───呆れることに慣れた人でも呆れることは必ずあると空に向かう黒───
【ケース02:弦月彰利(再)/タモノ男爵】 ゴォオオオ…… 彰利&悠黄奈『フ〜〜ア〜〜ムア〜〜〜〜イ!!!』 で……なんで俺達イクスキィ蒼山で叫んでるんかね。 みさお「彰衛門さんが悠黄奈さんにフーアムアイを教えたいって言ったからです」 彰利 「あのさ、みさおさん?人の影に月影力繋げて考え事を受信するの、やめない?」 受信つーか、もうこれは盗聴の域に達してないか? みさお「フーアムアイはいいですから、早くレファルドに行きましょうよ。     こんなところで道草くってても仕方ないですよ」 彰利 「こんなところって……マグナスに聞かれたら怒られますよ?」 仮にもどころかここってばマグナスの住処なわけだし。 ていうか俺と悠黄奈さんが叫んだことで、 遠くからブルードラゴンが一体ワサワサと飛んで…… 彰利 「やばい、やばいって!このままだと……来たァアアーーーーーッ!!!! みさお「え?───ひゃあっ!?」 ゴォオオオッ───ブワッサァアアッ!!!! 物凄い突風とともに、ブルードラゴンが目の前に降り立った───!! 彰利 「ノ、ノー!話し合おうボクのキミ!!     ボクはただフーアムアイを言いたくて───!」 青竜 『これは竜王、よくぞいらっしゃいました。どのような御用で?』 彰利 「へ?」 悠黄奈「……あの?竜王って……」 大変驚いたことに、俺達を完全に無視して悠黄奈さんに語りかける青竜。 ……悠黄奈さんが悠介だってこと知ってるんかね。 ってそっか。考えてみりゃあ悠介が悠黄奈さんになった時、各地の竜王も集まってたしね。 蒼竜王が青竜たちに教えたのかもしれません。 悠黄奈「あの……竜王、というのは……勘違いではありませんか?     わたしは竜の王になったつもりはありませんし、     女性の身で『王』と呼ばれるのは抵抗があります……」 青竜 『……は、これは失礼を。では女王と呼ぶことでお許しください』 悠黄奈「え───いえ、ですから。わたしは竜の王にも女王にもなったつもりは……」 青竜 『………』 悠黄奈「……解っていただけましたか?」 青竜 『……おい小僧』 彰利 「小僧言うな!……なんじゃい」 青竜 『王は男性だった時の記憶が無いのか?』 彰利 「む。その通りでござる。今現在の彼女は昏黄悠黄奈と申すメイドさんである」 青竜 『むう……これはどうしたものか。これでは王としての威厳というものが……』 威厳ねぇ……。 悠介にもそげなもんはないと思うけど───『威圧感』の間違いではなかろうか。 青竜 『おい小僧。王を元に戻すにはどうしたらいい』 彰利 「だから小僧と呼ぶなっつーとるのに……。     あたしゃこれでも千年生きとるんですよ?」 青竜 『そうか、それはよかったな。それで?どうすればいい……』 野郎……。 彰利 「えっとね、事情があって今は男に戻すわけにはいかんのですよ」 青竜 『なに?何故だ』 彰利 「フフフ、知りたがりは長生きせんぞ」 久々の白虎さま発動。 だが鋭い眼で、しかも間近でギヌロと睨まれたら……ハイ、 降参するしかありませんでした。 彰利 「……あのね?悠介の魂は今はちとヤバイ状態にあるの。     それを休ませるために無茶しないようにとおなごにしてあるのよ」 青竜 『なるほど……つまり、     王に戻してしまうと無茶をする可能性があるから女性にしているわけだな?』 彰利 「そゆこと。つーわけだからさ、     悠黄奈さんには悠黄奈さんが悠介だってことは黙っててほしいわけです」 青竜 『なるほど……解った、いいだろう。だが忘れるな、姿は違えど王は王。     我等はたとえ王がどのような姿になろうと忠誠を誓っている』 彰利 「なんで?」 青竜 『現存する竜王全員が王を王と認めたからだ。     王には二代目の【レヴァルグリード】になってもらう』 彰利 「レヴァルって……待った、それって伝説の九頭竜の名前っしょ?ええの?」 青竜 『竜王たちに加え、竜族全てが頷いた。否定する理由が無い』 彰利 「うあ……」 すげぇ……親友さんったらマジでドラゴンマスターになっちゃったよ……。 知らないところでどんどんと彼の存在が大きくなってゆく……。 つーか周りが勝手に大きくしてゆくっていう方が妥当でしょうかね。 彰利 「そ、そっすか。それではオイラ達先を急ぐ故……アディオスボンジョリーノ」 悠黄奈「失礼いたします。それと……足を怪我されているようです。     ご自愛くださいね、ブルードラゴンさん」 青竜 『これは……気がつかなかった。礼を言います、王……いえ、女王』 悠黄奈「いえ、あの……ですからわたしは……」 彰利 「や、悠黄奈さん。言っても無駄だろうからここは頷いておけばよいのですよ」 悠黄奈「そうですか……?では……はい。礼には及びません。     傷ついて痛がることに種族なんて関係ありませんから。     そして、傷や病いは早期発見と早期の治療が大事です。     わたしはそれに貢献できただけで嬉しいですよ」 青竜 『女王……』 悠黄奈「…………あ、あの……やっぱり『女王』というのはやめてくださいませんか?     なんて言えばいいのでしょうか……自分が呼ばれている気がしません……」 彰利 「よっ!女王!」 悠黄奈「彰利さんまで……」 ぬうう!困った顔もなかなか! ……や、親友相手になにやってんだかって思うかもしれませんが、 でも俺ン中じゃあもう悠介と悠黄奈さんは別人だし。 だからこそ全力でぶつかりますよ?からかうことだってチャメシゴトですじゃ。 みさお「彰衛門さんって本当、人の信頼を裏切るの上手ですよね……」 彰利 「むっ!?