───FantasticFantasia-Set32/僕と僕らの悪足掻き───
【ケース71:晦悠介(実は超再)/ラムダ】 悠介 「はっ───、あ……、かはっ……!!」 体を回復させた途端に気管へ一気に酸素が流れ込み、咳き込むようにして倒れた。 それとともに髪は黒へ戻り、目も薄い赤へ戻ってゆく。 角と翼も引っ込むと、俺は仰向けになって大きく息を吐いた。 ソード『こっぴどくやられたな』 悠介 「あー……よう、神サマ……」 気の抜けた声で手を上げた。 俺の頭の傍で俺を見下ろすように立っている創造神は、小さく溜め息を吐いた。 悠介 「珍しいな、出てくるなんて」 ソード『訊きたいことがるんだろう?手間を省いただけだ』 悠介 「……そうだな」 汗が止まらないままにソードを見上げ、疑問をぶつけることにする。 悠介 「まず───どうしてゼプシオンの大剣は砕けたんだ?     いくら紫電を込めたからって、アレを砕けるなんて到底思えない」 ソード『……何かと思えばそのようなこと。     くだらん、その答えならば既に己で出しただろう』 悠介 「……へ?」 なんのことだ?……全然思い当たらない。 ソード『黄昏の世界に創り出したものとの戦いとは即ち、己の意思との戦いだ。     それは私が創造しようがお前が創造しようが変わりは無い。     ここまで言えば答えなど簡単に導き出せるだろう。     ようするに私が創り出した【ゼプシオン=イルザーグ】の騎士としての意思に、     お前の意思が勝っただけのことだ。     そして、【騎士としての意思】が砕けたからこそあいつは素手での勝負に挑んだ』 悠介 「あ……そっか」 なるほど、それなら合点がいく。 リビングアーマーになり、理性を失ってもまだ騎士であろうとした英雄が、 何故その騎士としての意思を捨てて殴りかかってきたのか。 その理由が静かに解けていった。 ソード『他に訊きたいことは無いのか』 悠介 「ん───客観的に見てどうだ?正直に言ってくれていい。     俺は黒竜王に勝てそうか?」 ソード『ふむ───正直、今のままでは八割方敗北するだろうな。     お前は未だ【真】に至れていない。     目的が決まっているというのに己の在り方に拘り、     黄昏の真の意味にすら気づいていない』 悠介 「俺の在り方……黄昏の意味?」 ソード『教える気は無い。いや、そもそもお前は私に教わることを良しとしないだろう。     己の意思でそれらを見つけ、己の意思で力としろ。     お前が望む力が【守る力】であり【共に成長する力】ならば、     ここで私が教えるのはルール違反だ』 悠介 「………」 訳が解らない。 それなのにソードは適当なことを言っている風ではなく、その目は真剣そのものだった。 ソード『それよりもだ。黒竜王との戦いを翌日に控えているというのに、     こんな戦いをしていていいのか?』 悠介 「ここでセプシオンに勝てなかったらそれこそ負けるだろ。     自信なんて無いけど、     だからこそ少しくらいは敵うって根拠が欲しかったのかもしれない」 ソード『根拠か。欲しているというのに弱気でどうする』 悠介 「まったくだな」 苦笑を漏らして目を閉じる。 疲れた……少し休もう。 悠介 「あ───最後にいいか?     黒竜王の野郎、あれだけ強くても切り札みたいなものを持ってると思うか?」 ソード『当然だな。切り札も持たんヤツは強者になど至れない。     そもそもお前は知っているだろう、あいつは狭界で様々な能力を身に付けた。     その能力とやらが解らん限り、相手の強さは未知数だ』 悠介 「……だよな。ん、サンキュ。じゃあ俺、少し休むわ」 ソード『眠るか。体調は万全にしておけ、     間違っても風邪など引いて思考の回転を鈍らせるなよ』 悠介 「子供か、俺は……」 目を閉じながら言ったが、既にソードの気配は消えていた。 言いたいことを言ったらさっさと引っ込んだらしい。 悠介 「………」 寝よう。 散々跳ね上げられたり叩き落されたり弾丸にされたりして、頭がグワングワンいってる。 サッカボールの気持ちがあるとしたら、多分こんな気分だろう。 ボールは友達、怖くないと言うのはデマだな、うん。 ボールからしてみれば蹴る相手の方が怖いわ。 【ケース72:弦月彰利/我が愛と青春のララヴァイ】 ───空界、サウザーントレント。 彰利 「人生(ラヴィ)
