───FantasticFantasia-Set63/空間世界の大戦───
【144:カルナ=ナナクサ/バーニングテイマー】 ───……ォオオンッ!! カルナ「───!?」 感じた違和感はマボロシか。 だが確かに自分の両手には炎の猛りが灯っている。 火種の全てを使い果たした俺が、どうして─── 声  『───前を見ろ。余所見をせず、ただ己の敵のみに意識を集中しろ』 カルナ「───、な───」 聞こえた声はすぐ後ろから。 今までどうしてその気配に気づけなかったのか不思議なくらいの強い波動を放ちながら、 その精霊───サラマンダーは俺の中に力強い渇を流してくれた。 カルナ「なんで───!?精霊はあのドラゴンマスターが……!」 サラマ『余所見をするな、と言った。来るぞ───臆すなよ小僧!』 カルナ「ッ───」 両手の感触を確かめる───そして強く強く頷いた。 ───やれる。 この手に宿る炎は俺が生成できるソレを簡単に上回っている。 火の精霊サラマンダーが力を貸してくれている故だろうがなんだろうが今はどうでもいい。 今は目の前のこいつを───ブッ潰してやる!! カルナ「オォオオオオオオッ!!」 召喚獣『ルォオオオオオオオオオッ!!!!』 召喚獣へと向かってゆく。 疾駆の間には炎を乱打し、怯んだ相手に対してさらに炎の塊を放つ。 ……不思議だ。 さっきまであれだけボロボロだった体が、今は舞い落ちる鳥の羽のように軽い。 これも……精霊の力の為せることなのか……? サラマ『言い忘れたが貴様の肉体は限界が近い。     そうして動いていられるのは風前の灯火が故だ。     さっさと片付けた方が身のためだぞ』 カルナ「そんなオチかよ!!くっそ───!!いっけぇえええええっ!!!!」 召喚獣『ルオゥッ!!』  ゴオォッ───バガァンッ!! カルナ「シ───ィイイヤッ!!!」  バゴォンッ!! 召喚獣『グォッ!?』 岩さえ容易く砕く召喚獣の豪腕を跳躍で避け、隙だらけのデカい頭に全力の拳を見舞う。 インパクトの瞬間に炎を一緒に放ったのでダメージも相当の筈だ。 さらにその頭を踏み台にして跳躍し、再び六点に火種を灯す。 召喚獣『グ───!?』 召喚獣はそれがなんなのか気づいたんだろう。 跳躍した俺を見上げると巨大な口を開き、波動砲めいた光を吐いてきた。 ───ヤバイ!死─── 声  『そのまま放て。言った筈だぞ、臆するな』 カルナ「───!解った!呼応せよ炎のマナ───!     六点に灯す火種より出でるは破壊の象徴!!     燃やし尽くせ炎王!ヴォルカニックブレイザァーーーーッ!!!」」 六点に灯した火種が互い互いを炎で結び、六芒星を描く。 次の瞬間にはその中心に立っていた召喚獣を燃やし始めた。 が───次の詠唱に入ろうとする俺の目の前には既に波動砲が迫って───バガァンッ! カルナ「へ───?」 サラマ『呆けるな!一手で殺せると思ったら大間違いだぞ!』 カルナ「あ、ああ!」 波動砲みたいなレーザーをあっさり破壊してみせた精霊に本気で驚いた。 けどそれも、その精霊自身の一喝にあっさり消える。 俺はすぐに印を組むと、燃え盛る炎目掛けてさらに炎を落とした。 カルナ「爆ぜよ双炎!破壊の象徴たる汝らには消滅こそが相応しい!     フレアエクスプロージョン!!」 唱えた言葉が落下する炎の猛りをさらなるものにしてゆく。 やがてその炎が燃えゆく召喚獣に衝突すると───その場に大爆発が起こった。 カルナ「っ───」 着地とともに思わず耳を塞ぎたい衝動に駆られるが、 そんなことをすれば両手が塞がってしまう。 侮るな───相手は召喚獣。 あれくらいじゃあきっと死なない───! サラマ『いい対応だ───!来るぞ!』 カルナ「ああ!!」 爆煙が風に掻き消される。 その先に居るのは体を焦がし、弱ってはいるが抵抗する力は存分に残っている召喚獣だ。 召喚獣『ゴゥウウォオオオオッ!!!!』 はは……どうやらご立腹のようだ。 カルナ「けど───お呼びじゃないんだよ!!自分の世界に帰りやがれ!!」 ギロリと俺を睨んで咆哮するデカブツに向かって駆けた。 炎の力は弱まることを知らず、時の経過とともにどんどんと強くなってゆく。 勝てる───そう思った俺の手に、デカブツの口から伸びてきた舌が巻きつく。 カルナ「んなっ───!?」 召喚獣『ホォオオゥルェエエエエッ!!!』 ───舌が口へと戻ってゆく。 その先で待っているのは口の中に溜められた波動砲。 カルナ(っ……こいつ!自分の舌ごと俺を殺す気か!?) けど───こうなったらやぶれかぶれだ! そっちがその気ならこっちだって全力だ! カルナ「灯せ我が体内の炎王……!!」 召喚獣『ルォオオオオオオッ!!!!』 カルナ「“メテオインパクト”!!」 口が大きく開かれ、波動砲が放たれようとした刹那。 瞬間的に召喚獣の舌を掴み、反動をつけるように自ら勢いよく引っ張った。 ……生まれるのはほんの僅かな勢い。 けれどその僅かな勢いが、 波動砲が放たれるより先に俺の体を召喚獣の口の中へ誘った。 まるで大気圏を通る隕石のように燃え盛る俺の体を。  ゴォッ!バッガァアアアアアンッ!!!! 召喚獣『ギィッ!!?グァアアギャアアアアアアアアッ!!!!!』 全身を包んでいた炎が召喚獣へと燃え移り、召喚獣を内側から破壊してゆく。 俺の体は召喚獣の口内を突き破り、地面に転がると……もう動かなくなっていた。 カルナ「っ……は……ははっ……!ザマァ……みろ……!」 やがて業火に焼かれるように全身が燃え盛り、 塵となってゆく召喚獣を見て───俺は小さく笑いながら気絶した。 【ケース145:篠瀬夜華/覚醒に至る拍子】 ───ゴォッ!! 夜華 「───!」 目を閉じたわたしの体を───否。 わたしの精神を、強い突風が撫でた。 次の瞬間には閉ざしていた目を見開き、わたしは刀を振り上げていた。  ゾブシャァアッ!!! 怪物 『アギィイイイイイイッ!!!!』 夜華 「───!?な……」 目の前には信じられない光景。 わたしが振り上げた刀が、雄牛を食らった怪物の腕を断ち斬っていたのだ。 夜華 「あ、な……何故……?」 訳が解らない。 ただ頭の中に響いた言葉に流されるままに振るった刀が何故…… 声  『気を抜くな。気を抜くのは相手を仕留め、塵にしてからだ』 夜華 「───!」 頭の中に直接声が響く。 その声に少なからず動揺したわたしは思わず刀を強く握ると、構えを取った。 声  『構えるな。自然に身を任せ、その上で敵のみを然と見ろ。     身を固める必要などない。風に身を委ねる紙のように集中しろ。     【人では勝てぬ】という意識など置いてゆけ。     至れば相手がどんなものであろうと己がどんなものだろうと【紙】と同じだ。     ナマクラ刀で人は切れぬが、紙などでも皮膚は切れる。その意味を知れ』 夜華 「……───」 この声の正体がなんであろうと構わない。 命を救われたことは確かだ。 そして……この言葉の先に生きてゆける可能性があるのなら、 わたしにそれを否定する理由など───一切無い! 怪物 『グルゥウウァアアアアアアッ!!!!』 夜華 「───」 目を閉じる。 その行為はまるで無意識の行動だ。 だが感じる。 風の動き、流れ、その在り方が。 振るわれる尖った腕の形状や、その速度───風を裂く音さえも。 そして───今なら至れる。そんな気がした。 夜華 「紅葉刀閃流───」 刀の柄を軽く握り、あくまで風に揺らされる和紙が如き精神を心に刻む。 やがて乱れの無い静かな動作で───その一閃を放っていた。  ゾフィィイインッ!!! 怪物 『アギッ!?ギアァアアアアアアッ!!!!』 夜華 「刀覇の型……-緋凰絶翔閃(ひおうぜっしょうせん)
-」 振り切った刀が剣閃を放つ。 その様は斬撃が地走りにでもなったかのように、 斬りつけた怪物の腕を奔るが如く一直線に切り裂いていった。 夜華 「………」 ゆっくりと息を吐く。 不思議だ───あれほど乱れていた心が、今はこんなにも落ち着いている。 ……風だ。 穏やかな風が、わたしの心の中で暖かくそよいでいる。 その風が、こんなにも心強い。 怪物 『グッ……ルゥォオオオオオオッ!!!!』 夜華 「……すまないな、怪物。加減が出来そうにない」 怪物 『グッ───!?』 地面を砕きながら駆けてくる怪物に向かって跳躍した。 当然怪物はわたしを殺そうとそのまま襲い掛かってくるが─── わたしはそれに動ずることもなく刀を納め、静かに抜刀していた。  スッ───フィィンッ!! 怪物 『ギ───?』 わたしを叩き潰そうとした怪物の手は虚空を裂いた。 ……当然だ、全てを感知するべきものが既に断たれている。 母上───(おの)(うち)から()る刀技の型……ここに為りました。 嵐のように舞う華にて穿つ───即ち。 夜華 「嵐華穿(らんかせん)───-清流-(せいりゅう)」 ───チキ、ン。 ズバシャシャシャシャシャシャシャアッ!!!! 怪物 『イギィイイイイイイイイッ!!!!』 刀を完全に鞘へと納めた刹那、怪物の体から微塵に刻まれたかのような霧の鮮血が散る。 それはまるで、空から舞い落ちる花弁のようだった。 怪物 『───!』 怪物はわたしに向けて無骨な拳を振り下ろそうとしたが、 振り上げた瞬間───腕が粉微塵になって地面に落ちた。 怪物 『ギ!?』 そうなってしまってはもう遅い。 崩れた先から次々と崩れ、やがて怪物は─塵となって消滅し─── 気づけばわたしの中にあったそよ風も、 この世界に吹いた風に意識を奪われた瞬間、消え去っていた。 【146:リヴァイア=ゼロ=フォルグリム/旅の意味、信頼の先】 キュィイイイイ───ボッゴォオンッ!!! 召喚獣『ギイィイイッ!!!?』 リヴァ「なっ───!?」 