───FantasticFantasia-Set38/然の精霊ニンフ───
【ケース86:晦悠介(再)/癒しの集う場所】 ───そこに辿り着いた時、木々が静かにざわめいた。 悠介 「………」 穏やかな風に揺られる草花の演奏に、ゆっくりと耳を傾ける。 閉じていた目を開くと、視界の先には『癒しの大樹』。 以前、俺が回復へと導いた『空界の癒し』を司る、薄緑色の光に包まれた樹木だ。 悠介 「───、……」 とくに言葉にするものはなかった。 ただ静かにその大樹の下へと向かい、寿命の原水の前で足を止めた。 すると泉に木々の陸が紡がれ、大樹のある小さな孤島までの道が作られた。 みさお「わぁ……」 そんな現象にみさおが感嘆の息を漏らす。 それはベリーも同じようで、だけど『ここからは悠介だけで行きなさい』と言って、 みさおとディルとともにその場に留まる。 悠介 「……うん」 深呼吸を一度だけした。 場の神聖な空気に呑まれた所為か、心なし緊張をしている。 それでも歩みはしっかりとしたもので、すぐに大樹の下に辿り着いた。  ……シャァアアアン…… 視界の少し上部に薄緑色の光の粒子がゆっくりと集っていった。 やがてそれは人の形を象ると、綺麗な女性の姿に変わる。 女性 『……お待ちしておりました、晦悠介。わたしはニンフ───ドリアードです』 音も立てずに地面に降り立ったニンフは穏やかに笑みを浮かべて名乗る。 俺も名乗ろうとしたが、既に名前を知られているんじゃあ意味がない気がした。 なにより……余計なことを言ってこの空気を壊したくなかった。  ……物凄く穏やかな空気の中に居た。 これが自然の力というものなのだろうか。 かつてこれほどまでに心が静まったことなんてなかった。 まるで『穏やか』という意味そのものに包まれたような感覚の中で、 俺は静かに目を閉じる。 すると───どこからか動物の鳴き声や息吹が聞こえてくる気がして、 少しくすぐったかった。 ドリアード『礼を言います、晦悠介。       あなたのお蔭でわたしたちニンフは再び今を生きることが出来ます。       ……聞こえますでしょう?木々の息吹や生き物たちの声が。       皆、あなたに感謝をしています』 聞こえた声にゆっくりと目を開ける。 ドリアードは変わらず穏やかな笑みを浮かべ、真っ直ぐに俺を見ていた。 悠介 「俺は……ただちょっとした手伝いをしただけだ。     礼を言われるほどのことじゃない。     お前が『戻りたい』って願ったから具現して、再生させたんだ。     お前のその思いがなかったら、こんなことは出来なかった」 ……そう、俺はドリアードの……いや、ニンフたちの願いを具現しただけだ。 あの時、枯れた大樹に触れることで流れてきたたくさんの意識の手。 それはきっとニンフたちの意識と声であり、 そんなたくさんの願いがあったからこそ無茶な創造が出来た。 ……俺だけの力じゃない。 ドリアード『……いいえ。たとえそうだとしてもあなたが居なければ再生は叶わなかった。       自然の精霊であるわたしたちニンフの意識を受け取ればただでは済みません。       普通の人ならば恐らくは精神に異常が起きていたでしょう。       それでもあなたはわたしたちの手を引いてくれた。       それは大多数ではなく、あなたにしか出来ないことでした。       だからこそ……お礼を言わせてもらいたいのです。ありがとう、と』 悠介   「………」 ドリアードは俺の手を両手でやさしく包むと、もう一度静かに笑みを浮かべた。 やがて俺の目を真っ直ぐに見て─── ドリアード『さあ、あなたは何を願いますか?       あなたが精霊の協力を望むのなら、       わたしたちニンフは喜んであなたとともに在りましょう。       なにか必要なものがあるのなら、喜んで精製しましょう。       あなたはこの空界と空界に住む生き物たち、そしてわたしたちの恩人です。       