ッ!!」 シャキィンと意味もなく構えてみた。 ……ええまあ、意味もなく構えたんだから意味なぞない。 彰利 「つーわけでじっちゃん、ちと作って欲しいものがあるんだけど」 長老 「誰じゃおぬし」 いきなりな言葉だった。 思いついたことを胸に鍛冶屋のじっちゃんに話し掛けてみたんだが、あっさりと初対面顔。 それもその筈、だってオイラこのじっちゃんと会ってた時って悉くタイニーだったし。 ……あれ?でもその前に会ってなかったっけ。 あれは確かマグナスさんをブッコロがした後だった気がするんだが…… いや、なんかもういいです。どうせ俺、無視されたり忘れられたりするの慣れてるし。 彰利 「我ガ名ハ魔人アキトシ……今後トモ、ヨロシク……」 長老 「………」 女神転生シリーズの悪魔の真似をしたら、物凄く呆れた表情で見つめられてしまった。 彰利 「えっと、ほら、ここで屠竜剣錬成してもらったモミアゲ王の悠介さん居るっしょ。     彼の親友の弦月彰利ってケチなモンでさぁ。     ホレ、ここで謎のマシンもらったタイニーマンドラゴラ、あれが俺ナリ」 長老 「……?何かの呪いでもかかっていたということかの?     その話が本当なら、あの小さな物体になれるということじゃが」 彰利 「なれるぞえ。     あれは悠介に創造してもらった変身ベルトさえあれば、誰だってなれるもんだし。     それよかさ、ちと大至急作ってもらいてぇものがあるんでさぁ」 長老 「む……まあよいじゃろ。おぬしの目はウソを言っているようには見えん。     なんじゃ、何を作ってほしい」 彰利 「ステキな武器!!屠竜剣より強いものを、とは言わないからさ!     なんつーかこう……力を封じ込められる宝玉とか、いいね!!     溜めれば溜めるほど強くなる〜、とか!」 長老 「ふむ……それは可能じゃが───おぬしの持ち物にもよるぞい?     材料が無ければどうにもならん」 む……確かに。 けどなぁ、オイラって戦いの度に“戦闘開始(セット)”唱えるの忘れてるしなぁ。 まともなアイテムのひとつもあるかどうか…… 長老 「……む?おぬし、その刀は───」 彰利 「ぬ?あ、これはダメYO!!これはあっしの娘ですけぇのぉ!!     国が滅ぶほどの金を出されても渡さんぞ!!」 長老 「そうじゃなくてじゃの……おぬし、この刀を何処で手に入れた?」 彰利 「手に入れたとか言うでない!娘だと言っておろうが!!     そりゃあ、夢の中で刀に変身する夢見て実際に刀になっちまう変な娘ではあるが」 町中でいきなりだもんなぁ。 民の視線が釘付けになったときはどうしたものかと思ったよ。 でも冷静にコトを済ませたね、このダンディは。 彰利 「……ところでさ、この世界にも『特撮』ってあるの?」 長老 「む?なんの話じゃ」 彰利 「い、いや……なんでもない」 咄嗟に言った『特撮じゃよ〜!』の言葉でみんな納得したのは奇妙な光景だった。 特撮が無いのにどうして納得してくれたのは解らんが、ありがとう阿笠博士。 でも人っていい加減だよね。 長老 「まあよいじゃろ。     どうやらおぬしもブレイバーのようじゃ、バックパックを見せてみい」 彰利 「オウヨ!えーと……アンテ!」 ボムンッ!───ドシャリ。 虚空に現れたバックパックが床に落ちる。 じっちゃんがさっそくそれをゴゾォと調べる───と、アハァンと艶かしげな声を上げた。 長老 「上げんわ!!」 彰利 「ゲッ……!!」 どうやら心の声が漏れていたらしい……気をつけねば。 長老 「まったく……どういう親友関係じゃ?     おぬしとあの客人とでは性格が違いすぎるぞい」 彰利 「そのアンバランスさが味の決め手なんだ」 長老 「………」 呆れた目で見られてしまった。 彰利 「すんません……妙なこと言わんから結論言って……なにか作れそう……?」 長老 「無理じゃ」 彰利 「即答!?おいおいおいそりゃないでしょじっちゃん!     何か一品くらい作れるっしょ!!」 長老 「無理じゃよ。このおぬしの持っている材料で作れるのは、     せいぜいで聖剣ナマクラーくらいじゃ」 彰利 「へ───?     あぁんもうなんだよじっちゃんも人が悪いなぁ、ちゃんと作れるんじゃん」 長老 「作───待て。     おぬしまさか、聖剣ナマクラーを作れなどと言うつもりでは───」 彰利 「オウヨ!