───FantasticFantasia-Set45/無の精霊の住まう場所の一歩手前へ───
【ケース103:ヤムベリング=ホトマシー/退屈(再)】 悠介とツンツン頭が小娘を連れて消えてから一時間くらいか。 わたしは大庭園をゆっくりと歩きながら、あの三人が何処に行ったのかを考えていた。 ベリー「はぁ……」 ふと視線を移せば、 同じく退屈そうにそこらを駆け回ったり飛び回ったりしている智英と荒焼き。 ……そういえばこいつらの目的ってなんなんだろう。 世界征服がどうとか言ってた気もするけど─── ベリー「ねぇちょっと。訊いておきたいことがあるわ、答えなさい」 智英 「モミ?なんだモミアゲ」 荒焼き「まあいいでしょう、とんでもなく退屈でしたから、特別に聞いてあげますよ」 ベリー「いちいちむかつくわね……まあいいわ。     あなたたちの目的はなに?なにをしたくてこの地界に来たの?」 話を逸らすことを許さない、といったふうに威圧を込めて言った。 けどふたりはあまり気にするふうでもなく言葉を放つ。 荒焼き「もう忘れたのですか、歳を取るといやですね。     私はこんな礼儀正しい自分が嫌だから、     変態オカマホモコンの称号が欲しくてはるばるこの地界まで来たんですよ。     そのついでに彰利くんには冥月刀というものを譲ってもらい、世界征服を……」 智英 「おいらは人間になりたくて、創造の理力を欲したんだモミアゲ。     最初は神界を探していたんだが、     どうにも地界に居るとの情報を得たんでなモミアゲ」 ベリー「ふーん……ねぇ、なんで人間になりたいの?」 智英 「よく聞いてくれたなモミアゲ!!」 ベリー「誰がモミアゲよ!!」 智英 「これは口癖だって言ってるだろモミアゲ!ちゃんと聞けモミアゲ!!」 ベリー「くっは……!!」 だめだ……どうしても自分がモミアゲだって言われてるような気がしてならない。 話きけなくてもいいから、殴っちゃおうか……! 智英 「よく聞けモミアゲ。おいらが人間になりたいのは、     交配というものをしてみたいからなんだぞモミアゲ」 ベリー「うわくっだらない理由……!!」 智英 「なんだとてめぇモミアゲ!!おいらには『男女』の概念が無いから     そういうのに憧れるのは当然なんだ解ったかモミアゲ!!」 ベリー「モミアゲじゃないって言ってるでしょ!?」 智英 「だからこれは口癖だって言ってるだろモミアゲ!!     頭悪いのかてめぇモミアゲ!!」 ベリー「ギィイイイイーーーーーーッ!!!!」 あぁダメだ、この謎漢と話してると本気で腹が立ってくる。 待ってる時間、どれくらい殴ったのかは解らないけど、不死身なのが余計にむかつく。 早く戻ってきなさいよ悠介……!!わたしもうこいつらの相手するの嫌だ……!! 【ケース104:晦悠介/ココロのなんたら】 ウィルとの契約が済むと、光の壁が出来ていた場所は再び崖となった。 そうなると、全体に見て半球体のような光の聖堂が太陽に当てられる。 光の壁があった状態でもうっすらと外の景色は見えたが、 今度はじっくり眺めることが出来た。 彰利 「いンやぁ〜〜……やっぱ見晴らしがえぇの〜〜!!」 みさお「わぁ……こんな場所だったんですか……」 彰利 「うンむ。しかしの、みさおや。     ここも確かにステキな風景だが、水中都市もかなりのモンじゃったぜ?」 みさお「水中……都市?なんですか、それ」 彰利 「ほっほっほ、なんともステキな場所のことじゃあ」 みさお「……?もっとちゃんと教えてくださいよぅ」 彰利はみさおの問い掛けを笑いで返す。 みさおはというと、そんな彰利の態度に少しイジケを見せ始めて、頬を膨らませた。 ……仕方ないな、本当に。 悠介 「えっとな、この光の聖堂に来る前に水中都市を通ったんだ。     全体が水中に埋もれててな、     それでも上の方から差し込む陽の光がゆらゆらと水中を照らして……まあその、     言葉じゃ喩え切れないくらいにいい景色だった」 みさお「そ、そんなにいい景色だったんですか?」 悠介 「ああ。水深が深い分、景色が揺れ動かないからな。     全体的に蒼く透き通った景色を見たんだ、心が晴れる感覚を覚えた。     あれを見たら改めて思うぞ。日本の海なんてひどいもんだ」 みさお「う、うう……わたしも見てみたいです、いいですか?」 悠介 「あー……それがな」 俺はみさおを連れて、転移してきた位置へ戻った。 だが転移して塔に戻る、なんてことはなく───何も作動しない。 悠介 「残念ながら転移装置が作動しないんだ。ここから行ければ速かったんだが……」 みさお「だ、だったらもう一度手順を踏まえて行きましょう!     手伝えることがあったらやりますから!見てみたいんです!」 悠介 「………」 ……もしかしてみさおのやつ、 『俺達が見た景色』を自分だけ見れないことに 仲間はずれにされたような意識を覚えているだけ……か? まあ、それでもいい。 なんにでも興味を持つのはいいことだ。 悠介 「まあそれはいいんだけどな。おい彰利ー!どうするー!?     転移装置作動しないから自力で降りるしかないみたいだぞー!!」 彰利 「オウヨー!!こっから飛び降りようぜ親友よー!!     一度やってみたいことがあったんじゃよー!!」 ……やってみたいこと? みさお「うあ……なんだか物凄く嫌な予感がします……」 悠介 「ん……俺はそうでもないが」 みさお「そうですか?