───FantasticFantasia-Set33/地の精霊ノーム───
【ケース74:弦月彰利/ロムスカ・パロ・ウルラピュタ=ムスカくん(意味は無い)】 コーーーン……コォーーン…… 相変わらず嫌な音を鳴らす、精神の場に近い鍾乳洞を歩く。 さっきから俺の思想が具現化されまくっているが、俺はそれでも無視して歩いている。 大体コツが掴めてきたよ、こりゃあいい方に想像を傾けりゃあいいんだ。 たとえばミノタウロスが出てきたら牧牛にイメージを変えてやれば、 きっちりと変わってくれる。 元々難しい頭してないんだから、考えれば考えるだけ繁栄されるのは当然だった。 彰利 「フッ……見切ったぜアロマタクト……って、もういい加減このネタも飽きたよ俺」 しかもアロマタクト関係ねぇ。 彰利 「しっかし深いなオイ……どこまで進めば果てがあるんだ?」 歩けど歩けど鍾乳洞。 蝙蝠が居たり半漁人(サハギン)
が居たりリーチが居たりと賑やかなことだが、中々に果てが見えん。 まあ襲い掛かってこない分にはありがたい。 彰利 「じゃけんど……」 実際、俺は会ってもらえるんじゃろか。 レザード殿の言うことが事実なら、 俺じゃあブレイバーランクが足りなくて会ってもらえねぇかもしれん。 せめて出現するような祭壇とかを見つけられれば、 いろいろと実力行使も出来るんだけどなぁ。 彰利 「ズンズンズンズンズンズンズンズン♪ズンズンズンズンズンズンズンズン♪     アパポレマーーーーーーーーーッ!!!!」 行けども行けども似たような景色にうんざりした俺は、自分でもよく解らん奇声を上げた。 すると一斉にオイラを睨むサハギンども。 彰利 「アイヤーーーッ!!?」 なんだかとっても馬鹿なことをした気がしました。 しかもいっぺん驚くと思考ってのは厄介なもので、 驚いた相手を鮮烈にイメージしちまうためかどんどんとサハギンが出現する。 オウシット!なんてこと!!落ち着け我が心! 彰利 「よ、よし!思考展開といったら悠介だ!     ここは悠介の真似をして───イメージ、怠惰にて解放!お弾けなさい!」 咄嗟に纏めたその場限りのイメージを弾けさせる。 じゃけんど……ラグナロクとは違い、ここは俺の心を具現化しちまう場所なので イメージを弾けさせたところでどうにもならんかった。 つまりイメージを弾けさせるんじゃなくて、むしろ維持したままで居なければならない。 ……よし無理!俺、ひとつのこと考えたままなんて───い、いや否!!断じて否!! 思い出せ俺!あの美しかった高校生活!粉雪と愛を語り合ってからの俺を! 彰利 「ボ、ボーイズビー!!」 ───その時、俺の中で何かが弾けた。 ゆっくりと染み渡る愛はまさに無限……。 心から溢れる思いがゆっくりと思考を満たしてゆき、 それが繁栄されてサハギンの群れが粉雪の姿に変わる頃───ボゴシャア!! 彰利 「ネーヴェ!!」 一匹残ってた本物のサハギンに殴られました。 彰利  「な、なにしやがるこの魚野郎!!」 サハギン「ケァアッ!!」 サハギンが襲い掛かってきた! コマンドどうする!? 彰利 「あ、まずは“戦闘開始(セット)”」 これで安心♪ コマンドどうする!? 1:愛を語る 2:人の道を教えてやる 3:冥土の土産にいいものを見せてやる 4:キン肉星王位を永久のものとするためにも邪魔者は灰にする 5:愛と友情と正義の7000万パワーを全開 結論:……6を作成。いろいろ。 彰利 「マッスルリベンジャーで叩き潰す……!!」 ドゴシャッ! サハギン「ケアッ!?」 彰利  「トアァアーーーッ!!!」 まずは小さく跳躍し、サハギンの肩に乗っかったのちに跳躍。 やがて重力が俺を地へと誘う頃、俺は頭を下にした状態で体に回転を加えて落下する!! 彰利 「その賢いオツムを快適に破壊してやるーーーっ!!」 ゴォオオオッ───ドゴシャァォオオオンッ!!!! サハギン「ギャーーーッ!!!」 捻りを加えた偽マッスルリベンジャーがサハギンの顔面にクリティカルヒット! だが───これで終りではない! 彰利 「もう逃れる方法は無いぞ……!トドメを刺してやる!!いけぇええーーーっ!!」 サハギンを羽交い絞めにして跳躍すると、そのままの状態で再び頭を下にして落下する! 彰利 「あの世へ送ってやるのよォッ!!」 ゴォオオッ───ドゴチャァアアッ!!!! サハギン「ゲキャアアーーーーッ!!!」 