是非作ってくれ!あ、造型は綺麗に作っておくれね!?     見かけはステキでも大した切れ味じゃないのがナマクラってところでいいし!!」 長老 「………」 今度はじっちゃんが可哀相なものを見る目で俺を見た。 ……ヒデェ、こりゃいくらなんでもあんまりだ。 長老 「解った、ええじゃろ。     おぬし、あの客人の親友だというのなら竜族に知り合いは居るな?     いや、おらんでもいい。やらせるからにはそっちも全力を尽くしてもらわねばの」 彰利 「?なんだいいったいやぶからぼうに」 長老 「ふむ……」 じっちゃんは俺のジッと見つめたあと、長い長い立派なお髭をモシャリと撫でた。 長老 「竜の爪と牙と鱗を入手できるか?     本来ならば宝玉系は召喚獣のオーブの欠片がベースにしやすいんじゃが、     そうも言ってられんじゃろ。その三つでなんとかする」 彰利 「へ?……宝玉作ってくれるん!?」 長老 「材料が揃えばじゃ。     ただし、作れたとしてもあの屠竜剣ほどに強力なものはエンチャント出来んぞ。     あの客人が用意したオーブの欠片は規格外の強度じゃ。     どうすればあんな強度と魔力の篭ったオーブが出来るのか知りたいくらいじゃよ」 彰利 「あ〜……」 それってバハムートのオーブのことかね。 そりゃ強い筈だわ、俺じゃあ用意出来ん。 彰利 「あ、ちと待たれよ。     オーブを使用した後ってさ、そのオーブの欠片ってどうなるん?」 長老 「“戦闘開始(セット)”さえ唱えてあれば、     自動的にバックパックに収納されると聞いておるよ。     戦いが終わった後に収納されるわけじゃから、     先に自分の手で入れることも出来るがの」 彰利 「ム……なるほど」 まあいいか、俺が気にしても仕方のないことだ。 彰利 「ンマー、話を纏めるとだ。竜の爪だの牙だのを用意して出来る宝玉の強度は、     前の屠竜剣と同じくらいってこと?」 長老 「それよりちょいと劣るのぅ。     あの時はグリフォンとフェンリルのオーブを使わせてもらったからの。     オーブを使うのと使わぬのとでは、当然差はでるわい」 彰利 「そかそか。でも作れるんだったらいいや、頼んます。     竜の爪とかはなんとかなりそうだから一応用意しといておくれ?」 長老 「……期待しないで待っとるぞ」 彰利 「期待しようよ思いっきり!つーかして!!ね!?     じいさんだからって夢も希望も捨てちゃだめだよ!!」 長老 「べつに希望を捨てたわけじゃないんだがのぉ」 まァともかく竜パーツを揃えればいいわけだ! チョロイぜ!……多分。 ───……。 ……ゴォオオオオオオオ…………!! 彰利 「フ〜〜ア〜〜ムア〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜イ!!!!」 空界、イクスキィ蒼山。 転移した途端に見つけた岩石の上で『我是誰(フーアムアイ)』を唱えた。 きっと世界の中心で愛を叫ぶよりもステキなことに違ェねェです。 ああくそ……!ジャッキーさんたらなんて素晴らしい行動を取ってくれたんだ……!! 彰利 「フッ……!フ〜〜ア〜〜ムア〜〜〜〜〜〜イ!!!!     フ〜〜〜ア〜〜〜ムア〜〜〜〜〜〜〜イ!!!!」 青竜 『やかましい!!』 ガォオオオッ!!! 彰利 「ぎゃあああああああっ!!!!」 あまりに甘美な響きだったので叫びまくっていたら怒られてしまった。 大気を揺るがすこの咆哮……まさに国宝級である。 青竜 『人間!この山になんの用だ!』 彰利 「人間!大儀であった!!」 ズパァン!! 彰利 「はぼぺぇええーーーーーっ!!!!」 山ン本の真似すら満足に出来ず、俺の頬は尾撃によって打たれた。 彰利  「な、なにすんねん!!何の用だって質問に答えなかったのは失礼だったが、      いきなり尾撃はねぇだろ尾撃はよォコラ!!」 青竜  『……?なんだ、貴様は確か王の周りをチョロチョロしていた地界人……』 彰利  「チョロチョロとか言うな竜この野郎!!      俺ゃ斗場さんの周りを駆け回る猪狩じゃねぇぞ!!      で……キミ確かレザードって名前だっけ?」 レザード『ああ。人間、ここになんの用だ』 彰利  「えーとですね、ちょほいとした入用で参った。      今すぐ竜の爪と竜の牙と竜の鱗が必要なんでさぁ」 レザード『───……それは、王に必要なものか?』 