どうせまたヘンなことに付き合わされるのがオチですよ?」 悠介 「否定出来ないな……」 ともあれ俺とみさおは彰利が遊んでいる場所まで行くと、 彰利にその詳細を訊くことにした。 ───……。 ……ややあって。  シャララララララン……♪───ゴォオオオオッ───!! ……俺達は光の聖堂から飛び降りていた。 彰利 「大丈夫さぁ前に進もっお〜〜♪太陽をいつもむ〜ねっにぃ〜〜♪」 彰利のやりたいことというのは、 ただ『高いところから落ちた状態でONEPIECEの真似をしたい』というものだった。 彰利 「繋いだ手伝わるパァ〜ゥワァ……願いを掴〜まえよ〜およ〜♪」 何故か『パワー』の部分だけ、 マヴカプ2のサノスが使う『ガントレット・パワー』の声で歌ってた。 彰利 「……あのー!悠介ー!?」 悠介 「あー!?なんだー!?」 彰利 「思ったより面白くねぇよこれー!!どうしよー!!」 悠介 「かっ……俺に言われたって知るかぁあーーっ!!」 みさお「本当に考え無しですね……」 ちなみに『月空力かなんかで転移すれば速いんじゃないか』という案は却下された。 どうやら光の聖堂ではありとあらゆる能力が使えなくなるらしいのだ。 そんな中で俺が能力を使えたのは─── 恐らく創造の理力がそれだけ規格外の能力だったということだろう。 彰利 「おー!地面が見えてきたぞー!!着地の準備はよろしいかー!?」 悠介 「いつでも大丈夫だ!それよりここらでも月操力が使えるかどうか     試しておいた方がいいんじゃないかー!?」 彰利 「オウヨー!!───……オーケー反応アリ!!十分使えるぜ〜〜〜!!」 悠介 「みさおは大丈夫かー!?」 みさお「はいー!大丈夫ですーっ!!」 物凄い速さで落下しているため、大声で叫び合わないと聞こえやしない。 地面が近くなるまで何度となくそんな遣り取りをした。 やがて地面が間近に迫ると、俺は理力を解放して風を創造───しようと思ったが、 意識が『風といったらシルフか』という思考を生んだためかシルフが召喚され、 落下する俺とみさおを落下から守ると静かに地面に降ろした。 そんな中───ズボォッ!! 彰利 「ゴゲッ!?」 荒焼き「ぐぼっ!?」 彰利の落下地点に立っていた荒焼きの口内に、彰利はものの見事に落下した。 というか食われた。 声  「オエェエエエエエッ!!!ゴエッ!!くっさぁあああああああっ!!!!     ギャオォオオオーーーーーーーーーーーーッ!!!!!」 荒焼きの口から飛び出た足がバタバタと暴れる。 その様はまるで、セルに食われかけた人造人間18号だ。 声  「タスケテー!!タスケテー!!タスッ……オエッ!!げ、げぇえええ……!!」  ごぼぷっ……げぼごぼ…… 荒焼き「ハオッ!?な、なにやら腹の中に気色の悪い感触が……オゲェエエエエッ!!!     た、助けてくださいこの人吐いてらっしゃいます!!」 悠介 「よし任せろ!いくぞシルフ!」 シルフ『了解だマスター』 疾駆とともに抜き去った屠竜剣にシルフが力を流し込む。 さらに皇竜珠から蒼竜の力を引き出すと、その力を遠慮も無しに振り切った。 悠介 「“風霊疾風剣(ストームウェイヴ)
”」 ヴオッ───ファァアアアアアンッ!!!! 荒焼き「ほぎゃああああああーーーーーーーっ!!!!!」 声  「アレーーーーーーッ!!!!」 剣から放たれた風はまるで一点に集中された台風のよう。 彰利を飲み込んだ荒焼きは物凄い速さで吹き飛ぶと空界の下の大地へと落下し─── ……やがて、見えなくなった。 悠介 「お前は強かったよ……だが間違った強さだった……」 みさお「それ、そのまま悠介さんに当てはまると思います」 悠介 「馬鹿お前、もしあのまま荒焼きが彰利を吐いたとしたら、     彰利は腐敗のアンコまみれで生れ落ちるんだぞ?     みさお、お前だったら自分の体が汚れてたらどうする?」 みさお「え……それはもちろん洗いますけど───あ」 悠介 「そういうことだ。この大地は汚しちゃならない。     だから彰利には悪いけど、落とさせてもらった」 みさお「……でも、荒焼きさんのアンコが危険だとしても、     直接的に吐いたわけじゃないんですよね。     元はといえば彰衛門さんの落下地点と、     なかなかブレーキを掛けなかった彰衛門さんが悪いんですし。     なんていうか……つくづく荒焼きさんって不幸ですね……」 みさおが遠い下の大地を見下ろして悲しみの溜め息を吐いた。 ベリー「あー!ちょっと悠介ー!?今まで何処に居たのよぅ!」 悠介 「……天!!」 みさお「いえあの、悠介さん?ラオウの真似はいいですから」 悠介 「そうだな。じゃあベリー、次行くか」 ベリー「次?……ああ、光の精霊探すのよね?」 悠介 「違う違う、スピリットオブノートに会いに行くんだ。     もう光の精霊とは契約したから」 ベリー「…………え?」 悠介 「あー……出てきてくれ、ウィルオウィスプ」 イメージを展開、ウィルを必要と思うことで、右手中指の指輪に意識を込めた。 するとそこから光の精霊が渦を巻いて降り立つ。 ウィル『お呼びですかマスター。     精霊・ウィルオウィスプ、マスターの命により参上しました』 悠介 「……な?」 ベリー「ふわ……こ、これがそうなの?なんていうかすごく礼儀正しいのね……。     