両の手に込めた極光を合わせようとした途端、目の前の召喚獣の腕が吹き飛んだ。 何事か───そう考える前に顔が振り向き、 召喚獣の腕が吹き飛んだ方向とは逆を見据えていた。 そこには─── ドワーフ「どうやら間に合ったようじゃの!」 エルフ 「人間よ!我らエルフ、ドワーフもともに戦うぞ!」 今まで人との干渉を避けていたエルフとドワーフが……武具を持って駆けつけていた。 リヴァ 「馬鹿な……エルフの長は多種族との干渉を酷く嫌うと聞いたぞ!?」 エルフ 「あの男は既に長でもなんでもない!      規律に縛られるだけが『存在』じゃないのだ!      私達はようやくそれに気づけた!」 ドワーフ「まだまだ若いモンたちには負けん!いくぞお前らぁっ!!」 ドワーフ『オォオオッ!!』 エルフ 「援護は任せておけ!我等エルフの弓術、とくと見せてくれる!」 エルフ 『オォオッ!!』 ……驚いた。 まさか、他の誰でもなく───エルフとドワーフが駆けつけるなんて。 リヴァ「エルフたちっ!こいつに魔導や式は通用しない!物理攻撃のみで対応してくれ!」 エルフ「承知!!」 エルフたちがキリ……と弓を引く。 そして───キィンッ!と放たれた弓は、 笛の音色でも聞いているかのように高い音を出して風を裂いた。 召喚獣はそれを弾こうとするがその度に部位を削られ、たまらずに咆哮した。 だがおかしいのはその威力。 いくらエルフの弓だからといって、あれほどの威力が出るとは思えない。 何故───?……! リヴァ「……そうか!あいつに魔術や式が効かないとしても、     己自身を強化させるだけなら無効化される心配は無い!」 迂闊だ……!そんなことにさえ気づかないとは───! ドワーフ「ほぅれ!いくぞい!!エクスプロードハンマーじゃあっ!!」 召喚獣 『グォッ!?』  ゴォッ───ボゴッパァアアンッ!!! 召喚獣『アギィイイイイイイイッ!!!!』 ドワーフのひとりが振るった巨大な鎚が召喚獣の足に触れた途端、 その部位が巨大な爆発で吹き飛ぶ。 エクスプロードハンマー……爆発系の魔法を魔導と式とともに込めたという、 空界に伝説として伝わるエルフとドワーフと精霊との合作だ。 ディバインハンマーと呼ばれ、 言葉に呼応して属性が変わるという創造銃ゼログロードと同じ製法で出来た鎚。 いくら魔導や式が通用しないといっても直接攻撃として叩き込まれたのではお手上げだ。 召喚獣 『ギ……オ、オノレ……オノレェエエッ!!』  ドゴォッ! ドワーフ「ムグオッ!?」 召喚獣はドワーフを吹き飛ばし、 さらに他のドワーフを蹴散らしながらエルフの居る場所へと向けて疾駆した。 が─── 声  『甘いなーおっちゃん。     走ることしか出来ないんだったらお前の負けだー。グランドダッシャー!!』 リヴァ「───!?」 そんな声が聞こえた途端、召喚獣が駆けていた地面が爆発したかのように波立つ。 地盤がそんな状態なんだ、当然召喚獣は走っていられずに転倒した。 召喚獣『ギィッ!?ナ、ンダコレハ───!』 声  『寝転がってると危ないぞー。グレイブ!』  ギィンッ!ゾパァンッ!! 召喚獣『アガァアアアアッ!!!!』 倒れていた召喚獣の体に、地面から突き出した竜の角じみた岩盤が突き出す。 召喚獣は体を貫通された痛みに絶叫を上げて起き上がるが、 そこをエルフに狙い撃ちされた。 召喚獣『グオッ……!キ、キサマラ───』 ……そうだ。 魔導や式が効かないにしても、それはそういう力が通じないだけだ。 つまり───魔導であれ式であれ、『自然』を利用するものならば『自然』の攻撃。 先ほど突き出た地面が魔法によるものでも、それは自然のカタチを変えた攻撃だ。 それならあいつが魔導や式───あまつさえ魔法を無効化するとしても通用する。 リヴァ「よし───!母なる大地よ!その身を矢として我に授けよ!ロックブラスト!!」 拾い上げた石に魔導と式を込め、高速で射出する。 召喚獣相手にこれは無いものだが、それでも傷のついた部位に当てればダメージにはなる。 召喚獣『キサ───マラァアアアアッ!!!!』 声  『おっちゃんうっさいぞー!もう静かになってろー!アースジャベリン!!』  バキンッ!メキメキ……!! リヴァ「───?……!なぁあああ!?」 聞こえた声の方向を見た途端、思わず素っ頓狂な声が漏れた。 なぜなら虚空に点在する精霊───ノームの横に巨大な岩があり、 それがどんどんと刃のような形になっていっているのだ。 召喚獣『───!?』 召喚獣もそれに気づいた───が、もう遅い。 ノーム『せぇえ───のっ!!』  ドゴォッッッシャアアアォオオオンッ!!! 召喚獣『ガッ───ガァアアアアアアッ!!!!』 巨大な岩の刃は重力に引かれるようにゆっくりと、 だが突如として凄まじい速度で召喚獣へと降り注いだ。 