助力は惜しみませんし、       なによりわたしたちはあなたとともに在ることを望みます』 ……そんな傍から見れば告白じみたことを、 人の目を見ながら普通に会話するように言ってきたのだ。 俺はなにやら顔が赤くなるのを感じ、ついそっぽを向いてしまった。 そんな俺を見たドリアードはさらにクスリと笑みを浮かべて、 けれど何を言うでもなく俺の返事を待っていた。 悠介 「あ……ぁのなっ───ぐあ」 顔が赤らんだことも相まって、緊張値が上昇した俺の声は思い切り上ずっていた。 そんな声を聞いたドリアードは一度ポカンとした顔を見せると、 次の瞬間には口に手を当ててクスクスと笑った。 悠介   「わ、笑うな。これでもこっちは一生懸命なんだぞ……」 ドリアード『も、申し訳ありません……。でも可笑しくって……』 ドリアードの笑みは止まなかった。 そんなドリアードを見て俺は頭を掻いて、大きく深呼吸をした。 悠介 「……えっと、だな。『守りたいもの』を『守れるもの』に変えるために、     お前たちの力を貸してほしい」 やがて言う。 やっぱり少し上ずっていたけど、 ドリアードはそんな言葉に眩しいくらいの笑みを返し、穏やかな笑みとともに頷いた。 ドリアード『……はい。契約者晦悠介───       これよりわたしたちニンフはあなたとともにあることを誓います』 そう言うと、ドリアードは手に持っていた樹木の枝で作られたような杖を空に掲げる。 するとその場に幾つもの光の粒子が集い、 光の玉になると───全部で五つになる光が俺の額に消えてゆく。 ドリアード『たとえ幾度と頬を涙で濡らそうとも。       涙の先の喜びが……あなたとともにあらんことを』 やがてドリアードも光の玉と化すと、俺の額へと消えてゆく。 するとどうだろう。 今までそれほど強く感じられなかった自然の在り方が、俺の中に流れ込んでくるようだ。 悠介 「………」 体の中が自然と生命に溢れている。 心はとても穏やかで、まるで草花を穏やかに撫でる風になったかのような気分だった。 ふと指を見れば、蒼空を見上げたような空色をした指輪が右手の薬指に存在していた。 悠介 「───……」 大樹を見上げる。 小鳥やトンボのような生き物が穏やかに舞う世界は幻想的で、 ただそれを感じられるだけで、自然とともにあることに喜びを覚えた。 声  「終わったのー!?」 悠介 「……っと」 聞こえた声に、急激に意識を引き戻された感覚に襲われる。 どうやら知らず知らずの内に意識が自然側に傾いていたらしい。 俺はゆっくりと向き直ると、泉に出来た樹木の根の橋をゆっくりと歩いた。 ベリー「どうだった?ね、どうだった?」 向こう岸に辿り着くとベリーは興奮したかのように言葉を放つ。 俺はそれに『ああ』とだけ答えて、右手の指輪を見せた。 みさお「わぁ……!綺麗な指輪ですね……!」 ベリー「〜〜〜っ……!!うぁあああ初めて見た……!!     ニンフの……ニンフの契約の指輪だよぉっ……!!」 みさおとベリーはそれぞれ、指輪の美しさと希少さに感激し、震えていた。 特にベリー。 悠介 「見たこと……なかったのか?」 ベリー「あ、あのねぇっ……そんなの当たり前なの!     ニンフと契約出来た人なんて、天地空間中どこ探しても悠介だけよ!?」 悠介 「……?なんでだよ、精霊なんだろ?」 ベリー「あーのーねー……。ニンフを何処ぞの精霊なんかと一緒にしないでよね。     ニンフと契約するってことはこの空界の在り方を担うってことなの。     そんなこと、ニンフ自体が頷く筈無いし、     そもそもニンフ全員が頷かない限り契約なんて成り立たない」 悠介 「……ちょっと待て、じゃあなんでニンフと契約できるって決定概念があるんだ?     誰も契約したことがないなら、そんな考えは出たりしないだろ」 ベリー「魔術師ってのは知識と理論と既定破壊の塊よ。     