───FantasticFantasia-Set30/馬鹿者達の休息───
【ケース68:弦月彰利/キャリーポッター】 マキュリィ〜〜ン♪ 彰利 「エックスペクトッ!パットゥォロッナァームッ!!」 みさお「うるさいです」 彰利 「グ……グウムッ」 さて、修行開始から丁度二ヶ月。 我らはすくすくと成長して……いるといいね。 悠介 「───疾!」 ガガゴンガンゴンガン!!ドッパゴッパドッパァアアアアアンッ!!!! 影  『ォオオオッ!!!』 悠介 「だぁあありゃあああああっ!!!」 ……なにも彼ほどに成長したいとは言わないからさ。 にしても…… 彰利 「悠介、もう神魔竜人を超越しちまったと思う?」 みさお「見た目的にはもうその上を行っちゃったんじゃないでしょうか……。     昨日、強化リビングアーマーさん倒してましたし」 彰利 「なんとまあ……マジすか」 一言……否、何度でも言わせてくれ。 とうとうヤツもイカレちまった。 今は自分の影と戦ってる……自分と戦うことで自分の弱点とか癖を探してるんだろう。 なにもそこまで究極を目指さんでもええのに……。 彰利 「悠介〜?そないなもんにしときや〜」 悠介 「解ってる!!」 返ってくる軽い返事にブブルバフ〜と息を吐くと、みさおさんを見下ろして一言。 彰利 「結局なんの進展もなかったねぇ」 みさお「しょうがないじゃないですか……肉体の鍛錬を禁止されてて、     鎌も出現させられないわたしになにをしろっていうんですか」 彰利 「ンマー、刀の強化とか」 みさお「言うだけなら簡単ですよね……」 彰利 「難しかったんか……」 遠い目で黄昏の果てを眺めるみさおを見ると、さすがにそれ以上は突っ込めんかった。 前の俺なら平気でやってたんだろうけど……。 彰利 「なぁ悠介。いつ頃黒竜王のところに行くつもりなんだ?」 気になることばかりで、他のところに割ける余裕が無い。 悠介 「明日」 彰利 「そか、明日か。あし───明日ぁあっ!!?」 急すぎやしねぇかい!? アータ勝算はあるんでしょうね!? 悠介 「やれるだけのことはやったよ。     文字通りのイメージトレーニングってやつも十分にやった。     あとは俺があいつにどれだけ抵抗出来るかだ」 彰利 「こ、この馬鹿モンが!抵抗出来るか、じゃなくて勝ってもらわねば困るのだよ!」 悠介 「解ってる解ってる」 そう言うと、いつものように苦笑めいた笑みをこぼす悠介。 みさおはなんだか安心したような顔をしていたが、俺は…… みさお「悠介さん、なんだか余裕そうですね。     やっぱり強くなりすぎたってことを自覚してるんでしょうか」 余裕……?違う、アレはそんなもんじゃない。 ただ俺達に心配かけたくないからって無理してるだけだ。 勝算なんてものは無い。 出来る限り少ない時間で昇れるところまで昇っただけだ。 これ以上修行しようとしたところで、空界が気になって修行どころじゃないんだろう。 だったら…… 彰利 「うっしゃあ!んじゃあ今日は気力充実のオフ日といこうぜ友よ!     黄昏ン中でまったりするも良し、空界に戻って遊ぶも良し!     とことん付き合うぜ俺ァ!!」 悠介 「そうだな、じゃあ空界に戻るか。いろいろやっておきたいこともある」 彰利 「オウヨ!オウヨ〜!」 ……精一杯、遊び倒すとしよう。 せめて少しでも気が紛れるように。 ───……。 ……。 マキュリィ〜〜ン♪ 彰利 「エックスペクトッ!パットゥォロッナァームッ!!」 みさお「………」 彰利 「イヤァアアアーーーーーッ!!!そげな冷たい目で見ンといてーーーっ!!!」 吹き替え版じゃないエクスペクトパトローナムを唱えた途端に冷たい目で見られた。 まあ……それはそれとして現在レファルド皇国。 王サマである悠介を先頭に、民たちに挨拶をしていっております。 今日は丁度、城下町の方で祭りみたいなことをやっていたらしく、 つまり我らは民たちが賑やか騒ぐ町の中を歩いておるのだッッ!! 彰利 「しかしこれは面妖な……。     修行を始める前に見た時は、ガタガタと震えていた筈の民が笑みを……」 みさお「笑みどころじゃなくて、普通に生活してますよ」 不思議でござる。 いったい彼らの身になにが? 黄昏の世界では三ヶ月は経っただろうけど、この世界では違う筈だ。 一ヶ月も経たない内に、民たちに何が起きたと……いうのだろうか……。 彰利 「これ側近、これはいったいどうしたことじゃ?     民の身に何が起きたというのじゃ」 みさお「誰が側近ですか……。でも、なんとなく予想は出来ますよ。     あの人なら大勢の記憶の操作なんて簡単でしょうし」 彰利 「へ?