当然召喚獣はそれを避けようとしたが、 エルフの弓の集中射撃と 地盤さえ砕くディバインハンマーの地震によってバランスを崩し───  ザゴシャゴッバァアンッ!!!! 召喚獣『───!!!』 巨大な刃の前に叫ぶ間もなく塵と化した。 リヴァ「……強い」 信じられない強さだ。 これが精霊の力……?馬鹿な、召喚獣に容易く勝てるほどノームが強かったとは思えない。 だったら何故……? リヴァ「……い、いや───そうか」 精霊は契約者と『ともに強くなること』を望む。 それはつまり、悠介が強くなろうとすればするほど精霊たちも─── リヴァ「……あの馬鹿。ミルハザードとの戦いに集中しろと言っておいたのに」 何処までも他人の心配ばかりしている悠介に悪態をつきながら、 わたしはルーゼンの治療を終えたバルグやエルフとドワーフとともに勝利を喜び合った。 ……会ってきちんと礼を言いたい。 死ぬなよ、悠介─── 【ケース147:ヤムベリング=ホトマシー/ムカツクけど強いから余計にムカツク】 ゴギィイイインッ!!!! 召喚獣『ギッ───!?ギャアアアアアアアアッ!!!!』 ベリー「え───?」 わたしを確実に殺す筈だった腕は、わたしの目の前で落下した氷みたいに砕けた。 何事かとか───そんなことを考えるより先に、わたしの体は召喚獣から距離を取る。 そうしてからようやく何事かを考えると─── 声  『美しくない。いくら美しくない者とはいえ、女性に殺意を向けるなど───』 そんな声が聞こえてきて、わたしはとても脱力した。 あー、つまりアレだ。 ウィルオウィスプだ、この声は。 召喚獣『何者だ……!何故我の狩りの邪魔をする……!』 ウィル『マスターから頼まれた故だ。でもなければ私がマスター以外の者を助けるものか』 ベリー「………」 ……むかつく。 どうせ助けられるんだったら他の精霊がよかったかも……。 召喚獣『精霊か……!面白い!精霊は一度も食らったことが無い!     貴様、今すぐ我に殺されて咀嚼されろ!肉片残らず食らい尽くしてくれ───』  ジュワァッ!! 召喚獣『アガアッ!?』 ウィル『汚らわしい手で私に触れようとするな』 ウィルオウィスプに近づこうとした召喚獣の手が消滅する。 それはどういう能力なのか─── 近づけば近づくほど体は消滅し、しかし逃げようとしてももう遅い。 ウィル『光の無い場所に闇は無い。だが光で埋め尽くした場所には闇は存在出来ない。     即ち───純然たる光が密集する場所には光以外の存在は認められないのだよ。     真実の光に飲まれて消えろ。特別に貴様にはそれを許可しよう』 召喚獣『アギッ───や、やめ───』  ジュウッ───! ……全てを語るより先に、 あれだけの力強さを放っていた召喚獣は……あっさりと消滅した。 な、なんて馬鹿げた強さ……。 これって少なくとも悠介もこれくらいの力量はつけてるってことよね……? ベリー「うあ……頭痛くなってきた」 ウィル『それではな、魔術師。マスターの願いは叶った。わたしは次へ向かうとしよう』 ベリー「へ?あ、ちょっと!悠介の願いってなんなのよ!」 ウィル『全ての人や竜を死なせないこと。それがマスターの願いだ』 ベリー「えぇっ!?ちょ───もっと詳しく話しなさいよぉーーっ!!!!」 物凄い速さで遠ざかってゆくウィルオウィスプに罵倒を飛ばした───が、まるで無視。 つくづく悠介と他の者に対する対応が違う精霊だった。 【ケース148:誰かさんたち/漁業の町アッサラントの攻防】 チキリ───ドガガガガガガァンッ!!! 召喚獣『ギャァアアアアアアッ!!!!』 ボシュンッ─── フォード「……一丁あがりだ。眠たいな」 ゼロ  「ペースが速いぞフォード。      これじゃあ召喚獣に『来てください』と言っているようなものだ」 フォード「ム───知ったことじゃない。おいナオヤ、ポリットを買って来い」 直哉  「こんな時くらいポリットのことは忘れてくださいよフォードさん!!」 フォード「〜〜……どいつもこいつも眠たい限りだ───“マグナム”」 チキリ───ドパァンッ!! 召喚獣『ブゲェッ!!』 召喚獣の頭が一撃で吹き飛ぶ。 比較的ザコだ───どうとでもなる。 その分数が多いのが面倒だが─── フォード「おいゼロ。久しぶりの外での行動だ、体がなまってるなら運動でもしろ」 ゼロ  「面倒ごとは全部押し付けるのは変わらないな、お前は。      それで自分はポリットかじって惰眠か」 フォード「……今に始まったことじゃないだろう」 ゼロ  「だったら少しは改めてほしいものだ───なっ!!」  ゴッ───グチャアッ!! 召喚獣『アギ……───!』 召喚獣の顔面を掴んだゼロはそのままの身を捻り、 地面にソレを叩きつけることでツブした。 ……檻の中で囚われてたヤツの動きじゃないな。 目も見えていないっていうのに、相変わらずのバケモンだ。 