大精霊っていうくらいだからもっと偉ぶってるかと思ったのに……」 みさお「……いろいろあるんです、精霊にも」 ベリー「……?なにそれ」 悠介 「いろいろあるんだ」 ベリー「……うぅ?なんかずっこい。わたしにだけ内緒で光の聖堂に行って来たの?」 悠介 「なりゆきだったんだ、気にするな」 みさお「そうですよ。わたしなんて眠ってた所為で     綺麗な景色っていうのを見逃しちゃったんですよ?」 ベリー「それってただの自業自得じゃない」 みさお「うぐ……」 まったくだ、とはいえないな。 休もうって言ってたのに連れてきてしまったのは俺だ。 悠介 「じゃあどうする?水中都市に行ってみるか?……っと、戻ってくれウィル」 ウィル『畏まりましたマスタ−。必要な時はいつでも』 ウィルが白と黄を混ぜた色の指輪に消えてゆく。 ベリー「いいの?時間、無いんじゃない?」 悠介 「見るくらいならどうとでもなるだろ?じゃあ───」 みさお「待ってください……あの、わたしから言い出しておいてなんですけど……     落ちていった彰衛門さんが気になります。先に進みましょう」 悠介 「……いいのか?」 みさお「はい。水中都市の方はいつでも行けますから。     だからまずはやらなきゃいけないことをやりましょう」 悠介 「……ん、そうだな」 俺はみさおの提案に頷くと、しぶるベリ−を宥めながら歩いた。 悠介 「……って、ちょっと待て。ここから下の大地に行くにはどうしたらいいんだ?」 ベリー「…………落ちるしかないんじゃない?」 悠介 「それはいやだな───悪いウィル、また出てきてくれ」 俺は再びウィルを召喚すると、この浮遊島の在り方を訊くことにした。 ───で。 どうやらこの浮遊島の端にある小さな建物に転移装置があるらしいことが解り、 俺たちはその装置のある建物に訪れていた。 ベリー「ここが?」 ウィル『その通りだ魔術師。ここから下の大地に行ける』 みさお「何処に下りるんですか?」 ウィル『棒人間の集落だ。     今は長い年月のため魔力自体が弱まっているため転移が作動しないが、     再び魔力を汲々すればいつでも利用できるようになるだろう』 悠介 「魔力の汲々か……ていうかまさか棒人間の集落と繋がってるとはなぁ。     誰もここに来ないわけだよ。……待てよ?ここと集落が繋がってるってことはだ。     棒人間の集落側からもこっちに来ることが出来るってことだよな?」 ウィル『その通りでございますマスター。     しかし、恐らく棒人間の集落の方の転移魔方陣の魔力も尽きているのでしょう。     この長い歴史の中、人であろうが棒人間であろうが     ここを訪れたのは貴方さまのみです』 ベリー「……なんか対応に差を感じるんだけど?」 ウィル『何故私が主でもない貴様に敬語を使わねばならない。身の程を知れ』 ベリー「うーーーーっひゃーーーーーっ!!辛辣ーーーーーーっ!!!」 悠介 「落ち着けベリー、うるさい」 ベリー「うるっ……!?」 悠介 「で……魔力の汲々ってのはどうすればいいんだ?」 なにやらヨロヨロと俺達から離れ、イジケ始めたベリーを無視して会話を続ける。 ウィル『お任せください。この転移魔方陣の魔力は私から流れるもの。     私以外が汲々しようとしたところで成功などしません。     そう───……マスター、たとえ貴方であろうと』 悠介 「そうなのか?じゃあ───……んー……“複製せよ汝(クリエイション)”」 ウィルの魔力の波動を分析し、それを小さな建物…… 平たく言えば比較的豪華な公園にありそうな日陰小屋のような建物。 その天井にあった球体に、分析したものを複製して振りかけた。 すると───ヴゥウウウウウウン……!! 低い唸りを上げて、魔方陣が輝きだした。 悠介 「……出来たが」 ウィル『恐れ入りました……自信があったとはいえ、     無礼な発言の数々……お許しください……』 悠介 「いやいいよ、俺も意地が悪かった。今度からは頼むよ」 ウィル『あ、有り難き幸せ!そう……そうです、何を躊躇することがありましょう……!     マスターは私をただひとり破ってみせた御仁……!     その方に心から尽くすことに───もはや戸惑いなど皆無!!     ありがとうございますマスター!私は───私は目覚めました!!』 悠介 「……あー……」 ベリー(……ちょっと……!何かに目覚めちゃったみたいだけど……いいの?) 悠介 (俺に言われたって知るか……!!) ウィル『マスター!私は一生貴方に付いていきますよ!!』 それ=死ぬまで付き纏う。 ……まあ、退屈はしないと思うからいいかもしれない。 悠介 「言っておくけど俺、あと三千年は生きるぞ?それでもいいのか?」 ウィル『さ、三千年!?たったそれだけの間ですか!?     そ、そうだ!人の域を超えて精霊体になってみては如何か!!     恐らくスピリットオブノートならばそれも可能かと───!!』 悠介 「だぁっ!やめろっ!三千年生きれば十分だろうが!!」 ウィル『せめて万は生きてもらわなければ嫌でございます』 悠介 「………」 どうしよう、こいつマジだ。 ホモッ気が無いのが救いだが、 どうやらこいつの中で『忠誠』が本当のものになってしまったらしい。 ああ……あれだな。 親にもぶたれたことのないヤツがある日誰かにぶたれることで、 そいつを気に入るとかいうパターンだ……。 