鍾乳洞の硬い岩盤にサハギンの頭が突き刺さる。 だがサハギンの野郎はまだ塵にはならない……ぬう、大した生命力よ。 仕方ない─── 彰利 「冥土の土産にお前にいいものを見せてやる!!」 岩盤にサハギンを突き刺したまま、 俺はサハギンの周りを残像すら出るほどの速度で闊歩し始めた。 が、あまりにも意味がなかったのでさっさと技に入ることにする。 残像とともに突き刺さったサハギンに襲い掛かり、 頭を地面から引っこ抜くとともに足で宙へと誘う! 利目せよ!これこそが─── 彰利 「キン肉族三大奥義のひとつ!!マッスルインフェルノォーーーッ!!!」 シュゴォオオオッ!!ドゴォオオンッ!! サハギン「ゲギャアアッ!!」 今度は鍾乳洞の天井にサハギンを突き刺す! だが刺さりどころが悪かったのか、案外簡単にサハギンの頭は抜けてしまった。 彰利 「ム!」 さらに、塵にならないことに驚きを隠せなかった俺は、 落下してゆくサハギンの先へと転移して構える。 彰利 「キン肉星王位を永久のものとするためにも!邪魔者は灰にするのだァッ!!」 やがて落ちてきたその頭に頭突きをキメて、再び宙へと舞い上がらせる。 それを数度繰り返したのちに大きく跳躍し───ガシッ!ガキィンッ!! 彰利 「トドメだ!マァッスルリベンジャァアーーーッ!!!」 サハギンの両手両脚を極め、そのまま落下する! もはや逃れる方法は無ぇぜ〜〜〜〜っ!! ゴォオオッ───ドゴシャアアッ!!! サハギン「───!!」 三度目だろうか。 ともかく地面に突き刺さったサハギンはどういうわけか塵にならず、 キン肉族の奥義が馬鹿にされたようで悔しかった俺は、最高峰で滅ぼすことにした。 彰利 「いくぜサハギン!!愛と友情と正義の!!」 刺さったサハギンを強引に宙に放り投げ、それを追って飛ぶ。 なんかもういろいろと解説が面倒なので以下略!! ガッ!ガッ!ガッ!ガキィインッ!! 彰利  「7000万パワーッ!!マッスルスパァーーークゥッ!!!」 サハギン「ギャーーーッ!!!」 サハギンの首、足、手を極めると、サハギンが口から血を吐いた。 おお、なんと演出上手な漢ぞ……!! 彰利 「長かった……本当に長かった戦いよ、さらば!!」 ドゴチャァアッ!! サハギン「ヘギュッ!!」 俺はブリッジした状態でサハギンを掴み、一気に地面に叩き落とした。 すると───サラサラと塵になってゆくサハギン。 どうやら昇天してくれたらしい。 彰利 「これで完全勝利だァッ……!!」 グワシィッと拳を握ってみせるが、 マッスルスパークのあとにこの勝利セリフはあまりにも似合わなかった。 でもしょうがあるめぇよ、 『これからは、お前も私の大切な家族の一員だ』って言おうと思っても 相手が塵になっちまったんじゃあ抱き上げることも出来ん。 彰利 「……無駄な時間を過ごした気がする……」 ……行きますか。 ここでこうしててもしょうがなかろうもん。 俺はその場にいっぱい居る粉雪の幻影に手を振りながら、その場をあとにした。 【ケース75:晦悠介/精霊情報のアレコレ】 ゴコォオオンッ…… 悠介&ベリー『だはぁ……っ!!』 幾つ目かの隠し扉が開き、開けた場所に到達するとともにベリーがドシャアと倒れた。 どうもこうもない、罠が多すぎたんだ。 侵入者排除にしたってこりゃあやりすぎだ。 悠介 「で、ベリーさんよ。ここがドワーフの里か?」 ベリー「……だわね」 モシャアと溜め息を吐くベリー。 俺は全然だが、ベリーは疲れきっているようだった。 悠介 「お前さ、研究とかにかまけて運動不足なんじゃないか?     死にかけとはいえ、赤竜王の力を手に入れたってのにそりゃないだろ」 ベリー「悠介が異常すぎるのよ!!」 そうか?普通だと思うんだが。 ベリー「大体ねぇっ……確かに赤竜王の力は手に入れたけど、     それってもう随分昔の話よ……!とんでもない魔力は手に入ったけど、     一緒に身体能力を向上させようなんて修行はしなかったもの……!」 悠介 「なるほど、つまりお前はブレイバーよりもメイガスを目指したと」 ベリー「そういうことっ!体力に自信なんてないわっ!」 そこで威張られても対処に困るんだが。 悠介 「ここで休んでるか?だったら俺はドワーフに剣のことでお礼を言いにいくけど」 『だったら』って言うまでもなく、お礼をしには行くんだが。 ベリー「あぁあ、待った待った、行くってば。