法が入れば天界の回路が開くと」 ソード「そういうことだ。     回路のことで言えば汝よりは霧波川凍弥の方が詳しいかもしれんな。     リヴァイアに回路についてを教わったことがあると言っていた」 彰利 「そうなん!?」 お、おのれ小僧め〜〜〜っ!!この俺を出し抜きやがって〜〜〜っ!! 彰利 「とまあそれはそれとして。なんでいきなり回路の話なんぞする気になったん?」 ソード「………」 彰利 「……?オイ剣この野郎」 ソード「気を付けろ、という忠告だ。宿主……悠介は既に天地空間中の回路を持っている。     足りないものはあとひとつ───天界の回路のみだ。     その回路を手に入れた先で悠介がどうなるのか───それは私にも解らない」 彰利 「む……それってヤバイかもってことか?」 ソード「どうなるのかは解らないと言っただろう。     いいか、各世界の回路は互い互いに反発し合う。     月の家系が最初から腕力があるのもリヴァイアの言う『反発反動力』の所為だ。     月の家系は産まれた時から神と死神と地界人の回路を持っている。     それだけでもそれだけ人間離れした身体能力が備わるということだ」 彰利 「なんとまあ……この体にそげな秘密が……ってちょっと待った!     回路は各界ごと、全てにおいて反発するって……言ったのか?」 ソード「そうだ。異なる世界の回路だぞ、馴染むこと自体が奇跡のようなものだ。     異常らしい異常など見当たらないが、     特に反発を生む神と死神の力のために汝は苦労したのだろう?」 彰利 「グムッ……ごもっとも」 ほんに小僧と椛の前世から現世までは大変だったよもう。 神と死神の力と奇跡の魔法関連で振り回されるのはハッキリ言ってもう御免だ。 彰利 「でー……あの。もしかしてだけど。     悠介ン中に奇跡の魔法……っつーか天界の回路が混ざったりしたら……」 ソード「解らないと何度言わせる」 彰利 「だ、だってよぅ!!各界においての回路全てが反発し合うんじゃあ     恐ろしいことになりかねねぇじゃん!!」 ソード「ほうっておいても宿主は無理して修行を続けるぞ。     そうなれば黒竜王との戦いの前に滅ぶだろう。     ……どうする、親友。ここは汝に決定権を譲ろう」 彰利 「よっしゃオッケ!みさおさんの中の奇跡の魔法の『複製』GO!!」 ソード「……承った。しばし待て」 そ、俺の策ってのはみさおさんの中に存在する『奇跡の魔法』の複製。 ほんとは悠介にやらせようと思ったんだけど、 ソード兄ぃが言うには 『分析と複製は私の力だ。  無理に悠介に使わせるよりは私が使った方が負担は少ない』 とのこと。 だからソード兄ぃに頼んでこうして複製を行使しようってことになったわけだ。 ソード「───……完了した」 彰利 「速ッ!!?」 もう!?もうなの!? ソード「速さなど関係あるか……っ……」 彰利 「っと、およよよよ!?どぎゃんしたとよ貴様!フラフラでねが!!」 ソード「気にするな……無茶な分析と複製による眩暈と消耗だ……。     悪いがしばらくは私も悠介も動けなくなる……その間のことは、任せるぞ……」 彰利 「う、うむ!ゆっくり眠りんさい!なんなら布団敷いて、     『ねぇ〜〜んむれ〜〜!!ねぇ〜〜んむれ〜〜〜っ!!』とか言って     腹ボスボス叩いてやろうか!?」 ソード「い、いらんっ……!!余計な気は回すなたわけ……!!」 彰利 「たわっ……!?」 ……はぁ、なんだかこやつが悠介の中の死神だってことがよく理解できた気がした。 今は神側だけど。 などと思考を回した途端にソード兄ぃはパタリと気絶。 ソードの姿が悠介のソレに変わると、今度は寝息を立てて動かなくなった。 彰利 「……うし、今のところ悠介に異常無し、と……」 もし暴走したりしたら恐ろしいことになりそうだし…… しばらくは気をつけておきましょうね、マジで。 まあそげなわけで、木の下でボ〜ッと空を眺めていたみさおさんに手を振りつつ、 後の心配をする俺でゴワした。 完。 【ケース63:晦悠介/遅く起きた朝は】 ───……ふと目を開けた。 見せる景色は気を失う前と同じ黄昏で、 気絶しながらも持続させられる状況に戸惑いと喜びを感じていたりする。 