───FantasticFantasia-Set53/AtelierMomie(モミーのアトリエ)〜クグリューゲルスの錬金術師───
【ケース122:晦悠介/魔法使いさんの憂鬱】 チャンチャカチャカポカ・チャカチャチャチャカポカ♪ チャンチャカチャカポカ・チャカポカポ♪ デ〜ッゲッデ〜〜〜〜〜♪デ〜ゲッテ〜デッテッテッテ〜♪ デ〜ッゲッデ〜〜〜〜〜♪デ〜ゲッテ〜デッテッテッテ〜♪ デ〜ッゲボゴシャア!! 彰利 「ベップマァーーーン!!!」 悠介 「やかましい気が散る静かにしてろたわけ!!」 彰利 「だ、だってYO!!やっぱ工房で錬金術っていったら鳴らしたくなるっしょ!?     大体なんだい!最近ここに訪れる院生がヤケに増えたじゃない!!     しかも顔出せば『あれ売ってくれ』とか『これ売ってくれ』とか!!     そりゃハゲた武器屋だって毛生え薬でブロンドドリルヘアー生やすわ!!」 悠介 「なんの話だよ……」 工房魔導術師として俺の名が知られるようになってから数日。 俺の工房にはしょっちゅう他の錬金術師が訪れるようになっていた。 ……順番が遅れたが、俺の名をわざわざ広めたのは彰利であって俺じゃない。 ───コンコン。 悠介 「あ〜ぁ───また来たよ……。鍵はかかってないぞ〜」 工房内に響くノックの音に返事をすると、ドアが開けられてノイドが入ってくる。 ノイド「ごめん、さっき頼んだアレなんだけど……出来てるかな」 悠介 「ああ、蒸留水と魔導の砂だろ?出来てるぞ」 ノイド「ありがとう。キミの作るものは純度が高いのに安いって評判なんだ。     じゃあこれ、代金」 悠介 「少しは自分で錬成しようって思った方がいいぞ」 ノイド「研究資金が回らないんだ。キミの所で買った方が経済的だよ」 悠介 「あのな……しまいにゃ価格上げるぞ?」 ノイド「はは、それは勘弁だね。じゃあまた来ると思うから、その時は頼むよ」 悠介 「気持ちのいい訪問であることを願ってるよ」 錬成したアイテムとS$を交換すると、ノイドは工房を出て行った。 悠介 「はぁ……」 彰利 「評判いいじゃないの。金どれくらい溜まった?」 悠介 「半日で100G$。地界金額で100万だ」 彰利 「ぬおっ!?な、なに売ったん!?」 悠介 「高いものを適当に挙げれば……ガネス教授が時の砂を5G$で買って、     テオ教授がマテリアルインゴット1ダースを80G$で買ってった。     あとは細々と院生やら錬金術師やらが買ってったな」 彰利 「うおう……って、属性のマテリアは売ったりせんかったの?」 悠介 「頼まれはしたんだけどな。でもほら、マテリアって精霊の力の結晶だろ?     それを売り物にするのって『なんか違う』って思ったんだよ。     で、そう思ったら口が勝手に『売れない』って喋ってた。     俺自身驚いたけど───なんかな、気持ちよかった」 彰利 「ナルホロ……そういうキミだからこそ精霊たちに好かれるんでしょうなぁ。     あ、ところでさ。マテリアルインゴットが1ダースで80万つーてたよね?     でも悠介の工房は値段が安いと評判。……本当の値段っていくらくらいなん?」 当然の質問だと思った。 けどなぁ……言ったら絶対に驚くと思う。 悠介 「驚くなよ?院長が俺にだけ内緒で見せてくれた錬金術の歴史書によるとだな。     マテリアルインゴット一本の値段は10G$。     つまりダースで考えれば120G$はするものだ」 彰利 「ムハッ!?え、じゃ……なに?     キミってば知っててそれだけのもんを80G$で……?」 悠介 「これ以上金ばっか集めてもどうしようもないだろ?     必要だって言ってるなら売ってやればいい。無駄にふっかけるのは好きじゃない」 彰利 「で、でもさ、それで何か悪いことに使ってたりしたら……」 悠介 「そんな、お前じゃあるまいし」 彰利 「………」 彰利は俺の言葉を聞くと、悲しそうな顔で遠くを見た。 そして言った。『俺も若かった……』と。 悠介 「ちなみにお前、ダークマテリアをいくらくらいで売ろうとしたんだ?」 彰利 「へ?ああ、50G$って冗談で言ったら『買った!』って即答されたよ?」 