失礼な!俺は人の信頼への裏切りは大嫌いですよ!?」 みさお「……じゃあ期待を裏切る、ってことで納得してくれます?」 彰利 「それならオッケン!なんのことだかイマイチ解らんが」 みさお「はぁ……ですから。悠黄奈さんは記憶喪失なんですよ?     そこで『親友』を名乗った彰衛門さんが     あっさりと悠黄奈さんを女王とか呼んでどうするんですか」 彰利 「全力でぶつかるとは即ち素直なオイラでぶつかるの意。     信頼とはまず素の己でぶつかりあって知ってゆくこと。     ならばこそのこの態度……娘であるキミが何故解らないッ!!」 みさお「あぁ……なんだかまた懐かしい発作が発動してるみたいですね……。     また自己犠牲満点の轟天弦月流常備奥義・幸福分配ですか?     自分の幸せ犠牲にして他人を幸福に向かわせるなんて間違ってますよ」 彰利 「自己犠牲って……キミね、それってスッパリ言われると滅茶苦茶虚しいよ?」 そら、自己犠牲はたまにはやってたけどさ。 発作と言われるほどやった覚えはないんだけどなぁ。 みさお「自己犠牲……違いますね。なんていうのか、誰かをほうっておけない体質ですか?     この場合、主に子供相手になるわけですけど」 彰利 「そ、そりゃなにかね!?俺がロリとショタを持ち合わせた、     ある意味グランドスラム超人と言いたいのかね!?」 みさお「そんなことは言いませんけど。     ほら、子供をほうっておかないのは昔からじゃないですか」 彰利 「そりゃあ隆正と楓巫女のことを言っておるのかね?」 みさお「わたしも似たようなものですけどね。これでも感謝してるんですよ?」 その割にはものめっさ偉そうね……。 まあ強く育ってくれてるのはありがたいです。 空界世界大戦時には散々なみさおだったけど。 みさお「とにかくです。悠黄奈さんは頼る先も無く不安でいっぱいなんですから。     あまり突き放すような態度はとってあげないでくださいよぅ」 彰利 「超絶断る!!」 みさお「どういう比喩言語ですか!!」 彰利 「バッケヤラァ!親友同士は助け合うのが当然!だがしかし!     最初っからそれに甘えておるようじゃあ立派なメイドさんにはなれません!     このじいやめが聖にそれを教えようとして嫌われた事実をお忘れか!!」 みさお「あ……そういえば思いっきり嫌われてましたよね。     彰衛門さんの記憶の映像の中でしか知りませんけど」 彰利 「ウムス。つーわけだから俺はからかいもするし遊びもする。     悠黄奈さんには強く生きてもらわねばね」 みさお「……ちょっと前途が心配ですね」 彰利 「なんとかならぁ!つーことでブルードラゴンよ!我等は行きますよ!?」 青竜 『騒がなければいつでも歓迎しよう。     なにもないところだが、話相手にはなれるだろう』 彰利 「オウヨ〜!そんでは───転移!!」 こうしてぼくらはフーアムアイもほどほどに、レファルド皇国へと転移したのでした。 ───……。 ……。 ドコドコドンッ!ジャガジャジャンジャンジャジャ〜〜〜〜ン!! ジャガジャジャガジャジャンジャジャ〜〜〜ン!!ドゴドントントントントンッ……!! 彰利 「フハハハハハハハ……ハッハッハッハッハッハッハ……!!」 デ〜ン……デゲデデ〜ンデ〜ン……♪ デ〜ン……デゲデデ〜ン……♪ 彰利 「か〜みが〜オイ〜ラ〜を〜〜〜♪え〜らん〜〜〜で告〜げ〜た〜〜〜♪     こ〜の世〜〜〜を制〜す〜〜♪真の〜支〜配〜者〜だと〜♪」 兵士 「む……お前ぇっ!そこで何をしているぅっ!!」 彰利 「す〜べて〜のた〜み〜が〜〜〜〜♪待〜ちの〜ぞ〜む〜の〜は〜〜〜♪     え〜いきゅ〜〜ふへ〜ん〜の〜〜♪偉〜大〜なぁるて〜い〜おう〜♪」 兵士 「貴様!聞いているのか!!」 彰利 「や〜おや〜〜〜のた〜なの〜〜〜〜♪メ〜ロン〜の〜よ〜う〜に〜〜〜♪     不〜動ォ〜〜〜〜の地〜位が〜〜〜♪似〜合うゥお〜とこォな〜のさ〜〜〜♪」 兵士 「なっ……と、止まれ!止まらんと攻撃を加えるぞ!」 彰利 「轟けぇええ〜〜〜〜っ!!」 ッテーーン♪ 彰利 「我こそぉおおお〜〜〜っ!!!」 ッテーーン♪ 彰利 「ゆ〜〜〜みは〜〜り〜あき〜〜〜と〜〜〜し〜〜〜〜〜っ!!!!     町内ぃいい〜〜〜っ!!!会からぁ〜〜〜〜〜っ!!!     だ〜〜〜いうっちゅっう〜〜ま〜〜で〜〜〜〜っ!!!!     せ〜いふっくっこっそっオッイッラッのっ、し〜〜〜め〜〜〜い〜〜〜っ♪」  ───ザグシュッ!! 彰利 「ギャーーーーーーーーッ!!!!!」 刺されました。 彰利 「な、なにすんねん!!!」 兵士 「止まれと言っただろう!このレファルド皇国の城へ何の用だ!!」 ……とまあ、兵士さんが言うように現在地はレファルド皇国。 王様に会うために城の前まで来たんだけど、 やっぱり警備兵というか門番というかが居たわけで、 歌を口ずさむことで何気なく和解をもとめようとしたんだが…… いや、見事に刺されました。 手に持った槍でこう……サクッと。 彰利 「何の用……クォックォックォッ……何の用、か……クォックォックォッ」 兵士 「な、なにがおかしい!あ、い、いや……それは微笑なのか?」 みさお「笑い声から否定されてますよ彰衛門さん」 彰利 「や、やかましい!」 久々な笑い方なのになんて言い草でしょう! 私少しカチンときましてよ!? 彰利 「これ!そこな兵士!道をお開けなさい!こちらの方をどーなたと心得る!」 兵士 「あ〜〜〜〜ん?この女がどうかしたのか?」 彰利 「モンスターハンターのじいさんの真似はいいから道開けろこの野郎!」 