一応成長してはいるようだ。 悠介 「づっ……!?頭痛ぇ……」 意識が完全に覚醒した途端に感じたものは頭痛。 痛みは鋭く、そのくせに鈍く残る嫌な頭痛だ。 悠介 「……は、あ……!」 ふとした瞬間、視界が軋む。 急に赤く染まった視界に、まるでヒビでもはいるかのような激痛が走る。 なにか……なんと喩えればいいのだろう。 まるで体の中にある『全て』が反発しあっている感覚。 力───そう、力だ。 喩えようもない力がどんどんと溢れ出してくる。 悠介 「が、は……づ……!!」 軋む……軋む───軋んでゆく。 目の前が真っ赤に染まり、望んだわけでもないのに体が神魔融合と竜人化を促し─── 止める間も無く俺は金色の竜人へと変わった。 原因はすぐに解った。 こうでもしないと力が内包しきれないんだ。 力が生まれる。 力が生まれ、許容出来ないからと既存のものを潰してでも生まれようとする。 夢や希望や思い出、記憶や───そして理性までをも潰し、生まれてくる。 声  『───!?〜〜〜!?』 誰かの声が聞こえた。 これは───そう、確か俺にとってとても大事な誰かの声。 でも名前も顔も思い出せない。 声だけが胸に突き刺さり、けれどその痛みさえ潰されてゆく。 悠介 「あ、ア───」 それを喩えるのなら、まるでなにかに導かれているようだった。 向かう先など最初から決まっているかのように手を引かれ、 辿り着いたのは一体の翼竜の前だった。 赤い視界の中に、確かに翼竜が居た。 それを見て……何故俺はその翼竜が『自分だ』と思ったのか。 目の前に居る筈なのに触れることさえ出来ない翼竜は、 いったいどこに存在するものなのか。 潰された心の中?押し込まれた記憶の中? 解らない、解らない。 何を思い出そうとしても届かず、ただ自分が誰なのかさえもやがて思い出せなくなり…… 悠介 「───、───」 …………? そう、思い出せない。 思い出せないのに……どうしてこんなにも頭の中が熱いんだろう。 何かが頭の中で渦巻いている。 それは───記憶でも心でもない、ただ確かな───無限の、意思。 悠介 「が、あぅあ……アァアアアアアアッ!!!」 光が溢れる。 極光とも取れる光が体から瞬くように断続的に放たれ、 ついには爆発するように一気に吹き出た。 悠介 「グ、ウォアアアアアッッ!!!!」 そうなると、潰されたものがゆっくりと自分の中で息を吹き返し、やがて全てを取り戻す。 壊れかけた理性の紐をきつく結ぶとゆっくりと息を吐き、周りを見渡した。 悠介 「……あ……」 今でも生まれ続ける力を放出しながら見た視線の先に、 ポカンとしたまま動かない彰利とみさおが居た。 悠介 「っ……づ……!!」 ふたりに話し掛けようとしたが、少しでも意識の集中を乱すと理性が飛びそうだった。 ミシミシとゆっくり軋む世界が感情を殺そうとする。 悠介 「っ……なん、だよ……これ……!!」 後から後から吐き出される力の波。 俺の中から湧き上がってくるのに、『俺』さえ破壊しつくそうとする力に心底恐怖する。 が───多分この時の俺は既にどこかイカレてたのかもしれない。 一瞬。 ほんの一瞬だけ酷く冷静になると、ゆっくりと思考を展開した。 イメージを纏め、紡ぎ、編み、創造する。 己自身に埋没し、己の力の在り方を一から無限まで観察するかのように分析し─── 月操力、魔導、式、神法力、死法力、鎌、竜、理力─── それぞれの力をゆっくりと解放してゆく。 その中でひとつだけ身に覚えの無い『光』を見つけた。 それは───奇跡の魔法だ。 いつの間に、と思ったが、分析が完了すると同時に経緯の全ても流れてくる。 いや、恐らくはルドラが流したものだろう。 その意味を汲み取ると、ゆっくりと閉じていた目を開いた。 悠介 「───……」 力は溢れるばかりだ。 今でさえ体のいたるところが断裂を起こし、血が噴き出している。 だがそれでも俺は冷静にイメージの解放をした。 そのイメージとは─── 悠介 「……我が内に在りし無限の理において解放せん。     無象より生まれし有象よ、我が意思の名の下に黄昏を満たしたまえ。     我が名は───晦、悠介……」 内から湧き上がる力を、黄昏へと流すイメージだ。 やがて纏めたイメージを外に流すためにゆっくりと唱える。 『弾けろ』、と。 