アレがダメならコレって考えはいつだってする。     まー、よーするに。精霊だから契約出来るって固定概念があったのは確か。     でもそれを根本から研究したくなるのも魔術師の悪いクセでね。     一度、ニンフの中のひとりを封印の魔導や式で捕まえたことがあるの。     で、研究してみたらアラ不思議、ちゃんと契約の楔があるじゃない」 悠介 「………」 ベリー「……あ、あれ?なにかな、なにかなその軽蔑の眼差し。     あ───えっと、つ、捕まえたっていったって随分前の話よ!?     あれはこの大樹と加齢樹が枯れた頃だったし、     ニンフが弱ったことをいいことに捕らえたのも確かだけど───!     で、でも研究が終わったらちゃんと逃がしたわよ!?     ね!?アルセイドちゃん!ね!?」 悠介 「───出てきてくれ、アルセイド」 指輪に意識を流し込むように言葉を紡ぐと、 空色の指輪からひとりの女性が姿を現した─── アルセイド『……!』 が、ベリーを見るとすぐに俺の背中に隠れるように逃げた。 悠介 「……オイ。思いっきり怯えてるじゃねぇか……」 ベリー「あ、あれぇっ!?えっと……」 悠介 「はぁ……一体なにやったんだ?普通精霊ってこんなに怯えないだろ……」 ベリー「なにって……ただいろいろ調べるために     弱体化の式を流し込んだ液体を注射したり、     逃げないように結界張って閉じ込めたり、身体調査のために電流流してみたり」 悠介 「たぁわけぇええええーーーーーーーっ!!!!」 マゴシャアアアアーーーーーーーンッ!!!! ベリー「キャペェエーーーーーーーッ!!!!」 助走をつけた前方回転ミサイルキックがベリーの顔面にクリーンヒットした。 もちろんベリーは容赦なくバキベキゴロゴロズシャーと跳ね転がり、 森の先の先でピクピクと痙攣した。 悠介 「アホゥかお前はっ!!それだけされりゃ誰だって怯えるわっ!!」 ベリー「カカカカ……!!」 みさお「ゆ、悠介さん……今のはちょっと綺麗に決まりすぎたんじゃあ……」 悠介 「自業自得だっ!     研究のためだからってなんでも利用するのは魔術師の悪い癖だぞ!直せ!」 みさお「……もう気絶しちゃってるみたいですけど」 悠介 「………」 調子が狂う。さっきまであんなにも穏やかだった心が、あの馬鹿者の所為で台無しだ。 アルセイド『あ、あの……』 悠介   「うん?……ああ……すまない。あいつに代わって謝らせてくれ。       本当は本人に謝らせた方がいいんだろうけど……俺が気絶させちまった。       だから、ごめん。人間の中にはああいうやつらがいっぱい居るけど、       その全てを嫌いにならないでほしい」 アルセイド『………』 俺の言葉にアルセイドは沈黙した。 いや、ただ黙ってるわけじゃなくて、一生懸命に考えているようだった。 それでそれが終わるとおずおずとしたふうに笑みを浮かべ、はい、と頷いた。 悠介 「……ありがとう」 そうすると俺も自然と笑みが出て、 無意識のうちにアルセイドの頭をくしゃっと撫でていた。 みさお「……悠介さん。頭撫での癖が出てますよ」 悠介 「ぐあっ!?」 が、みさおの言葉にすぐに手を引っ込めた。 あ、危ねぇ……!ここ最近、ずっと発動しなかったから安心してたのに……! アルセイド『………』 悠介   「や……そこでそんな残念そうな顔されても、もうやらないぞ……?」 子供を宥めるのは苦手なくせに、 こういう時だけ頭を撫でる癖があるのは意識的に苦手な部分だ。 けど嫌い、とまではいかない。 そんな行動で泣いた顔が笑顔に変わるならそれでいいと思えるからだ。 だが好んでやりたくないのも事実だ。 理由は───まあその、恥ずかしいからである。 悠介   「わ、悪い……指輪に戻ってくれ……」 アルセイド『……はい』 コクリと頷いたアルセイドが指輪の中に戻ってゆく。 ……って、考えてみれば誰がどのニンフなのか、俺は全然知らんのだ。 