───FantasticFantasia-Set44/光の精霊ウィルオウィスプ───
【ケース100:弦月彰利/偉そうな精霊】 タトタトタトタト…… 通路を歩く音が通路に響く……そりゃ当たり前だ。 彰利 「よし、ひとりノリッツッコミってすげぇ虚しい」 そしてぼくはまたひとつ賢くなりました。 ───さてさてそれはそれとして、 塔の中に入ったぼくらはこうして長い通路を歩いているわけですが…… 彰利 「すげぇ技術だよなぁ……塔の扉開けても水が入ってこねぇんだもの。     これってもしかして、誰も入れないことを前提に作られた塔なんかな」 悠介 「そうなんだろうな。人間が入るには水が深すぎて無理だし、     魚人はエラ呼吸だからこうして酸素がある場所はダメらしいし。     そうなると本当にごく限られた者にしか辿り着けないってことになる」 彰利 「だぁね。しっかしなんじゃね、この塔って随分と綺麗やね。     この庭園に来る前の長ったらしいだけの塔とは大違いじゃわい」 この塔のステキさと言ったら、 もうなによりもまず教会のような作りから語らねばなるまいて。 庭園から水中に差し込む光がステンドグラスに差し込んで、キラキラ輝いておるのですよ。 しかも嫌味ったらしく複雑なわけじゃない。 しばらく歩く必要もなく辿り着いた広間の中心に立っただけで、 オイラたちはどこかへ転移されたのです。 まあ……結論言ってしまえば光の聖堂だけど。 彰利 「まぶしゃあああ〜〜〜〜っ!!!」 でもね、そこってばとんでもなく眩しいのです。 さすが光の聖堂だけあって、なんかパパァアって光とか放ってるし。 悠介 「……聖堂っていうよりは見晴台みたいな感じだな」 そげな場所の中でも平然としている彼はもう勇者です。 そりゃね、ブレイバーなんだから勇者なのかもしれんけど、べつの意味でも勇者です。 ともかく悠介は石碑の前に立つより先に、ひらけた聖堂から見える外の景色を眺めていた。 そうして何かを感じたのか外の景色に釘付けになる悠介をみると、 俺も釣られるように外を見た。 彰利 「……ア、アゥワワワ……」 するとどうでしょう。 その先には、雲と空しか無かったのです。 俺は崖際まで寄って下の方を見るが───なんとその遙か下方には、 先ほどまでオイラたちが居たであろうラピュウタがあったのです。 ……ああでも、確かに真下にあるっつぅんなら、 『ラピュウタの中央にある』ってことにはなるのかな? 彰利 「えーと、キミ。多分コレ、落ちたらシャレにならんよ」 というかみさおさんを寝かせておける場所が皆無です。 戦うことになったりしたら、それこそ余波かなんかくらって吹き飛ばされそうだ。 彰利 「よ、よし高松くん!キミは戦うんだ!ぼくは逃げておくから!」 悠介 「どうしても戦わせたいのかお前は……。あのなぁ来る前にも言っただろ?     べつに戦うって決まってるわけじゃないって」 彰利 「だ、だけどぼくは不安なのだ!キミだってそうなんじゃないのか高松くん!!」 悠介 「不安だったらお前は人に全てを任せてとんずらするのかたわけっ!!」 彰利 「ご、ごめんよ大友くん!ぼく怖かったんだ!!」 悠介 「………」 あ、なにやら『言っても無駄だな』って顔された。 おまけにドス黒い溜め息まで吐かれたし。 でもねぇ、さすがに大事な娘をほっぽって戦闘には参加出来んよ。 とか思ってると悠介は石碑の前に立った。 途端───何かが近づいてくる気配を察知! ムウ!この感覚はぼくと対極に位置する生命体!! 即ち───光!! 彰利 「お気を付けめされい!参られますぞ!」 悠介 「解ってるけどなんでそんな口調なんだ!?」 彰利 「なんでって───キミの緊張ほぐしてやろうとしてんのじゃない!!」 悠介 「ほぐれるかぁっ!!ほぐしたいならまず隣に立ってから言えたわけっ!!」 彰利 「グ、グムーーーッ!!それはできーーーーん!!!」 でもそうですね、考えてみれば安全地帯を確保してるヤツになに言われたって、 緊張なんぞはほぐれません。 というわけでぼくは泣く泣く、親友にハンケチーフを振ったのでした。 悠介 「てめぇええーーーーーっ!!!!」 親友がなにやら叫びましたが、それは舞い降りた光が出した轟音によって掻き消された。 悠介 「うぐぅああああっ!?」 彰利 「キャーーーーーーッ!!!!」 