悠介 「当たり前だアホゥ……純度100%だって言ったろ?     普通どうやっても手に入らないに近い精霊の諸力の結晶をお前、     50G$程度で売るって言われたら誰だって飛びつくわ」 彰利 「そうかえ?俺はそうは思わない」 悠介 「ナイトゥルースの真似はいい。……あのな、マナ基礎力学で習ったろ?     『錬金術は空気中に漂う属性の諸力を形として精製するようなものだ』って。     純度100%の闇属性の結晶であるダークマテリアなんて、     持ってるだけで闇系のアイテムの錬成成功率が飛躍的に上がる代物だぞ?     それが50G$で手に入るなら、     その後の失敗における被害総額を考えれば安いもんだ」 彰利 「うおう……」 彰利はポカンとした表情で、首に下げているダークマテリアを見下ろした。 そして『確かに持ってるだけで力が満ちてきてる気がする』と言う。 彰利 「なんてステキなマテリアなんでしょう……。     なんか今ならジハードも怖くない気がするぜ」 悠介 「そか。そりゃなによりだ」 彰利 「や〜、でもアレだよね。悠介と一緒に錬成やってると楽でいいわ。     材料に困ることなんて無いから好きなだけ失敗も出来るし」 悠介 「成功する方向で錬成しろたわけ。お前さっきから何回鉄鉱石無駄にした?」 彰利 「だってYO……俺、どうにもこう鉄鉱石からの錬金って苦手で……。     見ろ、また石ころが出来た」 悠介 「……お前ってほんと、闇関連以外ボロボロだな」 彰利 「任せろ」 威張れることじゃないが。 まあいい。 彰利 「そういや昨日の夜、     なんか工房ン中でゴタゴタ鳴ってたみたいだけど……アレ悠介?」 悠介 「?なんだ、わざわざ工房まで来てたのか?宿で寝てると思ったのに」 彰利 「や〜……なんだろね。やることが無くなったから眠ろうと思った筈なんだけど、     眠ろうとすると無性に錬成したくなるのね。いや、まいったまいった」 悠介 「骨の髄まで錬金の世界に染まってるみたいだな」 彰利 「しゃあないって、面白いんですもの。で、なんだったん?あの音」 悠介 「んー……ああ、まあいいか。     実は昨日な、ピネトレーマンドラゴラの根っ子を使って───」 彰利 「根っ子を使って……?」 ズズイと神妙な顔で声を潜めると、同じく彰利も神妙な顔で顔を近づけつつ聞き返す。 悠介 「……魔法の箒を作ってみた」 彰利 「魔法の箒?って……まさかあの!?     女はもちろん、男も密かに憧れているという空飛ぶ箒!?」 悠介 「そう、その箒だ。実験としてベリーに乗ってもらったんだけどな、     いたく気に入っちまったみたいで……」 彰利 「……ああ、そういや今日は朝からあのやかましいのがおらんね」 悠介 「ああ。今頃空飛んで、わはーわはー叫びまくってるぞ。     まあ渡した途端に乗り回すもんだから工房の中はメチャクチャになったけどな。     多分お前が聞いた音ってのはその音だろ」 彰利 「楽しそうでええのぅ。て、その割には散らかってないじゃん。掃除でもしたん?」 悠介 「………」 彰利 「ダーリン?」 悠介 「ダーリン言うな」 はぁ……いつからこう口が軽くなったんだ俺は。 少しは考えて行動しなくちゃな……。 でも言ってしまったものは仕方が無い。 悠介 「実はな、少し前に神々の泉まで材料集めに行ったんだ。     で、近いって理由でウォルトデニスの泉の様子も見に行った。     人を通さない膜がまだあるかどうか調べに行ったって言った方が解りやすいか。     でな、……まあその膜を消すまでもなく中に入れたのは     ひとえに俺が人間じゃないって証明なんだろうが、それは今はどうでもいい……」 彰利 「どうでもいいって顔してませんがね……」 悠介 「いいんだ……気にするな……」 なんかもう、うん、いいんだ。 どうせ俺、人間やめてるし……。 それを他の誰でもない自分の理力が認めちまったんだからどうしようもないだろう。 ……ヘコんだのは内緒だが。 悠介 「まあとにかく、その泉で……妖精と会った」 彰利 「なんと!?妖精ってあの妖精だよね!?     