───あ〜あ、そういや居たね、究極の暇人野郎が」 そかそか、あのにっこり死神野郎か。 しっかし記憶関連のことだとあやつにゃあ世話になりっぱなしだね。 ……だからって何か恩返しをしたいだなんて思わんけど。 彰利 「さ、みさお……我が娘よ。     今日は丁度祭りのようじゃし、パパが何か買ってやろうね」 みさお「え……いいですよそんな、恥ずかしいですし」 彰利 「祭りの日……子に何かを買わぬ親に親を名乗る資格はねェ」 みさお「妙なポリシー持ってるんですね……はい、解りました。     そういうことなら遠慮なく買ってもらいますね」 言葉の割に顔を緩ませて照れくさそうに笑うみさお。 やっぱりまだ子供だ、こういうイベントには弱いのでしょう。 彰利 (……って、そかそか) 考えてみりゃあみさおは、産まれてこのカタこういうイベントには縁が無かったのだ。 それを考えればこの反応も当然。 うむうむ……娘よ、存分に楽しみなさい。 じいやはいつでも貴様を見守っておるよ……。 みさお「あ、彰衛門さんっ。これ、これ買ってくださいっ」 彰利 「ほっほっほ、これこれ、そんなに引っ張ると危ないよ」 みさお「危なくてもいいですっ、あれですっ」 照れくささからだろうかね、顔を少し赤くしたみさおは俺の服の袖を引く。 俺もなんだかんんだでくすぐったくて、苦笑を漏らしながらみさおを見下ろした。 そんな時に丁度見たみさおの顔は、まさしくはしゃぐ子供のそれだった。 オヤジ「あいよ、らっしゃい。お、カワイイ嬢ちゃんだねぇ。娘かい」 彰利 「ご機嫌取りはいいからさっさとブツを出せ」 みさお「わぁあっ!!あ、彰衛門さん!?いきなり何を言い出すんですかっ!」 彰利 「一度でいいから喜作に話し掛けてきたヤツを蹴落としたかったんだ。     お蔭で夢が叶ったさー。サンクスオヤジ」 オヤジ「わっはっはっは!おかしなお父さんだなぁ嬢ちゃん!」 彰利 「誰がお父さんだこの野郎!!みさおは貴様のような男には渡さんぞ!!     どうしても欲しけりゃタイマンで勝ってから言いやがれ!     ただし一切の容赦はせん!後悔しきり大決定!!」 オヤジ「で、嬢ちゃん。どれにすんだい?」 みさお「えっと……」 彰利 「無視!?」 予想の範疇ではあったけど、初対面の人にまでこういう風にされるといささか寂しいね。 などと思っておると、みさおさんが俺の前にリンゴ飴のようなものを差し出す。 みさお「はいっ。買ってくださいね、おとうさん(・・・・・)
」 彰利 「お……?オ、オウヨ」 おとうさんと呼ばれて、不覚にもどもってしまった。 修行が足らんなぁ俺も。 でもさ、差し出されたリンゴ飴のようなものが二本あるんだから トキメくなってのは無理だよね、世界のパパな人たちよ。 彰利 「えーと、いくらかね?」 オヤジ「100S$(シルデット)だよ」 彰利 「ゲェエエエーーーーッ!!!!」 オヤジ「オワッ!?な、なんだいきなり!!」 ほのぼのとした親子空間がゴシャアと音を立てて崩れ去った。 考えてみりゃあ俺、空界の金なんて持ってねぇよ? 彰利 「───……」 みさお「?」 みさおがどこかわくわくした顔で俺を見上げる。 恐らく食べてみたくてうずうずしているのだろう。 子供によくある軽い興奮状態に頬を赤くするみさおさん……キュートだ。 これで『金がない』などと言ったら落ち込むに違いねぇぜ? ならばどうするか。 ならば───ポム。 みさお「……?」 俺はみさおさんの肩にやさしく手を置くと───一気に担ぎ上げた!! みさお「わゎゎっ!!?」 彰利 「とんずらぁああああーーーーーーーーっ!!!!!」 そして俺に出来ることを実行!! 今こそ100倍の重力に耐えた修行の成果を見せてやる!! オヤジ「……はっ!?あ、く、食い逃げだぁああーーーーっ!!!!」 さらばだオヤジ……貴様のことは俺のメモリーから瞬時に消してくれようぞ……! 【ケース69;晦悠介/タモノ男爵】 ざわざわ……ざわ…… 悠介 「……?」 しばらく歩いていると、出店の方が騒がしくなっていた。 俺は貧民街の人達に軽く挨拶を済ませると、軽く急ぎ足に出店方面へと向かい─── 男1 「おい聞いたか!?食い逃げだってよ!」 男2 「ひとりは背が高くてツンツンの髪の毛の黒い服を着た男で、     もうひとりはメイド服を着た子供らしいぜ!!」 ドゴォンッ!! 貧民街と城下町の境の壁に頭をぶつけた。 男1 「うおっ!?ど、どうしたいあんちゃん───って王サマじゃねぇか!!」 男2 「平気ですかい!?今思いっきり壁に頭をぶつけてたでしょう!!」 悠介 「あの馬鹿ぁあああああっ!!!!」 あとはもう全力疾走だった。 心配してくれた男ふたりには悪いが、立ち止まってなどいられそうもなかった。 ───……。 悠介 「たわけぇええええええええええっ!!!!!!」 ベゴシャアアアアンッ!!!! 彰利 「ヘグロギャアアアアアアアッ!!!!」 見間違えることもないトンガリ髪を見つけた瞬間、俺の拳は唸っていた。 彰利 「ぶべっ!ばべっ!!い、いきなりなにをするのかね!!」 悠介 「それはこっちの台詞だ馬鹿!!普通こんな時にまで食い逃げするか!?」 彰利 「か、金が無かったんだ!     でも僕は娘のキラキラした笑顔を裏切れなかったんだ……!!     ゆ、許してくれ、こんな僕を……!ゆ、許してくれぇええーーーーっ!!!」 悠介 「だめだ許さん」 彰利 「やだぁああああーーーーーーーっ!!!!」 ズパパパパパパパパパァアアンッ!!!! 彰利 「アゲロベゴベブボガベブボボバッ!!!!」 拳の弾幕が彼を襲った。 みるみる内に顔面だけを狙われたミッキー・ロジャースのように海坊主顔になる彰利。 まったく……!少し目を離すと碌なことにならないったらない!! みさお「うくっ……えっく……うぐぅう……絶対にわたし……娘だって思われました……。     悠介さん……わたし恥ずかしいです……」 そりゃそうだろう……心底同情する。 彰利 「な、何が悲しいの?どこか痛いの?奥歯にもやしでもはさまったのが悲しいの?     せっかく手に入れたリンゴ飴がしょっぱくなっちゃうよ?泣くのはおよし?     食べないならパパが全部食べちゃうぞ?」 悠介 「喰うなら金払ってからにしろたわけ!」 彰利 「か、金なんて無ぇえ〜〜〜〜〜っ!!」 悠介 「そんなことで威張るな馬鹿!ったく……ほら、金渡すからちゃんと謝ってこい!」 彰利 「よし行けみさお!」 悠介 「お、ま、え、が、行、く、ん、だ!!」 彰利 「えぇ〜?オラがかぁ〜?オラそういうのちょっと苦手だぞぉ〜……」 悠介 「いいから行け、さっさと行け」 彰利 「みさおさんもだよね?」 悠介 「お前だけだっ!」 彰利 「なんと!?さ、差別だ!俺だけに怒られろっていうのかよぅ!!」 悠介 「当たり前だ馬鹿ッ!!いいからっ……とっとと行かんかぁっ!!」 空界の金を握らせると背中を押し、続いてゲシゲシと追い遣った。 彰利 「ち、ちくしょ〜〜〜っ!!ジャイアンに言いつけてやる〜〜〜っ!!!」 悠介 「言いつける暇があったら謝ってこい馬鹿ッ!!」 彰利 「そんなに馬鹿馬鹿言うなよぅ!!     行けばいいんだろ行けば!なんだいちくしょうおたんちん!!」 何故か泣きながら駆けてゆく彰利を見送る。 それが済むとみさおに向き直り、 金を渡す代わりに握らされたリンゴ飴のようなもの、 泣いているみさおの手に握らせてやる。 みさお「うっく…………悠介……さん……?」 悠介 「あー……その、なんだ。泣くなよ。     あんなのでも、あいつなりにみさおのためって思ってやったんだろうし。     結果は酷いもんだったかもしれないけど許してやってくれな。     あいつ、俺と一緒で不器用なんだ。悪い気は無いんだと思う」 みさお「………」 みさおが涙を流したままの顔で俺を見上げる。 そんな顔を見たらどうしていいかも解らず、ただ焦るばかりだ。 悠介 「あぁ、えっとな、だからその……な、泣くな!     情けない話だけど人を慰めるのって苦手なんだよっ……!」 みさお「……ぅくっ……ぁぅ……」 頼りを無くした子供のように泣くみさおの前に、俺の思考はどんどんと混乱してゆく。 あぁどうする!?彰利の場合、こういう時は───くそっ!どうとでもなれっ! みさお「───あっ!?」 彰利の行動を思い返しながらみさおの体を引き寄せて、気づけば抱き締めていた。 自分の行動ながらとんでもなく驚いたが、それでも泣かれるよりはマシだと覚悟を決める。 えぇっと次は───な、何をすりゃいいんだ!? 悠介 (だぁっ!ダメだ!やっぱり俺ってこういうのは苦手だ!!) 顔が灼熱するのを感じ、みさおの体を離そうとする───が、 それじゃあふりだしに戻るだけだと覚悟の強度を磐石へと変える。 次は……次は……?えっと、そ、そうだ、確かよく頭を撫でていた筈だ───撫でてたか? ああもう知らん!!撫でろ!とりあえず撫でとけ俺!! わしわしわしわしわしっ!!! みさお「あ、あうぅうっ!!い、いたいっ!いたいですっ!!」 悠介 「へっ!?うわっ!悪いっ!!」 焦るあまりに加減を忘れてた俺は慌ててみさおを離した。 結果的にみさおと目が合う形になり、俺は慌てて横を向くことで目を逸らした。 泣いている子供の顔は苦手だ。 それは深冬が小さかった頃からてんで変わっちゃいない。 みさお「あ……あはっ、悠介さん……顔、真っ赤です……」 悠介 「わ、悪かったなっ!