兵士 「怪しいやつらめ!この女がどうしたというんだ!ただのメイドだろう!」 彰利 「たっ───!?ただの……!?しかも『メイド』……!?     馬鹿野郎このハゲ!!メイドじゃねぇ!メイドさんだ!」 兵士 「ハ、ハゲだと貴様!!この城に仕えて五年にもなるこの俺を!     もう辛抱たまらん!通りたければ俺の屍を超えてゆけ!」 彰利 「オーーーッ!?上等だこのハゲ!     メイドさんを『ただの』呼ばわりしたこと、     たっぷりと後悔させてさしあげます!!」 言って、自分の影からダークスライサーを取り出して構えた。 彰利 「羽薄きなさい『劈鳥』!!」 そしてやっぱり後悔と言えばこれ。 ダークスライサーからダークネスフラッシャーを発動させ、 宙に舞う無数の刃を発生させた。 彰利 「どうです……さあ後悔なさい。     この宙を舞う無数の刃、劈鳥を見て生き延びた者などただひとりとして無し!     ほらほらどうです?眼で追うことすら出来ないでしょう。     華麗なる死へのプレリュード……」 みさお「あのー……喧嘩売ってる場合じゃないと思うんですけど」 悠黄奈「───彰利さん!」 彰利 「キャーッ!?な、なにかね悠黄奈さん!     淑女たるもの、急に声を張り上げるもんじゃあありませんよ!?」 悠黄奈「今はそのようなことを言っている場合ではありません!!     いいですか彰利さん!喧嘩なんかしてはいけません!     喧嘩は破壊しか生まないのですよ!?」 彰利 「なんと!?それは間違いですよ悠黄奈さん!男と男の戦いは友情を生みます!」 悠黄奈「けれど今の彰利さんの眼は友情を生もうという目つきじゃありません!」 彰利 「当たり前じゃい!この男はメイドさんを馬鹿にしました!そげなこと、     この漣高等学校随一のメイドさん愛好会設立者にして会員No,1の俺が許さん!     そりゃもうストレイツォじゃなくても容赦せん!!」 みさお「どうしてそこでストレイツォが出てきますかね」 兵士 「なにをごちゃごちゃと!来るのか来ないのかハッキリしろ!!」 彰利 「む───!」 よほど命がいらんと見える! こうなったら存分にその身に刻み込んであげましょう!後悔を! 彰利 「出番ですよアモルファス!ダークセンチネル!存分に後悔させてあげなさい!」 早速といってはアレですが、己の周りを劈鳥で守りつつ影と闇を召喚。 影  『俗事の産物どもがぁ!塵に帰せぇ!』 闇  『おのれ鍋奉行がぁっ……!!』 なにやらヘンテコな知識ばっかり吸収しちまったようですが、それでもまあいいです。 面白いし。 兵士 「な、なんだこれは……!か、影が───!?」 影  『砕けろォーーーッ!!』  ヴオボゴシャァアアアアアアン!!! 兵士 「ギャアアアアアアアーーーーーーーーーッ!!!!!」 中々に大きかったアモルファスが振り上げた腕を勢い良く地面に振り下ろすと、 地面の爆裂とともに兵士が天高く飛んでいってしまった。 おお……こりゃアレですわ。 マヴカプ2のラスボスの最終形態さんがたまに使う、地面殴って爆発を起こすアレ。 ……ほんと、妙な知識ばっかり吸収してますな。 面白いからいいけど。 闇  『待て!中身はロボじゃないのか……!?』 彰利 「いや、訳解らんよ」 手持ち無沙汰になった闇のダークセンチネルは、 周りを見渡したあとにそんなことを呟いていた。 ……何気にどころか、ほどよくギルティギアのザッパが混ざってる。 彰利 「つーわけで道が開けたから先行こう。王様ってどげな人なんかなぁ。     ……やっぱアレかね?オウファってヤツの親か祖父くらいになるんかね」 みさお「親じゃないですか?今は随分若いと思いますけど、     あのオウファって人も結構歳いってるみたいでしたし」 彰利 「だぁなぁ」 俺達はレファルドの前国王を知らない。 空界に降りた時には既に毒殺されていたし、国王はオウファになっていた。 あんなヤツが王ってのは冗談でも真実にしてほしくなかったことだが、 それもまあ……塗りつぶされたなら頷くことは出来る。 どんな人なんかね。 ステキな理解者だといいけど、今で言えば若いだろうし……うむむ。 彰利 「ま、会ってみればどげな人かは解るっしょ。     つーか……食い逃げのことであのおっちゃんに捕まるとは思わなかったけど」 みさお「まだ生まれてもいない人はそのまま残ってるみたいですね。     だとしたらこれから生まれてくる人がどうなるのか心配ですけど……」 彰利 「そこんところは大丈夫だろ。     なんとなくだけど、同じ人は生まれないような気がする」 みさお「そうですね。不思議とそんな感じはしません。     なんといっても……世界を融合させたのがあの精霊さんですから」 彰利 「なぁ」 なんというのかな。 あのバケモンみたいな精霊殿が力の全てを使い切ってまで融合させたとくりゃあ…… なんだかそれが当然のように思えてしまうから不思議だ。 なんてことを考えながら、我等はのんびりと城の中を歩いてゆくのでした。 ……途中途中で偉そうな態度で迫り来る兵士どもを蹴散らしながら。 ───……。 ……。 さて───ようやくここまで来ましたよって感じな謁見の間。 広い場所の両脇には将軍クラスっぽいお方達がズラリと並んでいて、 中央の先の階段の上にある椅子には王様らしき若造が座っていた。 ……とまあ、それはそうなんだが。 どうして俺達がこうもあっさりとここに来れたかというと、 未来の時代で兵士をやっていた人と遭遇し、 たまたま俺が悠介の親友だということを覚えてくれていたため。 その兵士に案内されるままに、ここへこうして来たわけです。 