───FantasticFantasia-Set57/騒がしいこと(ましら)(さま)に───
【ケース126:晦悠介(超再)/マグナムブレッド(オールインワンパック)】 彰利 「あー!あー!全員注目〜!そういったわけで地界に戻ってきたわけだが〜!     みんな揃ってるか〜!?ハイ点呼ー!」 悠介 「1」 彰利 「ハイ終〜了〜!」 点呼の意味ねぇ。 彰利 「う〜む、地界の空気も懐かしいねェ〜ィェ。     なんてーのかね、こう……ねぇ?マズイ」 悠介 「言い渋ってたと思ったら断言かよ……でもまぁな、マズイ」 一緒に来た精霊や召喚獣や飛竜たちも口々にマズイマズイと囁いてるし。 インビジブル状態だからまるで怪奇現象のようにも感じられるが……仕方ない。 悠介 「石段の一段目から神社にかけるまでの敷地全体に、     空界と同じ空気が出ます───弾けろ」 溜め息ひとつ、俺はその場に空界の空気を創造した。 ああもちろん、酸素不足の心配もあらずだ。 彰利 「ほんに便利よねぇ。賢者の石よりもそっちの性能にびっくりだよ」 悠介 「使い慣れてるからそうは思わないんだけどな」 俺にしてみればむしろ、賢者の石の方が新鮮味があった。 ……まあ、考えてみれば当然なんだが。 悠介 「さてと。まだ朝早くなわけだが───これからどうする?」 彰利 「中井出をスクランブル発進させよう。ちょほいと電話借りるよ?」 悠介 「ああ、そりゃ構わないが……来るか?」 彰利 「フフフ、彼奴は己が楽しむためなら仕事さえもほっぽりだして駆けつける修羅ぞ。     ああもちろん他の原沢南中学校のクラスメイツさえも巻き添えにしてね」 その巻き添えくらったヤツも嫌々来るわけじゃないから不思議だ。 さすが原中の生徒だとしか言えない。 ともあれ俺と彰利は晦神社の境内を歩き、のんびりと母屋へ向かった。 で、久しぶりに会う家族との会話もそこそこに受話器を取ると、早速中井出へ連絡を。 悠介 「どう切り出すんだ?いくらあいつがお祭り騒ぎ好きだっていったって、     こっちはそうそうやることもないわけだぞ?」 彰利 「騙してでも連れ出すさね。というわけで───」 彰利が懐からテープレコーダーのようなものを取り出した。 つーかこいつ、懐になんでも持ってるよな、カメラだのなんだのと。 ───ブッ。 声  《くぁ……はぁ〜ぅあ……ふぁひゅひゅ……ったく……おい、誰だよこんな時間に。     こちとら輝く休日を惰眠で過ごそうと心に決めたばっかりの中井出だぞ……》 ……寝ボケてるな、うん。 と、ここで彰利がテープレコーダーのスイッチを入れ、受話器に近づけた。 すると─── レコーダー『パラッパッパッパァ〜♪』 声    《I'm lovin'It!!》 マクドナルドでお馴染みのパラッパッパッパ〜の声に凄まじい速度で反応し、返す声が。 彰利 「目ェ覚めたか?」 声  《バッチリだ。ステキな朝をありがとう》 悠介 「……幸せそうでいいな、お前」 声  《晦と彰利だろ?こんな早くからご苦労さん。     なんの用だ?また彰利が暴走でもしたのか?》 彰利 「いや、なんとなく暇だったんで悪戯電話でもと」 声  《見上げた根性だ。今度不幸の手紙送ってやるから楽しみに待っとけ》 彰利 「オウヨ。じゃあ俺はその手紙に憑依霊取り付かせて全国に配布するわ」 悠介 「やめろ!!」 彰利 「ハッハッハァン、冗談だぜ親友。     常日頃より毛穴からマイナスイオンを発生させてて     人にやさしい俺がそげなことするわけないじゃない」 悠介 「何者だお前は」 声  《お前らの関係って相変わらずなのな……。     んで?いい加減用件言ってほしんだけどな。せっかくの休日になんの用だ?》 彰利 「暇だから今日一日付き合って?」 声  《………》 あ、固まった。 声  《暇だから、って……いくら俺でもそれだけじゃあノれないぞ?     なにか魅力的な提案があれば話は別だが》 彰利 「フフフ……ならば『上映会』ではどうかね?」 声  《すぐ行く》 ───ブツッ。 彰利 「………」 悠介 「………」 それは……大層男らしい返事だったという……。 ───……。 ……。 で、数時間後。 総員 『て、て……天海さまの命により……うぶっ……!わ、我ら……うぐぇええ……』 悠介 「いや……だからさ。どうしてお前ら絶対に全員で来るんだよ……」 玄関前に集まったのは原中の猛者ども。 中井出しか呼んだ覚えはないのに、どうしてかみんな揃ってしまうのが不思議だ。 藍田 「いや実はな……今日は中井出ン家に突撃モーニングしようと計画立ててたんだよ。     あ、一応寝てる中井出の額に『肉』って書くのがミッション内容な?     そしたら急に家から飛び出してきて逃げようとするだろ?     だからポセイドンウェーブで動きを止めたあとに尋問したわけよ」 中村 「いや〜、なかなか吐かないから原中伝統集団尋問のひとつ、マッパーで吐かせた」 マッパー……いわゆる『真ッ裸』のことである。 中々物事を吐こうとしない相手の衣服を次々と引ん剥くことで、 無理矢理吐かせるという禁じ手中の禁じ手だ。 ああもちろん、男子限定だ。 丘野 「いやしかし驚いたな、マッパーやろうとして服を掴みにかかったら、     自ら服を脱いで囮にして逃げ出すんだもんな」 藍田 「ご近所周りをトランクス一丁で駆け回る中井出の勇士は見事だったぞ」 中井出「起き抜けに六回くらいレベルアップした勇者の気分だ」 悠介 「胸張って言うなよそんなこと」 そりゃあある意味で勇者であるのは認めるが。 中村 「あの後で警察に通報されなけりゃあなぁ。まだもっと早く着けたのに」 悠介 「通報されたのかよ……」 中井出「ああ、それで捕まってさ。藍田たちがおろおろしてるからつい、     『お、俺のことはいい!お前らだけでも逃げろーっ!』って叫んだわけよ。     なんかこう、ドラマ風に、なぁ?」 藍田 「そんで遠慮無く逃げたら中井出のヤツ泣き出してさ。もう抱腹絶倒だったぞ」 悠介 「相変わらずだな……」 彰利 「おおよ……なんかすげー安心するわい……」 こいつらと居ると本当に『地界に帰ってきた』って感じがする。 悠介 「まあ中井出の警察沙汰物語はあとでじっくり聞かせてもらうとして。     まず中に入ってくれ。石段登るだけで疲れただろ」 中井出「うむ!では総員!礼節を弁えてお邪魔するように!」 総員 『サー!イェッサー!!』 悠介 「……それはいいから上がれって」 号令だけは息が合ってるんだよな、こいつら。 人を陥れる時は誰だろうと平気で突き落とすくせに。 中井出   (それで……クックック、彰利よ……。        この五歳の頃からエロビデオを愛してやまない        ファーザーコレクションチェッカー中井出を上映会に呼んだんだ、        それなりのものは用意してあるんだろうな……) 彰利    (ウックック……もちろんですぜ旦那。        『他では見ることが出来ない』極上の映像ですぜ?) 中井出   (ウックックってどういう笑い方だよ) 彰利    (ファーザーコレクションチェッカー中井出って自分で付けたん?) 中井出   (………) 彰利    (………) 中井出&彰利『友よ……』 悠介    「……?」 なにやら友情を確かめ合って抱き合ってる彰利と中井出。 そんなふたりを余所に他の元クラスメイツたちは母屋へと上がっていく。 そんな中─── 真穂 「お邪魔するね、晦くん」 悠介 「ああ桐生か。また呼び出しくらったのか?」 真穂 「うん、なんか面白いことを晦くんの家でやるらしいって連絡が回ってきたから」 悠介 「……そういや彰利、     中井出に電話した時『ここでやる』なんて一言も言ってなかったんだが」 どうしてこの猛者どもはここに集まったんだろうか……謎だ。 桐生 「やっ、晦くん」 悠介 「……また来たのか桐生センセ……。学校は?」 桐生 「え?えっと……あはは、創立記念日……?」 ……ウソだな、自分で言ってるのに思いっきり疑問系だ。 ウソのレベルがまるっきり雪子さん並だ。 彰利 「ややっ!?キリュっちに真穂さんでねが!!オメだづも来てたんか!!」 桐生 「───!!」 シュババッ!! 悠介 「うおっ!?」 真穂 「……お母さん?」 彰利 「むっ!?どぎゃんしたとよ!!」 なにを思ったのか、桐生センセが俺の背後に隠れるようにして……ていうか隠れた。 だがそ〜っと彰利の顔を見ると、顔を真っ赤にしてまた隠れる。 彰利 「……ああ!怪奇ユデダコ入道ごっこか!!     やれやれキリュっちもまだまだ子供やね〜ィェ。     オイラとごっこ遊びがしたいなどと。     ほれほれそげなところに隠れてないで出ておいで?」 ズパァアアアンッ!! 彰利 「はぺぇーーーーい!!!」 桐生 「ユ、ユデダコじゃないもん!!」 近づいていった彰利の頬に見事なビンタが飛んだ。 彰利 「なんと!?ユデイカだったのか!     ……あの、キリュっち?それいくらなんでも解りづらすぎるよ……」 桐生 「ち、違うもん!!そうじゃなくて!」 彰利 「むっ!?ならばなんなのかね!答えがあるなら言いたまえよ!     それともキミはなにかね!?私を馬鹿にしているのかね!!」 桐生 「あ、あうぅ……その、馬鹿にしてるとかじゃなくて……!」 彰利 「なにかね!ハッキリ言いたまえ!!」 彰利が何処から取り出したのか解らない付け髭(カイゼル)をつけ、 桐生センセの両肩にタンッと手を置いた。