言っただろ!?慰めるとかそういうのは苦手なんだよっ!」 みさお「あはは……っ、今の悠介さん、慰めるのが苦手で困ってる人というよりは、     好きな人の前で狼狽える小学生の子供みたいです……」 悠介 「ぐっ……お、お前なぁ……ってうわっ!?こ、こらっ!!」 俺の顔を覗き込んできたと思うと急に抱きついてくるみさお。 当然、というのも妙な話だけど俺は心底狼狽え、 思考がぐるぐると回って纏まりがつかなくなった。 そんな時───なんの冗談なのか俺の手は勝手に動き、みさおの頭をやさしく撫でた。 みさお「えっ……?」 悠介 「…………」 みさおが驚いた顔で俺を見上げる。 相変わらず俺の顔は真っ赤だろうし、驚きの量なら負けていないと確信が持てる。 それでも一度やってしまえば覚悟が決まるというか。 気づけば俺はみさおの頭と背中をやさしく撫でていた。 頭を撫でるくらいで覚悟を決めるほどのことをするな、なんて言われそうなものだけど、 俺にしてみればそれは覚悟が必要なものだった。 悠介 (ああ、まったく……若葉や木葉の頭を撫でるのはどうってことなかったのにな) やっぱり家族って思う意識はそういうのを和らげるものなんだろうか。 どちらにしても俺を見上げる潤んだ目を直視することも出来ない俺は、 そっぽを向きながら撫でてやることしか出来なかった。 けれどもみさおはそれが嬉しかったのか、 俺の背中に精一杯腕を伸ばして俺に強く抱きついてきた。 そうすることでますます赤くなっただろう俺の顔を見上げて、 潤んだ目は微笑みへと変わった。 泣いた子供がなんとやら。平和なものだった。 彰利 「愛……覚えてますか?」 悠介 「記憶が飛ぶほど殴っていいか?」 彰利 「いきなり殺人じみたことを言われても困るぜ友よ。     もう十分殴られてきたから勘弁してくれ」 突然現れた彰利だったが、その顔面はさらなるミッキー・ロジャースに変貌していた。 彰利 「しかし悠介がみさおさんを抱き締めて頭を撫でるなど……写真一枚いいですか?」 悠介 「もう一度訊く。記憶が飛ぶほど殴っていいか?」 彰利 「見られて困るならやらなきゃいいでしょうが!!」 悠介 「泣いた子供をそのままに出来るわけないだろうが!!     そもそもお前が食い逃げなんかするからこんなことになったんだろ!?」 彰利 「すぐ怒るよね悠介は。そういうのって心に余裕が無いと思うな、直しなよ」 悠介 「根本問題のお前にそんな返され方されたくねぇ!!     だったらお前が怒らせるような行動を慎め!」 彰利 「オッケイ解った!慎みながら盗めっていうんだな!?」 悠介 「違う!!」 彰利 「あの……落ち着いた方がいいよ?怒るとシワ増えるし血圧も上がるし……」 悠介 「だったらてっとり早く怒りの根源をブチのめすぞこの野郎……!!」 彰利 「ほっほっほ、貴様が動けばみさおさんが起きるぜ?     寝ている子供を起こすようなことが出来るか!?えぇええーーーっ!!!?」 悠介 「ん?あ───」 言われてから見てみれば、確かにみさおは眠っていた。 ……泣いた子供って眠るパターンをよく聞くが、疲れるほど泣いたのか?こいつは。 まあそれはそれとして、と。 彰利 「ほっほっほ……ほははははは!!やはり貴様はやさしすぎる!     非情になりきれないカカロット、     貴様にはこのベジータさまを超えることなど出来ん!!     はぁっはっはっはっはっはっは!!!」 悠介 「はぁ……“伎装弓術(レンジ・アロー)───光弾(ブラスト)”」 ドガチュゥウウンッ!!! 彰利 「は───」 みさおを抱き止めている左手とは別───まあ右手だが、 その手で剣を引き抜いて弓へと変えると光弾を発射させた。 普通にブラストを創造して放つのとでは雲泥の差の速度で発射されたブラストは、 彰利の頬と耳の皮を切り裂いて果てへと消えた。 高らかに笑っていた状態のままで固まり、 汗をだらだら流す彰利に俺は笑いかけてやった。 彰利 「えーと……ごめんねっ♪」 いつかのルナのように謝る彰利を前にして、俺はただ一言を唱えた。 悠介 「寝言は寝て言え」 彰利 「イヤァアアアアアアーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!」 創造するのはガトリングブラスト。 それを屠竜の弓で一気に発射すると、彰利は弾丸のような速度でとんずらした。 悠介 「うーわー……感心しても足りないくらいの速度だなぁ」 俺はモシャアと一息つくと、みさおを背負った歩きだした。 さてと、これからどうしたもんかな。 彰利 「まずあそこにある串焼きを食おう。キミのおごりで」 悠介 「当然のように隣に居られても困るんだが」 いつ戻ってきたんだ貴様は。 