フォード「まったく……依頼でもないのになんでこんな面倒なことを俺が……」 ゼロ  「いつも眠そうな馬鹿者に喝を入れるためだ。少しは無償で奉仕しろ」 フォード「……無償?……眠たいな。今ならポリット10個で手を打つが」 ゼロ  「……解った、それでいいからさっさとしろ」 フォード「オーライ。“イレイザーカノン”」 いつものように“掃除用”の言葉を謳う。 それとともに創造銃ゼログロードが朱く変異し、 それを合図とするように引き金を引いた。 フォード「塵と消えろ」 銃から光が放たれる。 言葉に応じて形状を変え、性能さえ変える銃から放たれるソレは『消滅の光』。 当てられた召喚獣は悉く消え去る。が───バッシャアアア!!! 漁師  「ひいいっ!?う、海からもバケモノが……!」 フォード「───!チッ……」 海側に向けて銃を構える。 だが漁師たちには海側に非難してもらっていたため、 ここで撃てば漁師たちまで巻き添えになる。 どうするか───そう考えた時。 声  『退きなさい───メイルシュトローム!』 その場に高く響き渡った声とともに、 海から這い上がろうとしていた召喚獣が渦に飲まれて消滅した。 フォード(あれは───ウンディーネ?) 虚空に浮いている存在の素性を確かめようと目を細めたが、 一度の瞬きの瞬間にその姿は消えてしまっていた。 残されたのは─── 漁師 『ウッ……ウォオオオオオーーーーーーーッ!!!!』 両手を天へ突き上げて喜び合う漁師たちだけだった。 直哉 「やりましたね!あ、でも面倒なら最初からイレイザーカノン使えばいいのに」 ああ……そういえばおまけも居た。 フォード「いちいちやかましいな……。文句があるなら付いてくるな」 直哉  「俺が居なかったら誰がポリットイーターへの依頼を受けるんですか」 フォード「ぐっ……」 ゼロ  「……相変わらず人との交渉はヘタなのか、フォード」 直哉  「自分でやるって言っておいて、もう23件ツブしてますから」 ゼロ  「そこまで来るともう才能だな」 フォード「黙れお前ら……」 このパターンはマズイ。 またくだらない愚痴が始まるならさっさと移動しよう。 まったく……眠たい限りだ。 【ケース149:弦月彰利/アンリミテッドブラックオーダー】 彰利 「奥義!!唐沢さん的超腹筋!!」 ビッシィッ!!ボゴォンッ!! 彰利 「ゲハァーーーッ!!!」 腹目掛けて振るわれた音の無い拳を腹筋で受け止めようとしたが……無駄に終わりました。 あっさりと貫通した拳と腕は俺の背中から生えているように、時折揺らされている。 彰利 「ゲフッ……!が、はぁ……!つ、強ぇえ……!こいつ強ぇえよぉお……!!」 みさお「なっ……なに考えてるんですか彰衛門さん!     こんな時に『はじめの一歩』の唐沢さんの真似をするなんて!!」 彰利 「い、いかなる時でもその場のノリを大事にする……。     そ、それが……トラブルムードメーカー……ぶぐっ……」 みさお「おっ……お腹貫かれて血を吐いてまですることですかぁーーーっ!!!」 ブンッ───ドチャアッ!! 彰利 「ゲハッ……───」 みさお「彰衛門さん!!」 投げ捨てられ、地面に転がった体は上手く動いてくれない。 悲鳴に似たみさおの声だけが耳にこびりついて───意識が…… 声  『───貴様の実力とはこんなものか───?』 ……へ? あ、れ……?なんか今……みさおの声に混じってなにか…… 声  『答えろ。貴様の実力とは───』 ……知らんよ?これで死ぬならそれが実力なんでないのかい? というかあなたはだぁれ? 声  『……そうか。死ぬことを受け入れているというのだな?』 無視ですか……つーか失礼な!『これで死ぬなら』と言ったでしょう! 『俺は』まだまだやれる!すぐに諦めるような他の輩と一緒にすんな! こと『死』に関しては俺より生にしがみつくヤツなどおらんよ! 声  『……そうか。それを聞いて安心した。     では我の力を少々貸す。あとは己で立て。───立って前を見ろ。     アレはお前の敵だ。お前が破壊しろ』 ……OK。 声  『闇の理はお前の中にある。我の声がお前に届くうちはまだ大丈夫だ。     前を見ろ。後ろなど振り向くな。今お前がするべきことは───』 俺が───するべきことは─── 彰利 「───……」 みさお「えっ───彰衛門さん!?」 ゆっくりと起き上がる。 腹に空いた風穴は黒が埋め尽くし、すぐに血肉と化して皮膚が生成される。 ……闇の理は俺の中に───闇っつーことは……今のはシェイちゃんか。 ───そうだな。俺自身が闇であり影であり、そして黒ならば。 引き裂かれようとも再び黒に戻るのみだ。 もちろん月生力で治癒するという点は変わらない。 けど、元々全てが黒に染まった俺だ。 治癒するべきは『人』の部分である皮膚のみであり、 風穴を開けられたからといって『黒』が散るわけではない。 