───途端!! 桐生 「ひやっ───!?ひやぁあああんっ!!!」 ドッボォォッ!!!! 彰利 「ベゲィルッ!?」 見事な腰の捻りの効いた正拳突きが彰利の鳩尾に突き刺さった。 彰利にとってそれは予想外の速度だったのか、たまらず鳩尾を押さえて崩れた。 桐生 「あ、あわぁあああっ!!ごごごめんねアキちゃん!!     な、なんかわたし変なの!この前ヘンな夢みて、それで……!!     あのねあのね!?アキちゃんが急に告白してくる夢を見てね!?     そ、そんなことしてないよね!?アレ、やっぱり夢だよね!?」 彰利 「グビグビ……」 桐生 「ア、アキちゃん!人の質問にはちゃんと答えなきゃだめだよ!わたし怒るよ!?」 彰利 「グビ……グビ……」 桐生 「わたし恥ずかしいの我慢して打ち明けたんだよ!?     ちゃ、ちゃんと答えないとヒドイよ!?」 彰利 「オガガガガ……ま、待ってぇな……!今、満足に喋れる、状態じゃあ……」 桐生 「喋れる状態じゃない……?     わ、わたしとはもう喋りたくないっていうの!?     うぐっ……ア……アキちゃんのばかぁあああーーーーーーっ!!!!」 彰利 「ゲ、ゲェエエエーーーーーーーッ!!!!」 ドガグシャベキベゴドゴゴシャゴシャガンガンガン!!! 彰利 「キャアアアアアアーーーーーーッ!!!!!」 ああ……動けない状態の彰利が文字通りボコボコされてゆく。 あの人も相変わらずだな。 ……けど─── 悠介 「……何事?」 真穂 「……えっとね、前の出来事を夢だって信じ込ませることには成功したの。     ほら、お母さん単純だから。でもね、そのあとがね……」 悠介 「なにかあったのか?」 真穂 「単純なだけにさ、『夢に見た』ってだけで随分意識しちゃってさ。     来る前だって来たがってたから誘ったら恥ずかしくて行けないって言って、     『じゃあ学校頑張ってね』って言ったら、     『真穂だけで晦神社まで行くのは危険だよ!』って言って付いてきちゃった……」 悠介 「………」 簡単に想像がついてしまうのはどうしてだろうか。 やっぱりあれか、単純だからか。 悠介 「ん。じゃあ話はこれくらいにして。桐生も中に入ってくれ。     彰利の方は───まあすぐ復活するだろうから」 桐生を母屋の中へ促す。 開けっ放しの玄関の先で俺たちを待っている猛者どもを見るに、 さっさと来いと言いたいらしい。 と、そんな時。 声  「きゃわぁああああーーーーっ!!?     アキちゃんが影の中に沈んで消えたーーーっ!!」 ……背後から聞こえたそんな声に、思わず溜め息が漏れた。 真穂 「……ほんとにすぐ復活したね」 悠介 「彰利だからな……」 もはや影に沈むくらいでは驚かれないのが凄いな。 桐生センセは大層驚いてたけど。 ───……。 ……。 彰利 「ちくしょ〜……」 で、なんだかんだで最後に俺の影から沸いて出たボコボコ顔の彰利の出現によって、 全員が揃うこととなった。 それに関して原中の猛者どもにそれとなく訊いてみたが、 『彰利なんだから影からくらい沸いて出るだろ?』と妙に納得されていた。 存在自体が変態と認められてる所為だろうか。 なんだか奇妙な暗黙の了解があるような気がしてならなかった。 彰利 「えー、それでは。ただいまより嬉し恥ずかしの上映会を始めまーす」 総員 『オォ〜』 中井出「なにぃ!?ほ、本気か彰利!こんな大勢の前で!」 彰利 「ぬっ!?本気ですともさね!だって大勢で見た方が盛り上がるよ?」 中井出「な、なんだと……貴様がそんな趣向の持ち主だったとは……!」 彰利 「いけませんかね」 中井出「大丈夫だ、大いに結構。大人になったな彰利」 彰利 「…………」 それは、ガイアをも凌駕するステキな笑顔だったという。 思わず言葉に詰まる彰利を横目に、俺も言葉を失ったりしていた。 さすが中井出だ……あの彰利を戸惑わせるとは。 ───……が。その笑みはそうそう長くは続かなかった。 彰利 「えー、では。これより映し出す映像は俺と悠介の経験した世界のものです。     前に言っていたファンタジー世界、空界の出来事を皆様にも見てもらおうと」 中井出「な、なんですってぇええーーーーーーっ!!!?」 説明に入った途端、中井出はひとりでMMRをやっていた。 中井出「馬鹿な!気でも違ったかブラザー!貴様は今俺のハートを五回は殺したぞ!?」 彰利 「訳が解りませんがね……あたしゃ最初に言いましたよ?     『他では見ることが出来無い』って。     ホレ、空界の映像なんて普通の地界人じゃあ絶対に見ることなんぞ出来ないし」 中井出「お、俺の煮えたぎる情熱の矛先は何処へ向ければいいんだ!?     愛が!愛が逃げてゆく!!」 彰利 「まーまー、キミも男ならば空界の景色にはきっと感動してくれるって。     つーわけで俺と悠介の記憶と経験を合わせて編集した映像、     とくとご覧あれ。きっとまったり出来ますから。     つーか俺も悠介の経験したものには興味があったし」 悠介 「……見て後悔するなよ?」 彰利 「フフフ、望むところだ」 望むなよ。 【ケース127:弦月彰利/我が愛と青春のララバイ】 そうして、まずは悠介が空界に降り立った場面から全ては始まったのです。 あとから集まった晦家のみなさまも合わせてぼくらは息を飲みました。 藍田 「おお〜〜っ!確かにこれは見事な景色!まあまだ森ばっかだけど」 真穂 「あ、でもそれだけでも解るね。木だけとっても、こっちとはまるで違う感じだし」 中村 「おお、なにやらおっさんが出てきて───あ、殴られた」 丘野 「ヒィ!すげぇ音が鳴ったぞ今!     バウンドしてたし───って、あ……動かなくなった」 総員 『エイメン……』 映像を見ていた全員が十字を切った。 もちろんオイラもです。 だってね、こりゃ痛いよ。 俺も何度かやられてるからコレの痛さはよく知っております。 藍田 「おぉ、また誰か殴られてるぞ」 中村 「おお、なにやらモモンガに襲われてるぞ」 悠介 「───ハッ!?あ、彰利!?ここらへん飛ばさないか!?」 彰利 「むっ!?何故かね!」 悠介 「な、何故ってそれは……と、とにかく!飛ばしてくれ!」 彰利 「ダメですじゃ!!いくら悠介の頼みでも詳しい理由が無ければ無問題!」 悠介 「モウマンタイ関係ねぇ!!それより早く───!!」 ぬう……どうしたっていうんだ悠介のヤツ。 彼がこんなに慌てるなんて。 もしやこの映像の先になにか危険なことがあるとでも……いうのだろうか。 なんてことを思っていた時、映像の中の悠介がくるりと回転をして─── 声  『超変身ッ!!     ジェェエーーーットモモンガァアアーーーッ!!!!』 ……叫んだ。 総員 『ざわ……っ!!』 その様子にはさすがの原中の猛者どもも動揺を隠せず、 何を隠そうこのオイラまでもが困惑の渦に巻き込まれた。 だがやがて映像の中の悠介がみさおさんと聖さんに目撃されると同時に─── 悠介&声『ぐわぁあああああーーーーーーーっ!!!!』 映像の中の悠介とここに居る悠介が同時に叫んだ。 中井出「そうか……なんだかんだ言ってやっぱりお前もこっち側の人間だったんだな……」 藍田 「友よ……お前は勇者だぜ……」 悠介 「うおおおやめろぉおおおっ!!!そんな目で俺を見るなぁああああっ!!!」 うおーう、顔真っ赤。 悠介ったら皆様からの視線から逃げるように、部屋の隅で耳を塞いじまったがよ……。 いやしかし……あの悠介がねぇ。 オイラと一緒に馬鹿やるならまだしも、ひとりでやらかしてくれるとは。 オイラは親友として鼻が高いやね。 なんて鼻高々してる時、映像を見ていた猛者どもの女子軍から悲鳴が上がった。 原因は───巨大なゴキブリにあった。 藍田 「うわっ!デッケェなコレ!!しかもなんかギーとか言ってたぞ!?」 中井出「うわっ!気持ち悪ぃっ!!半端にデカい分、細部に至るまで確認出来ちまうよ!」 中村 「よしやっちまえ晦!」 映像の中の悠介が竹槍を投擲し、一撃で仕留める。 つーか……すげぇ威力ですねこりゃ。 竹槍で出せるダメージじゃねぇでしょ。 中井出「ミッションコンプリィイイイトッ!!」 総員 『ボォオオッハハハハハハハ!!!!』 で、始末したら始末したで皆様がさらに騒ぎ出す。 いやほんと素直な方々です。 遠慮ってもんを知りません。 ルナ 「なんていうかさ、うるさいんだけど?」 彰利 「まあまあ、楽しむことを前提に上映してるんだからさ。     ルナっちももっと楽しみなさいな。ねぇ水穂ちゃん?」 水穂 「……ゴキブリってあんなカタチだったんですか……気持ち悪いです」 彰利 「って聞いてないね」 ともあれ映像は続きます。 ファンタジーにトキメキながら進む悠介だとか、 少しタガの外れた悠介だとかを写しながら。 やがて─── 藍田 「おー、落ちた落ちた」 中村 「おー、流されてる流されてる」 中井出「おー、滝壺に落ちてる」 丘野 「おー、風発生させて助かったか」 総員 『チッ……』 悠介 「おいコラぁあ!!その舌打ちはどういう意味が含まれてんだっ!!」 中井出「……晦よ。あそこは滝壺の水面に腹から落ちるのがセオリーってもんだろ?」 悠介 「腹が破裂するわ!!」 みさお「……っ……あ、あのあと……こんなことになってたんですか……ぷくっ!     た、たた……ぷふっ……大変だったんですね……!」 