その瞬間に薄い朱だった黄昏空が、光を含んだ真紅へと染まる。 その様はまるで、真に染まった黄昏。 いつか見た黄昏よりも美しく、 力の解放とともに枯れ葉のみを生やしていた約束の木が美しく緑を()す。 それを確認すると、俺の体にはもう血が吹き出る場所なんて無かった。 悠介 「……うん」 長い息を吐きながら体を鎮める。 金色だった髪も、真紅だった目も、生えていた角も翼もゆっくりと元に戻る。 彰利 「……あーと、えーと、悠介?」 悠介 「……おう」 彰利 「……はぁ〜……」 俺が落ち着いたのを見たからだろうか、 すぐ近くに来た彰利は質問して納得するや否や、大きな息を吐いて草原に尻餅をついた。 その背にはみさおがへばりついている。 彰利 「や、一時はどうなるかと思ったよ……。     起き上がったまでは良かったけど、     次の瞬間、伝説の超サイヤ人への変身みたいに光を爆発させながらの変身だろ?     てっきり俺ゃあ悠介がまたブロコリとやらになるかと思ったよ」 みさお「あれは辛かったですからねぇ……」 彰利 「そういやキミ、ひとりで逃げ出してたね」 みさお「過去は過去です、忘れてください」 彰利 「グムムー」 悠介 「………」 勝手に奇跡の魔法を複製する提案を出したことに対して、何かを言おうと思ったんだが…… 悠介 「アホゥ……」 考えてみればそれは間違いだ。 彰利は俺のために提案したんだし、 それが無ければ俺はいつか神魔の力に耐えられずに死んでいたかもしれない。 そう考えれば感謝こそしても、怒る理由なんて無い筈だ。 彰利    「んで?何処か体に異常はないか?」 悠介    「困ったことに力の制御が出来ん」 みさお   「それって?どういう意味ですか?」 悠介    「ふとした拍子に暴走するかもしれないってことだ。        今は力の大半を黄昏に流してるから平気だけどな」 みさお   「……じゃあたとえば、        無茶のしすぎで黄昏の創造が出来なくなったりとかしたら……」 彰利    「俺達全員ゴートゥーヘル?」 悠介    「死にはしないだろ、お前らなら」 彰利&みさお『死ぬわっ!!』 即答だった。 彰利 「悠介さぁ、ほんと自分の強さを少しは自覚した方がいいぞ?」 みさお「わたしたちが犠牲になってからじゃあ遅いんですよ?解ってます?」 悠介 「殺人者を見る目で人を見るのはやめような。じゃ、俺は修行に戻るから」 彰利 「こ、これ!言った傍から無茶するでない!     奇跡の魔法が完全に馴染むまで修行禁止!!」 悠介 「完全に馴染んだらそれこそ暴走の確率が上がるだろ?     ルドラ……というかソードだな。ソードが記憶を見せてくれたけどさ、     各界の力が反発し合うんだったらそれこそ俺は暴走野郎に近づくことになる。     だったらその力に耐えるために自分を鍛えた方がまだ安全だぞ」 みさお「うぐっ……」 悠介 「全力でブッ潰されるのと、抑制された状態に抗うのとどっちがいい?」 彰利 「シャレになっとらんよそれ!!どの道勝てねぇって!!」 悠介 「……はぁ。お前の悪い癖だぞ彰利。なんでも無理だって決め付けるなよ。     俺なんかが上を目指せるんだったらお前も出来るだろ?」 彰利 「何を言うか!俺と貴様とでは圧倒的に違うものがあるだろう!     俺にゃあ創造の理力などというものは───あ」 悠介 「はぁ……彰利?ここは、どんな世界だ?」 黄昏空を促して言う。 その言葉に彰利はコリコリと頭を掻いて、そうだった、と恥ずかしそうに言った。 悠介 「この世界ならお前も創造出来るってことを忘れないでくれ」 彰利 「この彰利も老いておったわ……よもやそげな事実を忘れるとは。     あ、けどさ。オイラ悠介みたいに神話武具とかに詳しくねぇんだけど」 悠介 「詳しくある必要なんてないだろ。ようはイメージが纏まるか纏まらないかだ。     お前が例えばアルファレイドのイメージを完璧に再現できるなら、     消費も無く放てるわけだし」 彰利 「お……そか。つーかそう考えるとほんととんでもない世界だよね、ここ」 みさお「それだけ悠介さんが凄いってことでしょうかね」 悠介 「たわけ、凄いのは創造の理力であって俺じゃない。     