舞い降りた衝撃は突風となり、 近くに居た悠介はおろか離れていた俺まで吹き飛ばしました。 だが俺達は空から落下することはなかった。 何故なら─── ウィルオウィスプ『よくぞ来た、人の子よ。私はウィルオウィスプ。光の精霊である』 舞い降りた光が崖際に光の壁を作り、吹き飛ばされた俺達が落下するのを防いだからだ。 まあ落ちなかったのは良かったんだが……光の壁にしこたま頭をぶつけました。 オウ……なんてこった、眩暈がする。 吹き飛ばしといて『よくぞ来た』もなにもないでしょうにまったくもう……。 彰利 「ウィ、ウィルーーーッ!!」 何気に癪に障ったオイラは、ウィルオウィスプという名の人型の精霊に駆け寄った。 やがてあのお方のようにその言葉を口ずさむ。 彰利 「ウィル……馬鹿な……!     ウィルはゴルフオープントーナメントで変な爺さんに弾道と間違えられた筈……」 本当は逆。弾道がウィルと間違えられていた。 しかもゴルフオープントーナメントではない。 ウィルオウィスプ『…………』 彰利      「…………イ、イヤァアアアア黙らないでぇええええっ!!!!          殴ってくれてもいいからツッコミ入れておくれぇえええっ!!!!」 なにやらものめっさ可哀相な人を見る目で見つめられちゃったよ俺……。 それがね?もうね?恥ずかしく恥ずかしくてね……? ウィルオウィスプ『ウィル、か。確かにその呼び方は楽でいい。          しかしシェイドよ、お前もヤキが回ったものだな。          このような下賎な輩と契約をするとはな』 彰利      「それがツッコミなら俺、キミをグーで殴りますよ?」 言った通り拳を握ってみせる。 と、ウィルは小さく笑ってオイラを睨んだ。 ウィル『シェイドと契約したことで対象属性を手に入れた気になっているのならば     考えを改めよ。お前では無理だ』 彰利 「無理だなどと勝手に決めるでない!あぁ悠介、みさおさんよろしく」 悠介にみさおさんを放り渡し、振り向きザマに毒霧をブシィと吐いた。 ウィル『くあっ!?お、おのれ……力を求める理由も言わずに不意打ちとは!!』 彰利 「チョェエエエーーーーッ!!!カーフブランディングーーーッ!!!」 視界を奪ったオイラは背中に回り込み、押さえつけて床目掛けてクラッシャーッ!! ……しようと思ったが、突然ウィルが消え去った。 彰利 「お、おろっ!?なんで!?なん」  ───ドゴォンッ!! 彰利 「うぶぇあぁっ!!?」 飛びつこうとしたために宙に浮いた俺は、見えない何かに横殴りにされた。 その勢いは凄まじく、光の壁までいとも簡単に吹き飛ばされた。 彰利 「げっほ……!ば、馬鹿な……ば、馬鹿な……!!     姿が消えた……いや、見えなくなった……!?」 声  『これは面白い。一応それなりの認識力はあるようだ。     だがどうする?お前は私を捉えることは出来ないが、     私はお前をいつでも攻撃出来る』 彰利 「グムム〜〜……どうせ光の屈折かなんかで見えなくしてんだろ!     このアイオーンクロックめが!!そっちがその気ならこっちだってぇええ……!」 カチンと来た俺は自分の心臓の上に手を当てると、即座に鎌の骨子を躍動させた。 もちろん発動させるのは“無形なる黒闇(ダークマター)
”。 さらにシェイドを呼び出し、この光の場を闇に染めてゆく!! 彰利 「クォックォックォッ!!さあどうです、声もでないでしょう!後悔なさい!     あなたには十数える間だけ、後悔する時間を差し上げましょう!     ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ───以下略。     さあ十を数えました。これにて後悔の時間は終わりです。     これからはさらなる後悔の時間をあなたに差し上げましょう」 ウィル『……無駄だ』 ヒュオッ───ガカァッキィインッ!!!! 彰利 「どわぁあっ!!?」 ウィルは闇に染まってゆく景色を、片腕一本を振るうだけで再び光の世界を構築した。 闇に染まったお蔭で見えていたその姿も、再び光に紛れて見えなくなる。 彰利 「な、何故だ!シェイちゃんの力が貴様に劣っておるとでも!?」 ウィル『違うな。劣っているのはお前自身だ。     お前の力ではシェイドの力を完全に引き出すことなど出来ない。     