彰利  「悠介は直接関係ないな。じゃけんど間接的には大いに関係アリだ。      フフフ、案外彼奴の命を救うことになるやもしれん」 ブチャアッ!! レザード『グクッ……!!』 彰利  「キャーーーアアアアアアアアッ!!!?」 OH!ナマヅメハーガス!! しかも次は鱗を剥いで牙までモギッて……キャアア!! レザード『ッ……持って行け……!!      この程度の痛みが王の明日に繋がるならば安いものだ……!!』 彰利  「ア、アゥワワワ……!!」 な、なんという忠誠心ッ……!! これもあの少年の……悠介の為せる業なのかッ……!! こげな血と肉が付属してる材料持っていったらじっちゃんがなんて言うかッ……!! ……まあ、持っていくけどね。 バックパックを出現させて、竜の爪などをその中に無理矢理ブチ込んだ。 レザード『……ひとつずつでいいのか?』 彰利  「ウィ、個数は言ってなかったからこれでいい筈じゃい。      ほんとはオーブでもあればよかったんだけど」 レザード『オーブか───ふむ。召喚獣は居ないが、別口でなら考えられるぞ』 彰利  「ウヌ!?なにがあるのだ!?」 レザード『人間、【精霊召喚】は知っているか?』 精霊───おお! 彰利  「オウヨ知ってるぜ!って───え?マジ!?精霊居ンの!?」 レザード『居る。属性で言えば、      【地、水、火、風、雷、光、闇、無、然】がある』 彰利  「なんと!!」 オオウ!ビバ・ファンタズィ!? 彰利  「な、なぁなぁなぁ竜この野郎!!精霊ってオイラでも契約出来る!?」 レザード『───……』 彰利  「な、なにかその目はっ!!汚れたものを見る目でオイラを見るなっ!!」 レザード『断言しよう。貴様では無理だ』 彰利  「うわホントに断言したよこの人!───人?」 人じゃないね、うん。 彰利  「まあよいわ!俺がダメだってぇんならみさおさんにでも身に付けさせるわい!      そんで!?その精霊とやらは何処におるん!?」 レザ−ド『聞いたところで会えはしない。精霊は気が(たか)い。      それこそ半端なブレイバーでは姿を見ることすら出来んだろう』 彰利  「ぬぐっ……それってやっぱり悠介に行かせろってこと?」 レザード『王か。王ならば簡単に会えるだろうな。むしろ精霊の方から寄ってくると思う。      空界の精霊は気が昂い分、強者と見ると傍に居たがるのだ』 彰利  「ほへ〜……そうなん」 ……ってマテ。 なんか今、不思議と違和感のある言葉を聞いたような……? 彰利  「あー……ちといいかい?今さ、『空界の精霊』って言ったっしょ?      聞き方によっちゃあ、空界以外にも精霊が居るように聞こえるんですが〜……」 レザード『何を言っている、精霊とは天地空間あらゆる世界に存在する。      いや、そもそも【そこに居る】という固定存在ではないのだ。      勝手きままに存在し、世界の壁をもモノともしない存在。それが精霊だ』 彰利  「なんとまあ……マジすか」 レザード『だが、空界においてのみ───精霊はこの世界にのみ根付いている。      空界に居る精霊はこの世界を好んでいる。      他の世界にも行けるのだが、それを良しとしない』 彰利  「つーことは?」 レザード『ああ。この世界にはほぼ全ての属性の精霊が揃っている。      だからといって貴様が会えるわけではないが』 彰利  「わ、解っとるわ失礼な!!何度も言うなよ虚しいじゃない!!」 しっかし……そいつぁあちょほいと迂闊だった。 どうせならもっと早く教えてくれればいいものを。 そしたら悠介引っ張って、各地の精霊と契約させたのに。 なんかもうここまで来るとどこまで完璧超人になれるか試してみたいんだが。 彰利  「あ、けどどうしても譲れねぇものがあるわ。『闇の精霊』って何処に居る?」 レザード『知ってどうする気だ?どう足掻いても会えるとは思えないが』 彰利  「えーからえーから。一発ドドンと教えてみーな。      『黒』関連は誰にも譲れねェのよ俺ァ。だから教えてたもれ。      その精霊、意地でも俺がモノにしてみせる」 レザード『…………ロジアーテ鍾乳洞へ行け。      その最奥に、闇の精霊シャドウは居る』 ロジアーテって……ああ、あそこかぁ。 よりにもよって……ああ……あそこかぁ……。 