そう……一言で言えばストーンバスターの『闇』に操られてた人と同じだ。 涙なんてウソウソウソ!って。 『人』なのは皮膚だけであり、その他全てが黒であり闇であり影である。 殺したけりゃあ一瞬で塵に変えてみせんさいおんどりゃあ。 彰利 「見切ったぜアロマタクト……ってよくよくしつこいよね俺も」 でも自覚とともに見切った。 これぞ『黒』の真。 シェイちゃんの後押しにより───俺は今こそ目覚めたのだ! 彰利 「もうマテリアだって飲んじゃうよ!?ホレ!」 みさお「え?あわぁっ!?」 ゴツゴツしたマテリアを口にほうり、ゴキュリと無理矢理飲み込んだ。 すると───シュパァアアアッ!! 彰利 「URYYYYYYYYY!!!!!」 みさお「キャーーーッ!!?」 体から闇の閃光が溢れる。 それはまるで石仮面の力を入手した者のようである。 恐らくは───闇属性のマテリアであるダークマテリアが、 シェイちゃんが俺の中に注いでくれた闇の力に反応して復活したのでしょう。 今までに無い活力が俺の中に溢れてきています。 彰利 「OK……準備は万端だ。では始めようか召喚獣さんよォ……。     こっちはもう影も闇も黒も元気リンリンパワー全快だぜーーっ!!」 みさお「こんなときにまでバッファローマンの真似しなくても……」 気分がいいからいいのです。 つーわけで俺は再びグリーンジャイアントを発動せんとダークマタ−を卍解─── 召喚獣『ルォオオオオオオッ!!!!』  ザブシャアッ!! 彰利 「ぐぶっ!?」 いきなりだ。 召喚獣の首が驚くべき速さで伸びてきて、俺の体を噛み砕いた。 が─── 彰利 「アホだねキミ。     俺を殺したいなら人の肌も闇も影も黒も一瞬で消せるようになってから挑め」 噛み砕かれた部位から影と闇が漏れる。 当然、『影』とは散々モンスターどもを食らい尽くしたアレだ。 こいつが俺を食らうつもりなら───逆に食ってやるのみ。 召喚獣『───!?』 召喚獣も口の中の異変に気づいたんだろう。 それは当然だ。 なにせ影が自ら胃袋の中に飛び込んで、内側からどんどんと食らっていってるのだから。 召喚獣『ガァアアアッ!!!ギャアアアアッ!!!』 吐き出そうとしても無駄だ。 影は召喚獣の胃袋にベッタリとヘバリつき、剥がれることはない。 そもそも『胃袋』なんていう密閉状態の場所だ。 『影』は絶対に存在するし、 それに密着していれば引き剥がされることなど有り得ないのだ。 彰利 「今楽にしたげますよ。卍解───“黒縄天譴明王(グリーンジャイアント)”!」 骨子となっているダークマターに再び闇と黒と影を注ぐ。 次の瞬間には俺の体は巨大化し、 俺を噛んでいた召喚獣の頭部を完全に吹き飛ばして大地に降り立った。 だが───頭部を破壊されてもビクビクと動く体を見て、 せめて楽に始末してやろうと、影で丸呑みにした。 彰利 『御仏の慈悲だ!』 関係無いけどね。 ともあれカタをつけた俺は卍解を納めると、 元の状態に戻ってようやく一息を入れることができた。 【ケース150:晦悠介/決意の先に見えるもの】 ゴォッ───バギィイイインッ!!!! ゼット「ッ───!?」 ゼットの表情が微かに歪む。 振り下ろされた剣を正面から弾き返したのだ。 必殺の一撃の意思の下に振り続けているものが正面から弾き返されれば、驚愕は当然だ。  ───かつての俺は、ひとつ勘違いをしていた。 この剣は竜人の力を『抑えるもの』ではなく、この剣に『流すもの』。 当然竜人の力を解放すればするほど剣に力が流れ、 いくら竜人の力を解放したところで俺自身は強者になど至らない。  ヒュオッ───バギィンッ!!ガギィンッ!!ヂギィンッ!! ゼット『……!!、グ───!!』 ならば。 その力を解放すればどうなる? 流すだけだったものを解放してやれば、今まで流れただけの力を解放できる筈。 けどそれは俺の望む決着じゃない。 そんなことでもし勝っても、それこそ自分の力で倒したことにはならないだろう。 ならば───?  シュバォ!バガァンッ!!チキッ───バギィインッ!! ゼット「ッ───!!……!?」 ならば───!今ここで強者に至れ───!! 裡に眠る意は『超越者』───! 創造者にして、神と死神の意味を持つ存在と融合することで超越を手にした異端の具現! 剣に流れた竜の力とともに今ここで成長し、己の力に変換しろ! 竜の力の理など、幾度もの修行の果てに見た筈だ! 悠介 「分析、開始(ロード、我がイド)───!!」 ヴオッ───ギィン!ギィンッ!!ギンッ!ギィン!ギヂィンッ!! ゼット「づっ───!?馬鹿な……!!」 連ねられる剣を片っ端から弾いてゆく。 それでも足りない。 自分の意思が、意識の海へ埋没しろと訴えかけてくる。 だが俺はそれをせず、一から始まる竜人の力をひとつずつ吸収してゆく。 共に成長したいという願いがあるからこそ、一気に身を沈めるなどということはしない。 