まったく、気の利かない男って嫌ね」 悠介 「誰がお前なんぞに気を利かせるかたわけ。     言っておくけどな、俺はお前にフェンリルとグリフォンを     勝手に融合させられたことを許したわけじゃないからな」 ベリー「まだ言ってる。なに、悠介って案外根に持つタイプ?」 悠介 「否定しない───っていうよりこういう現状があるんだ。     否定なんて出来ないし、してやりもしない」 ベリー「ふぅん……そっか。じゃあ尚更、精霊と契約しなくちゃね」 悠介 「……?なんだよそれ」 ベリー「『融合したもの』を切り離すなんて馬鹿げたことが出来る精霊が居るってこと。     その精霊と契約出来れば後悔みたいなものも消えるでしょ」 悠介 「───……」 ベリー「……?なに、ヘンな顔しちゃって。もしかして信じてない?」 悠介 「あ、いや……ああ、そうかもしれない。正直信じられない。     融合したものを切り離すなんてこと、本当に出来るのか?」 ベリー「出来る精霊が居るのよ。ううん、出来ないことなんてそうそう無いわ。     精霊『スピリットオブノート』。『無の精霊』って意味よ」 悠介 「無の……精霊……?」 ベリー「知っての通り、精霊っていうのは四大元素から始まる様々な属性の精霊が居る。     空界に居るのは『地、水、火、風、雷、光、闇、無、然』の九つの精霊。     『地』の精霊ノーム、『水』の精霊ウンディーネ、『火』の精霊サラマンダー、     『風』の精霊シルフ、『雷』の精霊ニーディア、『光』の精霊ウィルオウィスプ、     『闇』の精霊シェイド、『無』の精霊スピリットオブノート、     そして『自然』の精霊───『然』の精霊ニンフ。その九つよ」 悠介 「………」 精霊か……またファンタジーっぽい名前が出てきたものだ。 でも───いや、でもじゃないな。 だからこそ、だ。 フェンリルとグリフォンを自由にすることが出来るなら、 契約したいって気にもなってくる。 悠介 「で、そのスピリットオブノートってのは何処に───」 ベリー「焦らないの。なんの精霊とも契約してない状態で行ったところで、     門前払いで追い返されるだけだわよ」 悠介 「……そうなのか?」 ベリー「精霊って規律だのを重んじるからね。     その代わり契約しちゃえば心から付き合ってくれるわよ」 悠介 「そ、そっか。でさ、ひとつ訊きたいことがあるんだが───」 ベリー「ん?なに?」 悠介 「……闇の精霊の名前、シェイドなのか?     もしかしてあの能天気暇死神が精霊だなんてことは……」 ベリー「まさか。同じ名前だけど全然違うわ。     人見知りはするわ選り好みするわ、もう我が儘し放題な精霊ね。     ただ───強いのは確かよ」 悠介 「……そっか、闇っていうくらいなら案外彰利に似合ってるかもな」 ベリー「彰利……ああ、あのツンツン頭?冗談でしょ、あの男じゃ絶対に契約出来ないわ」 ───へ? 悠介 「ちょ、ちょっと待った。なんだよそれ、どういう意味だ?」 ベリー「……いい?精霊っていうのはね、『契約』っていうものを本当に大事にしてる。     相手を認めた上で契約するっていうことは、     『一緒に強くなろう』って意味も含まれてるの。解る?」 悠介 「ああ、それは解る。でもそれだったら誰だって───」 ベリー「ダメよ。だってあのツンツン頭、『強くなろう』って気が無いもの。     『自分以外の力』だけをアテにして、     贈られる力を自分の力だって勘違いしてる人に精霊は力を貸さない。     『一緒に強くなりたい』とか『一緒に居たい』っていう思いが、     『契約』って言葉の中にはたくさん混ざってるのよ。     それがなに?『黒に近いから欲しい』だなんて。     そんな考え方じゃあ絶対に契約なんて出来ないわよ」 悠介 「……あの馬鹿」 言われてみて『そりゃそうだ』って思っちまった。 あいつは修行には付き合ってくれたが、どれも本気じゃなかった。 『自分の力じゃ黒竜王には太刀打ち出来ない』って決めつけて、 行動の全てに本気が見れなかったんだ。 でもそれは仕方ないのかもしれない。 あいつが強くなった理由は俺の未来を守りたかったからであり、 既に未来を築くことが出来た今の時間軸では、強さを望む理由は正直無い。 彰利はこの空界に直接関係なんて無いし、俺に付き合って残っているだけだ。 ……あいつには戦う理由が無い。 