レザード『なんだ、その嫌そうな顔は』 彰利  「や……まあその、なんつーか……よりにもよってそこかぁ、って……」 レザード『嫌ならやめろ。どうせ貴様では辿り着けん』 彰利  「ぬぐっ……いちいち突っ掛かる竜だねキミも!      おーしそれじゃやってやろうじゃんか!吠え面かくなよバッケヤラァ!」 さっきから聞いててりゃ『貴様では貴様では』って! 俺がたんなる馬鹿者じゃあねぇことを知らしめてやる!! 彰利 (……まあ、強くなる努力もしてない俺なんぞが     偉そうなこと言える筈もないんだけどさ……) これじゃあまるで『焼きたて!!ジャぱん』の河内じゃねぇか。 最初は努力の人だったのにどんどんとクサレキャラになっちまったあの……。 俺、河内くん好きだったのになぁ……。 少年漫画で『ポップ』と『河内』は抜かせんよね?努力キャラって大好きです。 彰利 「……これは俺が変わるための第一段階だ。     これを乗り越えられなきゃ、俺は本当にダラケちまう……」 思い出せ、ゼノと戦うことは死に繋がるって知りながらも悠介を守ろうと思った俺を。 今だって同じじゃねぇか。 悠介ばっかりが強くなってたからって、俺は全部を悠介に任せちまおうとしてた。 俺がいくら強くなったって悠介の助けにはならないって最初から決め付けてた。 しっかりしろよ、俺……! もっとしっかり前を向いて歩こう。 あいつのことを、胸張って親友だって言えるように───!! 彰利 「ッシャァアッ!!」 バヂンッ、と頬を思い切り叩いて気合を入れた。 それが終わると転移を行使し、ロジアーテ鍾乳洞へ。 いざ───闇の精霊が居るっていう、ロジアーテの最奥へ───! 【ケース73:晦悠介/最先端ヴォトーリ(意味は無い)】 ベリー「じゃがじゃんっ♪」 悠介 「……マテ。いきなりでなんだが、どうしてお前がここに居る」 黄昏の地に寝転がりながらの呟き。 ふと目を覚ませば、 ベリーが仰向けに倒れて眠っていた俺の上にのしかかって笑っていやがったのだ。 ベリー「どうしてって。面白いこと思い出したから悠介誘いに来たのサー。     ってのはどう?今なら漏れなく抽選で、     悠介を意地でも精霊と契約させるぞツアーに連れてってあげる。     つーか拒否無効。意地でも連れてく」 悠介 「言葉の端々に腐るほどの矛盾を感じるが……。     漏れが無いのに抽選で、抽選のくせに俺は絶対に連れていかれて、     拒否も無効で意地でも連れていくことのどこが抽選だって?」 ベリー「細かいこと言いっこ無し無し〜♪     丁度悠介の親友の……なんだっけ?あのツンツン頭」 悠介 「彰利か?」 ベリー「あーそうそう、そんな名前だった。     そのコが精霊の話をしてたのをキャッチしてさ。あ、そういえば、って。     悠介……今のままでミルハザードと戦うのは不安でしょ?     だったらサクッと精霊と契約しちゃいなさいな。     精霊召喚は召喚獣と違って魔力も使わないし、     主と一緒に強くなるタイプだから悠介にピッタリなわけよ。     で?どうどう?今ならお安くしとくよお兄さんッ!このっ!ニクイね!」 ……大まかの話は解ったけど、最後辺りの言葉の意味がまるで解らん。 ベリー「一日なんて始まったばっかりなんだし、黒竜王と戦うって決めたのは明日。     だったら今日をどれだけ足掻こうが悠介の勝手じゃない。     そんなにちくちく自分を追い詰めてないで、     追い詰めるならドバーッと追い詰めちゃいなさいって。ね?」 悠介 「どういう励まし方だよそりゃ……けどまぁ、確かに心許ないのは本当だ。     ソードに言われたよ、今のままじゃ八割方負けるって」 ベリー「でしょうね。わたしもそう思うわ。     だから、そうならないためにも強くなれる内に強くなっときなさいな。     悠介ね、多分自分が三千年以上生きるって自覚が未だに無いわ。     その内にどれだけのことが待っているかなんて誰にも解りはしない。     そんな時に自分が守りたかったものを守れないんじゃあ悠介、     貴方はそこまで生きてきた意味が無い」 悠介 「───……」 ベリー「真面目に訊いたげるけどね、悠介。貴方……なんのために強くなるの?」 ……そんなの決まってる。 悠介 「守りたいものを守るためだ」 ベリー「……そ。じゃあもうひとつ訊くわ。     