だからだろうか。 剣と、皇竜珠に吸収された俺の中の竜人の力がゆっくりと流れる中、 それぞれ五つの光を見つけることが出来たのは。 悠介 「───ッ」 その光を吸収した刹那、体に奔る全ての回路が灼熱した。 まるでその光そのものが生きているかのように、 天地空間の回路が巡るには小さすぎた回路の穴を支え、広げてくれる。 そうした瞬間に体全体に回路が通り、───バギィンッ!! ゼット「っ───!?」 視界が真紅に染まる。 見えているものなんていつだって赤だった。 生を受けたのは遙かに昔。 その頃から───否。 俺を偽者と罵った存在の手によって家族が殺され、 その血がこの目に染み込んでからずっと赤だったに違いない。 それでもこの赤に嫌悪しなくなったのは、あの黄昏の中に親友の姿があったから。 そして───前世の記憶が、約束を思い馳せることを思い出させてくれたから。  ───恐れるな、もう受け入れろ。 そう。 恐れる必要なんて最初からなかった。 人として生まれ、人として否定されてなお、いくら自分が人でありたかったからとはいえ。 生まれ、死神と契約を交わした頃より、既に─── 悠介 「オ、───」 幼少の頃から今までの全てが俺の思考を駆け抜ける。 その中に至福はあったか、と───かつての自分が今の自分に問いかける。 きっと、それが『人間』で居られる最後の問い掛けだった。 けれど俺は首を横に振ると、言を唱えるかのように呟いた。  ───生きた奇跡は至福になんて遠かった。 それでも望んだものがあった。 いつか自分の親友が選んだ道だ、きっと自分も胸を張って歩いていける。 不安なんてものは山ほどある。 それでも憧れたものや願いがその先にあるというのなら……何を躊躇する必要があるのか。  そう。生まれ、死神と契約を交わした頃より、既にこの体、この意思は─── 人でありたいからずっと目を背けて来た。 神になろうが死神になろうが、 自分が人であると認めている以上、誰になんと言われようが人だった筈だった。 己をバケモノだと認めていようが、それを信じる自分が自分を支えてきた。 でもそれは間違いだ。 人は全てを守った状態で、次を望むことなんて出来やしない。 だから、と。  ───そう。ずっと昔から、既に……俺の中には“世界”が在った。 一緒に生きて、一緒に成長し、それを創造することで無茶も可能にしてきた。 それでも全てを染めなかったのは最後の駄々みたいなものだった。 自分には元からそれだけの意思があった筈だったのに、 親友を置いてひとりだけ異端になることが怖かった。 だけど……もう誤魔化すのはやめよう。 俺は、俺の願いを叶えるために『人』であることを辞める。 意思以外が変わることなんてきっと無い。 それでも人としての在り方を捨てることに戸惑いがあったことは確かだ。  でも、もう戸惑わない。  いつかあいつが俺を守ってくれたように、  今度は俺が守りたいもののための道しるべになる───! 悠介 「オ───オォオオオオオオッ!!!!」 視界はとうに紅蓮。 全ての世界の回路が全身を埋め尽くし、 それを受け入れた刹那───俺は『人』ではなくなっていた。 飛翼を翻し、宙に舞うその姿はまさに竜人。 そして俺はようやく理解した。 ゼプシオンを打倒したのち、ソードが言っていた言葉の意味を。  『目的が決まっているというのに己の在り方に拘り、   黄昏の真の意味にすら気づいていない』 黄昏の真の意味にはまだ遠いけど、『己の在り方への拘り』の意味には辿り着けた。 そう確信する。 人間のままで全てを守りたいなんて、そんなことは無茶に決まっている。 だったらどうするか?───そんなのは簡単だった。 悠介 「そうだ、迷う必要なんてなかった───」 守るために力をつけることに頷いた。 自分を削ることになってもいいって思った。 だったら……守りたいものを守れるなら……!! 俺は───人間じゃなくてもいい!!  ギシィンッ!ガギィッ───バギャアンッ!! ゼット「───!?馬鹿な!俺が押し負け───」 ゼットの腕の剣が砕ける。 だがそれでも追撃をやめることは無い。 回復させる暇を与えないために屠竜剣をヴィジャヤに変換し、 雷迅の力を以って点の軌跡を奔らせる───! ゼット「───っ……何故だ!何故そこまで他人のために戦える!     己が死ぬかもしれぬ状況でなお、何を思い他人のためなぞに───!!」 悠介 「っ……そんなことも忘れたのか!!     お前は───それを思ったからこそ     セシルを守れるくらいに強くなりたいって思ったんじゃないのか!!」 ゼット「黙れ!気安くセシルの名を口にするな!貴様に何が解る!!     確かに貴様には俺とセシルの過去を見せた!     だがそれで知ったかぶりをされるほど俺達の歴史は甘くなかった!!」 悠介 「当たり前だ!