それが解ってしまったら、本気じゃない理由は簡単に解ってしまった。 悠介 (精霊の力を手に入れようとするのは、そう思っちまう自分への誤魔化しかな) ……まあ、あいつらしいって言えばあいつらしいな。 俺は小さく苦笑するとともに息を吐いて、ポムとベリーの頭を叩いた。 ベリー「悠介?」 悠介 「あいつのこと、あんまりひどく言わないでくれ。     あいつは無意識に俺に付き合おうとしてくれてるだけなんだ。     何が悪かったわけでもない。ただあいつが歩んできた道が酷すぎたんだ。     今は『自分自身の生き方』っていうのに戸惑ってるんだと思う。だから───」 ベリー「甘やかさないの。それは人として出来て当然のことでしょう?     親友である悠介がそれを甘やかしたら、     いつまで経ったって意識が成長しないわよ。     今のツンツン頭の精神は大人ぶってる子供と同じよ。     だから、一度ガツンとショックが必要なのよ」 悠介 「……それが、闇の精霊との衝突か?」 ベリー「衝突以前に会えないだろうけどね。さ、解ったらさっさと行きましょ」 悠介 「遅れてるお前に言われたくない。とっとと歩け」 ベリー「むぐっ……もうちょっとやさしくしてよね。     これでもわたし、悠介のこと気に入ってるのよ?」 悠介 「俺は嫌いだ」 ベリー「情報提供してあげたのに?」 悠介 「情報だけであいつらが戻ってくるかたわけ」 ベリー「うう……」 しょんぼりのベリーを見て、溜め息を吐いたあとに歩いた。 ……その、なんだ。ベリーの手を引いて。 ベリー「悠介?」 悠介 「一日は待っちゃくれないんだ、歩け」 ベリー「むう……」 悠介 「───……それと。もう勝手にあんなことしないって約束しろ。     確かにバハムートの力が無けりゃあ黒竜王には勝てないかもしれないけど、     グリフォンとフェンリルの了承も無しに融合させたことは本気で怒ってるんだ」 ベリー「う…………ぅ……ご、ごめんなさい……」 悠介 「謝る必要なんてない。約束してくれればそれでいいさ。     ただし、約束破ってまたああいうことするんだったら本気で怒るぞ」 ベリー「う〜……解ったわよぅ……」 悠介 「……はぁ」 再びしょんぼりのベリーを引っ張りながら歩く。 しおらしくしてれば普通の女の子って感じなのにな、こいつは。 って……なんで俺、保護者みたいな思考展開してやがるんだ? ……まあ、いいか。 悠介 「ところでさ。訊きたいことがあったんだが───     火の精霊ってサラマンダーなんだよな?」 ベリー「うー……そうよ?それがどうかした……?     わたしなんかに何が訊きたいっていうのよぅ〜……」 悠介 「いじけるな馬鹿。……火の精霊ってのはイフリートじゃないのか?     それがちと疑問に残ってたんだけど」 ベリー「む」 明確な質問をした途端、ベリーの目に輝きが灯った。 これは───ああ、あれだ。説明好きの目だ。 ベリー「ふふふふふ……いい質問ね!上等だわ!」 落ち着け、ここで上等は関係ない。 と言おうと思ったが、既に目が危ないのでやめておいた。 ベリー「い〜い?イフリートっていうのはね、火と風から創造されたっていう精霊なの。     確かに基本的には火の精霊で、サラマンダーと似たような存在だけどね。     ほら、地界で言う『魔法のランプ』ってあるでしょ?     あれの中に居る魔人とも似たような存在よ。     空界では逆に召喚獣側として考えられてるわ」 悠介 「そうなのか」 ベリー「そ。男型をイフリート、女型をイフリータって呼んでね。さ、他に質問は?」 悠介 「………」 うずうずした様子でそう訊いてくるベリー。 ……教えたいのだろうか。よく解らん。 悠介 「じゃあ、ニンフって精霊のことを聞かせてくれ。     ニンフってのはウンディーネの中世での異称じゃなかったのか?」 ベリー「そうね。ニンフっていうのは存在自体の名前じゃないのよ。     複数からなる美しい女性の姿の精霊をそう呼んで、     住む場所によって呼び方が違うって云われてる。     海のニンフをネレイド、水のニンフをナイアード、木のニンフをドリアード、     山のニンフをオレアード、森のニンフをアルセイド、谷のニンフをナパイア。     自然の精霊ってだけあって、自然の象徴たる場所にしか存在しないわ」 悠介 「みんな女性の姿の精霊なのか?」 