悠介、貴方はその『守りたいもの』を守るためなら     自分がどうなってもいいって覚悟がある?」 悠介 「ある。そう決めたんだ、当たり前じゃないか」 ベリー「………」 悠介 「……?な、なんだよ」 真剣の問いに対して真剣に答えた筈が、 ベリーはまるでウソを教えられた子供のように悲しい顔をした。 ベリー「……悠介、解ってないようだから言っておいてあげる。     無意識下の戯言は、必ず貴方を滅ぼすわ。     せいぜいそうならないためにも、もっと自分を見つめなさい」 悠介 「───……?」 それだけ言うとベリーは黄昏の虚空に穴を作った。 そこへ入るように指示するベリーに促されるままに穴へと潜る俺だったが。 頭の中はベリーに言われたことでいっぱいだった。 ───……。 ……。 くぐった先にあったのは妙に明るい洞窟だった。 明かりがあるわけでもないのにきちんと見渡すことが出来、 まるで常識から外れたRPGの洞窟のようだった。 そんな景色をどこか呆れた気分で眺めていると、ベリーが先んじて先を促した。 付いてこい、ということらしい。 悠介 「ベリー、ここは?」 先ほどの言葉の意味も知りたかったが、どうせ訊いても答えてくれそうになかった。 そう思った俺は簡単な質問を前を歩くベリーに言ってみた。 ベリー「……呆れた。てっきりさっきの話の続きを聞いてくると思ったのに。     どうしてこう、ぶっきらぼうなくせに気が利くのかなぁ悠介は」 悠介 「気を利かせたつもりなんて無い。けど質問にはきちんと答えてほしい。     どうせさっきの質問は俺への宿題だとかぬかすんだろ、     だったらこっちの方くらい答えろよ」 ベリー「ほんと、こういうとこばっか鋭いくせにねぇ。     なんでさっきの言葉の意味が解らないのか不思議不思議。     ねぇ、悠介って肝心なところでポカるタイプ?」 悠介 「質問の答えになってないが……まぁ、答える気が無いならそれでいい。     ……俺が肝心なところでポカるタイプか、って話だよな。     答えは『はい』だな。我ながらここ一番って時に集中が出来ないわ失敗起こすわ、     今まで生きてきた中で簡潔にコトが運んだ試しは極僅かだ」 ベリー「原因は?」 悠介 「あー……俺と、その周り───になるのかな。特に親友の所為だが」 ベリー「わはー、どうりで。     リヴァイアの工房のデータに『苦労人』って書かれてる理由がちょっと解ったわ」 悠介 「………」 リヴァイアよぅ……お前人のこと影でどういう認識してんだよぅ……。 ベリー「じゃ、話を戻しましょっか。えー、ここはかの有名なドワーフの洞窟。     露明石っていう自然発光する石で出来てる地底の洞窟ナリヨー」 悠介 「ドワーフの……?ここがか」 ベリー「そ。ちなみに無断侵入者には厳しい罰が待ってるからそのつもりで」 悠介 「そうなのか。そりゃ怖いな、気をつけよう」 ベリー「………」 悠介 「………?」 てくてくと歩く。 しかしベリーはポカンと呆れ顔で俺を見たまま後ろ歩きをゴキッ!! ベリー「はくぅっ!!」 悠介 「あ」 後ろ歩きをしていたベリーが出っ張っていた天井に頭をぶつけて奇妙な声を発した。 相当痛かったんだろうか、蹲ってふるふると震えている。 ……アホゥだな。 悠介 「な〜にやっとるんだお前」 ゴインッ!! 悠介 「はごっ!!?」 蹲るベリーに手を貸そうと近づいた途端───…… 何故かタライがゴツゴツした天井から降ってきた。 悠介 「な、なんだこりゃあ!なんでドワーフの洞窟にこんなもんがっ……!!」 ベリー「始まったみたいね……!恐怖のトラップ地獄が……!」 悠介 「───……」 神様、ここにひとり旅人が居ます。 是非とも帰ってきてほしいのですが、どうすれば帰ってきてくれるでしょうか。 悠介 「ってアホォッ!!タライ落としの何処がトラップだ!     こんなもんお笑いにしかならんだろ!!」 ベリー「あぁ悠介、そこ危ない」 悠介 「へ?」 ガコンッ……!!───怒鳴りとともに前へと進めた歩みが、地面の突起を沈めた。 途端……!ザキィンッ!! 悠介 「ホワッ……!!」 横の壁から突き出る槍、槍、槍……!! 俺は咄嗟に奇妙なポーズを取ることでその槍を避けた。 ……言っておくが、奇妙なポーズを取るハメになったのは、 そのポーズじゃなければ避けられなかったからだと断言しておく。 