悠介 「大変だったって思うならどうして笑いを堪える必要があるんだみさおよ……」 彰利 「キミも中々に波乱的な行動とっとったんだねぇ」 シゲシゲと見るに、ほんにいろいろござるデショ。 って、おおムスカくんじゃねぇの。 悠介ってばこいつとはここで出会ってたんか。 彰利 「悠介のプレートってこいつに貰ってたんだ」 悠介 「はぁ……怒るのも疲れた……。───ああ、一応な」 溜め息を吐きながら賢者の石を握る悠介は、 落ち着こうと努めている様そのもののようだった。 ───……。 ……あれからしばらく。 映される映像はどんどんと先へ進み、 進むごとに悠介が戦う相手はどんどんと大きくなっていった。 戦っている映像の中の悠介もそうだが、思わず見ているオイラたちも力が入ってしまう。 藍田 「うわ怖ッ!!視点がそのまま晦の視点だから迫力あるなこれ……!!」 中井出「うわ馬鹿っ!そっち行ったら───ぬおおお!!」 丘野 「こ、怖ぇええーーっ!!でもエキサイティン!!」 藍田 「ワンダホー!!」 中井出「ビューテホーッ!!」 丘野 「エキサイトゥィン!!」 総員 『でやぁっ!』 悠介 「少しは落ち着け……」 皆様が戦いの映像に興奮する中、 悠介はそんなみなさまに落ち着くようにツッコミを入れていた。 冷静な自分に至ろうと頑張ってるみたいです。 ───さて。ようやくミル・ミノタウロス戦が終わった頃、 我ら原中の猛者どもと晦家の人々は一斉に溜め息を吐いていました。 いやもういつ死ぬか解らないこの緊張感がたまらねぇYO!! 中井出「ぷはっ……!あぁ〜怖かった……!」 藍田 「いや、マジですげぇわ晦……よくこんな世界に行って生きて帰ってこれたな……」 夏子 「ゲームの中とはやっぱり違うのよね……実際に見ると緊張感が段違いよ……」 視点が自分風になっただけで、皆さんはかなり緊張してくれたようです。 そうでなければ再現した意味が無い。 ともあれ既に映されている次の場面───悠介が神々の泉とやらを駆け抜け、 ミルハザードさんを見上げるところから物語りは再開した。 中井出「うおっ!かっきぃーーーっ!!」 藍田 「ドラゴンだぜドラゴン!!でっけぇーーーっ!!」 真穂 「でもこの時の晦くんが怖がるくらいだからよっぽど強いんだよね……?」 中井出「ぬお……そう言われれば……」 反応はそれぞれじゃけんど、みなさま映像に釘付けです。 そして俺も釘付けです。 だってね、俺が体験したものとは違って 悠介が強くなっていく術が見てとれるから解りやすい。 中井出「いや〜、しっかし強ぇな晦。     ゴーレムには苦戦してたみたいだけど総合で見れば楽勝じゃん」 清水 「あ、で〜……続きはどうなるんだ?」 麻衣香「先を知ったらつまんないでしょ」 瀬戸 「そうそう。だからじっくりいこ?」 映像が流れてゆく。 ゴーレムをぶったおしたり、 スネークマンにケンシロウの真似をしたりする悠介を映しつつ。 つーか……ちゃんとこの都市の名前ってレブロウドだったんだ。 復興都市ユウスケじゃなかったのね……。 中井出「ってうぉおおおおおっ!!?     ド、ドドドドラゴンだドラゴン!!イエロードラゴンだよ!!」 丘野 「すっげぇえっ!!……って、おい待て!?     マジで戦うつもりか晦!正気かてめぇ!」 悠介 「本人が横に居る状態でそういうこと言うのはやめような……?」 ───VSシュバルドライン開始。 一発でも喰らえば死ぬ攻撃を繰り出す相手にさすがの悠介も苦戦─── つーかこれ、俺だったらあっさり殺されてますな。 中井出&丘野『がんばれーーーーーっ!!まっ!なっ!』(ぶっ) 藍田    「ぶわっ!くっせぇっ!!なにやってんだよ!!」 中井出   「声援を贈った!!」 丘野    「これで勝利は確実だ!」 藍田    「ンなもんここに晦が居る時点で解ってることだろうが!」 彰利    「ええいこのバカモノめ!そげなミモフタモないこと言うでねぇ!!        だからキサマはいつまで経ってもオリバなんだ!」 藍田    「それはお前らが勝手に言ってるだけだろうが!!」 戦いは続き、こちらの騒ぎも負けじと続く。 やがて───シュバルドラインの身体が爆発することでその戦いは終了した。 総員 『は……はぁああぁぁぁ……』 溜め息は今まで以上のものだ。 まあそりゃそうだろう。 ドラゴンと戦って、しかも勝っちまうんだから。 中井出「晦……俺はお前に惚れたぜ……」 藍田 「ナイスガッツ……!晦……!!」 丘野 「ハンパな映画なんぞより緊張感抜群だよ……。     これ見たあとじゃあどんなアクション映画も霞んで見えるわ……」 彰利 「そりゃそうじゃよ、本当にあったことなんだから」 丘野 「だよなぁ……」 それぞれが感想を述べる中でも映像は続き、 空中戦に感激する悠介やグリフォンとフェンリルを倒す悠介や、 その後にミル・ガーゴイル戦で初めてヴィジャヤを発現させた悠介を映していった。 と───ここでひとまず第一部は完。 丘野 「なぁ弦月、これってダビング出来ない?」 彰利 「ビデオ化自体が無理だからダビングなんぞ出来ませんよ失礼な」 丘野 「や、ここで『失礼な』って言葉は関係無いと思うが」 中村 「いやいや気持ちは解るぞ丘野。俺もダビング頼もうとしてたところだ」 藍田 「いいよなー。自分じゃないって解ってても、     なんか自分が勇者にでもなった気分だ」 瀬戸 「そうそう、スッキリするよ」 悠介 「おのれら……人の命懸けの戦いをなんだと思ってやがる……」 中井出「フッ……晦よ。男ならばファンタジーと強い自分に憧れるものだ。     なにを止める必要がある」 悠介 「いや、その気持ちはよく解るんだがなぁ」 彰利 「ハイでは第二部開始ー!刮目せよー!」 総員 『オォーーーーッ!!』 悠介 「あぁもう……勝手にしろ……」 ムハァと溜め息を吐く悠介を置いてけぼりにして、いざ第二部開始。 もちろんそれは、俺と悠介が空界に降り立った時から始まる物語で、ございます。 ───……。 中井出「しかしさ、デビューでいきなり道に迷うのってどうなんだ?」 彰利 「道だけに未知。なんつってブフゥ!!」 藍田 「いや、つまらんぞそれ」 最初に上映されたのは俺と悠介がレファルド皇国にて道に迷ってる場面です。 もちろん俺が兵士に『ハーン』と名乗った場面も完全収録。 中村 「しっかし……復興都市ユウスケか……ブフッ!」 悠介 「中村よ……それには触れるなとさっき忠告した筈だが」 中村 「だ、だってなぁ……!ぶぐぐっ……!!」 悠介と中村くんがゴチャゴチャやってる間にも映像は進んでゆく。 迷ったボクらがリヴァイアの工房から旅をやり直したところや、 オイラの初バトルの映像を映して。 中井出「……俺さ、いろいろなRPGやったけど……。     体術は体術でもモンスター相手にカーフブランディングするのは見たことないぞ」 藍田 「俺も……」 三島 「俺もだ……」 丘野 「おいらも」 灯村 「やきいも」 瀬戸 「しかもセット言い忘れてるし」 中井出「お前、空界に向いてないんじゃないか?」 彰利 「しっ……失礼な!第一戦目でなんでそこまで言われなきゃならんのかね!     大丈夫じゃって!次の俺の活躍に乞うご期待!言っとくけど強ェぜ!? 総員 『へー……』 彰利 「な……なにかその目は!疑わしい物を見る目でオイラを見るな!!」 大丈夫ですってきっと! なんてったって次はベヘモスさん! オイラも頑張ったからこそ勝てたベヘモスさん! みんなボクのことを見直すこと請け合いさー!眩しすぎる俺さー! 声  『ウワァ〜、速い速い〜!いけ〜、マッスルドラゴ〜ン!』 ズパァンッッ!!!! 声  『うべっ!!』 なんてことを思っていたら、 映像の中のオイラがディル殿の尾撃で顔面叩かれてました。 しかもその瞬間に来訪する皆様の哀れみの目…… 中井出「マッスルドラゴンって……」 彰利 「いややるっしょ普通!!速いドラゴンに乗ったら普通言うって!     俺間違ってないよ!?ねぇ真穂さん!?」 真穂 「え?えっと……少なくともわたしは言わないかな……」 彰利 「そらみろこの野郎!!」 中井出「や、否定されてんのに胸張るなって」 彰利 「諦めない!それが俺達人間の最大の武器なんだよ!!」 丘野 「MMRかよ」 言葉はちょっと違うけどね。 彰利 「ともかく!オイラへのツッコミはいいから映像見ようよ!ね!?」 中井出「ああ。次はどんな珍態を見せてくれるのか楽しみだ」 彰利 「いや、なんつーか……純粋にファンタジーのみを堪能してくださいマジで」 ほんの少しだけ周りに振り回されて疲れた顔をする悠介の気持ちが解った瞬間だった。 ……ほんと瞬間だけどね? 藍田 「しっかしアレだよな。こうして映像見てると───」 声  『ルオォオオオオオオッ!!!!!』 総員 『キャアアアアアアーーーーッ!!!!』 藍田が何かを語ろうとした瞬間、映像から咆哮が放たれた。 何事かと、藍田に向けていた視線を慌てて映像に戻した───ら、 中井出「ベッ……ベ、ベベベッ……ベベベヒィイイイモスゥウーーーーッ!!!?」 中村 「でっ……でっけぇえええーーーーーっ!!!!」 映像に映されていたのはベヒーモス。 その巨大さ、その迫力を映像からでも感じ取れたのか、 原中の猛者どもは全員恐怖に喉を鳴らした。 中井出「むむ無理!無理だ無理無理!!俺でも解る!これぜってぇ勝てねぇって!!     ってセット唱えてる場合じゃねぇだろ!逃げろよ!馬鹿かてめぇら!」 