今この場で決定的なる敗北条件があるとすれば、それはお前の力不足のみだ』 彰利 「───な、なんと……」 よもや簡単に見破られるとは……俺じゃダメなのか……? シェイド『どうする、仮の主。このまま戦うか?』 彰利  「……フッ……いや。      俺も自分の実力が解らないわけじゃあねぇ。さぁ真打の登場だ」 ウィルさんに背を見せると、俺はゆっくりと歩き出した。 そうして悠介の方を見ると叫んだ。 彰利         「お前の出番だ!!みさおさん!!」 シェイド&悠介&みさお『えぇえーーーーっ!!?』 あ、起きた。 みさお「ななななに言い出してるんですか!!     彰衛門さんが勝てない相手にわたしが勝てるわけがないじゃないですか!!」 彰利 「お前なら出来ないさ!!」 みさお「出来るわけが───出来ない!?     普通こういう時はウソでも『出来るさ』って言うでしょう!?」 彰利 「出来んの?」 みさお「出来ません……」 素直な娘ッ子さんでした。 大変よろしい。 彰利 「とまあシェイちゃんまで驚かせたことだし、悠介───頼ンまっせ?」 悠介 「……お前さ、なんのために向かってったんだ?」 彰利 「フフフ、相手の力をキミに解らせるためさ……。気をつけろ、あいつ消えるよ?」 悠介 「見てたから言われるまでもないんだが───     緊迫感ってのが思い切り無くなった気がしないか?」 彰利 「それも作戦さね!」 悠介 「……だから。俺の方もやる気が思いっきり殺がれたんだが……     そこんところも作戦なのか?」 彰利 「───……それではごきげんよう!!」 オイラは逃げ出した!! 悠介 「お前なぁあ……!!」 彰利 「がんばれーーーっ!!まっ!なっ!」(ぶっ) 悠介 「ブッ殺すぞてめぇええーーーーっ!!!!」 緊張と怒りをほぐそうと、声援とともに放屁をしたら思いっきり怒られました。 いかん逆効果だ! 俺はみさおさんを抱えると、光よりも速い(つもりの)速度で壁まで逃走した。 とにかくバトンタッチ!だってもうウィルさんも悠介を標的にしてるし! 【ケース101:晦悠介/タブーに触れちゃった精霊】 オガァアーーッ!!と叫ぶと彰利が壁際まで逃走した。 それを追おうとしたが─── ウィル『次の相手はお前か。解るぞ、お前は強者だ』 ……あっさりと回り込まれた。 ウィル『さあ私と戦え。私を打倒してみせるのだ』 悠介 「っ───“戦闘、開始(セット)”!!」 相手が構えるのと同時に、戦闘開始を唱える。 この際彰利がどうとかは忘れよう、油断すればやられる。 そう思考した時には既にウィルは光の聖堂に溶け込み、見えなくなっていた。 悠介 「───!?」 これはまいった。 気配を探って相手の場所を特定しようとしたが、 光の聖堂自体が光の属性に包まれているために何処に居るのかがまるで解らない。  ───ヒョンッ!ビシィッ!! 悠介 「づっ───、……」 風を切る音を頼りに、仕掛けられた攻撃を避けた。 けど避け切れなかったために頬は切れ、赤い鮮血がつぅと頬を伝う。  ヒュオッ─── 悠介 (どっちだ───右?いや下だ!)  ドボォッ!! 悠介 「はっ───、あ……づっ……!!」 反応が出来たところで、気づけたとしても避けという行動には間に合わない。 腹に埋まった攻撃は俺の呼吸を詰まらせる。 もちろんその隙を逃す馬鹿は居ないだろう。 そう思った瞬間にも既に攻撃は俺の体に降りかかり、次々と俺の体に切り傷が増えてゆく。 反射的に避けているから致命傷にはならないが、 このままじゃあいずれ出血多量で動けなくなる。 それほど、この短時間での戦況は劣勢にあった。 声  『どうした人の子よ。抵抗も出来ぬのであれば、まだ先の男の方が戦えたぞ』 打撃と斬撃の間に聞こえる声がやけに頭に響く。 ウィルはクッ……と笑いながら俺を少しずついたぶってゆく。 それはまるで、大口を開けられない鳥の雛がエサを啄ばんでいるようだった。 声  『だがそれも仕方あるまい。私のこの能力を破った者など未だ皆無。     人程度がこれを見切り、私に打撃を与えるなど不可能だろう。     ならばこそハンデをくれてやろうか人間」 悠介 「っ……ハン、デだ……?」 声  『そう、ハンデだ。なに、難しいことではない。     ───一撃。たったの一撃でもこの私に攻撃を当てることが出来たのなら。     