アルセイドが必要って意識を働かせて召喚して、 それで出てきたからアルセイドだって認識したけど─── 悠介 「………」 ニンフ……六人全員、顔と名前を一致させるのは少し時間が掛かりそうだった。 ───……。 ……。 その後、俺とみさおとベリーは三人でこれから向かう場所について話し合っていた。 気絶から立ち直ったベリーはしきりに文句を飛ばしてきたけど、 アルセイドのことを話に出した途端に沈黙に走る。 とどのつまり、埒が開かないと思ったからこそ こうして次の目的地について話し合ってるわけだ。 ああ、ちなみにディルゼイルには皇竜珠に戻ってもらった。 悠介 「で───……あとは雷の精霊と光の精霊と闇の精霊と無の精霊だよな?     次は何処に向かうんだ?」 ベリー「んー……悠介はどの精霊と契約したい?     あ、無の精霊スピリットオブノートは自動的に最後ってことになるからね」 悠介 「そうなのか?なんでまた」 ベリー「言い出しておいてなんだけど、いろいろあるのよ。だからここは聞き流して。     で───ハッキリ言うと光の精霊ウィルオウィスプも後回しになると思うの。     困ったことにさ、ウィルオウィスプってば伝説の浮遊島に居るのよね」 悠介 「伝説の浮遊島って……もしかしてあれか?ノヴァルシオの見えない島っていう」 ベリー「そ。落ちたノヴァルシオから降り立った巨人が言ってたことだから間違いないわ。     光の精霊ウィルオウィスプはそこに居る。ただし───」 悠介 「その浮遊島が何処にあるのかが解らない、と」 だとしたらなんとなく納得出来る気がした。 見えない浮遊島ってのは奇跡や技術で見えないわけじゃなく、 光の精霊であるウィルオウィスプが光の屈折を行使して見えなくしている可能性がある。 ベリー「でも見つける方法が無いわけでもないのよね。     光が存在するところに闇あり、ってね。     闇のシェイドの力で空一面を闇で覆えば、     必ず何処かに光ったままの空間が現れる筈だから」 ……それも、納得出来る気がした。 ようするに先に闇の精霊をなんとかしろと? ベリー「……なんだ、じゃあもう目的は決まってるわね。次は闇の精霊シェイドよ」 悠介 「待った。シェイドとは彰利が契約すると思う。     だから雷の精霊ニーディアと契約しに行こう」 ベリー「えー?なに悠介、まだあのツンツン頭がなんとか出来るって思ってるの?」 みさお「あの……悠介さん。こう言うのもなんですけど、     彰衛門さんの実力じゃあ闇の精霊さんには勝てません。     傍に居て解りました。闇の精霊シェイドの力は四大元素の比じゃありません」 ベリー「そりゃそうよ、     世界っていうのは光と闇があって初めて『存在』が『存在』で居られるんだもの。     光が無ければ作物は育たないし、光があれば闇があるのは当然。     四大元素はその下に存在するんだから、四大元素より強いのは当たり前。     たとえいい線まで行けたって思ってても、相手は本気なんて出してないわ」 悠介 「だとしてもいい。まずはニーディアのところに行こう。     どうしても闇の精霊に会わなきゃいけないなら、その後だっていいだろ」 ベリー「ぶー、強情だよね悠介って」 悠介 「ほっとけ」 頬を膨らましてぶーぶー言うベリーをキッパリと受け流し、次の目的地を話し合う。 やがて決まった先は─── 声  「ちょおっと待ったぁあああああーーーーモミアゲ!!」 ベゴシャア!! 声  「モギョオッ!!」 ───いきなり出てきた謎の物体によって言葉になることはなかった。 当然殴ったが。 みさお「うわ……出てきた途端ですよ。えーと確か……山岡智英さんでしたっけ……?」 ベリー「さっき次元移動して殴られたヤツでしょ?うーわー、よく生きてたわねぇ」 謎漢 「ケトケトケトケトケト……生憎とおいらは不死身だモミアゲ。     あの程度の攻撃では死んでやらんモミアゲ」 モゴシャア!! 