国王 「ようこそ、旅人よ。歓迎しよう」 若造は極上のスマイルで俺達を見下ろした。 階段は少し高い位置にあり、 ただ座られてるだけでも見下されているようであまりいい気はしない。 国王 「リヴァイアから話は聞いている。あの黒竜王を討伐したそうだな」 彰利 「ウムス。こちらの悠黄奈さんが」 スッと、俺とみさおの後ろで慎ましやかに立っていた悠黄奈さんを前へ促す。 悠黄奈「え───あの?」 それと同時に周りに居たゴツイ鎧を来た将軍や、 アルテミュラー元帥のような方の眉毛がピクリと動いた。 さらには魔導術師の皆様もざわりとどよめき、悠黄奈さんを見る。 国王 「……そんなかよわい女性がか。真実なのだろうな」 彰利 「彰衛門ウソつかない」 みさお「ウソつかないでください!」 彰利 「だぁっ!しつこいですよみさおさん!」 国王 「信じられん……お、おいエレン。その女性から魔導の類の気配は感じるか?」 エレン「い、いえ……千年の寿命の気配は確かにありますが、魔力は全く感じられません」 元帥 「腕の方もいいようには思えません。華奢な女の体躯そのものです。     なにより───その格好はメイドではないのか?」 彰利 「違うわボケ!メイドじゃなくてメイドさんだ!」 元帥 「ボケ、だと……?」 アルテミュラー元帥の眉が再びヒクリと動く。 声が塩沢兼人さんっぽいのがなんつーか似合ってる。 あ、ちなみに本当に元帥なのかは謎ですよ? 元帥 「面白い……。この私をボケ扱いする者が居るとは。     いいだろう、仮にその女が黒竜王を倒したとしても信じる気にはなれない。     ならばこうしよう。そこの女にはエレンに相手になってもらい、     貴様は私が相手をしよう。貴様が黒竜王を倒した、という考えも出来る」 彰利 「ほへ〜……」 すげぇ勘違いだアルテミュラー元帥。 でもまあいいでしょう。 ハッキリ言って、悠黄奈さんには誰も勝てないと思うし。 つーか近づけないと思う。 彰利 「おーけー。そんじゃあ王様ー、合図よろしく」 国王 「……ん。では双方ともに傷つくことを厭わずに向かうことを誓えるな?」 彰利 「もちろん。俺は傷つかないけどね」 元帥 「その強がりがいつまで持つかな」 悠黄奈「あの……喧嘩はよくないと思います」 エレン「アルテミュラー元帥の決定です。わたしはあの方に従うまで───!」 みさお「うわ……聞きましたか彰衛門さん」 彰利 「この人ホントにアルテミュラー元帥だったのか……」 でもまぁそれはそれです。 国王 「では───始め!!」 国王の凜とした声が徹る。 我等は互い互いに向かい合い、みさおだけが我等を見守っていた。 元帥 「いくぞ小僧───!」 彰利 「しゃーないですねぇ……───死より、深い闇を……」 ゾバァン!!───唱えとともに、俺の中からダークセンチネルが飛び出た。 元帥 「───!?これは───」 闇  『魂の欠片も残さん……!』 しかも何故か、ザッパのラオウ憑依状態のような格好で。 しっかりと俺の肩の上でガッツポーズともとれるマッスルポーズをとってますよ? 元帥 「欠片も……?馬鹿な。どんな術行使なのかは知らんがこの程度で───」 闇  『惨!殺!!』 ズパァアンッ!!! 元帥 「ぐあぁああーーーーーっ!!!!」 で……ライトニングストレートナックルで一撃。 黒い雷撃を秘めたバカデカい闇の拳の一撃がアルテミュラー元帥を壁まで吹き飛ばし、 見事ボクに勝利を齎したッ……!! で、肝心の悠黄奈さんはというと─── エレン「あなたに恨みはありませんが───!」 悠黄奈「あ───だ……め……!」 悠黄奈さんが何かに耐えようとした次の瞬間、 悠黄奈さんの両肩にウィルオウィスプとウンディー姉さんが出現した。 しかもウンディー姉さんがエレンさんの魔導術を水の膜で弾き、 それに驚いたエレンさんにウィルオウィスプが小さな光のレーザーを放つ。 あ───これって…… 悠黄奈「誰も……傷つけたくないの……!───いやぁああああっ!!!」 彰利 「ゲッ───総員退避ィーーーーーーーッ!!!」 みさお「とんずらぁあああーーーーーーっ!!!!」 ザガシャシャシャシャシャッ!!! 彰利 「えっ!?あ、あれぇっ!?」 俺が叫んだ時には、皆様がとんずらこいてました。 なぜかエレンさんも。 代わりに悠黄奈さんと対面するエレンさんの背中を見守っていたオイラに そのレーザーは向けられ─── 彰利 「え、え───えぇっ!?」 やがて。 相手が俺だって解ってるっつーのに、 ウィルが無理矢理顔だけ出させたディル殿の口が大きく開かれ─── ボクの視界は真っ白に輝きました。 彰利 「おぉおぉおぉおおぉぉぉおおっ!!!!?」 あとは語るべくもありません。 悠介の諸力も魔力も完全に回復していない今、 未だに融合の解けていないディル殿のレーザーがどれほどのものかを考えるに至り─── 俺はただ、十字を切るしかありませんでした。 ……ちなみにこの瞬間から 悠黄奈さんの愛称が『ディズィー子』になったのは、また別の話である。 ───……。 ……。 彰利 「まあそげなわけで……認めてもらったことだし万々歳」 みさお「あれをくらってどうして生きていられますかね……」 彰利 「ピエロだからさーーーっ!!」 そう、ピエロに不可能は無い! 何故ならばピエロだからだ! そりゃもうドナルドマジック継承者だってK−1で曙と戦うさ!! ……そういや、今さらだけど殿様の高校に置いてきたマサルドってどうなったのかな。 気になるけど今はそれどころじゃないね。 彰利 「ちなみにディル殿のレーザーくらったのは擬態であって俺じゃない。     