彰利 「俺がいつキミの隣に来たかなんてこたぁいいじゃん。     ほら、俺って転移出来るわけだし。いちいち気にしてたら老けるよ?」 悠介 「三千年生きる俺が今から老けてたまるかアホゥ」 彰利 「……なんつーか生命をかけたツッコミですなぁ……聞いてて泣けてくるよ。     で、思ったんだけどさ。俺とキミとじゃあ基準になる寿命が完全に違うわけだろ?     臨終の前にする喧嘩ってどうする?」 悠介 「60年後あたりにやればいいさ。     それが終わったら俺は自分が死んだことにして、この空界で第二の人生を生きる」 彰利 「お、そりゃいいわ。     地界では死んだことにして、空界で命燃え尽きるまで遊べばいいか。     って……この時代の空界?それとも我等の時代の空界?」 悠介 「どっちでもいいんじゃないか?     むしろ……俺達の世界の方がいいかもしれない。     その方が案外気楽に旅人出来るんじゃないか?」 彰利 「王としての責任は何処いった」 何処いったって言われてもな。 俺は元々、王である前に旅人なんだが。 それに『やめたくなったらやめる』って言ってあるわけだし。 悠介 「転々とするのもいいんじゃないか?それも面白そうだ」 彰利 「だぁなぁ。我らの時代じゃあキミは王じゃないけど、     確かにその方が気楽に旅が出来るやもしれん」 悠介 「ん。大体、自分の子供達が老人になっても俺達は若いままかもしれないなんて、     正直ゾッとするだろ?だから外見だけでも年寄りにしといて、     あとは適当に弱ったそぶりを見せておけばなんとかなる」 彰利 「ホッホォオオ、ということは死んだと見せかけた後は土葬ってわけだな?」 悠介 「いや、火葬で骨格標本をダミーに使うって手もあるぞ。     火葬場に入れられた後に転移でいじるんだ。     そうすれば骨を骨壷に入れる時にもバレないだろ」 彰利 「ぶふっ……!そ、そりゃ確かに面白い……!     あ、じゃあ俺はウケ狙いで人体模型をダミーにしてみようかね。     俺の身体は人体模型で出来ていたーーーっ!!って」 悠介 「末代までバケモノ扱いされたいのかお前は……」 彰利 「上等!だってその方が俺の名が永劫に残されるわけだし」 『汚名』って形でだろうけど。 そんなことさえ解ってるのか、頭の後ろで腕を組んで笑う彰利。 彰利 「んじゃあ悠介、これからどうする?やっぱメシか?祭りっつーたら食い歩きだが」 悠介 「一応金はあるし……片っ端から全制覇していくか?」 彰利 「オッケイそうこなくちゃ!やっぱ金ってのはこういう時に使わんと!     つーわけで射的探そう射的!一番にアレやらなきゃ気が済まねぇ!!」 悠介 「一番に食い逃げしなけりゃ俺も『ああ』って言えたんだけどな」 彰利 「アイアムソーリーヒゲソーリー!!おっしゃあ反省十分!レッツゴー!!」 悠介 「……してたのか?反省」 ともあれ駆け出す彰利を追いながら溜め息。 直後に漏れる苦笑は、苦笑ながらも随分と穏やかなものだった。 ───……。 ……。 一時間後。 彰利 「グムム〜〜〜ッ、結局食べ物だけで娯楽がなかったぜ〜〜〜っ」 悠介 「だからって軽く全ての料理を完全制覇することないだろ」 彰利 「だって地界には無い味だったんだもの。味だけでも覚えておきたいじゃない」 悠介 「そっか。俺の場合は一応分析してレシピは頭の中に刻んでおいたから、     作ろうと思えばいつだって作れるぞ」 彰利 「抜け目ないねぇキミ……」 そう言いつつも両手いっぱいに持たれた串焼きだのなんだのを交互に喰う彰利。 どうやらかなり気に入ってしまったらしい。 彰利 「あ〜……この串焼き美味ェエエエなぁあああ〜〜〜……。     どういうタレ使ってるんだか……地界じゃこの味は出せねぇよ」 悠介 「それも分析したぞ。     材料自体が地界に無いものだから、地界で出せないのは当たり前だ」 彰利 「そうなん!?うっしゃあ後でレシピ教えろ悠介!完全再現してやる!」 悠介 「出来るか?多分忘れられた村で作った味噌汁みたいなことになると思うぞ?」 彰利 「グムッ……オリジナルには勝てねぇってことか?」 悠介 「そうは言ってないだろ。それ認めたら超越なんて出来やしないし」 彰利 「ム、そりゃそうだ」 ンムンムと頷きつつも再び串焼きを喰う彰利。 やがて手に持っていた串焼きの全てが串だけになると、モムモムと口を動かしながら発言。 彰利 「ヴァアブーブベ、ボベヴァヴァボーブブ?」 悠介 「日本語で喋れ」 彰利 「むぐぐ……んぐっ……と。なぁ悠介、これからどーする?」 