謎漢 「ウヒャーーーイ!!!モミアゲ!!」 謎漢の側頭部に拳がヒットした。 悠介 「不死身っぷりを説明してくれたところで、     是非ともモミアゲって言うのをやめてくれ」 謎漢 「ゲフッ……!ゲフッ……!     そ、それは出来ない相談モミアゲ……これはおいらの口癖モミアゲ……」 悠介 「心の底から腹の立つ口癖だなコノヤロウ……!」 謎漢 「それは褒め言葉として受け取っておくモミアゲ。     というわけで今すぐおいらに創造の理力をよこせモミアゲ。     出来ないというのならそこの娘の生爪を剥ぐモミアゲ」 悠介 「───」 ズパァンッ!! 謎漢 「モミィッ!!?て、てめぇいきなりなにしやがるモミアゲ!!     無言で顔面にナックルなんて礼儀も知らんヤツの行為だぞモミアゲ」 悠介 「だったらモミアゲ言うな!!」 謎漢 「それは無茶な相談モミアゲ。     何故これから死ぬお前に指図されなきゃならないモミアゲ?」 悠介 「なぁ……こいつ粉塵と化すまで殴っていいか……?」 ベリー「べつにいいけど」 みさお「わたしもべつに困りません」 謎漢 「モミッ!?貴様らそりゃあんまりだモミアゲ!おいらの」 メゴシャアンッ!! 謎漢 「モミギャアッ!!?グエーーッ!!し、舌噛んだモミアゲ!     貴様モミアゲ!人が喋ってる時に殴るんじゃあねぇモミアゲ!!」 悠介 「じゃあ殴らんから語尾にモミアゲつけるな!!」 謎漢 「なんべん言わせんだモミアゲ!     そりゃ出来ねぇ相談だって言っただろうがモミアゲ!!     さては貴様馬鹿かモミアゲ!?この馬鹿モミアゲ!!」 悠介 「───」(ブチリ) ベリー「あっ───そ、総員退避ーーーっ!!」 みさお「とんずらぁあああーーーーーーっ!!」 謎漢 「えっ!?なになにモミアゲ!?なっ───」 ガシリ……。 謎漢 「モミッ!?なっ……なにしやがるモミアゲ!!離せモミアゲ!!     そんな角生やして金髪になったって怖くねぇぞモミアゲ!!」 悠介 「遺言はそれでいいんだな……?」 謎漢 「モミッ!?ケトケトケト!!こいつぁあ愉快だモミアゲ!     さっきも言った通りおいらは不死身モミアゲ!     だから貴様がどれだけ頑張ろうが     おいらが言った言葉が遺言になることなどないモミアゲ!!     ケトケトケトケトケ───……!?な、なにモミアゲ!?     このおいらが震えているモミアゲ!?     ば、馬鹿なモミアゲ!体が竦んで動けないモミアゲ!!     よ、よせモミアゲ!近づくなモミアゲ!!掴んだ頭を持ち上げるなモミアゲ!!     やめろモミアゲ!!離せこのモミアゲ!!モ、モミッ!?」 ドゴゴシャベキゴキドガァン!ゴガァンッ!!バグシャアッ!! 謎漢 「モミギャアアアアアーーーーーーーーーーーッ!!!!!!」 ───……。 ……。 みさお「…………復活しなくなりましたね」 ベリー「そうねー……。何回復活したっけ?」 みさお「21回ですね……。     不死身でもあそこまでボコボコにされれば行動不能になるみたいです……」 ベリー「でも心臓動いてるんだから不思議よねー……。ほんと神界って謎だらけだわー」 モミアゲ馬鹿は近くの森の木の枝に引っかかった状態で動かなくなっていた。 殴っても殴っても復活するもんだから、 ついついベオウルフとヴィーダルを行使してボコボコにしすぎてしまった。 その結果、ピクリとも動かなくなってしまった。 悠介 「よしっ!行くか!」 みさお「いえあの……そんな輝かしいスマイルをされても」 ベリー「嫌った相手には容赦ないのね、悠介って……。よく覚えとこ……」 殴り殴った拳の感覚を捨てるように振るうと、ゆっくりと歩─── 声  「お待ちください!!」 悠介 「───!?誰だ!!」 それは突然の声だった。 ボ〜っとしていたからだろうが、気配を察知できなかった俺は声のした方に振り向いた。 