お前の力となることを私は約束しよう』 悠介 「…………───ひとつ訊きたい。     お前が今こうやって戦っているのはどういう名目でだ?     真剣勝負か、それとも───」 声  『遊びに決まっているだろう。     少々精霊と契約できたからといって、人間風情が図に乗るな。     私とシェイドは大精霊だ。そこいらの根源精霊などと一緒にするな』 悠介 「───……」 自分の中で『カチン』という音が聞こえた。 どうやら軽く撃鉄が落ちたらしい。 悠介 「……悪いな、今ので質問が増えた。     お前、自分は絶対に負けない強者のつもりか?」 声  『つもり、ではない。私が人間ごときに負けるなど有り得ない。     そしてその人間ごときに負けた精霊を罵って何が悪い?』 悠介 「………」 小さく息を吐いた。 ほんと、まいった。 悠介 「……解った。だったらその自信がどれほど脆いものなのか、俺が教えてやる」 今までの精霊に対して本気で怒ることなんて無かった。 むしろ友好的に付き合えるやつらだ、契約出来て嬉しい。 だがこの精霊に対してだけは本気で腹が立った。 実際に実力を判断したわけでもないのに勝利宣言紛いのことを言うのは気が引ける。 けど仕方ない。 俺を信じて契約してくれたヤツらを、こいつは侮辱したのだから。 声  『粋がるのは勝手だ。だが、それは私の姿を捉えてから───』 悠介 「……“不避死を齎す破生の竜槍(ゲイボルグ)”」 ヴオッ───ガゴォンッ!! ウィル『がはぁっ!!?』 小さな黄昏から放ったゲイボルグがウィルの心臓へと、狂いも無く襲い掛かった。 結果は見ての通り。 偉そうに胸を張っていただろうウィルは吹き飛ばされ、光の壁に衝突した。 『穿つ』というイメージは乗せていなかったから、致命傷にはなっていない。 ウィル『……!?ど、どうなっている……!?』 ウィルは困惑するばかりだ。 だが再び光に紛れて消えると、俺に攻撃を仕掛けてきた。 ……呆れたもんだ、自分で言ったことをもう忘れている。 悠介 「一撃当てたらそれでいいんじゃなかったのか?」 ウィル『黙れ!あんなまぐれ当たりは認めぬ!!認め───』 悠介 「……そうかよ。訊いた俺が馬鹿だった。“───月詠の黄昏(ラグナロク)”」 ツ───パァンッ!! イメージの解放とともに手を真横に勢いよく振るうと、目に見える景色が黄昏へと変わる。 当然、光に紛れていた馬鹿な精霊も擬態をする場所を失うことになった。 ウィル『なっ……!?馬鹿な!世界を創造───はっ!?』 悠介 「お前には手加減一切無しだ……!     高位だからってこいつらを見下したことを消えた意識の先で後悔しやがれ……!」 ウィル『ま、待───!!』 黄昏の世界で呆然と立っていたウィルの傍に瞬時に駆け寄った俺は、 神魔竜人化するとともに右手に雷光を宿し、それこそ一切の容赦も無く振るった。  バゴガドゴシャァンッッッ!!!! ウィル『ギィッ!!?』 悲鳴はそれこそ一瞬。 ウィルは黄昏の大地に巨大なクレーターを作ると血を吐いた。 弾けとんだ青白い雷光が消える頃にはもうウィルの意識は無く、 ただ何を言うわけでもなく……黄昏の草原の上で動かなくなっていた。 それを確認すると俺は黄昏を消し、息を吐く。 シェイド『馬鹿な……ウィルオウィスプが一撃……たったの一撃だと……!?      あ、い、いや……それより……精霊を気絶させるなど、どういう力を……!?』 彰利  「……ウィルさんアホゥだね。あのね、シェイちゃん?      これから言うことをよ〜〜っく覚えてて欲しいんだけどね。      悠介だけは絶対に普通にキレさせちゃダメだかんね?」 シェイド『キレ……?あ、あれはただキレただけだというのか……?』 彰利  「命が惜しいんだったら、他人を完全に見下した目や物言いをしないこと。      あいつの場合は自分が見下されるよりも、      『自分の気に入ったヤツ』を見下されることに腹立てるから」 シェイド『……わ、解った。覚えておこう』 彰利  「あ、もちろんからかう程度なら反応が面白いからいくらでもやってOK。      むしろおもろいからジャンジャンやりなさい。      ああやって心底嫌味野郎にならない限りは大丈夫だから。      あ、あと……モミアゲには注意すること。      モミアゲモミアゲ言ってるとまず殴られるから」 シェイド『……もったいのない男だな。