総員 『馬鹿かてめぇら!!』 悠介 「面と向かって馬鹿とか言うな!!」 彰利 「今思えばどうせ逃げられませんでしたよこりゃあ!!」 まったくもって失礼極まりない! こうして生きてるんだからオーライじゃないですか!! ───……。 ……まあ、今映像で映してる通り、俺ってば死に掛けたんですけどね。 中井出「うおグロテスク!!下半身がねぇ人間ってこんな感じなのか……!!     つーか普通に勝つなよ!ベヒーモスに勝てるクラスメイツって何!?」 丘野 「これからお前を『ジョー半身男』と呼んでやろう。不服だったら『ナタ男』」 彰利 「スウィートホームかよ!!あたしゃあんなボコボコフェイスじゃねぇやい!!     見よこの美しいフェイス!黒な所為でフェイスフラッシュも黒だが美しい!!     あ、ちなみにお肌が黒く染まらない原因は死神化の影響の中にあります。     あたしゃ死神になれるわけですが、ではその時点で『人間の俺』はどこに行くか。     それがこの肌の部分なんですね〜。     だから血も骨も全てが黒でも、唯一の人間っぽさが肌に集まるわけだから     ここだけは黒には染まらないんですね〜!」 中井出「うわキモッ!!上半身から下半身がウジュルウジュルって出てきてるぞ!!」 中村 「ウジュルー」 彰利 「無視した上に満面の笑みで     全力で遠慮したいあだ名つけてんじゃねィェーーーッ!!!!」 ポムと肩に手を置いてきた中村を振り払う。 いや……なんつーかこの映像ってただ俺の首絞めてるだけなんじゃなかろうか。 なんだか解らなくなってきた。 ───……。 ……。 中井出&彰利『がんばれーーーっ!!まっ!なっ!!』(ぶっ) 悠介    「お前らそれやめろ……」 えー、現在悠介視点。 蒼竜王に不意打ちされてからのことがありありと映されています。 いや、でも実際にディル殿を持ち上げて歩く悠介を見た時はたまげたね。 そりゃ前に聞いたことはあったけど、聞くのと見るのとじゃあ大違いってやつだった。 蒲田 「いやしっかし……千年の寿命ね。     これの所為で晦ってバケモノ級の力手に入れたのか?」 彰利 「いや、彼はそれ以前にバケモノだぜ蒲田。なにせ飛竜抱えて走ってた」 悠介 「やかましいよお前は……!」 彰利 「なんだよー!キミがどれだけステキなのかを聞かせてやっただけじゃないか!」 悠介 「助けたいって思ったらなんでもやるのは当たり前だろうが!     ステキかどうかなんてその時に考えるわけないだろうが!」 彰利 「そ、そげに二回も『だろうが』って言わんでも」 真穂 「でも……うわぁ、三千年も生きるの?」 悠介 「後悔はしてない。それでディルを助けられたんだ、俺はそれだけで嬉しかった」 麻衣香「うわ、言い切った」 彰利 「アタイがボロボロになっても助けてくれる?」 悠介 「黙秘だ」 おどけた調子で訊ねると、悠介ってば顔を少し赤くしてソッポ向きました。 フッ……やっこさん照れてやがるぜ? 中井出「おぉっと解説の彰利一等兵さん!?     どうやら晦一等兵さんが集落へと辿り着いた模様!     しかもなにやら……おわぁああーーーーーっ!!」 彰利 「むっ!?なんぞね!ってゲェエエエーーーーーッ!!!!」 中井出に促されるように映像に視線を戻してみれば─── 悠介にゴリリメキメキと踏み潰されている爺さんが。 つーかこの人……ドワーフのじっちゃんじゃねぇの。 中井出「このじいさんってもしかしてドワーフ?     んじゃ、ひょっとしてその剣ってこのじいさんが?」 悠介 「ん。この剣は確かにこの爺さんが鍛えてくれたものだ」 中井出「おお……巨匠の腕が鳴るってわけか。目が離せませんな、クックック」 悠介 「どうしてそこでクックックなんて笑いが漏れるんだよ……」 まあ、中井出だからとしか言いようがない気が……。 とまあそげなことに笑いながら和気藹々、 驚いたり叫んだりしながら悠介の冒険っぷりを眺めていた。 いやもうこれがまたさすが悠介としか言いようがないくらいの旅です。 なんてったってまたデカいヤツと戦ってたし。 彰利 「リビングアーマーってここで出てたんか……いや、強かったのぅ」 中井出「そうだな……まあなにはともあれ、     俺はロッタとかいうヤツを血祭りにあげたい気分だったが」 藍田 「俺もだ」 麻衣香「わたしも」 桐生 「ん、わたしもだよ」 蒲田 「おいらも」 三島 「やきいも」 ロッタとかいう男の所為で完成に失敗した武器の生成に対し、 原中の猛者どもの怒りは全快ギリギリパワーです。 いやほんにのう、あいつの所為で失敗したって場面にはみんな一斉に叫びましたから。 『ふざけんなこのカスが!』と。 中井出「で、相変わらず彰利は馬鹿と」 彰利 「そげにしみじみ言わんでクラサイ」 中井出「いやしかしこのグルグルのドリル髪、ステキにナイスだ。     第一部の時にも思ったが、実際にこんな髪型のヤツなんて居るんだな」 彰利 「俺も最初は驚いたよ。あまりにもまどろみの剣を彷彿とさせるその造形に」 藍田 「でもとりあえず『波羅蜜多ラリアット』は関係ねぇわな」 彰利 「まったくですな」 中井出「自分で言うなって」 中村 「た、大変であります中井出提督!」 中井出「ぬう!どうしたヒヨッ子!」 中村 「映像の中にブルードラゴンが出現しました!危険です!カッコイイです!」 中井出「ぬうう!これは確かに!」 映像の中には既にブルードラゴンが出現している。 その大きさといったらもう……二度と対面したくないほどの大きさでした。 自分で言ってて例えの基準がよぅ解らんが、戦いたいと思わないのは事実です。 で─── 声  『ウウーーーッ!!!お、お腹が痛い!!苦しい……!アレーーーッ!!』 そげなことを気にしていたら、 映像の中で腹を押さえて苦しみだすオイラが大絶賛放映されました。 アンコールはもちろん無しです。 中井出「どうしてファンタジーに行ってまで漂流教室やってるかねお前は……」 彰利 「何処に行こうとぼくはぼくってことだ!凄いだろ!!」 真穂 「それで胸張れるのは凄いとは思うけどね」 彰利 「ゲッ……!」 真穂さんのさりげない一言が我が胸に突き刺さりました……。 でもね?確かにね?オイラってかなり漂流教室ネタに流されやすいからね? 反論らしい反論も出来なかったんですよ。 だからぼくは誓いました。 今度靴に画鋲でも設置してやろう、と。 ───……。 ややあってVSブルードラゴン&蒼竜王突入。 今更だが、俺と別れていた時の悠介がどういう経緯で、 どげなことをしていたのかとかが解って面白いであります。 それは悠介も同じようで、 俺とリヴァっちとドリルとバルグのじっちゃんの遣り取りを見て、 納得したように頷いておりました。 中井出「よしやれ晦!そこだ!パンチだフックだボディーだチンだ!!」 悠介 「マグナス相手にこの時の俺の体術が通じるわけないだろうが!!」 中井出「まったくだ!     しかし大変だぞ晦よ!ヒヨッ子どもが騒がしくてたまらん!!」 彰利 「今悠介の視点なんだから当たり前だっつの!     蒼竜王目の前にして足も竦まずに動けるなんてステキすぎ!     つーか迫力満点!怖い!!ってレーザーレーザー!!避けろこの野郎!!     ───ぬおお!避けたいのに視点は動かん!!」 映像の中で目前に迫る極光を見るに、 あまりのリアルさに体が光を避けようと勝手に動いてしまう。 それは猛者のみなさまも同じようで、声を張り上げながら体を動かしたりしている。 丘野 「うぉおおお怖ェ!!怖ェエけど病み付きになりそうだ!!」 中村 「いけっ!そこで剣を振り下ろす!───よっしゃああああっ!!!」 藍田 「レッツゴー空界の人!!エクスカリバァーーーッ!!     クッハァアアアかっきぃぜぇええーーーーーっ!!!」 島田 「つーか『かっこいい』を『かっきぃ』とか言うのやめないか?」 藍田 「感情が高ぶればそうなるわ!うおぉおおやっちまええぇえーーーーっ!!!」 みなさまそれぞれ叫んでおります。 今や周りも見えず、おなごたちでさえただただ映像に釘付けになっている状態。 えぇ解りますとも、俺も似たようなもんだし。 でもチラリと悠介を見てみると、顔を赤くして微妙な表情をしていた。 どうやら自分のことをカッコイイとか凄いとか言われまくってて居心地が悪いらしい。 素直に喜べばいいのに。 灯村 「よっしゃ勝ったァアアアアーーーーーーッ!!!!!」 中井出「ハラショー同士ザンギエフ!!」 藍田 「褒めよ筋肉称えよ祖国!!ともに唱えよ友情最高!!」 島田 「ははっ!や、やりやがったよこいつぅっ!!」 悠介 「おわっ!?ちょ、やめろこらっ!!」 悠介が原中の男どもにネックロックされたり肘打ちされたりしてる。 しかも興奮しているのか、中井出たちは揃って悠介をポカポカと叩き始め、 さらには胴上げを始めドゴシャッ!! 悠介 「ぶぐっ!?」 総員 『ゲェエエーーーーーーーーーッ!!!!』 例の如く受け止め損ね、その結果悠介は顔面から畳へと落ちた。 おお、ありゃ痛い。 中井出「……続きを見よう」 総員 『サー・イェッサー』 悠介 「て、てめぇらなぁああ……!!」 中井出「おお見ろヒヨッ子ども!晦が王にしたてあげられてるぞ!」 藍田 「おぉこれは是非見なければ!他のことなど気にしている場合じゃないな!」 悠介 「だったらそもそも胴上げなんてするなよっ!!」 中井出「上映中にはお静かに!!」 