甘くない歴史なんて存在しない!     それでもみんな精一杯にこの世界で生きてるんだよ!     それに見向きもしないで全てを破壊しようとしているお前にこそ何が解る!!」 ゼット「ッ〜〜……ほざくなぁああああっ!!!」  ヒュォッ───ザガガガガガガガガァッ!!!! 振るわれる豪腕に合わせるように槍を閃かせる。 紫電を纏い、 屠竜の力を持ち合わせたその連撃は竜であるゼットには邪魔なものでしかない。 ゼット「チッ───鬱陶しい!!」  ───ヂギィンッ! が、ゼットは砕けた腕を犠牲にするようにソレを弾くと、大きく間合いを取った。 それは恐らく───それこそ懇親の一撃を叩き込むための間合い。 現にゼットは体全体に禍々しい気配を出す力をため、 俺を睨むと岩盤を踏み砕いての恐ろしい速度で視界から消えた。 声  『もう殺す……!貴様は死んだことさえ自覚出来ない内に殺してやる……!!』 凄まじい速度の中での発声だからか、聞こえる声はブレて聞こえた。 そうした言葉に耳を傾けている間にも周りの岩盤は次々と砕け、 その砕けた岩盤の距離と俺との距離が徐々に狭まってゆく。 悠介 「───“伎装弓術(レンジ/アロー)”」 唱えた言とともに槍が剣となり、剣が弓へと変化する。 次に構えるのは槍───ゲイボルグだ。 小さな黄昏から引きずり出したそれを構え、ゆっくりと構えた。 岩盤が砕け続ける音の中に耳を澄ましてみれば、微かに聞こえる失笑。 声  『無駄だ───!そんな弓ごときでは俺の動きは───』 悠介 「“不避死を齎す破生の竜槍(ゲイボルグ)”」  キィ───バヅンッ!! 弓から放った槍が虚空を劈く。 岩盤の砕ける音は四方八方から聞こえるが、槍が向かったのは一直線の方向。 声  『な───!?』  ───バギィンッ!! ゼット「ぐあっ───!?」 貫きこそしなかったが、 心臓を捉えるまで止まらないその槍は見事にゼットの動きを止めてみせた。 そして───そんな小さな隙さえあれば十分すぎる。 悠介 「“伎装剣術(レンジ/ブレイク)”───!」 竜人状態であるそこからさらに神魔を開放。 一気に間合いを詰め、紫電を放つ屠竜剣を振り下ろす───!!  ゾパァッ!!───フィィインッ……!! ゼット「ガ───、ア……!!」 ゼットの肩から脇腹にかけてを斬り裂く。 今度は『傷』なんてものじゃない。 肩から脇腹、その全てを『斬り裂いた』。 ゼットの上半身は重力に促されるかのようにズルリと崩れ、 その表情は驚愕に染まったまま───死んではいなかった。 だが俺は神魔を解き、竜人の状態でゼットと向き合った。 ゼット「こ、んな……馬鹿な……!!俺は、俺は黒竜王……!貴様ごときに……!」 悠介 「黒竜王なんて最初から居なかった。全てはお前が作り出した幻想だったんだよ」 ゼット「幻想……?何を言っている……!俺はここに存在している……!     この世界の均衡となって……嫌になるほどの時を生きて……───     そして……そしてセシルとずっと一緒に……!」 悠介 「……セシル=エクレイルなんて人物はもう居ない。     今この世界に居るのは簾翁みさおであって、セシルなんかじゃないんだよ」 ゼット「クッ……ク、フハハハハハ……!!そうだ、セシルはもう死んだ!     死ななきゃ俺はここに居ないんだからな───!     だがそれがどうした!?あの女はセシルの───前世の記憶を持っている!     救いが無いと思うかツゴモリ!だがな───俺はそれで十分なんだよ!!」  グジュリ───気持ちの悪い音を立てて、断たれたゼットの体が繋がってゆく。 悠介 「───!?やめろ!これ以上戦う気なんて起こすな!もういいだろう!?」 ゼット「何が『いいだろう』だ……!それを決めるのは俺だ……!!     他の誰にも……邪魔なんてさせはしない!!     もう手遅れなんだよツゴモリ……!俺はもう戻れない……!     そうだ、俺は狂ってる……だがなツゴモリ……!     そうさせたのは他の誰でもない、この世界の先祖たちなんだよ!!     それを憎み、殺したいと思ってなにが悪い!!」 ズブ───ビシャッ!! 悠介 「っ───!?くあっ……!」 ゼットはわざと再生中の腹に腕を沈め、抜き取った血を俺の目に振り払った。 嫌な予感がしてすぐに構えたが、視覚は完全に閉ざされていて何も見えやしない。 すぐに視覚じゃなく気配で探ろうとするが───周囲には既に気配が全く感じられない。 どうなっている───?そう思った時、俺の中に最悪のイメージが浮かんだ。 悠介 「───ッ!!」 すぐさまにブラックホールを創造し、転移した。 気配の先はそう遠く無い───ゼットの速さならばすぐに辿り着いてしまえる場所だ。 間に合ってくれ……!! 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