ウィル『さぁ行きましょうマスター!スピリットオブノートはエルフの里に居ます!!     ここでのんびりしている暇はありませんよ!!』 悠介 「あっ……ちょ、待て!そんな引っ張るな!ベ、ベリー!こいつ止めてくれ!!」 ベリー「ほら、なんだかんだで人外には気に入られやすいじゃない。     やーよ、だってその精霊、悠介以外にはやさしくないんでしょ?」 ウィル『当然だ魔術師……貴様はマスターの知り合いのようだから危害は加えない。     だがもしマスターを裏切りでもすれば、その時は……!!』 悠介 「……お前もう戻ってろ」 ウィル『なっ……マ、マスター!?私はまだ言いたいことが───』 ガボシュンッ!!───……ウィルの頭を引っ掴んで、無理矢理指輪の中に押し戻した。 好いてくれるのは結構だけど、屈折しすぎてるのはどうだろう。 悠介 「……行くか」 みさお「そう……ですね……」 そうして俺達は、どこか暗い雰囲気を引きずったままに地上へと転移した。 なんていうか……はぁ、先行き不安だ……。 【ケース105:晦悠介(再)/モンゴル・民族・アブラスマシ・ゲ、ゲ……ゲルググ?】 ───……ィィィ……イイイイイン……ビジュンッ!! 悠介 「───お……」 転移魔方陣に乗り、ふと気づけば見覚えのある景色……と、なんだか懐かしい物体。 それはもちろん棒人間どもだ。 ここにくるのもどれくらいぶりになるかな。 本来ならそう経ってないんだけど、修行の最中は時間の間隔をずらしたからよく解らない。 俺からしてみれば少なくとも一ヶ月は来てなかった筈だ。 悠介  「懐かしい、って言っていいのかどうか……」 シークン「ハイホーハイホー……ム!?」 なにやら慌ただしく動き回っていたシークンが俺を見つけると、 表情はあまり変わらないけど雰囲気的に『クワッ!』とした。 シークン「インヴェイジョン!!」 スークン「───!?アンローフルインヴェイジョン!!」 シークンの声はあっという間に集落に行き届いた。 それとともにすぐさまに棒人間たちがワラワラと集まり、俺達を……というか俺を囲んだ。 まあ……小さな集落だからな、声もよく届くし集まるのも速いさ。 スークン「貴様!性懲りも無くまた来たのか!なんの用だてめぇ!!」 シークン「貴様に溺死させられたこと、忘れたわけじゃないぞ!!」 ニークン「死ね!!」 悠介  「……相変わらず直球だなキサマ……」 俺は、素直に思ったことをぶつけてくる棒人間を睨んだ。(主にニークン) しかしそんな睨みを完全に無視すると、棒人間たちは再び俺を中心にして動き出した。 シークン「円の動き」 スークン「円の動き」 悠介  「って!やめろ!意味あるのかこれ!」 シークン「ふははははは!これが今までと同じ円の動きと思うなよ!!      今回の円の動きは───」 悠介  「……円の動きは……?」 シークン「スピードが違う!!───行くぞみんな!」 全員  『オーライ!!』 ヒタタタタタタタ……!! 棒人間どもは合図とともに叫ぶと、物凄い速さで円の動きをした。 シークン「ふはははは!!どうだ!      あまりの速さに貴様は俺が何処に居るのかも解らないまま目を回すんだ!!      はははははは!!ははは……は、はー!!はー!!ははは……は、は……!!」 ヒタタ……ヒタ……ヒタヒタ……ヒタ…… シークン「ハーッ!!ハーッ!!ゲフッ!〜〜……かはっ!へはー!へはー!!」 悠介  「……あのなぁ……」 自信満々にしていたシークンと他の棒人間たちは、 俺がなにをするわけでもなく息切れで停止した。 ……つくづく弱いなこいつら。 シークン「お、おのれ……!一目見ただけでこの技の弱点を見切るとは……!」 悠介  「あのさ、俺……行っていいか?」 ノークン「逃げるのかクズが!!」 スークン「クズが!クズが!」 悠介  「クズって……お前らな、ちょっとは人の話を───」 ノークン「黙れクズが!」 ニークン「死ね!!」 ボゴシャアッ!! ニークン「キャーーーッ!!?」 直球で大変失礼なニークンの顔面に俺の蹴りがめり込んだ。 しかし軽くやったつもりがニークンは吹き飛び、 地面をゴロゴロ転がるとぐったりと動かなくなった。 スークン「ニークン!?ニィーーーークーーーーーン!!!!」 シークン「ああっ!ニークンの顔が下段突きを食らったドイルさんみたいに!!」 ノークン「おのれキサマ!生きて帰れると思うなよ!?」 悠介  「まだ当分帰るつもりはないからどうでもいいが」 シークン「なにぃいい!?野宿するより家に帰った方がいいに決まってるでしょう!?」 スークン「決まってるでしょう!?」 ニークン「死ね!!」 メゴチャア!! ニークン「キャペェエーーーーーッ!!?」 ドゴチャメゴチャバキベキゴロゴロズシャーーアーーッ!! いつの間にか他の棒人間と一緒になって叫んでいたニークンの顔面に、 強烈なチョップブローをお見舞いした。 シークン「ニ、ニィイーーークーーーーン!!!!」 スークン「そんな!せっかく復活したのに!!」 ノークン「おのれキサマ……!!せっかく顔面ドイル状態から復活したニークンを、      よくも再びドイルさんに……!!」 悠介  「復活速度から考えろ!!いくらなんでも速すぎだろうが!!」 ノークン「俺達ゃ不死身だ、そんなの知らん」 悠介  「くあっ……!」 