えーと……やっぱメルヘンとか言ってた?」 悠介 「彰利っ!!」 彰利 「キャーッ!!?な、なななにかね!?いきなり叫ばないでくれたまえよ!!     驚くではないかね!!キミはなにかね!?私を馬鹿にしているのかね!!」 悠介 「メルヘン妖精は関係無いッ!!今すぐ忘れろ!!口にするな!!いいな!?」 彰利 「ぬおっ!?お、押忍!」 彰利の肩をグワシと掴んで口早に説法すると、彰利は快く頷いてくれた。 さすがにこの世界の妖精とあんなアシュラマンを同一視するのは我慢ならない。 あんな、ケンタウロスとアシュラマンが合体したような物体が妖精…… 考えただけでも神界の在り方に疑問を抱いてしまう。 悠介 「まあとにかく妖精と会ったわけだ。そしたらどういうわけか気に入られてな。     頼んだわけじゃないんだが、時々やってきて身の回りの世話とかしてくれてる」 彰利 「ほへー……で、やっぱ羽の生えた裸のねーちゃんが小さくなった感じ?」 悠介 「お前はもっと羞恥心ってのを知れ。真顔でなんてこと訊きやがる」 彰利 「馬鹿野郎!男としては気になるところじゃねぇか!!」 悠介 「………」 彰利 「あ、いや……そこで変人を見る目で見られると、     親友としての立場が無いというかなんというか……」 漢から男になってからのこいつの場合、冗談か冗談じゃないかがまるで解らんからな。 実際に篠瀬とか押し倒したりした場面を目の当たりにしていると尚更だ。 悠介 「……この世界の妖精は、ちゃんと羽衣みたいな服を着てるよ」 彰利 「ほうほう……って、『この世界の妖精は』?」 悠介 「───ナンデモナイ忘ロ」 彰利 「……?ウ、ウィ、まあよかギン。機会があったらオイラにも紹介しておくれ?     やっぱファンタジーに降り立ったら妖精とも会いたいし」 悠介 「ああ、そうだな」 いつか機会があったらこいつにも会わせてやろう。 ……もちろん、メルヘンの方と。 悠介 「さてと、じゃあ錬金続けるか。お前はこれから何か用事あるか?」 彰利 「元助手のよしみで教授に『黒い塩』を作ってくれって頼まれてる。     今はそれの錬成かねぇ」 悠介 「そか。じゃあお互い集中しよう。     ……然の精霊の加護よここに。“コンセントレート”」 魔法詠唱をして俺と彰利に振り掛ける。 コンセントレート……名前が近い通り、集中力を向上させる魔法だ。 難しいものの錬成にはこれが欠かせない。 彰利 「ヤヤッ?サンクスサンクス。丁度集中力途切れてきたところだったんだよね。     まあだから悠介にちょっかい出してたわけだけど」 悠介 「そういう時は先に言えアホゥ、いつでも掛けてやるから」 彰利 「オウヨ。では開始しましょか」 彰利の言葉を切欠にするかのように錬成を始める。 が───コンコン。 悠介 「っと……鍵は掛かってないぞ〜」 こう何度も来られると、錬成が捗らないのは確かである。 ラノ 「おっと、錬成中だったのかい?ごめんごめん、すぐ済むからさ。     発破草を二袋欲しいんだけど、いくらになるかな」 悠介 「発破草か。二袋でいいんだな?200S$でいいぞ」 ラノ 「うわ、本当に安いね。じゃあこれ、200S$ね。また来るよ」 悠介 「材料くらい自分でなんとかしろって……」 ラノ 「はは、純度が高いのはそうそう用意できないんだよ。     その点キミのはオール100%だから安心して買えるって評判だ」 悠介 「誰だよそんな噂流したの」 ラノ 「え?ほら、この前アカデミー追放になった……って、ああ、そこの人だ」 ラノが俺の工房の中の一角をズビシと指差す。 俺はそれに釣られるように振り向く───と、 彰利 「キャーーッ!!?」 彰利が驚愕の顔で怯えていた。 ただ『素材を売る』って噂ならまだしも、純度100%とまで言ってたとは……! そりゃあいろんなヤツが訪問するのも頷けるわなぁああ……!! 悠介 「そうかお前か……そうか……。     人の楽しむ時間を潰しにかかってるのはお前か、お前だな?お前なんだなっ!?」 彰利 「う、うそだ!その人はウソをついているんだ!だからぼく悪くな───ハオッ!?     ぐぉおやめて!!アイアンクローはやめ───イヤアアア持ち上げないで!     