戸愚呂(兄)方法というか……ホレ、影として俺は地面に潜ってて、     地上に出していたのは薄く象った中身の無い影の膜っつーかなんつーか」 もちろんそれも『俺』なわけだから、消された時は思いっきり痛かったが。 彰利 「とゆわけで王様ー、城ン中歩き回っていいー?」 国王 「あ、ああ……あ、いや───お前!」 悠黄奈「───はい。なんでしょうか、王様」 国王 「え!?あ、いやその───」 国王、何故か悠黄奈さんを呼び止めて真っ赤になるの図。 なにを───って、そーかそーか。 なんつーか、王なのに情けなや…… 彰利 「あの……王様?便所くらいひとりで行った方がいいと思うよ?     いくら付き人が欲しいからって、     会ったばっかりのおなごに付き合わせるのはどうかと……」 国王 「だっ───ばばばば馬鹿者!!この私がそんなことを考えるわけがないだろう!」 彰利 「だってそげに顔真っ赤にして……便所我慢してたんじゃないの?」 国王 「そんなことは断じて無い!!わ、私はただっ……!」 みさお「……青春ですねぇ……」 彰利 「へ?今秋だけど」 みさお「青春って書くからって春じゃなきゃいけないなんてこと、誰が決めたんですか」 彰利 「ホドリゴ=ノゲイラ氏」 みさお「誰ですか」 彰利 「知らん」 アントニオではないのは確かである。 と、そげなことをみさおさんと話し合ってた時である。 ふと言葉が途切れ、静寂を手に入れたような謁見の間に、 緊張のためかよく透き通った声が響いた。 国王 「お、おおおおおお前!わわ、私の后にならんか!?」 ……と。 彰利 「へ?なに?切っ先?」 みさお「違いますよ彰衛門さん。木崎です」 彰利 「木崎って……おお、確か花山さんのお供の」 国王 「違う!!」 違うらしい。 つーかわざわざツッコミ入れてくれるなんて、なんと律儀な王様だ。 グラップラー刃牙のことを知ってるわけじゃないだろうけど、 律儀なことには変わりは無い。 彰利 「で───悠黄奈さん、返事は?」 悠黄奈「ごめんなさい王様。わたしは『好き』という感情を知りません。     ですからわたしは、     その感情を理解するまで誰とも添い遂げるつもりは無いのです」 国王 「な、なに……!?皇女だぞ皇女!皇女になれるというのに───!     何不自由無い暮らしが約束されるんだぞ!それなのに何故───!」 悠黄奈「王様、それは違います。     国の王、国の皇女として生きる時点で確かに生活の豊かさは約束されましょう。     けれどもそれは『本当の自由』を代償にして手に入れるものです。     好きな時に好きな場所へ行けない籠の中の鳥を、     一体どなたが『不自由無い存在』と唱えるでしょうか」 国王 「ぐ───!そ、それは……!」 悠黄奈「王様……わたしはそのような仮初の自由にはなんの興味もありません。     わたしが目指すものは『自由に生きるメイドさん』です。     何者にも縛られず、行き先も決めず、風任せに仕事をこなすメイドさん───     そういう存在に、わたしはなりたいと思っています」 国王 「…………な、ならば!この城でメイドとして───」 ピシリ……! 国王 「はっ……!」 彰利 「王様……」 悠黄奈「王様……?」 国王 「な、なななんだ……?」 彰利 「次は無ェぞ……覚えとけ」 悠黄奈「『メイド』ではなく、『メイドさん』です……」 国王 「は、はああ……!!」 一瞬にして凍りついた空気の中、俺と悠黄奈さんが鋭い眼光で国王を睨みつけた。 まったくヒドイ侮辱だ。 せっかく説明してやったってのになんと物覚えの悪い。 国王 「そ、そうか……ならばこの城のメイドさんにならないか!?」 彰利 「ブフッ!王様が『メイドさん』だってよ!     恥ァーーずかCィイーーーーーッ!!!!」 国王 「黙れ貴様!!───で、で……どうなんだ?」 悠黄奈「お断りします。王様、わたしはあなたに言った筈です。     自由に生きるメイドさんを目指していると」 国王 「きょ、拠点をここにすればいいだろう!どうだ!?日々可愛がってやるぞ!?」 彰利 「………」 なんつーか……納得。 こいつの子なら、オウファみたいなヤツが生まれるわ。 恐らく民からの信頼も、オウファの横暴あってこその誇張だろう。 思い出って暖かいしね。 それとも悠黄奈さんに会わなければこげな状態にはならなかったとか? マジで惚れてしまったとか。 ……まあ、形振り構わず傍に居て欲しいって顔してるし。 そっか、惚れたか……。 でもね、王様。 『日々可愛がってやる』って言ってる時点で外に出す気ゼロじゃない。 悠黄奈「何を条件に出されましょうとも、     わたしはここでメイドさんの仕事をする気はありません」 国王 「くっ───こ、この私が頭まで下げているというのになんたる屈辱……!!     皆よ!この者達を逃がすな!男と小娘はどうしてもいい!     その女だけは生かして私の下へ連れてこい!!」 将軍達『ハッ!!』 王様の言葉に、その場に居た皆様が一斉に構えた。 ……やれやれ、学習能力ないのかね。 や、まあいいや、どうせここにはもう用は───って待った。 ウォルトデニスを助けに来たんだった。 本来の目的忘れてたよ。 彰利 「悠黄奈さん、ちぃと王室側の庭に行きましょ。     そっちで記憶を失う前のキミが大事に飼ってた魚が居るんだ」 悠黄奈「魚───ですか。はい、是非見てみたいです」 彰利 「あ〜……でもね、     その魚たちは今日この世界で起きた地震の所為で死んじゃってるのですよ。     だから、その魚たちを生き返らせようって思いでここに来たのです」 悠黄奈「あ……そうだったんですか。     