タイヤキ「あなたたちは『弦月彰利』の仲間ですね!?私も連れていってください!」 悠介  「………」 本当に……誰だ。 タイヤキ「ああ申し遅れました、私は世界征服を目論むタイヤキ、泳げ荒焼きくんです」 悠介  「……もしかしてお前も不死身なのか?」 荒焼き 「え?ああまあはいそうです。      実は私……こんな礼儀正しい自分が嫌で、      自分を奇妙に変える第一段階として      弦月彰利くんの『変態オカマホモコン』の称号が欲しくて、      はるばる空界にまで来たんですよ」 みさお 「うわ……彰衛門さんって全世界レベルの変態オカマホモコンだったんですか」 荒焼き 「案内してくれるついでに冥月刀というもののことを教えてくれたら幸いです。      なんでもその刀にはいろいろな能力があるらしいじゃないですか。      私はそれを使って全世界征服を狙ってるんです……」 悠介  「よかったなーみさお、ご所望らしいぞ」 みさお 「わたし、彰衛門さん以外に握られたくないです……」 悠介  「そか」 なんだ、なんだかんだ言って、結局彰利のことが気になってるんじゃないか。 荒焼き「なに言ってるんですか失礼な。     私が欲しているのはそんなペチャパイ小娘ではありません。     私が欲しているのは冥月刀という様々な能力を持った刀です」 みさお「……謎漢さんの後、追ってみますかコノヤロウ……」 荒焼き「謎漢さん?……そういえば智英さんが先にモミアゲさんの所に来ている筈ですが。     額に謎、腹部に漢という文字がある生命体が現れませんでしたか?」 みさお「アレです」 メゴリッ!! 荒焼き「おほうっ!!」 怒り心頭中のみさおは力任せに荒焼きの顔を曲げた。 その無理矢理加減の所為で荒焼きボディが少し裂け、 そこから喩えようの無い激臭が漂ってきた。 ベリー「ぷあっ!?臭ッ!!げっほ……っ!!ごほっ……!!」 荒焼き「アアッ!と、智英さんがなんとも無残な姿に!」 悠介 「アアッ!じゃねぇえーーーーーっ!!!!」 ドゴシャアッ!! 荒焼き「サンゴーーーッ!!」 ドゴシャベゴシャグチャアッ!!! 一瞬にして激臭に耐え切れなくなった俺は荒焼きくんを全力で蹴り飛ばした。 その体の不自然に柔らかいこと柔らかいこと……。 蹴り飛ばしたはいいけど、 木に当たったり枝に当たったりする度にバラバラになっていく様は見ていて不気味だった。 しかもアンコがかかった木々がどんどんと腐敗してゆく。 悠介 「おわっ……!!だぁあーーーーっ!!咲桜のアホォーーーッ!!     なんてモノよこしてくれたんだぁああーーーーーっ!!!!」 叫びながら回復のイメージを働かせ、駆け足で木々を癒してゆく。 そしてそのままの速度でピクピクと痙攣する内臓爆裂中の荒焼きくんに駆け寄ると、 この森から追い出すために“絶氷なる繋がりの無い膜(ダイヤモンドダストカーテン)
”で凍らせたのちに、 思い切り蹴り飛ばした。 空の途中でいろいろな箇所が砕けてたが、まあ不死身なんだから大丈夫だろう。 悠介 「みさおっ!ベリー!行くぞっ!!」 智英 「どこへだモミアゲ」 ドパゴッシャァアンッ!!! 智英 「モミィイイイイーーーーーッ!!!?」 いつの間にか降りてきた謎漢に振り向きざまのナックルパートを進呈。 謎漢は再びバキベキゴロゴロズシャーーーアーーッ!!と転がり滑って、 ついには千年の寿命の原水にバシャアと落下。 智英 「ウギャアモミアゲェエエエエーーーーーーーーッ!!!!!」 ジュウウという音とともに白煙を巻き上げ、どんどんと溶けていった。 さすが竜族以外の者には毒でしかない泉だ。 悠介 「じゃ、行こうか」 ベリー「うっわスゴイいい顔ッ!!」 心の在り方が表情に出たのだろう。 ベリーとみさおは心底驚いたが、それでも謎漢をてんで気にすることもなく一緒に歩いた。 さらばだモミアゲ馬鹿……出来ればもう二度と会いたくないから復活しないでくれ。 Next Menu back