ベリー「そうよ。どういうわけか女性の姿なのよね。不思議だわ」 確かに不思議だ───ってマテ。 ちと疑問に思ったんだが…… 悠介 「なぁベリー?それだけ居るならさ、     俺達が会うことになるニンフってどの精霊なんだ?」 ベリー「いい質問よ!」 悠介 「うおう」 ズビシィと、立てた親指を近づけるベリーから少し引く。 が、そんな俺に構わずさっさと喋り始めるベリー。 ベリー「悠介が契約するニンフは───はっきり言って全部」 悠介 「無茶言うなばかっ!!」 たわけたことを言うベリーに怒号一閃。 ベリーは肩を跳ねらせると、カタカタ震えながらやがて叫んだ。 ベリー「ばっ……!?ば、ばかって……ばかって言ったーーーっ!!     なによぅ!なにが不満なのよぅ!!!」 悠介 「だぁっ!ルナみたいな喋り方するな!」 ベリー「え?だってそしたら好きになってくれるかなーって」 悠介 「かっ……!さっきから喋り方が変だって思ったらそういう魂胆か!     ってそんなことはどうでもいい!!     なんだって全部のニンフと契約する必要があるんだ!?     そもそもニンフが納得するのか!?」 ベリー「するわよ?というよりも、もう悠介以外とは契約しないと思う」 悠介 「へ───?」 マテ、なんだそりゃあ。 悠介 「アノ、ベリーサン?     俺、ソウユウフウニ言ワレルヨウナコトヲシタ覚エガ、テンデ無イノデスケド?」 ベリー「したわよ。どう足掻いたって悠介はもうニンフ達に認められてるんだから。     しっかりと契約して一緒に成長しなさいな」 悠介 「あ、いや、しかしなっ……!!」 ベリー「質問タイムしゅーりょー!さ、行くわよ悠介!」 悠介 「遅れてるのはお前だと言ってるんだけどな」 ベリー「むぐっ……!!と、とにかく!質問なんてもう無し!解った!?」 悠介 「はぁ……わぁったよ、いいから歩けたわけ」 ベリー「うー!!」 何気ない会話の中に、『汝ボケ者宣言』が含まれていたのを感じた。 ……訊いても無駄か。 だったら早くドワーフに挨拶しに行こう。 ───と、その前に。 悠介 「そうだ、ベリー。これが最後の質問で構わないから答えてくれ」 ベリー「むぅ……なにさ」 悠介 「ふてくされるな。答えてくれればすぐ済む質問だ。     バハムートの話なんだけどさ、前に───四つの竜王の珠を融合させた時は、     同じく融合した飛竜の意識はディルのものだった。     じゃあ、バハムートの場合はどうなるんだ?あいつは誰の意識が───」 ベリー「───」 悠介 「……?おい、どうしてそこで固まるんだよ」 ベリー「や、なんでもない。え〜とね、一度しか言わないからよ〜く聞くこと」 悠介 「……あ、ああ」 なにやらやたらと真面目な顔をしたベリーがズイと顔を近づける。 俺の目の前に立てた人差し指が、何気なく『説明しますって』意気を物語っていた。 ベリー「あのね、リヴァイアサンとベヒーモスは雌雄的な存在。これは解るわよね?」 悠介 「ああ、一応」 ベリー「よろし。で、そんな二体で一体みたいな存在はね、     融合させた時点で意思が生まれちゃうもんなのよ。     誰かと誰かが合体すると自信に満ち溢れて偉そうになる〜とかの究極系ね。     名前つけさせた時点で解らなかった?     あのコはもうリヴァイアサンでもベヒーモスでも、     フェンリルでもグリフォンでもない。バハムートっていうひとつの意思なのよ」 悠介 「……待ってくれ。じゃあ融合させられたやつらの意識はどうなるんだ」 ベリー「消えるわけじゃないわ。ただ深淵に追い遣られるだけ。     だからスピリットオブノートの力で融合を解いたら、     ちゃんと以前の状態に戻れるわよ」 ……そっか、なんか安心した。 そうだよな、融合したからって───それが犠牲に繋がるわけじゃない。 それさえ解れば俄然やる気も出るっていうものだ。 悠介 「───うん。よし、行くぞベリー!早く契約していこう!」 ベリー「そうね、パパっといきましょ、パパッと」 悠介 「……言葉の割に足が遅いのは仕様なのか?」 ベリー「仕様とか言わないでよね……」 ───……。 ざわざわざわ…… 悠介 「………」 ベリー「んー……注目されてるわね、悠介」 悠介 「わざわざ言わないでくれ……これでも気にしないように努めてるんだ……」 さて、ドワーフの里の中腹。 