悠介 「俺はあの『歴史館』に行ってみようと思うんだが」 彰利 「うはっ、肩凝りそうだねまったく。別の所にせんか?つーか城行って休もう。     もしくは地界に戻ってみなさまにアイラヴユーを唱えるとか。     それともアラブの中心でバカと叫ぶか?」 悠介 「なんでアラブの中心なのかはこの際度外視するとして。     黒竜王との戦いが終わるまで地界に戻る気は無いぞ」 彰利 「あらまぁそうなん?んじゃあ……ん、解ったぜ友よ。     キミは歴史館、俺はみさおさんとメシバカ日記だ。     だからみさおさんとお小遣いちょーだい?」 悠介 「お前……あれだけ食って、まだ入るのか……?」 彰利 「俺の腹は昔から『セントマッスルパンチ』と呼ばれてるんだ」 それはキン肉マンゼブラだ。 しかも腹とはまったく関係ない。 悠介 「解った、とりあえず1G$渡しておくから、考えて使うように」 彰利 「おお〜、1万円ですな?知ってるぜよ?リヴァちゃんに教えてもらった」 悠介 「……確かにそうだが、もうちょっと空界のこと勉強しような?」 彰利 「馬鹿野郎!日本人は日本語が解ればそれでいいんだよ!」 悠介 「外国との交流が無ければそれで頷けるんだけどな、それは無茶な話だろ。     交流を選ぶのはお偉方であって、俺達はお偉方とは違うんだ」 言いながら1G$とみさおを渡す。 ……自分で思考しててなんだが、 みさおをモノみたいに扱ってしまったような気がして嫌な気分になった。 彰利 「センキュウ!ん〜だばオイラみさおさん起こして食い倒れツアーするから!     こっからは自由行動でええんやね!?」 悠介 「そだな。祭り場で硬いことは抜きだよな。じゃあ適当な頃合に城の方で会おう」 彰利 「オウヨ!悠介の王室あたりでOKね!?」 悠介 「王室言うな……部屋って言えばいいんだよ」 彰利 「でもさ、多分今となってはキミ以外の王様って認められないよ?     新しく即位した人が居たとしても、当日の夜に涙で枕を濡らすね」 悠介 「……そこまで俺が信頼されてるとは到底思えないんだが」 彰利 「ノンノン!町の人達の反応見たっしょ?みんな友好的だったじゃない。     王様だってことをあんまり気にせずにフレンドリィに話し掛けてきた。     それってそれだけ信頼されてるってことじゃないのさ暴れん坊将軍みたいに」 悠介 「あー……あれって将軍サマのことを知らない村人が多すぎだよなぁ……」 彰利 「物語は好きなんだけどねぇ」 同意見だ。 悠介 「けどさ。お前の言い方からすると俺は『友好的』に接されているわけであって、     別に王じゃなくてもいいってことだろ?」 彰利 「ゲッ……」 悠介 「……オイコラ。なんだその『気づかれた』って顔は」 彰利 「やっ!な、なんでもないよ!?キミが王なら金に困らず     こうして食い倒れツアーが出来るなんてアタイ考えてない!!」 悠介 「考えてるじゃねぇか!!」 彰利 「考えるよりも先に口が動いたんだ!だから考えてない!許せ!!」 悠介 「許すとか許さないとかそういう問題か!?     親友の王って立場を食い倒れツアーに利用すんなって言ってんだ!!」 彰利 「なにぃ!?だったらなんのために利用しろと!?」 悠介 「利用すんなって言ってんだって言ってるだろうがちゃんと聞けナメック星人!!」 親友の前髪の二本ハネた部分をシュパァーーンとデコピンで弾く。 彰利 「ナメッ!?お、俺のこの前髪は触覚なんかじゃないやい!!     悠介こそピッコロさんの気持ちが解るナメック星人じゃないか!!」 悠介 「好きで解ったんじゃない!!     文句があるならあの時腕斬るハメになった原因のルナに言え!!」 彰利 「OK解った了解フレンド!!     ならば貴様が白昼堂々町でみさおさんを抱き締めていたことを     余すことなく尾鰭羽鰭胸鰭背鰭(オヒレハヒレムナビレセビレ)を付属させてルナっちに伝えてやろう!!     これで彼女もエラ呼吸!!口をパクパクさせながら斬殺されること受け合い!!」 悠介 「どうして俺に迷惑かける方向で物事を考えるんだよお前は!!」 彰利 「気になる人にかまってほしくて苛めに走る小学生を演出してみました」 悠介 「いらんことばっかり細かく演出するな!     そういうことが出来るならどうして修行に細かく取り組めないんだキサマ!!」 彰利 「ごきげんよう陛下!肉体労働は苦手です!!」 悠介 「万人に解らんネタ使うな!!お前から肉体使った行動取ったら何が残るんだ!」 彰利 「ダンディズム!!」(ズビシィッ!!) 悠介 「ポーズまで取るな馬鹿!そんなに調子に乗りやすいダンディが居てたまるか!」 彰利 「だったら肉体美!」 悠介 「お前はなにか!?