あそこまで見事なモミアゲはそう無いだろう』 彰利  「それ、本人の前で言ったらね、次の瞬間には血ィ見てるよ。      俺の時みたく闇で対抗しようなんて思わないこと。      ウィルさんの二の舞になるから」 シェイド『肝に銘じておく』 彰利……おのれは人をなんだと思ってるんだ……? というか丸聞こえなんだが。わざとか? みさお「それであの、悠介さん?ウィルオウィスプさん……生きてます?」 親友に対して若干の溜め息を漏らしていると、 みさおが俺の黒衣の袖をついついと引っ張った。 生きてるか、って訊かれればそれは生きてる。 頭に来たからって、そこまではしないつもりだ。 悠介 「ああ、生きてるよ。ほら、一応痙攣してる」 みさお「……ほんとですね。でもなんだか、     安心は出来たんですけどこれはこれでヒドイ有様というかなんというか……」 悠介 「相手を完全に馬鹿にしきった態度を取るヤツは嫌いだ。     自分が高位だとか相手が下位だとかで優劣を決めるヤツはもっと嫌いだ」 みさお「その末路がこれですもんね……たまりませんよ」 悠介 「その点、高位精霊であるニンフたちはやさしいやつらだよ。     このアホゥとは大違いだ」 みさお「……精霊にアホゥとかたわけとか言ったのって、多分悠介さんくらいですよ」 みさおは気絶した精霊が珍しいのか、 倒れたウィルオウィスプの頬をついついと突付いている。 それに、何故かシェイドまで参戦して突付き始めた。 彰利 「おぉ!面白そうなことやってるでねが!オラも混ぜれぇ〜〜!!」 さらに彰利が参戦すると、気絶したウィルオウィスプは遊び道具と化した。 シェイド『同じ実力を持った相手がこうではな。さすがに驚いた。      だがまあこいつが気絶するなどこれが最初で最後だろう。      今まで生意気な口を利いた分、遊ばせてもらうとしよう』  ……にーう。 彰利 「おぉ……すげぇぜみさおさん!こいつの頬、思ったよりずっと伸びる!」 みさお「わ、ほんとですねっ!」 彰利 「う、うむ!ならばここをこうして、こうひっぱって……」  にうにう、に〜〜う……ぐいぐい……。 彰利         「ガイア!見参!!」 悠介&みさお&シェイド『ぶふっ!?』 顔を引っ張られ、無理矢理表情を変形させられたウィルは、 それはもう確かな極上ガイアスマイルを作らされていた。 もちろん俺とみさおは吹き出し、それだけでなくシェイドまでもが吹き出す始末。 ……そこでふと思い立つと、俺は契約した全ての精霊を召喚した。 根源精霊『マスター(悠介さま)、どう───ふぶっ!?』 高位精霊『マス───!?か、かふっ!?ぷくっ……!!』 で、召喚された者の全てが強い光の気配に振り向くと、 その先に居た極上ガイアスマイルをしたウィルを見て顔を逸らした。 いつだって厳しい雰囲気を出していたシルフでさえ例外ではない。 ノーム『面白そうなことやってるなー、オイラも混ぜろ〜』 サラマ『昔からこいつは気に入らなかった。よし、私も混ぜろ』 シルフ『ぶふっ……くっ……わ、わたしは、いい……』 ディー『え?え?えっと……』 四大元素はそれぞれの反応を見せつつ、半分がウィルへの悪戯に参加。 もう半分は傍観することになったらしい。 ニーディアは俺の隣に腰を降ろすと、 『お前の傍は飽きが来そうにない』と言って小さく笑った。 ドリアード『ウィルオウィスプは自信過剰なところがありましたから。       自分は大精霊がどうとかと威張っている割に、       その実自分より高位であるわたしたちにも威圧的でした』 オレアード『その点を上げれば、シェイドはまだいい方です』 ネレイド 『この子は少し頭が固いのですよ。       丁度いい機会です、少し心を穏やかにして差し上げましょう』 ナパイア 『それはいい考えですね』 アルセイド『………』 ナイアード『さ、アルセイド。遠慮などせずに悪戯してしまいなさい。       あなたが一番、ウィルオウィスプには迷惑していたのですから』 アルセイド『………』(こくこく) ……えーと。 悠介   「……いい天気だな」 ニーディア『そうだな、マスター』 正直、あとはある意味地獄絵図だった。 ウィルをいじくることで、俺と契約した精霊たちとシェイドはすっかり意気投合。 上下関係を気にすることもなく、ただウィルをいじくることのみに集中した。 