首がメキリってゴキリってゴォオオオオァアアアアアアッ!!!!     ごめんなさいごめんなさいオイラが言い触らしました!でもぼく怖かったんだ!」 悠介 「訳が解らんわ!!」 ラノ 「あはは、仲いいね。それじゃあ僕はこれで。また来るよ」 ラノが去ってゆく。 俺はそれに軽い言葉で見送りをすると、彰利の顔から手を離して溜め息を吐いた。 『また』という言葉に少し疲れを感じずには居られないからだ。 名前が知れ渡る前なら、訪問なんてされることもなくゆったりと錬成が出来たんだがなぁ。 彰利 「おがががが……キ、キミね……もうちょいやさしく出来ません?」 悠介 「だったらお前ももうちょっと俺に平穏をくれ。錬成する時間が減るじゃないか」 彰利 「……ほんにもう、既に錬金の虜ですな。     さすがは院生でありながら教授の資格を手に入れていることはあるわい。     そんな悠介教授に質問じゃけんど……     元々錬金術ってなんのために編み出されたものなん?」 悠介 「なんのためにって───おのれはオド力学で何を学んでたんだ」 彰利 「無駄なく睡眠する方法!!」 悠介 「………」 聞き返した俺が馬鹿だった。 そしてこいつも馬鹿だった。 悠介 「錬金術が使われるようになった理由は、     そりゃあそれぞれの世界の俗説や定説からしてみればいろいろあるんだろうけど。     少なくともこの世界では『不完全なものを完全なものにするため』に作られた。     石を金に変えたりだとか、人の手で生命を作ったりだとか」 彰利 「あ、生命ってのはアレじゃよね?ホムンクルスとか」 悠介 「そうだな。材料が材料なだけに俺は作ってないが」 彰利 「そうなん?珍しい。悠介が嫌がる材料ってなにさ」 悠介 「……知りたがりは長生きせんぞ」 彰利 「私は一向に構わんッッ!!だから教えれー」 悠介 「……はぁ」 どうしてこう、こいつは好奇心旺盛なんだか。 以前は自分で散々と知りたがりは長生きせんとか言ってたくせに。 俺は溜め息を撒き散らしながら紙に筆を走らせると、それを彰利に渡した。 彰利 「ぬ?もしかして言いたくないような材料なん?」 悠介 「見れば解る───といいな」 彰利 「あんですかそりゃあ。……なになに?     人の精液に馬糞に様々なハーブ……ああ、こりゃ悠介じゃあ言えんわな。     ナイス純情ボーイだ王サマ」 悠介 「やかましい!そういうこと言われると思ったから言いたくなかったんだよ!」 彰利 「ほっほっほ、まあよまあよ。でもさ、なんで『馬糞』なわけ?」 悠介 「……ええとだな。フラスコの中にそれらを入れて、     馬糞が発酵する温度を保ちながら40日間置くと、     人間の形をした透明の物体がフラスコの中に現れるらしいんだ。     ようするに必要なのは     『生き物の糞であること』と『発酵すること』なんじゃないのか?     たまたまホムンクルスの錬成を手がけた存在───     まあ俺達の一般的な知識の中だとパラケルススになるわけだが、     そいつが錬成をしようとしていた時、     もっとも身近だった家畜が馬だっただけなのかもしれない」 彰利 「なるホロ。だから馬糞が選ばれたと」 選ばれたって言われ方はなんか妙な感じがするものだが、事実なんだから仕方が無い。 ……とまあそれは置いておくとしてもだ。 勉強嫌いの彰利がこうして人に物事を訊いてきまくるとは…… 彰利 「……?なんすかその『お前も成長したもんだ』って顔は」 悠介 「成長だなんて思っちゃいないが……ああ、趣味を持つことはいいことだなと」 その趣味の中でアイテムの横流しなんぞやってりゃ世話無いが。 悠介 「けど、あの時真面目にやってりゃあ、     お前も今頃は工房魔導術師になれてたかもしれないのに」 彰利 「それは言わないお約束よ、おとっつぁん。     つーかこの工房の方が住み心地ええからここでも別に構わんし」 悠介 「その割に工房を光の属性で満たすと叫ぶだろ」 彰利 「当たり前じゃないですか!ダークマテリア持ってても辛いよアレ!」 悠介 「だったら自分の工房持ってた方が楽だったろ。     