ありがとうございます、彰利さんはやさしい方なんですね」 彰利 「へ?あ、やー……えっと」 みさお「なに照れてるんですか」 彰利 「う、うっさいやい」 仕方ないでしょう、面と向かってお礼言われたのなんて久しぶりすぎなんだから。 国王 「なにをごちゃごちゃと言っている!」 将軍1「は……なにやら庭の魚がどうとか……」 国王 「庭の魚ぁ……?あ〜ああのウォルトデニスか。     あんなもの、既に犬のエサ行きになったわ。     今頃は珍味の味に満足した犬の腹の中で消化されてる頃だ!」 悠黄奈「え───?」 ───……なに? 彰利 「……オイそこのクソ野郎……てめぇ今なんつった?」 国王 「あぁん?貴様誰に向かってクソ野郎などと言っている。     私はこの世界最大規模の国、レファルド皇国の絶対なる国王だぞ!!」 彰利 「てめぇ……悠介が可愛がってたウォルトデニスを……!     食用に……させないようにって……!飼ってたウォルトデニスをぉおお……!!」 国王 「な、なんだ!?なんだその眼は!私に向かって無礼を働いてみろ!すぐに───」  ガォンッ!ドッガァアァアアッ!!!! 国王 「……ひ、ぃ……!?」 俺のすぐ後ろから何かが放たれ、王様のすぐ横の壁に巨大な穴を作った。 俺はゆっくりと向き直り…… そして、涙を流す悠黄奈さんを、どこか驚いた気持ちで見つめた。 悠黄奈「……彰利さん……これが───これが人の汚さですか……?     こんなものが……人の統率ですか……?     語るだけで何もしない王に、それに付き従って成すがままを成す……     それが、国を守り、王を守る者達の仕事で……。     死んでしまった命は簡単に他の者への食物連鎖になる……これが現実ですか……」 彰利 「悠黄奈さん……」 悠黄奈さんの肩越しには、皇竜珠から顔のみを出したディル殿が居た。 今の一撃は───悠介がウォルトデニスを大事に飼っていたことを なによりも身近で知っていた飛竜たちだからこそ放った一撃だったのかもしれない。 殺されなかっただけもうけものだ。 俺も今の一撃で冷静になれた……あのままだったら危なかった。 彰利 「悠黄奈さん、眼を逸らすなよ。人ってのは恐ろしいくらい単純なのに、     それ以上に嫌ってくらいに複雑なんだ。正義なんてものは何処にもない。     正義が正義を振りかざせば、相手にとってのそれは悪で、     悪が己の正義を振りかざしても相手にとってのそれは悪なんだ。     何が正しくて何が間違ってるのか。そんなことを答えてくれる人なんて居ない。     それでも───うん、自分が正しいと思ったことは滅多に曲げないでおくれ?」 悠黄奈「彰利さん……」 彰利 「ここに来てよかった。今のでふんぎりがついた。     俺達はもうこの空界の地上であーだこーだやる必要が無いわ。     後になって見つかることはそりゃああるだろうけど、     一番教えたかった人の汚さを、よりにもよって王様が教えてくれた。     ……こりゃあ十分すぎるくらいに十分だ。だから───」 たじろいでいる王様たちをもう一度睨み、俺は悠黄奈さんとみさおさんに向き直った。 彰利 「空中庭園、行こっか」 そして言う。 人の汚さとは無縁の、誰も居ない楽園への誘いの言葉を。 悠黄奈さんは首を傾げるだけだったけれど、 みさおさんは『やっぱり人がいいです』という顔で俺を見ると、 けれどすぐに親に甘える子供みたいな笑顔で俺の腕に抱きついてきた。 彰利 「ほっほっほ、これこれ……まだまだじいやに甘え足りないのかい……?     こんなに大きくなったのに、いつまでも甘えん坊だなんて恥ずかしいねぇ……」 みさお「いいんですよっ、彰衛門さんはわたしのおとうさんなんですから」 彰利 「ほっほっほ……じいやと言ってるのにどうしてみんな、     おとうさんって言うんだろうねぇ……?     じいやは遥か昔っからずっとそれが気になっていてのぅ……」 謎だけど、誰も答えをくれなかったからもういいです。 一応リヴァっちに挨拶してから空中庭園に向かうことにしませう。 そうと決まれば、ということで───困惑顔の悠黄奈さんの手を紳士的にやさしく取ると、 未だカタカタと震えているその場の阿呆どもを置いて転移をした。 ……もちろん、リヴァっちの工房へ。 ───……。 ……。 ───で、リヴァっち工房。 少し沈んだ空気を背負いながらそこに訪れると、 どうしてか夜華さんと聖と南無とカルナくんが居た。 彰利 「どぎゃんしたん?」 正直夜華さんと聖とは顔を会わせたくなかったが、 紳士として礼節は弁えんといけませんということで言葉を通すことにしました。 リヴァ「うん?ああ検察官か。お前達こそどうした───って、誰だその女は」 当然のこと───なんだろうけど、リヴァっちが悠黄奈さんを見て首を傾げる。 彰利 「このお方か。このお方は昏黄悠黄奈。この全アルマデルの支配者である」 悠黄奈「ウソを教えないでください」 リヴァ「いや、ウソなのは十分に解るが───いや待て。そのモミアゲは……」 悠黄奈「───」 ズンッ……!! 彰利 「は……はうあ!!」 リヴァ「な、なんだ!?急に工房の中の空気が重圧的に……!!」 悠黄奈「……モミアゲの話題には触れないでください」 彰利 「───!」 リヴァ「───!!」 恐らくその場に居た誰もが気づいたことだろう。 ……この眼はマジだ。 モミアゲの話題に触れようものなら、 喧嘩を嫌う彼女はその信条を八つ裂きにしてでもガンマレイを放ってくる。 全てが失われてるわけじゃないんだろうね、きっと……。 そらそうだ、魂レベルとはいえ、悠介側の魂は力強き竜側に存在するんだから。 