中村 「マナーがなってませんわよ!?」 悠介 「だったら上映中に人を胴上げすることはマナー違反じゃないってのかコラ……!」 中井出「原中大原則大辞典の中には『何処であろうと胴上げは許可される』とあるが?」 悠介 「……いや……もういい」 おお……悠介が折れた。 しかも何気に遠い目と疲れた目を足しはしても、 2で割りたくても叶わないって目で疲れ果ててる。 悠介もね、もうちょい要領よく生きてゆけばいいのに。 ───……。 ……。 春菜 「はわぁ〜……あの手紙の実態ってこんな感じだったんだ……」 で、現在レファルドの貧民街の出来事が終わった頃。 中井出「手紙って?」 粉雪 「彰利がここに住む人たちに送った手紙のこと。     どうしてか……その、漂流教室風に書かれてたのに、     最後の最後で引狭の日記になってたヘンテコな手紙のこと」 彰利 「や……粉雪サン、ヘンテコって……」 これでもかなりステキに書いたつもりだったんだが。 総員 『ハワァアアアアーーーーッ!!!』 粉雪 「ひゃあっ!?」 彰利 「ぬおっ!?なんじゃい!!」 突然の大歓声に粉雪サンとともに映像へと視線を向けてみれば─── 中井出「マ、マママママンドラゴラ……ゴラゴラゴラ……ゴララ……!!」 藍田 「マ、マンドラゴララ……」 マンドラゴラという言葉に激しく反応するクラスメイツたちが居た。 なんというか……さすがだなぁと思うしかあるまい。 彰利 「やはり貴様にも解るかマンドラゴラの素晴らしさが!!」 中井出「黙れヒヨッ子!ヒヨッ子の分際で上官になんたる態度!!     だが解る!ファンタジーって言えばマンドラゴラだろ!」 藍田 「向かえ!赤竜王がなんぼのもんじゃい!蒼竜王みたいにやっちめぇ!!」 悠介 「簡単に言うなばかっ!!」 彰利 「バカとはなんだコノヤロウ!!」 悠介 「なんでお前が怒るんだよ!」 彰利 「解りませんサー!!」 ようやく少し落ち着いたと思った上映会は再び熱に包まれもうした。 いやもう皆様騒ぐ騒ぐ。 もちろんアタイも騒いでますがね? ……さて、ややあって─── 総員 『ヨイヤッサァッ!ヨイヤッサァッ!!ヨイヤッサァアアアァヨイヤッサァッ!!!     ハァア〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!     海ンの〜おぉ〜〜とこぉにゃぁよぉ〜〜〜〜ォ〜〜ォ〜〜ッ!!!!     沖ィンのォカァ〜〜〜モメんもぉ〜〜寄り付ッかァぬゥ〜〜ッ!!     陸ンのカァ〜〜カァ〜がぁ〜泣こぉっとンもぉ〜〜〜〜っ!!!     誰ェンがァとぉ〜〜〜るやンらぁ〜〜いちばぁ〜〜〜んもぉおおりッ!!     ハァダンッチョネェ〜〜ダンッチョネェ〜♪(ヨイヤッサァ、ヨイヤッサァ)     ハァ大漁だぁ〜〜大漁だぁ〜〜♪(ヨイヤッサァ、ヨイヤッサァ)』 原中の猛者どもは映像の中の俺と悠介に合わせてヨイヤサを歌っておりました。 いや、やっぱすげぇよ原中の団結力は。 『歌えぃ野郎ども』って言葉だけで、全員簡単に反応してみせましたよ。 でもそれも束の間。 声  『リヴァイアサンだぁあーーーーーーっ!!!!』 総員 『キャーーーーーーッ!!!?』 リヴァイアサンが釣れた途端、クラスメイツたちは絶叫した。 でもめげないのが原中魂。 中井出「おッ……オォオオオオッ!!やっちめぇ晦ぃいいいいいっ!!!」 藍田 「やれっ!やっちまえ!───つーか弦月が逃げたぞ!!」 総員 『クズが!!』 彰利 「ご、ごめんよ!でも僕怖かったんだ!!」 総員 『クズが!!』 彰利 「そげな!改めて言わんでも!!」 そげなことをやってる中で、映像の中のオイラが悠介にボコられてゆく。 中井出「うぉおおおやっちまえ晦!!」 藍田 「そこだっ!そこっ!ボディを重点的に!!」 彰利 「ちょっと待って僕のキミたち!!     なんでどの戦いよりも今の方が声援の音質が高いの!?」 中井出「知るか死ねボケ!!」 彰利 「おのれぇええええええっ!!!」 などと妙なものの真似をしている場合じゃありませんな。 いい加減映像に集中しましょう。 ───……。 ……パキィイイイン……!! 総員 『ゲッ……ゲェエエエエエエーーーーーーーッ!!!!!』 VSリヴァイアサン終了……と同時にクラスメイツが叫んだ。 何故って、夢の屠竜剣が砕けてしまったからである。 つーか…… 中井出「なにやってんだ彰利!!」 藍田 「貴様が逃げたからだぞ!」 中村 「お前の所為で死んだんだぞ!帰れ!!」 島田 「貴様の所為だ貴様の!!」 なんで俺みんなに罵られてんの? なんつーかもうクラスメイツども全員がノリだけで動いてるような気がしてならん。 ……や、それは昔からか。 彰利 「つーか誰も死んでねぇでしょうが!なに言っとんのかね中村くん!」 中村 「黙れクズが!」 総員 『死ね!!』 彰利 「て、てめぇらああ……!!」 原中大原則ひとつ、相手が大多数の場合、 その大多数が原中生である場合に限り『てめぇら』と言うこと。 まさか自分がこの言葉を使う時が来るとは思いませんでしたがね…… 言うのはせいぜい藍田だけだと思ってたのに。 ───……。 ……。 中井出「なるほどなるほどふーむふむふん」 藍田 「へーふーんほー」 中村 「晦の力の原因は竜族の血にあったわけか……なるほど、竜人ね」 現在、既にバハムルさんを融合生成した状態で、 さらに言えば再びウェルドゥーン山に来ているところ。 そこで俺が両手を広げた途端─── 総員 『フ〜〜〜ア〜〜〜ムア〜〜〜〜〜イ!!!』 原中の皆様は、映像の俺とともに声高らかに叫んだ。 さすがだ。 ───……。 中井出「空中庭園ばんざぁあーーーーーーいぃ!!!」 藍田 「ばんざぁあああーーーーいぃ!!!」 中井出「姫さまばんざーーーーい!!」 総員 『ばんざーーーーーーーい!!』 水穂 「……姫さまってなんですか?」 彰利 「昔あったミニ四駆アニメで流砂に飲み込まれていった男が叫んでた言葉」 水穂 「………」 ───……。 中井出「やだわ、まァたデカいヤツと戦ってるよこの子ったら……」 悠介 「子供の行為に呆れ果てた親みたいな声出すなよ……」 藍田 「ゼプシオンって……あのリビングアーマーのヤツだよな?」 悠介 「ん。強さはそこらのドラゴンに引けをとらないぞ」 彰利 「デコピンだけで死ねそうな大きさよのぅ……」 ───……。 中井出「おわぁああああーーーーーーーっ!!!晦が殺されたぁああーーーーっ!!!」 総員 『な、なんだってーーーーーーっ!!!』 藍田 「この幽霊!」 悠介 「いきなりかよ!!」 中村 「だって実際黒竜王にコロがされてるじゃねぇか!!なにお前幽霊!?」 悠介 「幽霊幽霊言うな!!こうして実体があるだろうが!!」 中井出「幽霊幽霊ユウレイヒ〜〜〜ッ♪」 マゴシャアンッ!! 中井出「プサンッ!!」 悠介の極・ナックルパートが飛んだ。 中井出はもちろん空を飛び、壁に激突して動かなくなった。 藍田 「てっ……提督ゥウウーーーーーーーッ!!!!」 中村 「提督!?提督ーーーッ!!」 真穂 「あっ……晦くん生きてるって!」 総員 『おお!これは目が離せん!!』 そしてあっさり提督は無視された。 悠介 「いや……あのな。     俺がここでこうして生きてるんだから、生きてるの当然だろうが」 総員 『知らん』 悠介 「てめぇらなぁ……」 ……まあ、原中生だし。 ───……。 中井出「で……なんでまた好き好んでバカデカいヤツと戦ってるかねお前は」 彰利 「趣味だぜきっと」 悠介 「人聞きの悪いこと言うな!!     空界に来てまで食い逃げする馬鹿にそんなこと言われたくねぇよ!!」 彰利 「なっ───ば、バカとはなんだコノヤロウ!!     金が無かったんだからしょうがねぇでしょう!?」 春菜 「苦労したんだね、みさおちゃん……」 みさお「解ってくれますか……」 藍田 「つーか中井出さ、なんで普通に復活してんの?」 中井出「俺は楽しみが目の前にあるのなら気絶からでも復活してみせる男だ」 ───……。 中井出「……精霊?」 悠介 「精霊」 藍田 「せ……精霊?」 悠介 「精霊」 中井出「ッ……か、刮目せよヒヨッ子ども!!     ファンタジーは俺達を裏切っちゃいなかった!!」 総員 『サー・イェッサー!!』 中井出「ファンタジーといえば精霊!!召喚術といえばファンタジー浪漫!!     この世界にはっ……俺達の夢が詰まっているッッ!!」 総員 『サー・イェッサー!!』 中井出「パラッパッパッパ〜♪」 総員 『I'm lovin'It!!───関係ねぇ!!』 彰利 「興奮しとるなぁ……」 ───……。 さて、そげなこげなで精霊探しの旅が始まった。 オイラが闇の精霊に梃子摺ってるあいだ、 悠介がどげな風に精霊を仲間にしていったのかがありありと映されるが…… 彰利 「いや……なんつーか精霊の方が可哀想に思えるほどの強さだな」 中井出「いやぁ、でもシルフはかなりいいとこまで行ってただろ?」 藍田 「まあギガンティックミーティアに移行しなかっただけマシだな。     顔面掴んで地面に叩き付けた時はマジでやるかと思ったよ」 やられりゃ死にますな、絶対。 ちなみにギガンティックミーティアというのは、 相手に気弾をぶつけたあとにタコ殴りにし、怯んだ相手の頭を掴んで地面に叩き落し、 さらに追撃として倒れている相手に全力の気弾を放つステキな技である。 その威力が真に近ければ近いほど、確実に死にます。 