工房にずっと闇の属性満たしてれば、     闇系の錬成なんて楽だったしお前自身も楽だった」 彰利 「グ、グムム……そう言われると非情に惜しいことをしたような気が……」 悠介 「こういうのを本当の意味で後の祭りって言うんだろうな。     考えても今さらってことは確かかもしれない」 言って、錬成の続きを開始する。 いや、しようとしたが───コンコン。 彰利 「おお客だ!さあゆけ親友!」 悠介 「……なぁ。力の限りグーで殴っていいか?」 彰利 「か、勘弁してください───つーか錬成中だからダメだとか言ったらどうかね?」 悠介 「そもそもの問題としてお前が公表したりしなければ、     俺は錬金素材屋なんて兼用せずに錬成と調合に集中できたんだが……?」 彰利 「だ、だってYO!!     親友が素晴らしき功績を上げてるんですよ!?自慢したくなるじゃない!!」 悠介 「自慢するなら自分を自慢出来るようになれたわけ!!」 彰利 「誇れるものなど皆無!!」 悠介 「威張るなよそんなことを……!!」 ……とまあ、ハッキリ言って客人の入りようが頻繁にありすぎて錬成どころじゃない。 これじゃあ長時間集中力を要する錬成なんて出来やしない。 俺は溜め息を吐きながら調合を破棄すると、 ゆっくりと工房のドアへと歩いてゆくのだった。 彰利 「フッ……なんだかんだでやさしいのね悠ちゃんたら。アタイ嬉しい♪」 悠介 「───ウィル」 ウィル『お任せくださいマスター。───シャインフラッシュ!!』 ガカァ!ジュゥウウウウウッ!!!! 彰利 「ギャアアアアアーーーッ!!!溶ける!溶けるーーーっ!!!     光は!光はやめてぇええええーーーーーーーっ!!!!」 叫ぶ彰利を完全に無視し───って! 悠介 「なんで本当に溶けてるんだよ!!」 彰利 「な、なにを言うのかね!!前に言ったでしょう!?     オイラの身体はもう身体の隅々まで黒で闇で影なのですよ!?     そげな俺だから光に当てられれば溶けるのは必至!!解るでしょ!?」 悠介 「……妖怪人間って呼んでいいか?」 彰利 「誰がベムだこの野郎!!大体───」 ガチャ…… 彰利 「ややっ!?」 悠介 「ってコラ、人の工房のドアを勝手に───って、みさお?」 みさお「いつまでも開けてくれないのが悪いんじゃないですか」 開いたドアの先には、少し怒り気味のみさおが居た。 アカデミーに入ってからというもの、見かけもしなかったが…… 悠介 「へぇ……それ、子供の部の院生服か?なかなか似合ってるな」 彰利 「そんなことないね!オイラの方が絶対に似合うぜ!?」 悠介 「なんでそこで対抗意識燃やすかねお前は……ウィル」 ウィル『かしこまりましたマスター』 ガカァアアッ!!ジュジュジュゥウウウウウッ!!!! 彰利 「ミギャアアアアアアアアッ!!!!」 みさお「うひゃっ!?ちょ───溶けてますよ!?なにやってるんですか!」 悠介 「ただ光を当ててるだけだ。     こいつの身体、とうとう完全な闇になっちまったみたいでな、     こうして光の属性を当てると溶けるんだ」 みさお「……妖怪人間って呼んでいいですか?」 彰利 「およしなさい!ああもう俺様の美麗な肌が、まるで光を浴びた吸血鬼みたいに!     今なら……光が苦手だった     セレスウィル=シュトゥルムハーツ嬢の気持ちが解るぜ……」 とまあ当てられた光をやせ我慢しながら遠い目をしている彰利は置いておくとして。 悠介 「それで、どうしたんだ?みさお。今まで来なかったのに珍しい」 みさお「ああ、えっとその……噂を聞いたので見に来ました。     純度100%の素材を安値で売っているモミアゲの長い院生が居るって聞いて、     ああこれはもう悠介さんしか居ないかなと」 悠介 「……お前の脳はなにか?     既にモミアゲさえ長けりゃ俺だと認識するように完成されてるのか……?」 みさお「ひえっ!?だ、だって仕方ないじゃないですかっ!     悠介さんと彰衛門さんにはいつだって会いに来たかったけど、     何処に居るのかも解らなかったんですから!     だったらもうそういう噂に頼るしかなかったんですよ!」 