その中ですっかり調子に乗った彰利がウィルの顔にヒゲを書くわ肉を書くわ。 その様子を離れて見ていた俺とニーディアは、 精霊たちの塊の中から絶えず聞こえてくる笑い声に小さく息を吐いた。 悠介   「元気だな、みんな」 ニーディア『そうだな。我はこうしてのんびりしている方が性に合う』 悠介   「奇遇だな、俺もだ」 ニーディア『何が奇遇なものか。言っただろう、元々お前と我は属性としての相性がいい』 悠介   「……そうだったな。だったら───ディル、出てきてくれ」 背中に手を伸ばし、皇竜珠をココンと突付いた。 するとその場に現れるディルゼイル。 ディル『……賑やかなものだな、王よ』 開口一番はそれだった。 もちろん溜め息込みだ。 ニーディア『飛竜か』 悠介   「ああ。俺と気が合うなんていう珍しいヤツ第二号だ」 ニーディア『二号か。一号は……訊くまでもないか』 悠介   「だろ」 言って、喧噪の中心に居る親友を見た。 いまやウンディーネも、 チラチラと悪戯現場を見ていたシルフも参戦して、激しく笑い合っている。 微笑ましい……のかは微妙だが、悪い気はしなかった。 悠介   「あ、そういえば……って、       ニーディアに訊いて解るのかが解らないが、ちょっと訊いていいか?」 ニーディア『構わん。どうしたマスター』 悠介   「ああ、実はさ……」 俺は少し疑問に思っていたことをニーディアに話した。 自分でも驚くくらいに体の調子がいいことや、 戦っている最中でも少しずつ力が伸びていること。 そして、イメージを纏める速度や範囲が伸びてきていることを。 正直、“不避死を齎す破生の竜槍”と “三十矢の地槍”を合わせた創造が出来るなんて思わなかった。 あの時は無我夢中じみた状態だったから出来たんだろうと思ったが、 それを再び創れる確信が自分の中にある。 それはイージスにしたってそうで、 あれはいつの間にか俺の中にあったイメージの塊を引き出したものだった。 ニーディア『……その答えは簡単だろう。       お前は召喚獣や飛竜と契約、または仲間にすることで潜在意識を伸ばした。       それだけのことだ』 悠介   「それだけのことって……簡単に言うなぁ。       あのさ、召喚獣ならまだしも、       飛竜を仲間にすることで潜在意識が伸びたりするのか?」 ニーディア『……飛竜を従える際、その手に持つ物はなんだ?』 悠介   「なんだ、って……竜王の珠───って、まさか……」 ニーディア『そのまさかだ。竜王の珠を持っているのなら知らぬ筈は無いと思うが、       竜王の珠には古くから謎とされていた理が未だ謎のまま眠っている。       それを持てば、何かしらの影響が出ても不思議はなかろう』 悠介   「………」 ほんと、ファンタジーってやつは……何がどういう効果を齎すなんて解ったもんじゃない。 悠介   「じゃあ、またいつか突然創造の幅が広がるなんてことが起こるっていうのか」 ニーディア『それはお前次第だろう。お前の中の情報によれば、       お前が行使する創造の理力とはお前のイメージを具現化したものだろう。       それはお前の内側から放たれるものであって、       誰かの内側から放たれるものではない。       これは予測でしかないが、お前の言うイージスやその槍とやらも、       既にお前の内側でイメージされていたものなのではないか?』 悠介   「……既に……イメージされていた?」 ニーディア『そうだ。それが何かのきっかけで放たれた。       無論きっかけというのは召喚獣との契約や竜王の珠、精霊との契約だ。       イメージとしては形を作っていたが、具現には至らぬ       【こういうことが出来たらいい】という思念でしかなかったものが、       そういったきっかけのお蔭で完成に至った、と。我はそう考える』 悠介   「………」 人間、誰しもが『こうできたらいい』を考える。 だが考えるだけであり、それが真実として放てるものなど滅多。 子供が漫画を読んで『空を飛びたい』と思うとか、 彰利が『スタンド能力が欲しい』とか思うのもそれと同じだ。 その思いは日々少しずつ固まっていき、やがて構築される。 だけどそれを具現化する能力が人には無い。 ゆえにいつかは諦め、しかし心の中には確かなイメージがずっと残る。 ……そう考えると、ああ確かにと思うものはいくつかあった。 ゼノとの戦いから今まで、相手の攻撃を跳ね返せたらいいのにとずっと考えていた。 それこそがイージスの原型となったイメージ。 そして、芯を穿つだけじゃなく、三十の鏃を降らすだけでなく、 そのふたつを合わせたものを放ちたいと願った具現が“芯を穿つ三十矢の緋竜槍”。 ニーディア『思考など、枷が外れれば無限に広がるものだ。       そしてお前は【こうしたい、こうでありたい】を具現化出来る。       ……そこに迷いなどは余計なものだ。迷うなよ、マスター』 悠介   「ニーディア……あ」 ニーディアの言葉を胸に刻み込み、何気なく正面を見た。 するとそこでは何か妙な動きがあり、精霊たちや彰利やみさおが慌てていた。 ……なんとなく、ピンとくる。 まあなにを確認するまでもなく、それは爆発となったわけだが。 ウィル『貴様らなにをしているーーーっ!!!』 総員 『キャーーーッ!!!』 ウィルの叫びとともに、蜘蛛の子を散らすように散開するみんな。 彰利に何を吹き込まれたのかは予想出来るが、 その全てが怪虫に襲われそうになった仲田くんの叫びを上げていた。 そんな中で彰利が俺の背後に回ると─── 彰利 「よし悠介!もう一発だ!俺達はまだまだ遊び足りないッッ!!」 と、一言では言い表せない美術を顔面全体に描かれたウィルを指差して言う。 悠介 「いやオイ……普通あそこまでやれば十分だろ……。     さすがに可哀相に思えてきたぞ……?」 彰利 「ノンノン!俺はもっとアルセイドちゃんの美術の巧みを見たいのだ!!     知ってる!?アルセイドちゃんすげぇ絵が上手いのよ!?     ……ホレ、見てみろウィルオウィスプの背中」 悠介 「背中って…………ぶっは!?」 クスクスと笑う精霊たちを追い払うように様々な方向へ振り向いて威嚇しているウィル。 その背が俺達の居る方へ向けられた時、 俺は『完璧超人ネプチューンマン』との邂逅を果たした。 悠介 「〜〜〜〜〜っ……!!」 彰利 「ぶっははははははは!!!!ね!?ね!?う、上手いっしょ!?     もう俺爆笑しちまったよ!涙止まらなかったよ!!     こんなヤツだ〜って教えただけでアレだよ!?もう最強!!」 彰利が俺の背中をバンバン叩く。 笑いが止まらない所為で力が篭っているが、これはこれで丁度よかった。 ……もちろん、そうでもしないと本気で笑っちまいそうだったからだ。 いやもう威厳もなにもあったもんじゃない。 ウィル『───!?……』 やがてウィルの目が俺を捉えると、ウィルはズンズンと歩み寄ってきた。 そして言う。 ウィル『……認めよう。私の負けだ、人間。お前は何を望む』 人間に負けたのが悔しいのか、口早にそう言った。 何を望む、か……。 悠介 「なんでもいいのか?」 ウィル『敗者に情けなど必要ない。早く言えグズめ』 悠介 「───……」 確かに情けなんて必要なさそうだった。 悠介 「じゃあ、その傲慢な態度と性格を直した状態で契約してくれ」 ウィル『なっ……!?なんだと貴様!この私を誰だと思っている!!』 彰利 「ネプチューンマン」 全員 『ぶふっ!!』 ウィルを指差す彰利の一言で、その場に居た全員が吹き出した。 ウィル『ネプ……!?なんだそれは!!いやいい!     ともかくそのような願いなど聞き入れられない!!』 彰利 「その言い方からすると、一応自分が性格悪くて傲慢だって自覚はあるのね」 全員 『ぶくっ……!!〜〜〜〜っ……!!』 みんな笑いを堪えるのに必死だ。 ウィル『貴様ら……何がおかしい!!』 彰利 「キ、キミの全てがおかしい!!」 彰利はまるでドラマで言う『キミの全てが愛しい!』と言うかのように叫んだ。 ……あとは、言うまでもない。 光の聖堂は爆笑に飲まれ、その中心には顔を真っ赤にして怒るウィルが居た。 やがてそれぞれの精霊を睨みつけて、その度に『笑うな』と叫ぶ───そんな中。 ポム。 ウィル『───!?なんだ!!』 彰利 「オイ……笑われてんぜ?」 彰利がその肩を叩くと、酷く見下した表情でそう言ボゴシャア!! 彰利 「ヘキャアアーーーーーーオ!!!!」 あ、殴られた。 ウィル『貴様……!なんだその見下した態度は!死にたいのか!』 悠介 「……じゃ、こっちも言わせてもらう。なんだよその見下した態度」 ウィル『なに……!?