どうしたものか……! こいつらはただ通せんぼしているだけであって、俺に危害を加えたいわけじゃない。 だから全員ブチのめして進むのは間違ってるし……! 声  「フッ……どうやら困っているようだなモミアゲ……」 悠介 「帰れ」 声  「モミッ!?そんな振り向きもせず!?モミアゲ!!」 みさお「ていうか居たんですか智英さん」 智英 「庭園にひとり置いてかれて、適当に彷徨ってたら光る魔方陣を見つけたモミアゲ。     というわけでこいつらの相手はこのおいらに任せろモミアゲ」 ベリー「そんなこと言って、負けるのがオチむぐっ!?」 悠介 (しーーーっ!!) ベリー「むぐ……?」 結論を言おうとするベリーの口を咄嗟に押さえ、俺はこの場を智英に任せることにした。 その旨をベリーとみさおに話すと、ふたりとも一様に『なるほど』と頷いた。 悠介 「よし行けモミアゲ馬鹿!!今こそ貴様が勝利する時だ!!」 智英 「任せとけモミアゲ!!モミィヤァアーーーーーーーッ!!!!」 智英が棒人間たちに問答無用で襲い掛かる。 当然俺達はその隙にゆっくりとその場を離れ…… 悠介 「さらばだ、モミアゲ馬鹿……」 囲まれ、ボコボコにされてゆく智英を無情にも見捨てることで、 自由に羽ばたく鳥のように逃走した。 実力は弱くても強く生きろよ……。 ベリー「悠介ってなかなかヒドイね」 悠介 「自分に対して非友好的なヤツに心を開く馬鹿は居ないだろ?」 ベリー「あ……それはそっか。なるほどなるほど」 しかし……今さらだが、あの密漁者はどうなったんだろうか。 確かに棒人間の集落に転移させた筈だが……見たところ姿は見当たらなかった。 まあいいか、何がどうなるわけでもないだろうし。 悠介 「じゃあ急ぐか。ベリー、エルフの里は何処にあるんだ?」 ベリー「えーと……ここからだとほぼ反対側。大地を円形に考えるとほんと逆側よ」 悠介 「そうなのか?っていうと……どこらへんになるんだ?」 ベリー「ふむ。えーとね、実はねぇ……」 ベリーはわざともったいぶるような口調でニコニコしていた。 それでも軽く促すと、すぐに言葉を発した。 ベリー「えっとね、ウェルドゥーン山から行けるわよ?」 悠介 「……そうなのか?」 ベリー「ん、そう。今じゃわたしのこと怖がって行こうとする人なんて居ないけど、     ついこの前フォードのヤツが向かってったわ」 悠介 「フォードって……ああ」 そうか、屠竜剣の材料にはエルフの里の技術も必要だったっていってたから─── 悠介 「フォードってヤツとは顔見知りなのか?」 ベリー「え?あはは、そりゃそうよ。     空界の魔導術師や魔術師でフォード=ゼルブライトを知らないヤツは居ないわ」 悠介 「有名なヤツなのか。素材屋っていったっけ」 ベリー「そ。魔導術師や魔術師が行う研究には素材が必要になるからね、     その度に自分で素材を集めに行くのは面倒だし、魔導術師は体力が少ないから。     洞窟に行ってアレ取ったり〜なんてことしてたら研究する前に倒れちゃうわよ」 ……軟弱だな。 でも研究者には研究者の生き方ってものがあるだろうし。 ベリー「まあいいや、エルフの里にならすぐ転移出来るし。行く?」 悠介 「ああ頼む。少しでも時間は短縮したい」 みさお「そうですね、水中都市のこともありますし」 悠介 「……お前、何気に水中都市のこと気になりまくりか?」 みさお「そんなことないですっ!」 みさおはキッパリとそう言った。 俺はその心意気に素直に感心し、───次の瞬間には溜め息を吐いた。 言った言葉は良かったが、目が泳いでなければまだ良かった。 みさお「あの、ウェルドゥーン山ってどんなところなんですか?」 悠介 「マンドラゴラが縦横無尽に生えているおかしなところ。     まあベリーの家がある無人島って言えば解るか?」 みさお「あぁ……なるほど」 ベリー「ちょっと小娘、なによその目……」 みさお「いえなにも……行きましょうか」 ベリー「ぶー、なんか釈然としないわ……」 それでも式を描いてゆくベリー。 自分の頭の中に浮かび上がった問題は簡単に消滅してしまったようだった。 悠介 「直接エルフの里に降りるのか?」 ベリー「入り口前ね。エルフの里自体に魔導干渉を許さない膜が張られてるから。     だから手前に降りるしかないわけなのよー」 悠介 「そか、じゃあ」 声  「早速行くモミアゲ」 ベリー「そうね、それじゃ」 悠介 「え───や!ちょっと待て!!今大変失礼な声が───ぁあああああっ!!!」 ベリーはさっさと式を描いてしまうと、俺達が見ていた景色が変わっていった。 つーか……変わっていってしまった。 ───……。 ……ビジュンッ! ベリー「と〜ちゃ〜く」 智英 「ご苦労モミアゲ」 みさお「うひゃぁああああああっ!!!!」 転移した先───綺麗な森の中に降り立った俺達の中に、 ひとり余分なヤツが混ざっていた。 悠介 「お前……いつの間に……」 智英 「フッ……簡単なことだモミアゲ。     一度殺されたことで散ったあいつらの隙を突いて逃げてきたんだモミアゲ」 悠介 「帰れ」 智英 「おいらが帰る時───それは貴様をブッコロがして血肉を喰らって創造の理力を手     に入れて人間になった時だモミアゲ!!」 悠介 「………」 ……マテ。 こいつは一体なにをくっちゃべっているのだ? 悠介 「ひとつ……いいか?     