だからってモミアゲと聞いて来訪される俺の身にもなってくれ……頼むから。 みさお「……って、口論しに来たわけじゃないんですよ。     悠介さん、教授の資格を持ってるって本当ですか?」 彰利 「本当じゃぜ?ちなみに俺はアカデミー追放された。すげぇだろ。     しかも今は悠介の工房に寄生して、ちまちまと錬成を続ける毎日!最強!」 みさお「あー……あの、悠介さん。     うちの彰衛門さんがまたご迷惑をかけてるみたいで……」 悠介 「いや、いいんだ……解ってくれるだけで十分だ……」 急に真剣な顔になったみさおは、俺に向かって丁寧にお辞儀した。 彰利の義理の娘であり、彰利の無法の量を知ってるからこそ出来たことだろう。 つーかむしろみさおは悪くはないんだが。 悠介 「馬鹿な親友、馬鹿な親を持つと……いろいろと苦労するな」 みさお「そんなのお互い様ですよ……」 彰利 「あの……そこでしみじみ悲しまれると、俺もすこぶる悲しいんですけど……」 悠介 「ところで今日は学科は休みなのか?」 みさお「あ、はい。だからこうして探索も兼ねて遊びに来たんですけど……」 みさおが工房の中をぐるぅりと見渡す。 そしてホゥと息を吐くと、『凄いですね』と呟いた。 みさお「本当に自分の工房を手に入れちゃってたんですね。     噂では聞いてましたけど、本当に持ってるなんて……驚きました」 彰利 「オイラとしてはここまで見事に人を無視できるキミタチの方に驚きだけど」 みさお「じゃあ無視するのはやめます。ですからちょっと意見を聞かせてくださいね?     ちょっと前に、アカデミーでマテリアの横流し事件っていうのが起き───」 彰利 「お、俺じゃねぇよ!?」 みさお「まだ彰衛門さんが犯人だなんて言ってませんけど。     ……そうですか、やっぱり彰衛門さんでしたか……」 彰利 「ゲ、ゲェエエエエーーーーーーーッ!!!謀ったなブッチャー!!」 みさお「誰がブッチャーですかっ!!もうっ、彰衛門さん解ってるんですか!?     自分が作ったもの以外のアイテムの売買は、     アカデミー憲章第二条でこれでもかってくらい禁止だって書かれてて、     そんなものは低学部の一回生でも知ってることですよ!?」 彰利 「お、俺はそんな決まりごとに縛られない自由な男なんだ」 悠介 「で、自由が過ぎて万年ホームレスになったと」 彰利 「アカデミー追放されて寮からも追い出されたんだから仕方ないじゃないの!」 みさお「縛られたくないからって自由に生きて、     工房取得資格を剥奪されてれば世話ないですよね……」 彰利 「うぐぅ!───…………」 あ、落ち込んだ。 しかも工房の隅でしくしく泣き始めやがった……鬱陶しいことこの上無い。 みさお「あれ……?どうしたんですか彰衛門さん。     いつもだったらここで、傍若無人の一言くらい返してくるのに」 悠介 「あいつ何気に工房を手に入れられなかったことを悲しんでるんだよ。     最初はそうでもなかったらしいんだが、     資格を剥奪されたあとに俺の工房に入り浸るようになってからはもうダメだ。     時々本気で落ち込んでは、ああやって工房の隅でしくしく泣いてる」 みさお「うわ……鬱陶しいですね」 彰利 「なんだとてめぇ!!普通こういう時って『可哀相ですね』くらい言うでしょ!?     そんな、よりにもよって鬱陶しいだなんて!───ヒドイ!なんてヒドイ!!」 みさお「ところで今はどんなものを錬成してるんですか?     低学部だと錬成は出来ないから気になってたんですよ」 悠介 「ああ、今は賢者の石の地盤を錬成していってるところだ。     材料が材料なだけに、やっぱり時間がかかる。     日を待たないといけないものは時間操作でなんとかなってるけど、     時間を飛ばしながらでも時々何かを混ぜなきゃいけないものってのがクセモノだ」 彰利 「例によって無視スカ……」 そうして、その日は久しぶりに俺と彰利とみさおの三人で過ごした。 もちろんそうしている間にも来客はとことん訪れたが、 それさえも珍しいのか、みさおはなんだか楽しそうに笑っていた。 Next Menu back