人間風情が何を───』 悠介 「その人間風情に負けたのはお前だろ。      それも、自分で出した条件も守れずに二度負けたたわけだ」 ウィル『ぐっ……貴様!!この私を虚仮(コケ)にしたその態度!死を以って償え!!』 悠介 「……“無限を紡ぐ剣槍の瞬き(インフィニティ・バレット・アームズ)”」  コォッ───ジャギィンッ!! ウィル『───っ……!!は……!!』 悠介 「動かないでくれ。一歩でも動けば蜂の巣以上に刺し穿つ」 刹那に弾けさせたイメージの具現、 無数の剣と槍がウィルを完全に包囲した状態で停止する。 悠介 「脅しなんて方法使わせるな、たわけ者。自分で言ったことも守れないのか?」 彰利 「そィでいきなり逆ギレかよ。そりゃ根性あるつゥかアホだぜスッパァーーッ!!」 みさお「ある意味彰衛門さんみたいな人ですよね。平気でウソついてますし」 彰利 「みさおちゃんそれヒドイ……」 悠介 「……とにかく。そのなんでもかんでも見下す態度、改めてくれ。     二度負けたんだ、態度を改めるのと契約、ふたつとも叶えてもらうぞ」 ウィル『ふざけるなよ……何故私が人間の指図などを受けねばならぬ……!』 全員 『負けたから』 ウィル『ぐっ……!!』 だってしょうがない。 これは元々、そういう戦いだったのだから。 ウィル 『くそっ……!この私が人間の支配下に……!?      それも、こんなモミアゲだけが見事な人間ごときに……!!      ───ハッ、しかし人間とは進化しない生き物だな、      これだけ長い時間をかけても、未だ頭が成長していない。      やはり人の歴史などその程度だ。地盤があったところでそれは無駄だ!』 悠介  「───……」 彰利  「あ」 みさお 「あ」 シェイド『……愚か』 バジュンッ!!……その場にあった剣と槍の全てが消える。 それとともに俺は、ゆっくりとウィルのもとへと歩いてゆく。 ウィル『……?はっ、ようやく自分のしていることの愚かさに気づいたか。     そうだ、私は脅しなどに屈する存在ではない。     剣と槍を納めて正解だったな、もう少し遅ければ貴様は光の餌食に───』 彰利 「……エイメン」  バゴチャァアンッ!!! ウィル『うぶぅっ!!?』 視認を許さない速度を意識して振るわれた拳が、 まるで鈍器を鞭にしたような衝撃とともにウィルを床に叩きつけた。 ウィル『がはっ……!な、なにをする貴様……!私が誰か───』  ゴッ───ドゴォンッ!! ウィル『ギィイッ!!?』 起き上がったウィルの顔に合わせて拳を振るい、もう一度床に叩きつける。 衝撃が強すぎたのか、ウィルは聖堂の床を滑って光の壁にぶつかった。 俺はゆっくりとそれを追うように歩き、いまいち働かない思考を隅に追い遣った。 すると頭の中で混沌が蠢いた。 それはチリチリと火がつくように燃え広がると、 隅に追い遣った思考を次々と燃やしてゆく。 みさお「あ、うあ……こ、この波動って……」 彰利 「せ、精霊のみなさーーーん!!     悠介を止めろ!!カオスの波動だ!シャレにならん!!」 悠介 「オォオオオオオオオオオッ!!!!!」 ウィル『ひっ───く、来るなぁあああっ!!!』 ドゴゴシャメゴシャバゴシャドゴメゴボゴシャパグシャドゴォンッ!!!! ウィル『ひぎゃああああああーーーーーーーっ!!!!』 …………。 ……思考を隅に追い遣ってからのことは、正直よく覚えていない。 ハタと気づけば視界の隅にはボロボロになったウィルオウィスプが転がっていて、 俺は俺でシェイドに抑えられて小さく息を吐いていたところだった。 なんでも、いろいろ試したけど混沌に干渉出来たのはシェイドだけだったんだそうだ。 まあつまり……シェイドが俺の中のカオスの波動を抑えつけてくれたお蔭で、 こうして正気に戻ることが出来たらしい。 ───……ちなみに。 ボコボコになって転がってたウィルオウィスプは、 どうしてか目を覚ますと同時に俺に忠誠を誓ってきた。 俺は訳が解らず、その疑問を彰利やみさおにぶつけたが…… みんな一様に悲しげに俺の肩を叩くだけだった。 ともあれウィルの性格は改善され、契約した今では皆にやさしい……いや。 俺だけにやさしい精霊となっていた。 ……その様子を見るみんなが何故哀れんだ表情をするのかは、多分永遠の謎なんだと思う。 Next Menu back