とまあそげなことを思っている内に景色は次々と過ぎ───やがて。 総員 『ブフゥウーーーーーーーッ!!!!』 その場に居た全員が吹き出した。 何故って、映像の中に阿修羅面(怒)な顔をしたバケモンが現れたのだから。 中井出「ブブルバフゥウーーーーーッ!!!ぶはははははっ!!!     なはっ……なんだよこいつの顔!!がっは!ごへっ!ぶあははははは!!!」 藍田 「かはははははは!!メルヘンとか言ってるよメルヘンとか!」 悠介 「………」 皆様が笑い狂う。 が、その中で悠介とみさおだけは哀れみの表情で笑う皆様を眺めていた。 さらにそげな中─── 声  『なぁベリー、上半身は人間で下半身は馬で、     メルヘンメルヘン叫ぶ阿修羅面(怒)顔の物体って知ってるか?』 声  『へあ?あー……あ〜あ〜!知ってる知ってる!     神界に住む妖精でね、男だけを───その、襲うのが趣味な変態妖精よ』 ビシリッ…… 中井出「…………今、なんと?」 映像の中のヤムヤムの言葉が皆様に届いた時、俺を含めた皆様の表情が凍りついた。 え……なに?今言った?『妖精』って……言った? 中井出「え……あ、ヤハハハハ!!げ、幻聴だよな幻聴!!」 藍田 「そ、そうだよなぁ!あんなアシュラマンみたいなヤツが、     ファンタジーにおわす男の憧れ、フェアリーちゃんだなんて!なぁ!?」 中井出「……やっぱ聞こえた?」 藍田 「……すまん、聞こえた」 そして俺も聞こえました。 あんな……あんなアシュラマンチックな物体が……妖精!! 妖精!!妖精!? 総員 『ア、アア……アアァーーーーーーーーーッ!!!!!』 そうなるともう大変だった。 男女ともにその場に居た全員が絶望の声を高らかに泣き始めたのだ。 そう……今こそ俺達はファンタジーに裏切られたのだ。 よりにもよって……よりにもよってあんな物体が妖精だなんて……!! 中井出「か、返せえぇえええーーーーーっ!!俺のファンシーな夢を返せぇえええっ!!」 悠介 「いい歳した男がファンシーとか大声で叫ぶな!!」 中井出「黙れぇえっ!!信じてたのに!ファンタジーだから絶対に信じてたのに!!     絶対に、ちっちゃいけど綺麗な裸のねーちゃんな妖精が出てきてくれるって!!     そうなるって信じてっ……!ぐふっ……うぐ……ぐぉおお……!!!」 悠介 「マ……マジ泣きするほどのことかーーーっ!!!」 彰利 「マジ泣きするほどのことじゃぁあああーーーーーーーっ!!!!     ぐおおぉおおっ……ぬおおおおおおっ!!!!」 悠介 「ってなんでお前まで泣いてるんだよ!!」 彰利 「悲しいからさ!!辛いからさ!!嬉し涙なんて俺は信じねぇぞこの野郎!!     つーか貴様に物申す!何故こげな事実を黙っていたのだ!!     こんな悲しみが待ってるって知ってたら、僕はこの場面を飛ばしていた!!」 悠介 「言わないでおくこともやさしさになることだってあるんだよ……」 彰利 「うぐっ……!!そげにどん底的な声で言われると追い討ちも出来やしねぇ……!」 みさお「彰衛門さん……いいですから続きを見ましょう……。     あんな妖精は何かの間違いですから……」 彰利 「う、うぅむ……ってそうだよ!     悠介ってば『普通の妖精に会った』って言ってたよね!?」 悠介 「どっちが普通なのか解ったもんじゃないけどな……」 中井出「顔が阿修羅面(怒)な時点で普通じゃねぇだろ!!」 藍田 「そうだ!」 中村 「その通りだ!」 彰利 「よく言った!!」 中井出「だから教えろ晦一等兵!!     妖精は───小さいけど美しい裸のねーちゃんは存在するのか!?」 悠介 「最初に言っておくが裸じゃない。けど居ることは居る」 中井出「あ、阿修羅面じゃないよな!?な!?」 悠介 「お前はなにか、阿修羅面を『小さいけど美しい』って思えるのか」 中井出「んなわけあるかぁっ!!」 悠介 「だったらそれが答えだろ。     まったく、どうせ映像に出るんだから急ぐ必要もないってのに……」 彰利 「よっ!苦労人!」 悠介 「やかましい!」 怒られてしまった……。 ───……。 中井出「く、空中庭園……!古代技術に守られた空中庭園……!!」 蒲田 「おぉお……!男ならば一度は夢見る楽園が目の前に……!!」 丘野 「すげぇよ晦!いや、よく行ってくれた!ラピュウタは本当にあったんだ!」 中村 「つーかすげぇ勢いですげぇ数の敵コロがしまくってんなぁ……何者?」 悠介 「『元』がつく人間」 男衆が悠介を取り囲むように関心する───中。 麻衣香「なんで篠瀬さんの記憶消したの!?弦月くん女心全ッ然解ってない!!」 夏子 「最ッ低!!」 綴理 「女の敵!」 内海 「ガリ勉!」 吾妻 「メガネくん!」 殊戸瀬「ウエストポーチ!!」 彰利 「ウエストポーチ!?」 俺だけは女子軍に罵倒されまくってました。 原因は夜華さんの記憶を消したことにあるんだが……何故ウエストポーチ!? いやそもそもあたしゃガリ勉でもメガネでもないんですがね。 中井出「おーおーブチノメされてるブチノメされてる!」 島田 「ボコボコだ光の精霊!」 灯村 「ここまでボコボコだと、むしろ可哀想に思えてきたな……」 丘野 「まああれだけ修行すれば勝てるヤツなんて出てこねぇだろ……」 ふと見た映像の中ではウィルさんがボコボコにされておりました。 カオスの波動で暴走した悠介は、それはもう鬼神の如き強さです。 桐生 「アキちゃん!今すぐ篠瀬さんの記憶を戻してあげなさい!!」 彰利 「フフフ、悪いがそれは出来ねぇ相談だぜ〜〜〜っ!!     ああなっちまった以上、俺の力でも取り返しはつかねぇのさ〜〜〜っ!!」 桐生 「アキちゃん!!」 彰利 「なんじゃいおりゃ〜〜〜〜っ!!!」 ズパァアアアアーーーーーンッ!!!! 彰利 「ぶべぇえええーーーーーーーっ!!!!」 桐生 「いつからそんな聞き分けの悪い子になったの!?」 彰利 「昔からじゃーーっ!!文句があるならかかってこーーーい!!」 向かってきたキリュっちの両手に両手を合わせ、真っ向から受け止める! さあ始めようじゃないか!最後の審判を!! デゲデゲデゲデデ・デゲデゲデゲデデ♪ デンッテン♪デンテテンテン♪ デンッテン♪デンテテンテン♪ 麻衣香「アアッ!どこからともなくキン肉マンのあの音楽が!」 夏子 「……でも音楽のわりにダンス踊ってるけど?」 桐生 「ぁわっ……ちょ、アキちゃん!?」 彰利 「さあキリュっち……流れに逆らわないで。     ダンスを知らないのなら僕が教えてあげるよ」 桐生 「ア、アキちゃん!話を逸らそうとしたってだめなんだからね!?」 彰利 「キリュっち……踊ってるキミがこんなにも綺麗だなんて初めて知ったよ」 言いつつ、そっとキリュっちの腰に手を回し、完全なるダンススタイルにする。 桐生 「ひゃっ!?……ア、アキちゃん……」 彰利 「……お嬢様。僕と一曲踊っていただけますか?」 桐生 「えぇっ!?え、えとえと……あぅう……よ、よろこんで……」 やがてキリュっちが俺の体に片手を回し、 その場に息の合ったダンスが披露されることとなった。 麻衣香「へぇ……あの桐生って人、ダンス上手なんだね」 夏子 「弦月くんのエスコートも中々……これで音楽がキン肉マンじゃなければね……」 吾妻 「まあでも弦月くんだしね、絶対に『アレ』やるよ」 麻衣香「……ん。絶対にやるだろうね」 どぐしぃっ!! 桐生 「あいたぁっ!!」 彰利 「ゲェエエエーーーーーーーーッ!!!」 女衆 『ほらやった』 OHシット!!キリュっちの足を踏んづけてしまったがよ!! いやあの、決してわざとじゃありませんよ? 桐生 「アキちゃん……!?」 彰利 「ノゥッ!不可抗力!やめておくれ!     怒った顔も綺麗だが、キミは笑っているほうが可愛いよ!」 桐生 「ぇあっ!?……あ、あわわ……ほ、ほんとに……?」 彰利 「ウソじゃ」 桐生 「───」 メゴボシャアッ!!! 彰利 「ブベッチュウ!!」 桐生 「アキちゃんのぉおっ……!!ばかぁああああーーーーーーーーっ!!!!!」 彰利 「キャッ……キャーーーーーーッ!!!!」 久しぶりにキリュっちがキレました。 顔を真っ赤にさせて拳を硬く握り、僕へと容赦なく振るってきたのです。 その迫力のためか、僕は思わず怪虫に襲われそうになった仲田くんのゴチャア!! ───……。 中井出「ところでだ。このガーヴって……魔竜王?」 悠介 「違う」 あなたの夢でふっと目覚めた夜明け。 べつに夜明けじゃないけど、まあ目は覚めました。 どうやら僕は顎に的確なる拳をいただいてしまったようで、 しばしの間気絶していたようです。 まあそれはいいのですが……なんで僕の体に毛布がかけられていて、 その隣でキリュっちが寝ているんでしょう。 僕はその理由を訊ねようとしましたが、 ハッと気づいた粉雪の刺すような視線で体が硬直してしまったのです。本当です。 でも僕はそれしきのことで遊ぶ心を無くすようなヤワな精神はしてません。 オイラはまず死神化を解くと、上半身の服だけを脱いで再び毛布に沈みました。 さらにはシガレットチョコ……タバコ型のチョコですな。 それを口にくわえ、準備を整えました。 そして眠っているキリュっちの肩をゆするのです。 桐生 「ん……んぅ……?」 彰利 「おはよう、僕のハニー。気分はどうだい?」 桐生 「ア、アキ……───!?」 うっすらと開かれていた目がクワッと見開かれた。 