南無 『ほね?モミアゲがなんだっつーのかねほね?     って、よく見れば見事なモミアゲほねね〜〜〜!!     この南無、バラバラになってから復活したばかりだけど、     こんな見事なモミアゲ見れたら満足ほねよ!』 総員 『馬鹿ぁああああああーーーーーーーっ!!!!!』 南無 『ほねっ!?なにを言うほね!馬鹿って言う方が馬鹿って言う方が馬鹿ほね!』 彰利 「じゃあてめぇが馬鹿じゃねぇか!!」 南無 『ほねっ!?てめぇにだけは言われたくねぇほ───ねぇええええっ!!?』 彰利 「むっ!?あ───」 南無の表情(といっても骨だが)に促されるように横を見た。 すると───なにやら黒いオーラを放ちながら南無を睨む悠黄奈さんが居た。 サヨナラ南無。 お前もうおしまい。バイバイ……。 南無 『ほっ……ほねぇええええーーーーーーーーーーっ!!!!!』 その瞬間、彼はガンマレイによって粉微塵になって吹き飛びました。 ガンマレイといってもディル殿のレーザーなわけですが、 ジハードとの融合を果たしたディル殿のレーザーは以前の比ではなかったわけでして…… 不死身を自負する南無は無事生還したが、リヴァっちの工房はそうはいかなかった。 ───……。 ……。 彰利 「えーと、まあそげなわけで早急に直したわけですが……もう解ったよね?」 リヴァ「まあ……」 リヴァっちが疲れた顔で、ペコペコ頭を下げている悠黄奈さんを見やった。 まあつまり、モミアゲという言葉にあれほど反応する存在はひとりだけだと納得された。 そんな納得の仕方はどうかと思ったけど、 俺にしてみれば納得してくれりゃあそれでいいわけだ。 リヴァ「なんで女になってるんだ、なんて訊くのは無粋か?」 彰利 「うんにゃ、一言で済むよ。     今は魂のレベルからして不安定だから無茶しないようにってノートが女にした」 リヴァ「……なるほど。けどな、検察官。『一言』と『一息』は違うぞ」 彰利 「知ってますよ失礼な。     まあけどあれだ、悠介ってなんだかんだで困りごとをほっとけない性質だからさ。     男のままにしときゃあたとえ魂が不安定でも無茶するだろ?     だからまあ、そんなとこなんじゃないかね、ノートの考えって」 伊達にずっと悠介の中の死神やってないってこった。 それ以前は精霊として契約してたわけだし。 そりゃね、いろいろ知ってるし手を焼きたがるのも解る気がする。 彰利 「まあそれはいいとしてさ。俺達、空中庭園を住居にすることにしたからさ。     なんかあったら送話でもなんでも送ってや〜」 リヴァ「空中庭園?本気か?」 彰利 「本気。さっきちょっとあってさ。地上の王様に呆れ果てた。     実際……地上で出来る冒険なんてあまり残ってないと思うし、     あったとしてもそれは悠介と一緒にやりたい。     だから、悠黄奈さんの魂が安定するまでは空中庭園で過ごすさ」 リヴァ「……なるほど、そういうことか。地界に戻ったりはしないのか?」 彰利 「ほっほっほ、冗談はよしこさん。地界の空気と空界の空気を比べられるかね?     地界の空気で魂回復させようなんてしたら腐っちまわぁ」 それがたとえ晦神社の境内でもだ。 あそこの空気がいくら地界の中でもかなり澄んだ場所でも、やっぱり空界には敵わない。 じゃあ何処で休養するべきか?そんなもん、空気の良い方に決まってる。 ……時間の感覚がズレちまってるのは知ってる。 魂が安定したからって地界に戻ったら、 もう秋が終わってたり冬が終わってたりするかもしれない。 それでも……まあ、しゃあないよな。 彰利 「ちなみに───リヴァっちは知ってるよね?この世界の時間がズレてるの」 リヴァ「ああ知ってる。けど今のうちは心配することはないぞ。     今は地界よりもこちらの方が時間の進みが湾曲している」 彰利 「む?つーことは……」 リヴァ「ああ、これから一週間くらいはそれが続くと思う。     地界で言えば三日だ。のんびりは出来ると思うぞ」 彰利 「……そか。や、心配だったんだ。原中の猛者どもをそのままにして来たから、     これで何日も戻らなけりゃ俺達死んだことになるだろうし」 しかも地界にゃあ次元干渉出来るヤツが居ないからな…… 俺達の生死を確かめられるヤツ誰ひとりとして無し。 そうなったらおめぇ……アレだ。 俺達の屍が空界に転がってるってことになって、地界の皆様大号泣ですぜ? 特に粉雪やルナっちは……おお、考えただけでトキメキラブポーション。 いや、訳わかんないから。 彰利 「などとひとりノリツッコミしてる場合ではなく。     よかったらリヴァっちも来るかね?     同行者には今なら漏れなく『魔法少女メガロン』のフィギュアを」 リヴァ「要らない」 即答でした。 ただネタとして出しただけなのに、何故かメガロンは物凄い嫌われようだった。 なにせ『行かない』じゃなくて『要らない』だった。 彰利 「や……ただのネタであって、フィギュアなんて持ってませんよ?」 リヴァ「それでもいい。わたしは地上の方が落ち着ける」 彰利 「ん……そうかえ?ならば無理強いはしますまいて」 つーかなんで何よりもメガロンに反応したのかが謎だ。 彰利 「そんじゃまあ……───ム」 いざ行きますかって時に、オイラを見る夜華さんの姿が目に映った。 んだども、以前のような感情は浮かんでこない。 フッ……オラも大人になったもんだべさ。 彰利 「なにかね?この私になにか用でもあるのかね。     ああ失礼、私は弦月彰利という。     漢ではなく男なりに紳士を目指す見習いダンディだよ」 夜華 「ゆみ───はり……?貴様が───!!」 彰利 「んん?