口調の割に疲れてるベリーを引きずりながら歩いてきたその場所で、 俺は───というか俺の背にある真・屠竜剣は注目を浴びていた。 さすがにドワーフともなると、 見ただけでそれがどれほどの業物であるかどうかくらい解るようで、 実際にかなりの希少金属や素材で錬成されたこの剣はかなり目立ってしまうようだった。 悠介 (もちろん、じいさんの腕があったからこその名剣だけど) あのじいさんの腕は本当に凄い。 弟子───って言えるのかは疑問の範疇のロッタは別として、あの腕は相当だ。 遙か昔に無くなったっていうオリハルコンを しっかりと剣に変えてみせたのには本当に驚いたもんだ。 と───そんなことを考えているとドワーフで出来た人垣が割れ、 奥からゆっくりと老人のドワーフが歩いてくる。 なんていうか……一目見て、『ああ、ドワーフだ』って思えるようなヒゲをした老人だ。 だから思わず、 悠介 「白い髭が似合ってるな、本当にドワーフって感じだ」 なんてことを言ってしまった。 するとじいさんは『ほっほ』と笑い、返してきた。 老人 「そういうお前さんはモミアゲが似合っとるのう」 悠介 「是非ともほうっておいてくれ」 実にショックだった。 教訓。たとえ頭に浮かんだ言葉でも、相手の第一印象を口に出すもんじゃない。 そうじゃないと、 ドワーフに囲まれた状態でヒソヒソと『モミアゲモミアゲ』言われまくるから。 悠介 「あぁ……その。出来ればモミアゲのことには触れないでくれ。     それと剣のことで世話になった、ありがとう」 ベリー「何気にモミアゲのことを本題にして剣のお礼をオマケにしてるわね」 悠介 「やかましい!     何処に行ってもモミアゲモミアゲ言われる俺の気持ちも汲んでくれ!!」 ベリー「じゃあ切ればいいじゃない」 悠介 「う、うるせぇ!     モミアゲが無い俺なんて俺じゃないって言われた俺の身にもなれよ!」 ベリー「……どうしろってのよ」 悠介 「そんなこと俺の方こそ訊きたいわ……!!」 何が悲しくて、ファンタジー世界でモミアゲモミアゲ言われて旅せにゃならんのだ……! 俺だって好きでそう呼ばれてるわけじゃないってのに……! と、怒りが頂点に達しようとした時、 じいさんが落ち着いた穏やかな表情で言葉を切り出してきた。 老人 「さて、客人よ。望んでいたものはちゃんと完成したのかの?」 悠介 「あ───ああ、完成した。今俺が背負ってるこれ───この剣だ」 そう言うと、俺は背中から剣を鞘ごと取り外してじいさんに見せた。 するとじいさんは感心したように頷くと、また『ほっほ』と笑う。 老人 「うむ、見事なもんじゃな。これぞまさしく『剣』という出来栄えじゃ。     このドワーフの村の連中がどれだけ頑張ろうと、これだけのものは作れんわ」 悠介 「そうなのか?」 驚いた。 やっぱすごいんだな、あのじいさん。 そういえば、かつては名工って云われてたって言ってたっけ。 老人 「ふむ……ヌンッ!!」 悠介 「うおっ!?」 いきなりのことで驚いたが、目の前のじいさんは屠竜剣を手に目をクワッと見開いた。 しかしそれは一瞬のことで、すぐにもとの表情に戻ると─── 老人 「ふむふむ、屠竜剣か。それも相当の希少金属で錬成されておる。     この輝きにこの軽さ、さらにこの鞘の色の出し方は───     オリハルコンとともに珍しいものの素材を使った証拠よの」 悠介 「え───わ、解るのか!?」 老人 「ドワーフ族はこと武具に関しては空界の頂点に立つ者ぞ。     これくらいの鑑定眼は、持っていて当然よな」 悠介 「はぁ〜…………」 感心、と言うべきか驚愕と言うべきか。 老人 「まあ積もる話もあるじゃろう。     どれ、ワシの工房に案内しようかの。よい茶を入れよう」 悠介 「是非───って言いたいところなんだけどさ、ちょっと急いでるんだ。     実はここに来たのは屠竜剣のことでお礼を言いに来ただけじゃないんだ」 老人 「む?というと?」 歩き始めていたじいさんが歩みを止めて、 俺に向き直るのを確認するとゆっくりと口を開いた。 悠介 「この場所に居る精霊と、契約をしに来たんだ。     どこに居るのか、教えてもらえないだろうか」 老人 「───……よいじゃろ、ついてこい」 悠介 「へ?」 なんだか拍子抜けというか毒気抜けというか。 てっきり根掘り葉掘り訊かれると思って構えていた俺は、なんだかガクッと来た。 悠介 「え……な、なんでだ、とか訊かないのか?」 