その瞳に映るのは上半身裸の僕のボディと、口から手に移動したタバコもどき。 キリュっちは慌てて起き上がるとボゴシャアッ!! 彰利 「ペキャーーーリ!!」 殴ってきました。 彰利 「おががががが……な、なにすんねん……!」 桐生 「アキちゃん!タバコは体に毒なんだよ!?     二十歳になったって吸ったらダメなの!!」 彰利 「あんじゃとおりゃ〜〜っ!!つーかそれより気にするべきことがあるでしょ!?     僕は裸でキリュっちと寝ていたんだよ!?」 桐生 「え?あ───!」 今度こそキリュっちは驚愕の顔をして───ボゴシャアッ!! 彰利 「ヘジョンッ!!」 やっぱり殴ってきました。 桐生 「ア、アアアアアキちゃん!!眠る時はパジャマ着なきゃダメでしょ!!」 彰利 「あ、あの……キリュっち?他にもっと心配することとか……ない?     ほら、うら若き男女が一緒の布団で……いや布団じゃないけどさ、     とにかく寝たりして、男が裸だったりしたらさぁ……ね?」 桐生 「……?アキちゃん、お腹でも冷やしたの?」 彰利 「………」 神様、ここに子供が居ます。 彰利 「ちなみにキリュっち?子供ってどうやって出来るか知ってる?」 桐生 「そんなこと知ってるもん!!     夫婦が仲良く暮らしたご褒美にコウノトリさんが連れてきてくれるんだよ!」 総員 『ざわっ……!!』 桐生 「……え?」 映像を見ていた人や、遠巻きに見ていた女子軍全員が目を見開いて振り向いた。 その視線の先には……キリュっち。 神様……私は大変驚きました。 まさか……嗚呼まさか、教師ともあろうお方の中に知らない人が居るとは……!! 彰利 「中井出提督ッ!!」 中井出「う、うむっ!!今この時より彼女を希少生命体として認定する!!     意義のある者は挙手して唱えろ!」 総員 『サー・ノォサーッ!!』 中井出「うむ実に良しッ!!桐生殿!     今この時を以ってあなたの存在は原中生認定の希少生命体である!!」 真穂 「ね、ねぇお母さん?本当にコウノトリのこと信じてるの?」 桐生 「?」 真穂 「うあ……本気の目だ……」 彰利 「ぬうう……いやしかし、これではキリュっちの未来が心配だ。     もし結婚することになれば、     キリュっちは何も知らないまま子供を生むことになるやもしれん……」 気づけば子供を宿してました、なんて可哀想でしょう。 純粋であればこそですが。 彰利 「というわけで提督。ロンリーフォーメーション『アッシュ』をお願いします」 中井出「ゲッ……!き、貴様正気か!?」 彰利 「正気です。心苦しいですがこのままではキリュっちの未来が心配です。     というわけで容赦無くお願いします。ビデオデッキなら隣の部屋にあるから」 勝手知ったる他人の家ってやつです。 ともあれ困惑顔のキリュっちと中井出を促し、 僕はことの行く末を見守ることもせず映像を眺めるのでした。 ───……。 ややあって─── 声  「きゃわぁあああーーーーーーーーーーっ!!!!」 ドゴシャァアアアーーーーーーーン!!!!! 声  「ほぎゃあああああああああーーーーーーーーーーっ!!!!!」 キリュっちの恥じらいを表したような絶叫と、 中井出の死を目前にしたような絶叫が隣の部屋から響き渡りました。 ロンリーフォーメーション『アッシュ』とは……まあ即ちエロビデオのことである。 アッシュってのは『H』のことね? 子供がどのように生まれてくるのか、これでキリュっちも解ったでしょう。 中井出には酷いことをしましたが、あいつはあれで満足だと思います。 他人の家でエロビデオ見るなんてスリル満点だったでしょう。 ……つーか普通に考えて、実行できるのが中井出の凄いところだよね。 隣に我らが居るのに平気でエロビデオを回すとは……しかも教師相手に。 ───ドタバタドタバタ……スパァーーンッ!! 桐生 「ア、アアアアアアキちゃん!!」 彰利 「むっ!?」 考え事をしつつも映像を見ていると、 勢いよく襖を開けたキリュっちがオイラを睨んできました。 彰利 「……これで解ったでしょう?コウノトリは子供なぞ───」 桐生 「だ、誰かの愛の営みをビデオに撮ったりしちゃダメでしょ!!」 彰利 「……あれ?」 マテ。なんか変じゃないすか? 彰利 「あ、あのー……キリュっち?今のは……」 桐生 「いーい!?アキちゃん!!     お、男の人と女の人が肌を合わせるのは、その人たちだけの愛の証明なの!     だからそれを他人が見ていい筈が無いの!     こんなことは愛し合うふたりへの冒涜なんだよ!?」 彰利 「…………ところでキリュっち。子供がどうやって生まれるのか、解った?」 桐生 「むっ!だから子供はコウノトリさんが運んできてくれるの!     何度言ったら解るの!?」 彰利 「………」 藍田 「中井出提督……見事な無駄死にでした……」 彰利 「俺も丁度そう思ってたところだよ……」 中村 「桐生……やっぱすげぇよお前のおふくろさん……」 真穂 「お母さん……」 せめて安らかに眠れ、中井出……。 丘野 「……つーかさ、さっきから気になってたんだけど……     隣の部屋から如何わしい声が聞こえないか?」 三島 「提督が付けっぱなしで気絶してるんじゃねぇの?」 彰利 「……いや、提督のことだ。恐らく……」 ソッと行動し、ソッと隣の部屋を覗いてみた。 キリュっちが何か言おうとしたが、すかさずシャラップの合図を。 で、見てみれば───至福の顔でエロビデオを眺める提督の姿が。 彰利 「て、提督てめぇ!そこで何をしている!!」 中井出「何を、だと!?見て解らんか!エロビデオを見てるんだ!!」 丘野 「気絶してたんじゃなかったのか!?」 中井出「溢れる男意気は気絶ごときにゃ止められん!!一瞬で復活したわ!」 藍田 「す、すげぇ……ある意味すげぇ!……けどそれがエロパワーってのもどうかと」 総員 『まったくだ』 彰利 「でもとりあえず悠介とキリュっちが物凄い形相で睨んでるから止めようね?」 オイラは画面を見ないようにしながらデッキの手を伸ばし───ババッ!! 彰利 「むっ!?なんのつもりだ中井出提督!」 中井出「ふっ……知れたこと!このビデオを止めたくば俺の屍を超えてゆけ!!」 ボゴシャアッ!! 中井出「うじゅり!!」 ドシャア……。 屍がどーたらとか言った途端、 瞬時に間合いを詰めた悠介が拳を落とし、赤面しながらさっさとビデオの操作をした。 カチ、オガーーー……。 ……やがて出てきたビデオをケースに封印、取り出し完了。 藍田 「……随分ハードルの低い屍だったな……」 丘野 「2秒と保たなかったな……」 所詮そんなものである。 ───……。 彰利 「そんでさ。なんでキミ平気で起き上がってくるわけ?」 中井出「こ、この姿の何処が平気に見えるのかと訊きたいが……。     もはや誰にも俺を止めることは出来ん……!」 弱々しく言う中井出だけど、その目は闘志に溢れていた。 ……元気だね、いやマジで。 中井出「で……今はどのへんだ……?」 彰利 「錬金術編に入ったところさね」 中井出「……あとで俺が見れなかった分、見せてくれ……」 彰利 「オウヨ、構わんぜよ」 とか言いつつ映像をぼんやりと眺める───と。 総員 『───ッ!!』 その場に居た全員が息を呑んだ。 何故ってそりゃあ……ねぇ? 中井出「フェッ……フェ、フェフェフェ……」 総員 『フェアリーだぁあーーーーーーーーっ!!!』 映像の中に妖精が映し出されていたのです! あんなメルヘン妖精ではなく、僕らが夢見た妖精が、です!! その姿はまさに美しい女性が小さくなったもので、 背から伸びる小さな羽を揺らしながら飛ぶ姿はまさに『美』そのもののようでした! 本当です! 中井出「うっ……うぉおーーーーーーっ!!!ファンタジィイーーーッ!!!」 総員 『バンザーーーーイ!!!』 中井出「ファンタジィイイイイーーーーーーッ!!!」 総員 『バンザァアアアーーーーーイィイッ!!!!』 彰利 「ワァーーーーッ!!!」 藍田 『ワァーーーーッ!!!」 総員 『よかった!!』 僕ら(主に男子)は涙を流しつつ喜び合いました。 両手を天に掲げるように振り上げ、バンザイをし合ったのです。 だってしょうがありません。 僕らの夢と希望よウェルカムです。 ファンタジーは僕らを裏切ってなかったのですから。 ボロボロだった中井出も艶やかな顔で泣きながらバンザイしています。本当です。 中井出「もうっ……もう裸のねーちゃんじゃなくていい……っ!     阿修羅面(怒)じゃないならもうそれでいいっ……!!」 藍田 「神よ……貴様に感謝します……!」 中村 「ファンタジー万歳……!この感動を誰に伝えよう……!」 悠介 「誰にも伝えんでいいと思うぞ」 中村 「晦ぃ……こういう時くらいハジケてくれよ」 悠介 「気分がノッたらなー」 ぶっきらヴォーノ全快の悠介の前に中村は苦笑を浮かべたが、 またすぐに喜びを分かち合って叫んだ。 ───……。 ……。 中井出 「いろいろあったんだな晦……」 男子一同『俺はお前に惚れたぜ……』 悠介  「やめろ気色悪い!!急にやさしくなるなっ!!」 ややあって、第二部終了。 いやもう絶叫続けで喉が痛い。 中井出「いやしっかじ……ングッ!ゲホッ!!マ〜マ〜マ〜♪     いやしっかし、お前すげぇわ……。まさか巨人族とまで戦ってるとは……」 藍田 「あ、そ、それが空界で作ったっていうオリハルコンの剣だよな!?     見せてもれっていいか!?」 