動くのやめて肉体だけ見せてればそれでいいのか!?」 彰利 「おおステキ!ロダンの考える人とか!?」 悠介 「だったら今から体を石膏で固めて一歩も動くな(くるぶし)野郎」 彰利 「それ『ろだん』違いです!オイラ別に秘密クラブには入りたくない!」 悠介 「遠慮するな。冷えたドリンクで眠気を飛ばそうとしたのに     ヌルイドリンク飲んじまって気絶しても俺は怒らん。     むしろ染まれ、そして消えろ、永久(とこしえ)に」 彰利 「なんでそんな細かい部分覚えてんのさ!なにキミ愛読者!?」 悠介 「アパート暮らしの時にお前が散々見せてきたんだろうが!     お前こそどうしてそう都合の悪いことになると忘れるんだ!!」 彰利 「覚えてることを前提に話し掛けてくるヤツらにゃあ     忘れやすい体質の者の気持ちなんざ解らねぇんだよ!!     我が身に降りかかってようやく理解に至って、     あの時のお前の気持ちが解ったよ…なんて言われてもウザイんじゃボケ!死ね!」 悠介 「落ち着け!誰への言葉だそれは!!」 彰利 「そもそも俺らなんでこんな話に突入してんの!?」 悠介 「俺こそ知りたいわ!!」 そろそろ民の視線が痛くなってきたところで、ひとまず息を吐く。 彰利 「とにかくだ。俺が言いたいのは忘れやすい人に話し掛けてくる記憶力のいい人ほど     ウザったいものはないということだよ心の友。     自分が知ってるからってこっちも知ってると思って話し掛けてくるヤツや、     そいつがやった物事をそいつ自身が忘れちまってたからって     文句をつける奴は死ね!馬鹿かキサマは!死ね!記憶力云々を人の所為にすんな!     好きで忘れやすくなったんじゃねぇんだよ馬鹿!死ね!!」 悠介 「誰に言ってるのかは知らんがとりあえず落ち着け」 彰利 「解るか親友!俺はな!そんな馬鹿どもが大ッ嫌いだ!     忘れたからなんだ!やり直せばいいじゃねぇか!     イチャモンつけるくらいなら最初から自分でやれ!!馬鹿かキサマは!死ね!!」 悠介 「だから───ってオイ、なんか酒くさいぞお前」 彰利 「馬鹿野郎!俺ャ酔ってねぇよ!!酔ってるって言ったヤツが酔ってるんだよ!」 悠介 「訊いてもいないのに酔ってねぇって言うヤツは酔ってるんだよ。     いったい何飲んだ、言ってみろ」 彰利 「メシ食っただけだ〜〜っ!!変な味したけど上手い串焼きだったぜ〜〜〜っ!!」 悠介 「………」 ダメだこりゃ、完全にラリってる。 このまま放置してたんじゃああることないこと叫ぶだけだし─── 悠介 「彰利の中にある酔っ払い要素を吸い込むブラックホールが出ます」 イメージを弾かせて彰利から『酔い』を吸い取る。 するとハッと気づいたように俺を見て狼狽える彰利。 ……どうやら瞬時に酔いを醒まされたために、 今まで叫んでたことの全てを記憶してしまっているらしい。 彰利 「じ、実は……リンゴ飴かっぱらった場所の主人に、     散々『忘れっぽいこと』を怒られまして……。     た、耐えられなかったんだ!あそこまで馬鹿にされたら、     心の中に仕舞っておくことなんて出来なかったんだ!!」 悠介 「説明してくれるのはありがたいが、少しは人の目も考えような。顔真っ赤だぞ」 彰利 「うう、面目ない……」 悠介 「それよりもリンゴ飴かっぱらったところの主人に対する文句にしては、     全然関係なさそうなものも混ざってたように聞こえたが」 彰利 「『あの時のお前の気持ちが解ったよ』ってのはリンゴのオヤジに対してだよ?     隣の雑貨屋の主人も一度盗まれたことがあったらしくてね?そいつに言ってた。     その言い方があまりにも嫌味ったらしい言い回しだったんで」 悠介 「物事をやった本人が忘れてたことに対する文句ってのは?」 彰利 「ホラ、俺金忘れたじゃない?そもそも最初っから持ってなかったわけだけど。     そのことについて、身の回りのものの点検もしてねぇのかとか言われたからつい」 悠介 「……やり直せばいいとか、イチャモンつけるくらいなら自分でやれ、とかは?」 彰利 「あの野郎、二度とキサマには売らんとか言ってきたんだよ。     『今度は金持ってんだから出会いからやり直しましょ?』って言ったのにさ、     『冗談じゃねぇこの盗人が!』って追い返しやがったんだ」 ああ、そりゃむかつくわ。 そもそも盗まなければよかったわけだが、謝ってきてる相手に対してその態度はない。 彰利 「でさ、謝って金も払って、誠心誠意を込めて完全に謝罪したわけよ。     あんなことをした後だ、いくら俺でも少々ヘコむよ。     でもあの野郎なんて言ったと思う?     