悠介 「ちょ、ちょっと待て!なんでこんな仕掛けが」 ベリー「あ、悠介───そこの壁も」 悠介 「え───だわぁっ!!待った!今の無し!!俺は手ェ着いてな───」 ボタタタタッ!!! 悠介 「ぞわぁああっ!!?」 こ、このザラザラとした感触にひんやりとした温度……そして長い体は───!! 悠介 「へ、蛇ぃっ!!?」 ベリー「あ、その蛇猛毒だから気をつけて」 悠介 「先に言えぇっ!!」 全速力を以って体についた蛇を取り、 見える部分の蛇を取ったことを確認すると次は体を振って背中にある感触を振り払う……! ゴツッ。 ベリー「あ」 悠介 「あ」 体を振る途中、肘が壁に……───ヒィ!!なんかズゴゴゴって引っ込んでいってる!! 悠介 「つ、次はどんな仕掛けが……!?用心しろよベリー!!」 ベリー「……なんだかんだで楽しそうね悠介。顔が笑ってるわよ」 悠介 「馬鹿お前!冒険の罠にトキメかない冒険者なんて居ないぞ!!     ここまで来たらお前、あの仕掛けしかないだろ!!」 ベリー「あの仕掛けって?」 悠介 「決まってるだろ!?アレだよアレ!トラップ名物の───!!」 ドゴォンッ!!ゴロゴロゴロゴロゴロゴロォオオーーーーッ!!! ベリー「キャーーッ!!?なんか来たァーーッ!!」 悠介 「そう!冒険者ならみんなご存知!トラップ名物転がってくる岩ァーーーーッ!!」 ベリー「嬉しそうに叫んでる暇あったら走りなさいよっ!!」 ベリーに促されるままに少し斜面になっている洞窟を駆け抜ける。 その際に様々な罠を発動させて爆発するわ滑るわ刺さるわでもう大変だ。 しかし立ち止まるわけにもいかないので全速力で駆け回った。 悠介 「くっ……!まさかこんな罠が仕掛けられているなんて……!」 ベリー「台詞と表情が全ッ然合ってないわよ!!なによその嬉しそうな声!!」 悠介 「冒険……そう、冒険だ……!俺は忘れていた……この純粋な感動!     守るために強くなることばかりを考えて、     いつしか忘れてしまった純粋に冒険を楽しむ心……!     けどもう大丈夫だ───!俺は思い出したんだ!     ありがとう冒険!ありがとうファンタジー!!」 ベリー「……えーと。納得していいのかな。     今ほど悠介とあのツンツン頭が親友である事実を頷ける瞬間って無いわ」 横から、急ぎながらも呆れた声が聞こえたが知ったこっちゃない。 そこに冒険の心があるなら俺はもう満足だ。 悠介 「ところでベリー」 ベリー「なによっ!」 悠介 「先がもう壁しかないんだが。どうしようか」 ベリー「え───あ、あぁああああっ!!!転移!転移よ!!」 悠介 「転移……?ハッ、これだよ……」 ベリー「なによその疲れたような苦笑と溜め息!!」 悠介 「いいかベリー、こういう場合は実力を行使しなきゃダメなんだ!男失格!死ね!」 ベリー「男じゃないし死ねって言われる覚えも無ければ悠介にそういう言葉似合わない!」 悠介 「ええい黙れ組織の犬め!!脅かされれば逃げる犬で一生を過ごすのか貴様!!     逃げるくらいなら拳を固めろ!!そして殴れ!……骨は拾ってやらん」 ベリー「結局死ねってことなの!?」 ギャースカ喚くベリーを余所に、壁際まで駆け寄ってから振り向く。 あとは─── 悠介 「あー……よしベリー!」 ベリー「な、なによっ!どうするか決まったの!?」 悠介 「それがさっぱりだ。     こういう場合、一緒に居るヤツが起死回生の名案を出して助かるのが王道なんだ。     だから何か名案を出してくれ」 ベリー「わたしにとっての『一緒に居るヤツ』が悠介だってこと     まるっきり度外視しないで欲しいんだけど!!?」 悠介 「それもそうだな。     じゃあアレだ、危機になった時に誰かが助けてくれる王道」 ベリー「誰かって誰よ!」 余裕が無くなってきてるな。 全速力で走ってきたから丸岩もまだ来ないってのに。 ベリー「大体こんな時に都合よく助かる道とか助けとかが来るわけが───あぁっ!     あんなところにロープが!!」 ベリーがズビシィと指差した洞窟の隅の方には、 上の方へと続いている穴と、そこから垂れているロープが。 それを確認した途端にベリーは我先にとロープをギュッと握り締め、 昇っていこうと───ガコォッ!ドチャチャチャチャッ!! ベリー「キィイイイイヤァアアアアアーーーーッ!!!?」 ……ロープがベリーの重さに引っ張られた途端、穴から蛇が落ちてきた。 