相手をコロがして血肉を喰らうと創造の理力が手に入るなんて、誰から聞いた?」 智英 「独断だモミアゲ」 ベギャッチャァアッ!!! 智英 「モギャァアォオオオーーーッ!!!!」 悠介 「誰がモミアゲだ!!」 智英 「だ、だから……モミアゲフッ……!!これは口癖だモミアゲ……!!」 悠介 「直せ!今すぐ直せ!!つーかなんだってよりにもよって     『モミアゲ』が口癖なんだおのれはぁあああああっ!!!」 智英 「気づけばそうなってたモミアゲ!文句あるかモミアゲ!!」 悠介 「お前の住んでた世界じゃ文句が無いのに殴られるのが常識なのかナマモノ……!」 智英 「そうだモミアゲ」 ───だったら容赦は要らないようだった。  ドゴゴシャベキゴキバギョボギョドッギャァアーーーーーーーーーンッ!!!!! 智英 「ウギャアモミアゲェエエエーーーーーーーーーッ!!!!!!」 その日。 エルフの里前の森に、謎漢の叫び声が木霊した。 ───……。 ……。 さて、スッキリしたところで森を歩くこと数歩。 軽々と辿り着いたエルフの里(らしき場所)に小さく息を漏らした。 もちろん、落胆の類じゃない。 悠介 「綺麗な場所だな……空気が澄んでる」 ベリー「でしょ?っと、わたしの案内はここまで。あとは悠介たちで行って」 悠介 「へ?」 数歩歩いた程度で、ベリーはピタリと歩みを止めた。 俺はその意味を訊こうとしたが、俺が何か言う前にベリーは言った。 ベリー「い〜い?悠介。魔女ってのはいろいろとややこしいものなの。     味方なんて少ない方なんだから、     いちいちそうやって気にかけてると疲れるだけだぞー」 にこにこの笑顔で、ベリーはそう言った。 つまり……そういうことなんだろう。 ベリーとエルフの間になにがあったのかは知らないけど、 そこで訪れる言葉はやっぱりアレだ。 みさお「知りたがりは長生きしませんよ、悠介さん」 悠介 「解ってる。行くか」 そういうことだ。 知りたがって根掘り葉掘り訊くのは好むところじゃない。 自分が嫌いなことを相手にやるのは愚行だな。 溜め息ひとつ、俺はみさおとともに歩きだした。 【ケース106:晦悠介(再)/……魔竜王じゃないよ?】 みさお「それで……あの、ちょっと訊いていいですか?」 悠介 「俺もだ……是非とも訊きたいことがある」 俺とみさおは同時に溜め息を吐くと、同時に言葉を放った。 悠介&みさお『どうして捕まってるんだ(でしょう)』 悲しいことだけど、これ……事実なんだ。 エルフの里に入った俺とみさおはあっさりとエルフに囲まれ、牢屋にブチ込まれた。 抵抗しようとしなかったのか、というのはまあ……する暇がなかったというか、 呆気に取られすぎてたというか……はぁ。 みさお「どうします?これから」 悠介 「強引に出ることは出来そうだけど、俺は破壊活動しに来たんじゃないからな。     出してもらえるまでは待つしかないだろ」 みさお「待ってたら陽が暮れちゃいますよ?」 ……それはそうかもしれないが。 どうしたものかな……。 ───……。 ……。 ……三十分後。 悠介 「なぁみさおよ」 みさお「はぁ……多分同じこと考えてますけど、なんですか?」 悠介 「普通さ、ファンタジーものだったら普通、     こうやって捕まってると誰かが来て……その、なんだ。アレだよ」 みさお「助けてくれるんじゃないか〜、ですよね?     あのですね、夢は夢だから夢っていうんですよ」 身も蓋もなかった……。 ───……。 ……一時間後。 悠介 「はぁ……」 どうでもいいが退屈だった。 みさお「どうしましょうか……転移するにしても、     膜っていうものの所為でエルフの里より先の転移イメージが出来ないんです……」 悠介 「手詰まりか……こうなったら強引に行くか?     俺としても屠竜剣とランクプレート奪われたままじゃ我慢がならない。     なによりも契約の指輪と皇竜珠を奪われたことが腹が立つ」 みさお「落ち着きましょうよ。もう少しだけ待ちましょう」 悠介 「……そうだな、もう少し待とうか」 ───……。 ……一時間三十分後。 悠介    「ゲロゲロゲロゲロ」 みさお   「タマタマタマタマ」 悠介&みさお『ギロギロギロギロギロギロギロギロ』 ……ただ一言。 退屈。 ───……。 ……二時間後。 悠介 「よし、壊そうか」 あとで聞くに、この時の俺の顔は……それはそれは大層眩しい笑顔だったそうな。 が、何かをする前にこの場に訪れる者が居た。 声  「ケトケトケトケト……!いいザマモミアゲ!」 多分、今一番聞きたくなかった声だ。 一瞬でもようやく誰か来たと喜んだ俺が、世界の誰よりも愚かだった。 智英 「ケトケトケト……!意気込んで行った割にあっさり捕まったようだなモミアゲ!     ざまぁねぇモミアゲ!!ケトケトケトケトケトケト!!」 声  「おい!怪しい声が聞こえたぞ!」 声  「ムッ!?侵入者ァアーーーッ!!」 智英 「モミッ!?な、なにしやがるモミアゲ!     おいらはべつに怪しいものじゃ───モミャアアアアーーーーーッ!!!!」 ドゴゴシャベキゴキガンガンガン……!! 現れた謎漢は、自分で勝手に騒いであっさりとボコボコにされたのであった……。 救世主じゃなかったのが救いだな。 ……もちろん、牢屋にブチ込まれた際は俺とみさおにより一層ボコボコにされた。 ───……。 ……さて、それからもう三十分ほどした頃。 エルフ「失礼する」 今までのエルフとは雰囲気の違った男が牢屋を訪れた。 そいつの手には皇竜珠、屠竜剣、契約の指輪、ランクプレートが握られている。 エルフ「人間、失礼をした。私はこのエルフの里の長、ルエルド=ガーヴという。     この度は我がエルフの里の民たちが無礼を働いてしまったようだ。すまない」 牢屋の前に立った男───ガーヴは、俺とみさおに頭を下げた。 けどそれはあまり本心からやっているようには見えないものだった。 みさおもそう感じたんだろう。 胡散臭そうに構えている。 エルフ「きみたちの素性を調べるためにこれらを鑑定させてもらった。     ドラゴンマスターか、この場所になんのために来たのかは知らないが、     ここは人が踏み込んでいい場所ではない。     私の言葉が理解できるのなら今すぐ出て行ってくれないか」 悠介 「………」 みさお「………」 一言。 こいつ心の底からむかつく。 みさお「あの……出て行けもなにも、     あなた方がここに閉じ込めた所為でなにも出来なかったんじゃないですか。     それなのになんですか、その言い方」 ガーヴ「お前の意見などは聞いていない。エルフの長として命じる。この里から出て行け」 みさお「なっ……!!」 話を聞く気が最初から無いように振舞うガーヴ……いや、 元々聞く気なんて無いんだろう。 そうじゃなければここまで嫌悪感を抱いたりはしないだろう。 最初のレラの時と同じだ。 エルフはどうしてか人間を見下した目で見ている。 悠介 「俺はその屠竜剣の完成の報告と、そのお礼を言いに来たんだ。     それが用でもダメか?そっちが顔を出してくれって言ったんじゃないのか?」 ガーヴ「ふん?社交辞令という言葉も知らんか。まあそれはいい。     しかしそうか、これが完成した剣か。どれ……」 ガーヴが屠竜剣に手を添える。 が───抜き去ろうとしても屠竜剣が鞘から抜けることはない。 ガーヴ「……?なんだこれは、不良品か。こんなものを作るために素材を渡したのか」 悠介 「それは俺専用に作られた剣だ。他の誰にも扱えやしない」 ガーヴ「……なるほど。くだらないものを作ったものだ、材料が泣く」 みさお「───いい加減にしてください!なんなんですかさっきから!!」 ガーヴ「我らエルフ族は人間を信用しない。それだけだ。素材を渡した理由も、     素材ひとつで訪れた人間を追い払えるならばそれでいいと思っただけのこと」 みさお「そんなっ……!」 ガーヴ「それとだ。私は戯言人は好かん。この指輪を見れば解るぞ、     お前の目的はスピリットオブノートと契約することだろう。     なにが剣の礼だ、馬鹿にするのも大概にしろ」 ガーヴはそう言うと、手にしていたものの全てを投げ捨てた。 ───瞬間。  ドガシャガコォッ!!───ガキィッ!! ガーヴ「グッ───!?き、キサマ……!!」 俺は牢獄を破壊するのと同時にガーヴの顔を、口を押さえるような形で掴んだ。 ガーヴ「何をする……貴様解っているのか……!?私はエルフ族の長で───」 悠介 「長だから何をやってもいいのか?     ああそうだな、ここでの戒律がそうならそれでいい。     けどな、誰かを傷つけた償いってのはしなけりゃならない」 ガーヴ「なんのことだ……!私がなにを───」 悠介 「今お前が捨てたものはなんだ?精霊が宿っている指輪だろう。     剣についてる皇竜珠にはディルも居る……。     それをゴミでも捨てるように投げ捨てやがって……!!     お前がどこの長だろうが知ったことじゃない!     お前がやったことは最低な行為だ!」 ガーヴ「ならばどうする?私を殺すか?ドラゴンマスターよ」 悠介 「…………」 カチンと来た。 ファンタジーは確かに好きだ。 好きだが───こんな状況になればすぐに『殺すだ生かすだ』になるのは嫌いだ。 悠介 「殺したりなんかしない。ただ俺達は俺達で好き勝手にさせてもらう。     お前らに迷惑はかけない。用が済んだらとっとと出て行くさ。だから───」 ガーヴ「だから、無の精霊の居る聖堂を教えろか?随分ムシがいいじゃないか」 悠介 「そんなのお互い様だ。教える気がないなら俺達は勝手に探すだけだ。     その時はもう俺はお前らの迷惑なんて考えない」 ガーヴ「ハッ……そらみろ、結局はこうだ。     人間など野蛮で、気に入らないことがあればすぐに破壊行為に移る」 悠介 「……お前アホゥか?」 ガーヴ「なに───!?」 悠介 「俺が、いつ破壊行動に移るなんて言った?     俺はただ迷惑なんて考えないって言っただけだ。     お前さ、自分が他人に言うよりも一番思考回路が野蛮なんじゃないのか?」 みさお「ぷくっ……!」 みさおが吹き出した。 そうなると俺の中の苛立ちも少し軽くなり、やがて消えてゆく。 ガーヴ「貴様……私を侮辱する気か!」 悠介 「自爆することが侮辱だっていうんならそうなるんだろうな、うん。     もう確定だ、お前馬鹿だ」 智英 「ケトケトケトケト!!この馬鹿がモミアゲ!!」 悠介 「モミアゲ言うな!!」 ガーヴ「くっ……離せ!!」 ガーヴが俺の手を叩き、離れようとするが───もちろん離す気は無い。 ガーヴ「なっ……!?いったいどういう力───」 悠介 「言った言葉の答えがまだだ。無の精霊の聖堂は何処だ?」 