結局俺はこの理力が無かったら自分を鍛えることさえ出来ないんだからな」 みさお「……思ったんですけど、悠介さんってどうしてそうなんですか?」 悠介 「うん?」 『そう』の意味がよく解らんのだが……どういう意味だ? その旨をみさおに言ってみると、みさおは小さく謝りながら言葉を続けた。 みさお「つまりですね、どうして自惚れたりしないんですか?って訊きたかったんです。     それだけの力があるなら、     彰衛門さんなら絶対に『俺ってステキ、俺様最強』とか言いますよ?」 彰利 「任せろ」 そこは威張るところじゃないぞ彰利。 悠介 「威張る必要なんてないだろ?俺は自分って存在を理解してるつもりだ。     俺がここに立ってること自体が理力のお蔭なんだから、     俺が踏ん反り返る理由なんて何処を探したって見つかりっこない」 みさお「でもそれだけ強いなら少しくらい威張ってみたらどうですか?     俺は強いんだぞー、とか」 悠介 「じゃあ逆に質問するけどな。そういうことしてる俺、想像出来るか?」 みさお「え……───……無理ですね、というより無理矢理当て嵌めてみても無駄でした。     どうしても顔が悠介さんでそれ以外のパーツが彰衛門さんになります」 彰利 「どういう意味かねそりゃあ!!」 悠介 「それだけお前が無駄に踏ん反り返ってるって意味じゃないか?」 彰利 「俺の何処に無駄な威厳があると?」 みさお「存在全てでしょうか」 彰利 「俺に死ねと!?」 悠介 「死なれちゃ困るが、どの道俺にそういうのは似合わないってことだよ。     怒ったり脅したりすることはあるにしても、武力行使は本来あまり好きじゃない」 彰利 「あの……それじゃあ毎度殴られてる俺はどうなるの?それって武力行使じゃ……」 悠介 「お前にやってるのは親友としての遊びみたいなものだろ。     そもそもお前が無駄にアホゥな行動に移るのが悪い」 彰利 「グ、グムーーーッ!!なんだいなんだい!     未来悠介と融合してから正論ばっかり言いやがって!     否定論を言わねぇ悠介なんて───いや、モミアゲがセクシーなら悠介か」 悠介 「そういう言動が無駄にアホゥな行動だって言ってんだよ……!!」 彰利 「え?ア、アレェエーーーーーーーッ!!!!?」 ドガグシャバキベキゴワシャア!!!! 彰利 「ウゴラベゴワカクオボロゴギャアアアアアアーーーーーーッ!!!!!!」 ───……。 ……さて。 みさお「……動かなくなりましたけど」 悠介 「気絶したフリしてるだけだろ?」 彰利がぐったりと動かなくなった。 試しに喉にドシュリと地獄突きをしてみるも無反応。 悠介 「……うおう」 さてどうしよう、どうやら本気で気絶しているらしい。 みさお「えーと……どうしましょう」 悠介 「まあ待て、こいつの場合気絶しても起きるのに二秒も居らん」 みさお「それって気絶って呼べるんですか?」 微妙な限りだが本当なのだから仕方が無い。 悠介 「というわけでここにキャベツがある」 彰利 「!!」 みさお「あ、ビクリと動きました」 悠介 「な?」 みさお「思うんですけど、ここで気絶したフリする意味はあるんですか?」 悠介 「こいつの場合、ただ遊びたいだけなんだ。だから過度の心配は不要だ」 みさお「ですねぇ……」 創造したキャベツをヒョイとみさおに渡して伸びをする。 彰利を診るために屈ませていた体がグンと伸びると、どこか気持ちよさが流れてくる。 悠介 「じゃ、俺は修行に戻るから。そいつの処置はお前に任せる」 みさお「はい、預かりました〜」 邪悪な笑みを浮かべるみさおと、 カタカタと震えながら気絶したフリを続ける彰利から離れて神魔を開放する。 内心は溜め息でも撒き散らしたい気分ではあったが。 悠介 「はぁ……神魔竜神状態に慣れればそれで終りだと思ったのになぁ……」 目指す上限が本当に無限になってしまったことに対してとことんまでに呆れた。 反発反動力ね……厄介なものが根付いてしまったもんだ。 ───ちなみにこのあと何気なく創造した相手───ミノタウロスと戦うも、惨敗。 恐ろしいことに、黄昏が強化されたために創造するものすら強化されているらしい。 そのあまりの強さに、結局俺はゴブリンランクからゆっくりと戦うこととなった…… Next Menu back