老人 「人を見る目くらい持っておるわい。     それに、おぬしは人には厳しいがこの世界にはやさしそうじゃ。     例えば───人には好かれないくせに、亜人やら竜族やらに好まれるタイプよの」 悠介 「………」 当たってるし……。 俺って案外解りやすい性格してるのか? ……いや、性格問題じゃないだろこれは。 悠介 (───っと、考え事は後だ後。今はじいさんを見失わないようにしないとな) とっとと先へと行ってしまうじいさんを追うように、俺とベリーは歩き出した。 さて───精霊っていうのはどういうヤツなのか─── 【ケース76:晦悠介(再)/精霊、ノーム】 ───ゴゴッ……コォオオン……!! 岩で出来た扉が重苦しい音を立てて開いた。 その先には大きな聖堂のようなものがあり、 中心にある石碑のようなものには地上からの光が差し込んでいた。 ベリー「うわぁ〜……精霊の祭壇を見るのはわたしも初めてだけど。綺麗なもんなのね〜」 ベリーの言うとおりだ。 岩を削って作った聖堂なんだろうが、造型の細部に至るまで見事としか言えない。 特に光に当てられた石碑が驚くくらいに神秘的だった。 老人 「さ、あの石碑の前に立ちなされ。     おぬしが真に強者なのであれば、精霊はその姿を見せるじゃろう」 じいさんが屠竜剣を差し出しながら言う。 俺はそれを受け取りながらゆっくりと頷いて、石碑の前へと歩いてゆく。 ベリー「わたしも行っていい?」 老人 「ダメじゃ」 ベリー「あん、いけずぅ」 わざと変な声を出すベリーを完全に無視ることで、石碑の前へと立った。 悠介 「───うわ……」 知らず、声が漏れる。 その大きな聖堂と、天井よりももっと先の空から差し込む光の眩しさに。 そうして、緊張していた心がやんわりとほぐされた時だった。 声  『なんだオマエ。オイラと契約したいってかー?』 ……声が聞こえた。 不覚にも『オイラ』って言葉にどっかの誰かさんを連想してしまったが、 ここは気にしないように努めるとしよう。
彰利  「にぃっきしっ!!じゃっしゃーーーいっ!!      ───だ、ダレ!?オイラの噂してるのは!うっかりくしゃみしちまったがよ!      や、まいったねぇ、モテる男はこれだから困る」 サハギン『ボンゲェエエエーーーーーーッ!!!!』 彰利  「キャーーーッ!!?」
───視線の先、天井から差し込む光の柱の中心にポツンと浮かび上がったのは、 まぎれもなく人にあらざる者だった。 悠介 「お前が……」 精霊 『オイラかー?オイラ精霊ノーム。     なんだお前ー、そんなことも知らずにここに来たのかー』 悠介 「いや、知ってたけど。そんなことくらい悟れ、たわけ」 ノーム『なっ───てっぺんきたーーーっ!!見せたるオイラの百万馬力!!』 ノームはやる気だ!! 悠介 「落ち着け、まずは話をだな───」 ノーム『かかってこいこのモミアゲー!!そのセクシーなモミアゲ、ぶった切ったるー!』 だめだ話にならない!ノームはやる気だ!! 悠介 「いい度胸だコノヤロウ……!!」 そして俺もやる気だ!! ベリー「ちょ、悠介ー!?そんな喧嘩腰でいったら───!」 老人 「いいんじゃよ、どの道力を試されることになるわい。     ならばちと速いが、互いの力を見極めるのもよいじゃろ」 ベリー「そんなこた解ってるけどね……!     ああなった悠介ってちょっと怖いから、     精霊の方がどうにかなっちゃうんじゃないかって……!」 老人 「ほほっ、仮にも精霊じゃぞ?そうそう簡単に」 メゴシャアアアアアアアアアアンッ!!!!! ノーム『ピギャーーーーーーッ!!!!』 ドゴォオオオオオンッ!!!! 老人 「あ」 ベリー「あ〜……」 魔導か魔法か解らんものを唱え始めていたノームに閃速で近づき、 その勢いのままに修正の拳を叩き込んでやった。 すると広すぎると言ってもいいくらいの聖堂の先の先の先にある壁まで 勢いを殺さずに突き刺さるノーム。 悠介 「立て……大して効いてない筈だ……」 ノーム『いててててーっ!!いてーーっ!!な、なにすんだよー!     人の詠唱は最後まで待つのが人情ってもんだろー!?』 悠介 「俺は竜人だから人情なぞ知らん」 ノーム『キャーーーッ!!?』 ズンズンと近づき、逃げようとしたノームの頭をムンズと掴む。 ノーム『や、やめろー!     