ガーヴ「誰が下賎で下等な人間などに教えるか……!!     貴様にはこの私を侮辱した罪を一生分かけて償ってもらうぞ……!!」 みさお「へぇ……エルフの長になると他人の命を簡単に扱えるくらい偉くなるんですか。     それは大変結構なことですね。でもそれってどんな人よりも野蛮ですよね」 ガーヴ「なんだと貴様!!」 みさお「だってそうじゃないですか。命令ひとつで人の人生台無しにしちゃうんですよね?     それも、長自身がヒドイ態度だったからだっていうのに死刑ですか?     違うっていうなら教えてください。     こうして話し合いの場を設けようとするわたしたちと、     一方的に避けて話そうともしない上に、     少し都合が悪くなれば一生分償えとか言う貴方……どっちが野蛮ですか?」 ガーヴ「かっ……ぐ……!!」 ガーヴの表情に驚愕の色が混ざる。 だが妙なプライドが勝ってか、それとも長としての意地なのか…… それを答えようともせず、だからといって前言を撤回する気も無さそうだった。 悠介 「プライドっていうのは大事かもしれないけどな。     悪いと思ってるのに謝れないのはプライドが高いんじゃなくて臆病なだけだ。     それなのに長のあんたがそんなことでどうする」 ガーヴ「謝る必要が無いのに謝ってなにになる……!?     勝手に話を広げないでもらいたいものだな……!」 悠介 「そっちこそ勝手に話を自分の都合のいいように作り変えないでくれ。     噛み砕いて言ってやろうか。     俺は、お前に、精霊たちと飛竜、屠竜剣を作るために頑張ってくれたヤツと、     ランクプレートをくれたロハイムに、『謝れ』って言ってるんだよ……!」 ガーヴ「ふざけるな!会ったことも無いヤツになぜ私が謝らねばならない!」 悠介 「へえ───じゃあ会ったら謝れるのか?」 ガーヴ「っ……それは……!」 悠介 「出来もしないことを盾に戯言をぬかすなたわけが。     まったくなんて冗談だ……!お前らに感謝してたじいさんが可哀相だ……!」 ガーヴ「じいさん……?ああ、あのドワーフのジジイか。     あいつが感謝だと?誰が頼んだ。私は厄介払いのために素材を渡しただけだぞ」 悠介 「だとしても!喜んでくれる人は居るんだよ!!     そんな人達の思いの先に出来た剣をゴミ同然に捨てやがって……!」 ガーヴ「鉱石の塊をゴミと断じてなにが悪い!?ははっ!     思いがこもってようが精霊だろうが飛竜だろうが知ったことじゃない!!     私はな!長として多種族の存在など認めはしない!!     私たちエルフ族をこんな辺境に追い遣ったのは貴様ら人間や竜族だろう!     えぇ!?違うかドラゴンマスター!!」 悠介 「───……ハッキリ言ってやる。今のお前、モンスターよりも救いが無い」 ガーヴ「なっ───なんだとっ……!?」 悠介 「行くぞみさお、時間の無駄だ。俺達は俺達で聖堂を探そう」 みさお「はい、同意見です。こんな解らず屋さんに説法をすること自体間違いでしたよ」 俺はみさおを促すと、牢屋の外の床に散らばった指輪を全て拾い、 剣とランクプレートを拾いうと歩き出す。 ガーヴ「待て……何処に行く!私との話はまだ終わってはいないぞ!」 悠介 「俺はお前とする会話なんて無い。そもそも会話になってないだろ。     どっちか一方に一方の言葉を聞く気がないのなら、それはもう会話じゃないよ」 俺はギャーギャー喚くガーヴを無視して、牢屋の先に出た。 一歩出れば綺麗な森林に囲まれた世界があり、 上空は綺麗な木々に覆われて、空が覗けるのはほんの一部分程度だった。 声  「脱走者だ!そいつらを捕らえろ!!」 ……が、そんな景色に安堵するまでもなく、 背後から聞こえたガーヴの声に溜め息を吐いた。 もちろん、すぐさまに集まってきたエルフたちに対してもだ。 俺はゆっくりと小さな黄昏からロンギヌスを引っ張り出すと、 ソレを回転させながら頭上の位置まで持っていくとそれを強く掴み、 一気に地面へと振り下ろした。   ───ゴコォンッ!! エルフ族『っ───!!?』 振り下ろされたロンギヌスの石突きが地面にクレーターを作る。 それを目の当たりにしたエルフたちは硬直し、恐る恐る俺を見た。 悠介 「お前たちに危害を加えたりはしない。約束する。     けど……邪魔するなら覚悟しろ。襲われれば抗うのは誰だって同じだ」 ざわ……! エルフたちがざわめく。 そんな中でガーヴは戯言を叫ぶが、俺は気にすることもなく歩き出した。 するとどうだろう、あれだけ集まっていたエルフたちが、一気に俺を避けて道を開けた。 ガーヴ「なにをしている!私は捕らえろと言ったんだぞ!!」 悠介 「だったらお前がまずかかってきたらどうだ?エルフの長さま」 ガーヴ「ぐっ……!」 みさお「言うだけって楽でいいですよね。     けど、実行力の無い長には誰も付いてきはしませんよ」 ガーヴ「なんだと……!?」 ガーヴが物凄い形相で俺達を睨む。 が、みさおの言っていることは間違いばかりでもないらしい。 エルフの数人はガーヴから目を逸らし、みさおの方をジッと見ている。 それは恐らく、なにかを思い、感じることがあったっていうことだろう。 けどそれをさして気にすることもなく─── 俺達はそのまま、背にガーヴの罵倒を受けながら森の奥へと歩いていった。 Next Menu back