どうしたのかね。私はキミに血相を変えられる覚えはないのだがね」 夜華 「貴様……!わたしの何を知っている!答えろ!この苛立ちの意味はなんなのだ!」 彰利 「これはおかしなことを言う。私にキミのことが解るわけが無いだろう。     そもそもキミは私になにを求めているのかね?     それが解らない限り私はお手上げだ。     もう少し踏み込んだ語り方をしたほうがいい」 夜華 「くっ……!」 言葉を言葉とおりに受け取ったのか、夜華さんがズイと俺の目の前まで歩み寄ってくる。 が、さすがに身長差があるために俺を見上げるカタチとなる。 ……べつにそういう意味で言ったんじゃないんだけどなぁ。 夜華 「これでどうだ!話せるだろう!話せ!」 彰利 「………」 滅茶苦茶ですな。 この紳士も少々呆れてしまったよ。 彰利 「困ったものだね。そこの骨はなにも喋ってはくれなかったのかね?」 夜華 「形を取り戻した途端に貴様の連れに粉微塵にされたんだ!     訊ける筈がないだろう!それを邪魔した責任をとれ!」 彰利 「ふむ……ああ構わん、いいだろう。それでは私が話せることは話してみよう。     キミは一体何が訊きたいのかね?」 夜華 「わたしのこの感情のことだ!」 彰利 「む……キミ、その質問は要領を得ていないよ。     それではわたしだけではなく他の誰にも答えることなど出来ないだろう。     もう少し解りやすく話してもらえんかね」 夜華 「っ……それが解っているのなら訊こうだなどと思うか!!     そもそもが解らないことだらけなんだ!     それに貴様の名を知ってからその苛立ちは増えた!これはどういうことだ!」 彰利 「これは呆れたものだね……この私がキミに関係あるとでもいうのかね」 夜華 「無い───無いはずなんだがこの感情は確かに存在する!     その矛盾の意味を教えろと言っている!」 彰利 「やれやれ困ったものだね。私はそんなことは言われた覚えがないのだがね」 夜華 「くっ───貴様!」 苛立ちが頂点に至ったのか、夜華さんは抜刀し、俺に向けて振るってきた。 が、それをなんなく避ける。 夜華 「なっ───!?」 彰利 「もう少し踏み込んだ方がいい」 夜華 「貴様───!」 さらに踏み込んだ一撃。 だがそれさえも避ける。 一度怒り出した夜華さんがこれくらいじゃ引かないことは知ってるし。 彰利 「やれやれ、仕方の無いお嬢さんだ。───戦いというものをご教授しよう」 夜華 「なんだと!?貴様に教えを乞うほどわたしは弱くなど───」 彰利 「心配しなくてもいい、手加減はしよう」 夜華 「手加減だと!?貴様のような輩に馬鹿にされるほど弱くはない!」 彰利 「………」 いや、どうしましょ。 適当にからかってただけなんだが、夜華さんたら本気で怒っちゃったようです。 これはいけませんね、気絶させたのちに早々に退散しましょう。 どうせ俺が居たって夜華さんにはなんのプラスにもなりゃしないさね。 彰利 「いいや、弱いな。今のキミは隙だらけだ。退屈凌ぎにもならないだろう」 夜華 「なっ───」 彰利 「少々強めにいくぞ───マッハ人生!!」 ドンッ! 夜華 「けふっ!?」 勢いをつけた飛びパンチが夜華さんの腹部に直撃する。 そうすると夜華さんはゆっくりと倒れ、動かなくなった。 ……とはいっても拳を当てて月清力を流して眠られただけですけど。 それを見た聖がすぐに駆け出そうとしたけど、そこはみさおが説明して止めてくれた。 ……もちろん、俺の素性に関しては一切語らなかったようだけど。 彰利 「んじゃ、行きますか。南無、キミどーする?」 南無 『正直今の夜華ちゃんと一緒に居ると悲しいだけだからねぇほね。     ほねほねほね、いいほねだろう、貴様と一緒に行こうほね』 彰利 「いいほねだろう、って……骨自慢してるようにしか聞こえんぞ?」 南無 『やかましいほね』 言いながら、南無が俺の影へと消えてゆく。 あとは─── 彰利 「みさお、別れの挨拶はほどほどにの。俺達はもう干渉せんだろうけど、     キミはいつだって聖たちには会えるんじゃからの」 みさお「ん。解ってます」 コクリと頷くみさおさん。 それを確認すると、 今度こそといったふうに夜華さんの中から俺の記憶を完全に奪ってゆく。 いやはや、よもや夜華さんがここまで思いつめるとは思わなんだ。 それもこれも、『俺』という存在が空いた場所を埋める記憶が無かったからだ。 というわけで、俺がやってきたことの全ては……うむ、 唐沢さんがやったということにしよう。 唐沢さん全然関係ねぇけど、それはそれで面白そうだし。 つーことで夜華さんの中では唐沢さんは刀で切られても平気で、次元移動も出来て、 ピンチに追いやられれば『強ぇえ……こいつ強ぇえよぉ』と言う男、ということで。 インプット完了! もちろん聖にも気づかれんように影を繋げて……と。 さらにインプット完了! 彰利 「うむす!それではリヴァっち、俺達はこれで失礼するよ!     暇になったら降りてくるさかいなぁ!」 リヴァ「ああ。元気でやれ」 彰利 「ではみさおさん、悠黄奈さん、もういいかえ?」 悠黄奈「はい、わたしはいつでも」 みさお「こっちもいいですよ。……それじゃあね、聖ちゃん」 聖  「………」 聖は複雑そうな瞳でみさおさんを見て、だけど転移が発動すると確かに手を振った。 もちろん俺なんぞには見向きもせずにだ。 ……達者での、聖。 父は貴様の存在が誇りだったよ。 ……どこらへんが?と聞かれれば難しいところですけどね。 なんてことを考えながら、俺達は見えない浮遊島、ラピュウタへと転移したのでした。 Next Menu back