どうやらただ罠だったらしい。 悠介 「すごいな、お前の言う通りだ。     こんな時に都合よく助かる道だの助けとかだのは来ないな」 ベリー「そんなことで褒められてもちっとも嬉しくないわよ!!」 悠介 「あー……落ち着け、まず落ち着け」 体に蛇を纏っているベリーは完全に混乱してる。 どうやら重なる物事に余裕が無くなったらしい。 悠介 「で、考えたんだがさ。      べつに逃げるまでもなくあの岩を破壊すればよかったんじゃないか?」 ベリー「ここにある露明石は魔導や式を霧散させるから無理!     破壊なんて出来ないわよ!できたらなんのためのトラップだか解らないでしょ!」 悠介 「ここで逆ギレされても困るんだが。そもそもそれじゃあ転移も出来ないだろ」 ベリー「き、気が動転してて忘れてただけよ!」 悠介 「あーほら深呼吸〜。いつもみたいに冷静に人を見下しまくって胸張ってろたわけ」 ベリー「危機的状況でひとり冷静な冒険者ってやたらハラ立つわよね……!!」 冷静っていうより、楽しんでるだけなんだが。 悠介 「壁に仕掛けは───なさそうだな。いよいよもって死ねってことか?」 ベリー「すーはーすーはー……───ん、よし。少しは落ち着いたわ。     仕掛けっていっても見ただけじゃ案外解らないものよ、じっくり探しましょ」 悠介 「そうは言ってももう岩石が目の前に迫ってるんだが」 ベリー「なんでわたしにばっかり優しくないのよこの洞窟!!     探すのよ悠介!仕掛けを!探しなさい!!」 悠介 「落ち着けって。ほらよく見ろ。     岩が転がってくる面積に対して、洞窟の奥は左右が広くなってるだろ?     ようはそこに隠れればいいんだ」 ベリー「あ───そ、そっか」 素直にポムと手を打ったベリーは早々と洞窟の隅に身を置いた。 が───ガコンッ! ベリー「あれ?なんか踏んだ───んきゃっ!?」 なにか踏んだと言ったベリーの体が、 壁から瞬時に突き出た岩に押されドゴシャアアアアアンッ!!! ベリー「ほぎゃああああああーーーーーーーっ!!!!!!」 あ……潰れた。 押されたのと同時に転がってきた岩の玉が、ベリーの体を……お? ベリー「はっ……はっ……!!」 おおう……ベリーのヤツ、咄嗟に跳躍したようで、 天井と岩玉のギリギリの境で荒い息を吐いてる。 どうやら助かったらしい。 悠介 「やったな!仕掛けを発見出来たじゃないか!」 ベリー「そ、それだけかぁああーーーーっ!!!!     言いたいことはそれだけかぁあああああーーーーーーっ!!!!!     発見した所為で死にかけたわぁああーーーーーーーっ!!!!!」 緊張と興奮と焦りのあまりか、口調が漢らしくなっていた。 軽い冗談だったんだが……。 悠介 「わ、悪い……怒るな。ほら、降りてこいって」 ベリー「うぅう……怖かったよぅ……」 悠介 「───……」 大人なんだか子供なんだか解らないな、ベリーって……。 外見は子供っぽいのだが、性格は……子供だなぁ。 解らん。解らんが、これでリヴァイアの祖母っていうのはかなり間違っている気がする。 悠介 「でだ。一応俺の方にも仕掛けがあって、今さっき隠し通路が発見出来たわけだが」 ベリー「ワタシイマトテモアナタヲコロシタイネー」 悠介 「落ち着けって言ってるだろ。     第一、こんな目に合うって解ってるのに俺をここに連れてきたのはベリーだろ?」 ベリー「うぐっ……」 悠介 「解ったら行こう。転移が出来ないっていうなら、     ここを攻略しないと出られないってことじゃないか」 ベリー「……創造の理力は使えるんだから、ブラックホールでなら逃げられるけど」 悠介 「お前は……俺と精霊を会わせたいのか逃げたいのか、どっちだよ」 ベリー「言ってみただけよ。さっさと行きましょ」 余裕を取り戻したらしいベリーが開いた隠し通路をズカズカと歩いてゆく。 しかし見えている耳は真っ赤で、 冷静に努めることで情けない自分を忘れようとしているようだ───ガワァンッ!! ベリー「へきゅっ!?」 悠介 「あ」 闊歩するベリーの頭にタライの一撃が。 どうやら罠が終わったと安心させておいて、ダメ押しの一発を決める仕掛けだったらしい。 頭とタライが強烈な邂逅を為す中、俺は…… ただ倒れてゆくベリーを、顔に手を当てて溜め息をつくことで見送ったのだった。 Next Menu back