こんな強制的に契約したってオイラはお前の力になんかなんないぞー!』 悠介 「……はぁ、たわけ。少しは落ち着け。     俺だってお前が人の話を聞いてたり、     人のことモミアゲって言わなければ殴ったりなんてしなかった」 ノーム『……えー?そうなのかー?』 悠介 「そうなんだよ。だから、モミアゲのことには触れるな」 ノーム『よく似合ってるぞー?こんな見事なモミアゲは見たことないぞー?』 悠介 「魔のショーグンクロ〜〜……!!」 メキメキメキメキ!!! ノーム『ぴぎゃああああーーーーーーっ!!!!     わわわ解ったー!もう言わないからやめろー!!』 悠介 「……はぁ……って、俺この世界に来てから何回溜め息吐いたっけ……」 いい、知らん、覚えてない。 溜め息とともにアイアンクローを解除して、ノームを解放する。 するとノームは怯えた目をしながらも俺の姿を足から頭までジロジロと見て回った。 ノーム『お前強いなー。オイラ強いヤツは好きだぞー。     今までここまで一方的にやられたのは初めてだー』 悠介 「……そりゃどうも。     精霊にモミアゲがセクシーって言われたのだって、俺が初めてだろうよ……」 ノーム『決めたぞー、オイラお前と契約してやるー。ありがたく思えー、人間ー。     強いやつと契約すればオイラもどんどん強くなるー。     追いついたらリベンジしてやるから覚悟しとけー』 悠介 「……ん、それもいいな。一緒に成長してくれるなら大歓迎だ。喜んで契約する」 ノーム『よーし、オイラに勝ったんだから、これからも負けるなよー』 そう言うと、ノームを囲むように空界文字で編まれた球体が現れ、 それが小さくなるとともにノームも小さくなる。 やがてその球体が小さな光の珠になると、俺の額へと静かに消えていった。 悠介 「…………?」 これで……契約完了か? 老人 「おつかれさまと言うべきじゃろうかの」 悠介 「あ───じいさん。なんかよく解らないんだが、これで契約できたのか?」 老人 「うむ。ほれ、おぬしの指を見てみるがええ。小さな指輪が嵌まっておるじゃろ」 悠介 「へ?あ、ほんとだ」 言われるまで気づかなかったが、左手の人差し指に土色の指輪が嵌まっていた。 契約の指輪……ってやつか? 老人 「どれ、一度召喚してみるとええ。呼び方はおぬしの好きで構わんじゃろ。     『この精霊を呼び出したい』というイメージを弾けさせればいいだけじゃ」 悠介 「そっか、簡単なんだな」 老人 「なにを言うか、イメージを纏めるということはそれだけで大変で───」 ベリー「あのね、おじいさん?     このモミアゲパワードに関してはイメージ云々の教授は要らないわよ。     逆にこっちが教わりたいくらいにイメージには強いから」 悠介 「ノームの試し打ち、お前にやっていいか?」 ベリー「モミアゲ言ってゴメンナサイ」 指輪のついた手を向けると、ベリーはじいさんを盾にするように隠れた。 ……実力があるんだか無いんだから解らないな、ほんと。 こういうところは巧みっていうかなんていうか。 悠介 「言葉はどうでもいいんだよな」 老人 「うむ。イメージさえ纏まればじゃがの」 そか、じゃあ。 悠介 「あ〜〜〜……地獄よりの使者が今まさに貴様の存在を求める。     ノーム……ノーム!!罪深き汝の名はノーム!!     汝、今こそ契約の下に呼びかけに応えよ!!」 ベリー「そ、そんな悪魔を召喚するような言葉で!?」 老人 「なにを呼び出す気じゃおぬし!!」 キィイイ───ポムンッ!! 悠介 「あ、出た」 ベリー「あ、あは……アリなんだ、こういう呼び出し文句……」 老人 「イメージが纏まっていれば、な……」 とはいえ、呼び出されたノームはご立腹のようだった。 ノーム『お前ー!なんて言葉で呼び出すんだー!オイラが悪魔みたいじゃんかよー!』 悠介 「ちょっとした冗談だ、ちゃんと出てくれるか確かめたかった」 ノーム『……まー、そこのところはどの召喚師も同じだけどなー。     あんな言葉で呼び出されたのは初めてだぞモミアゲー』 悠介 「………」 俺ってそんなにモミアゲ目立ってるか……? なんか自分の存在がモミアゲに食われていかれてるような気がしてならない……。 俺はそうして脱力感に蝕まれながら、 何か言おうとしたノームを無理矢理指輪の中に押し戻したとさ……。 あぁまったく、めでたいったらありゃしない。 Next Menu back