悠介 「ああ……べつにいいけど……はぁ。     今さらだけどウィルが俺に対して怯えた態度を取ってた理由が解った……」 言って、悠介が背に装備していた屠竜剣を鞘ごと渡す。 と───ドゴォンッ!! 藍田 「アモゲェエエエエーーーーーーーーーッ!!!!」 手に持った途端、藍田の手が畳みに叩きつけられた。 藍田 「イギィイイイイイイイイイイイイイッ!!!!!!     あがぐが……ギャアアアアアアアアアアッ!!!!」 悠介 「へ?って、うわ悪いっ!!修行の一環として重力乗せたままだった!!」 オウ……そりゃちょほいとシャレになってません。 悠介の修行っつーとあれでしょ?重量が確実に3ケタはいくっていうあの……。 しかも今は相当にパワーアップしてるわけだから、 剣ともなると4ケタ行ってる可能性が……ってお待ちなさい! だったら平然としてる悠介って何者!? 不思議に思ったオイラは、藍田のお手てを襲う重力を解除し、 回復の式を編んだ悠介に語りかけた。 悠介 「うん?ああ確かに1tくらいあるかもな。でも慣れればどうってことないぞ?」 彰利 「いやいやいやいやいやいやいやいやいや!!!どうってことあるって!!     つーかむしろ慣れればって簡単に言うなや!!」 悠介 「だから……。竜に傾いた体だったらこんなもん軽いに等しいんだってばよ……。     そうなるように自分で鍛えたんだから簡単に言えるのも当たり前だろうが……」 彰利 「ぬお……あーうーいやそのぅ……マジでごめん……」 やっぱ何気に人間やめてる事実を悲しんでいる模様。 悠介 「……それから。どうせ訊かれると思うから先に言っておくけど、     1tなんて重量を持ってても畳みとかが軋まないのは、     『その重力が俺にしかかからないもの』だからだ」 彰利 「おお確かに訊こうとしたけど。つまり悠介に重力がかかっても、     その下の床や地面には悠介の分の重力しかかからないってことかね?」 悠介 「ん、そうなる」 なんとまあ……相変わらず反則チックで物理法則無視した能力ですなぁ……。 藍田 「おー!すげー!かっきぃいいーーーっ!!ゆ、夢にまで見たファンタジーの剣!     しかも!しかも竜族の素材と召喚獣の素材とオリハルコン使用の剣!!     うおおたまんねぇええーーーーーっ!!!」 中井出「こ、こら藍田二等兵!俺にも触らせろ!!」 藍田 「ノォサーーッ!!こればっかりは堪能させてもらうであります上官殿!!     って晦ーーーッ!!この剣抜けねぇぞーーーっ!!」 悠介 「先に言っておいただろが!!     それは『俺の剣』だから他の誰にも扱えないんだよ!!」 藍田 「な、なんだってぇええーーーーっ!!?     あ、じゃ、じゃあ抜いて見せてくれ!!     そんで持たせてくれ!ついでになにか試し切りとか……!」 丘野 「ええい退けオリバ!!つーか触らせろ!男の夢を独り占めするな!!」 中村 「なんの!次はあちきの番どすこい!!」 騒がしいどすなぁ……。 こっちはこっちで悠介が女子軍に囲まれて、 精霊見せてだの召喚獣見せてだの飛竜見せてだの大忙しだ。 彰利 「ぬう、なんだか悠介を中心に物事が運んでいってしまってるよみさおさん」 みさお「だって彰衛門さん、空界じゃああまり目立ったことはしてませんし」 彰利 「なにをぅ!?オ、オイラだってなぁ!     シェイちゃんと戦ったりして大変だったんだぞ!?」 みさお「やっぱりアレじゃないですかね、他人の力であっさりと強くなったから……」 彰利 「グ、グウウ……!!でもオイラだって強くなりましたよ!?     ……ノーちゃんの指導の下だけど」 みさお「まあわたしも……あまり要らない能力を開花させられちゃいましたけど……」 彰利 「そうかえ?男ならば一部の人が憧れる能力だが。少なくともオイラは」 みさお「そうですか?でも、モンスターを仲間にする能力なんて……」 彰利 「トマトをマグマに変える力よりかはマシだと思うけど。出費なんて必要ないし」 みさお「あの、なんの話ですか?」 彰利 「それを説明するには『植木の法則』を読まなきゃいけないから却下」 あまり詳しくないしね。 声  『ハワァアアーーーーーーッ!!!!』 彰利 「ぬおっ!?」 みさお「わわっ!?なんですかっ!?」 トマトをマグマに変える力について話していたら、 背後から真・三国無双2、3の兵士の喝采が聞こえてきた。 お主こそ!万夫不撓の豪傑よ!!ってそうじゃなくて。 藍田 「すげぇ!すげぇよこの剣!ホントに弓になった!     しかも石の上に刃を置いただけでスパッと斬れる!!」 中井出「でも晦が持った状態じゃなけりゃ効果が出ないのが悲しいな〜」 丘野 「しゃあないだろ、晦のために作られた剣なんだから」 中村 「けどさぁ晦?弦月の言う通り、名前くらいつけた方がいいと思うぜ?     その方が愛着が湧くってもんだろ。な?あ、ちなみにオリハルコンソードは却下」 悠介 「ほっとけ……どうせ俺に名付けの才能は無い」 夏子 「それじゃあみんなでカッコイイ名前をつける、なんてのはどうかな」 藍田 「おおっ!賛成!いいよなみんな!!」 中村 「恋人の提案だからって張り切りたい気持ちは解るが落ち着けオリバ」 藍田 「オリバ言うな!!」 中井出「だがその提案はグッドだ、ラバーズ木村。     まあそういうわけだからそれでいいか晦」 悠介 「変な名前じゃなかったらなー……」 あ、なんか状況に疲れ果てたって顔してる。 さすがだ悠介。伊達にいろんな人に苦労人って思われてない。 中井出「ではまず誉れ高き原中の精鋭、原中四店王の意見を聞こうか」 皆川 「なんと!?さ、最初から四店王の意見を!?」 ───説明しよう……つーかしなければなるまい。 原中四店王とは原沢南中学校周辺に存在した四つの店を事細かに知り尽くした、 ある意味買い食い帝王と呼ばれている四人のことである。 四店王の一、藍田は超マーケットの安売り時間から特売日までを全て解し、 四店王の二、丘野は中古品店マラドエルの裏の売買物ルートを知り、 四店王の三、中村は独自のルートから値引きしてもらえるたこ焼き屋の存在を知り、 四店王の四、中井出はマクドナルドの内部と回転の仕組みを全て知っている。 まあようするに中井出の今の発言は、自分のことを四店王と自慢してるようなものだ。 中井出「あ、ちなみに俺はフォースブリンガーで」 中村 「じゃあ俺はトムソンガゼル」 丘野 「クラフト魔人」 藍田 「カマボコ」 四店王『さあどうだ!?』 悠介 「出直してこい」 四店王『なんと!?』 即答だった。 そりゃそうだ。 彰利 「キミたちねぇ……中井出以外全員が武器から掛け離れた名前じゃないの」 中村 「な、なにを言う!トムソンガゼルは足が速ェエんだぞ!?」 悠介 「速さに関する名前なんてつけろって言った覚えは無いが」 彰利 「クラフト魔人も全然関係ないし」 丘野 「あ、それはただ純粋に俺が気に入ってるから」 彰利 「気持ちは解りますがね。一番ヒドイのはオリバか……」 悠介 「武器でカマボコって……」 藍田 「な、なんだよ!俺が好きなんだからいいじゃねぇか!!」 田辺 「けどなぁ、カッコイイ名前って前提は何処行ったんだよビスケット」 藍田 「ビスケットとも言うな!!」 清水 「落ち着けよオリバカ日誌」 藍田 「あ、あのなぁ……!一度始まったら集団でオリバオリバ言うのやめろ!」 中井出「大丈夫だって、今のお前には恋人が居るんだから。     愛より自分を強くするものはないんだろ?」 麻衣香「それともなに?まさか藍田くん、夏子のこと好きじゃないっていうの?」 藍田 「バカにすんな愛してる!!     って、だからどうしてそういう話になるんだよ!」 中井出「それはお前がオリバだからだ」 藍田 「訳解んねぇよ!!」 彰利 「オーリーバッ!!オーリーバッ!!」 総員 『オーリーバッ!(オーリーバカッ!!)オーリーバッ!!』 藍田 「ちょっと待て誰だ今オリバカって言ったヤツ!!」 悠介 「……楽しそうでいいな、お前ら」 中井出「フハハハ!!遊べる時はよく遊び、学べる時は惰眠する!     それが我ら原中の心意気!(惰眠は男子限定)」 彰利 「まあそげなわけだから散々と騒ぎませうぜ!!     じゃからほれほれ〜!そげなしけた顔すんな〜?ビンタしちゃうぞこのやろっ!」 悠介 「……はぁ、そうだな。いっちょハメ外して騒ぐかぁっ!!」 彰利 「よっしゃあそうこなくちゃ!!では中井出!いつものいけ!!」 中井出「おおとも!それではヒヨッコどもよく聞け!!今ここで家主の許可が下りた!     今日は大いに騒ぎ、大いに飲め!いわゆる無礼講というものだ!依存は無いな!」 総員 『サー・イェッサー!!』 中井出「では心のドナ様に感謝をしつつ!飲み物は無いが乾杯!!」 総員 『サー・イェッサー!!』 中井出「馬鹿者!こういう時は乾杯で返すんだ!」 総員 『サー・イェッサー!!』 中井出「ええいもういい!騒げヒヨッコども!」 総員 『Sir(サー)YesSir(イェッサー)!!』 開幕のベルが鳴った! だが大多数の者どもは空界の映像をもう一度見せろと言い、 他多数は屠竜剣や賢者の石や精霊や召喚獣や飛竜たちに釘付け。 結果、俺と悠介は輪の外でそれを眺めることとなり─── 悠介 「まあ、こんなのもありだな」 彰利 「そだな、うん」 ふたりして顔を見合わせて笑ったのだった。 Next Menu back