『謝るだけじゃ足りねぇ。乱れた飴の串、直していきやがれ』     とか言ってきやがったのよ。だから俺は直したさ、誠意を込めて。     見栄えする置き方をしたさ。そしたらあの野郎、     『こんなんじゃ客が来ねぇよ!俺は元に戻せって言ったんだ!』とか言ってさ」 悠介 「………」 アホゥかそいつは。 確かに今回ばっかりは彰利が正しそうだ。 ……盗人云々を度外視すればだが。 彰利 「でも耐えたね、このダンディは」 どのダンディだ。 彰利 「ンマー、叫んだらスッキリしたわ。     酔いも醒めたし、リンゴ飴屋の評判落としながら食い倒れツアーと洒落込むよ」 悠介 「評判落とす前にもうちょっと自分の行動を思い返そうな。     お前の言い分は正しいけど、自分の持ち物盗まれれば誰だって怒る。     そのオヤジの場合、たまたま歯止めの利かないオヤジだったってだけだろ」 彰利 「グムッ……!!あのー……悠介?こういう時にそういう否定論出すのやめようよ。     否定するならオヤジの方を否定しよ?ね?」 悠介 「これに懲りたら食い逃げなんてやめろよ。     愚痴なんて聞いてる方は疲れるだけだし、     言った方だって後悔することも多いだろ」 彰利 「あ、あらお見通し?実は後悔してますハイ。     人が居ないところで陰口はイカンよね。     俺がこんなんではみさおさんの手本にもなりゃしない」 悠介 「なるつもりはあるんだな」 彰利 「オウヨ!!なんつーか直感的に俺の子供って娘が生まれる気がしないのよね。     だからみさおさんは俺が愛を込めて育てます!!     そして俺の子供が十分に育った時に     『お前と姉さんは実は血が繋がってないんだ……』って言って、     『そんな……ウソだろ父さん!』とか言わせるのが目下の夢です!!」 悠介 「捨ててしまえ、そんな夢」 彰利 「クォックォックォッ……!!     どっちが実の子供じゃないのかで悩む子供を思うと、     今から楽しみでしょうがねぇ……!!     あ、そういやキミは未来に対する夢とか不安ってある?」 奇妙な笑い声を出しつつニヤリと笑う親友の未来が心配だ、と言っていいのだろうか。 悠介 「夢か。夢は……そうだな、ハッキリ言って地界で叶えたい夢なんてものは無いな」 彰利 「うわ、ほんとにハッキリ言った。じゃあ空界ではあると?」 悠介 「無い」 彰利 「夢も希望もありゃしねぇねそれ……キミさ、何が楽しくて生きてるの?」 悠介 「生きるのが楽しくて生きてる。アホゥかお前は。     俺に夢なんてものがなんくても周りが楽しければ生きる意味はあるだろうが」 彰利 「ム───然り。けどさ、夢のひとつくらいは持っておいて損は無いんでないか?」 悠介 「そうだな。じゃあ俺の周りのやつらが幸せに暮らせる未来を築きたい」 彰利 「ノウノウノウ!!自分のための願望は無いのかね!?」 悠介 「無い」 彰利 「言い切ったァーーーッ!!うあぁあんこの人マジで夢も希望も無ェYO!!」 悠介 「人を人生の脱落者みたいに言うな!!べつにいいだろうが願望なんて無くても!!     俺は静かに、時には賑やかに暮らせてりゃあそれでいいんだよ!!     それは地界に居ようが空界に居ようが同じだ!!」 彰利 「なにぃ!じゃあ空界に住むようになってもファンタジーにはトキメかねぇと!?」 悠介 「それこそ特に馬鹿野郎!!     ファンタジーは男の永遠のテーマだ!!無くしてたまるかその心!!」 彰利 「悠介!」 悠介 「彰利!」 ガッシィと肩を組み合う。 ……べつに意味などありゃあしないが。 彰利 「久しぶりに全力で会話したところで、そろそろ解散しようか」 悠介 「だな。お前は食い倒れ、俺は適当」 彰利 「歴史館は?」 悠介 「適当だ。気が向いたら行く」 彰利 「そかそか。で、キミほんとに願いとか無いの?」 悠介 「そうだな。     ミルハザードをコテンパンに出来る力が欲しい、って言いたいところだけど───     こればっかりは自分の力でなんとかしないと意味が無い。      やっぱ無いな。敢えて言うなら世界が平和でありますように」 彰利 「ウヒャア!ベタだ!ベタすぎるぜフレンド!!それでいいのかフレンド!!」 悠介 「じゃあな、俺は行く」 彰利 「うおう無視った。まあいいや、そんじゃな〜」 彰利が振る手に小さく手を振り返し、ゆっくりその場をあとにした。 民の視線は相変わらず集まっていたが、気にしなければどうということもなかった。 さて───やっときたいことをやりますか。 そう独り言を呟くと人気の無い場所を目指し、転移した。 Next Menu back